全国書店新聞
             

令和2年11月15日号

書店へ万引防止の啓発活動推進/矢幡本部長「利益を保全し、安心な購入環境を提供」/出版万防総会

出版業界6団体1企業で構成する「万引防止出版対策本部」(出版万防)の第4回総会が10月8日にリモート会議で行われ、矢幡秀治本部長(日書連会長)はじめ本部役員、賛助会員、事務局委員が出席した。矢幡本部長は冒頭のあいさつで、「書店への啓発活動で万引を減少させ、利益の流出を食い止めるとともに、お客様に安心、安全な購入環境を提供するという書店の責務を果たしていく」と万引防止に取り組む決意を述べた。
出版万防は全国万引犯罪防止機構(万防機構)の下に2017年9月に設立。正会員は日書連、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本出版インフラセンター、日本医書出版協会、日本図書普及。賛助会員としてブックオフコーポレーション、出版文化産業振興財団が参画している。
総会の冒頭であいさつした矢幡本部長は、「当本部の3年間の取り組みは、万引防止に資する様々な手法を開発し、それぞれ成果を出しつつある。当本部から書店に向けて啓発活動を行い万引を減らしていくことを基本と考えている。利益の流失を食い止め、お客様に安心、安全な購入環境を提供するという書店の責務を果たしていきたい」と万引防止への決意を示した。
続いて矢幡本部長を議長に選出して議事を進行し、3年目の活動報告と決算報告、4年目の活動計画と予算計画をそれぞれ承認可決した。
3年目は主な活動として、①日書連と協働し初の全国統一書店用万引防止ポスターを企画、②盗品のインターネット出品監視体制の研究と試行、③万引防止研修用ビデオを期間限定でYouTubeに無料公開し、同DVDを販売、④被害届受理迅速化のための書き方を研究し手引を作成、⑤ある書店で発生した万引事案に関し万引犯に対する損害賠償請求を実施、⑥新古書店との連携の嚆矢としてブックオフの万引防止ポスターに名義協力――の6つを行った。
この他、渋谷書店万引対策共同プロジェクトを継続実施するとともに、買い物袋有料化に伴う万引被害急増の声を受け、万防機構と協力してマイバッグ使用マナー啓発ポスターを緊急制作した。
4年目の活動計画は、引き続き前期の課題に取り組むとともに、①「書店の外的環境への対応」と②「書店の内的環境に対する働きかけ」を2本柱として展開する。
①は、常習犯による大きな万引被害が発生する要因となっている転売を防止するため、不正品を出品させない・買い取らない仕組みづくりに向けた活動を展開。1.インターネット事業者との協働、2.新古書部会の創設、3.万引被害実態調査の実施、4.ICタグ等個体識別方法の研究――の4つに取り組む。
②は、書店が自店で万引防止に取り組めることへの支援施策の展開を進める。具体的には、1.研修支援対応、2.ポスター等万引防止ツールの提供、3.渋谷プロジェクトの成果の水平展開、4.地元警察関係、万引防止協議会等との地域的連携体制構築のための資料提供、5.万引犯に対する損害賠償請求の実施支援――の5つを推進する。
閉会のあいさつで相賀昌宏副本部長(小学館)は、「盗品の転売問題は新古書店の買取部門、ネットオークション、ネットフリマ、ネット通販のインターネット事業者との連携がないと解決しない。商品の同一性を証明する仕組みが可能なこともいろいろ見ている。あきらめずに追及してほしい」と述べた。

土曜休配日は32日間/21年度「年間発売日カレンダー」

日本出版取次協会と日本雑誌協会は10月30日、2021年度「年間発売日カレンダー」を発表した。
土曜休配日は年間32日。オリンピック、パラリンピック期間の土曜日6日間は首都圏の交通事情を考慮し、これに含めた。平日休配日は設定しない。
21年度は、出版物の業量の減少、運送会社を取り巻く環境問題等の現状を踏まえ、①運送会社の「労働時間等の法令遵守」「働き方改革の推進」、②業量の平準化を最大限考慮に入れ協議を重ねたという。また、今後も「週稼働5日以内」という目標の早期実現を目指し両団体で継続的に協議を続けることを確認した。
なお、20年度の休配日は土曜休配日22日、平日休配日3日の年間25日を設定したが、新型コロナウイルスの影響で土曜休配日を6月に2日追加設定し、休配日は27日となっている。

