全国書店新聞
             

平成28年2月15日号

5・3%減の1兆5220億円/2015年出版物販売金額/出版科研調べ

2015年の出版物の推定販売金額は前年比5・3%(845億円)減の1兆5220億円になったことが出版科学研究所の調べで明らかになった。前年割れは11年連続で、昨年の4・5%減を上回る過去最大のマイナスを記録した。書籍は文芸書にヒット作が相次ぎ、同1・7%減と小幅な落ち込みにとどまったが、雑誌は同8・4%減と過去最大のマイナスだった。
書籍の推定販売金額は前年比1・7%(125億円)減の7419億円と、消費税増税で大きく落ち込んだ14年に対し小幅なマイナスにとどまったが、9年連続の前年割れとなった。年間を通して各ジャンルでヒット作が登場し、特に文芸書が健闘。その中心となったのが芥川賞を受賞した『火花』(文藝春秋)で、累計240万部超の大ヒットを記録。出版科学研究所の年間単行本総合ランキングでは唯一のミリオンセラーとなった。
新刊点数は7万6445点で前年と同じ水準。このうち取次仕入窓口経由が同1・7%減の5万4235点、注文扱いが同4・3%増の2万2210点。取次仕入窓口経由は特に新書の減少が目立ち、3年連続のマイナスになった。
出回り平均価格は、同1・1%(12円)増の1128円と2年連続の大幅増。文庫本の販売状況が低迷したことが大きく影響した。金額返品率は同0・4ポイント改善し37・2%。大ベストセラーの出現で販売状況が改善したことと、取次各社が新刊配本の引き締めを継続的に行っていることが奏功した。
ジャンル別動向をみると、文芸書では『火花』をはじめ、芥川賞同時受賞の『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)、直木賞受賞の『流』(講談社)、『サラバ!』(小学館)など文学賞受賞作にヒットが相次いだ。一方で文庫は、東野圭吾、池井戸潤など定番人気作家の作品は売れ行き上位にあるが、新刊のヒット作不足に加え、既刊本の低迷が深刻な状況にある。
雑誌の推定販売金額は前年比8・4%(719億円)減の7801億円と過去最大の落ち込みを記録し、18年連続のマイナスとなった。内訳は、月刊誌が同7・2%減の6346億円、週刊誌が同13・6%減の1454億円。
推定販売部数は同10・5%減の14億7812万冊。内訳は、月刊誌が同8・7%減の10億5048万冊、週刊誌が同14・6%減の4億2764万冊で、週刊誌は初めて2桁の大幅減を記録した。平均価格は同2・6%(14円)増の546円。内訳は、月刊誌が同2・0%(12円)増の619円、週刊誌が同1・2%(4円)増の350円。金額返品率は同1・8ポイント増の41・8%。売行きが悪化する中で供給調整が追い付かなかった。
創復刊点数は同17点減の70点で4年連続の100点割れ。創刊部数は同46・5%減。また、休刊点数は同52点減の117点で、休刊部数は同44・7%減。雑誌銘柄数は同101点減の3078点となった。
不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同6・7%減の3918点、ムックは同1・1%減の9230点だった。1号あたりを1点とカウントした付録添付誌数は同4・6%減の1万2377点で、付録も抑制する動きが目立った。
部門別に推定発行部数をみると、〈女性〉は同8・0%減。20代雑誌の多くが大幅減となったが、30歳前後をターゲットにしたアラサー雑誌『CLASSY.』『andGIRL』が好調だった。〈男性〉は同8・9%減で、ミドルエイジ向けファッション誌は好調だったものの若者向けファッション誌の部数減が続いた。
なお、出版科学研究所は2015年から電子出版市場の独自推計を開始。これによると15年の電子出版市場規模は1502億円で前年比31・3%増、金額で同358億円増加した。内訳は、電子コミックが同30・3%増の1149億円、電子書籍が同18・8%増の228億円、電子雑誌が同78・6%増の125億円。紙と電子の出版市場を合わせると1兆6722億円、同2・8%減。電子出版の占有率は9・0%で同2・4ポイント増加した。

