全国書店新聞
             

平成29年7月1日号

「渋谷プロジェクト」発足へ/地域書店が連携して万引防止対策/万防機構総会

全国万引犯罪防止機構(万防機構、竹花豊理事長)は6月15日、東京・千代田区の主婦会館プラザエフで平成29年度通常総会を開催。パネルディスカッション「渋谷プロジェクトの報告」で登壇した日書連の舩坂良雄会長(東京都渋谷区・大盛堂書店)は、大盛堂書店など渋谷駅周辺の書店が区や警察と連携、被害・犯人情報を共有して万引防止対策を行う同プロジェクトの報告を行い、万引に苦しむ書店に対する回答を渋谷地区で実証し、全国へ展開する見本にしたいとの考えを打ち出した。同プロジェクトは7月末の発足を予定している。
会員90名(委任状含む)が出席した総会の冒頭、あいさつした竹花理事長は、3月9日~10日の「万引対策強化国際会議2017」で採択された「万引対策強化宣言」について、「被害者が孤立して戦うのではなく、情報を共有し、ともに手を携えて万引問題の解決に取り組むことが基本コンセプト」と説明。同会議後に生まれた新しい動きとして、書店を中心に出版業界全体で万引防止対策の機運が高まり、万防機構の下に「万引防止出版対策本部」を設置する計画が進んでいることに触れ、「万防機構は本の万引に対してこれまでにない取り組みを行う」と述べた。今後の課題として、防犯画像を共有・活用するためのシステム構築をあげた。
議案審議ではすべての議案を承認。平成29年度は、外国人による集団窃盗対策、盗品等情報データベースを活用した万引防止システムの調査研究、出版部会の盗難情報DB構築委員会の発足に取り組むことなどを計画している。
役員異動では、理事16名、監事2名、評議員15名の就任を承認。出版業界からは日書連の舩坂会長、愛知県書店商業組合の加藤和裕万引対策特別委員長(三洋堂書店)が引き続き理事を務め、日本出版インフラセンター(JPO)の相賀昌宏代表理事(小学館)が新理事に就任した。
総会終了後、第2部として「外国人による集団窃盗対策」「渋谷プロジェクト」の2つのパネルディスカッションが行われた。
「渋谷プロジェクト」では、日書連の舩坂会長、丸善ジュンク堂書店の難波克行保安管理部部長、万防機構内「万引防止出版対策本部」の阿部信行事務局長、万防機構の竹花理事長という同プロジェクトに関わる4氏が考えを語った。
舩坂会長は、自店で6月13日に写真集2冊の万引を未然に防いだ事例を紹介。「渋谷プロジェクトのおかげで、従業員が来店客の行動に注意を払うようになった」と効果を語る一方、「写真集2冊で3780円。これを取り返すには1万7000円の売上が必要。650円の雑誌を26冊売らなければならない計算だ。これでは書店はやっていけない」と万引被害の深刻さを訴えた。
そして、万引は1店舗だけではなく地区全体の問題と指摘。「万引犯は大盛堂書店だけではなく、渋谷のすべての書店を回って盗む。個店の対応では限界があり、渋谷の書店間で犯人の情報を共有する必要がある。そこで竹花理事長と相談し、渋谷プロジェクトの立ち上げを考えた。渋谷地区で得た成果を全国の書店と共有し、今後の万引防止に役立てたい」と述べた。
難波部長は「ライバル企業であっても、防犯対策では手を携えることができる」と述べ、情報共有の新しい試みについて「常習犯の防犯画像データを共有し、各店舗がいち早く警戒態勢に入るようにする。また、古書店にも参加してもらい、転売防止対策を行う。被害商品に関する情報をデータベース管理組織に登録し、区や警察と情報を共有。犯人が古書店に盗品を売りに来たら、警察官が向かって職務質問する」と説明。「渋谷地区の7書店で情報共有のモデルを作りたい」と話した。
阿部事務局長は「これまで万引問題はすべて書店が責任を負ってきたが、手口の巧妙化・悪質化、盗品の処分先の多様化という深刻な現状から、これ以上リアル書店を減らさないため、出版業界全体の問題として対策することになった。これは画期的なこと」と、万引防止出版対策本部設立の意義を強調した。
竹花理事長は、防犯画像の利活用システムを構築する準備を進めているとして、「地域の7書店が膝を交えて情報共有に取り組むことが大きな抑止効果になる。渋谷プロジェクトは、米国でORCAと呼ばれる、地域における情報共有組織の日本版。何としても成功させたい」と語った。

