全国書店新聞
             

平成13年1月10日号

−無題−

いよいよ二〇〇一年、二十一世紀の幕開けだが、書店の経営環境は厳しいまま。
今春には著作物再販制の存廃に対する結論も予定されている。
年頭に当り、日書連萬田貴久会長に再販問題の決着、21世紀ビジョンで目指すものなど日書連の課題を聞いた。
(聞き手=本紙田中編集長)

−無題−

萬田会長インタビュー−−昨年十二月七日に公取委の再販中間報告が発表されました。
この報告書をどのようにお読みになりましたか。
萬田会長中間報告は一月から行われた業界との再販対話のまとめと、九月に行われた書店三千店のアンケートを別冊にしたボリュームある報告書です。
再販対話については、公取委は競争政策上、規制研などで言われて来た意見を背景に質問している。
業界側は再販がわが国の文化政策とかかわりあうものだと、今日まで取り組んできた弾力化などを含めて答えています。
報告書を読む限り、双方の議論は平行線をたどっています。
ただ、問題を掘り起こすという意味はあったと思います。
−−公取委は出版業界の弾力化は一定の評価をするような書き方をしていますね。
萬田その辺は、さらなる是正措置を求めているというように読み取れる。
そういう意味で、今後の公取委の考え方をある程度示唆していると考えています。
−−書店アンケートでは、ポイントカードの実施状況について調べたようですが。
萬田アンケートの結果、ポイントカードを実施している書店は百四十店と出ました。
また、今後実施を検討するという書店が三割弱ありました。
しかし、約千六百店のサンプル数で百四十店というのは、分母を調査先三千店に置き換えるともっと率が減る。
書店が販促に利用しているというより、商店会やショッピングセンターのからみで付き合っているのが実態でしょう。
日書連では昨年八月から公取委山田課長と四回にわたり意見交換を行いました。
出版物の景品付き販売は、以前は割引類似行為として認められませんでしたが、昭和五十六年に公取委の指導で小売公正競争規約が作られた経緯があります。
ポイントカードも再販契約上の値引きか景品か、何回も公取委の見解を求めていますが、明確な見解が示されていません。
現在の書店の収益では、ポイントカードの原資もない。
業界全体で拠出するような仕組みがあれば別ですが、現在の経済状況では難しいでしょう。
−−公取委には「ポイントカードぐらいいいじゃないか」という考え方がまずあって、後から法律の整備をしているような気がするんですが。
萬田他業界、とくにレコード業界などは、ほとんど例外なくやっていると公取委から指摘されますが、レコード業界は実態的にも全てのCDの時限再販を既に行っている。
ポイントカードは顧客を囲い込む性質があります。
オープンにすれば、資本力のある大手書店が競争を始め、周辺の書店は大打撃を受けます。
実施する弊害の方が、実施しない弊害より大きいのです。
−−公取委は今春再販の結論を出すとしています。
年明けの日書連の取り組みは?萬田昨年十二月の中間報告のあと、公取委は広く国民に意見を聞くと、一月二十五日までに意見を集めています。
消費者や著作権者の個別の意見も聞くようです。
春というと三月から五月までですが、その間の早い時期に公表されるのではないでしょうか。
私どもはこれまで再販を守るため総力をあげて運動してきました。
過度の期待はできませんが、皆さんの努力を無にしないよう、有終の美を成したいと考えています。