実用書増売企画「書店金賞」スリップ受付は締切りました

昨年12月で報奨金の対象販売期間を終了した日書連主催の実用書増売企画、第2回「書店金賞」の売上スリップ受付は、1月15日で締め切りました。

増売システム小委を立上げ/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は2月2日に東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。各委員会の主な報告・審議事項は次の通り。
〔総務・財務〕
5月19日に開催する第40回通常総代会関連書類の提出を、各支部・エリアと各委員会委員長に要請した。
〔組織〕
エリア会議を2月中に開催し、活動報告書を提出してほしいと要請した。
〔事業・読書推進〕
増売システム検討小委員会を立ち上げ、会合を開いたことを報告した。メンバーは事業・読書推進委員会委員や東京組合青年部からの少人数で構成し、東京組合から提案する増売企画の立案等を検討していく。
2月中に締切となる日書連主催「春の書店くじ」「心にのこる子どもの本新学期・夏休みセール」への参加を要請した。また、2月に創刊60周年を迎える「週刊新潮」の記念企画について、4本連続記念増大号と別冊2本の刊行を紹介し、増売を呼びかけた。
〔再販・発売日・倫理〕
富士山マガジンサービスが実施している「半額割引きキャンペーン」の情報が寄せられ、出版再販研究委員会に日書連を通じて情報提供することにした。
〔取引・流通改善〕
TS流通協同組合の12月期発注件数は4973件(前年同月比95・3%)、売上金額は507万2888円(同82・8%)、書店数は55書店(同141・0%)。1月期発注件数は4185件(同103・5%)、売上金額は427万2540円(同112・2%)、書店数は50書店(同147・1%)だった。

粗利率30%の実現目指す/「地域図書券」の発行を要請/神奈川組合新年懇親会

神奈川県書店商業組合は1月22日、横浜市中区の華正樓で新年懇親会を開き、書店、出版社、取次など総勢約100名が出席。筒井正博理事長(伊勢治書店)は、今年の目標として①粗利率30%の実現、②地域の書店で子どもだけが使える「地域図書券」の発行――の2点を掲げた。
あいさつに立った筒井理事長は「業界がダウンサイジングしていく中、読書する人をどうやって増やすかを第1に考えている。団塊の世代が65歳で引退したあと、本を買って読まなくなってしまった。若者や子どもたちへの読書普及が最大の課題」と指摘。「本の定価を上げるべきという意見があるが、昼食をワンコインで済まそうと思っている人たちは500円の週刊誌に手を出さない。それよりも、しっかり利益が出る正味体系を構築することが重要。読書人口が減る中、30%の粗利が出る業界にしなければ、書店経営は成り立たない」と訴えた。
また、「若い世代の結婚、出産、子育ての希望を叶える」という地方創生の総合戦略を書店としても応援していきたいとして、「子育て支援、読書推進の観点から、地域の書店で子どもだけが使える『地域図書券』の発行と予算化を行政にお願いしている」と報告した。
来賓の神奈川県中小企業団体中央会の遠藤雄仁氏があいさつしたあと、トーハンの金谷覚神奈川支店長が「デジタルやネットにできないことは必ずある。最終的には『人』だと思う。皆様の『人』の力で1年間頑張っていきたい」と乾杯の音頭をとった。

