全国書店新聞
             

平成30年12月15日号

小売8団体が中小企業庁長官と懇談/日書連、書店経営改善に向けた活動を報告/中小小売商サミット

日書連など小売8団体で構成する全国中小小売商団体連絡会は、11月19日に東京・千代田区の経済産業省別館で第18回全国中小小売商サミットを開き、安藤久佳中小企業庁長官と懇談。日書連の舩坂良雄会長は、書店の粗利益30%以上の実現、出版物への消費税軽減税率適用、改正個人情報保護法を活用した万引の事前防止など、書店の経営改善に向け取り組んでいる活動について報告した。
サミットは始めに代表者集会を行い、小売8団体代表が現状を報告。この後、①消費税率引上げへの対応②インボイス制度導入の慎重な検討③簡易課税制度の適用事業者の範囲拡大及び事業者免税点の引上げ④外税表示の恒久化⑤二重課税の早期廃止⑥申告期限の延長⑦個人事業主の事業承継の負担軽減――の7つをスローガンに掲げる宣言を採択した。
続いて、中小企業庁との懇談会を開催。冒頭で主催者を代表してあいさつした全国商店街振興組合連合会の坪井明治理事長は「我が国の経済はアベノミクスの効果で緩やかな回復基調にあると言われているが、地方を中心として商店街や中小小売商は、消費の低迷から回復の実感が得られていないのが現状だ。さらに来年10月から消費税率引上げが予定され、環境は厳しさが続くと考えている。プレミアム付き商品券事業やポイント還元事業など、個人消費を喚起する施策をぜひ実施していただきたい」と述べた。
各団体からの報告で日書連の舩坂会長は、最盛期に1万3千店あった全国の組合加入書店が約3200店まで減少していると現状を報告。「低い粗利益率のままでは書店は経営を維持できない。粗利益30%以上の実現について出版社、取次の3者で検討を進めている」と述べた。
消費税増税については、10%引上げ時の軽減税率適用運動を推進し、2016年度の税制改正大綱に表記された「有害図書排除の仕組みの構築」を受け、有害図書排除のための自主的管理団体や第三者委員会の設立をまとめており、理解を求めて与党税調等に働きかけていると説明した。
また、書店における万引被害の深刻な状況を報告。
「出版業界を挙げて万引対策本部を立ち上げたほか、当店のある渋谷で書店が連携して対策を行うプロジェクトを発足、顔認証システムを用いた事前防止の研究を進めている」と述べた。
この後、坪井理事長がサミット宣言文の要約を説明し、安藤久佳長官に宣言文を手渡した。安藤長官は「8団体の皆様の意見をしっかり受け止め、私どもの仕事に最大限活かしていきたい。中小企業の現場感覚として、軽減税率の対応は深刻な問題。消費税の引上げに当たって、皆様にしわ寄せが来ないようにしなければいけないと強く認識している」と話した。
翌20日は、坪井理事長ら団体代表者数名が首相官邸に菅義偉内閣官房長官を表敬訪問し、サミット宣言文を手渡した。

経営環境改善、組合員数減が課題/宮城県組合総会で藤原理事長

宮城県書店商業組合は11月18日、宮城県松島町のホテル松島大観荘で第37回通常総会を開き、組合員60名(委任状含む)が出席した。
佐藤由美副理事長(朝野堂)の開会の辞のあと、藤原直理事長があいさつ。日書連が取り組む課題について、「書店業界は相変わらず厳しい経営環境が続く。粗利益30%以上の実現に向け業界3者による実務者会議を設置し協議を進めている。本県を含め、組合員数の減少が著しい問題だ」と報告したほか、出版業界の動きとして、消費税軽減税率適用のためのロビー活動の展開や、出版物輸送効率の低下による運送会社の経営悪化と物流の危機的状況への対応などについて説明した。
引き続き、藤原理事長を議長に議案審議を行い、平成30年度事業報告、決算報告、平成31年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認した。
梅津専務理事の閉会の辞で総会を終了。この後、永年勤続表彰を行った。今年度の表彰者は、勤続30年の桜井由美氏と25年の武上真理氏(金港堂)、25年の工藤貴光氏と佐々木浩美氏(朝野堂)、20年の小野寺徳行氏と10年の吉田亜沙美氏(宮脇書店気仙沼)の6名。代表して小野寺氏が表彰状と記念品を受け取った。
第2部では恒例の版元、取次各社の研修会・企画説明会が行われた。
(照井貴広広報委員)

年末年始の日書連事務局体制

年末年始の特別体制により、日本書店商業組合連合会事務局の業務は、年内は12月27日(木)午後5時をもって終了させていただきます。年明けは1月4日(金)より通常通り業務に復します。ご了承ください。
日本書店商業組合連合会事務局

NET21と共同で1月にSPSの説明会開催/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は12月4日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
事業・増売委員会では、書店協業グループのNET21と共同で、「ストックブック・プライオリティ・セール(SPS)」の企画説明会を1月24日(木)午後4時から書店会館で開催すると報告した。SPSは、出版社の倉庫に眠っている既刊在庫を直取引・低正味で書店が主体的に仕入れ、販売していく施策で、NET21加盟店で今夏から展開している。
増売企画の取り組みでは潮出版社が、来年のNHK大河ドラマ関連本として、『金栗四三消えたオリンピック走者』(佐山和夫著)、『嘉納治五郎オリンピックを日本に呼んだ国際人』(真田久著)などを説明。朝日新聞出版は、12月6日発売開始の週刊朝日ムック『歴史道』、1月8日発売開始の分冊百科『nanoblockでつくる日本の世界遺産』などについて拡販を要請した。東洋経済新報社は、最新版の2020年版が11月29日に配本された「就職四季報シリーズ」の特徴を説明、『会社四季報業界地図』との併売を呼びかけた。
この他、来年2月の開催が予定されていた読書推進イベント「築地本マルシェ」(同実行委員会主催=朝日新聞社などで構成)について、諸般の事情により中止するとの連絡があったと報告した。

