全国書店新聞
             

平成14年5月10日号(前)

出版業界春の叙勲

4月29日に発表された春の叙勲で、出版業界からは元日書連理事・栃木県書店商業組合理事長の森實氏が勲4等瑞宝章を授章した。
黄綬褒章は次の3氏。
▽武山義一(島根県・武田書店)、▽武田五郎(新潟県・玉川書店)、▽田所幸男(茨城県・忠愛堂田所書店)

昨年5割増の売上げ

子どもの読書推進会議と出版文化産業振興財団(JPIC)の協賛により5月3日、4日、5日の3日間開かれた「上野の森親子フェスタ」は好天にも恵まれ、多くの親子連れが訪れた。
中央噴水池広場で行われた絵本・児童書の即売では、昨年を5割上回る1500万円の売り上げがあった。
上野恩賜公園はゴールデンウイーク中、1日10万人が来園する春の行楽スポット。
「上野の森親子フェスタ」は、メイン会場の中央噴水池広場に出版社34社がテントを並べ、絵本・児童書2万5千冊を「チャリティ・ブック・フェスティバル」として定価の2割引で販売した。
3日間の売上合計は1528万円で、昨年の売り上げ1004万円の5割増。
売り上げベスト3は講談社152万円、福音館123万円、ポプラ社111万円。
収益金は読書推進運動に寄与する運動、団体に寄付される。
会場正面には講談社の「全国訪問おはなし隊」のキャラバンカーが訪れ、絵本の読み聞かせや紙芝居が行われた。
作家の志茂田景樹氏もフルート奏者の伴奏付きで飛び入りの読み聞かせ。
ノンタン、アンパンマンの着ぐるみも子どもたちの人気を集めた。
これ以外の催しでは、3日に旧東京音楽学校奏楽堂で「親子に贈るおはなしと音楽の世界」(声優・小原乃梨子さん他)、東京都美術館講堂では4日に「おはなしの世界であそぼう!」(絵本作家・とよたかずひこ氏)、5日に「読み聞かせ&トークショー」(児童文学作家・きむらゆういち氏他)が行われた。
いずれも定員を大幅に上回る申し込みがあり、講演とトーク、音楽の演奏を楽しんだ。
この催しは2000年の「子ども読書年」に「上野の森子どもフェスタ」としてスタートしたもので、昨年から「親子フェスタ」として展開している。
最終日の5日には、昨年部分開館していた「国際子ども図書館」が全面開館、隣接する上野動物園の開園120周年とあわせて、多くの人出があった。

懸賞応募2割増える

「春の書店くじ」と「雑誌社協賛による共同懸賞」の合同抽選会が、9日午後5時半から日本出版クラブ開館で開かれた。
開会にあたり日書連萬田会長は「5月の連休は近場で過ごす人が多く、書店の販売に結び付いた。
上野の森フェスタも売上が好調だったと聞いている。
読者にとって春の書店くじと、共同懸賞は2つの楽しみ。
抽選会で読者の夢をかなえる当選番号を決めてほしい」と主催者あいさつ。
経過報告を行った船坂増売委員長は「雑誌共同懸賞は56社135誌で告知。
ハガキ1万608通、インターネット2万7752通、合計で前年より6千通多い3万8360通の応募があった。
書店くじは昨年から当選本数を増やして新たな展開を始めた」と説明した。
このあと、雑誌共同懸賞から抽選会に入り、森川美穂さんと萬田会長でA賞、B賞を10名ずつ選んだ。
春の書店くじは前田完治(三修社)、小峰紀雄(小峰書店)、亀川正猷(栗田)、国弘晴睦(太洋社)の4氏がボウガンの射手になり、4等から1等までの当選番号を決めていった(当選番号は21日号に掲載)。
雑誌共同懸賞当選者A賞(全国共通図書カード1万円)=神戸市・草壁亜紀子さん他199名B賞(同千円)=埼玉県・神保知世さん他799名