−−当面、各県組合なり、個々の書店はどういう取り組みが必要でしょうか。
萬田独禁法の改正ということになれば、国会議員への接触が生かされていくと思います。
各県組合でとりまとめていただいた請願書、地方自治体への意見書採択は今後も続けていきます。
それから、店頭でチラシを配るとかポスターを掲示して直接読者に再販擁護を呼び掛けていくことも重要ですね。
−−昨年十一月に「書店21世紀ビジョン」の報告書がまとまりました。
これに先行してJPICが九五年に「出版文化産業ビジョン21」を発表しています。
二つのビジョンの違いはいかがでしょう?萬田JPICのビジョンは出版業界全体の未来像を考えたもので、売上高も二〇一〇年に五兆四千億円と想定しています。
現実には今、出版業界は四年連続のマイナス成長です。
内容的にも中小書店の将来像までは踏み込んでいません。
また、当時は「IT」という言葉もなく、そろそろ、バーチャルという言葉が言われ始めた時期です。
今度の日書連のビジョンは厳しい経済状況の中で、中小書店の21世紀の生き残りに主眼を置きました。
そういう方向で書店の現状を分析し、目標を掲げ達成していく手段を具体的に提唱いただけたと思います。
−−アクションプランの十項目のうち、半分は書店IT化問題ですね。
萬田これからの書店にコンピュータは必需品だとはっきり指摘しています。
また、沖縄など地方出版物のデータベース化は、各地域の書店の協力を仰いで推進していくということで、日書連ならではの運動です。
廉価なパソコンの全国的配備についても、版元の協力で具体的に装備できる状況になってきました。
−−責任販売制の具体的提案もありますが。
萬田ビジョン作りに入る前年の九九年に、日書連は『書店経営実態調査』を実施しています。
その中で、「三年前と比べて経営が苦しくなっている」という回答は九〇%に上っています。
過去に日書連はマージン確保の運動をやってきましたが、その方法の一つに責任販売制、買切り制があります。
マーチャンダイジングという見地から仕入れにもっと厳しい目を向けて、地域の読者に合った仕入れをする。
責任販売により返品率も下がるから、現状よりマージンも確保できる。
これらを取次、出版社に呼びかけ、具体化していきます。
そのことが品揃えを工夫し、書店の顔を作ることにもつながると思います。
これまで書店は取引や契約の面で甘えがあった。
出版業界が大変なスピードで変わろうとしている時、書店も自己責任の視点でキャッチアップしていくことが書店を継続する点で重要だと思いますね。
−−アクションプランは向こう三年以内に実現、ないし実現の目途をつけるということですが。
萬田推進母体として、日書連の委員会で吸収できるものと、専門委員会を設置する考え方があり、早急に新年度の事業計画に落とし込んでいきます。
夢物語で終わらせず、書店の道しるべとして皆さんの協力を得ながら今後の活動に生かしていきます。
−−新年の景気見通しはいかがでしょうか?萬田今年は新しい世紀の始まりでもあり、経済に浮力をつける年になればと思います。
政府も新年度予算で景気対策と構造改革の狭間の中でIT革命を中心とした景気重視の予算を通しました。
ITがモノ作りから始まって消費者の購買意欲にまでインパクトを与えています。
それが雇用創出につながっていけば、消費回復のきっかけになる。
政府にはそういう舵取りをお願いしたいですね。
217行