「ことばの商い」大切に/静岡書店大賞を応援/静岡新年総会で江﨑理事長

静岡県書店商業組合は1月13日に焼津市の焼津グランドホテルで第48回新年総会を開催。出版社、取次、組合員ら総勢44名が出席した。
総会は佐塚慎己常務理事の司会で進行。庶務報告、日書連関係の報告に続き、事業・流通・広報IT・拡売・読書推進・新市場の各委員会委員長からの報告が行われ、書店組合としては返品入帳の短縮を各取次に働きかけ、一定の成果を得たことの説明があった。
年頭あいさつを行った江﨑直利理事長は「我々は情報を売る以外に〝ことば〟を販売し商いをしている。皆ことばを探し求めていると思う。新聞や唄や人、テレビなどたくさんのことばから、自分に合ったものを大切にしている。我々もことばを探し伝え、そして売っていこう」と列席者に呼びかけた。
また江﨑理事長は、県内書店人の結びつきを強調。書店人の仲間意識、規範意識、学習意識の表れが、他ではできなかった若手書店人による「静岡書店大賞」であり、今後も応援していくと述べた。なお、静岡組合では、活動の一助になればと静岡書店大賞実行委員会へ昨年協賛金を送っており、今後も継続していく予定。
次に来賓の小学館、集英社、静岡新聞社の各担当者から来年度の営業施策の説明があり、参加書店全員が外商の拡売、売場の充実を約束した。
この後場所を移し、版元と取次を交えた懇談会が、中野弘道理事の司会で和気あいあいの雰囲気の中行われた。最後に吉見光太郎常務理事の音頭で出席者全員による一本締めで終了となった。(佐塚慎己広報委員)

千葉・鈴木理事長が表彰受ける/千葉県中央会会長表彰

千葉県中小企業団体中央会の創立60周年記念大会が「連携・団結~紡ぎつなげる新たな連携強化~」をスローガンに掲げて1月22日に千葉市美浜区のホテルニューオータニ幕張で開催され、千葉県書店商業組合の鈴木喜重理事長(日書連副会長、ときわ書房)が組合功労者として同中央会会長表彰を受けた。

帯コン表彰式は11月12日に開催/大阪理事会

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は1月16日に大阪市の大阪組合会議室で定例理事会を開催した。
委員会報告では、近畿ブロック情報化委員会・再販委員会から、近畿ブロック情報化委員会を、2月2日の近畿ブロック会開催前に図書館委員会として準備打ち合わせ会を開くと説明があった。
読書推進委員会では、2016年「本の帯創作コンクール(帯コン)」表彰式は11月12日(土)にエル・おおさかシアターホールで開催すると報告した。
出店問題・組織強化委員会からは、好屋書店泉ヶ丘店(堺市)が2月18日に30坪で開店するとの情報が報告された。
レディース委員会では、レディースランチを2月3日(水)正午から「リストランテル・ミディひらまつ」で開催すると説明があった。
(石尾義彦事務局長)

訂正

本紙前号2面「愛知組合新春賀詞交歓会」の記事で、筆者の名前が太田武彦氏とあるのは太田武志氏の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

日書連のうごき

1月6日出版クラブ名刺交換会に舩坂会長、柴﨑、本間両副会長、田島、小林両理事が出席。雑誌買切制度研究小委員会に藤原委員長が出席。書店新風会新年会に舩坂会長が出席。
1月7日日教販春季展示大市会に舩坂会長が出席。
1月9日大阪屋おでんの会に面屋副会長が出席。
1月12日公取委員長講演会・賀詞交歓会に舩坂会長、柴﨑、本間両副会長が出席。悠々会新年会に舩坂会長が出席。
1月13日JPO運営幹事会に事務局が出席。JPO運営委員会に柴﨑副会長が出席。出版ゾーニング委員会に鈴木副会長が出席。
1月14日軽減税率専門委員会流通ワーキングに事務局が出席。
1月18日図書館サポート部会に高島部会長が出席。出版倫理協議会に鈴木副会長、天野理事が出席。
1月19日子どもの読書推進会議に西村副会長が出席。
1月27日読売新春懇親会に舩坂会長が出席。
1月28日文化産業信用組合理事会に舩坂会長が出席。
1月29日日本図書普及役員会、政策委員会に舩坂会長、鈴木、藤原、面屋、西村各副会長が出席。

