全国書店新聞
             

平成16年1月1日号

日書連萬田会長に聞く2004年日書連の課題

2004年が明けた。日本経済の不振を受けて、出版業界は7年連続のマイナス成長が確実視されている。今年はどんな1年になるのか、ポイントカードの対策は進むのか、書店を取り巻く環境はどう変化するのかなど、年頭に当たって今年の見通しと日書連の課題を萬田会長に聞いてみた。聞き手は田中徹編集長。
〈景気停滞の局面は続く〉
――出版業界は2003年も7年連続マイナス成長が確実です。今年の景気見通しはいかがでしょう?
萬田会長日銀は12月の短観で「景気回復は本物」という見方を出しました。大企業の製造部門、デジタル関連素材が好調です。鉄鋼をはじめ日本から中国向け輸出も増加している。
ところが回復は本格的でも、個人消費にはそれが表れていない。中小企業と非製造部門は回復感がないままです。賞与は社会保険料に加算され、手取り額は減った。年金問題も先の見通しがもてないで、消費が頭打ちになっています。東京地区百貨店の11月売上げは7・2%マイナスという数字が出ています。
出版業界は前年の「ハリー・ポッター」の影響で、10月は史上2番目という落ち込みで、それが12月にも引き継がれ、中小書店の落ち込みは相当悪い。
――客数も客単価も落ちていますね。
萬田会長客数の減少という点では、ネット書店など購入手段の多様化が進んでいます。情報をデジタルで入手する流れもある。電子書籍も松下電器のシグマブックとソニーのパブリッシングリンクの2社が発表しました。客単価が低いのは、それだけ消費者が財布の口を締めているといえます。
――2004年もこの局面が続きますか。
萬田会長日本経済は景気回復と構造改革が綱引きしているところです。新年度予算は国債発行高が増えたといっても、前年に比べ景気回復型の予算ではない。小泉政権が進めようとしている改革の芽をどの程度、景気回復の牽引力につなげるかでしょう。しかし、規制緩和によりコンビニが薬を売ったり、自由化するとその影響でマツモトキヨシが雑誌を扱うなど、書店に跳ね返ってくる面もあります。
日本経済のメイン・エンジンである個人消費の回復がない状況で、新たな増税も出てくる。景気のブレーキになる要因が政治課題として出てきますので、これらを見極めていきたいと思います。
〈ポイントカードは取次の対応に期待〉
――日書連が昨年最も重点を置いたのはポイントカードでした。今年はどう展開しますか?
萬田会長日書連は2年越しで出版4団体で構成する再販研究委員会に問題を提起し、解決を図ってきました。昨年1年で問題点ははっきりしてきました。従来はポイントカードが値引きか景品か判断が分かれるところでしたが、再販契約違反は公取委も認めるところとなりました。
そこで、次の段階で違反をどう取り除くか。再販研究委員会で取り上げた違反店は、10月末に大手出版社2社から取次に要請書が出ました。これを受けて中止した書店、やめる準備に入った書店もあります。一番問題になったのはヤマダ電機で、1年以上前から取引取次店が是正を申し入れてきましたが、理解を得られないまま越年しました。
日書連は10月、徳島移動理事会で年内解決を図ろうと決議を行いました。これに基づいて、各県組合では有力出版社三十数社に取次の指導を働きかけました。最終的に取次はそれぞれ年初の週報を使って再販契約違反の是正を告知することになった次第です。
日書連では個別対応の必要から、先日、正副会長で取協小林会長を訪ね、家電量販店複数社に対し、年内にも取引取次が指導を強めるよう要請しました。
――年末に朝日新聞読書欄の出版業界回顧で、ポイントカードが読者にわかりにくいと指摘されました。萬田会長ポイントカードそのものより、著作物再販制度をご理解いただかないと、わかりにくいということではないでしょうか。その点は、業界あげて読者に説明していく必要がありますね。
〈万引き対策〉
――万引き対策の点でも運動が進みました。
萬田会長万引き対策は平成11年頃からJPICが取り上げ、日書連ほかも出版社に万引き防止タグをつけてくれと働きかけてきました。タグについては、ICタグが早晩開発されるのを待つことになりました。それでは、万引きにどうやって対処していくか。万引きは窃盗ですから古物営業法に基づく対策がありますが、この法律は金額1万円以下のものは買い入れ時にチェックが働かない。警察庁に古物営業法改正を働きかけましたが、規制緩和の流れの中で取り上げてくれなかった。