−無題−

学習研究社常務取締役古岡秀樹書店二十一世紀ビジョン報告書を読んだ感想を述べさせていただきます。
出版界が大変難しい状況にある中で、書店の未来構想をまとめられた委員の皆さんの努力にまず敬意を表したいと思います。
第一章の「地域読者と書店」においては、近未来の読者需要に対応する書店像について議論がされています。
その基本認識として読者の変化が分析されていますが、より深い掘り下げが欲しいと思います。
読者が持つ情報・時間に対する価値観やIT技能は我々の予想をはるかに超えて進化・多様化しているのではないでしょうか。
この実態を正確に理解しなければ、出版界としての対応策の検討も難しいと思うのです。
第二章の「出版業界と書店」の中では、IT革命と書店の意識改革について議論がなされています。
ここにも指摘されているように、書店にパソコンを必備化することは当然の課題であろうと思います。
また、それを前提として、中小書店でも導入できるクリック&モルタル型のビジネス・モデルの開発が急務だと考えます。
より読者に目を向けた書店づくりをするためには、新たなビジネス形態を導入することが不可欠だと思うのです。
そして中小書店がローコストで消費者の感性や趣味趣向に合わせた情報提供をしていくためには、これをサポートする業界としてのASP体制が必要となるでしょう。
第三章の「二十一世紀の書店経営」では経営改善の前提として、粗利の向上と責任販売制の導入が議論されています。
書店の利益構造を抜本的に改善するためには、商品の定価のアップと買切り制を前提とした正味の確保に議論が展開していくのは当然のことと思います。
しかし価格に対して非常に敏感になっている今日の読者に、値上げを前提として対応していくことは非常に難しいと思います。
そこで価格とバリューのバランスがとれた新商品を開発していくことが、我々版元に求められてくるでしょう。
問われているのは百科、全集、CD全集、単冊事典などに次ぐ画期的な新商法とその販売手法の開発だと考えます。
また、読者との永続的な関係性が財産となる今日、顧客データベースのローコスト開発も今後の課題となるでしょう。
IT革命の進展は数年のうちに我々をめぐる読書環境を大きく変化させます。
そうした大転換の中でも、「本」という簡便かつ持ち運びに優れた商品の地位は、未来においても決して揺らぐことはないでしょう。
過去の英知、現在への理解、未来への洞察を与えてくれる出版物を販売する書店は、地域社会における教育・文化の重要なプラットフォームであり続けると確信しています。
今後予定される十カ条のアクションプランが、より充実して展開されることを期待しております。
また、版元としてもその実現に協力をしていきたいと思います。
日書連のみなさんのますますのご発展を心から願っております。

−無題−

21世紀の荒波を進む海図鎌倉市・島森書店島森信寿二十世紀末、世界は政治、経済、科学技術など、凄まじい変化が続いた。
出版業界もまた激変が続いている。
時代の変化の現実を目の前にしながら、生き残りのためには、時代に合った経営が必要で、そのためには自身の大胆な変化が求められていることは理解しつつも、確たる対策を持たず、先に進む勇気もなく、焦燥感に駆られている書店が多かったのではないかと思う。
二十一世紀には我々は生き残れるだろうか。
会員誰もが抱いている切実な課題に、こうしたレポートで正面切って答えてくれた企画は、まことに時宜を得たものであり、会員の期待に真摯に応えた勇気をまず評価したい。
誰が考えても、現在の体制をひっくり返すような妙案はなかろう。
しかし、書店人一人ひとりが新たな課題、問題を正面から受け止め、取り組まなければ前進は望めない。
レポートを通読して、新たな改革に関心を持つ書店人に指針を示すとともに、いくつかの豊作を実行すれば、相乗的に明るい期待が生まれそうな気がする。
特にITについては、書店で使える対策は無数にある。
それを書店が受け身になって他から浸食されるより、これを新たな武器として取り組む。
この取り組み方いかんで書店発展の大きなきっかけにもなり希望も持てる、ということが感じられた。
しかし、現実には改革と前進に積極的な少数の書店もあるが、不況による厳しい環境もあり、将来に暗い見通ししか持てずに無気力になっている書店が多い。
自分が将来を見る努力をし、動く努力をしなければ何をやっても解決はないであろう。
このレポートで、特に評価したいのは、責任販売制、協業化に触れたことである。
従来、書店の認識が最も欠けていた部分であり、正常取引の基本であるからだ。
このアクションプランは、二十一世紀の荒波を書店が進むための海図である。
アクションプランは大変広い範囲にわたっているが、着目時点では大局的に捉えるべきで、内容についてはうなずける。
簡潔に要約されているが、幹部はこのレポート起草には大変な努力と決断が要ったことと想像する。
しかし大切なのは次のステップである小局面、実行のための具体的なプランである。
早急に協議態勢に入ってほしいと思う。
今回のレポートは書店に知恵と勇気を与えてくれた。
重要なことは、書店の近代化改革のために日書連が団結を呼びかけ、立ち上がったことである。
このプランに基づき、書店がもっと勉強すれば有効な生き残りの方策が出てくるのではないか、という明るい希望を持った。
改めて「21世紀ビジョン」とアクションプラン作成のチームに感謝したい。
87行

