全国書店新聞
             

平成21年3月1日号

アマゾン、早大と組んで学生、校友に本値引き/他大学、カードに波及?

アマゾンが早稲田大学の学生・校友・教職員に書籍を3%または8%引きで購入できるサービスを発表した。2月19日に開かれた日書連理事会では「卒業生までサービスの対象で、他大学にも拡がりかねない。出版再販制度を根底から崩壊させるもの」として、激しい批判の意見が相次いだ。
アマゾンが開始したサービスは早稲田大学の学生、校友(卒業生で組織)、教職員を対象に、アマゾンのサイトでアマゾンギフト券を使用して割引価格で書籍を購入できるというもの。ギフト券は固有のIDで管理されており、年間15万円まで購入できる。
早稲田大学の学生数は約5万人、教職員3千人、年間5千円の校友会費を納める校友会員は50万人で、学生の割引率は8%、校友は3%だが、JCBなどクレジット機能付き「早稲田カード」の会員は8%の割引となる。
理事会でアマゾンの割引サービスについて説明した再販研究委員会岡嶋委員長は「生協と異なり、大学という一つの企業体に対するサービスで、再販制度を踏みにじるもの。これを看過すれば出版再販制度は終り。運動を起こす必要がある」と危機感を表明した。
これに対して各理事から「アマゾンと早稲田大学という私企業との契約であり、他大学、他カードに拡大する恐れがある。韓国のようにネット販売は10%引きになりかねない。放置すればアマゾンの独占を招き、小売書店は2、3年でつぶれる。断乎、戦うべきだ」(吉岡理事)、「早大だけでなく、ネット販売すべてに8%引きを狙うもの。再販の崩壊につながり、書店はつぶれる。アマゾンに2兆円を独り占めされる。書店の声を結集したい」(面屋副会長)、「アマゾンに差し止め訴訟を起こすべきではないか」(山口理事)、「(OBで組織する)出版稲門会としても抗議なり意見を発表したい」(谷口副会長)などの発言が相次いだ。
これを受けて岡嶋委員長は「理事の皆さんが重大な懸念を持っていることを確認した」と述べ、対応策を検討していくことにした。
また、福島でワンダーグーいわき鹿島店が「新品本」として書籍・雑誌新刊に10%のポイントをサービスしている問題では、同店がいぜんチラシで10%引きをうたっているとして再販研究委員会に再度問題提起する方針が説明された。

アマゾン問題への意見募集します

アマゾンと早稲田大学が共同で開始した「本の割引サービス」について、書店はじめ読者の皆さんの声・ご意見を募集します。ネット販売で本の割引が拡大しないか、書店に対する影響はどうか、寡占化が進む懸念はなど、8百字以内にまとめ、全国書店新聞「アマゾン係」までご応募ください。メール応募も可。

ポイント運用状況、小売公取協で報告

トーハンが「e-honブックショップメンバーズ」として導入するポイントカードについて、19日の公取協理事会は、トーハンからシステムの説明を受けたことが報告された。e-honの会員になって本を購入すると定価の1%のポイントが付き、一定ポイントで景品と交換するが、値引きではないことを強調したという。
また、書店グループ「NET21」のポイントカードについては、400円購入で4ポイントを付加し、景品専用にクーポン券を提供する仕組みという説明があった。
小売公取協では日販の「HonyaClub」、大阪屋の「HoNoCa」についてもポイントカードの運用状況について調べたいとした。

物流研究で特別委/新流通システム探る

2月19日に開かれた日書連定例理事会では、取引改善問題で大阪組合からの提案を受けて「物流研究特別委員会」が設置されることになった。
大阪組合の提案は、日書連共済会残余財産の利用として「書籍・雑誌の共同仕入れ会社の創設及び発注・検索システム構築」のために特別委員会を設置してほしいという趣旨。具体的には①客注品の5日以内の調達、②買切り商品の共同仕入れ、③在庫検索・発注システムの構築をめざし、「日書連流通会社」設立、既存取次システムの利用なども検討していこうというもの。
提案説明を行った大阪組合戸和副理事長は「売れる本が入ってくるシステムを検証したい。新流通システム運営団体設立に向けてスキームを考えるのが狙い」と述べた。
この結果、日書連に「物流研究特別委員会」を立ち上げ、各ブロックから2名以上の委員を推薦してもらうことになった。
このほか、新刊委託、延べ勘、常備寄託など出版社、取次、書店で解釈に相違のある取引用語の統一問題については、柴﨑委員長が出版ニュース社発行『出版事典』、書協発行『出版社の日常用語集』、日販発行『書店新社員ハンドブック』を対比した資料を作成。1月29日付で取協に見解を申し入れたことを報告した。取協からは17日の運営委員会で検討する方針を確認したという連絡が入っている。
〔指導教育〕
各県の返品運賃負担の実態調査について、鈴木委員長から3月末を締め切りに各県組合にアンケート調査を行うと報告した。この回答を元に、各県の負担実態の地図を作成するとともに、ヒアリングも行って現状を把握する。
北海道の民間9団体と道警が万引きをさせない運動に取り組んでいる件では、北海道組合久住理事長が概要を報告。平成18年11月に万引き防止をテーマに「安全・安心まちづくりシンポジウム」が開かれた。これを受けて①万引きは全件警察に届ける、②調書合理化など被害店の負担軽減化が図られ、成果を上げていることなどを紹介した。
鈴木委員長は千葉県でも県警の呼びかけで万引き防止のパネル・ディスカッションがあることを報告し、4月頃、中央に対策強化を働き掛けてみたいとした。

