全国書店新聞
             

平成20年12月1日号

取引用語、解釈に相違/あいまいさからトラブル

日書連は11月20日午前11時から書店会館で理事会を開催した。取引改善問題では柴﨑委員長が「出版社、取次、書店間で使われる用語と解釈の不統一から書店に不利な事態が生まれている」として、業界における取引用語の統一を働きかけたことを報告した。早ければ年度内にも議論に入る。
〔取引改善〕
「返品フリー入帳」「委託扱い」など、出版業界で使われる用語が統一されず、出版社有事の場合などに解釈の違いでトラブルが起きている問題で、柴崎委員長は「18日の出版流通改善協議会で相賀委員長から問題提起された」と報告した。相賀委員長は「言葉の違いは30ぐらいではないか」としたのに対し、柴崎委員長は「決済のからむ問題をはっきりさせたい。年度内にも論議したい」と早期解決を求めたという。
2年前に経営が行き詰った国際地学協会の問題では、出版社―取次の約定書に「2年後に協議」の項目があり、書店からの返品入帳が棚上げされていた。2年が経過したことから神奈川組合が日販、トーハンに返品入帳を求めたところ、両社とも「原資はほとんど残っていない」と回答したという。
柴﨑委員長は「取次でも地図共販はすべて返品をとった。商品が残っている書店があれば決着をつけたい」と述べた。このほか「出版社―取次の債権・債務は書店に関係ない。法務処理をきちんとする必要がある」(鶴谷理事)、「2年間は精算を保留するという取り決めがあったはず。大部分は2年前に債権放棄しているのではないか」(面屋副会長)などの声があがった。
〔指導教育〕
日書連経営研修会のDVDは237枚の注文があり、12月15日に出来上がることを鈴木委員長が報告した。今後の課題では①支払いサイトの改善、②返品運賃負担の解消を取り上げたいとして、各県組合に改善方法のアンケートを実施したいとした。
〔情報化〕
携帯電話を利用してコミックの試読を行う「試し読みシステム」は、小学館、集英社、講談社の協力により、東京5店舗、島根6店舗の計11店舗で実験を行うことになった。12月1日に書店説明会を実施するが、新刊を中心に第1巻と最新巻の画像を読めるように検討している。
〔政策審議会〕
大橋会長は「商業組合が事業者団体としてどのような活動と対外的交渉ができるのか、許容範囲はどこまであるのか、法律的枠組みを勉強していきたい」として、年明けに勉強会を開催する方針を説明した。講師は全国中央会を通じて派遣してもらう。
〔健全化〕
パンフレット「組合加入のすすめ」は取次各支店にも配布したことを中山委員長が報告。長崎に宮脇書店が出店する際、大阪屋から開店日、売場面積、営業時間、担当者などを連絡してきたこと、これを受けて同店に組合加入の案内をしたことを紹介し、他取次にも事前連絡の徹底を求めたいとした。
10月の各県組合の組合員異動は加入4店、脱退20店で前月比16店減。10月末現在の組合員総数は5665店となった。
〔再販研究〕
11月19日に出版流通改善協議会が開かれたことを岡嶋委員長が報告した。出版業界が毎年まとめている「再販制度弾力運用レポート」は、今年から「出版再販流通白書」として発行し、12月4日には同レポートの内容について書協会員説明会が行われる。
日書連の19日の委員会では「ハリー・ポッター」など買切り商品の場合の定価拘束がいつまで続くのかが議論になり、今後も検討を重ねていくとした。
〔流通改善〕
小学館から11月19日に『ホームメディカ』が発売された。藤原委員長は7万部の注文があり、うち8割が買切りの注文だったと報告。取次の対応や今後の推移を見極めた上で、日書連の新販売システムを考えてみたいとした。

課税問題クリアが先決/日書連共済会の残余財産

日書連共済会が解散してから12月で2年になるが、5億3413万円の処分が決まっていない。11月20日の清算人会議では、木野村委員長が「一部を各県組合に分配するか、日書連でまとまった資産を購入するか結論が出ていない。私個人としては5億円の資金はもう作れないので、資産を有効活用したいと考えている。皆さんの意見を聞きたい」と問題提起した。
これに対し、各県からは「全額を各県に返すべきだ」(神奈川)、「解散総会で財産は日書連に移すと決めている。まずは日書連に帰属させた上での判断ではないか」(滋賀組合)、「バラマキより、将来、日書連に役立つものに使えという注文だった」(青森組合)、「組合が固定資産を持つべきではない。税金を払うべきは払ったうえでプランを示すべき」(谷口副会長)、「税金がどうなるかのシミュレーションが必要。贈与税なら40%持っていかれる。各県で使った場合にも課税されれば二重価税にならないか」(藤原副会長)などの声が上がった。
これを受けて大橋会長は政策審議会で課税問題を調べて報告したいとした。

平成21年日書連理事会開催日程

委員会理事会
1月22日(木)23日(金)
2月18日(水)19日(木)
3月=休会
4月22日(水)23日(木)
5月20日(水)21日(木)
6月理事会24日(水)総会25日(木)
7月22日(水)23日(木)
8月=休会
9月16日(水)17日(木)
10月移動理事会22日(木)
11月18日(水)19日(木)
12月16日(水)17日(木)

来年5月までに見直し

景品表示法の所管が公取委から新設の消費者庁に移ることを受けて、11月12日の月例懇談会で公取委消費者取引課笠原課長から説明があったことを影山専務理事が報告した。
出版小売公取協の公正競争規約については「景品提供・表示についての自主規制制度」として維持されるものの、現行規約の付則で21年5月24日までに見直しを行うとあることについては、期限通りに改定を求められる見通し。
出版小売公正競争規約では、一般ルールに比べて①期間制限が年2回90日、②総付景品は7%と厳しい規制があり、これらの緩和が求められるものとみられる。しかし、「これ以上規約を緩和すれば、再販制度に影響がある」とする意見が強い。