「言論表現の自由の危機」人権擁護法・個人情報保護法

書協、雑協は4月25日付で、「人権擁護法案」「個人情報保護法案」の国会審議入りにあたって両法案に断固反対する旨の共同談話を発表した。
共同談話では、これまで両法案の廃案または抜本的修正を求めてきたが、意見が全く取り入れられないまま審議入りしていると批判。
言論・表現の自由にとり深刻な危機であるとして両法案に断固反対を表明し、慎重な論議で禍根を残さない選択が行われるよう求めている。
また人権擁護、個人情報の重要性を十分認識し、人権侵害の救済に適切に対処するとしている。
共同談話「人権擁護法案」が咋24日参議院において、「個人情報保護法案」が本日衆議院において、それぞれ審議入りとなった。
これら二法案は国会上程が取り沙汰されている「青少年有害社会環境対策基本法案」と合わせてメディア規制三法として、われわれが政府および関係者に対してこれまで度々懸念を表明し、廃案あるいは抜本的修正を求めてきたところである。
しかるに、この度審議入りする二法案はわれわれの意見が全く組み入れられないままの法案となっている。
新聞・放送界をはじめ文芸家の団体・日本ペンクラブ等、広範な読者がこぞってこれらの法案に反対を表明してきている。
その所以は、先の大戦の惨禍の後に築きあげてきた平和と民主社会の基盤をなす言論表現の自由にとって極めて深刻な危機と断じざるを得ない。
今、わが国は憲法で保障される「表現の自由」に政府が介入する道を選ぶか否かの重大な岐路に直面している。
具体的な問題点については、繰り返し指摘してきたが、われわれは、歴史に悔いを残すことが明らかな政府提案の「人権擁護法案」「個人情報保護法案」に断固反対である。
国会に上程された以上、慎重が上にも慎重に議論を尽くし、未来に禍根を残さない選択がなされるよう強く念願する。
なお、われわれは出版に携わる者として、人権擁護や個人情報保護の重要性については十分認識し、社会の変化に応じ真剣に対応して人権侵害の救済には適切に対処し、自浄・自律をもって今後一層努力する所存である。

生活実用書・注目的新刊

料理をほとんど作ったことのない女性が増えているが、どっこい男性だって未だにガス一つ点けたこともないという人が多いのも事実である。
森田義一著『男の手抜き料理-台所から人を変える本』(編集工房あゆい発行・街とくらし社発売1500円)は、そういうマナ板のない家庭もある日本の現実を嘆く。
著者は昭和9年生まれ。
テレビのプロデューサーだった。
男女差別をたたきこまれた世代ながら、結婚した時から共働き。
炊事、洗濯、掃除の三大家事労働のどれを選ぶか迷い、消去法で炊事が残った。
最初は分量を正確に計っていたが、ついに外食の味に及ばない。
つまり食物はすべて「生命をいただいている」のだから、生かすには天候や時間によって「塩梅」が変わるはずだと思いつくのである。
手抜きカレー、屋台風串カツから、鴨のオレンジソース煮など料理はバラエティに富んでいるものの、紹介されるレシピに細かい分量は記されていない。
鯛一匹をさばいてもみせるのだが、「アラは熱湯にサッとくぐらせて酒と塩で味をつける」と、解説はいたって大ざっぱ。
しかし、縁日の屋台、食堂車の思い出などのエッセイが、過ぎてしまった豊かな時代を描いて味わい深い。
コンビニやレトルト食品をはじめ便利にはなったが、昔からの日本は何処へ行ったのだろうと著者は思う。
男子60歳にして厨房に入るべしと勧めている。
盛川宏著『海釣りの悦楽』(日本放送出版協会生活人新書26680円)は、モリサンと呼ばれ親しまれている釣人のエッセイ。
永年、スポーツ紙の釣り紙面を作ってきた。
『男の手抜き料理』の森田氏と、ほぼ同世代。
コマセ釣り万能になったが今も各地に残る伝統的な漁法がある。
魚の皮を針につけたサビキ仕掛けでイサキを狙う「ジャンジャラ釣り」、カンパチの「カッタクリ」、鯛の食い気を誘った「しゃくり釣り」など珍しい釣りがある。
そして漁師料理。
代表は「水なます」で、釣りたての鯵をエラだけ取ってトントンと細かくし、味噌を加えて氷水に放りこむ。
釣人たるもの、醤油大さじ何杯なんていうのはなく「自分の舌の好みで料理に励むこと」と言っている。
マニュアル流行に従わない真の料理法がここにある。
(遊友出版斎藤一郎)

『こども文学館』の販売研究会開く

長野県書店商業組合(赤羽好三理事長)は4月19日から20日にかけて、県下を一周して長野県組合推薦図書『信州・こども文学館』(全12巻・7月に郷土出版社より発刊)の販売研究会を開催。
北信・東信・中信・南信で総勢60余名が出席した。
研究会で郷土出版社の神津良子代表は「未来を築く子どものために、心豊かな感動を与える文学、絶版等で見ることができなくなった名作の数々を網羅し、後世に残る文学全集としたい」とあいさつした。
編集委員の児童文学作家・はまみつを先生は、「読書によって愛情の深い、温かい心の持ち主になってほしい」と力説。
「『信州・こども文学館』は、信州に縁のある作家、児童文学作家を収めた。
島崎藤村、島木赤彦、椋鳩十等など、信州が育んだ名作ばかりだ。
児童文学は親から子へ、子から孫へと読みつながれていくものだと思う。
0歳から100歳までの文学だ」と語った。
また、はまみつを先生自身の著作で掲載作品の『しょうがの手』(リューマチのためショウガのように曲がってしまった母の手を恥じつつ、一方で愛しさと哀惜に駆られる少年の物語)が朗読され、胸に迫る感動を与えた。
(高嶋雄一広報委員)