利益出る販売システム/筑摩書房と数社で検討中/2月理事会

〔流通改善〕
藤原委員長は、筑摩書房菊池社長の話として、買切りと時限再販に歩安入帳を加味したシステムを検討中であり、数社に声をかけて具体化を検討しているようだと報告した。また、講談社から今秋10月に刊行する児童書の新シリーズ(CD付、全5巻)は書店利益3割以上、時限再販6カ月、返品は4掛の歩安入帳の方向で検討しているとした。
藤原委員長は「書店の粗利が取れる販売の仕組みをさらに研究していきたい」とした。
〔情報化推進〕
書店店頭に掲示したポスターのQRコードを携帯電話で読み取り、試し読みする「ため本」は、昨年12月から東京都内と鳥取・島根の11店舗でテストが行われている。井門委員長は小学館、集英社、講談社の3社が新刊5点ずつ少年、少女、青年コミックと3期に分けて展開中であり、近くテスト店と情報交換を行いたいとした。
日書連MARCの導入については、2月に山形県で農業高校と小学校に図書管理ソフト「情報BOX」の導入が決まったこと、滋賀県でも新年度小・中学校6校に導入を予定していることが報告された。
〔増売〕
「心にのこる子どもの本夏休みセール」は、例年通り児童図書出版協会会員各社が推薦する①絵本、②読み物、③遊びと学習、④読み聞かせライブラリー絵本の各セットを6カ月長期委託で出荷。申込書は3月に各書店へ発送する。注文締切は4月30日。
世界本の日=サン・ジョルディの日を記念した雑誌出版社50社特別共同企画については、「心が揺れた1冊の本」を募集するほか、「本の川柳」の作品を募集。グランプリ1名に図書カード3万円、入選15名に同5千円を進呈する。
雑協が7月1日から8月20日まで開催する雑誌愛読月間の「年間定期購読キャンペーン」では、受注獲得上位店に10万円から1万円、総額100万円の報償金を払うことが紹介された。
作秋実施した読書週間書店くじWチャンス賞には2556通の応募があり、100名の当選者を選んだ。
〔読書推進〕
第4土曜日は子どもの本の日の読み聞かせは、北海道に続いて九州ブロックで開催すると谷口委員長が説明した。また、都道府県書店組合で独自に展開する読書推進の取り組みが発表された。(6、7面掲載)。
〔共同購買・福利厚生〕
ソニー損保から自動車保険の申込書配布について申し入れがあり、東京組合ならびに首都圏各組合でテスト展開したいと説明があった。各県組合にはソニー損保から具体的提案がある。
1月の組合加入・脱退は加入2店、脱退38店で、組合員の合計は昨年4月1日対比328店減の5595店となった。
〔消費税問題〕
面屋委員長は「政局が混乱しており、『心の糧、出版物には軽減税率を』」というキャンペーンを展開していきたい」と述べた。山本理事からは「衆議院予算委員会で食料品の軽減税率について質問があった。出版業界も働きかけが必要」という声があがった。
〔広報〕
各県組合の広報活動活発化のため、昨年、書店新聞に総会開催の報告がなかった17組合を重点組合に、広報活動をフォローしていきたいとした。
〔理事交代〕
▽新理事=宇治三郎(和歌山市・宇治書店)
▽退任理事=多屋昌治(田辺市・多屋孫書店)
〔日書連共済会〕
日書連共済会の清算第2期の監査結果が井上喜之監事から報告され、これを承認した。残余財産5億3424万円は5月末に日書連会計に移すことになった。

書店人と読者の情報サイト/ブックマンカインドを開設

全国の書店人と本好きのための情報&意見交換サイト「ブックマンカインド」が昨年10月中旬にオープンし、今年2月には1日アクセス数が2500PVになるなど、利用者が順調に増えている。同サイトを運営する新栄堂書店・柳内崇社長にサイト立ち上げの狙いなどを聞いてみた。
ブックマンカインドはユーザー登録して会員になるとスレッド(議題)が立てられ、本に対する思いや意見、知りたい情報を教えてもらうなどの活用ができる。会員登録しないで「ゲスト」として閲覧、書き込みも可能。これらはいずれも無料で利用できる。
最新のスレッドを見てみると、書き込みの多い順に「出版業界よもやま話!ニュース」「店頭の動き、これからの注目品、品揃え」「ビジネス書の担当会議しましょう」「心に残っている絵本・児童書」「あの作品の映像化」と、書店人らしいタイトルが目立つ。
柳内社長は「これから売れそうな本、お客様から聞かれたことなど、書店人、パート、アルバイトが情報を共有し広く活用できる場になることを期待しています。サイト発のベストセラーが生まれるかも。読者からは本屋に質問したいけど聞きにくいことなど、なんでも質問してもらいたい」と、幅広い活用を提案する。著者、編集者や出版社、印刷会社からの発言も歓迎している。
サイト立ち上げの初期費用が百万円、ランニングコスト毎月4、5万円は同社の持ち出し。「ここで本を売ろうと思えば多少の収益はあがるが、それが目的じゃない。お客様の質問に対するベストアンサーを月間ソムリエ大賞にするなど、回答者へのインセンティブも必要で、売上げを還元するアフィリエイトの仕組みも考えていきたい」と今後の計画を語る。アドレスは以下の通り。
http://bookmankind.jp

