全国書店新聞
             

令和6年1月15日号

日書連「出版販売年末懇親会」/手を携えて業界盛り上げよう

日書連は12月13日、東京・千代田区の帝国ホテルで出版販売年末懇親会を開催し、書店、出版社、取次など総勢162名が出席した。矢幡秀治会長は2023年を振り返り、秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」と春・秋の「読者還元祭」への手応えを語る一方、図書館納入、キャッシュレス決済の手数料、ICタグなどを課題として挙げ、「皆さんと手を携えて業界を盛り上げたい」と協力を呼びかけた。
出版販売年末懇親会は春井宏之副会長の司会で進行。主催者を代表して矢幡会長、来賓を代表して日本書籍出版協会の小野寺優理事長(河出書房新社)があいさつし、日本出版取次協会の近藤敏貴会長(トーハン)の発声で乾杯した。
各氏のあいさつの要旨は次の通り。

[読書推進運動でうねりを/日書連・矢幡会長]
コロナが5類に移行して人出は増えているが、書店からは客足が遠のいており、非常に厳しい状況が続いている。
その中で23年は、「BOOKMEETSNEXT」のメインイベントとして京都ブックサミットを盛大に開催し、読書推進を大きく打ち出すことができた。一般の人々も多く参加したので非常に良かった。大きなうねりが生まれたことで書店に足を運ぶ機会になったのではないか。
一方、仲間の書店が当店の近くで2店舗閉店した。閉店したいがどうしようかと相談しに来た方もいるが、当店も厳しく、閉店する気持ちはよく分かるぐらいしか話せなかった。日書連の組合加盟書店も現在約2600店舗で、4月から約50店舗閉店している。
京都ブックサミットで今村翔吾氏が「作家、出版社、取次、書店が一体となって難局を乗り越えないといけない」と話していた。手を取り合ってできることはまだまだたくさんあると思う。
日書連は読書推進活動として春・秋の読者還元祭を実施している。22年秋の登録者数は約11万人だったが23年秋は約30万人になり、広がりを感じている。
「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)については、骨太の方針に「書店支援」の文言が盛り込まれ、一歩を踏み出した。議員も書店の苦しさを改めて感じたのではないか。図書館への納入では地域の書店を使ってほしい。その際には書籍と装備を別々に納品したい。都内では売上の60~70%がキャッシュレス決済になっている書店もあるが、決済手数料で利益を約2%失っていることになる。粗利30%以上獲得の運動を進めている中で、これは大きい。大きな声を出して決済手数料の引き下げを言っていきたい。ICタグについては2書店で実証実験が行われており、我々も導入のメリットを大きく感じている。より良いICタグを提供していただきたい。
このほか輸送、雑誌の付録、配本、定価アップなどの問題もある。ハードルは高いが、それを乗り越えることでまだ書店は元気に頑張れる。24年に向かって皆さんと手を携えて一緒に頑張り、この業界を盛り上げたい。

[書店に足運ぶきっかけ作る/日本書籍出版協会・小野寺理事長]
23年は大変な1年だった。出版物流の大きな変化、インボイス制度の導入、光熱費の高騰と、この1年に出版界を直撃した問題を数えだしたら枚挙に暇がない。最大の問題は生活必需品の値上げによって可処分所得が本に回らず、書店の来店客数が落ち、出版物の売上が下がっていること。お客様が書店を訪れなければ我々の商売は始まらない。今取り組まなければならない最重要課題は、お客様が書店に足を運ぶきっかけを業界を挙げて作ること。それを今まで書店の努力に任せきりだったが、もはやそんなことは言っていられない。出版社も一緒になって様々なイベントやキャンペーン、SNSへの書き込みなど、あらゆる方法を使って一人でも多くの人が書店に足を運ぶきっかけを作らなければならない。
書協では12月1日、「ブックイベントナビ」という書店のイベントを一覧できるポータルサイトをグランドオープンした。本に関する面白いことはないかと思った人がアクセスすることで手軽に近所や全国の書店イベントを知ることができる。普段書店に足を運ばない人が訪れるきっかけになればと思う。将来的には他の業界のサイトとも連携することで、本好きでない人にも情報が届いてたまには行ってみようと思ってもらい、新たな顧客の開拓につながると良いと思う。このサイトを育てるためにはあらゆる書店イベントが載っていなければ意味がない。書店自身が入力する方式なので協力してもらい、広く公知することでお客様を集め、新たな顧客の開拓につなげてほしい。サイトを通じて他店のイベントを知ることで、自店のイベントを考えるきっかけにもなればと思う。
出版界には課題が山積しており、日々悩まされているが、新しい年が反転攻勢の年になるよう、皆様と力を合わせていきたい。