業界三者が喜ぶ商談会に/北海道新年懇親会で志賀理事長

北海道書店商業組合は、1月26日午後6時から札幌市中央区のJRタワーホテル日航札幌で平成28年北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会を開催し、45名が出席した。
主催者として、最初に北海道組合・志賀健一理事長があいさつ。出版物への軽減税率適用が先送りになった件について、「新聞だけが軽減税率適用となり、大変心配していたが、新聞業界が出版物の軽減税率適用を積極的に応援してくださると約束していただいているようなので少し安心している。出版物も軽減税率適用になるよう、また署名運動などがあれば、皆様の協力を得てがんばっていきたい」と述べた。
また北海道書店大商談会について、「第3回大商談会最初の実行委員会が先ほど行われ、出版社、書店、取次の皆さんに喜んでいただける商談会になるよう議論を重ねた。いろいろと難しい問題もあるが、業界活性化の一環として、ぜひ成功させたいと思っている」と語った。
続いて、日本出版販売・菊地基仁北海道支店長、小学館パブリッシング・サービス北海道エリア・伊端永人支社長があいさつし、亜璃西社・和田由美代表取締役の発声で乾杯。懇親を深め、今年の活躍を誓い合った。(事務局・髙橋牧子)
【「北の本屋大賞」選定方法など協議/北海道理事会】
新年会に先立ち、北海道書店商業組合は1月26日午後2時半から定例理事会を開催した。
志賀理事長が日書連理事会及び委員会の報告を行った後、北海道組合の活動について審議。「北の本屋大賞(仮称)」について、実行委員会の立ち上げや人事、大賞候補の本の選定方法などを協議した。軽減税率の件では、新聞が適用になったので出版物も適用となるよう、引き続き活動していくことを確認した。この他、北海道教科書供給所より、教科書の電子化について説明があった。
(事務局・髙橋牧子)

春の書店くじ実施要綱

▽実施期間平成28年4月20日(水)より30日(土)まで。書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数200万枚。書店には1束(500枚)3571円(税別)で頒布
▽申込方法と申込期限注文ハガキに必要事項を記入し、束単位で所属都道府県組合宛に申し込む。締切は2月20日(厳守)
▽配布と請求方法くじは取引取次経由で4月18日前後までに配布。代金は取引取次より請求
▽当せん発表5月25日。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品総額2860万円
当せん確率は9・6本に1本
1等賞=図書カード1万円400本
2等賞=図書カード
又は図書購入時充当1千円600本
3等賞=同5百円8000本
4等賞=図書購入時に充当百円20万本
▽賞品引換え1、2、3、4等賞は取扱書店で立替え。図書カード不扱い店または品切れの場合は、お買い上げ品代に充当
▽引換え期間読者は5月25日より6月30日(消印有効)まで。書店で立替えた当せん券は7月31日までに「引換当せん券・清算用紙」(発表ポスターと同送)と一緒に日書連事務局に送付
▽PR活動全国書店新聞に実施要綱を掲載。日書連ホームページ(http://www.n-shoten.jp)で宣伝。「春の書店くじ」宣伝用ポスターは日書連ホームページよりダウンロード(郵送はしません)

『日書連MARC』情報提供方法が変わります/図書館サポート部会便り

『日書連MARC』がリリースを開始してから既に10年以上が経過し、蓄積しているデータも膨大な量となっています。
株式会社教育システムを介して利用している図書館、ならびに組合加盟書店(本屋ツールを使用)では、これまでデータファイルがあふれた際には、その都度圧縮作業を行うことで対応していましたが、最早それも限界を迎えつつありました。
そこで教育システムでは、現在新しいデータ提供方法へ移行するための準備を進めています。この仕組みでは、図書館管理システムが設定されたパソコンがインターネットに接続できることが必要になります。
ユーザ図書館ならびに書店におかれましては、教育システムが今春3月頃に発表する提案を確認の上、新しい提供方法への移行を検討されることをお勧めします。
ただし、福岡県情報センター(FJナノ)経由でデータ提供を受けている図書館・書店では、今後とも現状のまま利用いただくことができます。
(高島瑞雄部会長)