1月期は平均95.3%/SC内の売上げは8%減少/日販調べ

日販経営相談センター調べの1月期書店分類別売上調査がまとまった。1月期は平均95・3%で、前年同月を4・7ポイント下回った。
立地別ではSC内が91・9%と大幅なダウン。イオンの営業概況でも1月期は客数は前年並みだが、客単価が93・9%。食料品以外は軒並み前年比95%以下だという。
ジャンル別では新書、辞典が前年を大きく下回った。新書は8カ月連続、辞典は2カ月連続のダウン。辞典は昨年の『広辞苑第6版』の反動で46・9%と前年の半分以下。コミックの前年割れは16カ月目だが、99・9%と、ほぼ横ばいの数字になった。『黒執事』6巻(スクウェア・エニックス)、『ガラスの仮面』43巻(白泉社)が売り上げに貢献した。
客単価は平均1135・9円で、前年を1・3ポイント上回った。客数の減少
を商品単価で補っている。

日販・王子流通センターが増築、竣工開設披露式

日販は2月17日午前11時から、王子流通センターで同センター増築工事の竣工・開設披露式を開催、259名が出席した。
披露式で日販古屋社長は
「王子NEXTは2006年6月から工事に入り、昨年末完了した。昭和44年、駿河台から移り、当初は雑誌だけだったが、平成元年に文庫自動仕分けを行うPBシステムを導入し、物流の仕組みも大きく変わってきた。平成8年には雑誌を練馬に移し、書籍新刊、注文品の一大物流センターとして今日にきている。平成10年にはマルチソーターを導入し、最新システムで注文品を早くするよう取り組んできた。この間、出版社には情報ネットワークで協力をいただいてきた。今回の王子NEXTでは①オールデータイン、②トレーサビリティ、③24時間365日稼働の3つがテーマ。王子への入荷品はすべて情報をヒモ付けし、注文品が1日早く着く。業界は何でも返品できる仕組みでなく、返品の枠を決めて、利益を分ける方向に大きく舵を切っていく必要がある。物流インフラ整備で量的、質的に新しい提案へチャレンジしていきたい。センターの仕組みをご理解いただき、データインで一層のご協力をお願いする」と述べた。
施工会社を代表して鹿島建設石川専務執行役員の祝辞に続いて、文藝春秋上野社長は「2万2千坪と業界最大級の物流基地が完成した。物流の1大拠点となることを期待している」と祝辞を述べ、同センターの竣工を祝って乾杯した。

芥川賞は津村氏、直木賞は天童、山本氏

第140回芥川賞は津村記久子氏『ポトスライムの舟』、直木賞は天童荒太氏『悼む人』、山本兼一氏『利休にたずねよ』に決まり、2月20日午後6時から東京・丸の内の東京會舘で贈呈式が催された。
贈呈式では、日本文学振興会・上野徹理事長が受賞した3氏に正賞・副賞目録を贈呈。芥川賞選考委員の高樹のぶ子氏は「津村氏の作品は、大きな夢を見ず、小さな夢をつないでいきている現代社会の人間像がよく表現されている」、直木賞選考委員の宮部みゆき氏は「天童、山本両氏の作品の共通するテーマは『人はどのように死をとらえるか』ということで、21世紀の死生観を問い直している」と選評した。
続いて各受賞者が受賞のことばを述べ、津村氏は「受賞したことに驚いている。今までよりも小説を書きたい気持ちが強くなった」、天童氏は「受賞の報を受けてから1カ月、竜巻に巻き込まれたようで、直木賞の力を感じる」、山本氏は「明日を生きるエネルギーを、人々に与えたい」と喜びを語った。
主催者を代表して上野理事長は「3氏とも3度目で受賞となった。各々の持ち味が評価されたことを喜ばしく思う」と述べた。

人事/主婦の友社新社長に荻野善之氏

主婦の友社は2月24日開催の取締役会で荻野善之取締役が社長に昇格する役員人事を決定した。村松邦彦会長は相談役、神田高志社長は会長に就任する。
〔役員人事〕
取締役会長神田高志
代表取締役社長荻野善之
役員待遇依田俊之
取締役相談役村松邦彦
*依田氏は6月の定時株主総会で取締役に就任する予定。常務取締役・塚本俊雄、取締役・村田耕一、同・駒由美子、同・山﨑保継の各氏は2月末日で退任。
〔執行役員人事〕
代表取締役兼制作部担当執行役員荻野善之
役員待遇兼人事総務部担当執行役員依田俊之
執行役員編集部部長
佐藤一彦
同・出版部部長山岡京子
同・販売部部長藤井孝行
同・広告・事業部部長
渡部伸
同・国際部部長星野隆夫
〔組織変更〕
・新たに執行役員制を導入する。
・取締役会とは別に、新たに取締役および執行役員で構成する経営会議をおく。
・事業部制を廃止する。
・経営会議のもとに編集部、出版部、販売部、広告・事業部、国際部、制作部、人事総務部、経理部の8部門に再編成する。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・萩原直美