[京都ブックサミット盛大に/日本出版取次協会・近藤会長]
23年は雑協と協力して「年間発売日カレンダー」を作った。しっかり運用していきたい。また、出版文化産業振興財団(JPIC)の理事長として色々なことをやった。
書店議連関係では、図書館と複本についての話し合いがかなり進んだ。次のステージで図書館と書店の共存に行ければ良い。
「BOOKMEETSNEXT」はメインイベントの京都ブックサミットを中心に盛大に開催することができた。トーハンのPOSではイベントをした店としなかった店では1・4ポイントの差がついた。京都エリアは前年比100%の実績と結果が出た。来年は東京・神保町で開催する構想を持っている。
書店の廃業はとどまることを知らず、これを止めることができなかったのは忸怩たる思い。今まで通りの考え方では駄目だ。皆さんとともに頑張りたい。

「2024年問題対応で発売日など輸送スケジュール変更」取協・雑協、日書連理事会で趣旨説明/「法令遵守」は理解、不安の声も

日書連は12月14日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催し、来場33名、Web2名、書面16名、計51名が出席。日本雑誌協会(雑協)と日本出版取次協会(取協)の物流・輸送担当者らが来会し、「2024年度年間発売日カレンダー」について説明した。
雑協からは隅野叙雄物流委員長(集英社)、井上直次世代雑誌販売戦略会議議長(ダイヤモンド社)、取協からは田仲幹弘理事(トーハン)、中西淳一理事(日本出版販売)、茂呂俊明輸送研究委員長(トーハン)らが出席した。
雑協と取協は「物流2024年問題」を見据え、近畿と東北の一部地域で発売日を遅くしたり、完全土曜休配日を24年度は12日増やして37日とし、土曜休配日をすべて完全休配日とするなど、輸送スケジュールを変更した。
隅野氏は「働き方改革法の時間外労働の上限規制を遵守し、出版物の継続的かつ安定的な輸送を維持していくため、取協と折衝を重ね、日書連とも意見交換し、輸送会社へのヒアリングを行った。今回の輸送スケジュールの変更で、一部エリアの書店で発売日が遅れてしまうことを大変申し訳なく思っている。ただ、輸送会社も出版物を運ぶことへの情熱と矜持を持っており、最大限改善を図ってもらった最後の形が今回の年間発売日カレンダー」として理解を求めた。
田仲氏は「輸送会社に工夫してもらったり、取次の自助努力で引き渡しの方法を変えたりと、少しでも早くしようとかなり努力した。ただ法律を遵守しなければ輸送会社に迷惑をかけてしまう。ぎりぎりまで詰めた結果が今回のスケジュールであることを理解していただきたい。京都や兵庫では府県内で発売日が2つに分かれることになってしまい心苦しいが、今後も輸送会社とともに改善の努力を続けるので理解していただきたい」と述べた。
共配エリアで発売日が1日遅れる京都府書店商業組合の犬石吉洋理事長は「京都の場合、京都市の北にある亀岡市から1日遅れる。このスケジュールが発表されてから京都組合は2回理事会を開き、様々な意見が出たが、結論としては『納得はしにくいけれども、仕方がない』というところ」と組合加盟書店の複雑な心情を伝えた。また、「同一地区同時発売」の原則が崩壊することに懸念を示した。
同じく共配エリアで発売日が1日遅れる兵庫県書店商業組合の森忠延理事長は「遅れるエリアの理事からは恨み節が出ている。『出版社直販や富士山マガジンサービスはどうなるのか。これらが早く入るなら、書店の定期購読は遅い・高いで売れなくなる』『法律を遵守するためだから仕方がないとはいえ、書店の商売が成り立たなくなる方向に向かっている』と。出来れば出版社直販と富士山ネットワークサービスも1日遅くしてほしいと彼らは言っている」と訴えた。