3グループ・6委員会に集約/東京組合、委員会編成を決定

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は6月2日、千代田区の書店会館で定例理事会を開催。5月19日の第41回通常総代会で再選された舩坂理事長は「これから2年間、粉骨砕身、完全燃焼する」と決意を述べ、同理事長体制3期目の各委員会編成を決めた。
委員会編成は、これまでの4グループ・8委員会体制から3グループ・6委員会体制に集約。総務・財務委員会以外の6委員会をA、B、Cの3グループに分け、副理事長が各グループ内の委員会を担当。Aグループは本間守世副理事長、Bグループは小林洋副理事長、Cグループは柴﨑繁副理事長が担当する。
柴﨑副理事長の提案で今回から行うことになった日書連報告では、万引防止対策、書店経営の環境改善のための要望、書店くじ、ポケッターなど、日書連が取り組んでいる施策の説明が行われた。
このほか、11月3日~5日に開催される第27回神保町ブックフェスティバル(同実行委員会主催)について、東京組合後援名義使用を承認した。
[東京組合各委員長]
▽総務・財務委員会
総務=舩坂良雄理事長
財務=渡部満常務理事
▽Aグループ(担当=本間守世副理事長)
組織委員会=矢幡秀治常務理事
事業・増売委員会=井之上健浩理事
▽Bグループ(担当=小林洋副理事長)
指導・調査委員会=渡部満常務理事
厚生・倫理委員会=渡辺真常務理事
▽Cグループ(担当=柴﨑繁副理事長)
共同受注・デジタル委員会=濱野敏明常務理事
再販・発売日・取引改善委員会=渋谷眞常務理事

書店東北ブロック大会、7月6日に岩手で開催

第69回「書店東北ブロック大会」(藤原直会長)が7月6日、7日の両日、岩手県書店商業組合(玉山哲理事長)の設営により盛岡市つなぎ温泉のホテル紫苑で開催される。
6日は午後2時半より会員のみによる第1部大会、午後3時55分より参加者全員による第2部大会、午後6時より業界3者大懇親会。7日はゴルフと観光。

発売日格差、一層の改善求める/万引防止ポスターを配布/沖縄総会

沖縄県書店商業組合は5月26日、那覇市の同組合会議室で第29回通常総会を開催し、組合員31名(委任状含む)が出席した。
総会は大湾喜代一事務局長の司会で進行し、小橋川篤夫理事長があいさつ。書店を取り巻く現状、売上の低迷、深刻な人手不足や時給の高騰などについて話した。また、平成28年度の活動報告として、日書連の発行した「全国小売書店経営実態調査報告書」の組合員への配布、沖縄組合制作「万引防止ポスター」の65店舗への配布、「ポケッター17」の組合員への配布などについて話した。
続いて小橋川理事長を議長に議案審議に入り、平成28年度事業報告、収支決算報告、平成29年度事業計画案、収支予算案など、第1号議案から第6号議案まですべての議案を原案通り承認した。
今年度の取り組みとして、①雑誌・書籍の発売日短縮に向けてのさらなる改善の継続、②書店活性化(のぼりの制作)に向けた取り組み、③日書連が取り組んでいる「書店の粗利益拡大」「客注品の迅速確実化」「取次システムの無料化」「配本の適正化」の4項目の早期実現に対して当組合も協力――を提案した。
最後に大城行治副理事長のあいさつで閉会した。
(安仁屋博一広報委員)

「岩波文庫創刊90年記念岩波文庫カバー絵コンテスト」長野県で開催

岩波書店と信濃毎日新聞社が共催。長野県書店商業組合など後援。
長野県の小学生から大学生までを対象に、読んでみたくなる、手に取ってみたくなるような岩波文庫のカバー絵を描いてもらうもの。応募作から最優秀賞1点、優秀賞2点、佳作6点を選び、優秀作品をカバーにした岩波文庫を県内の協力書店で販売する。応募締切は7月26日。
指定課題図書は以下の9点。
▽長野県にゆかりのある作品=『新訂一茶俳句集』丸山一彦校注、『千曲川のスケッチ』島崎藤村、『河童他二篇』芥川龍之介
▽教科書でもおなじみ=『坊ちゃん』夏目漱石、『宮沢賢治詩集』谷川徹三編、『新美南吉童話集』千葉俊二編
▽名作・定番=『自選谷川俊太郎詩集』、『動物農場』ジョージ・オーウェル作/川端康雄訳、『君たちはどう生きるか』吉野源三郎