来年もSJ企画補助金/春のくじ特賞は北京ペア旅行/11月理事会

〔増売〕
読書週間書店くじの抽選会が11月19日、日本出版クラブ会館で行われ、特賞10万円分の図書カードなどの当選番号が決まった。舩坂委員長は、今後も春の書店くじ特賞は海外旅行、秋の書店くじは図書カードを継続していきたいと述べた。
来年の春の書店くじは実施要綱を承認。特賞は北京4日間ペア招待。今年の春の書店くじ特賞はタイ旅行だったが、11月8日から12日まで26名が参加して実施された。
また、来春の「サン・ジョルディの日」についてはサン・ジョルディの日実行委員会が実施してきたPR企画推進事業を日書連増売委員会が引き継ぎ、県組合のPR活動に対して上限20万円の補助を行う。総額は3百万円。
青森組合からは「青森では世界本の日=サン・ジョルディの日のポスターを製作して3年目になるが、花屋の協力が弱い。キャンペーンの狙いを世界本の日かサン・ジョルディか、どちらかに統一すべきではないか」とする意見が出された。これに対し大橋会長は「本と花をプレゼントするということで花屋と組むのは難しい面があるかもしれない。個人的には世界本の日でいくべきだと思うが、委員会で検討してほしい」と指示した。
〔読書推進〕
NHKBSで「私の1冊」という番組がスタートし、放送に連動したフェアが各書店でスタートしている。谷口委員長は「自店でもフェアを行っているが、まだ読者の反応は少ない。私の1冊の投票もまだ少ないようだ」と報告した。
愛知組合で実施している「孫の日」キャンペーンについては、日書連全体で展開してはという意見があったが、谷口委員長は愛知組合のキャンペーンについて次回理事会にも実施要綱を発表したいと述べた。
〔共同購買〕
日書連のオリジナル手帳「ポケッター」2009年版は、11月20日現在2700部の残があり、27県組合に百部ずつ割り当てることを了承した。
〔消費税〕
政府の諮問機関「社会保障国民会議」が11月4日に最終報告をまとめ、社会保障財源確保のためには基礎年金を税方式にした場合、消費税を2015年に6~11%、2025年には9~13%にする必要があるという試算を公表した。
朝日新聞と共同通信の配信記事を紹介した面屋委員長は、時期を見て日書連で消費税の研修会を行いたいと述べた。
〔広報〕
10月に開催した全国広報委員会議を受けて、面屋委員長は「各県組合の体力が落ちており、理事会開催も減っているとすれば、広報委員が理事長にインタビューして組合の方針を伝える必要がある」と指摘。各県組合の実情を把握するため、理事会開催の実績などをアンケート調査したいとした。また、新たに大隈劭理事(大分組合)を委員に追加した。

緊急保証枠30兆円に拡大/書籍・雑誌小売業も対象に

中小企業庁は中小企業の資金繰りに不安がないように10月31日にスタートした緊急保証の枠を6兆円から30兆円に拡大。対象業種も545業種から73業種を追加して618業種に拡大し、書籍・雑誌小売業も対象に含まれることになった。
緊急保証制度の対象となるのは、①最近3カ月の平均売上高が前年同期比マイナス3%以上減少している中小企業者、②製品等原価のうち20%以上を占める原油等の仕入れ価格が上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者、③最近3カ月間の平均売上総利益率または平均営業利益率が前年同期比マイナス3%以上低下している中小企業者の要件にあてはまる者。
申し込みは本店所在地、個人事業主の場合は主たる事業所のある市町村の商工担当課の窓口に申請書を提出して認定を受ける。その後、希望の金融機関または所在地の信用保証協会に、認定書及び決算書など借入れに必要となる資料持参の上、保証付き融資を申し込む。
借入限度額は中小企業の場合、一般保証8千万円と別枠で8千万円までの利用が可能。保証料率は年0・8%以下。保証期間10年以内。制度の詳細についての問い合わせは地方経済産業局、信用保証協会まで照会を。

文庫、文芸書がプラス/10月期、平均では前年比97.7%/日販調べ

日販経営相談センター調べの10月期書店分類別売上調査によると、10月期は平均97・7%となり、前年同月を下回った。規模別では
201坪以上は99・8%で、下げ幅は他の規模に比べて最も低かった。
ジャンル別では文庫103・6%、文芸書107・7%と、2ジャンルのみ前年を上回った。文庫は6カ月連続でプラス。『沽券』(光文社)、『キノの旅』(角川GP)の売れ行きに加えて、既刊の『容疑者Xの献身』『探偵ガリレオ』(文藝春秋)、『魔王』(講談社)が好調だった。
文芸書も4カ月連続で前年を上回った。『聖女の救済』『ガリレオの苦悩』(文春)『流星の絆』(講談社)と東野圭吾作品が好調。
一方、ビジネス書は前年比86・6%となり、10カ月連続で前年を下回っている。
客単価は雑誌、コミックの価格上昇を受けて、前年を2・2%上回った。

県民の投票でお薦め本/福島書店組合と福島民報社

福島県書店商業組合と福島民報社は、読者からの投票結果をもとに、毎月テーマ別のお薦め本を選ぶ「やっぱ、この本だね」をスタート。第1回は「最愛の人に読んでほしい本」をテーマに投票を呼びかけ、『そうか、もう君はいないのか』(城山三郎)などベスト5を10月24日の福島民報に内容紹介、投票者の声とともに発表した。
他の4点は『食堂かたつむり』(小川糸)、『最後だとわかっていたなら』(ノーマ・コーネット・マレック)、『だいじょうぶだいじょうぶ』(いとうひろし)、『あさ/朝』(谷川俊太郎)。
投票結果は福島民報社と県書店商業組合が①県民に推薦できる良書か、②購入できる本かなどを考慮して選考。選ばれた本は「本屋さんと県民で選ぶ/やっぱ、この本だね」の帯を付けて県組合加盟書店で販売している。福島県書店組合が投票者全員から抽選で10人に図書カード2千円分をプレゼントするお楽しみも。第2回テーマは「福島県ゆかりの本」。福島県出身の作家や福島県が舞台になる作品などが対象。
また、福島組合と福島民報社、福島県立図書館の3者は11月8日に福島県立図書館で公開講座「うつくしま出版文化シンポジウム」を開催。記念講演「偽りの明治維新」と、パネルディスカッション「地域に根ざした出版文化」を開催した。
同催しに合わせ、来年1月4日まで福島市・西沢書店大町店、いわき市・鹿島ブックセンター、郡山市・高島書房、会津若松市・西沢書店アピオ店で県内出版社の本、雑誌2百点を集めた「地域出版フェア」を順次開催中。