日書連12月定例理事会/「心にのこる子どもの本セール」実施方法を大幅変更へ

日書連12月定例理事会の各委員会報告は次の通り。
[政策委員会]
▽特別積立金のうち2億円を20年物日本国債(第183回)で運用することを承認した。利率は1・4%。矢幡会長は「リスクが低く安定的に運用できる日本国債を選んだ」と説明した。
▽浜松市主催「第8回森林(もり)のまち童話大賞」公募事業の後援名義使用申請を承認した。「森林」をテーマにした童話の全国公募事業を通じて、子どもたちに木や森林の役割や大切さを伝え、浜名湖や天竜川など自然に恵まれた浜松市を全国に情報発信する。開催期間は24年5月1日(公募開始)~25年11月(大賞発表)。
▽文化通信社主催「本を買って当てようキャンペーン」の後援名義使用申請を承認した。同キャンペーンは、20年12月に開催した「ギフトブック・キャンペーン」以来、春の「こどものための100冊」キャンペーンの時期と合わせて毎年2回実施し、書店への来店促進と客単価上昇に貢献している。全国の書店で1000円以上購入して専用サイトで応募すると、抽選で20種以上の景品が贈られる。開催期間は23年12月15日~24年6月30日。
[組織委員会]
安永寛委員長は、全国45都道府県書店商業組合の加盟書店は、10月は加入なし・脱退20店舗で20店舗純減、11月は加入1店舗・脱退5店舗で4店舗純減だったと報告した。
[指導教育委員会]
森松正一委員長は、万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長を講師に研修会を開催する準備を進めていると報告した。
[広報委員会]
深田健治委員長は、書店経営者・従業員4人が持ち回りで執筆する連載コラム「春夏秋冬本屋です」の執筆陣の選定を行っていると報告した。24年4月~25年3月までの1年間、書店の仕事を通じて思ったことなどを綴ってもらう。
[流通改善委員会]
藤原直委員長は、取協と雑協が11月に発表した「24年度年間発売日カレンダー」の概要を説明した。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、雑誌付録問題について「雑誌と付録を一体化して一つの商品として送ってほしい。そうでなければ付録組みの作業の手数料を払ってほしいという意見もある。出版社は知恵を出して対応してほしい」と求めた。
[読書推進委員会]
▽「春の読者還元祭2024」の実施要項案を承認した。(詳細は2月1日号に掲載)
▽12月13日に開催された日書連と日本出版取次協会、日本児童図書出版協会の3者会議で、2024年の「心にのこる子どもの本新学期・夏休みセール」の実施概要が決まった。「心にのこる子どもの本セール」は日書連の主催、取協と児童出協の協賛で1976年から年2回行われている児童書の増売活動だが、今回から実施方法が大きく変わる。セット販売を中止、「絵本」(172点)、「読み物」(137点)、「教科書に出てくる本」(52点)のジャンル別リストの中から単品注文し、通常の流通に乗って店に着く仕組みとなる。展開期間は4月中旬~10月中旬。出品条件6ヵ月延勘。
春井宏之委員長は「心にのこる子どもの本セールとしての増売活動は曲がり角に来ている。児童書増売のあり方を総合的に見直したい」との考えを示した。
[書店再生委員会]
平井久朗委員長は、厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」の概要を説明し、有効活用してほしいと呼びかけた。
[図書館委員会]
髙島瑞雄委員長は、洋書データを日書連MARCに搭載する施策について報告し、24年4月から約500点の洋書データを読み取れるようにすることを目指すとした。

出版物小売公取協/新理事に林一郎氏

出版物小売業公正取引協議会は、12月14日開催の臨時総会で理事の補欠選挙を行い、新理事に林一郎氏(鳥取県鳥取市・鳥取今井書店)を選んだ。古泉淳夫理事(鳥取県鳥取市・鳥取今井書店)は退任した。

連載「春夏秋冬本屋です」~どの占い本が当たる?/大城洋太朗(沖縄・大城書店・代表取締役社長)