組合加入促進が重要課題/竹内理事長「かつてない厳しい状況」/群馬総会

群馬県書店商業組合は5月22日、前橋市の前橋問屋センター会館で第30回通常総会を開催し組合員33名(委任状含む)が出席した。
あいさつに立った竹内靖博理事長は、万引問題、全国的な組合員の減少、雑誌の売上減少、アマゾン問題に触れ、「今、書店はかつてないほど厳しい状況にある」と強調。「昨年、群馬組合では脱退が1店もなかったが、未加入店に声をかけ、1店でも多く組合員を増やしたい」と組合加入促進に意欲を示し、協力を呼びかけた。
続いて竹内理事長を議長に議案審議に入り、平成28年度事業報告、決算報告および監査報告、平成29年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。このほか議事では、日書連の動向、TRC問題、業界の動きについて竹内理事長と小林卓郎副理事長から説明があった。
来賓の群馬県中小企業団体中央会・岩城課長補佐の祝辞で総会を終了した。
総会終了後、出版社の新刊説明会および運送会社との懇談会を行った。
(鹿沼中広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「本を通した町おこし」/滋賀・ますや書店代表取締役社長・岩根秀樹

「地域おこし協力隊」をご存知でしょうか?うちの町でも地域振興、芸術振興、自伐型林業の普及を目的として募集、一昨年から活動している。その隊員のU君がこの町に100年以上前から運営されている私立図書館があること、小さな町なのに新刊書店が2軒、古書店が1軒あること、読書グループの活動が盛んなことに注目し、本を通した町おこしを立案した。吉本芸人キングコング西野さんのトークショーと「えんとつ町のプペル」原画展、本のフリーマーケット「ストリート古本市」、カメラ女子とタイアップした我が町の魅力を紹介する文庫本「きのもと文庫」の刊行を企画し、自治体、観光協会、商店街の協力のもと実行された。
ストリート古本市には30店余りの個人や古書店が出店。うちの店も自由価格本を仕入れて出店した。隣は絵本や文庫本を並べた若い主婦。お客さんが来ると話しかけて、そのうちに売れていく。古本市ではみなさん会話を楽しみながら売り買いされている。初めてなので売れ筋が読めなかったが、絵本や地域に関する本が売
れて、普段とは違った面白い1日だった。
そんなことをしていて思うことはやはり正味の問題。うちでは委託はなく選んだ本だけを仕入れている。残れば返品することもできるが、気分は買切のつもりだ。買切でもいいから正味を下げてほしい。

「新たな読者の発掘」施策推進を/森井理事長が呼びかけ/石川総会

石川県書店商業組合は5月26日、金沢市のKKRホテル金沢で第29期通常総会を開催。組合員50名(委任状含む)が出席した。
冒頭、森井清城理事長は「書店を取り巻く環境は一段と厳しくなりつつある。書店も指をくわえているばかりではなく、規模や立地にマッチした経営が求められている。1つのパイを奪い合うことに汲々とするのではなく、新たな読者を発掘する施策が必要ではないか。そのためにも『ブックスタートはじめての絵本』や『親と子の絵本ワールド・イン・いしかわ』など、将来の大切な読者層の裾野を広げる催しについてテコ入れや協力・支援できる方策を真剣に考える必要がある」とあいさつした。
引き続き森井理事長を議長に議案審議を行い、第29期事業報告、収支決算報告、監査報告、第30期事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
任期満了に伴う役員改選では、選考委員による指名推薦で理事14名、監事2名を再任した。
(事務局・金野忠)