−無題−

『町の本屋の復興』鳥取市・定有堂書店奈良敏行「ビジョン」の業態整備の認識は二つ。
グローバル化による地域性(個別性)の消失と協業の必要性。
外圧的に目覚めさせられる書店人「職能」の問い直し。
この交差方向に再建を模索すると理解します。
たたき台としてこれから膨らむものですが、「身の丈」以上に何もない小さな町の本屋としては、ミニマムとマキシマム、「本屋」感覚と「書店」感覚のリアル感にこだわります。
当地は春に大学設立ということで、本の需要の底上げと本屋一同喜んでましたが、購入が始まると唖然。
入札に際し数千冊の定価を自分で調査しなければならない。
その上、指定の印刷屋でフロッピーを購入して、値を入れてフロッピーで提出する。
ここでパソコンを持ってない本屋がパニック。
私は算段して入札に臨んだのですが、再びショック。
算出した平均正味よりも、さらに四・三%も低い価格で地元一番店が落札。
「本屋」が利益をゼロにしても、「書店」はさらに四・三%引くことができるという格差に直面しました。
これはリアルな現場感覚として痛感。
自覚したのは「取引は個別」という従来の不文律。
この「個別性」の枠で競うというのが小さな本屋の現場感覚の原点です。
「ビジョン」は多くの人に役立てようという性格上、流通を軸に業態の標準化、合理化という方向へ進む。
そのためにはコーポレート、協業が必要なのですが、だからこそ「身の丈」という個別性を失ってはいけない。
差し伸べられた手に、差し出すための「手」を持たねばならない。
かつて消費税導入の折、過大に集中した返品のため取次がパンクし、運送業者から荷受けを立て続けに断られたことがありました。
コーポレートの中心にある地域大型店は「個別の解決を」と取り合ってくれず、結局外部から進出し、主導されて少し前まで出店阻止していたその店が、同一運送ラインに同一料金で加えてくれました。
コーポレートの体制があろうとなかろうと、助けてくれる人は助けてくれるし、助けてくれない人は助けてくれない。
町の本屋はマージナルな存在なので、こういう場、こういう形でコーポレートを開く覚悟が必要です。
本屋は地域拠点の仕事ですが、どうしても広域の競争に巻き込まれてしまう。
「身の丈」をどう構築すべきか。
大国に翻弄される少数民族。
なんか政治的な生き残り策にも似てきます。
IT時代の一大特色は「商用」の輪郭が不明瞭になること。
広域化するからこそ、マキシマムとミニマムに両極化する。
ミニマムは地域(ムラ)志向に根を下ろす。
できることでいま始めているのは、「タウン誌」みたいな「町の本屋」になりたいということ。
ITはウェブという便利なタウン誌ツールを与えてくれる。
「本屋」の復興は読者とどうムラ造りをするかに始まる。
ミニマムだけど、website.teiyuというHPで実践しています。
定有堂ホームページhttp://homepage2.nifty.com/teiyu/95行

人気絵本ベスト5

■こぐまちゃんとどうぶつえんわかやまけん、こぐま社
■ちいさなうさこちゃんディック・ブルーナ、福音館書店
■こぐまちゃんおはようわかやまけん、こぐま社
■いないいないばあ松谷みよ子・瀬川康男、童心社
■ずかん・じどうしゃ山本忠敬、福音館書店