新年明けましておめでとうございます。元日早々痛々しいニュースが目に入り言葉を失いました。能登半島地震で被災された方には心よりお見舞い申し上げます。心配や不安で押し潰されそうになりますが今年は辰年、飛竜乗雲を期待して乗り越える事が出来ると信じております。
戦争や災害など国内外の情勢が今までになく不安定だからでしょうか、年末年始にかけて占い関係の本の問い合わせが例年より多く感じております。細木かおりさんの六星占術、ゲッターズ飯田さんの五星三心占い、高島歴などは根強い人気があり、昨年より人気が高まったシウマさんやラブミードゥーさんなどの著書も多く手に取って頂いております。また沖縄には独自の歴「沖縄琉球歴」が長年人気で、この時期のみならず年の折り返しを過ぎた8月頃になっても問い合わせがあります。
たまに「どの本が当たりますか?」などのお問い合わせを頂きますがこちらが知りたいです。ちなみに、とある本によると2024年私にモテ期が来るそうです。今年は甲の年であり物事を始めるには最適との事なので、モテ期に向けランニングでも始めようと思います。皆様に於かれましてもお客様と縁にモテまくり良い1年となるようお祈り申し上げます。

聖教新聞社「書店向け説明会」/「WORLDSEIKYOVOL.4」発売/ロベルト・バッジョさんのインタビュー掲載

聖教新聞社は12月14日、東京・新宿区の世界聖教会館で書店向け説明会を開催した。書店や販売会社、関係団体の代表などが集まる中、同社をはじめ、外郭出版社の潮出版社、第三文明社、鳳書院が企画説明を行った。
聖教新聞社の石橋正至出版局長からは、2014年1月18日に発売する『WORLD SEIKYO(ワールド セイキョウ)VOL・4』について説明があった。スペシャルインタビューには元サッカー選手でイタリア代表メンバーだったロベルト・バッジョさんが登場。ミラノで池田大作名誉会長から受けたはげましや、現役を退いた後の人道・平和活動などのエピソードが語られている。また、「人生の羅針盤」には2000年2月の聖教新聞に掲載された池田名誉会長のエッセイ「雪柳 光の王冠」(抜粋)を収録。その他、「国籍は“SEKAI”」「信仰体験『ストーリーズ』」「識者インタビュー」「教えて!SDGs」など盛りだくさんな内容となっている。オールカラー36ページ、A4判変型、税込250円。
あわせて11月16日に発売した新刊2点についても紹介した。『創価学会教学要綱』(A5判・上製、定価2800円)は池田名誉会長の監修によるもので、創価学会の教義を広く社会に対して客観的に説明することに力点を置いている。2013年11月に広宣流布大誓堂が完成して以来、創価学会会則の「教義条項」改正、創価学会「勤行要典」の制定、創価学会会憲の制定、『日蓮大聖人御書全集新版』の刊行(2021年)、創価学会社会憲章の制定など、世界教団としての歩みを進めてきた創価学会の宗教的独自性を示す内容となっている。また『広布共戦の師弟旅』(池田大作/著、B6判・並製、定価730円)は、「大白蓮華」に連載の「世界を照らす太陽の仏法」講義の中から一部を加筆し、収録している。
書店を代表してあいさつした日書連の矢幡秀治会長は冒頭、池田名誉会長の訃報に哀悼の意を表した。そして「今回、2024年の『世界青年学会開幕の年』を迎えるにあたり前向きな発信をされたことは書店として非常に勇気づけられる。来年も本日紹介された書籍をはじめとして引き続き売り伸ばしに取組み、一体となって良書普及を推進していきたい」と決意を示した。
会の最後には、聖教新聞社の萩本直樹代表理事が登壇。池田名誉会長の執筆活動を「まさに命を賭した」ものと振り返り、「名誉会長のご遺訓ご指導を胸に、今後も出版業界に貢献できるよう尽力してまいりたい」とあいさつした。
外郭出版社3社の企画は以下の通り。
[潮出版社]
池田大作『忘れ得ぬ旅 太陽の心で 第7巻』、パンプキン編集部・編『データで学ぶ「新・人間革命」Vol・7』、潮編集部・編『創価大学駅伝部 獅子奮迅2024』、聖教新聞報道局・編『「生きづらさ」を抱えたあなたへ』、「池田大作とその時代」編纂委員会『民衆こそ王者 池田大作とその時代18 「地区講義の光篇」』、『文化手帖2024』、『白ゆり家計簿2024』、『USHIO Diary 2024』
[第三文明社]
聖教新聞社・編『日めくり 御書と未来へ 池田先生が贈る指針』、井上聡『SDGsな仕事 「THEINOUE BROTHERS…の軌跡」』、佐藤優『希望の源泉・池田思想6 「法華経の知慧」を読む』
[鳳書院]
水谷修『もうすぐ死に逝く私から いまを生きる君たちへ―夜回り先生 いのちの講演』、傅益瑶『水墨の詩』、鳳書院・編『名字の言書き写しノート』