日書連12月理事会書面議決で開催

12月17日に開催を予定していた日書連定例理事会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から書面で行います。提案議案は定款第53条4項にある通り、理事全員が同意の意思表示をした場合に決議があったものとみなします。
また、同16日に予定していた各種委員会は中止します。

都内3百校への図書納品を完了/日教弘東京支部から受託/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は、日本教育公務員弘済会(日教弘)東京支部より受託した、都内公立学校・幼稚園300校(園)への図書寄贈の納品を8月31日までに全て完了した。
この助成事業は、日教弘東京支部が2019年度学校図書助成事業として初めて図書寄贈を企画したもの。東京組合ではトーハンと共同で、寄贈図書の選定から商品手配、装備、各校への納品までを担当。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初の予定より納品が遅れる結果となったが、組合内部で図書装備を行い、できる限り寄贈先学校(園)の近くの組合加入書店が配達・検品を行うなど、組合員一丸となって図書納品を行った。
また、近年に自治体や企業、学校など様々な枠組みで取り組まれているSDGs(持続可能な開発目標)の目標8「働きがいも経済成長も」の観点から、調布市や福生市の障害者支援施設に図書装備作業を一部委託した。

「なごやっ子読書イベント」で絵本や児童書の販売コーナー展開/愛知組合

なごやっ子読書活動推進実行委員会が主催する「なごやっ子読書イベント」が10月18日、名古屋市の名古屋市公会堂で開催された。
実行委員会は、名古屋市教育委員会、愛知県書店商業組合、㈱あそびの森で構成。東海テレビ放送が運営協力、名古屋丸の内ロータリークラブが協賛した。名古屋市では10月を「なごやっ子読書月間」と定めており、同イベントの開催は4回目。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、定員を400人として入場整理引換券の提出や、検温、イベント中のマスク着用の要請などを行った。
ステージイベントでは、東海テレビのアナウンサーによる音楽と映像で楽しむ読み聞かせステージ「ずっとまっていると」や、あそびの森による「チャレンジしよう!『○×クイズ』」、愛知教育大学の子どもの読書応援団体「よみっこ」による読み聞かせ講座などを開催。各種コーナーでは、愛知組合が絵本・児童書の販売コーナーや広報ブースを展開したほか、鶴舞中央図書館のブースでは、お勧めの絵本を貸し出す1日図書館や、文字さがしクイズ、缶バッジ作りなどが行われた。

10月理事会を書面議決で開催/「万引防止ポスター」掲出を要請/日書連

日書連は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、10月定例理事会を書面議決による「みなし理事会」として開催した。
主な議案や報告事項は以下の通り。
[政策委員会]
「本の学校出版産業シンポジウム2020」(NPO法人本の学校主催/実施期間=20年11月7日~8日、オンラインで開催)への日書連協賛名義使用を承認した。
日書連が万引防止出版対策本部(矢幡秀治本部長=日書連会長)と協働して作成した「全国統一万引防止ポスター」(警察庁後援)を、日本図書普及の協力により同社の広報誌に同封する形で10月22日発送すると報告。傘下組合員へのポスター掲出依頼を要請した。また、組合員からの追加希望に対応するため、各都道府県組合に在庫用ポスター50枚を送付している。
[組織委員会]
各都道府県組合の月次加入・脱退状況について、8月が加入1店・脱退3店で2店純減、9月が加入なし・脱退4店で4店純減と報告した。
[広報委員会]
「全国書店新聞合本」(20年1月1日号~同12月15日号)を前年と同額の費用で80部制作し、21年2月下旬完成予定で日書連役員、各都道府県組合、関係団体等に送付すると提案し、これを承認した。
「全国書店新聞」の21年1月~12月の刊行スケジュールは、従来通り毎月2回(1日・15日)刊行し、6月15日号は通常総会議案書特集号にする。
[流通改善委員会]
7月30日付で雑誌発売日励行本部委員会に提出した要望書「雑誌発売日諸問題解決に向けた対応のお願い」に対し、同本部委員長より見解を示す文書が提示されたと報告した。
「出版物関係輸送懇談会」は、主催団体の東京都トラック協会より、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して参加団体を制限するため、今年は日書連への出席要請を見送る旨の連絡があった。
[読書推進委員会]
日書連が事務局を務める「本の日」の図書カードプレゼントキャンペーンについて、事前告知ポスターは日本図書普及の広報誌に同封して9月11日に発送。QRコードを記載した読者応募用ポスターは10月22日発送するとして、11月1日の「本の日」に各書店での掲出を求めた。
[書店再生委員会]
キャッシュレス決済利用状況アンケートは、調査対象の神奈川、東京、愛知、大阪、兵庫、福岡の6組合合計で326通の回答があった。回答率は32%。