長野・茅野

「読書の楽しみの輪を広げ、心に豊かな森を作ろう」−−長野県茅野市で読書推進活動を展開している市民グループ「読書の森読(ど)りーむinちの」(倉本和子会長)は、市役所の市民課窓口に出生届けを出しに来た家族に絵本を贈る「ファーストブック・プレゼント」を昨年八月一日からスタートし、県内外から注目を集めている。
■民間活力を行政が支援茅野市は市民と行政が一体となったパートナーシップのまちづくりを進めており、特に「地域福祉」「生活環境」「教育問題」を重点三課題として取り組んでいる。
このうち教育分野の中心に据えられたのが「読書推進活動」。
平成十一年二月に子どもにかかわる読書・文化活動をしている六団体の代表が集まり、「読書活動推進の会」を発足した。
一年半にわたり検討を重ね、平成十二年七月、会の名称を「読書の森読りーむinちの」と改めて正式発足。
■ファーストブック・プレゼント■学校に落ち着きを生み、学舎を蘇らせる「全校読書」の輪を広げる活動■読書の楽しみや力を体験し、実践の輪を広げる読書推進活動−−に取り組んでいる。
ファーストブック・プレゼントは、会のメンバーが選定した絵本三十冊を市民課窓口に用意し、出生届を出しに来た家族に一冊選んでもらうというもの。
絵本を手渡す際はメンバー手書きのメッセージカードを添える。
昨年八月一日から四日までは会のメンバーが絵本の説明や助言を行いながら、窓口で直接手渡した。
四日間の出生届数は十三名で、みな心から喜んで本を受け取ったという。
昨年十二月末までの五カ月間で約三百冊の絵本を手渡した。
一番人気は『こぐまちゃんとどうぶつえん』(わかやまけん著、こぐま社刊)。
■地域にあったやり方を「読りーむinちの」は対象者や目的別に専門部会を組織し、幅広い分野から約百五十名の市民が参加。
茅野市教育委員会学習企画課が事務局をつとめる。
事務局で中心的役割を担っているのは、同課社会教育指導員読書推進担当の本間佐男氏。
「うまくいっているのは民間活力を行政が支援する形をとっているから。
矢崎市長も『読書推進は重点課題』と明言している。
長く続けるためには市民の意識を高め、組織作りをしっかりやることが大切」と話す。
乳幼児を対象とした読書運動としては、一九九二年に英国バーミンガムで始まった「ブックスタート」が有名だ。
日本でも昨年十一月から東京都杉並区で三百家族を対象にパック配布が始まり、順次全国展開していくことになっている。
茅野の運動は英国を手本にしたものではないと本間氏は言う。
「地域の議論のなかから生まれたもので、そもそもファーストブックの検討を始めた頃、ブックスタートのことはまったく知らなかった。
ブックスタートは贈る絵本があらかじめ決まっているが、われわれの場合は絵本を選んでもらうなど、違いもある」として、地域の文化状況に合ったやり方が大切と話す。
■成長フォローする運動試行期間を三月に終了し、四月以降は贈る絵本の種類、手渡す時期や場所も再検討する。
四カ月健診会場で会のメンバーが言葉をかけて直接手渡すようにしたり、絵本に子育て情報などを加えたセットにするなど、より良い形に変更していくという。
また、出生時にファーストブック、一歳半にセカンドブック、小学校入学時にサードブックというように、「将来は子どもの成長に合わせて段階的にフォローしていく体制にしたい」と本間氏は話す。
朝日新聞など全国紙で紹介され、静岡や山梨などの近県をはじめ全国から問い合わせが相次いでいる。
「書店の協力も得たいし、これからはもっと外の世界にアピールしていく」(本間氏)。
民間活力と行政が手を組んで生まれた読書推進活動「ファーストブック」は、着実な広がりを見せている。