「帯コン」各地で展示会を開催/大阪組合理事会

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は11月17日、大阪市北区の書店組合会議室で定例理事会を開催。会議に先立ち、10月31日に逝去した今西英雄前理事長に黙祷を捧げた。各委員会の主な審議・報告事項は以下の通り。
[読書推進委員会]
「本の帯創作コンクール」の表彰式を11月10日に開催し、12月15~16日に堺市立中央図書館、来年1月2~31日に茨木市のロサヴィアで展示会を行うことを報告した。来年の表彰式は11月16日、大阪市中央区のエルおおさかで開催する。
[図書館・情報化委員会]
府立高校図書館MARCの新年度契約更新の報告と自治体図書館の契約、TRCの動きについて説明があった。
[ストップ・ザ・廃業委員会]
「BOOKEXPO」でレンタル落ちの格安DVDの紹介があり、店頭販売を検討してみてはどうかと説明があった。
(石尾義彦事務局長)

出版文化振興への功績讃え/日書連から創価学会・池田名誉会長に感謝状

日書連は、創価学会の池田大作名誉会長の小説『新・人間革命』が11月29日発売の第30巻(下巻)で完結を迎えることを祝い、出版文化振興への功績を讃え、池田名誉会長に感謝状を贈った。贈呈式は最終巻発売の前日にあたる11月28日、東京都新宿区の創価学会総本部で催された。
贈呈式は、日書連から舩坂良雄会長、鈴木喜重副会長、藤原直副会長、面屋龍延副会長、西村俊男副会長が出席。創価学会の原田稔会長、聖教新聞社の原田光治代表理事、上田康郎出版局主事、石橋正至出版局長らが日書連一行を迎えた。
藤原副会長は、9月20日の定例理事会で全会一致で感謝状の贈呈を決定したことを報告し、「池田先生は永年にわたる執筆活動を通して、人々に感動と勇気、希望を贈り届けてきた」と功績を称賛。「文字・活字文化は無量の価値を持つ。読む力、書く力の衰退とは、創造性の衰退である」との池田名誉会長の提言に触れ、「これらの言葉は、書物を扱い、読書推進を使命とする本屋にとって力強い後押しとなっている」として、「『新・人間革命』第30巻下巻の発売を明日に控え、池田先生の比類なき功績、書物の普及に関する多大な尽力に対し、深甚なる感謝の意を表する」と推挙の辞を述べた。
続いて舩坂会長から池田名誉会長への感謝状と記念品を授与し、原田会長が池田名誉会長の謝辞を代読。
その中で池田名誉会長は、日書連の前身である日本出版物小売統制組合全国聯合会が1945年12月17日に神田駿河台で設立され、同年秋に戸田城聖第2代会長が営む出版社が西神田に社屋を移転したことを紹介。「奇しき尊き縁で結ばれた日書連からの芳情を恩師に謹んで報告したい」と述べた。また、日書連の活動について「活字離れが進み、書店が1つもない自治体が増加する中で、かけがえのない街の宝の城を支えてきた。郷土文化の担い手である地域の読者を支えつつ、日本全体の文化の発展と創造へ偉大な使命をたゆみなく果たしている」と感謝。街の書店を守らねばならないと訴え、「後継の青年たちに魂の良書を遺し伝え、皆様と手を携えて活字文化の希望の春を輝かせたい」と述べた。

「春夏秋冬本屋です」/「学校帰りの子供たちはどこに」/福井・じっぷじっぷ代表取締役社長・清水祥三

集英社の書店向け「ノンノ・コミュニケーション」2019年1月号「本屋さんのある風景」に同郷の俳優、津田寛治さんが書いている。本好きだった彼が通ったのは福井駅前のひまわり書店だったと。その15年ぐらい前、私が中学生だった頃、下校時には正門から市の中心へ向かい家への交差点を通過し、まず立ち寄ったのは品川書店、次に勝木書店、そしてひまわり書店だった。これに2軒のレコード屋を加えると時代、文化、興味をそそられるほとんどのものがそこにあった。これが私のカルチャー黄金コースだった。
ここ数年、いやもっと前から学校帰りの子供たちの姿を見なくなった。もちろん寄り道禁止はあるだろうが、高校生まで見かけない。あれだけ賑わっていた、子供たちの興味を引き付けていたものは、いったいどこへ消えてしまったのだろう。ある県立高校で昼休みのみスマホ使用許可を出したら、その年からお昼の図書室利用の生徒が激減したという。先日、中学校の司書の先生が、小説などを読まない生徒がしかけ絵本をながめるようになったということで、ラインナップを揃えてコーナーを作るために来店した。7割以上の子供たちがスマホを持つ時代に、どうやって本と触れ合い、魅力を感じてもらえるのかが問題なのだが、ただただ本が好きな本屋のじいさまには、ちと荷が重いなあ…。

読書推進に「人」手間かける/安永寛理事長を再選/福岡組合総会

福岡県書店商業組合は11月21日、福岡市中央区のタカクラホテル福岡で第40期通常総会を開催し、組合員170名(委任状含む)が出席。役員改選で安永寛理事長(金修堂書店)を再選した。安永理事長は今後の方針として読書推進運動の強化などを訴えた。
総会は加来晋也理事(朝日屋書店)の司会で進行し、森松正一副理事長(森松尚文堂/麒麟書店)の開会の言葉に続き、安永理事長があいさつ。「福岡組合も法人として独立して40年が経った。無駄なものには一切お金を使わないという諸先輩方の尽力により、今日も組合活動を継続できている。私もこの路線を継承していく。しかし、使うところにはしっかりと使っていく。今の時代、書店は儲からない。儲かるためにはどうするか、生き残るためには何をすべきか、次世代の若い人たちも交えて話し合い、自分たちの進路を決めていかねばならない」と訴えた。
続いて大塚常務理事(たけふじ文泉堂)を議長に選出して議案審議を行い、第40期事業報告、収支決算報告、監査報告、第41期事業案及び収支予算案、組織案など、すべての議案を原案通り承認可決した。役員改選では安永理事長を再選した。
第41期事業計画を説明した安永理事長は、「読書フォーラム、読み聞かせ、朝の読書運動など、本を読むことの大切さを理解している人は大勢いる。今年は我が組合も予算計上して、『〝人〟手間』をかけて応援していきたい。組合員の皆様も、地域、学校、行政などの活動に参加してほしい」と述べた上で、①福岡県書店商業組合の組織・運営の強化②再販制度下における書店の役割の明確化③取引慣行の弊害是正④ネットワーク化による情報・物流の改善⑤読書推進と活字文化の振興⑥万引防止・青少年健全育成の周辺整備――の6項目の達成に向けていっそう力を入れて取り組むことを誓った。
総会終了後、出版社10名、取次4名、運輸・報道など7名、組合員23名の総勢44名が参加して懇親会を開催した。
[福岡組合執行部]
▽理事長=安永寛(金修堂書店)
▽副理事長=森松正一(森松尚文堂/麒麟書店)白石隆之(白石書店)
(加来晋也広報委員)