名づけ親求む/京都書店組合マスコットキャラクターの名称募集

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は、「第9回本屋さんへ行こうキャンペーン」として、京都組合のマスコットキャラクターの名称募集を開始した。この企画は、京都組合が独自のマスコットキャラクターを設けることを目指し、今年6月から9月にかけて、まず図案を募集したことに始まる。京都に籍を置く芸術系大学及び専門学校を中心に、プロアマ問わず広く募集。
また、コンクール方式で開催するために、京都嵯峨芸術大学、京都精華大学、京都造形芸術大学、京都国際まんがミュージアムに協力を依頼し、京都の書店をイメージしたイラストを主眼とする選考を行った。
その結果、誰からも愛される”犬”をモチーフに、本屋のオヤジを図案化したものが選ばれ、京都組合のマスコットキャラクターとして正式に採用された。しかし名称は未定。そこで京都組合では「本屋さんへ行こうキャンペーン」として、このマスコットキャラの名前を募集する企画を本年度のキャンペーンとした。京都組合では読書週間の終盤の頃に、毎年趣向を凝らして独自に企画するこのキャンペーンをスタートさせ、読者獲得による組合員店舗への来店者増加を図っている。
応募対象となるのは京都組合加盟書店の利用者で、今回はまず店頭でこのキャンペーンのチラシを配布して持ち帰ってもらう。その利用者はふさわしいと思う名前を考え、チラシの応募券に記入。すると今度は応募券を提出することが動機となって再び来店が望めることが、このキャンペーンの目指すところ。
また、マスコットキャラを設ける目的としては、京都組合が企画展開する様々な事業活性化活動や啓蒙活動において、店頭に掲げるポスターや配布するチラシなどの媒体に、印象深いキャラクターを明示することで、利用者にサービス店舗であることをわかりやすく認識してもらうこと。また、地元に親しまれ、地域の文化発展に貢献している書店の存在をアピールすることもその理由。
名称の応募締切は今年12月末日。年明けにも決定する予定。採用された方には図書カード2万円分、ラッキー賞として全応募者から抽選で100名に図書カード2千円分をプレゼントする。
(澤田直哉広報委員)

第35回読書週間書店くじ

第35回「読書週間書店くじ」の抽選会が11月19日午後5時から東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で開かれ、特賞「図書カード10万円分」をはじめ各賞の当選番号を決めた。
抽選会は日書連・杉山和雄増売委員の司会で進行。冒頭、大橋信夫会長は「読書週間書店くじは35回目を迎えることができた。取次各社、取協ならびに日本図書普及など出版業界関係者皆さんの協力あってのこと。書店くじは読者に対する謝恩の意味があるが、同時に読書週間期間中に一冊でも多くの本を販売したいという書店の熱い思いによって支えられている。皆さんにはこれまで以上にご協力いただき、ますます発展させていきたい」とあいさつした。
続いて舩坂良雄増売委員長が経過報告を行い、「今回で35回目となるが、継続するには努力が必要。日本経済の状況、出版業界の状況、書店業界の状況は厳しさを増しているが、そんな中にあっても継続していくことが大切だと考えている。書店くじは販売促進の大きな力となっており、書店組合が読者に支持される礎ともなっている。多くのお客様にいかに喜んでいただけるか検討した結果、今回、初めて特賞を図書カード10万円分とした。大々的にPRしていきたい。特賞当選のお客様が近くの本屋さんで10万円分の本をお買い上げいただける。書店くじに賭ける書店の熱き思いをご理解いただき、ご協力をお願いしたい」と話した。
このあと抽選を行い、抽選会出席者の中から選ばれた文藝春秋・五井幹雄取締役、新潮社・大橋真一書籍販売部長、日販・金田徴書籍部長、同・小泉訓行書籍総括課進行・常備係長、大阪屋・田原禎司書籍第一課係長の5氏がボウガンの射手をつとめ、4等から特賞まで順番に当選番号を決定。書協・小峰紀雄理事長が「出版業界は難しい時代を迎えているが、こんなときこそ元気を出していきたい」として乾杯した。
なお、賞品引き換え期間は12月5日から来年1月10日まで。

大阪府知事賞4名ら表彰/大阪本の帯創作コンクール

大阪読書推進会と朝日新聞大阪本社が主催する「第4回大阪こども本の帯創作コンクール」の展示会および表彰式が11月15日、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)で開催された。
1階のパフォーマンスホールでは、課題図書15点の帯作品、自由図書の帯作品の応募作約1万3千点のうち、大阪府知事賞をはじめとする入賞作および選外佳作約500点が展示され、多くの見物客を集めた。会場では、実際に製品化された帯を巻いた上位入賞作9点の課題図書が展示即売された。これらの本は、今後、組合書店でも店頭販売される。
7階ホールでは、午後1時から表彰式が行われた。大阪読書推進会の中川正文会長(京都女子大名誉教授)があいさつで「約1万3千点の作品の審査をしましたが、作品は年々良くなっています。しっかり何度も読み返すことが大事です。それには自分で小遣いを貯めて本を買ってください。ちゃんとした本を読むことで人間としての力を身につけることができます」と子供たちを称え、力づけた。
最初に最優秀の大阪府知事賞に選ばれた課題図書・低学年の部=岡田拓也君(茨木市立春日丘小学校2年)、同・中学年の部=窪田舞衣さん(豊中市立野田小学校3年)、同・高学年の部=喜多星見さん(貝塚市立木島小学校6年)、自由図書の部=馬場拓馬君(島本町立第1小学校3年)が表彰され、続いて朝日新聞社賞や大阪国際児童文学館賞など各賞を受賞した児童が紹介された。
なお、団体賞では、最多出品校に豊中市立蛍池小学校、最高出品率校には抽選で堺市立錦西小学校が選ばれた。
第1部の表彰式のあと、アトラクションとして課題図書にちなんだクイズを実施、多くの児童が参加し、盛り上がった。
(中島俊彦広報委員)