最近の万引き調査では中高生の万引きが増加し換金目的のケースも増えています。
それで、日書連は18歳未満の青少年からの買い入れ禁止を各県青少年保護育成条例で図る運用強化と、一部の県では出版物を除く条項が入っているので、出版物も含めるよう改正してもらう。条例による青少年対策を地域の皆さんとともに進めていこうと方針転換しました。
東京組合は一昨年12月に青少年条例の一部改正を都議会に請願しました。昨年8月に東京都は竹花副知事が緊急治安対策本部長に就任された。さっそく面会に伺い、そのときに竹花副知事から「書店が店内でも声をかけるような積極的取り組みをするなら東京都、警視庁も応援する」ということになった。それで、東京組合は12月10日から青少年の非行防止と万引き減少を呼びかけるポスターを一斉掲示しています。この反響は大きく、テレビやラジオで取り上げられ、読売新聞では「万引きに対する損害賠償請求が打ち出された」と1面に大きく取り上げてくれました。
書店は防犯ミラーやカメラを設置し、万引きをつかまえれば処理に半日かかるなどと、いろいろな負担をしている。つかまったら「本代さえ払えばいいんでしょ」と受け止められるのでは、また再犯されかねない。プラスアルファの損害賠償を請求することで世論を喚起し抑止効果を狙いました。今年は万引きの事例なども積み上げ、ガイドラインづくりに進みたいと思っています。
〈消費税総額表示の準備〉
――4月から消費税の総額表示が始まります。出版業界の準備状況はどうなのでしょう?
萬田会長出版業界は売上げカードを使って消費者に伝えます。店頭に掲示するポスターも準備ができています。若干ぶれるところはあるかもしれないが、業界4団体で強制するとカルテルになるので、むずかしいところです。しかし、ほとんどの出版社は4団体の決めた方向で乗り切ると思います。
表示はともかく、端数処理の問題は残ります。これも業界で決めるわけにはいきません。平成9年に業界団体で取り決めてはいけないと公取の指導が出ています。その辺は過去の経験から対応できると思います。
それと、税率引き上げ、複数税率の問題があります。昨年の総選挙のあと、税率引き上げが浮上してきました。小泉首相は在任中に税率を引き上げないと言っていますが、党税調は2007年に引き上げ準備を行うとしています。出版界は今まで据え置きの運動をしてきましたが、年金問題の財源として消費税を引き上げるマニュフェストも示されている。今後、税率引き上げについて日書連の意見をまとめていかなければと考えています。
複数税率の問題は、10%までは単一税率でいくのではないかという考えがある一方、7%の案が出たときに食料品は5%に据え置くべきだという議論が出てくる。福祉政策、所得分配論とからんだ問題になり、日本の将来の見取図が示されなければ判断がつかない。それを国民に示してもらった上で、国民が選挙で態度を示すということではないでしょうか。
〈読書推進の取組み〉
――読書推進運動の展開はいかがですか。
萬田会長昨年、1年間を通じて岡山県で読書推進の各種モデル事業を展開しました。その成果をよく究め、参考にして業界全体で取り組みたいと思います。読書推進運動はブックスタートをはじめ、JPIC、子どもの読書推進会議と一緒になってやっているほかに、講談社の読書キャラバン、小学館の読書ノート、トーハンの朝の読書、日販のおはなしキャラバンと各出版社、取次がそれぞれの持ち味を出して進めています。日書連でも「第4土曜日は子どもの本の日」の運動を進めています。
子どもに読書の習慣がつけば読解力、国語力が養われ、感性も豊かになる。これは、一生の宝なんですね。次代の読者を育てる気持ちで、今年も力を注いでいきたいと思います。
――成人向けの読書運動はどうでしょうか。
萬田会長毎年秋に野間読書推進賞で表彰される読書グループは、長年、読書を通じ地域の皆さんと交流を深め、読書運動に貢献されています。全国には1万を越えるグループがありますから、少なくない書店が係わり合いを持っているのではないでしょうか。書店新聞でもそういう事例を取り上げてほしいね。
――昨年読まれて印象に残った本は、ありますか?
萬田会長読書はビジネス書、経済小説が中心です。昨年読んだ本では堺屋太一著『平成30年』が印象に残りました。堺屋氏は経済企画庁長官時代から新しい枠組みということを提起しています。出版業界も今年は仕入れ・販売・返品・決済の各面で旧弊を打破する時期を迎えているし、そうした新しい枠組みの中で業務改革を推進していく必要があると思います。