「真田丸かるた」を発売/NHK大河ドラマ放映に合わせ/長野組合

長野県書店商業組合(塩川明人理事長)は、NHK大河ドラマ「真田丸」の放映開始に合わせ、戦国武将真田幸村を題材とした「真田丸かるた」を12月25日に発売した。
1月10日に放映が始まったこのドラマは、信州・上田を拠点に活躍した真田幸村の生涯を描く戦国絵巻。脚本は三谷幸喜氏、主役の真田幸村役には人気俳優の堺雅人さんが起用されている。
長野組合は地元ならではの話題性のある商品を販売し、店頭活性化につなげようと企画。真田一族の歴史や文化について、子どもから大人まで楽しく学び遊べるかるたを制作した。
絵札、読み札は「あ」から「わ」まで各44枚。読み札は昨年6月~8月、組合加入書店の店頭およびホームページで公募し、10名弱から応募があった。公募作品から取捨選択し、読み札に採用。残りは『ぼくらは真田十勇士』などの著書がある編集者宮坂勝彦氏が考え、解説文も書いた。絵札は長野市在住のイラストレーター天空若氏が描いた。監修は元上田市立博物館長の寺島隆史氏。
「あ」は「赤備え茶臼山に咲くつつじ」。具足などすべてを赤で固めて家康の本陣に決死の進軍を開始したクライマックスシーンを、戦場に真っ赤なつつじの花が咲き乱れている様子として描いている。「た」は「戦いの疲れをいやす別所の湯」。外湯の前に「真田幸村公隠しの湯」の標石がある、上田市の別所温泉を取り上げている。
初版1500セットは県内書店を中心に販売し、1月5日付の信濃毎日新聞で紹介されたことをきっかけに完売。その後、1000セット増刷を決め、長野のほかドラマにゆかりのある群馬、大阪、和歌山などでも拡販を図っていく。
同制作委員会担当副理事長の柳澤純氏は「専門家による解説文を読むことで、かるた遊びにとどまらず、読書として学びにも役立つ」と企画意図を説明。他組合にもノウハウを提供し、全国的な店頭活性化に役立てたいとしている。
問い合わせは屋代西沢書店の柳澤純氏まで。℡026―272―2174