国民読書年推進会議を発足/読書振興へ行動計画発表/文字・活字文化推進機構

文字・活字文化推進機構(会長・福原義春資生堂名誉会長)は、2010年を国民読書年とする決議が衆参両院で採択されたことを受けて、「2010年国民読書年推進会議」を発足した。11月18日午後5時半から千代田区の日本プレスセンタービルで発足集会が開かれ、2010年10月に国民読書年祭典を開くことなどを策定した7項目の行動計画を発表した。
国民読書年推進会議は、文字・活字文化推進機構の理事、評議員、有識者で構成。座長には建築家で東京大学名誉教授の安藤忠雄氏が就任した。
発足の集いは文字・活字文化推進機構・中泉淳総務部長の司会で進行し、冒頭で福原義春会長が「当機構は昨年10月に発足、活動の一環として2010年を国民読書年に制定していただきたいと議員連盟の皆様にお願いしていたところ、6月6日に衆参両院で全会一致で採択していただくことができた。この決議を実効あるものにするためには、国民読書年に向けて事業活動を広い視野から進める必要があると考え、国民読書年推進会議を発足させることになった。安藤座長の下で国民読書年が盛り上がるよう、今後多彩な事業に取り組んでいく。豊かな言葉を身につけることは、私たち機構が唱える創造的な国づくり、言語力で日本の未来を開くということにつながると信じている。そうした国民が一人でも多く増えるように、政界、行政、民間の調整役となって言語環境を整えていく所存だ」とあいさつした。
次に、来賓の塩谷立文部科学大臣、図書議員連盟・細田博之会長、国立国会図書館・長尾真館長、活字文化議員連盟・中川秀直会長、日本労働組合総連合会・加藤友康副会長、日本ペンクラブ・阿刀田高会長、子どもの未来を考える議員連盟・河村建夫会長があいさつを行なった。
このうち、塩谷大臣は「人間にとって大切な読書活動を国民に広めていくため、政府はこれまで子どもの読書活動推進に関する法律、文字・活字文化振興法に基づき、社会全体でその推進を図る取り組みを行なってきた。今年3月には『子どもの読書活動推進に関する基本的な計画』が閣議決定され、6月には図書館法が改正、そして文字・活字文化の一層の振興と啓蒙を図るために国会で国民読書年に関する決議がなされた。文部科学省としても、子どもの読書活動を推進するための施策や、学校図書館の機能・活動を充実、司書の資質向上と、学校、家庭、地域が連携して読書活動を推進していく施策をこれまで以上に充実し、2010年の国民読書年に向けて邁進していく」とあいさつ。
中川会長は「今日の国民読書年推進会議の発足を機に、各地で運動が一段と盛り上がることを心から期待する。日本の教育水準や伝統的な文化、書物文化といったものは国際社会からも評価されている。一方、昨今のOECDの学習到達度調査では、学習する力が国際水準よりも低いことが明らかになった。子どもから大人まで、国民それぞれの人生のステージで、本を読むことからくる力をつける。そういう読書環境の整備をするということが今後の課題だ。我々議員連盟も、国際社会に日本の豊かな文化を発信するために、国民読書年を国の事業、国民の事業として実施できるように真剣に検討していきたい」と述べた。
また、河村会長は「読む・書く・聞く・話すのリテラシーを高め、日本人としてふさわしい日本語をきちっと使えるようになることが大事。読書を国民運動としていくのは大切なことだ。私のふるさと、萩の吉田松陰先生は、あらゆる情報を求め、寸暇を惜しんで本に目を通した。そして『万巻の書を読むに非ざるよりは、いずくんぞ千秋の人たるを得ん』(たくさんの本を読まないでどうして立派な人になれるだろうか)と、あの当時に喝破した。その精神が今の日本にも生きている。この歩みを緩めてはならないし、これを高めるために国民全体がという気持ちは、大変尊いものだと考える。官房長官としては、内閣をあげて取り組んでいく課題だと思っている。全力を尽くして国民読書年をやれるように私も頑張りたい」とあいさつした。
続いて、安藤忠雄座長が「本を捨てるな」と題して講演した。安藤氏は「10代の頃に大工が実家を改装するところを見たのが、建築に興味を持ったきっかけ。大学に進学したかったが経済的な事情であきらめ、高校卒業後1年間、大学の教科書など建築関係の本をひたすら読んで勉強した」と話し、建築家をめざす中で読書が大きな支えになった経験を紹介。また、西田幾多郎記念館や和辻哲郎の姫路文学館、司馬遼太郎記念館など、自らが設計した文学に関わる文化施設について、建築のコンセプトを写真を示しながら語った。そして、「今の子どもは知識を詰め込んでも自分で考える時間がない。責任ある個人を育てるためには、本をしっかり読み、考えられるようにしなければならない」と子どもの読書の重要性を訴えた。
日本新聞協会・小坂健介副会長のあいさつののち、日本書籍出版協会・小峰紀雄理事長が閉会あいさつ。「私たちがこの運動に期待するのは、読書する人が深く広がっていくこと。そのために読書環境の整備・充実は欠くことのできない条件だ。近年では政・官・民が連携協力して取り組んだ、2000年の子ども読書年の成果がある。この国民読書年推進会議の運動は、さらに広範な人々と進める社会的・国民的な運動だ。またとないこの機会をぜひとも活かしたい。皆様の一層のご協力をお願いする」と述べた。
〔国民読書年行動計画〕
財団法人文字・活字文化推進機構
2010年は国民読書年です。私たちは各界の英知を結集した「国民読書年推進会議」を設置し、活字文化と電子メディアとの共生をめざす「国民読書年祭典」に向けて、次の7項目の課題に取り組む。
①公共広告機構はじめ各種メディアの協力を得て、学校、家庭、職場におけるGNR(=GrossNationalReading国民総読書量)の底上げを図り、国民の不読率の引き下げに努める。
②社会人を対象とした言語力(読む・書く・聞く・話す)向上のためのシンポジウム、講座、研修などを企業単位、地域単位で開催する。
③学校における言語教育の具体策として、読書推進や新聞活用教育の実践を促すとともに、2009年秋「言語力検定」を開始して、新学習指導要領に基づく言語活動や、子どもたちの読解力の向上を支援する。
④全国の学校図書館、公共図書館の現状調査を行い、人材・図書資料・施設などの整備拡充策を提言するとともに、国・自治体に対して図書館のさらなるレベル向上を働きかける。
⑤読書活動の教育的・社会的な有効性に関する総合的な調査研究を実施し、2010年に中間報告を行う。
⑥世界の子どもたちが、等しく子ども時代にふさわしい本と出合えるよう、国連に対して「国際子ども読書年」決議の採択を働きかける。
⑦2010年10月29~31日の3日間、幅広い国民の参加のもと、それまでの読書活動の集大成として、「国民読書年祭典」を実施する。