出版業界の新春行事

【書店関係】
[北海道]
◇平成31年北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会=1月29日(火)午後6時から、札幌市中央区のJRタワーホテル日航札幌で。
[宮城]
◇平成31年宮城県書店商業組合出版・取次・運輸合同新年懇親会=1月7日(月)午後5時から、仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で。
[神奈川]
◇神奈川県書店商業組合新年懇親会=1月30日(水)午後5時半から、横浜市中区中華街の華正楼で。
[静岡]
◇第51回静岡県書店商業組合新年総会=1月22日(火)午後4時から、静岡市清水区の日本平ホテルで。
[愛知]
◇平成31年愛知県書店商業組合新春賀詞交歓会=1月15日(火)午後5時半から、名古屋市千種区のルブラ王山で。
[大阪]
◇平成31年大阪出版販売業界新年互礼会=1月10日(木)午後4時から、大阪市北区のウェスティンホテル大阪で。
[京都]
◇京都出版業界新年互礼会=1月9日(水)午後4時半から、京都市中京区の京都ホテルオークラで。
[福岡]
◇福岡県出版業界新年の会=1月9日(水)午後4時から、福岡市博多区の八仙閣で。
【取次関係】
[日教販]
◇第68回日教販春季展示大市会=1月9日(水)午前10時から、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で。セレモニーは午後0時20分から。
【関連団体】
[日本出版クラブ]
◇出版関係新年名刺交換会=1月8日(火)正午から、東京都千代田区の出版クラブホールで。
[書店新風会]
◇新年懇親会=1月9日(水)午後6時から、東京都新宿区のハイアットリージェンシー東京で。
[悠々会]
◇新年会=1月11日(金)午後6時から、東京都千代田区の帝国ホテルで。
[全国医書同業会]
◇新年互礼会=1月5日(土)正午から、東京都千代田区の帝国ホテルで。
[出版梓会]
◇第34回梓会出版文化賞贈呈式=1月16日(水)午後5時半から、東京都千代田区の如水会館で。懇親会は午後6時半から。

東京都書店商業組合・書店経営研修会/「児童書の棚作り」テーマに講演/こぐま社前社長・吉井康文氏

東京都書店商業組合は11月15日、東京都千代田区の書店会館で平成30年度書店経営研修会を開き、こぐま社前社長の吉井康文氏が「書店における児童書の棚作り」と題して講演。書店の経営状況が悪化の一途をたどる中、店頭では児童書ジャンル、特に絵本が売上げを伸ばしている。吉井氏は、いま児童書が売れている理由を様々な観点から探り、販売のポイントや陳列方法について説明した。講演の概要を紹介する。
〔児童書の世界、進む多様化/総合出版社などの参入相次ぐ〕
これまで児童書の売上の多くの部分を支えてきたのはロングセラーだ。出版科学研究所が発表した2017年児童書売行き良好書ベスト15のうち、15年から17年の3年間に出版されたものは4点に過ぎない。一方、67年の『ぐりとぐら』、同年の『いないいないばあ』をはじめ、35年以上前に出されたものが7点も入っている。
現在、児童書の売上は他のジャンルに比べれば伸びている。ただ、各版元とも、そこまでロングセラーが売れているとは感じていない。ベストセラーや話題本の売上でカバーする「プチバブル現象」が児童書の世界で起きている。
児童書と他のジャンルとの境目が曖昧になり、児童書の世界は多様化している。癒しをテーマにした大人のための絵本が多く出版され、最近ではお年寄りが絵本を読むことが推奨されている。99年に翻訳された『ハリー・ポッター』は、最初は海外文学だったが、児童書としてブレイクした。ハリポタのようなジャンルの本は創元推理文庫やハヤカワ文庫から出ていたが、以降、すべてファンタジーの名の下に児童書として並べられるようになった。最近では夏目漱石、芥川龍之介、太宰治の文芸書が児童文庫化されている。『漫画君たちはどう生きるか』は文芸書やコミックのほか、児童書コーナーにも置かれている。コミックのヒット作『キャプテン翼』『ちびまる子ちゃん』『ワンピース』も児童文庫化されている。こうしたものは児童書の売行きとしてカウントされている。
このように児童書と呼ばれるジャンルの範囲が広がっている。児童書の売上は取次のジャンル分けを基準にしている。児童書は好調と言われるが、書店店頭の実態と合っていない部分もあるのではないか。
児童書への新規参入も増えている。大手のKADOKAWAや集英社が児童向け文庫を出し、手帳の高橋書店、実用書の飛鳥新社も参入している。ビジネス書のダイヤモンド社は『せつない動物図鑑』『わけあって絶滅しました。』『ざんねんないきもの事典』を次々と出版している。河出書房新社も児童書を出すようになっている。限られたスペースのパイを奪い合う過当競争が熾烈を極め、既存の児童書版元にとって頭の痛い問題となっている。
児童書の売上は91年に初めて1000億円を超え、02年の1100億円をピークに17年には864億円まで減少した。しかし他のジャンルに比べると健闘している。出版物全体の売上は、96年の2兆6564億円から17年の1兆3701億円へ、ピーク時の52%まで落ち込んでいる。児童書に目が向けられる理由も分からないではない。
〔ロングセラーを押さえる/「知っている絵本がある」という安心感〕
児童書版元と書店の間には乖離があると感じている。書店における児童書の位置づけはどうだろうか。絵本は判型がバラバラで棚に収納しにくく、面陳しなければならない。場所をとる割に単価が安い。再販制度があるにも関わらず、図書館や学校で入札が存在する。図書館では装備をしなければならない――とマイナスの要素ばかり。あまりいい印象を持っていないのではないか。
新入園、新入学、新学期、課題図書、自由研究、クリスマスと決まったサイクルがあり、毎年同じような内容でマンネリ化していることは否めない。
人気シリーズを除けば、新刊が売れるわけではない。乳幼児が直接購入するわけではなくプレゼントとして購入される。プレゼント包装になるから、書店員は手間がかかる。その割に粗利益率が低い。
ただ、ここ数年の出版業界の状況を考えると、書店としては児童書を置かざるを得ないし、児童書版元も置いてほしい。問題はその置き方だ。
基本は、ロングセラーを押さえること。各地域の図書館制作の年齢別ブックリスト、ブックスタートの絵本リストはぜひ活用していただきたい。取次も、トーハンが「ミリオンブック」、日販が「いくつの絵本」というブックリストを作っており、選書の参考になる。
疑問に思うのは、季節感はそんなに必要だろうかということ。クリスマスに絵本が売れるのは、何か絵本をプレゼントしたいためで、特にクリスマスに関する絵本が求められているわけではない。季節ならではの商品も必要だが、もっと絞って置いたほうがいいのではないか。
赤ちゃん絵本、年齢別おすすめ絵本のコーナーをもっと分かりやすく作ることが必要だ。ロングセラーの中から、各店おススメの絵本を面陳で紹介し、定期的に入れ替えてみるのもいい。それから、小学生がお小遣いで買える児童文庫も置いてほしい。
ディスプレイについては、絵本の表紙にPOPをべったり貼るのは本末転倒だと思う。絵本は表紙の絵を見せるもの。POPはおススメ絵本をアピールするために必要だが、絵を隠さないような配慮がほしい。安心できる児童書棚、つまり基本となるロングセラーをきっちり置いてある棚を作り、それをアピールするためのディスプレイを心掛けていただきたい。「この店は知っている絵本が置いてある」と子供たちに思ってもらうことが大事だ。
絵本にしかできないのは「絵を読む」こと。文字がまだ読めない子供は、読んでもらった話を耳で聞き、絵という文字を読んでいく。そして、絵本の世界に入り込み、自分が主人公や主人公の友達になり、うれしくなったり悲しくなったりする。つまり、そこで心が動き、成長している。主人公になれるということは、人の気持ちが分かるということであり、人の痛みが分かるということでもある。子供たちは想像力、創造力、記憶力と色々な力を駆使して本を読む。
50年前の絵本を昔の子供も今の子供も読んでいる。どんなに時代が変わろうとも子供の中には変わらないものがあり、それは子供の中の普遍性といっていい。長く読み継がれる絵本にも普遍性がある。その2つの普遍性が出会った時、子供たちは「もう一度読んで」と本を持ってくる。
人間が最初に身につけることばの力は、聞く力。その力が弱くなっている。聞く力が育たないと、次の話す力、読む力、書く力、理解する力も育たない。メディアの影響が指摘されている。テレビが普及した後、不特定多数の人に向けられた、人格を持たないことばがあふれた。現在は、母親がスマホでネットショッピングしている横で、子供がゲームをしたり動画を見ているのが当たり前の光景になっている。そしてコミュニケーションがとれない子供が増えている。そこに絵本が果たすことができる役割があるのではないか。ことばの力が育たないと出版界の将来は厳しいと言わざるを得ない。
私たち大人にできることは、子供に本を読ませるのではなく、本の世界の入口に立ってもらえるよう努力すること。ブックスタートや朝の読書が何らかの形で良い影響を与えるのではないかと期待している。
一度、本の楽しさを経験した子供は、コミックやゲームにはまっても、いつか再び本に戻ってくる。児童書の世界は本当に奥が深い。ぜひ諦めずに児童書を並べていただきたい。