東京組合「書店経営研修会」を開催/キャッシュレス決済の動向学ぶ

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は11月24日、東京・千代田区の書店会館で令和5年度書店経営研修会を開催、一般社団法人キャッシュレス推進協議会事務局長・常務理事の福田好郎氏を講師に招いて「キャッシュレス決済のこれからの動向について」と題した講演を行った。
同協議会は、2018年に経済産業省が「2025年までにキャッシュレス(以下、CL)決済比率40%達成」を掲げ、産官学が連携した中立的な推進母体の設立を推奨したことを受けて同年7月に設けられたもので、業界横断で早期のCL社会を実現することを目的としている。
日本がCLを普及推進している理由について、福田氏は現金決済に係るインフラコスト(推計で年間2・8兆円)の削減、少子高齢化による労働力不足対応などの既存の課題を解決し、データの連携・利活用など新たな未来を創造する行動変容を喚起することができるためと説明し、現行のCL決済の仕組みには多くのインフラコストが必要になるなどの課題も残っており、官民双方による改善が必要と述べた。
また、具体的な事例として、同協議会が2021年に実施した中小企業対象の加盟店アンケート結果を示し、CL決済導入時には売上増や新規顧客開拓などの効果を期待していたものの、導入後は特に効果やメリットを感じていないと回答した店舗が半数近く(小売業では43%)を占めていたが、メリットを感じていない店の多くはそもそもCL決済の利用自体が少ない状況にあり(全体の2割程度)、CL単体だけでなくセルフレジやモバイルオーダーなど連動した周辺サービスを導入している店舗では、売上増加に結び付くメリットが得られたとの回答が6割だったと解説した。
福田氏は、CL決済のビジネス構造は利害関係者が多く、決済事業者の利益は薄いため、今後淘汰されていくとの見通しを示し、日本は店舗の利用手数料について上限規制がなく、他国と比べて高額なのが現状だが、決済事業者が収れんしていくことにより、規模の経済が働いて手数料が下がるかも知れないと指摘。CL決済比率が上昇した場合も同様の可能性があるが、ここ5年、10年の間で劇的に変化することは考えにくいとの見解を示した。

2024年「わが社のイチオシ企画」

[双葉社/奥山秀(営業局次長)]
明けましておめでとうございます。
旧年中は格別なるご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
昨年は単行本では“三笘の1ミリ”で一世を風靡したサッカー日本代表・三笘薫著『VISION 夢を叶える逆算思考』や、知念実希人の新境地『ヨモツイクサ』、月村了衛『半暮刻』など、ヒット作・話題作を出すことが出来ました。
本年も、昨年書店様にたくさんご販売いただいた文庫『まずはこれ食べて』の著者・原田ひ香の新刊や、弊社初刊行の薬丸岳の長編小説などを刊行予定です。
また本年は何といっても双葉文庫が【創刊40周年】を迎えます! 1月9日より特設サイトがオープン予定ですが、作品としては2021年本屋大賞で第3位の伊吹有喜『犬がいた季節』、津村記久子『つまらない住宅地のすべての家』など、強力な新刊に加え、クレヨンしんちゃんとコラボしたフェアや、かつての名作文庫復刊企画など、企画盛りだくさんで売り場を盛り上げます。ぜひご注目ください!!
そして2024年、双葉社が満を持して刊行開始するのが、小学生低学年向け『クレヨンしんちゃんドリル』です!! 2月中旬刊行予定でまずは5点で創刊!【まんがだから、楽しく学べる】をキャッチフレーズに『小学1年生かん字』『小学1年生たしざん・ひきざん』『小学2年生かん字』『小学2年生たし算・ひき算』『小学2年生かけ算』というラインナップです。専用什器やお試し小冊子も作製、テレビアニメ放送内でのプレゼントパブリシティも実施予定です。7月には続巻も刊行予定。ぜひ、貴店の学習参考書売り場で継続的なご展開をお願いいたします。
コミックスでは引き続き、ライトノベルをコミカライズした【モンスターコミックス】とその女性向けレーベル【モンスターコミックf(エフ)】が好調です。この1月から、シリーズ累計190万部突破の超人気タイトル『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』のテレビアニメがスタート! 以降も続々とアニメ化が進行中です。ぜひ既刊のケアと棚での品揃えをご検討ください。
本年も何卒、倍旧のご支援お力添えをよろしくお願いいたします。