投稿/『新文化』畠山氏論文について/大阪市・Books愛らんど・中島俊彦

大阪府書店商業組合に関係するものとして、『新文化』11月6日号の畠山貞氏(元栗田出版販売専務)の論文に少し気になるところがありました。それは、再販制度擁護運動に絡み、大阪組合のことを述べられている一節で、20年以上前の報告書をもとに、論を進められている部分です。
そこでは、「再販制度見直し論の反対運動に水を差したのが、大阪組合である。」と指摘され、以下の一文「委託制度と再販制度への依存体質からの脱却―これこそ、書店経営の今後を語るうえで、なによりも強調しておかなければならない点である。」(「活路開拓調査指導事業報告書」昭和61年3月刊行、大阪府書店商業組合編集)をその論拠とされています。
そこで、大阪組合が再販制度見直し論を公式に発表したことは無いはずと、原資料を、組合事務所で探してみたのですが、保存されていなくて、先輩理事のところにあったものを、やっとの思いで探し出して頂くことが出来ました。
そもそも、この報告書は、大阪府商業課より、「活路開拓事業を行ってはどうか」と薦められ、大阪府中小企業団体中央会から350万円の補助金を受けて、「書店業界の苦境を克服し、将来の活路を開拓するため調査し、書店を指導することを目指した」事業の報告書であった。
事業には、学識経験者として大阪市立大学教授・石原武政氏、大阪府立商工経済研究所主任研究員・津田盛之氏、大阪府立産業能率研究所主任研究員・南川忠嗣氏、中小企業診断士・芝野筧也氏、行政からは大阪府商業課課長・八色博氏他4名、出版業界3団体代表15名が、委員として参加した。
報告書は、第一章・業界の概要、第二章・消費の特性と読書行動(南川忠嗣執筆)、第三章・業界の実態と問題点(津田盛之執筆)、第四章・書店の取り組むべき方向(石原武政執筆)、第五章・事例研究(芝野筧也執筆)、第六章・座談会で構成されている。
畠山論文で問題となった一節は、第四章の書店の取り組むべき方向に記載されていた。筆者は、石原教授である。そこでは、石原教授は必ずしも再販制度廃止を言明しているのではない。畠山氏の論文引用の仕方はフェアではない。その前段に重要な記載がある。少し長くなるが以下に全文を引用する。
「書店にあっては、このように主体的に自ら仕入れし、それに対してリスクを負うという姿勢がほとんどみられない。委託制度と再販制度によりかかり、それに「甘え」ているために、小売商として最も大切な資質を自ら喪失してしまっているのではないだろうか。その結果しばしば「金太郎飴」といわれるような、ほとんど特徴もなく魅力に乏しい書店が生み出されているのではないだろうか。
もちろん、だからといって、委託制度と再販制度は諸悪の根源で、これらを廃止しなければならない、などというのではない。これらが出版物の流通に大きな役割を果たしていること自体は否定のしようもない。ただ大切なことは、これらの制度を今後も基本的に堅持していくとしても、それに甘えてよりかかるのではなく、真の小売商として自覚し、めざめる方向を模索すべきだということである。この意味での委託制度と再販制度への依存体質からの脱却―これこそ書店経営の今後を語るうえで、何よりも先に強調しておかなければならない点である。」
このように述べているに過ぎない。再販制度廃止とは一言も言っていない。
ただ、高返品率は委託制度に甘えている結果だろうとは、この一節より下の文章で触れている。
以上で理解して頂けるように、組合としての公式見解ではない、第三者としての学識経験者の考えが強く反映された指摘であって、書店人として心しなければならない意見として、あえて文章化されたものと考えます。
他人の文章を引用するときは、原文の趣旨を逸脱して、その一部分だけを取り出すべきではないものと考えます。

隔週刊で落語CD26巻/小学館09年上半期雑誌企画

小学館2009年上期雑誌新企画説明会が11月25日午後4時から文京区のトッパンホールで行われた。
説明会の冒頭、小学館大住常務は「今年も残すところひと月だが、雑誌は根本的な発想の転換を迫られる厳しい年だった。アジアデジタル会議では、雑誌の落ち込みをデジタルでどれだけ穴埋めできるかが議論された。人間の五感に親和力を持つ紙メディアの根源的な力を信じ、元気ある雑誌を作っていきたい。小学館はいくつかの雑誌を休刊したが、来年は新しい大型雑誌を出すべく着々準備している。既刊誌のシェイプアップも進める。来年1・2月には3本の強力なウィークリー・ブックを創刊し、よい流れを一気に作りたい」と述べた。
企画説明では、09年『小学1年生』大増売はじめ、ウィークリーマガジンなどの新企画が説明された。
◇『小学1年生』入学準備号は1月15日発売。定価680円。2月28日発売の4月号、4月1日発売の5月号は、昨年より110円高い定価650円に設定した。4月号には特別付録「ドレミファふでばこ」、5月号には「はしる!おしゃべりダッシュドラ」が付けられ、両方の付録を合体させて楽しむことができる仕掛けとした。
◇『プリ具』教育現場の先生方の声をもとに開発した勉強秘密道具で確かめながらプリントで学ぶ新発想の学習シリーズ。第1弾は「単位換算定規+単位換算プリント」価格1365円。1月15日頃発売。以後、毎月18日発売予定。
◇『「落語」昭和の名人決定版』(全26巻)志ん生、圓生、文楽、志ん朝はじめ、昭和の名人26人の十八番を収めたCDと、演目がよくわかるA4判20頁の冊子付き。1月6日発売の創刊号は「志ん朝」で特価490円。2号から1190円。隔週火曜発売。
◇『西洋絵画の巨匠』(全50巻)毎号一人の画家にスポットをあて、作品と人間ドラマを紹介。西洋絵画史に輝く50人を取り上げる。A4変型44頁、創刊号「ゴッホ」は1月20日発売、特価190円。2月3日発売の2号から隔週刊、定価580円。
◇『NHK世界遺産100』(全50巻)隔週刊DVDマガジン。NHKの「シリーズ世界遺産」の映像を収録したDVDとA4変型20頁の雑誌をセットにした。創刊号「空中都市マチュ・ピチュ」は2月17日発売、特価790円。隔週刊。2号から1490円。