わが家のペット自慢

わが家のミーコ(愛称)だ。
本名は、ミス・ドラという。
獣医の先生の見立てでは、平成六年の六月頃生まれた。
子どもの時、ミーコは鼻炎にかかった。
獣医の先生は「最悪の場合、死ぬことがあります」と言った。
その危機をミーコは乗り越えた。
病気が治るとミーコは、カーテンによじ登る、廊下を走り回るなど、悪態をつき始めた。
わたしはものすごいドラ猫だと思った。
ミーコの本名はそこからついた。
生後二年を過ぎると、ミーコはおとなしくなった。
わたしたちが書店の仕事を終えて自宅に帰ると、ミーコは玄関で待っている。
わたしたちの姿を見ると、体を柱にこすりつける。
喜んでいるのだ。
ミーコは大変耳がいい。
玄関に知らない人が立つと、その足音を聞きつけて「ブー」と声を出す。
そして隠れようとする。
警戒心が強い。
用心深い。
知らない人を信用しない。
独立心がある。
わたしのことを親猫だと思っている。
わたしが座っていると、黙って脚の上に乗ってきて、居眠りを始める。
ミーコは大変平和で穏やかな猫なのだ。

21世紀にやりたいこと

ここ四、五年、全国書店新聞の恒例になっている「新年号原稿募集」に投稿していたが、今年のテーマのひとつに「21世紀ビジョンを読んで」というのがあったので、二回精読した。
わたしのような大雑把な人間には、あれだけの精密なレポートの感想など書けないので早々にシャッポを脱いで、「21世紀にやりたいこと」に鞍替えした。
今年から世界は21世紀に入った。
これからの百年間はどんな世紀になるのだろうか。
自分や子どもや孫が生きていてよかったという世紀になるのだろうか…。
どこかの国のアポドンかテポドンか知らないが飛んできてアッという間に我々は死滅するのか、それともジワジワと我が国の国債や地方債が増えて一千兆円になり、日本が自滅するのか。
そんなことを考えると21世紀にやりたいことは、これから一生かかったってやれないことが山ほどある。
わたしは今年還暦であるが、いまだ意馬心猿の念が断ち切れないでいるから、まだ勃つうちは情念を燃やし続けたい。
こんなことを言うと人は嗤うだろうが賢明な読者なら解っていただけると思う。
また、わたしの友人が十年前からクイーンエリザベス世号で世界一周をやろうとしきりに誘っている。
金が無いので「何をアホなことをホザイテいるか」と断っていたが、生きているうちに借金してでもやってみたいと思っている。
紙面の都合でふたつしか書けなかったが、人に迷惑をかけないでやれること、他を犠牲にしてでもやりたいこと、往生際が悪いぞと言われてもやりたいことは山とある。

「21世紀ビジョン」を読んで

いま、書店業界は存亡の危機を迎えていることは、周知の事実である。
公取による再販制度撤廃論が根底にある以上、何時かは行き着くところで決着というシナリオは否めないと思われる。
その場合一番影響を受けるのは、消費者と向き合ったすべての書店である。
公取は責任販売制で出版社の返品リスクが解消される分、値引きの原資に向ければ問題は解決すると考えているようだが、本の定価は発行部数(見込みも含む)によることはご存じない。
当然発行部数が落ちれば一冊当たりの製作経費は高騰し、価格に跳ね返ってくるのは必然と思う。
現在は再販制によって返品された本も、旧消費税を表示したものも再出荷に利用しており、低定価の安定に寄与していることは、消費者利益に貢献しているものである。
書店が時代の変革に対応することは必要不可欠であり、IT時代の波に乗ることも経営の安定化に欠かせない要素である。
一方書店は、版元・取次に対して受け身の体質であるが、あえて提案もしていきたい。
共同倉庫も一カ所に集中が困難なら、取次倉庫を共同利用し、書店配送はブロック毎に配送センターを設け共同配送すれば、経費の節減も可能ではないだろうか。
消費者に読んでもらいたい本の販売は、ただ並べて売るだけのスーパー、コンビニでは無理な事柄。
顔を見て勧め、購買につなげていく書店が、地域には必要だと思われる。
それは取次の協力なしには不可能である。
現在書店では、売れ行き良好雑誌の定期読者分の確保もままならず、まして店売分などあるはずもなく、読者に無駄足を踏ませ、客離れの一因になっている。
また公取のアンケート資料では、五三%の書店が三人以下の家族経営で、IT革命に対応するにはいささか不安は隠し切れない。
組合としてもこの問題は避けて通れない課題でもある