大量窃盗、高齢者万引きが課題/全国万引犯罪防止機構シンポジウム

全国万引犯罪防止機構(竹花豊理事長)は1月19日、東京・千代田区の主婦会館プラザエフで、『万引対策最前線闘うリーダーたちのメッセージ集』発行記念シンポジウムを開き、小売業、防犯団体、防犯メーカー、警察関係者ら150名が参集。シンポジウムでは、メッセージ集に寄稿した関係者がそれぞれの立場から万引対策について意見を述べた。
〈パネリスト〉
・千葉県警察本部生活安全総務課高野恒純氏
・日本チェーンドラックストア協会防犯・有事委員会岡田茂生氏
・ユニクロ在庫コントロール部佐藤誠氏
・須賀川市老人クラブ連合会会長、須賀川市万引き防止アドバイザー金子定雄氏
・福島県老人クラブ連合会常務理事事務局長齋藤千恵子氏
・三洋堂ホールディングス代表取締役最高執行役員加藤和裕氏
・北海道大学、桜美林大学名誉教授坂井昭宏氏
〈コーディネーター〉
・全国万引犯罪防止機構広報委員長、弁護士菊間千乃氏
菊間万引きの手口は巧妙化・多様化し、年間4615億円、1日当たり12・6億円と深刻な被害が発生している。たかが万引きではない。小売業にとって見逃せない大きな犯罪だ。
高野平成19年のデータで少し古いが、年間4615億円の被害金額は世間一般に浸透していない。もっと被害実態を広報啓発していくことが必要。全刑法犯の認知件数が減っている中で、万引きだけは高止まりしている。
岡田昨年あたりから窃盗団の様相が変わってきた。少しでも万引きしにくい環境を作らねばならない。ソフト面ではスタッフの意識づけ、ハード面ではIPカメラの活用が重要。日本チェーンドラッグストア協会としては、被害額5万円以上の大量窃盗について、犯人像や被害品などの情報共有を始めた。地域、被害品、被害件数、被害金額、犯人の人数・人相・着衣などの詳細なデータを協会にメールで送ってもらい、これを協会から加盟企業に一斉送信し、企業内の各店舗にフィードバックする仕組みを作っている。
佐藤窃盗対策の取り組みをしっかり現場に指導し、実行させることが重要。大量窃盗対策として、旅行用大型キャリーバッグを持って来店した客には、例外なくレジでのお預かりサービスを案内している。ここ1、2年で来日外国人が急増したことが影響し、「爆買い」だけでなく「爆盗」が増えている。これに気付けていない店舗にどう指導するかが由々しき問題となっている。
ユニクロは国内と海外で店舗を展開している。日本以外はそもそも治安が良くないので、防犯システムのない店舗はないが、日本では性善説で客に接してきた。最近はこうした接客が通用しない人たちが増えている。万引きが発生した店舗には、被害の詳細についてレポートを提出させている。防犯ツールは試行錯誤しているところだが、旗艦店クラスは床埋め式の防犯ゲートを導入している。
外国人3~5人の集団がウルトラライトダウン20~100枚を大量窃盗していく。ハンガーから外して丸めてナイロン袋に押し込み、アラームが鳴っても構わず逃げる。3人以上の場合は必ず女性が入っている。確信犯で盗りに来ているのがほとんどだ。
金子須賀川警察署から万引き防止アドバイザーに委嘱され、万引き犯の3割以上が高齢者ということを知った。若者たちと班を編成して店舗で万引き防止キャンペーンを行っている。
高齢者は行き場がない、やることがない。それが万引きの原因になっている。
齋藤高齢者は孤独や不安を感じている。同世代として我々の活動の仲間に迎え入れていきたい。
加藤同一人物にDVDを窃盗され放題の状況が続いたことがあった。捕まえると時間がかかるので、小売店では警察に届出しないところも多い。捕まえても捕まえなくても大変という、辛い状況だ。
04年に府中の書店の万引き事件で損害賠償が認められたことをきっかけに、当社も05年から損害賠償請求を始めた。損害賠償請求で回収したお金はすべて万防機構に寄付し、この10年で374万円になった。
万引きは、被害金額から回収金額を差し引くと成功確率98・3%。滅多につかまらないからやる人が減らない。ローリスク・ハイリターンの犯罪だ。損害賠償請求している会社は5・5%しかない。これが2社のうち1社以上するのが当たり前になるよう、根拠法を作れないか。米国の一部の州では慣習法としてショップキーパーズ法(店主の法)があり、万引き被害にあったら民事でお金を請求できる。日本でも商店主保護法を作り、損害賠償請求できるようにすべきだ。
店内捕捉についても、店内で捕まえられるよう明文化すべき。捕捉警備員の社会的地位が低すぎると感じる。駐車監視員は民間法人の従業員だが、みなし公務員で、暴行・脅迫を働いたら公務執行妨害が成立する。同じように店内窃盗監視員を作って、みなし公務員として扱ってもらえるよう法的根拠を作れないか。
日本版ショップキーパーズ法と店内窃盗監視員制度で、成功率98%の万引き天国日本を、万引きは割が合わない日本に変えたい。
菊間店内捕捉は躊躇してしまうものなのか。
加藤店内にいれば万引きではないという「常識」がはびこっている。店内では立件できないと言う警察官もいる。
菊間バッグに入れてチャックを閉めたらそこが窃盗の既遂だいうのは十分成立すると思う。店内捕捉を躊躇している人は万防機構に問い合わせてほしい。
佐藤ユニクロの横浜の店舗で、外国人親子が店内でキャリーバッグに商品を入れた。店長が店内で捕捉し、本人も認めたので、警察を呼んだ。しかし警察は、店内だから被害届を受理できないと言った。どう対応したらいいのか。
菊間被害届は、被害者が出したいと言えば、警察が受け取らないということはないと思う。
高野店内で捕まえると犯罪にならないと思っている警察官がいるのは確か。店内捕捉は要件さえ整っていれば窃盗として成立する。判例もある。ただ、裁判を考えると、警察は被疑者側から見て突っ込みどころのない調書を取らねばならない。そのため調書作成に時間がかかる。
佐藤警察に来てもらうと、被害商品1、2点でも長時間拘束され、その分、人件費がかかる。警察も数百円の商品のために調書を書かねばならず、大変な労力だ。警察官は8割方、示談を勧めてくる。
加藤店内捕捉はすべての店舗で行っているわけではなく、理解を示してくれる警察署、協力してくれる警備会社がある数店舗に限って実施している。ただ、店内で捕捉すると、「まだ店から出ていないじゃないか」と抗弁され、開き直られることが多い。
坂井最前線にいる方の話はビビッドで迫力がある。万引き1件の被害額が1500円であっても、背後に数千億円の被害が控えていることを忘れてはならない。たかが1500円だからと買い取らせて済ませるのではなく、安全で安心な暮らしやすい社会を作るため、少額であってもしっかり対応すべきだ。