◇2歳から/『まるさんかくぞう』/及川賢治、竹内繭子=作/文渓堂903円/2008・6
「さんかくぞうまる。ぞうぞうしかく」形の三段重ねの中に、突然「ぞう」や「ふね」が入ってきます。「何か変だぞ?」と思いながらもさらに読んでいくと、ポップな絵とリズミカルな言葉で、だんだん楽しくなってきます。さあ、みんな一緒に、元気な声でもう一度。
◇4歳から/『まえむきよこむきうしろむき』/いのうえようすけ=絵・文/福音館書店840円/2008・2
前向き、横向き、後ろ向き。見る角度を変えると、同じものが違って見えます。ぞう、とけい、かえる…は、どんなふうに見えるかな?ユニークな絵にニコニコしたり、迫力のある絵にドキドキしたり。裏表紙まで楽しめます。身の回りのアレコレを、いろんな角度から見たくなります。
◇小学校低学年向き/『ふしぎなはなや』/竹下文子=作/杉浦範茂=絵/フレーベル館1260円/2008・10
けんたの家は、花屋です。お父さんもお母さんも、毎日忙しく働いています。けんたは「花屋は女の子みたいで、つまらないなあ」と思っていました。でも、このお店では、なんだか不思議なことが起きるのでした。春の暖かい陽射しが待ち遠しい、今の季節にぴったりの本です。

読書推進で店頭活性化/万引きされない仕組みづくりを/兵庫

兵庫県書店商業組合は2月10日、エスカル神戸で定例理事会を開催した。
支部報告では、第2支部で閉店が1店、第5支部で新規オープンが1店報告されたが、組合加入には至っていないと報告があった。
事務局からは、神戸新聞総合出版センターから阪神タイガースのオープン戦のポスター掲示依頼があった。また、日書連の読書推進関連の活動状況報告があり、6年続いている「絵本ワールドinひょうご」と一部有志書店による神戸新聞ブッククラブで年2回開催している講演会と映画の会について紹介、協賛出版社と共同で新聞広告などを実施しているとした。さらに、第3支部有志書店による納入組合では、30年にわたって市内の障害児学級に毎年10万円ずつ寄贈をしていることが報告された。
また、2月4日に大阪厚生年金会館でNPO法人全国万引犯罪防止機構の主催で行われた「万引防止実践講座」に出席した奥理事から報告があった。①声かけ、整理整頓の実施、②何がロスになっているか(ジャンルは?いつ頃とられているか?)、③店内安全マップの作成、④とられている時間帯には人員を増やす――など、まずは万引きされない仕組み作りと地域挙げての環境作りが大切とした。出席理事は熱心に耳を傾けていた。
増売委員会からは、サン・ジョルディの日と子どもの読書週間に合わせたイベントの流れの説明があった。各書店に子どもの本を推薦してもらいコメントを帯に掲載してフェアを実施、期間中に読み聞かせ会を実施するなど、少しでも店頭活性化につなげていきたいとした。
(中島良太広報委員)