学校職域中心に外商に特化/営業社員8名は専門書のプロ/松山市・松山堂書店

来秋、NHKスペシャルドラマで司馬遼太郎「坂の上の雲」が始まる。ドラマの舞台、松山市ではロケもスタートし、観光ブームになりそうな気配。市内は道後温泉行きの市電が走り、いたる所に正岡子規の句碑がある。その松山で学校を中心とした外商専門書店を営む松山堂書店・光永和史社長に経営戦略を聞いた。
〔販売チャンネルを増やす〕
事務所の光永社長のデスクの後ろに「瑞気集門」という扁額がかかっていた。松山堂を創業した祖父、勝次郎と親交があった書家、杉山某の書だと言う。「めでたい気が家門に集まる」という意。取材を進めるにつれて、なるほど、松山堂書店と、光永さんにふさわしい書だという気がした。
松山堂を起こした祖父、勝次郎は今治に近い周桑郡丹原町の出身。大正4年に松山市三番町で文具を兼ねた書店を始めた。戦災で店舗は焼失したが、光永さんの父、誠一郎とともに戦後、JR松山駅に近い大手町で書店を再開。二番町にも店舗があった。
光永さんは昭和28年生れ。松山商業を卒業後、大阪の教学研究社に2年勤めたあと郷里に帰り、20歳で松山堂書店に入社する。夜は松山大学に通い、仕事と学業を両立させた。昭和58年、30歳の時、社長だった父がなくなり、光永さんは平社員からいきなり代表取締役を継いだ。
社長に就任した当時、松山堂書店は3店舗合わせて45坪の売場があった。店売の売上は6千万円ほどあったが、借地だったこともあり、思い切って外商に特化することにした。昭和59年にはパソコンを導入、64年にはオフコンを入れてデータ管理を行った。
当時は書店業界でもようやく外商管理にパソコンを使い始めたところで、ソフトも手作り。光永さんはパソコンを導入するにあたり読書管理をデータベース化したかった。顧客である学校の先生が年度末に異動になる。そうすると松山堂書店の担当者も代わり、読書履歴や嗜好の引き継ぎが十分に行われなくなることがあった。顧客が異動しても履歴をフォローできるような仕組みをと考えた。
松山堂書店の社員は9名。うち7名が外回りを担当し、社長の光永さんも加わる。訪問先は幼稚園・保育園が240、小学校68、中学校59、高校3、教育委員会、警察、消防署など400カ所ほど。口座数は5500口座を数え、一人の社員が1日10校前後を回る。
毎週月曜の朝礼では、各セクションの担当から前週の営業報告を受け、今週の目標を確認する。教科書、学参が一段落した5月中旬に初夏の取上商品を決める企画会議を出版社を招いて行い、8月下旬には秋の企画会議をもつ。四国トーハン会の増売委員長も引き受けている関係で、出版社の訪問は多くなる。
月刊誌を扱うのは書籍につながるツールだと思うからで、ウイークリー・ブックは扱っても、週刊誌は原則扱わないというのが光永さんの考え方だ。
松山堂書店の営業が十分浸透している訪問先は、客注が多くなる。単発の注文が取れていれば、コミュニケーションもよいわけで、採用品も多くなる。光永さん自身も10年前までは営業の「エースで4番バッター」として活躍した。平凡社『地名辞典』(定価9800円)は店全体で430部販売し、うち150部を光永さんが販売した。
今年8月に行った決算で総売上げは前年比2百万円減であったが、今期は売上増の見通しとのこと。売上げ比率は書籍41・2%、図書教材42・9%、雑誌15・9%。販売先別では幼稚園・保育園22・2%、小・中学校54・0%、高校17・5%、その他6・3%。営業員1人当たりの売上げは4千万円になり、他の書店に比べかなり高い数字だ。
取材していて光永さんから何度も飛び出した言葉が「チャンネルを増やす」という表現。たとえば、新学期、高校生向けに辞書を販売する書店は多いが、松山堂書店では小学生、中学生向けにも販促をかける。学校向け巡回グループ「NCL」では低中高に分けた30点のこども文庫を組んで販売する。参加校も増え、1校平均約250万円販売している。
集英社の文庫キャンペーン「ナツイチ」も、松山堂書店にかかると100点の文庫から子ども向けの作品だけ30点をセレクトして販売するから先生やお母さんにも評判がよい。「ナツイチ」には、恋愛ものや大人向けの内容も含まれているから、安心して勧められるわけだ。販売チャンネルを増やすという言葉は、書店の商品開発と置き換えてもよいのではないかと思う。
ある保育園では「いちにち本屋さん」として、お母さん方が文化祭に絵本を並べて販売してくれる。松山堂書店が絵本を搬入し、お母さん方が売り子になる。20年以上読み継がれ、自分たちも子どもの頃読んだ名作絵本を中心に、1日約20万円の売上げになる。幼稚園の子供が小学校に上がり、小学校のPTAからもやってほしいという声がかかる。このあたりが光永さんの言う「チャンネルの積み重ね」ということだ。
〔特定ジャンルの強い書店へ〕
松山堂書店は7年後に創業100周年を迎える。その頃には後継者に経営をバトンタッチしたいと思う。保育園、高校での売上げを強化して、より安定した売上げと利益を確保するのが目標。さらに、現在の社屋を移転して、倉庫にある商品を店舗のように陳列したい。教育関係者のラウンジ機能を持たせたいという夢がある。4人の子どものうち長男の知正さん(31歳)が同社に入ったが、まだ独身。早く所帯を持ってほしいと考えている。
光永さんは小型船舶操縦士の免許を持っており、2月、3月の教科書販売期を除いては毎週のように37フィート、3・6トンの漁船を操縦して釣りに出る。今の時期ならアジ、カサゴなどが釣れる。子供の頃から瀬戸内海の海には親しんできたから、季節によってどのあたりにいけば、どんな魚がいるかは頭に入っている。
世界遺産を巡り写真を撮るのも趣味で、今年の夏は中国雲南省の秘境を歩いてきた。事務所には旅先で撮った写真が引き伸ばされ、額に収められている。カンボジアで撮った3体の女神像は小学館『世界遺産』のカバー写真に使われた。完全にプロの写真だと思った。
愛媛県書店商業組合では井門理事長とのコンビで10年以上にわたって専務理事として裏方を務める。
「店に入った時から外商を担当したので、実は店売のことはよくわからない」と光永さんは言う。ただ、現在の書店業界について、大型書店の出店競争はいずれ限界が来る。そう考えるのは読者人口と売場面積がアンバランスで、採算が合っているようには思えないからだ。一方、中小書店の経営については「コンビニの扱う雑誌は手の打ちようがないので経営の柱からはずし、マガジンストアからブックストアへ移行していくべきではないか」と提言された。
出版物のジャンルは多様であり、松山堂のような教育書はじめ、医書、法令関係、農業書、仏教書もある。これらのうち、特定のジャンルを品揃えの中心に据える。さらに県庁と出先機関、市役所、農業試験場など絶対に強い営業拠点を持つこともポイント。時間はかかるかもしれないが、これらの施策が中小書店生き残りのヒントになるだろうと、光永さんは話してくれた。