トーハンが即日配送開始/3月から1都7県で/客注対応強化で書店支援

トーハンは1月20日、客注強化策の一環としてオンライン書店「e‐hon」を通して3月から即日配送を開始すると発表した。対象エリアは東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城、山梨の1都7県。当日午前7時までに発注のあった自宅配送希望商品について即日配送を行う。
「Digitale‐hon」との連携による電子書籍の取り扱いやポイントサービス、スマートフォンへの対応など、「e‐hon」は時代に即したシステム改善やサービス充実を図ってきた。
今回のサービス利用にあたっては会員であることが要件だが、書店店頭での受け取りサービスの利便性に加え、重い商品を持ち帰るのに抵抗があった読者や受け取りに行きたくても時間がない読者の手元に届くスピードの点でも、大手ネット書店と肩を並べる水準となる。
同社は「今回の即日配送サービスで客注対応を強化し、書店の売上アップと新規顧客獲得をサポートしたい」としている。

栗田再生計画の認可決定を確定/東京地裁

東京地裁は栗田出版販売の再生計画認可決定を1月23日に確定し、同25日に確定証明書を発行した。
これにより、2月1日、大阪屋が昨年10月に設立した新会社「栗田」(新栗田)が栗田出版販売の取次事業を吸収分割して「栗田出版販売」に社名変更。4月1日に大阪屋と新栗田が合併する。また、債権者への弁済を再生計画に基づき開始する。

出版業の倒産、15年は38件/不況型倒産の比率高く

東京商工リサーチが2月3日に発表したリポートによると、2015年(1月―12月)の出版業の倒産は38件で2014年より3件増加した。1996年以降の20年間では4番目に少なかったが、2013年(33件)を底に2年連続で増加した。2015年の全産業の倒産は8812件と7年連続で減少しており、対照的な結果となった。
原因別でみると、最多は「販売不振」の26件(構成比68・4%)。次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」6件(同15・7%)、「他社倒産の余波」4件(同10・5%)と続く。
2015年の全産業の倒産8812件のうち「販売不振」は5959件(同67・6%)で、出版業の「販売不振」を原因とした倒産は構成比率で全産業の平均を上回った。また、「既往のシワ寄せ」が前年比6倍へ急増。慢性的な業績不振による赤字経営で行き詰まった企業が目立つ。他業界と比較して、出版業は不況型倒産の比率が84・2%と高く(全産業比率81・1%)、苦境に喘ぐ業界の姿を反映した格好となった。最大の負債となったのは美術出版社で、負債総額は約19億5000万円。
今年は金融円滑化法後の資金繰り支援スキームの1つとして中小企業再生支援協議会が取り組んできた暫定リスケが終了し、経済産業省は信用保証協会の責任共有制度の見直しを進めている。このように倒産を抑制してきた政策の見直しが議論されているため、今後はこれまで以上に市場性や出版業者としての有益性が問われてくることになり、他社との競争優位性を打ち出せない出版業者は淘汰の嵐に飲み込まれる可能性が高いと分析している。

太洋社が自主廃業へ/取引先書店に帳合変更要請

取次中堅の太洋社は2月5日、自主廃業の準備に入ったとの通知を取引先へ送付した。「事業の行く末を見据えると、いずれ自主廃業を想定せざるを得ない」としている。2月末の資金繰りの手当てはついているものの、今後、不動産を中心に重要資産の換価と売掛金の回収徹底を図る。また、出版社向けの買掛金の支払いを万全にするため、取引先書店の同意を得た上で帳合変更を要請していく。東京商工リサーチなどが伝えた。
太洋社は1946年3月創業。書籍・雑誌やCD、雑貨などを扱い、ピーク時の2005年6月期には売上高486億6700万円を計上し、全国で1000店超の書店と取引していた。しかし、2015年6月期には売上高171億2100万円に激減。同期まで10期減収、5期営業赤字、6期経常赤字が続いていた。この間、旧本社不動産の売却や従業員のリストラなどで再建を図ったが、主要取引先の帳合変更が相次いだことも響いた。負債額は2015年6月末時点で約84億7900万円。
同8日には東京・中央区のベルサール汐留で書店および出版社向け説明会を開催した。