2004年の出版界を予測する/「小説の横組み主流になる?」/上智大学教授(出版論)植田康夫

未来という時間は、ある日突然に現われるものではなく、現在という時間の延長上にある。だから、未来に起ることの予兆は、既に現在見ることが出来る。そこで、二〇〇三年の出版界をながめて、この傾向が二〇〇四年に強まるだろうと思われるのは、語りの文体による本の刊行と、横組の小説の刊行である。
このうち、語りの文体とは、喋り言葉を文字化した文章のことで、〇三年に小林秀雄賞を受賞した岩井克人氏と吉本隆明氏の著書は、いずれも喋り言葉を文字化したものであり、大ベストセラーとなった『バカの壁』も、そうだった。この現象を見ていると、現在の出版界が、近代出版の始まった明治の頃と似ているのではないかと思えてくる。
明治になって、わが国では言文一致の文体が用いられるようになり、さらに講談や落語、浪曲など、交互で表現された演芸の速記を文字化した本や雑誌ばかりが刊行され、雄弁と称した演説の速記を雑誌化するということも行われた。たとえば、『講談倶楽部』『雄弁』などが代表的な例だが、〇三年における語りの文体による本の刊行も、これらと共通した性格を持っている。
つまり、現在の出版界においては、近代出版の歴史の中でみがかれた書き言葉による表現があまりに完成され過ぎて、読者に拒絶間を与えるようになっており、そのような風潮を打開する手段として、語りの文体が新鮮に思えるのだろう。そのため、〇四年においては、語りの文体の本がもっと沢山刊行されるようになるだろう。
そして、〇四年に増えるのは、横組の小説の刊行である。〇二年の十二月末に刊行され、〇三年にミリオン・セラーとなったケータイ小説の『DeepLove』は、横組で印刷されているが、この本が一〇〇万部を突破したことは、日本の出版史における一つの事件と言ってよい。なぜなら、わが国の出版物は、単行本にしろ、雑誌にしろ、大部分が縦組で印刷され、横組で印刷された出版物は専門書か専門誌だと考えられ、小説などの文芸作品は、縦組の印刷があたりまえだとされてきたからだ。
ところが、ケータイの生み出した『DeepLove』という小説は横組で印刷され、若い人たちに抵抗感なく受け入れられ、大ベストセラーとなった。この現象から言えることは、〇四年には、横組の小説本が増えるということであり、さらに文庫に古典的文学作品が横組の印刷で収録されるようになるであろう。
日本の隣国である韓国では、村上春樹の『ノルウェイの森』や、吉本ばななの『キッチン』の翻訳がハングル文字で横組印刷されて版を重ねているが、日本の若者も小説を横組印刷で読むことに対して、抵抗感はないはずだからである。