[河出書房新社/鎌塚亮(営業第三部第一課)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。
昨年は、西加奈子『くもをさがす』が「書店員が選ぶノンフィクション大賞 オールタイムベスト2023」大賞を受賞、また「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR2023」ノンフィクション部門第1位に選ばれるなど、数々の賞に輝きました。おかげさまで29万部を突破し、大きな反響を頂いております。
これもひとえに、書店の皆様のあたたかい応援と、多大なるご協力の賜物と心より感謝しております。改めて御礼申し上げます。
さて、弊社では河出文庫・古典新訳コレクションを2023年10月より刊行を開始いたしました。なかでも角田光代訳『源氏物語』(全8巻刊行中)はNHK大河ドラマ「光る君」と共に話題になっており、「この角田訳ではじめて最後まで読めた!」と大変好評を博しています。
3月には、ビル・ゲイツが絶賛する著者・バーツラフ・シュミル『Invention and Innovation(仮)』を刊行します。徹底的にファクトベースで技術・エネルギー問題を研究してきたことで知られる著者が、近現代の発明のなかから重要な「失敗例」をとりあげ、発明の成功と失敗の本質を明らかにする一冊です。
また秋頃には、コロナ禍から世界を救ったmRNAワクチン開発の基礎となる技術を確立し、2023年ノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ氏待望の著作『ブレイクスルー科学者カタリン・カリコ自伝』を刊行します。
さらに、ベストセラー『あの夏が飽和する。』など自身の大ヒット曲を小説として書き下ろし、十代から圧倒的な支持を集めるアーティスト、カンザキイオリによる最新小説『自由に捕らわれる。』も年内刊行予定です。
本年も精力的に出版活動に邁進していく所存です。弊社の刊行物にどうぞご期待ください。何卒皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。

「しぞ~か本の日!書店大商談会」「静岡書店大賞授賞式」/103社出展、書店140人来場~4年ぶりリアル開催、盛況に/静岡書店大賞は宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)

第5回「しぞ~か本の日!書店大商談会」、第11回「静岡書店大賞」の授賞式、懇親会が12月5日、静岡県駿河区のホテルグランヒルズ静岡で開催された。リアル開催は4年ぶり。
第一部の大商談会は出版社103社(160人)が出展し、書店140人、図書館員20人が来場した。クリスマスと年末年始の商戦に向け、各出版社がさまざまな商材を提供した。
県内の書店員と図書館員が最も読んでもらいたい本を投票で選ぶ静岡書店大賞の授賞式では、「小説部門」の大賞、宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)をはじめ6作品を表彰した。
今回は書店員434人、図書館員171人が投票し、2022年9月~23年8月の1年間に発行された書籍から計6作品を選んだ。なお、受賞作品を特集したフェアを県内書店と県内図書館で開催中。
受賞作品は次の通り。
[小説部門]
宮島未奈(富士宮市出身)『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)
[児童書新作部門]
1位=田中達也『おすしがふくをかいにきた』(白泉社)、2位=ヨシタケシンスケ『メメンとモリ』(KADOKAWA)、3位=柴田ケイコ『パンダのおさじとフライパンダ』(ポプラ社)
[児童書名作部門]
いわむらかずお『14ひきのあさごはん』(童心社)
[映像化したい文庫部門]
榛名丼(静岡市出身)『レプリカだって恋をする』(KADOKAWA)
(佐塚慎己広報委員)