「地域に書店は必要」福島から声あげよう/福島総会で西理事長

福島県書店商業組合は5月28日、郡山市のホテルプリシード郡山で第33回通常総会を開き、書店13名、出版社・関係団体8名が出席。西猛理事長(西沢書店)を再選した。
総会は鈴木雅文副理事長(昭和堂)を議長に議事を進行し、すべての議案を原案通り承認可決した。
事業報告では、第2回「私のおすすめ本メッセージカードコンテスト」に1880通の応募があり、11月に表彰式を行ったと報告された。福島県主催「マイバッグ推進デー」では、提供を受けたキャンペーン用のブックカバー(新書、文庫、一般書の3種類)とPR冊子を組合員書店に配布し、同企画に積極的に参加したと説明があった。また、今年で11回目を迎える「えほんワールドinふくしま」は8月12日~13日に開催との報告があった。
任期満了に伴う役員改選では、選考委員会が理事14名、監事1名を選出。長年にわたり組合活動に尽力した国岡英司氏(若松屋書店)が勇退し、新理事に阿部音也氏(阿部回春堂)を選任した。
このあと新理事による第1回理事会を開き、西理事長を再選した。
6期目を迎える西理事長は「書店を取り巻く環境はいっそう厳しさを増している。ここ10年で約40店が廃業し、現在64店まで減少した。書店組合の存在はますます重要になっている。総会前に開いた理事会で、長年配達してきた出先機関から配達打ち切りの連絡を受けたと、ある理事が発言した。書店の存続は、地域にニーズがあるかどうかがすべて。地元の書店がなくなって一番困るのは誰か。書店も変革しなければならないが、地域が書店を育てることも大切なのではないか。もう少し書店に温かい目を持っていただけるように、組合一丸となって取り組みたい。まず福島県から声をあげていこう」と声を強めてあいさつした。
これを受け、第10号議案「その他」に本件を明記。次回理事会で方策を探ることを満場一致で決めた。
(大内一俊広報委員)

神宮館の暦・カレンダー増売に取り組む/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(井上俊夫理事長)は5月11日、横浜市中区のかながわ労働プラザ会議室で定例理事会を開催した。
日書連報告では、全国万引犯罪防止機構内に出版業界で対策本部を立ち上げ万引防止に取り組むことになったと報告。万引問題については、理事からは出版社もタグをつけて、防犯にも積極的に取り組んでもらいたいとの意見が出された。
理事会の開催前に、毎年実施している「神奈川県夏の推薦図書読書感想文コンクール」について金の星社と神奈川新聞社から開催概要の説明があり、今年度も積極的に協力することを確認した。また、神奈川県読書推進会が主催する「大好きな本絵画コンテスト」の審査が4月29日に行われ、その表彰式が6月10日に開催されると報告があった。
議事では、3店舗の脱会届が報告され承認した。また、例年行っている神宮館の暦及びカレンダーの増売企画が発表された。実施要項は前年度と同様で、組合員にとって大変好条件となっている同企画の増売に積極的に取り組むことを承認した。(山本雅之広報委員)

商談会出展社数の目標を達成/参加書店拡大へ協力求める/北海道総会

北海道書店商業組合は6月13日、札幌市中央区のJRタワーホテル日航札幌で第41回通常総会を開き、組合員56名(委任状含む)が出席した。
総会は和田修理事(計文堂)の司会で進行。あいさつを行った志賀健一理事長(リブレリーフィール)は消費税問題について、日書連など出版4団体が窓口を一本化し、軽減税率適用へ関係各所にロビー活動を行っていると現状を説明し、軽減税率実現を重要項目として引き続き取り組む方針を示した。
また、東京の渋谷地区で実施される万引防止対策の「渋谷プロジェクト」や、書店の粗利30%獲得運動、アマゾンの出版社との直取引拡大など、出版業界の最近の動向を報告。最後に、9月5日に開催する第4回北海道書店大商談会について、「出展社が昨年と同じかそれ以上になる見込みで、あとは全道の書店にいかに参加していただけるかが大きな課題だ」と述べて協力を求めた。
続いて中尾邦幸副理事長(マル五中尾書店)を議長に議案を審議し、平成28年度事業報告、収支決算報告、平成29年度事業計画案、収支予算案など全ての議案を原案通り承認可決した。
事業報告では、第3回北海道書店大商談会を昨年9月6日に札幌パークホテルで開催、出展107社・106ブース、来場書店203名と報告があった。
同商談会の実行委員長を務める中尾副理事長は、9月開催の第4回商談会について「出展申込みが110社を超え、目標達成が確定した。出展料を若干下げているので経費削減の努力をしていきたい。いろいろなイベントを考えているので、多くの書店に参加していただきたい」と述べた。
総会終了後は懇親会を開催。志賀理事長のあいさつに続き、来賓の日本出版販売北海道支店・菊地基仁支店長、小学館パブリッシング・サービス北海道支社・上村克行支社長があいさつし、北海道新聞・熊谷純二出版センター長の発声で乾杯した。