早期解決への打開の道探る/ポイントカードなお足踏み/12月理事会

日書連は12月18日に書店会館で理事会を開き、ポイントカード問題で主要出版社に対する各県組合の働きかけについて報告を受けるとともに、違反店に対する取次の指導に向けて事態の推移を見守ることになった。〔再販研究〕
ポイントカードの対応では11月理事会以降の1カ月間で19組合が主要出版社を訪問。12組合が文書を送って同問題に対する理解と違反店の指導を求めたことが報告された。
これを受けた出版社は取次に違反店の指導を求めているが、一部取次でなお足踏み状態が続いており、早期解決へ向けて事態打開の道を探って行く。
〔スタートアップ〕
CD、ビデオに認められている貸与権を出版物にもと文化審議会著作権分科会の報告書を受け、文化庁は同報告書に対する意見募集を行っている。
18日の理事会には貸与権連絡協議会の森座長(講談社コミック局長)らが訪れ、意見書集約に当たって書店の協力を求めた。森座長によると、法規制のない韓国ではレンタル店が8千店も乱立し、新刊書店は5千店から2400店に激減した。日本国内でもベストセラーが1冊百円、『バカの壁』10円などの料金でレンタルされており、「作家、出版社、書店の新刊市場を守るため声を上げてほしい」と訴えた。
雑誌定期購読サービスについては、トーハンに続き大阪屋が富士山マガジンサービスと提携したシステムを発表。日販も年明けからスタートすると井門委員長が説明。書店マージンが明確になった段階で各社のシステムを比較するとした。
地方出版物のデータベース化は12月15日から沖縄組合でネット販売を開始したと報告があった。
〔情報化〕
日本図書コード管理センターは来年4月から出版インフラセンターの1部門として再発足することが報告された。日書連MARCの研修会は12月に入って岩手、山口で実施。年明けの1月29日には埼玉県で開催を予定している。
〔流通改善〕
「週刊朝日」「サンデー毎日」の発売日が新聞販売店、即売スタンドは書店より1日早い問題で、藤原委員長は弁護士と相談した結果、①即売、取次に一緒に荷物を渡しているので差別的取引には当たらない、②取次に改善を申し入れ、不可能となれば新聞社系週刊誌は販売しない実力行使しかないのではないか――とする考え方を説明した。
鳥取・島根の3日目地区改善要望は、日書連から発売日本部委員会に申し入れを行う。1年前倒産した和楽路屋出版の精算問題は、取次各社にその後の処理状況を問い合わせている。
〔指導教育〕
東京組合が12月から展開している「STOPザ万引き」キャンペーンの件で丸岡委員長は「加盟店全店で一斉にポスターを掲示する。従来は万引きを発見しても店外に出るまで声をかけられなかったが、ポスターに声をかける基準を明示した。悪質な場合は損害賠償も請求する。3カ月間の万引き件数、実態もまとめたい」と報告した。携帯電話によるデジタル万引きについては、店内での携帯電話使用を断るステッカーを作成する。
都青少年条例改正問題では、12月17日の都議会委員会で有害図書包括指定、警察官の立ち入り調査が見送られたと報告があった。
〔消費税〕
4月からの消費税総額表示については、書協、雑協の連名でお客様向けポスターを作成するが、同ポスターの文案が承認された。
〔組織強化〕
日書連の定款見直し問題で、17日に全国中央会もまじえて見直し作業を行ったと鈴木委員長が報告した。安定化・合理化事業の規定を削除し、「経営環境の整備」を明記することになった。新定款案は2月初めにもまとめ、5月の通常総会で成立を目指す。
〔増売運動〕
「心に残る子どもの本新刊セール」の今年度実績がまとまり、舩坂委員長から報告された。販売金額は1億2485万円で、14組合が目標金額を達成した。
来年の文化講演会については、講談社、光文社、小学館、集英社、新潮社、NHK出版、文藝春秋の7社の支援が決まった。
〔読書推進〕
第4土曜日は子どもの本の日キャンペーンは、来年度は佐賀、滋賀、香川の3組合で実施することになった。キャンペーン終了後も読み聞かせを継続実施している書店からは、「実施店」のポスターを製作してほしいという声もあり、高須委員長はこれらの声に応えていきたいとした。
子どもの読書推進会議が中心になって展開している「絵本ワールド」については、福岡組合山口理事長から「来年、福岡で開催される国民文化祭に合わせて開催する話があったはず」と提起があり、早急に確認することになった。