日書連のうごき

10月8日万引防止出版対策本部総会(Web会議)に矢幡会長が出席。JPO運営委員会(Web会議)に春井副会長が出席。
10月12日公取協連絡会議に矢幡会長、渡部副会長が出席。
10月13日政策委員会に矢幡会長、鈴木、藤原、柴﨑、渡部、春井各副会長、小泉監事が出席。
10月15日定期会計監査。
10月16日出版労連との意見交換に事務局が出席。
10月19日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。
10月20日本の日実行委員会(Web会議)に矢幡会長が出席。
10月21日聖教新聞社訪問に矢幡会長、柴﨑、渡部両副会長、平井理事が出席。
10月22日出版ゾーニング委員会に渡部副会長が出席。
10月26日読進協常務理事会に矢幡会長が出席。
10月28日文化産業信用組合理事会、全国万引犯罪防止機構理事会に矢幡会長
が出席。
10月29日全国書店再生支援財団のPOSレジ促進で日販訪問に矢幡会長、平井理事が出席。

「春夏秋冬本屋です」/「元祖読書術『本を読む本』」/鹿児島・楠田書店店長・楠田太平

アドラーの名前にこちらを思い起こす方もいらっしゃるでしょうか。『本を読む本』(著=M・J・アドラー、C・V・ドーレン/訳=外山滋比古、槇未知子/解説=外山滋比古/講談社学術文庫)。
本が一軒の家や衣装の纏いに、読書術はキャッチボール、商取引やスキーに喩えられたり、読む行為を著者との対話や語り合いとして、積極的な読み方を促し読み手の心の成長を目的とした現代読書術の古典といえる一冊です。
「初級読書」に始まり四つの技法を中心に、様々な規則を設けて詳しく述べています。限られた時間で読み解く「点検読書」は速読の先駆けのようです。命題や論証を探して本質に迫る「分析読書」では深い精読を目指します。また、一つの主題について複数の本を比べる「シントピカル読書」などすぐれた読書家へと導きます。本書は初版から八十年を経た現在でも大いに学び得るものがあり、読書に意義と価値を与えてくれます。
私にとっては羅針盤のような存在であり、読解力の位置や本との向き合い方を確認するため時をみて再読しており、その度に気付きがあります。
さて、原書では歴史・科学・哲学など分野別の読み方を紹介しており、また巻末付録には推薦図書リストと実践問題集がありますが、和訳版においては「小説・戯曲・詩」のみで巻末付録が未収録です。
本の読み方、読書の効能が喧伝されるいま、本書の完全版の翻訳を一読者として願うところです。