消費税アップの書店への影響「計り知れない」/加賀谷理事長が懸念/秋田組合総会

秋田県書店商業組合は11月25日、横手市の共林荘で第32回通常総会を開催し、組合員20名(委任状含む)が出席。役員改選で加賀谷龍二理事長(加賀谷書店)を再選した。加賀谷理事長は来秋に予定される消費税増税と政府が推進するキャッシュレス化の問題点を指摘した。
総会は石川監査役の司会で進行。冒頭あいさつした加賀谷龍二理事長は、来秋予定される消費税率の10%への引き上げについて「増税による売上や諸経費への影響など、書店にとって計り知れない問題。また、出版物に軽減税率が適用された場合、会計処理システムの改修、POSレジの対応、図書ジャンルの線引きにかかる時間など、様々な問題が出てくる」と指摘。
また、消費税増税にも絡めて政府が推進するキャッシュレス化について「時代の流れとして理解はできるが、ポイント付与で利用しない人への差別の問題、機器の入れ替え・新規購入の費用などの問題がある中、早急に推し進めるのはいかがなものか。従来のカードへの対応は各店で行われているが、交通系カードへの対応をしている店舗は少ない」と懸念を示した。
引き続き加賀谷理事長を議長に選出して議事を行い、第1号議案から第9号議案まですべての議案を原案通り可決した。
任期満了に伴う役員改選では、平野左近(ひらのや書店)、岡田和浩(岡田書店)両氏を新理事に選任。高堂晃治(高堂書店)、平野史郎(ひらのや書店)、高桑一男(高桑書店)3氏が理事を退任した。
総会終了後、第1回理事会を開き、加賀谷理事長を再選した。また、新副理事長に岡田和浩氏、新専務理事に平野左近氏を選出した。
[秋田組合執行部]
▽理事長=加賀谷龍二(加賀谷書店)
▽副理事長=和泉正之(金喜書店)浅利国夫(あさり書店)岡田和浩(岡田書店)
▽専務理事=平野左近(ひらのや書店)
(石川信広報委員)

書店活性化事業を京都で展開/和歌山・有田川町の絵本事業に協力/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC)は11月14日に東京・千代田区の出版クラブで評議員会と理事会を開催。平成30年度上期事業報告・収支報告、平成30年度下期事業など全ての議案を承認した。
「辞書を読むブックフェア」は1200店が参加、店頭陳列コンクールには128店が応募し、合計13店が入賞したと報告。
光文文化財団との共催で行う地域書店の活性化事業「Live@Bookstore京都」は、書店員と出版社の有志で構成する「京都文芸同盟」の協力のもと、読書会やトークセッションを11月上旬までに計5回開催したと報告した。
「絵本のまち有田川町」協力事業は、絵本を町づくりの根幹に据えている和歌山県有田川町で、町の絵本事業を担う人材の育成事業を本年度からスタート。上期は「絵本よみきかせ隊養成講座」を開催、11月から「有田川町絵本コンシェルジュ養成講座」を開始した。次年度は、子ども時代から町の絵本事業に関心を持ち参画する「子ども司書」の育成事業なども行っていく予定。
「上野の森親子ブックフェスタ2019」は来年5月3日~5日に上野恩賜公園で開催。今年6月逝去した小峰紀雄運営委員長の後任に、日本児童図書出版協会の赤石忍事務局長(くもん出版)が就任した。
役員の一部交代では、山下直久(KADOKAWA)、齋藤貴(トーハン)両評議員が退任し、村川忍(KADOKAWA)、山下康治(トーハン)両氏が評議員に就任した。