4月スタート新課程移行『脱ゆとり』で何が変わるか/安田教育研究所副代表・平松享氏/学参・辞典勉強会

学習書協会と辞典協会は共催で「平成21年新学期学参・辞典勉強会」を2月19日午後1時半から、東京・神楽坂の研究社英語センターで開催。安田教育研究所副代表で、東京都教育庁「都立中高一貫校入学者決定検討委員会」委員などを務める平松享氏が、「4月スタート新課程移行『脱ゆとり』で何が変わるか」をテーマに講演した。今日は学習指導要領がどのようになっていて、それによって書店ではどういったことが起こるだろうかということを、私なりにお伝えしたいと思う。
都内の公立小学校の子どもたちは、今までは公立中から高校に行くか、私立または国立の中高一貫校に進んでいた。現在はそれに加え、公立の中高一貫校に行くという新しい進路ができた。中高一貫校に進む生徒を、自分の地域から外に出るということで「外部進学者」と名づけてみる。外部進学率を見ると、平成20年春に都全体で女子が23%、男子が19%にまで高まっている。
外部進学率の推移をたどると、2002年(平成14年)に男子でグッと率が上がったことが分かる。この年は、現学習指導要領が本格実施になった年。また学校週5日制が完全実施になった年だ。その前に移行措置が2000年にスタートした。これから新課程に移行する我々の今の位置と照らし合わせると、1999年頃がそれに当たる。その時世の中はどうだったかというと、学力低下について一大論争が起こっていた。「円周率は3」というのを覚えておられると思う。小学4年で3桁×3桁の計算を学習していたが、新課程では2桁×2桁と3桁×1桁までということになった。それ以上の計算は電卓でやればいい。ややこしいことを子どもに強いることはない、5日制でやらなければならないのだから、できるだけスリムにしよう。そういうことが言われた時代だった。現在の指導要領は、その前の旧課程と比べると内容を3割減らしてしまった。
男子は中学入試にあまり親が積極的でない層があった。ところがその論争でいろんなことが分かってしまった上に、公立は週5日制になる。それでできる子から中学入試に行くようになってしまった。つまり、脱ゆとりの方向にみんなが気が付いたということだ。文部科学省も気が付いた。ここからが本論になる。
〔理数中心に学習内容が増加〕
まず学習指導要領とは何か。これは、学校でどんなことを教えるのか、どう教えるのかを決めているものだ。今から40年くらい前の時代は、科学技術教育がすごく叫ばれた時だった。スプートニクショックがあって、アメリカがソビエトに科学技術で負けてしまった。その時に日本はアメリカと一緒になって科学技術の人材を質量ともに高めるために、工業高校や高専を作ったり、大学にいろいろ専門の学科を作った。「教育内容の現代化」をうたって、ちょっとレベルを高くしすぎた。
そこで非行や落ちこぼれが増えてしまい、それに対する反省で、ゆとりと充実というキャッチフレーズで1978~79年に教育内容を減らした。そのあと新しい学力観をうたって、詰め込みはよくないんだということで、1989年にさらにスリムになった。そして前回は、基礎・基本を定着させ、「生きる力」を育成するとして、「総合的な学習の時間」を小中学校にたくさん入れた。そして時間数を3割削減した。今は減りきった状態だ。
新課程は、来年度から小中学校ともに移行措置にかかるが、この課程では、教育基本法改正の理念を踏まえ「生きる力」を育成するとしている。また、今までは詰め込みはいけないと言っていたけれど、今回は「知識・技能の習得と思考力・表現力等の育成のバランスを重視する」としている。今回の改訂のポイントは、まず算数・数学、理科の内容、時間数ともに旧課程に戻す。算数・数学は小中学校あわせて212時間多くする。理科は150時間増やす。ここが一番大きな狙いだ。また、国語、社会などでは学習の基盤となる知識を重視する。そして、「学習指導要領=歯止め」を見直す。指導要領は教える内容の最低基準を示すという位置付けに変わる。一方、総合的な学習の時間を減らし、中学では選択の授業を廃止する。
文部科学省が去年作った「生きる力」という学習指導要領の小冊子がある。文科省は、国際的な学力水準というのは確かに落ちているが、基礎的な知識が足りないのではない、それが本質的なところではないんだと言っている。でも実際現場でどういうことが起こっているかを皆さんに見てもらい、それで論を進めていきたい。
ベネッセが行った計算力に関する調査を紹介する。2年生の3月終了時点で九九をどれぐらい間違えているか。8×6は11人に1人くらいが間違えている。私どもは、生徒が苦手としている部分を「九九の穴」と呼んでいるのだが、それを大きな桁の計算を練習する中で少しずつ埋めていくというのが指導の一つのポイントなのだ。かつては、3桁×3桁などを手厚くやるお陰で、小学生で九九の穴がきれいに埋まって、中学にお渡ししていた。それが少しずつ擦り切れていって、今では穴が見えるようになってしまった。
22×38の誤答率は21・5%。2桁同士の計算は標準形だが、それでも5人に1人が間違えている。そして408―279は29・4%が間違えたという、意外な結果が出た。これは桁が大きいからだと思う。3桁の計算は、掛け算だろうが引き算だろうが、同じく苦手だ。桁の大きい計算の練習が足りない。
学習指導要領外の大きな桁の計算をやらせると、問題に取り組まない無回答の子が多い。これは一応発展学習として、3年くらい前から現場ではやっていいことになっている。だがやっているのはおそらく私立だけではないか。こういう部分を新しい学習指導要領では、全面的に元に戻してやらせようという話なのだ。
低学年でなかなか定着が行き届いていない部分がある。それは授業時数を減らして練習が足りなくなってしまったから。家庭学習も、授業時数が減ったのに伴い不十分になっている。そして何よりチャレンジして、難しい問題をやろうという雰囲気が作れない。それが子どもたちの現状ということになる。
それに対して今回の改訂のポイントは、内容も授業時数も増やすが、増やした時間で丁寧に教えるのではない。内容をもっと増やすから密度が高くなる。教えるピッチも早くなる。小学校4年くらいからのこぼれが多く出るだろう。新学習指導要領は、これまでは歯止め規定と認識していたが、現場の判断あるいは教育委員会の判断で、こういう内容まで教えても差し支えない、学力強化の方向に行きなさい、というのが本音だ。そういう学力をきちんと回復させることで、国際的な学力調査の順位を上げたいということだ。
理数を中心に時間数を増やすことで、内容も3割削減を元に戻す。逆に総合選択を減らす。それによってどんなことが起こるか。学校5日制の下だから、ピッチが早くならないと教えきれない。内容が過密に感じられ、ついていけない子どもが増えて、それに対する不安が家庭や地域で高まることになるだろうと思う。学校が、それに対して何とか持ちこたえようとした場合、小学校4年くらいから家庭学習をしっかりやらせようと宿題を出す。できない子にはちゃんと家で勉強してくださいねと先生が言わざるを得ないのではないだろうか。それを助ける教材が売れ筋になると思う。
〔教育熱心な層ターゲットに〕
新学習指導要領のスケジュールだが、この春から小中学校ともに移行措置といって内容を前倒しして実施していく。算数・数学、理科は、授業時数も含めて全国一斉に実施される。その他の科目は、学校の判断で実施時期を決めることができる。移行措置期間は、小学校が2年間、中学校は3年間あるが、我々にとって移行も本格実施も変わらないと考えていい。よく教材を見て、「これは新課程に対応して作ってあるな」という物を前に出すこと。今年4月以降、続々と新課程対応のドリルや参考書が出てくるだろう。それを早く消費者の皆さんにお伝えするのがよいと思う。
小学校の英語について少し触れておく。導入時期は学校によって違いがあるが、都市部では多くの学校で既に実施しているので、来年度にどうなる、ということでもない。それより、専門の指導者ではなく小学校の先生が教えるのだから、中学の英語とどう矛盾なくつなげるかの方が問題といえる。失敗に終わる可能性もあるだろう。
私が考えた売れ筋を紹介する。小学校算数では、特に低学年向きの計算ドリルだ。3年生の時に九九であれだけ遅れているのだから、しっかり勉強させるための教材を家庭でも塾でも必要としていると思う。一方できる子は先にいってしまうので、そういう子には虫食い算をやらせている。新しい教材として算数パズルものも可能性がある。
数学も同じで、今既に小学校を通り越して、中学でできてない子がいっぱいいる。小学生で比をやっていないので、食塩水の計算などは半分くらいが取り組めないと思う。その子たちに比を教えるということは、我々の感覚としては、中学生に昔の小学生の計算部分を伝えるということ。だからお母さんに、中学生でも今この部分ができてない方が多いみたいですよと、そのように紹介できる教材があるといいと思う。
理科は実験が増える。学習図鑑、実験観察の手引きがよいのではないか。理科の計算でも算数を教えなければいけないということがでるだろう。そういうものが載っていれば、子どもたちが自分で解ける、というようになるかもしれない。
国語は、ことわざや故事成語をやるが、「クレヨンしんちゃん」のことわざ辞典のようなマンガを塾でも子どもたちがよく読んでいる。こういう関連で、勉強しなくなっていた子どもを戻す手立てというのが、これからいろいろ生み出されるのではないか。
社会は、小学生で都道府県名と位置、世界の国名と位置を教えるので、白地図がポイントになる。また、地球儀を学習で活用することになった。地球儀は書店で扱う商品ではないかもしれないが、店頭を飾るモニュメントとしていいのではないか。関連商品があるのではと消費者に思ってもらえる効果があると思う。
改訂全体の落とし穴としては、歯止めがなくなるから自由にやっていいということになる。教育内容の自由化で規制緩和が進み、格差が拡大するだろう。どういうことが起こるかというと、経済的にも豊かな方たちは、東京だと私立の小学校に行く。それから私立中に行かせる。高校でも大学の付属に行かせる。あるいは進学指導重点校の都立トップレベルの高校に入れようとする。そういう教育熱心な家庭がますます消費の面で目立つ形になる。
逆に、少し失礼な言い方かもしれないが、それと関係ない方たちは、上の学年になるほど書店とは縁がなくなると思う。教育にある程度お金をかけてもいいという人たちがターゲットになるだろう。数としては少ないが、買う割合はそういう人たちが9割を占めると思う。また、時間数を確保する困難さから、結局は教育の成果というものを個人に帰結させ、自分で自分の道を切り開くしかないという雰囲気になるのではないか。私の塾で、教材をダンボール1箱買った保護者の方がいた。「子どもに繰り返しやらせるんです」という。極端な例だが、思いは皆同じだと思う。子どもには、学校で教わることはできるだけ完璧に習得してもらいたい。それが購買意欲の元になっていると思う。