北から南から

◇愛知県書店商業組合第19回通常総会5月16日(木)午後2時から池下の愛知厚生年金会館で開催。
ポプラ社坂井宏先社長の記念講演会「こどもとこどもの本を考える」を行う。
◇東京都書店商業組合第26回通常総代会5月17日(金)午後1時半から九段のホテルグランドパレスで開催。
終了後、永年勤続従業員、組合功労者の表彰式と懇親会。
◇大阪府書店商業組合第20回通常総代会5月18日(土)午後1時半から西区の大阪厚生年金会館で開催。
午後5時半から優良従業員、優良家族従業員表彰式と懇親会。
◇埼玉県書店商業組合第18回通常総会5月25日(土)午後2時から北浦和の埼玉書籍会議室で開催。
総会終了後に懇親会。
◇福島県書店商業組合第18回通常総会5月28日(火)午後1時半から、いわき市の小名浜スプリングスホテルで開催。
終了後、書店永年勤続者表彰式、出版社新企画発表会、懇親会を開催する。
◇京都府書店商業組合第18回通常総代会5月28日(火)午後2時から京都ホテルオークラで開催。
午後5時から懇親会。
◇北海道書店商業組合第26回通常総会6月18日(火)午後2時から札幌センチュリーロイヤルホテルで開催。
午後6時から業界懇親会を開く。

本屋のうちそと

先日の朝日新聞に、新刊ベストセラーを大量に貸し出す公立図書館は「無料貸本屋」なのか、という記事が掲載された。
日本ペンクラブの主要図書館アンケートによると『ハリー・ポッター』や『模倣犯』などのベストセラーが、1館で10冊所蔵する図書館があり、すでに20回転し、2百人以上が予約待ちという。
単純化すると、1冊の本が40人で回し読みされ、書店の売れ損じは39冊、著者の印税は40分の1という計算になる。
人気の本は催促されるので図書館優先になるが、そのことが店の売上に影響を及ぼす図式である。
「図書館法」が成立したのは今からおよそ52年前。
図書館は「いかなる対価も徴収してはならない」と定められ、税金で運営される相互扶助的な図書、資料、情報を利用者に提供する公共的サービス機関と位置付けられている。
そこには本の供給者たる出版業界への配慮は見当たらない。
図書館があることで読書習慣がつき本屋も潤うという淡い期待が持てたのは昔語りだ。
図書館に納入しているある本屋が、新古書店から購入した本の伝票肩代わりを頼まれるという話があった。
「配慮」どころか出版の再生産を危うくする悪質な「無料貸本屋」そのものではないか。
図書館は「無料ビデオレンタル屋」でもあるが、AV業界は著作権に厳しく、同じ作品でも図書館用の商品は数倍の価格で納入されている。
再販制度で守られている定価販売が、逆に出版文化の発展を疎外している例だろう。
(どんこ水)

出版ダイジェスト児童書特集を発行

出版梓会は「子ども読書の日」記念として、『出版ダイジェスト絵本・児童書特集』(タブロイド判8頁)をカラー版で3万部発行した。
連合企画によるカラー版発行は初めて。
1面は名古屋の児童書専門店、メルヘンハウスの三輪哲氏が「子どもと本と大人」を寄稿。
2面から7面はあかね書房、金の星社、農文協、西村書店、原書房、冨山房の各社が一押しの児童書を紹介している。
公共図書館、小学校などに配布されたが、残部があり、希望書店に無料配布する。
農文協までFAX(03-3589-1387)で申し込みを。

家の光読書エッセイ

社団法人家の光協会は「2001年家の光読書エッセイ」の入選作品9点を収録した作品集(B6判・64頁)を刊行した。
今年度から募集対象を農村以外にも広げた結果、全国から1323点の応募があり、「家の光読書エッセイ賞」に松戸市立第6中学校2年・佐藤克洋君の「母と本」、諫早市の主婦・深川文さん「母の本棚」の2作が選ばれた。
日書連は同エッセイ賞の後援団体に名を連ねている。