SPSの中間報告と説明会/POSデータ提供サービスも発表/NET21

書店協業グループ・NET21は11月22日、東京・港区のシングスアオヤマオーガニックガーデンで「ストックブック・プライオリティ・セール(SPS)」の報告説明会を開催した。
SPSは、出版社の倉庫に眠っている既刊本を直取引・低正味で仕入れて販売する施策。取引条件は「委託」と「買切」の2種類を設定し、委託は58%、買切は25%で出荷する。この条件に合った商品を出版社が提案し、書店が自主的に仕入れる。委託品の販売期間は3ヵ月。取次業務はトランスビューが代行し、物流コストは出版社と書店が分担する。
SPSの中間報告を行った今野英治氏(今野書店)は、「売れなかった本でも店頭での再アピールで販売につながることが分かった。普段在庫しない人文書のような本でも売れる可能性がある。注文数が最低出荷ロットに届かなければ商品を出荷できないことが課題になっている」と説明。
また今野氏は、「3ヵ月の販売期間が適正かどうか検討が必要。陳列方法と販売状況の相関関係については、SPSコーナーだけで売ったのか、複数展示したのかなど各店で異なり、影響を検証できなかった。新刊のときでなく、SPSとして並べたときになぜ売れたのか、その理由も検証しにくい」と話した。
今後の課題については、現在の商品は実用書が多数を占めており、幅広いジャンルの取り組みを進めたいとして、出版社からのエントリー増加を掲げた。さらに、最低出荷ロットの問題をクリアするため、NET21以外の参加書店も増やしていきたいと述べた。
続いて、NET21会員書店のPOSデータを加工し、出版社向けに提供するサービス「PerfectionReport」を発表した。商品区分(書籍・雑誌)、出版社別で各店の売上情報や在庫が閲覧できる。年額利用料24万円(税抜、1IDの利用料含む。1IDごとに年額1万2千円を加算)。田中淳一郎社長(恭文堂書店)は、提供開始を来年2月頃と述べ、利用を呼びかけた。

「K―PRO」「たなづくり」2つの新サービスを説明/光和コンピューター

光和コンピューターは11月8日、東京・千代田区の出版クラブビルで第30回光和出版セミナー「出版社と書店を結ぶ新サービスのご案内」を開催し、出版情報登録センター(JPRO)の第2フェーズに対応した近刊情報マルチ登録サイト「K―PRO」と、売れる本棚作りと簡単発注を実現する「たなづくり」サービスの説明を行った。
冒頭であいさつした寺川光男社長は、出版社約3百社の基幹システムや、書店約1千店のPOSシステム等の取引実績を紹介。「流通の多様化が進む状況の中で、出版業界のお役に立てる情報インフラを構築し、業界が新たな上昇気流に乗るための一歩を築きたい」と述べた。
「K―PRO」は書籍データ管理など、JPROで行えるサービスを網羅しており、K―PROに近刊情報を登録するだけでJPROにもデータが同期され、取次や書店等にも配信される。さらにFAXを使ったプロモーションや、新聞・雑誌の書評掲載情報の表示など、独自の付加価値サービスを実装するのが特徴となっている。
「たなづくり」は、店舗在庫や定番商品情報を基にした効率的な棚作りを支援する、書店と出版社向けの共同サイト。サービスは棚補充に絞り込み、売上・返品・入荷・在庫など、書店と出版社の状況を共有して補充支援と自動補充を行う仕組みで、書店と出版社の業務や作業効率を向上させるとともに、販売機会損失の減少を図る。

返品現地処理実現へ沖縄組合を視察/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は11月20日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催した。
理事会では志賀理事長から、返品現地処理の実現に向けて先進組合である沖縄県を視察したと報告があった。また、運送会社から一部の組合員に雑誌返品輸送料値上げ依頼があったことを確認し、その後、他の組合員には同様の依頼はない旨の報告があった。
(事務局・髙橋牧子)

SJキャンペーンの結果を報告/奈良理事会

奈良県書店商業組合は10月15日、大和郡山市内で平成30年度第1回理事会を開いた。
林田芳幸理事長のあいさつと近畿ブロック会の報告に続き、同組合主導の来店促進企画の1つとして4月1日から5月31日まで実施した「サン・ジョルディの日キャンペーン」の結果報告があった。それによると、応募用紙7万枚のうち3670枚を回収。景品は「大切な方に花束を」が10名、「選べる!国内温泉宿泊券」が1組2名、「ペアで行く四季折々に日帰りバス旅行」が15組30名、「四季折々の日帰りバス旅行」が300名、図書カード(1000円)が50名、同(500円)が150名に当たり、発送された。
また、書店を取り巻く社会的環境の変化をいち早くキャッチするための情報交換や公立図書館対応について話し合うことなどを目的に、組合員有志で始めた勉強会について報告があった。11月中に正式発足、組合未加入書店、書店従業員なども含めて広く参加を募っていくとした。
また、12月20日から1月15日まで「本屋さんへ行こうスタンプラリー」を例年通り実施することも決めた。(靏井忠義広報委員)

2018・年間ベストセラー/『漫画君たちはどう生きるか』/トーハン・日販調べ

トーハン、日販は2018年の年間ベストセラーを発表。両社とも1位は吉野源三郎原作・羽賀翔一画『漫画君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)だった。
『漫画君たちはどう生きるか』は、1937年に出版され長年読み継がれてきた名作をコミック化したもの。昨年8月の発売以降テレビ番組や新聞などで相次いで取り上げられ、5ヵ月弱でミリオンを突破。累計発行部数が200万部を超える大ベストセラーとなった。原作の新装版として同時発売された『君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)も、両社とも9位にランク入りしている。
2位はトーハンが美容健康本の『モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット』(佐久間健一著、サンマーク出版)、日販が芸人の矢部太郎さんのエッセイ漫画『大家さんと僕』(新潮社)だった。3位はトーハンが『大家さんと僕』、日販が『ざんねんないきもの事典』(今泉忠明、下間文恵ほか著、高橋書店)。『モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット』と『ざんねんないきもの事典』はともに昨年の年間ベストセラーにランクインしていた作品で、書店の定番商品として展開され、ロングセラーになっている。
集計期間はトーハン、日販とも17年11月26日~18年11月24日。