13ヵ月連続で前年割れ/新書は平均2割増加/日販調べ・11月期

日販経営相談センター調べの11月期書店分類別売上調査がまとまった。11月期の売上げは、今年最も低い数字だった10月の5・9%減から4・5ポイントも上昇したが、前年には及ばず連続13カ月の前年割れとなった。
ジャンル別ではコミック、児童書、文庫、新書の4ジャンルで前年をクリア。いずれも5%以上の伸びを示している。新書は『バカの壁』効果で2割近い伸び。特に81坪以上では25%の大幅増だが、中規模以下では3~6%の伸びにとどまっている。
文庫はTVドラマ化で『白い巨塔』(新潮社)が好調。児童書は『かいけつゾロリ』(ポプラ社)の新作の動きがよい。
11月の客単価は1077円。前年同月比99・1%と、ほぼ前年並みの数字。81~120坪クラスの数字がやや低い。

子どもワールドに1万人入場/岡山

岡山県書店商業組合(吉田達史理事長)が協力して11月8日・9日に岡山市のコンベックス岡山で開かれた「子どもの本ワールドinおかやま」の報告書がまとまった。来場者は約1万100人。
「子どもの本ワールド」は両日とも午前10時から午後5時まで行われ、8日は絵本作家・あべ弘士氏が「どうぶつに絵をならったよ」と題し講演。9日は児童文学作家・西本鶏介氏が「お話の大好きな子どもに育てる」をテーマに講演した。児童書展示即売会には組合員16人、トーハン15人、出版社5人が参加、約370万円を売り上げた。
同会場では「全国読書フェスティバル岡山大会」を併催。9日に作家・松谷みよ子氏が「私と子どもの本」をテーマに講演、児童文学者・作家の斎藤惇夫氏、兵庫県太子町立図書館・小寺啓章館長、ノートルダム清心女子大学・脇明子氏によるパネルディスカッション「読書の喜びを子どもたちに」が行われた。このほか読書に関する研修会、展示が実施された。

日書連マーク促進へパソコンを無償貸出

山形県書店商業組合(五十嵐太右衛門理事長)は、日書連が進める「学校図書館システム」の促進のためデモ用ノートパソコンを購入、平成16年1月から組合員への貸出を始めた。
山形県内の促進状況は、デモを行った学校・委員会が16ヵ所を超え、「情報BOX」の購入見積提出も5件となっており、来年度の予算計上を強く推し進めている。また、新たにパソコンを購入し図書装備・システム促進をしている組合員も多数あり、具体的な成果が現れ始めている。
そこで山形組合は、さらなる促進のため、組合員にパソコンを無料で貸出し、日書連のシステムを「まずは自店で試してみる」キャンペーンをスタートした。
パソコンには教育システムの「情報BOX」「司書ツール」とスキャナーがついており、貸出・返却や蔵書管理のやり方が簡単に体験できる。(五十嵐靖彦)

組織強化に重点置く/外商をテーマに講演会/秋田総会

秋田県書店商業組合(川井寛理事長)の第17回通常総会が12月8日、仁賀保町「いちえ」で開催され、組合員42名(委任含む)が出席した。
総会は高堂専務理事の司会で進行し、川井理事長があいさつ。7月の東北ブロック大会で東京開催が無事終わったことに感謝し、現在の厳しい環境下、低迷が続くなかで、組織強化と会員確保、利用できる組合活動に向けて、役員ほかに一層の協力要請があった。
審議は議長に和泉徹郎氏(金喜書店)を選任して行い、第1号から第10号までを原案通り承認した。なお役員改選では全員を留任とした。
休憩を挟み、岩手県水沢市の鈴木書店・鈴木朋子氏が「できること探しを“原点”から――鈴木書店における外商での実践」と題して講演。出席者全員が感銘を受け、質問で時間をオーバーしたほどであった。
取次・出版社・東北トラックから、年末年始の企画説明やお願い事項の説明があった後、午後6時半より懇親会を開催。ひらのや書店専務の名司会で、木村和一氏(榊田分店)より開宴のあいさつがあり、和やかに二次会まで延長となった。(木村和一広報委員)