商談会の出展状況報告/北海道理事会

北海道書店商業組合は総会に先立ち、6月13日に定例理事会を開催した。
志賀理事長が日書連理事会の報告を行った後、北海道組合の活動を審議。第4回北海道書店大商談会について実行委員長の中尾副理事長から、出展申込みが111社に到達したとの報告があった。また、総会の進行等の打ち合わせを行った。(事務局・髙橋牧子)

前年同期比で97・14%/2016年下期ABCレポート

日本ABC協会は2016年下半期(7月~12月)雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載したのは39社152誌。各雑誌部数の前年同期比の平均(既存誌ベース)は、週刊誌93・32%、月刊誌98・21%、合計97・14%となった。
総合週刊誌は、『週刊文春』が前期から8千部減とやや部数を減らしたが42万7千部で販売部数トップを維持した。2位の『週刊現代』は9千部減の31万3千部、3位の『週刊新潮』は1万2千部減の25万7千部でともに前期を下回った。新聞社系では、『週刊朝日』が8千部減の8万部、『サンデー毎日』が1万部減の4万4千部と低迷した。
ビジネス誌は、『週刊ダイヤモンド』が4千部減の8万5千部、『週刊東洋経済』が前期から微減の5万8千部。『プレジデント』は4千部増の16万4千部と上向いた。
女性週刊誌は、『女性セブン』が7千部減の21万2千部。『女性自身』が5千部減の19万9千部と20万部の大台を割った。『週刊女性』は1千部減の10万9千部だった。女性月刊誌は、『SPRiNG』が2万6千部増の12万7千部と好調を持続。『sweet』は9万4千部増の29万1千部と大きく盛り返した。

17年上半期ベストセラー、総合1位は『九十歳。何がめでたい』/トーハン、日販、大阪屋栗田が発表

トーハン、日販、大阪屋栗田が発表した2017年上半期ベストセラーによると、総合1位は各社とも佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(小学館)だった。
『九十歳。何がめでたい』は、佐藤愛子氏がユーモアを交えながら歯に衣着せぬ物言いで世の中を切った痛快な内容が話題になり、50~70代の女性を中心に売れた。2位はトーハンが大川隆法『伝道の法』(幸福の科学出版)、日販と大阪屋栗田が村上春樹『騎士団長殺し第1部・第2部』(新潮社)。3位はトーハンが『騎士団長殺し』、日販と大阪屋栗田が恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)だった。
集計期間はトーハン、日販が16年11月26日~17年5月25日、大阪屋栗田が16年12月1日~17年5月31日。

NR出版会『書店員の仕事』出版記念会/書店員5人、座談会で「思い」語る

亜紀書房、インパクト出版会、現代人文社、新泉社、柘植書房新社、七つ森書館という、人文・社会科学書を中心に扱う出版社6社で構成するNR出版会(深田卓代表幹事=インパクト出版会)は5月26日、東京・文京区の文京区民センターで、同会の情報誌の連載記事をまとめた単行本『書店員の仕事』の出版記念会を開催。書店や出版社など97名が出席した。
冒頭、あいさつした深田代表幹事は、アマゾンが日販バックオーダー発注を終了することに言及し、「(アマゾンから届いた封書は)滅茶苦茶で、読めば読むほど頭にくる。ロングテール戦略で少部数の本も長く売り続けると言ってきたアマゾンが、そのしっぽを切り捨てるという。少部数しか売れない本は扱わないという姿勢は許しがたい」と批判した。
一方、『書店員の仕事』に登場する書店員は「自分だけが儲かればいいという商売をする人たちとは全然違う」として、2013年に閉店した神戸市・海文堂書店の平野義昌氏が同書に記した「売れる本だけでは楽しくありません。売りたい本があるのです。街の本屋が文芸書や教養書を大量に売ることは無理でしょうが、1冊でも並べたい、売りたい、売れてほしい。読者にこんな本もあるでえと自慢します」という一節を紹介。「これは書店員の共通の思いではないか。このような思いに出版界は支えられている。今後も、ひねくれ小出版社の本を売っていただきたい」と述べた。
この後、新泉社の安喜健人氏(NR出版会営業委員会議長)が進行役を務め、執筆者による座談会を開催。喜久屋書店阿倍野店の市岡陽子氏(執筆当時・喜久屋書店北神戸店)、丸善京都本店の伊藤美保子氏(同・ジュンク堂書店新宿店)、HMV&BOOKSTOKYOの幸恵子氏(同・リブロ池袋本店)、田中茂氏(同・島森書店大船店)、平野義昌氏(同・海文堂書店)の5人が、執筆時のエピソードや書店に対する思いを語り合った。