国会議事堂の地下で半世紀/よい本なら議員にも推薦する/参議院内・五車堂書房

国会議事堂は参議院の地下1階に、戦後早くから書店を営む五車堂書房がある。社長の幡場益(はたば・すすむ)さんを訪ねたのは、おりしも中川財務・金融大臣が辞表を提出した当日。廊下にテレビクルーの機材が放置され、取材陣が右往左往しただろう余韻が残っていた。(田中徹編集長)
〔戦後、神保町で書店始める〕
「ま、こんなところじゃ何だから、お茶でも飲みながら話をするか」と、幡場社長に案内されたのが参議院内の食堂。何しろ国会の中だから警備の衛士が出入り口を固めて、通行証の提示を求める。幡場さんは、一人ひとりに「ヨッ」だか「ヤッ」だかと声をかけて、中に入っていく。相当に顔が広い。午後遅い時間のせいか、がらんとして人気のない食堂でコーヒーを飲みながら、五車堂書房の歴史を聞いた。
五車堂書房の創業は昭和24年12月16日。戦前、教育・警察関係から教科書まで出版していた幡場さんの父、光男さんが出版社を解散して、神保町1丁目1番地で10坪の書店を開業した。駿河台下交差点、三省堂本店の隣にあり、現在は古書店が店舗を構えている。当時の日本は戦後の復興期にあたり、教科書虎の巻が飛ぶように売れた。「坪効率からいうと、三省堂よりうちの店の方が売っていた時期もあった」と、当時の賑わいを伝える。
昭和15年、板橋生れの幡場さんは明治大学に進んだが、在学中、知り合いを頼ってアメリカ西海岸に3年ほど遊んだ。昭和35年から37年にかけての時期。アメリカの車社会を肌で感じて、帰国したら運送屋をやってみたいと考えていた。
帰国して父親に運送会社をやりたいというと、言下に退けられ、書店を手伝うことになった。幡場さんは洋販から洋雑誌を直接仕入れ、須田町から新橋にかけて外資、映画会社、喫茶店、理容店に「タイム」「ルック」「ニューズウイーク」「プレイボーイ」「セブンティーン」をバイクに積み、売り歩いた。映画会社などに行くと洋雑誌を月に3万円以上買ってくれた。
五車堂には国会の文書課の役人が都電で本を買いに来ていた。いちいち買いに来るのは大変なので、参議院の地下に店を出してもらえないかと打診があり、支店として店を出した。何年に出店したか正確にはわからないが、昭和57年に参議院事務総長から「30年営業」の感状をもらっているから、遅くとも27年には国会に店を出していたことになる。その後、神保町の本店は昭和46年に撤退し、国会内の店が残った。
〔「昔の議員の方が読んだね」〕
参議院の地下という立地だけに客は国会議員、議員秘書、職員など。26坪の店内は文芸書や文庫、新書、ファッション雑誌も並ぶが、法律、時事、経済など専門書の比重が高い。雑誌では『東洋経済』『ダイヤモンド』『エコノミスト』は毎号80部。総合誌も『文藝春秋』『中央公論』『世界』は欠かせない。
昨年の岩波書店『広辞苑第6版』は100部以上販売した。なるほど、議員会館の各先生の部屋には『広辞苑』と『六法全書』は欠かせないですねと相槌を打つと、「最近じゃ、六法全書を持っていない先生もいるよ」と声をひそめた。
よく本を買う議員として名前をあげてくれたのが、与謝野馨、森山真弓、鈴木宗男、太田昭宏の各センセイ。自民党の細田博之幹事長は、父の細田吉蔵とともに親子でお得意さん。選挙が近づくと『政治資金ハンドブック』や「公職選挙法」がらみの本が売れる。解散・総選挙となると『国会便覧』(2700円)が3百や5百部ははける。
「ここが防衛、ここが地方行政」と棚の分類を説明してくれたが、ジャンルの表示はない。「だって、お客さんの方で知っているし、うっかり動かすと、かえって怒られちゃう。専門書の品揃えは岩波書店、有斐閣、勁草書房、明石書店、ミネルバ書房と専門書出版社が指定配本で送ってくる。専門書は単価が高いから、どうしても坪在庫は高めになる」と言う。
赤松正雄衆議院議員(公明党)の2月7日のブログには、国会内にある本屋・五車堂の主人から薦められて『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)を読んだと、同書の内容が紹介されている。
幡場さんが読んで薦めた結果、1月半あまりで100部を販売。出版元でも30万部のヒットになっている。昨年のクリスマス・シーズンには、春風社の絵本『わしといたずらキルディーン』の仕掛け販売を行って約60部を販売した。
営業時間は朝9時から午後6時だが、朝6時半には店に出て開店の準備を始めている。店番は奥さんの照子さんと2人。平成の初め1億円あった売上げが、今は半分に減ってしまった。
「やっぱりね、取次の支払いが厳しくなっている。資金繰りが厳しいから、みんな書店をやめていかざるをえない。町から本屋が消えていけば文化は衰退するよ」と小売書店の置かれた厳しい現状を批判する。
レジの後ろには土屋文明の色紙が飾られていた。「五車五車の典籍百回の市に上り千万人の知識となりゆく」。原典は荘子天下編で、恵施という人物は車五台分の蔵書をもち、多方面の知識に通じていたという。五車堂も国会議事堂の地下にあって、国会議員と議員の周辺に必要な知識を提供し、情操教育も担っているのが仕事だ。