林茂夫氏に黄綬褒章/秋の褒章

様々な分野で功績のあった人を讃える20年秋の褒章の受章者が発表され、全国教科書供給協会から林茂夫氏(愛知県/松清本店合資会社代表社員)が黄綬褒章を受章した。

本屋の必要性、コロナ下で高まる/静岡組合通常総会で吉見理事長

静岡県書店商業組合は10月26日、静岡市の静岡教科書で第33回通常総会を開催し、組合員83名(委任状含む)が出席した。新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、本人出席は理事のみとし、ソーシャルディスタンスの保持や飛沫防止のパーテーション設置、マスク着用など対策を徹底した。
総会は江﨑副理事長の司会で進行。吉見光太郎理事長は「皆様にお会いするのは1月の新年総会以来だ。本来なら総会の後、食事会、懇親会と続くところだが感染予防のため中止した。緊急事態宣言発令後、インショップの営業停止等で苦境に陥った組合員が多数いると思う。一方、職場や学校が自宅待機となる中で参考書や小説が伸び、空前の大ヒットとなった『鬼滅の刃』を買い求めるお客様も大勢いた。コロナ下の今、『本が必要だ、本屋が必要だ』と思われることは大変励みになる」とあいさつした。
続いて佐塚副理事長を議長に選任して議案審議を行い、2020年度事業報告、決算書表、監査報告、21年度事業報告などすべての議案を原案通り承認。役員人事では、中野弘道理事(焼津谷島屋)の監事就任と、後任理事として中野道太氏(焼津谷島屋)の選出を承認した。なお、毎年1月に行っている新年総会は来年は中止と決定した。
(佐塚慎己広報委員)

総額表示義務化の撤回求める/出版労連が声明を発表

日本出版労働組合連合会(出版労連、酒井かをり中央執行委員長)は10月16日、「出版産業を危機に追いやり書籍の多様性を阻害する総額表示義務化に抗議し、撤回を求める」とする声明を発表した。声明の全文は次の通り。
2003年の消費税法改正によって、2004年4月より、事業者が消費者に取引価格表示する場合に消費税額を含めた価格を表示することを義務づける、いわゆる「総額表示制度」が実施されました。しかし広範な運動によって、2013年施行の消費税転嫁対策特別措置法による特例として、2013年10月1日より「外税表示」も許容され、現在、多くの出版物が「本体価格+税」の「外税表示」を採用しています。しかし、同特別措置法の適用期限は2021年3月31日までとなっており、「総額表示」の義務化が復活しようとしています。
義務化が復活した場合、出版業界は多大な経費を要することは明らかであり、出版社の9割にのぼる中小零細出版社は経営危機を迎えることになりかねません。実際、消費税導入時には、出版業界は、他の業種とは比較にならぬ多大な経費を要しました。出版社においては、カバーの巻替えをはじめとする経費が1社平均3623万円(日本書籍出版協会調べ)。全産業では5万円以下55・9%、1000万円超0・8%、(大蔵省〈現財務省〉調べ)となり、経費等との兼ね合いから、廃棄または絶版にせざるを得なかった専門書や小部数出版物が多数に上るという由々しき事態を招きました。
出版社は多品種の既刊書在庫を長期間保有しています。新刊書だけでなく既刊書の需要も高く、総額表示が義務化されれば、これらをすべて修正しなければならず、多額の経費を負担しなければなりません。
さらには、取次会社や全国の小売書店においても、負担を余儀なくされます。全国で減少し続ける小売書店を、今以上に減少させては出版文化が根底から崩れかねません。
そもそも「福祉に資する」名目で導入された消費税が、大企業優遇への大幅減税分や不要な武器の購入に充てられている現実は、すでに多くの国民の知るところです。そのうえ出版社にとっては、消費税率が3%→5%→8%→10%と上がる中で、本の内容にかけるべき予算を、改訂対応にかけなくてはならない無駄が強要されることになります。
出版社・取次会社・小売書店で働く労働者で組織する出版労連にも、経費負担による廃業や解雇などへの不安を訴える声が多数寄せられています。
出版労連は、憲法が保障する「出版・表現の自由」に則り、出版物の多様性という豊かな文化を維持し発展させる観点からも、総額表示の義務化に抗議するとともに、外税表示法式の再延長を求めます。