「大江健三郎全小説」15巻/創業110周年記念企画で刊行/講談社新刊書籍説明会

講談社は5月24日、東京文京区の本社で2017年初夏の新刊書籍説明会を開催。著者や各部署の担当者が登壇し、作品の魅力をプレゼンテーションした。
野間省伸社長は「昨年は3年ぶりに増収増益決算となり、今年上半期も好調に推移。ライツとデジタル部門が大きく数字を伸ばしている。19年に創業110周年を迎えるが、第1弾記念企画として『週刊鉄腕アトムを作ろう!』を4月に創刊し、他にもいくつかの企画を考えている。その1つが『大江健三郎全小説』。これからもワクワクするような新しいサービス、話題となるコンテンツを届けていく」とあいさつした。
創業110周年記念企画『大江健三郎全小説』(全15巻)は、18年7月から刊行を開始する。発表以来一度も書籍化されなかった「政治少年死す」など入手困難な小説も収録する。
実用書では、『業界地図の見方が変わる!無名でもすごい超優良企業』の著者、田宮寛之氏が「ビジネスマン、投資家、就活生に役立つ業界情報を収録した」とアピールした。また、『フリパラツイスト30秒リンパひねりでみるみるやせる!』の著者、高橋義人氏(ビデオ出演)、『ミオドレ式寝るだけダイエット枕』の著者、小野睛康氏は、エクササイズのポイントを実際の動きを交えながら解説した。
講談社MOVE編集チームと日能研が共同企画した『マルいアタマをもっとマルく!日能研クエストシリーズ』は、小学生向けの新シリーズ。
文芸作品では、『キッズ・ファイヤー・ドットコム』の著者、海猫沢めろん氏が登壇。ホストクラブ店長がIT社長と一緒にクラウドファンディングで子育てすることを思いつく、新時代の「イクメン小説」について語った。また、盲人マラソン大会に挑むフリーターを描く青春恋愛小説『風が吹いたり、花が散ったり』の著者、朝倉宏景氏、元公安で地下鉄サリン事件の捜査に携わった『カルマ真仙教事件(上)』の著者、濱嘉之氏も登場した。
講談社エディトリアルは外国人へのプレゼントにも最適な『英語と日本語で紹介する寿司ネタの魚がわかる本』『中国語と日本語で紹介する寿司ネタの魚がわかる本』、一迅社は累計300万部の人気コミックス『ヲタクに恋は難しい4巻』を紹介した。

図書コーナー充実事業へ参画/新たな組合加入メリット創出/佐賀組合

佐賀県は、「子育て大県〝さが〟」プロジェクトの一環として、子供たちが身近な場所で本を手に取ることが出来る機会を増やし、地域・家庭における子供たちの読書活動の推進を図ることを目的に、「子どもの居場所の図書コーナー充実支援事業」を実施する。
幼稚園、保育所、認定こども園など、県が規定する「子どもの居場所」のうち、図書コーナーの整備や充実を図る施設100カ所に、県立図書館司書が薦める児童書の中から希望する本を最大50冊助成する。
佐賀県書店商業組合の堤洋理事長は「前年度のこの事業では、施設230カ所に児童書1万3800冊を書店組合を通じて配布した。これにより組合財政は黒字化し、参加した書店14店も収益をあげ、新たな組合加入メリットになった」と成果を強調。今年度も組合として積極的に関わっていきたいとしている。

「郷土の本200選」山形組合がリスト作成

山形県書店商業組合は、平成29年度日書連読書推進活動の一環として日書連から補助金の支給を受け、「やまがた『郷土の本200選』1999―2017」のリストを作成。県組合ホームページに掲載した。
この18年間に発行された山形県に関する郷土本を200冊選んだもので、「やまがたの本」の移り変わりを楽しめる内容になっている。また、品切れや絶版などで流通していない本も含まれていることから、今後に残る貴重な資料にもなっている。
山形県書店商業組合は、組合員にこのリストを配布し、県内で読書推進活動を広げていくとしている。
(五十嵐靖彦広報委員)