売上げ6.4%の減/各部門で大幅な減収に/講談社

講談社は2月23日、文京区の本社で記者会見を開き、第70期(平成19年12月1日~20年11月30日)決算と役員人事を発表した。
第70期売上高は前年比93・6%の1350億5800万円。内訳は雑誌830億300万円(93・7%)、書籍290億640万円(92・1%)、広告収入148億100万円(89・8%)、その他81億8900万円(106・2%)。雑誌の内訳は、雑誌213億8000万円(96・4%)、コミック616億2200万円(92・8%)。広告収入の内訳は、雑誌147億6200万円(89・9%)、その他3900万円(52・7%)。税引前当期純損失は48億7400万円、当期純損失は76億8600万円と、過去最大の赤字となった。
社員総数(2月2日現在)は957名で、昨年より22名減った。内訳は男性637名、女性320名。平均年齢は社員42・5歳、役員57・1歳。
決算報告を行った金丸取締役は「雑誌はパートワークの売上、通信販売、イベント等の事業収入が拡大した。一方、本誌は『月刊現代』『Style』『KING』の3誌を休刊し、すべての雑誌について定価、編成、経費等の見直しを行った。販売、広告収入ともに大変厳しい結果になってしまった。コミックは『good!アフタヌーン』の増刊やプレミアム付き単行本は成功したが、単行本の売上減が大きく、本誌の売上減と合わせて大きな減収となった。書籍は文庫、新書などの主要シリーズが好調だった上に、『流星の絆』など映像化によるヒット、『ソロスは警告する』などタイムリーな話題作もあったが、全体としては大きな売上減となった。広告収入は経済環境の影響もあり、非常に厳しい状況が続いている」と説明した。
今後の展開については「12月、創業100周年を迎えるにあたり、新たな時代の出版社像を模索し、強いコンテンツを日本だけでなく世界に向けて展開したい。雑誌は既存誌の回復と体質改善を第一に、雑誌のブランディングによって事業収入の最大化を図り、コンテンツのマルチ展開で紙の雑誌に付加価値を付ける。コミックは本誌の部数減に歯止めをかけるとともに、映像化やオリジナルアニメDVD、グッズ付きの付加価値の高い単行本の開発などで大幅な売上増にトライする。書籍は好調な文庫、新書を牽引車とし、創業100周年記念事業の『書き下ろし100冊』を中心に単行本の立て直しを図る」とした。
役員人事は大竹永介氏が取締役に新任。今期改選する10名のうち中沢義彦、大塚徹哉、栗原良幸取締役がそれぞれ顧問に就任した。
〔10月書籍新企画で責任販売制〕
また、講談社創業100周年企画について森常務、岩崎取締役が説明した。
「毎週総額100万円分の図書カードが当たる!全国書店キャンペーン」を実施。4月から来年1月までの45週間にわたって、1万円分(2千円×5枚)の100周年オリジナル図書カードを抽選で毎週100名、合計4500名にプレゼントする。対象書目は応募券の付いた出版物。
また、10月刊行予定の書籍新企画の販売条件を責任販売制として、時限再販での刊行を予定している。同企画はセット販売とバラ販売を行い、セット販売については責任販売制として書店出荷正味を通常の委託より利益が確保できるようにする。買い切り延勘とし、返品の場合は歩安入帳。一方、バラでの配本分については通常の新刊委託条件となる。
〔講談社役員人事〕
(○は新任)代表取締役社長
野間佐和子
同副社長(社業全般)野間省伸
専務取締役(コミック事業担当担当局=第五編集局・ディズニー出版事業局)五十嵐隆夫
常務取締役(管理部門統括担当局=広報室・業務局)横山至孝
同(雑誌事業担当担当局=第一編集局・第四編集局)持田克己
同(営業部門統括担当局=雑誌販売局・広告局・宣伝企画部)森武文
取締役(担当局=経営企画室・書籍販売局・流通業務局)岩崎光夫
同(担当局=社長室・社史編纂室・総務局)
山根隆
同(書籍事業担当担当局=校閲局・文芸局・学芸局)鈴木哲
同(担当局=デジタル事業局・ライツ事業局)
入江祥雄
同(担当局=編集総務局・経理局)金丸徳雄
同(担当局=第三編集局・第七編集局)清水保雄
同(担当局=第二編集局・生活文化局)田村仁
同(担当局=販売促進局・コミック販売局)峰岸延也
同(担当局=第六編集局・児童局)○大竹永介
取締役相談役(渉外・関連会社担当)浜田博信
取締役(非常勤)柳田和哉
常任監査役関根邦彦
監査役足立直樹
*退任した中沢義彦、大塚徹哉、栗原良幸各取締役は顧問を委嘱。