フォーラム「図書館の新たな可能性」/「書店で入手困難な書籍を置いて」/作家・浅田次郎氏が図書館に要望

9月26日に東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれたフォーラム「図書館の新たな可能性」(主催=国立青少年教育振興機構、主管=文字・活字文化推進機構)で、作家の浅田次郎氏が「読むこと書くこと生きること」と題して講演。読書への思いを語った。また、図書館の役割に言及し、娯楽本よりも書店で入手困難な書籍、高価な専門書を努めて置いてほしいと求めた。概要を紹介する。
最近、日本語の世界に大きな変革が起きている。「字を書かない」「本が読まれない」――このような現象が起きているのだ。
私はアナログ人間で、原稿も400字詰め原稿用紙に万年筆で書いている。もっと古色蒼然たることとして、座机を使い、着物を着て書いている。日本の時代ものや中国のものを書くとき、地図や辞書をたくさん使うので、周囲360度に資料を置くことができる座敷でなければ具合が悪い。そして座敷だとジーンズなど履いて座っていると脚が痺れてしまう。着物が一番疲れなくて楽なのだ。
私の世代は端境期で、上の世代はほとんど手書き原稿、下の世代はパソコンで書いている。もうしばらく経つと手書き原稿はなくなってしまうのではないか。
手で原稿を書くことには私なりの理屈がある。人間は1000年も2000年も手で字を書いてきた。紫式部も手で小説の原稿を書いている。それが私の時代に変わるというのが信じられない。本当にいいのかという疑問に苛まれ、パソコンに乗り移るのが怖かったというのが本音だ。
日本語の極意は、俳句や短歌のように、小さな文章に大きな世界を閉じ込めることだ。原稿用紙に手で書くということは肉体に物凄く負荷がかかる。だから5行で書くところを何とか1行で書けないかと本能的に考え、それが正しい文章に結び付く。このような意味で、最近の変革は重大なことかもしれない。しかし、私は今までのスタイルでいこうと思っているし、今でも字を書いている。
どうして小説を書くようになったかというと、子どもの頃から本を読むことが好きだったから。私は学級文庫の世代で、学級文庫の本を読み終わってしまうと、貸本屋で1冊5円とか10円の本を読んだ。子どもの頃、図書館は敷居が高くて入れなかった。小学校には図書室も図書館もないのが普通。中学に入ると図書室があって、全部読んでいいんだと感動した。
読書は勉強ではないというのがコツ。学校の先生によく言うのは、読書が勉強だと思ったら子どもはおしまい。義務的な感じがして、もう面白がってくれない。読書は勉強よりもゲームに近いものでなければいけない。私も面白いから本を読んでいた。
学生時代に一人で下宿していると、スマートフォンもパソコンもコンビニもないし、外を歩いても何もない。夜はヒマでしょうがないから本でも読むしかない。それは読者にとって幸せな環境だと思う。若い頃に読んだ本ほどよく頭に入るし、後年血肉になって役に立った。2、3日前に読んだ本は忘れてしまうのに。できるだけ若いうちに、貪欲にたくさん読んでおくことが大切だ。
電子書籍が出た時、あっという間に普及して、書店はみんななくなってしまうのではないかと思ったが、そうでもない。紙の本で育った私としては本当にうれしい。新型コロナウイルスでステイホームが続いた時、昔の本を読み散らかしていたが、やはり新しい本が読みたくなる。「では書店に行ってしまおう」となった。どこへ買い物に行くよりも、まず書店に行った。4月頃だから、街はがらんとしていた。ところが書店には人がたくさんいる。とても混んでいて帰ろうと思ったほどだ。「みんな本を読んでいる。日本も捨てたもんじゃない」と思ったことを覚えている。
小説を書く時、面白く、分かりやすく、美しくということをいつも心掛けている。ある程度の読書歴があれば簡単なことを難しく書くのは簡単なことだが、難しいことを簡単に書くことはとても難しい。そもそも私が小説を書くきっかけになったのは、読んでこんなに面白いものだったら、自分で書けばもっと面白いのではないかという素朴な欲求だった。
私は楽しく小説を書いてきた。本を読むことも相変わらず好きだ。1冊の薄手の本は、よほど難しいものでない限り4時間で読み終わる。でも今の人たちはその時間を確保できず、30分とか1時間の細切れでも読み切ることができない。読書には勢いというものがあるからだ。1日4時間の連続した読書時間を国民みんなに持ってほしいというのが私の切なる願いだ。
知識や教養は活字からしか学ぶことができない。他のことでそれを得たような気持ちになっても、それは深く学んだことにはならない。日本は明治維新から150年間、伝統的な教養主義で生きてきた国。識字率が高く、ほとんどの国民が読み書きができたがゆえに本を読み、色々なことがあったが復興を果たし、今日コロナ禍の中でも生きていける。日本が存続し得ているのは日本的教養主義のおかげなのだ。私たちの父母や祖父母たちが本を読んできたからであって、この習慣がなくなったら、国際社会で日本はひとたまりもない。伝統的な教養主義から外れた人が政治や様々な業界でも増え、今とても危険な状態にある。読書習慣を取り戻すことは是非とも必要なことだろうと思う。
図書館の関係者にお願いがある。図書館は書店で入手困難な書籍、高価な専門書を努めて置いてほしい。1000人が読む小説や読みやすい本を置くことは利用者に対するサービスになるとは思うが、1000人に1人しか読まない本でも、その1人にチャンスを与えてほしい。娯楽本をたくさん揃えることはサービスになるかもしれないけれども、そのために高価な専門書を落としてしまうのは本末転倒だ。
私は高校生の時に『折口信夫全集』を全部読んだ。今でも胸に残り、ものの考え方の基本になっている。『宮崎市定全集』も図書館にしか存在しない本だが、通読した。京都大学の先生で中国史の大家である宮崎さんの研究が基本になって、私の中国の小説はできている。こうした本を買えない若者のために与えてほしい。