トーハン、減収増益の決算/売上高4613億円、2・6%減少/豊田、田仲両氏が専務に昇任

トーハンは6月6日、第70期(平成28年4月1日~29年3月31日)決算概況を発表。単体売上高は前年比2・6%減の4613億4000万円となった。
売上高の内訳は、書籍が同2・0%減の1809億5700万円、雑誌が同4・3%減の1629億9300万円、コミックが同8・4%減の520億5600万円、MM(マルチメディア)商品が同5・1%増の653億3200万円。書籍は前年に近い水準を維持し、MM商品は映画関連商材が売上を牽引した。雑誌は創刊92点に対して休廃刊が365点と多く、電子雑誌読み放題サービスの拡大も影響した。コミックは電子市場の拡大や大物商品の連載終了などが響いた。
返品率は、書籍が同0・2ポイント増の41・4%、雑誌が同0・6ポイント増の47・0%、コミックが同1・3ポイント増の30・1%、MM商品が同1・8ポイント増の13・6%で、総合では同0・4ポイント増の39・8%。取引先書店の状況は、文教堂の取引変更の影響で、売場面積は増床1万2226坪、減床3万5292坪となり、差引き2万3066坪縮小した。
売上総利益は同1・7%減の501億4000万円。全社的なコスト削減によって販売費及び一般管理費は売上総利益の伸びを1・2ポイント下回り、営業利益は同6・6%増の65億5200万円。経常利益は同8・3%増の42億2200万円、税引前当期純利益は同16・1%増の44億3900万円、当期純利益は同31・3%増の30億4200万円と、減収増益の決算になった。
輸送については今期、日本通運の運賃値上げ約2億5000万円など、合計5億円強の値上げが確定しており、川上浩明専務は「運賃値上げ要請は今年度に入っても続くと思われ、輸送問題は非常に大きな課題になっている」と話した。
連結子会社15社を含む連結決算は、売上高が同2・6%減の4759億700万円、営業利益は同6・6%増の63億400万円、経常利益は同18・2%増の42億2300万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同75・5%増の28億3600万円で、単体と同様に減収増益の決算になった。
役員人事は、豊田広宣、田仲幹弘両氏が常務から専務に、藤原敏晴取締役が常務に昇任した。また、渡辺勝也、堀内洋一両氏が取締役に、金子俊之氏が執行役員に新任。清水美成専務と髙田聡取締役が退任し、清水氏はトーハン・メディア・ホールディングス社長に就任、髙田氏は5月31日付で協和出版販売社長に就任した。

新社長に髙田聡氏/協和出版販売

協和出版販売は5月31日に臨時株主総会・取締役会を開催、下記の役員が就任した。
代表取締役社長髙田聡
常務取締役(営業担当)
三浦敏
取締役磯野芳郎
同大西良文
監査役吉田尚郎
相談役小貫邦夫
磯田肇代表取締役は退任した。

受賞

★講談社出版文化賞
平成29年度・第48回講談社出版文化賞の贈呈式が5月25日、東京都文京区の講談社レセプションルームで行われた。
贈呈式では、講談社野間省伸社長が各受賞者に賞を贈呈。さしえ賞受賞の日端奈奈子氏は、あいさつでイラストレーターの仕事と子育ての両立に苦しんだことを振り返り、「イラストレーターをやめようと思ったことも1度や2度ではなく、素晴らしい賞をいただき本当に驚いている。ここがゼロ地点だと思って新たに進んでいこうという気持ちになった」と話した。
〔各賞受賞者〕
▽さしえ賞=日端奈奈子「太陽にふれる月」(小説すばる)他▽写真賞=ヨシダナギ『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)他▽ブックデザイン賞=工藤強勝『神田神保町書肆街考世界遺産的〝本の街〟の誕生から現在まで』(筑摩書房)▽絵本賞=青山邦彦『大坂城絵で見る日本の城づくり』(講談社)
★向田邦子賞
優れたテレビドラマの脚本と作家に贈られる第35回「向田邦子賞」(主催=向田邦子賞委員会、東京ニュース通信社)の贈賞式が5月30日、東京・千代田区の帝国ホテルで開催。TBSで2016年4月20日~6月22日に放送された「毒島ゆり子のせきらら日記」を書いた矢島弘一氏が受賞した。式には主演の前田敦子さんら出演者たちも駆けつけ、受賞を祝った。
大物政治家の番記者として働きながら、私生活では奔放な恋愛を満喫していた主人公の女性が、魅力的な男性と出会い、恋に落ちて、壮絶な最後を迎えるまでを描く。テンポの良い会話とコミカルな人間描写で、現代の女性が持つ心理を軽妙につづっている。
矢島氏は2006年に旗揚げした劇団マハロを主宰する演出家。連続ドラマの脚本は本作が初めて。贈賞式で「初めてのことなので、プロデューサーや監督のアドバイスを聞きながら無我夢中で書いた。受賞したことで人生が変わっていくと思う。これからも精進する」と喜びを語った。