『ジョルニ』3月12日創刊/新スタイルの女性誌/実業之日本社

実業之日本社は3月12日、30代後半からの女性読者を対象にした新しいライフスタイル誌『giorni(ジョルニ)』を創刊する。年4回刊の季刊ムックでA4判変型平綴じ144頁、定価980円。
2月24日に行われた説明会で増田社長は「休刊誌が多く、雑誌はアゲインストの風が吹いている。わが社もかなりの数を休刊してぜい肉が取れた。残った雑誌の筋トレと新しい雑誌で筋肉体質にしていきたい。新しい試みとして『ネイルVENUS』『A―Bloom』をムックで出し、いずれ定期雑誌にと考えている。『ジョルニ』も新しいジャンルの雑誌として大きく花開かせたい」と述べた。
編集方針を説明した『ジョルニ』中原ひでこ編集長は「誌名はイタリア語で『日々』の意味。普段の暮らし、着こなしについて、その人なりの上質さを求めたい。創刊号は『ニューヨークで見つけた上質“ふだん”の作り方』を取り上げ、センスある暮らしとモノ選びを提案する。読み物、コラムも重視した」と言う。
発行部数は7万部で書店のみの配本。競合誌は主婦と生活社『ナチュリラ』、扶桑社『haru―mi』。
また、同社では明治41年から昭和30年まで半世紀続いた伝説の少女雑誌『少女の友』を創刊100周年記念号として1号だけ復活する。A5判箱入り376頁、定価3990円、3月13日発売。
明治・大正・昭和のベストセレクションとして巻頭を飾った抒情的口絵、中原淳一全表紙、傑作小説、漫画や、田辺聖子のエッセイ、戦前の愛読者「友ちゃん会」のルポなどを収める。

本屋のうちそと

懐かしそうな笑顔で大柄な2人が来店してきた。話す内、記憶が甦ってきた。
2年ほど前の事。銀行に入金の後、取引先の会社に納品に行こうとしていた時、万引きを捕まえたと当時いたバイト君から携帯に連絡があった。おっとり刀で店に戻ると、大柄な少年が打ちひしがれて佇立っていた。アダルト雑誌を洋服の中に隠した事を防犯カメラでモニターしたのだと言う。少年の一種の通過儀礼とも言える、出来心犯行だろうと推測した。
先ず学校の名前を訊くと、ある私立高校の名前を挙げた。ある思いで野球部かと尋ねるとラグビー部だという。彼が在校する高校の野球部の顧問が、大学生時代から知っていて彼の顔を思い出しながら、これはちょっとやばいなと感じていた。野球部ではなくラグビー部だと言った事から、これも弱った話だと感じた。私の中学・高校6年間同級だった男がラグビー協会の役員をしていて、花園の大会ではよくTV解説で登場していて、当時母校の高校の校長をしていた。
彼らの顔を思い出して、万引き少年に親を呼ぶか、学校に連絡するか、警察に通報するかの中から選ぶように通告。結果母親が飛んできた。母親の様子から家庭教育が偲ばれたことから、説諭の上身柄を引き渡した。更に夜になって、父親が彼をつれて謝罪にやって来た。
高校にもラグビーの関係者にも知り合いがいることから、いつでも彼のことを問い合わせることが出来るので、今後学業に専念するように伝え引き取らした。
今回無事大学ラグビー部に入ることが出来たと報告にやってきたのだ。親子の笑顔と感謝の言葉が、不況で気が滅入っているこの身に元気を蘇らせた。
(井蛙堂)