08年雑誌愛読月間「定期購読キャンペーン」/103誌参加、1万8千件の予約獲得/予約獲得書店数は前年上回る945店

〔キャッチフレーズに大きな反響〕
7月21日から8月20日までの1カ月間、「雑誌愛読月間」(日本雑誌協会主催)のキャンペーンが展開され、このほど報告結果がまとまった。
毎年、オリジナルポスターの制作、オリジナル図書カードのプレゼントなどで雑誌の面白さや大切さをアピールする「愛読キャンペーン」、期間内に対象雑誌の年間定期購読を申し込むと1カ月分サービスになる「定期購読キャンペーン」などを実施。また、03年から始まったカメラ付き携帯電話などで雑誌情報を撮影する「デジタル万引き」への警告も大きな注目を集めている。
今年は「雑誌にお作法はございません。」をキャッチフレーズに、雑誌の自由自在な読み方をコンセプトとしてキャンペーンを推進。ポスターやオリジナル図書カードのモデルは、タレントの南明奈さんがつとめた。ポスターのサブコピー「前からだって、後ろからだって読んでいい。」「丸めて読んでも、折って読んでもいい。」「好きなページは切り取ったっていい。」「突然の雨のときには、傘にしたっていい?」をめぐリ、書店や図書館から異論、反論も寄せられるなど大きな反響を呼んだ。
電気通信事業者協会との連名の「雑誌を撮ってはいけません!」のコピーがついたマナーポスターは図書館からの注文が相次ぎ、依然として現場でのマナー問題が根強く存在することが再確認された。
07年から実現したJR西日本、近鉄、阪神、京阪、南海の関西電鉄5社による電車内中吊りポスター掲出に今年から阪急が加わり、首都圏11社の電鉄会社で構成する関東交通広告協議会とともにキャンペーンPRの推進力となった。
〔予約獲得数首位は日経TRENDY』
全国展開7年目の今年の「定期購読キャンペーン」は過去最多の40社103誌が参加。予約獲得数上位40誌は以下の通り。
①日経TRENDY(日経BP社)1920、②ESSE(扶桑社)1287、③ゴルフダイジェスト(ゴルフダイジェスト社)919、④クロワッサン(マガジンハウス)645、⑤週刊ダイヤモンド(ダイヤモンド社)643、⑥CREA(文藝春秋)567、⑦日経WOMAN(日経BP社)504、⑧週刊東洋経済(東洋経済新報社)480、⑨Newton(ニュートンプレス)477、⑩JR時刻表(交通新聞社)466、⑪クーリエ・ジャポン(講談社)399、⑫レタスクラブ(角川SSコミュニケーションズ)376、⑬健康(主婦の友社)362、⑭ダイヤモンドZai(ダイヤモンド社)342、⑮子供の科学(誠文堂新光社)339、⑯JUNON(主婦と生活社)329、⑰ゆほびか(マキノ出版)287、⑱SAVVY(京阪神エルマガジン社)275、⑲CARandDRIVER(ダイヤモンド社)271、⑳グッズプレス(徳間書店)268、21日経PC21(日経BP社)257、22MeetsRegional(京阪神エルマガジン社)250、23歴史街道(PHP研究所)243、24MEN’SEX(世界文化社)222、25日経マネー(日経BP社)220、26デジタルTVガイド(東京ニュース通信社)219、27レディブティック(ブティック社)202、28THE21(PHP研究所)198、29特選街(マキノ出版)178、30Precious(小学館)175、31DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー(ダイヤモンド社)173、31日経おとなのOFF(日経BP社)173、31HanakoWEST(マガジンハウス)173、34花時間(角川SSコミュニケーションズ)170、35MISS(世界文化社)169、36SCREEN(近代映画社)168、37山と渓谷(山と渓谷社)162、38エコノミスト(毎日新聞社出版局)148、39おひさま(小学館)145、40旅の手帖(交通新聞社)144
参加書店数は5614店で前年から116店減ったものの、予約獲得店数は83店増えて945店、予約数は5576件増えて1万8657件となり、2年続けて1万件を突破した。この結果、予約獲得店舗率は1・64ポイント増えて16・84%になった。取次別ではトーハン17・97%、日販15・38%、大阪屋25・19%、栗田5・37%、中央社4・00%、太洋社4・62%、協和41・34%。
予約獲得件数上位書店のトップはカペラ書店(大阪府)で463件。以下、福島(大阪府)325件、まや(大阪府)251件、隆祥館書店(大阪府)208件、ひまわり書店(東京都)167件、文永堂書店(千葉県)131件、ジュンク堂外商(大阪府)116件、大阪屋書店(愛知県)134件、東光堂(千葉県)110件、クラブジャパン(埼玉県)98件――が上位10書店。大阪府が1位から4位まで独占した。
〔図書カードプレゼントに5万通応募〕
このほか、東京国際ブックフェア(7月10日~12日)での活動も注目を集めた。キャンペーンイメージキャラクターの南明奈さんが最終日に応援に駆けつけ、握手会には約200名が集まった。定期購読キャンペーン対象誌のバックナンバー各20冊を参加出版社から提供してもらい、期間中に配布。大勢の来場者が詰めかけ、すぐに在庫切れとなった。雑誌売り名人発掘プロジェクト、アジア・太平洋デジタル雑誌国際会議、雑誌POSセンターの紹介を行い、「マガジンデータ」の販売も予想以上の売れ行きを示した。
また、雑誌愛読月間では、99年に読進協から雑協が企画・運営するようになって以来、雑誌広告のマークをハガキに貼付して応募してきた読者の中から、その西暦の年の数分のオリジナル図書カードをプレゼントする企画を実施しており、今年も約5万通の応募が寄せられた。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・榎木玲子