ビジネス書の販促で提携/平惣(徳島)とフライヤー

徳島県那賀町出身の藤田恭嗣氏が社長を務める電子書籍大手・メディアドゥ(東京)傘下で、書籍の要約文をアプリで配信するフライヤー(同)は、徳島県内の書店チェーン・平惣と、ビジネス書の販促で提携した。フライヤーが四国エリアの書店チェーンと書籍の販促で組むのは初めて。
販促施策として、来店客が本のPOPに付けられたQRコードを手持ちのスマートフォンで読み取ると、各書籍約4000字の要約を「立ち読み」できる、両社共同のフェア専用棚を開設した。本の大枠をつかめるようにすることで来店客の興味を引き、購買意欲を高めることが狙い。
対象書籍は、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が紹介したことで世界的に話題となった『頭を「からっぽ」にするレッスン』(アンディ・プディコム=著、満園真木=訳、辰巳出版)と、フライヤーの要約アプリ・サイトの最新(9月)閲覧数ランキング上位10冊を合わせた計11冊。テレワークなど「ウィズコロナ時代の働き方」で学びを得られる、旬の「今読むべきビジネス書」を揃えた。
フェア第1弾として、ビジネス書の販売強化に取り組む平惣徳島店で、10月27日から実施している。
フライヤーは「非接触型の『新しい立ち読みスタイル』の県内定着を図りながら、ビジネス書の新規読者の開拓を目指す」としている。

アンケートに答えて賞品が当たる抽選会/青森組合が「本の日」に合わせて実施

青森県書店商業組合(成田耕造理事長)は「本の日」の11月1日に合わせて、「アンケートに答えて賞品が当たる抽選会」を実施した。
組合加盟各店舗で、10月1日~11月1日の応募期間内に700円以上購入し、「本の日」アンケートに答えて応募すると、抽選で賞品が当たるプレゼント企画。賞品の目玉としてA賞は『鬼滅の刃23巻フィギュア付き同梱版』(12月発売予定)が3名に当たる。また、B賞「すみっコぐらしぬいぐるみ/ストラップ」(ぬいぐるみ3名、ストラップ15名)、C賞「かいけつゾロリ最新刊(6月25日発売)」(10名)を用意した。さらに、上記に当選しなかった人に500円の図書カード(50名)が当たる。当選結果は11月18日に発表。当選賞品受取り期間は12月25日まで。