子どもの本を展示即売/「絵本ワールドinにいがた」/新潟組合

絵本を通して子どもたちの創造力を育む「絵本ワールドinにいがた2018」が、11月18日に新潟市の朱鷺メッセで開催された。新潟日報社主催、子どもの読書推進会議など後援、新潟県書店商業組合など協力。
絵本ワールドでは、絵本作家のなばたとしたかさんによるトークショ―とサイン会を始め、絵本の読み聞かせ、大型絵本の紙芝居、「折紙で作ろう!!『踊るはらぺこあおむし』」のワークショップなど多くの催事が行われ、大勢の親子が参加して楽しんでいた。
新潟県書店商業組合は「子どもの本大展示即売会」を実施。本を購入した人には三角くじ抽選会に参加してもらい、当選者には図書カードや出版社提供のキャラクターグッズをプレゼントした。レジ・包装・ガラポン・棚の整理・お客様への応対と大変忙しい一日となったが、多くの組合員の協力もあり、売上げは目標の60万円を上回った。
(西村俊男理事長)

10月期販売額0・3%の微減/コミックス、店頭で3ヵ月連続プラスに/出版科研調べ

出版科学研究所調べの10月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比0・3%減。1%未満の減少幅に抑えられたのは16年12月期以来となる。
部門別では、書籍が同2・5%増。出回り金額が同2・7%増と送品自体が多く、プラスとなった。雑誌は同2・8%減で、内訳は、月刊誌が同0・3%減、週刊誌が同11・5%減。月刊誌ではコミックが伸長。大手出版社のコミックスの値上げの影響等で販売金額が上昇した上、返品が大きく改善されたことで前年並みとなった。
返品率は、書籍が同0・1ポイント増の41・1%。雑誌は同1・3ポイント減の43・2%。内訳は月刊誌が同2・6ポイント減の44・1%、週刊誌が同4・2ポイント増の39・3%。月刊誌は送品を継続して抑えているムックの返品も改善された。
書店店頭の売上げは、書籍がほぼ前年並み。東野圭吾、池井戸潤の新刊が好調の文芸書は約13%増。その中で、ビジネス書は『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)や『バカとつき合うな』(徳間書店)などライトな読み物が人気で約9%増となった。
雑誌は、定期誌が約4%減、ムックが約1%減、コミックスが約8%増。コミックスは3ヵ月連続でプラスとなった。ジャンプコミックスの値上げ(8月に本体価格400円から440円へ)の影響が大きいが、『転生したらスライムだった件』(講談社)などのヒットも出ている。

営業・宣伝と編集一体の販売体制構築/新書好調で3年連続黒字/書店読売中公会

書店読売中公会は11月14日、東京都千代田区のよみうり大手町ホールで第34回総会を開き、会員書店、取次、読売新聞東京本社と中央公論新社の関係者ら138名が出席。中央公論新社の松田陽三社長は、営業・宣伝部門と編集部門が一体となって増売に取り組む方針を説明した。
冒頭あいさつした松田社長は、同社の2017年度決算について3年連続黒字を確保できたと報告。一昨年の『応仁の乱』の勢いを持続し、楠木新『定年後』、磯田道史『日本史の内幕』、五木寛之『孤独のすすめ』といった新書がベストセラーになったことが大きな要因と説明した。
また、現在進めている構造改革について「営業力の強化に努めている。営業・宣伝ラインを再編し、編集部門と一体となって書籍・雑誌を販売していく体制を作った」と説明。その効果が現れた一例として誉田哲也の小説『月光』(中公文庫)をあげ、「同書は2013年刊行だが、編集から営業に異動した社員が、書店から『この本はこうしたら売れる』というヒントをもらい、プロモーションを練り直して店頭で仕掛け、売行きが復活した」とエピソードを披露した。
続いて、活動報告・企画説明を各担当者が行った。
会員書店の販売実績は、17年度の売上高は前年比14・8%増の30億3797万円と好調に推移したことが報告された。ジャンル別では、中公新書ラクレが同132・8%増、中公新書が同56・7%増、単行本が同24・8%増と伸長。一方、中公文庫は同10・0%減と2桁マイナスだった。
18年~19年の販売企画については、創業130年記念企画として誕生した文芸誌「小説BOC」の掲載作品から、来年3月に朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』、4月に伊坂幸太郎『シーソーモンスター』などを発売すると説明があった。
中公文庫からは、『老後の資金がありません』が20万部を突破した垣谷美雨の『夫の墓には入りません』を来年1月に発売。また、NHK連続テレビ小説「まんぷく」のモデルでカップヌードルを発明した日清食品創業者・安藤百福を紹介した『転んでもただでは起きるな!』、仕掛け販売で再ブレイクした『月光』の増売企画を説明した。
総会終了後に行われた懇親会では、読売新聞グループ本社の白石興二郎会長が「厳しい時代だが、文字活字文化と書店の繁栄のために一致協力して頑張りたい」とあいさつし、山口寿一社長の発声で乾杯した。