◇2歳から/『トイレでうんち』/リスベット・スレーヘルス=作/小学館1050円/2008・11
「ピピとトントン」シリーズ4冊のうちの1冊。トントンはそろそろぬいぐるみのくまくんにぞうさんトイレを譲って、おとなのトイレを使い始めます。ベルギーの作家の描く色のセンスもヨーロッパらしく、ユニークな顔立ちのトントンのトイレ絵本。ママのブーツもお洒落です。

◇4歳から/『にんじんのたね』/ルース・クラウス=作/クロケット・ジョンソン=絵/こぐま社945円/2008・11
原書は60年以上前にアメリカで、そして日本でも約30年前に出版されています。一粒のにんじんのたねを、芽が出ることを当たり前に信じて水をやり、草引きをし続けた男の子。今も昔も変わらずにある大事なものを思い出させてくれます。古きよき懐かしさを感じる絵も魅力です。
◇小学校低学年向/『ちいさなあなたへ』/アリスン・マギー=作/ピーター・レイノルズ=絵/主婦の友社1050円/2008・3
1人のお母さんの、わが子に寄せる愛情が、優しい絵と心に届く言葉で語られます。のびやかに育ち、やがて巣立っていくこどもたちへ、いつの時代であってもお母さんは思いを込めて育ててくれたに違いありません。こどもたちがしっかりと何かを受け止めてくれることを願いながら。

片岡隆理事長を再選/取引出版社183社に拡大/TS協同組合総会

TS流通協同組合は11月26日午後4時から書店会館で第9回通常総会を開き、組合員102名(委任状含む)が出席。役員改選で片岡隆理事長を再選した。
総会は秋葉副理事長の司会で進行し、片岡理事長があいさつ。「TSは平成19年度実績で売上を7%強伸ばしたが、会員の減少とともに発注書店の減少が気になる。最近金融不安が書店にも影響を及ぼしていると店頭で感じる。地域密着書店として、周りの読者に自店で買ってもらう工夫をしていくしかない。昨年の売上が維持できるよう役員一同努力する」と述べた。
正副議長に下向紅星氏、小宮仁氏を選任して議案審議を行ない、平成19年度事業報告、決算報告、平成20年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決。任期満了に伴う役員改選では、理事15名、監事2名を選任し、片岡理事長の再選を決めた。
取引出版社は学研、主婦と生活社との取引がスタートし合計142社。東京官書普及41社と合わせて183社に拡大した。平成19年度の売上は1億843億円で対前年99%と若干減少したものの、1億円の目標を達成。ハリー・ポッターの売上を入れると1億2065万円と大幅に増加した。加盟組合員は145書店と5店減少。発注店数は月平均68店(対前年91%)と減少したが、1店当たりの注文は増加。注文件数は10万1534件で、月平均8461件だった。出版社取引金額ベスト5は新潮社、講談社、角川グループ、文藝春秋、小学館。
平成20年度は、共同仕入等の一層の拡大、取引出版社の拡大を図るほか、組合員の加入促進、受発注システム研修の継続、システム・運用方法の改良、消費者への広告宣伝、システムを利用した受注の拡大、オリジナル商品の開発・販売、東京組合との連携強化と協業化の推進、東京青年部との事業協力に取り組む。
審議終了後、来賓の東京組合大橋理事長があいさつ。「いま書店は大変厳しい変化にさらされているが、逆風が吹いている時こそ、それぞれのアイデア、努力が生きる時だ。いろいろなチャレンジをしていただきたい。そして、大企業ではできないことをTS流通共同組合にやってほしい」と述べた。

京都組合懇親旅行/北近畿巡る旅に63名が参加

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は、10月25日(土)~26日(日)に、京都組合の懇親旅行を実施した。京都組合では、毎年秋に日帰りもしくは1泊2日で旅行することが恒例となっており、今年度は北近畿方面を巡る旅とした。
今回は組合員と取次、出版社を合わせて総勢63名が参加。天候に恵まれた当日は、チャーターしたバス2台に分乗し、朝9時30分に京都市内を出発。まずは但馬の小京都と呼ばれる兵庫県豊岡市にある城下町「出石」に向かった。ここでは明治4年(1871年)に建立されて以来、三代にわたり現在も時を刻み続けている時計台「辰鼓楼」をはじめとした歴史的遺構を巡り、趣きある町並みを散策した。
その後は、同じ豊岡市の兵庫県立コウノトリの郷公園に移動。大地で餌を食むコウノトリを見学したほか、試験放鳥に取り組む公園の職員から現在の繁殖状況などの説明を受けた。続いて〝カバンの街豊岡〟市内の鞄工場内を見学し、工場内の製造直売コーナーに立ち寄った後は、京都府京丹後市網野の夕日ヶ浦温泉にある旅館「坂本屋瑠璃亭」へ。
その宿では今回予約した全室で日本海が一望できる部屋が用意されていたことから、夕日百選に選ばれた秋の日本海に沈みゆく夕日に、参加者は旅の疲れを癒した。また、夕食には、鮑など旬の海の幸から、松茸など秋の山の恵みまで、郷土料理をはじめとする新鮮な食材をふんだんに用いた豪華な料理の品々が並び、その味わい豊かな丹後の味覚を堪能した。和やかな雰囲気の中、宴会が進むと会場は盛り上がり、参加者は親睦を深めた。
翌日は、日本三景の一つとして知られる「天橋立」へ。この全長約3・6㌔㍍の砂嘴と幾多の名松で形成された特別名勝を、まず海上をゆく天橋立観光船から眺め楽しんだ。その後は、観光リフトで一気に海抜130㍍の傘松公園へ。山上の展望台から眼下に天橋立の広大なパノラマが展開する絶景を眺望した。そこでは名物「股のぞき」をする姿も見られ、参加者は丹後の秋に触れ楽しんだ。京都市内には午後5時15分に帰着した。
今回の旅行は参加費を低く設定するために、バスや旅館の手配、車中や現地のガイドに至るまで、企画から全てを担当の厚生委員会が行い、経費削減を徹底して図った旅行だったが、参加者のアンケートからは、「和気あいあいで良かったです」「子供にかえったようで楽しかった」「知らない支部の人と仲良くなれました」などの喜びの感想とともに、担当者の労をねぎらう声も数多く寄せられ、手作り感いっぱいの温かい旅行となった。
(澤田直哉広報委員)