70年代テーマに復刊

岩波書店、紀伊國屋書店、勁草書房、東京大学出版会、白水社、法政大学出版局、みすず書房、未来社の8社は、読者のリクエストをもとに復刊する「書物復権」第6弾を6月上旬に協力書店で発売する。
今回は「20世紀の秋-70年代の豊かな果実」をテーマに、ハガキによるリクエスト約300と、インターネットによる投票100に基づいて『言語・知覚・世界』(岩波書店)、『歴史の観念』(紀伊國屋書店)、『詳伝シモーヌ・ヴェイユ』(勁草書房)など42点を復刊した。
展示図書には「書物復権」の統一帯が付く。

店長セミナーを開催

日本書店大学は6月3日午前10時50分から日本出版クラブ会館で「店長パワーアップセミナー」を開催する。
プログラムは第1講「われ以外、皆お客様/強い店づくりのために」(うさぎや・内山貞男氏)、第2講「他業界に学ぶ/店の活気は朝礼から」(セイミヤ店舗運営部・宮崎真理子氏)、第3講「パート・アルバイトの活用/ひと手間かけて生産性を高める」(グラン・ゲイト・安田智子氏)、第4講「勝ち残る書店の条件」(日本書店大学学長・田辺聰氏)。
参加費は昼食・コーヒー付で1名2万円。
申し込みは日本書店大学まで。
■076-221-7157、FAX076-222-9262。

人事

◇平成14年度取協役員会長=金田万寿人(トーハン)常務理事=菅徹夫(日販)、鈴木一郎(大阪屋)、亀川正猷(栗田)、秋山秀俊(中央社)、大藤耕治(日教販)、国弘晴睦(太洋社)、雨谷正巳(協和)理事=風間賢一郎(トーハン)、橋昌利(日販)、茂手木一二三(鉄道弘済会)、吉見寿一(東邦書籍)監事=佐藤千晴(日本雑誌販売)、山本和夫(公認会計士)

移転

◇徳間書店業務拡充、効率化のため5月7日から左記に移転する。
新住所=東京都港区芝大門2-2-1■代表03-5403-4300営業局雑誌販売部5403-4322、FAX5403-4327同書籍販売部5403-4323、FAX5403-4327

鶴岡市の資金援助受け

山形県書店商業組合鶴岡支部は、鶴岡市の公的支援を受けて、このたび半年がかりでホームページ「鶴岡書店組合」を開設した。
鶴岡地域は直木賞作家・藤沢周平、佐藤賢一、芥川賞作家・丸谷才一、奥泉光をはじめ、明治の文豪、高山樗牛、田沢稲舟を生んだ文化風土の香り高い地区。
その他、当地にゆかりの作家も数多く、書店業を営むわれわれの誇りでもある。
鶴岡支部のホームページは、新着情報、書籍検索、組合書店の住所、電話、地図の紹介はもとより、郷土出版物の案内や「藤沢周平文学ゆかりの地図/海坂藩・本所深川マップ」も見られ、藤沢周平の作品世界を映像化しているのが特徴。
また、掲示板を設けて読者の作品や読書感想を募集しているほか、山形県書店商業組合の「BOOK・Web」にもリンクし、アクセスできるようになっている。
鶴岡支部では、このホームページのアドレスを名刺版に印刷し、公共図書館で配布してPRにつとめている。
このホームページのアドレスは、http://www.shonaicity.ne.jp/tbook-web(佐藤一雄広報委員)

日書連の動き(4月)

4月2日公正競争規約問題で影山専務、白幡局長で公取委寺川課長を訪問。
4月3日正副会長会議開催。
4月9日経産省による万引調査打合会へ鈴木副会長ほか出席。
4月10日中間法人日本出版データセンター創立理事会へ井門副会長出席。
情報化推進打合会。
書協SCM委員会へ大川局長出席。
4月12日総会対策で正副会長、各種委員長会議開催。
雑誌協会・雑誌公取協総会祝賀会へ萬田会長ほか出席。
4月15日全出版人大会役員会へ白幡専務。
TIBF実行委員会へ鈴木副会長ほか出席。
4月16日雑誌発売日本部・同実行合同委員会開催。
九州雑誌センター取締役会へ萬田会長ほか出席。
4月17日出店問題、指導教育、増売、読書推進、組織強化、共同購買、福利厚生、共済会運営、流通改善、経営・取引、雑誌発売日、情報化推進各種委員会開催。
読進協常務理事会へ萬田会長出席。
4月18日TIBF開会式典へ萬田会長出席。
日書連定例理事会、公取協、共済会理事会開催。
4月23日雑誌荷傷み配本問題で雑協・取協三者会談へ下向委員長ほか出席。
4月24日情報化推進委員会開催。
分野協常任理事会へ丸岡常任出席。
4月26日日書連会計監査会へ野沢、三上監事。
4月30日学校図書館整備推進会議へ大川局長。