「21世紀ビジョン」を読んで

21世紀ビジョンが発表されたが、この中で提案されている責任販売制について私見を述べさせていただきたい。
初版のみ委託制とすることも可能と書かれているが、零細書店には初版は配本されず初めから責任販売をしなければならなくなるのではないか。
責任販売を決意して仕入れた後に、出版社によって多量の重版が出され売れなくなることも考えられる。
このように責任販売制が実施されると種々な要因で売れ残りが生ずるであろう。
従って書店では売上を伸ばすよりも、売れ残りを少なくすることに注力するだろう。
それにより出版界全体としての売上は減少に向かうのではないか。
出版社では返品の責苦からは逃れられるが、今度は見込生産した書籍が、注文が来ないのでそのまま倉庫で眠る恐怖が出てくるのではないか。
従って出版社の側でも慎重に生産を行うこととなり、生産は減少に向かうであろう。
また現在では、雑誌においては広告収入も重要なので、多少の返品はポリシーとして認めているのではないか。
書店の側からも、出版社の側からも縮小の要因を秘めており、縮小へ向かって悪循環が発生しないとも限らない。
多少、正味比率が改善されても、書店にとってはハイリスク・ローリターンとなる恐れがあるのではないか。
少なくとも零細金太郎飴書店は衰亡に向かうであろう。
また「当店はカリスマ書店員が品揃えをしているから安心」などと考えているとすれば、大変な間違いで時流には勝てず、やはり斜陽の坂を下ることになるのではないか。
この不況の嵐が吹きすさぶ中では、思いつきの改革をするよりも、じっと我慢をして嵐の去るのを待つのが良策ではないか。

新春読者の文芸

新春読者の文芸短歌山形県・マルシメ書店佐藤良八大熊が穴に眠りて春を待つ吹雪の今日は羨ましかりけり本を売りて気力に溢れ残業も楽しかりにし若き日を恋ふ新年の店見渡すも売行の伸びざる雑誌を今日も嘆けり

21世紀にやりたいこと

閉店や、廃業の話題が多かった二〇〇〇年でありました。
大書店、必ずしも安泰ではありません。
読者の活字離れは加速するばかりです。
わたしども小書店では一体どのように活路を開いていくべきか。
パソコンは各家庭に普及し、インターネットは目新しいものではなくなり、書店への足はますます遠のくようになってきました。
しかし、わたしは潜在的な読書人は減ることはなく、少しずつでも増えてくるのではないかと思っています。
余暇の過ごし方でいろいろなことがありますが、一番お金もいらず長時間楽しめるものは読書以外にはないのではないでしょうか。
手前味噌ではありますが、読書は人生の活路が開ける一番の道具ではありませんか。
インターネットの画面は目が疲れますが、本は決して目が疲れません(多少はあるかも知れませんが)。
インターネットによって本の注文は飛躍的に増加するものと思います。
今までのように店を構えて単行本等を売ることは少しずつなくなるのではないでしょうか。
出版社と読者との取引は、間違いなく増加することでしょう。
ではどうするか。
現在でも行われている、出版社から取次、書店のルートで本を渡すようにして、書店は読者に配達をする。
つまり配達に重きを置くこと。
わたしども小書店は、雑誌の店売のみで、書籍は出版社から書店−読者の配達で生活していくことになるのではないかと思います。
わたしたちは書店を始めたとき、小学一年生の獲得のため日夜頑張りました。
二十一世紀ビジョンにも掲載されておりますように、宅配は不可欠ではないか。
二十一世紀も原点として頑張ろうではありませんか。