年始の賀詞交換を中止/トーハン

トーハンは例年、仕事始めにあたり、東京都新宿区の同社大ホールで取引先とあいさつのための賀詞交換の場を設けているが、新型コロナウイルス感染症拡大の状況に鑑み、取引先および同社関係者の安全を考慮し、来年については中止にすることを決めた。本社・支店への年始の来社については、通常の業務の範囲内での対応を予定している。

「NIPPANConference2020」/出版流通改革「2021年度までに」/物流コスト削減、書店収益改善の施策説明

日本出版販売(日販)は10月、取引先の書店、出版社に対して今後の方針を説明する「NIPPANConference2020~共に、〝新しい地図〟を描く~」を動画配信した。毎年、期首に開く日販懇話会で方針説明を行っているが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響に鑑みリアルでの開催を見送った。奥村景二社長は「出版流通改革のリミットはあと2年」と強い危機感を示し、出版流通改革によって持続可能な出版流通を目指したいと提案。また、書店マージン改善の施策に取り組む考えを示した。
奥村社長は、紙の本の市場規模は1996年、書店数は2000年からそれぞれ半減したと厳しい現実に触れ、「人口減少や高齢化というマクロ環境の変化、テクノロジーの進化を背景にした人々の価値観の多様化によって、出版業界の発展に寄与してきた現行の仕組みは制度疲労を起こしている。今、出版流通は崩壊の危機を迎えている。物量の減少による流通効率の悪化、損益構造悪化による書店数の減少という2つの問題によって、全国津々浦々に本を届けることが難しくなっている」との認識を示した。
奥村社長は自助努力として固定費の削減を進め、現在の物量に見合った流通機能へのリサイズを図るとともに、同業他社との協業による物流コストダウンを図っていることに言及し、出版社に対しては仕入れ条件の見直し、物流コストの一部負担に関する協議をしていると報告した。
しかし、「それだけでは今後も続く問題の根本的な解決にはならない」として、出版流通を維持していくため、業界全体の共通課題との認識のもとで「サプライチェーン改革による物流コストの削減」と「取引構造改革によるコストの主体の明確化」に取り組んでいく考えを示した。作業内容、配送ルート、ジャンル、価格帯を見える化することでフェアなコスト配分に変えていく必要があるとし、さらにコストを吸収するためには「上昇分を価格に転嫁することも一つの手段」との考えを示した。
改革の実行にあたっては「対面の交渉ではなく、検討段階から業界3者が同じ方向を向いて協議することにこだわりたい」とし、「リミットはあと2年、2021年度までと考えている。持続可能な出版流通のため、英知を結集して難局を乗り越えましょう」と述べ、理解と協力を求めた。
また、出版流通改革が実現しても、売場がこのまま減り続ければ業界の未来はないとして、時代のニーズに即応した企画・サービスによってトップライン(売上げ)を担保しつつ、書店マージン改善のための施策に取り組む考えを示した。
安西浩和副社長は、13~14年度は30、40億円あった雑誌の利益が急激に落ち込んだことで、書籍の赤字を補填できなくなり、取次の経営状況を厳しくしていると指摘。また、11年以降の運送会社からの値上げ影響額は、18年までの5年間で20億円、さらに20年までの2年間で20億円が想定されることなど厳しい現状を報告し、「取次としての自助努力をやり切った上で、時代に合わないルールを変え、業界3者のビジネスが成立するようコストについて議論したい」と述べた。
髙瀬伸英専務は、書店の収益改善について「書店の意思ある仕入れや販売につながる企画、スキームを作り、書店が30%以上のマージンを獲得できる世界を目指す」と述べ、発売前商品の出荷を確約する「アドバンスMD・近刊予約」、過去のヒット作の中から掘り起こしを図る「ReB∞T」(リブート)、低返品・高利幅スキーム「PPIプレミアム」などの施策を説明した。