第20回図書館総合展フォーラム/本との出会いの場を広げるため地域、図書館、出版社が連携を/書協・相賀昌宏理事長が講演

第20回図書館総合展が10月30日~11月1日、横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれ、11月1日に日本書籍出版協会主催のフォーラム「『本との出会い』――読書の可能性を広げるためにはどうすればいいか」が行われた。講演した相賀昌宏理事長(小学館)は「地域社会と読者、図書館、出版社、書店、作家など本に関わるすべての人たちが垣根を越えて連携し、本との出会いの場を広げるべき」と訴えた。講演の内容を紹介する。
〔本を読みたくても読めない人は多い/多忙、低賃金などで〕
本と読書について、①人生、②読者、③出版社、④地域――の4つの視点から話をしたい。
まず、「人生」の視点から言えば、本なんて読まなくたって素晴らしい人生はあると私は思っている。人生から学べば本を読まなくても立派に生きている人は無数にいるし、人生から学ばなければ本を読んでも人の心の痛みの分からない人だっている。
子供の頃は古本屋に行くことが多く、新刊書店はお小遣いを貯めて本当に買いたい本をたまに買いに行く場所だった。就職してからは雑誌編集の仕事が忙しく、給料も少なくて、新刊書を買って読んだ記憶はほとんどない。29歳までそんな状態が続いた。子供も生まれたので、生活はかなり厳しかった。
様々な理由で本を読みたくても読めない人が多くいることは、自分のわずかな経験からでもよく分かる。ある調査によると、月に1冊も本を読まない人が4割いるそうだが、読みたくても読めない人がほとんどではないだろうか。読みたくても読めない人たちにどうやったら本を読めるようにするかは業界全体の課題。本なんか読まなくても学ぶことはいくらでもできると確信しながらも、読みたくても読めない人たちに本の楽しさを伝えて読めるようにしたいと考え続けている。
〔平成時代30年間で販売部数3億冊減/年齢動向と経済的要因〕
第2の「読者」の視点では、読者は「本を読む人」「本を読みたくても読めない人」「本なんか読まなくてもいいと思っている人」「本を読みたくない人」と人によって違うと同時に、本との距離というのは1人の人生の中でも変化する。しかし、読者の数が人口と関係していることは間違いないし、年齢によっても変化する。一般的に60歳以上になると読書量が減る。さらに身体的、精神的に書店へのアクセスが困難な人たちが大勢いるのも事実だ。
気を付けなければならないのは、出版社の人が「読者」というとき、新刊書店で本を購入する人が読者というイメージが強すぎること。私自身、新刊書店、古書店、新古書店、図書館、知り合いからいただいた本など、様々な形で本と接触している。このことを忘れてはならないと思う。
平成時代30年間の読者や業界の動きを年齢動向と経済的要因の観点から説明したい。
年齢動向で特徴的なことは、1000万人いる団塊の世代が40歳から70歳になった時代ということ。彼らが20歳のときに週刊少年ジャンプが創刊されたことからも、この世代の動向が出版界に与えた影響の大きさが分かる。現在、団塊の世代のうち本を読みたい人の多くが公共図書館に行っている。
書籍の年間販売部数は、91年は9億冊、17年は6億冊と、平成時代30年間で3億冊減ったことになる。このうち年齢動向による販売部数の減少は5000万冊と推測される。では、残りの2億5000万冊はなぜ減ったのか。
それは経済的要因によるものだ。90年の非正規雇用は労働人口の20%だったが、16年は37・5%。女性のみで見ると56・3%になる。04年~17年の出版関連の数字は、出版点数、発行部数、販売部数、販売金額、新刊書店数のいずれも減っている。増えたのは平均価格だけ。非正規雇用が増えたことで収入が減っているにもかかわらず、文庫も含めて書籍の値段は上がっているのが現状。非正規雇用の増加が新刊書店の販売部数の減少に影響を与えていることは明らかだ。
それだけでなく、97年に東アジア通貨危機に続く金融危機、日本長期信用銀行の破綻、山一證券の自主廃業、拓銀の経営破綻などが連続して起こり、翌98年の書籍販売部数は9億冊から8億冊へと一気に減った。03年に7億冊まで減って、04年から持ち直し、08年には7億5000万冊まで伸びたが、同年9月にリーマンショックが起きて、09年から現在まで下がり続けている。現在は6億冊まで減った。
しかし、広い意味での読者という立場で見ると、本離れは起きていない。現在、新刊書店は1万2000店だが、古書組合加盟の古書店は2000店、ブックオフに代表される新古書店は1200店、マンガ喫茶は1000店、レンタルブック店は2200店ある。また、公共図書館は3300館、大学図書館は1400館、小・中・高の学校図書館は3万5000館、公民館の図書室は7000館あるという。
新刊書店以外でどれだけ本との出会いがあるか、正確には分からないが、平成時代に減った書籍販売部数3億冊と同じか、その倍以上あるのではないかと見ている。
〔大量部数出版からオンデマンド出版へ/図書館から復刊要望を〕
第3の「出版社」の立場で言うと、書籍の販売部数が年齢動向と経済的要因で下がる一方である以上、企業としてデジタル市場の開発、非出版分野の開発をやらなくてはならない。大量部数からオンデマンド出版のように必要な人や必要な所に必要な数だけ提供する方向に行かざるを得ない。図書館で必要な本、復刊してほしい本の要望を司書が1ヵ所に集約し、出版社が採算の取れる部数と判断したとき、その数だけオンデマンド出版で出せたらいいし、そう考えている出版社は多い。図書館と出版社でこの仕組みを作るための会をやってはどうか。また、図書館で手に取った本を欲しい人が購入できるように、図書館と近くの書店が連携して取り組んでいる事例も聞いたことがある。そういう新しい場所としての図書館の試みも進んでいくと思う。
最後に「地域」の視点だが、過疎地域ではあらゆる業種の店が減っていて、書店も続けられない。本へのアクセスを維持するには、全国レベルでの対応策はもう無理。それぞれの地域で工夫し、他の地域の事例をお互い参考にしながら考えていくしかない。出版社、書店、作家も関わり、図書館との連携を強くしていくことが重要。世の中には色々な考え方があるが、自分の正当性を主張し、違う考えの相手を論破するためのエネルギーはほどほどにして、お互いに歩み寄って活用し合う。連携の道に力を注ぐ。前例にとらわれずにものを考える――そうすれば、広い意味での読者が欲するものを提供できるようになる。本が好きな仲間は色々あっても必ず手を結べる。垣根を越えて連携すれば、本の道は開かれると信じている。