東京トーハン会「クロスミーティング」開催/川上副社長「書店に寄り添い続ける」

第15回東京トーハン会が11月29日、東京・新宿区のトーハン本社で開催され、会員書店による総会の後、出版社を交えてクロスミーティング、懇親会を行った。
クロスミーティングでは川上浩明副社長が同社の施策を説明。中期経営計画「REBORN」は「ドイツの書籍出版流通をベンチマークに読者・書店起点の新しい流通を構築することを目指してきた」と述べ、同計画4年間の成果としてマーケットイン志向の新刊流通プラットフォーム「enCONTACT」やメディアドゥとの業務提携によるリアル×デジタルの取り組みに触れた。
出版業界の動向として、輸配送については「2024年問題」「日販CVS取引撤退」、新しい流通の形を巡っては「ブックセラーズ&カンパニー」や「PubteX」の動きに言及。「業界の地殻変動が進む中、トーハンは未来に向けて次のアクションをとる」として、川口雑誌センター、桶川投資計画、取次事業取引正常化、ネットワークインフラ(新生TONETSV)開発について説明した。
そして、「トーハンへの期待・信頼に応え、全国の書店に寄り添い続ける」と述べ、協力を呼びかけた。
続いて小崎修首都圏支社長が全社施策、青木鉄郎仕入統括部マネージャーが「enCONTACT」、藤井貞治東京支店長がエリア独自施策を説明した。

11月期販売額は5.4%減/書籍、雑誌ともに回復ならず

出版科学研究所調べの11月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比5・4%減だった。
内訳は、書籍が同2・9%減、雑誌が同8・5%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同9・2%減、週刊誌が同4・2%減。9月期、10月期と小幅ながらもプラスだったのが、一転してマイナスに転じた。コミックスは発行部数では前年同月に比べ約20%減。話題作・ヒット作はあるが部数規模は減少している。
書店店頭の売れ行きは、書籍が約1%減と比較的健闘。文芸は約14%増、文庫は約3%減、ビジネスは約3%増、学参は約5%増、児童は約4%減。黒柳徹子『続窓ぎわのトットちゃん』(講談社)がアニメ公開もあり好調。凪良ゆう『星を編む』(講談社)などがよく売れた。児童書は鈴木のりたけ『大ピンチずかん2』(小学館)が牽引。
雑誌は定期誌が約7%減、ムックが約8%減、雑誌扱いコミックスが約10%減。コミックスは『ONEPIECE』『僕のヒーローアカデミア』など集英社が上位を占め、『キングダム』は同社青年マンガ史上初の累計発行部数1億部(電子版含む)を突破した。

連載「本屋のあとがき」~「金沢在住お客様の言葉」/宇田川拓也(ときわ書房本店・文芸書・文庫担当)

新年あけまして――、このあとの言葉を続けるのがためらわれる、なんとも波乱の幕開けとなってしまった2024年。やはり2011年3月11日の東日本大震災を思い出さずにはいられない。
午後便の開梱と陳列を終えて間もなくのこと。ふいに襲われた軽いめまいが、そうではなく大きな揺れによるものだと理解した目の前で、平台に積み上げたばかりの書籍が、まるで砂山のごとく崩れ落ち、床を埋めていった様子。店の外へ誘導したお客様と見た、駅前のビルがゆらりゆらりとしなりながら揺れる信じがたい光景は、いまでもはっきりと憶えている。
先日、以前に某作家氏のサイン入り書籍をお求めいただき、発送したことのある金沢在住のお客様からご連絡をいただいた。ご本人は被害を免れたものの、ご親族が大変な状況に置かれているそうで、ご無事を祈らずにはいられないが、あわせてご報告くださったのが前述のサイン入り書籍に関して。X(旧ツイッター)でこのたびの震災に触れた某作家氏に、当店でのサイン入り書籍のお求めを含めた内容をリプライしたところ、引用の形で取り上げてくださったのだという。
常々、著者と読者の距離を縮められるような本屋でありたいと思っているので、当店のご利用がそのきっかけとなれたなら、こんなにうれしいことはない。
こうしたご縁と繋がりに感謝しつつ、この苦難を皆で協力しながら乗り越えていきます。そう締め括られたお客様のお言葉に、目頭が熱くなった。