日販が雑誌の送品拠点統合/入谷営業所閉鎖、3→2拠点に

日本出版販売(日販)は11月4日、これまで入谷営業所(埼玉県川口市)で行っていた週刊誌の送品をねりま流通センター(東京都練馬区)に移管することで、雑誌の送品拠点を3拠点から2拠点に統合したと発表した。拠点統合に伴う移管作業は10月31日に完了している。
同社はこれまで、書店向けの送品を行うねりま流通センター、コンビニエンスストア向けの送品を行うCVS営業所、週刊誌の送品をメインに行う入谷営業所の3拠点で、雑誌の送品を行ってきた。
しかし、出版物の流通量は1995年を境に減少。特に雑誌の減少幅は大きく、19年の推定販売部数は10年前と比べて59・0%減と半分以下の規模になっている。流通量が減少する一方で、配送先数は横ばいの状態が続いていたため、現在の流通量に見合った適切な体制にリサイズするべく、仕分工程の見直しによる作業効率向上に加え、製本会社や運送会社の協力を得て搬入や出荷時間を調整した。これにより、入谷営業所を閉鎖し、書店向けの週刊誌送品をねりま流通センター、コンビニエンスストア向けの週刊誌送品をCVS営業所に統合することが可能となった。

楽天ブックスの新物流センター/千葉県市川市で稼働開始

楽天は10月28日、千葉県市川市のマルチテナント型物流センター「アイミッションズパーク市川塩浜」の一部を借りて、オンライン書店「楽天ブックス」の新しい物流センターとして稼働を開始したと発表した。
楽天はこれまでも、千葉県市川市で2つの施設を「楽天ブックス」の物流センターとして稼働してきたが、ECが生活基盤として定着し、書籍などをECで購入する需要が高まっていることから、より保管・出荷能力の高い物流センターを新設した。
新物流センターでは、業務自動化の新システムの導入により、既存の機械化施設と比較して、人員による作業工程を約30%削減した倉庫運営が可能となる。21年夏までに既存の2つの施設機能を段階的に集約し、「楽天ブックス」の物流倉庫運営のさらなる効率化を図ることで、在庫保管量を約1・5倍、1時間あたりの出荷可能件数を約1・3倍へと増強し、翌日配送サービス「あす楽」の対象商品も拡大する。
延べ床面積は5万9100平方メートル、賃借面積は2万2000平方メートル、物階数は地上4階建。

第1回「詩のあん唱」コンクール/全国学校図書館協議会が動画作品募集

全国学校図書館協議会が70周年記念事業として立ち上げた「あん唱運動の会」(詩を声に出す喜びSOLASIDO)は、第1回「詩のあん唱」コンクールを実施する。
朝日学生新聞社が協力。あかね書房、アリス館、岩崎書店、学研プラス、金の星社、講談社、小峰書店、JULA出版局、童心社、童話屋、フレーベル館、文研出版、ポプラ社、理論社が協賛。
全国の小学生を対象に、お気に入りの詩を1編、あん唱している動画を募集する。個人でもグループ団体でも応募できる。あん唱するのは詩に限る(絵本も可)。審査員は谷川賢作氏(音楽家)、文月悠光(詩人)、全国学校図書館協議会理事長、朝日小学生新聞編集長らが務める。
応募は、コンクール特別サイトより必要事項を入力し、スマートフォン、デジタルカメラまたはビデオカメラで撮影した180秒までの編集した選考用の動画をアップロードする。応募者本人が出演することが条件。動画形式はwmv、avi、mov、mpg、flv、mp4ファイル。画面の大きさは1920×1080を推奨、1280×720のHDやSDも応募可。アスペクト比16:9を推奨(4:3も応募可)。音声は2chステレオまたはモノラル。応募締切は12月25日(金)必着。
応募宛先は、朝日学生新聞社内「ソラシド詩のあん唱」コンクール事務局。〒104―8433東京都中央区築地5―3―2朝日新聞新館9階
問い合わせは朝日学生新聞社まで。℡03(3545)5226(平日の午前10時~午後5時)