「書籍・雑誌にも軽減税率を」/読売新春懇親会で渡辺会長・主筆

読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長・主筆は、1月27日、東京・千代田区のパレスホテルで出版業界関係者約600名を招いて開いた新春懇親会であいさつし、消費税問題に言及。「書籍・雑誌にも軽減税率を適用しなければ、活字離れが進み、国力が衰退する」と危機感を示し、新聞だけでなく書籍・雑誌を含む活字文化への軽減税率適用を訴えた。
渡辺会長・主筆は、消費税軽減税率の対象品目に新聞が含まれる一方、出版物は先送りとなったことについて、「新聞は長期購読契約や宅配で線引きが簡単にできるが、出版物は様々な形態があって難しい。標準税率が12、15、20%と上がった場合、今8%で抑えておくことは絶対に必要。欧州並みに文化を尊重しなければ、活字離れの傾向が進み、国力が衰退する。書籍・雑誌にも軽減税率が適用されるよう今後も努力する。一緒に頑張ろう」と呼びかけた。
来賓を代表して登壇した日書連の舩坂良雄会長は、全国で書店ゼロの自治体が300を超え、日書連傘下組合加入書店数も昭和61年のピーク時から3分の1まで減少したことを報告。「街の本屋の衰退は、著者から印刷・製本まで出版業界全体に影響を及ぼす。書店はお客様に喜ばれるよう努力しているが、書籍・雑誌が売れなければ店を閉めるしかない」と危機感を示した。そして、外商雑誌買切の報奨金による書店収益改善など、日書連が取り組む書店再生のための施策を説明し、「街の本屋に元気を取り戻してもらうことが進むべき道」と強調した。
消費税問題については、「昨年末に決定した与党税制改正大綱で、出版物への軽減税率適用は継続協議となったが、出版4団体は引き続き軽減税率が適用されるよう強い決意でのぞむ」と述べ、協力を求めた。

福昌堂が破産開始決定

月刊「空手道」、月刊「フルコンタクトKARATE」などの格闘技雑誌・書籍を発行する福昌堂と関連会社の福昌堂印刷は1月20日、東京地裁より破産開始決定を受けた。負債は福昌堂が債権者32名に対して約9000万円、福昌堂印刷が債権者9名に対して約7000万円、2社合計約1億6000万円。
福昌堂は1976年に設立。東京商工リサーチによると、1996年4月期には売上高約5億5000万円をあげていたが、インターネットの普及などで販売部数が落ち込み、減収が続いていた。他社の書籍・DVDも取り揃えた自社WEBサイトでの直販を開始し、2015年6月には主力2誌を月刊「空手道&フルコンタクト」として統合したが、業績回復の見通しが立たないため、事業継続を断念した。

群馬・文真堂書店、トーハンの100%子会社に

文真堂書店(本社・群馬県前橋市、星野洋一社長は)は1月29日、トーハンを引受先とする第三者割当増資を3月1日に実施すると発表した。
地域経済活性化支援機構の再生支援の下、取引金融機関の金融支援を受け、既存株式を100%減資し、新たにトーハンを引受先とする第三者割当増資を行うことで、トーハンの100%子会社として事業を推進する。
文真堂書店は1967年に設立。群馬、栃木、埼玉、東京で40店舗を運営している。資本金は1億円。売上高は2014年度決算実績で92億円。

訃報

朝倉邦造氏(あさくら・くにぞう=朝倉書店社長、元日本書籍出版協会理事長)1月30日、肺炎のため死去、79歳。葬儀は2月2日、東京都台東区の寛永寺輪王殿で営んだ。喪主は長男・誠造氏と妻・寿美子氏。