マージン30%、痛みを伴う覚悟で/OaK友の会で田村会長が実現訴え

第51回「OaK友の会連合大会」が6月7日、静岡県の舘山寺温泉・ホテル九重で開催され、会員書店、出版社、大阪屋栗田など総勢318名が出席した。
冒頭のあいさつで、OaK友の会連合会の田村定良会長(田村書店)は、「マージンが30%になれば書店はやっていけると言われるが、実現は簡単ではない。今までの考えを変え、痛みを伴うことを受け入れてでも30%になる制度を考えスタートしないと、次の世代は書店を経営していけない。大阪屋栗田は業界再編の渦に飲み込まれたが、見事に新しい出版取次の体制を作り上げた。しかし取引先書店が厳しい中にあっては、大阪屋栗田もこの先喜ばしい状況とはいかないだろう。少々無理難題を言っていただいて結構なので、30%の実現に取り組んでいただきたい」と訴えた。
来賓の大阪屋栗田・大竹深夫社長は決算について、16年4月~17年3月の総売上は802億円、前期比86%強で、このうち書籍は450億円、同88%、雑誌は338億円、同89%、返品率は40・1%(同2・1ポイント増)と報告。この要因について、市場全体の縮小や、大阪屋の時に前年度大型出店が続いたこと、また不採算取引先との取引解消、採算割れ店や高齢化・後継者難による閉店の増加が影響したと説明した。
大竹社長は田村会長のあいさつに触れて、「悲痛な声と受け止めた。わが社もまだ現状は厳しく、きちんとした経営体制を構築することが今後の課題。この業界の足腰である物流を残していくためには、制作コストをコントロールでき、部数や掛け率、定価も決められる出版社が、自社の利益と小売の利益のバランスを考えて企画していただくことが大事だ」と述べた。
この後、出版社を代表し小学館の山岸博専務が祝辞。大阪屋栗田の服部達也副社長や若手社員が、楽天ポイントカード導入のメリットやオリジナル企画等の説明を行った。
懇親会では、日書連の面屋龍延副会長(大阪府書店商業組合理事長)が、書店の粗利益30%確保や、ストップ・ザ・廃業委員会の活動など、日書連や大阪組合が取り組んでいる施策について説明して乾杯の音頭を取った。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・斎藤一郎

パソコンやスマホのおかげで、かつてないほど目を酷使する現代人。主婦の友社編『疲れ目・視力減退にぐぐっと効く生活習慣』(主婦の友社950円)は眼科医から鍼灸院などの専門家が解説する目の回復法、眼病克服法である。
目の仕組みがわかる基礎編では目のトラブルを見逃さないコツ。疲れ目一掃編では体のツボが紹介される。目の老化からくる疲れには、まず小指の付け根の手のひら側、手の甲の手首の小指側に丸く出た骨の下のくぼんだ部分と、この2点を毎晩10から20回押す。老眼が進んだり、目が疲れやすい人に著しい効果があるという。白内障や緑内障には耳たぶの裏。イヤリングをつける場所。
日比野佐和子著/林田康隆監修『驚くほど目がよくなる!たった10秒の「眼トレ」』(SB新書800円)も眼を必要以上に使う我々に警鐘を鳴らす。そもそも人間の目は遠くが見やすく、近くばかり見ていると疲れやすい構造になっている。
近年は20代で「スマホ老眼」の人が現れている。目を温めると視力がよみがえる章ではホットタオルを約2分、乗せるだけで血流が回復し、疲労解消する。目の筋肉にも乳酸がたまるのである。10秒エクササイズや食のアドバイスも満載だ。