減収減益の単体中間決算/物流経費の高騰が利益圧迫/トーハン

トーハンは11月22日、第72期(平成30年4月1日~同9月30日)中間決算の概況を発表。単体売上高は前年比9・2%減の1831億6200万円、経常利益は38・7%減の9億7500万円で、減収減益の決算となった。「経常利益が10億円を下回ったのはこの10年間で例がない」(小野晴輝専務)という。書籍・雑誌の売上の減少に加え、運賃等の物流経費の高騰が利益を圧迫した。
売上高の内訳は、書籍が同3・0%減の738億7700万円、雑誌が同7・8%減の645億4300万円、コミックが同6・8%減の207億1300万円、MM商品が同27・9%減の240億2700万円。
2月にCD・DVD卸の星光堂との業務提携が終了したため、前年度売上高から星光堂取引分約101億円を除くと、実態ベースの売上高前年比は同4・4%減だった。MM商品は同3・8%増と前年を上回っている。
返品率は同0・4ポイント減の43・3%。内訳は、書籍が同0・8ポイント減の45・2%、雑誌が同1・6ポイント減の49・9%、コミックが同2・2ポイント減の32・4%と、出版物はいずれも改善した一方、MM商品は同2・4ポイント増の16・4%となった。なお、星光堂の要因を除くMM商品の返品率は同2・6ポイント減で、総合返品率も同1・7ポイント減だった。
売上総利益は同0・8%減の228億1900万円。「送・返品のバランスが流通業として好ましい形になったことによる経費の圧縮効果は大きかった」(小野専務)ものの、運賃の値上げ分が5億5400万円、送・返品の業務委託料が1億円超となるなど物流経費が増加したため、販売費は同4・4%増加。人件費を中心とした経費の圧縮が進み一般管理費は同3・6%減となったが、販売費及び一般管理費は同0・7%増の207億3400万円となった。
この結果、営業利益は同13・7%減の20億8500万円、経常利益は同38・7%減の9億7500万円、中間純利益は同24・2%減の6億8700万円となった。
連結子会社16社を含む連結決算は、売上高が同8・3%減の1917億6600万円、営業利益が同15・1%減の16億5000万円、経常利益が同44・8%減の5億5700万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同67・9%減の8600万円で、減収減益の決算となった。書店事業会社で閉店に伴う除却損を計上したことにより、単体決算と比べて各利益が低下した。
なお、出版社との運賃協力金の交渉については、300社以上と交渉し、7割の社と妥結したという。

今井恭子氏、シゲリカツヒコ氏が受賞/小学館児童出版文化賞

第67回小学館児童出版文化賞は、今井恭子氏『こんぴら狗』(くもん出版)、シゲリカツヒコ氏『大名行列』(小学館)に決まり、11月15日に東京・千代田区の如水会館で贈呈式が行われた。
贈呈式では、小学館の相賀昌宏社長が「児童書を改めて読んでみると、子どもの頃とは違った意味でとても心に響く作品が多く、高齢者に読んでもらいたいといつも思っている。また、日本と海外とが相互の翻訳書で児童書の世界を拡げ、子どもたちが1つの作品を巡っていろいろ話ができる、そういうことも出版における児童書の1つの役割になるのではないかと考えている」とあいさつ。審査委員の森絵都氏による選評の後、受賞者に賞が贈呈された。
受賞者あいさつで、江戸時代後期に飼い主に代わり讃岐の金毘羅参りをする犬を題材にした今井氏は「世にも稀な習わしを形にして残したいと思った。ほとんど記録が残っておらず苦労したが、多くの方の助けを得て本になった」。イラストレーターとして活躍するシゲリ氏は「1枚絵で見せるのも面白いが、前後に絵があることによって物語性や世界観を表せるということが面白く、絵本の世界を極めたいと思った。受賞を励みに、机にかじりついて面白いものを作っていきたい」と語った。

売上高2640億5800万円、6・6%減/営業、経常利益は過去10年で最低水準に/日販中間決算

日販は11月21日、第71期(2018年4月1日~9月30日)中間決算を発表。日販グループ(連結子会社27社)の連結売上高は、前年比6・6%減の2640億5800万円。営業利益は同58・5%減の5億6900万円、経常利益は同56・5%減の6億4200万円で、営業利益、経常利益ともに過去10年間で最も低い水準に。親会社株主に帰属する中間純利益は、同54・7%減の3億7300万円と減収減益の決算になった。
連結の事業別業績をみると、日販と㈱MPDが中心となる出版流通業の売上高は2469億円(同7・0%減)、経常利益5億円(同41・9%減)、4億円の減益。㈱MPDは業量減少に伴う物流効率の悪化や、物流設備の移転等の戦略投資の影響もあり経常赤字になった。
小売業は、売上高317億円(同1・3%減)、1100万円の経常赤字、1億円の減益となった。本部機能の効率化による改善に加え、前年度に売場の全面改装を行った店舗や文具・雑貨を大幅に拡大した店舗が利益に貢献した。一方、市場の下落傾向により既存店が大幅減益となったほか、今年度に改装を行った店舗の投資費用や改装のための一時閉店も影響した。
不動産事業は、売上高12億円(同0・9%増)、経常利益5億円、3900万円の増益。その他事業は、売上高26億円(同1・3%増)、経常利益2億円、2400万円の減益だった。
日販単体の売上高は2119億円(同6・4%減)、経常利益は7億円で1億円の増益。出版流通業は固定費の削減に努めたが、運賃単価値上げや災害による輸配送の混乱に伴う追加費用負担もあり、赤字幅は縮小したものの前年に続き営業赤字になった。一方、不動産事業は堅調で、全体の経常利益は増益となった。
商品別の売上高は、書籍が5・2%減、雑誌が10・3%減、コミックスが2・3%減、開発品が5・2%減。書籍部門は損益構造の改革を進め、物流拠点統合や返品荷造費の削減で営業赤字幅を圧縮した。雑誌部門も固定費削減を進めたが、大幅な減収に加え、運賃単価値上げの影響で減益になった。特にCVSルートは輸配送効率の悪化が顕著となっている。
単体の商品別返品率は、書籍が同0・8ポイント増の34・6%、雑誌が同0・3ポイント増の46・2%、コミックスが同3・4ポイント減の30・4%、開発品が同4・1ポイント減の41・4%、合計では同0・4ポイント減の38・6%。
記者会見では、出版社との取引条件協議について、雑誌は約170社、書籍は約140社と協議し、ともに約7割の社から回答を得たと進捗状況を説明した。

第25回電撃大賞は3部門4名に金賞/KADOKAWA

次代を創造するエンターテイナーの新人賞「第25回電撃大賞」(KADOKAWA主催)の贈呈式が、11月14日に都内で行われた。
応募総数は5631作品で、今回大賞は該当作品なし。小説部門は渋谷瑞也さん『つるぎのかなた』、イラスト部門はうらべさん、コミック部門は岩国ひろひとさん『うおつき夏子』、御眼鏡さん『神様@アカウント』がそれぞれ金賞を受賞した。
贈呈式では、KADOKAWAの郡司聡執行役員文芸局局長が「今年は大賞は出なかったが、賞の優劣はあまり気にせず、自信を持って創作の道を進んでほしい。ここからがスタートライン。長いレースを勝ち抜いて作品を書き続けてほしい」と受賞者を激励。電撃小説大賞金賞を受賞した渋谷さんは「金賞の連絡をいただいたときは悔しくて眠れなかった。現状には満足していない。必ず空位の大賞以上に面白いものを作っていきたい」と話した。