新春企画・心に残る本/『小説十八史略』京都府・きりん館・吹田恭子

父が急逝したのは、私が三番目の子どもを出産する前々日のことだった。予定日はとっくに過ぎていたので、私にその事実が告げられたのは、忌明けの前である。対面して別れたわけではない私には、とても受け入れ難いものだった。
そんなとき手にしたのが、陳舜臣の『小説十八史略』である。何千年もの昔から繰り広げられてきた権力闘争の俯瞰図。その下には生々しい人間模様が幾重にも塗りこめられている。民族性の違いはもちろんあるのだが、私にはそんなものは微細なことにしか思えなかった。人一人が生きる時間のなんともろいことか。なんと短いことか。父との突然の、永遠の別れが、ようやく私の中に沈みこんだ。そして生きていることの偶然を思った。
それから何度この本を開いただろう。険しい山道を行軍する兵士たち。華やかな衣装をまとい、毎夜の宴に酔う美女たち。そして、権力の座に登りつめた、智謀をうたわれ、猛将、猛女と呼ばれる男と女。その誰もが、自らの意思だけでは定めようのない人生を生き、やがて歴史の舞台から姿を消して行く。読むたびに偶然とはかなさを思う。
背景には大きな自然がある。広大な大陸は、険峻な山々、広がる砂漠、悠然と流れる長大な河を擁して泰然とそこにある。その大陸に比べると、いかにも小さな日本という島。そこにさえ、億という営みがある。あらためて、人の小ささを思う。
今またこの本を開いてみて、思いは中東に飛んだ。そこで繰り広げられている所業は、『十八史略』よりもずっと長い間、人の営みを眺め続けてきたチグリス・ユーフラテス河には、どう映っているのだろう。

大阪府高杉豊副知事と会談/大阪組合

大阪府書店商業組合(今西英雄理事長)は11月25日、大阪府の高杉豊副知事と庁舎内で会談した。
会談では、①「大阪子どもの読書推進会」(仮称)に大阪府の支援協力を求める②書店での万引きの件③大阪府立図書館について、書店組合の採用か街角の本屋にも新規参入の道を開いていただきたい④府立教育機関(府立の学校等)のコンピュータ化に伴い、「日書連マーク」を採用いただきたい――の4点を申し入れた。
席上では今西理事長のあいさつのあと、金田副理事長が今回の申し入れの趣旨について全般的な説明を行った。また面屋副理事長が、子どもの読書推進会に府の支援協力を求める件について大阪府知事に面会したいとして、具体的な説明を行った。
高杉副知事からは「趣旨にはおおむね賛成だが、たとえば知事は表彰式に参加するぐらいで具体的な話は課長を窓口に詰めてはどうか」などの発言があった。
時間的に全てにわたっての回答をいただくところまでいかなかったが、それぞれ担当課長に後日具体化の話をすることとし、会談を終えた。(坂口昇広報委員)

新春企画・心に残る本/『ドリトル先生航海記』小山市・進駸堂・谷邦弘

まったく本というものに縁のない人生を送っていたのだが、高校1年の時の夏休みに新潮文庫の100冊に挑戦(70冊ほどしか読めなかったが)、読書の楽しみに目覚め、授業中もほとんど教科書の裏に文庫本を隠し読んでいる状態だった。進路を決める時にこんなすばらしい本というものを売る本屋さんになろうと決めたのだが、何故か書店ではないところで働くことになった。
サラリーマン生活も悪くはない。入社1年目はひたすら映画を見た。1日6本見ることもあり、何を見たいではなく値段が安く時間が合えばなんでも見ていた。年間600本も見たろうか、「ぴあ」の割引がなんとありがたかったことか。2年目はひたすら酒を飲んだ。会社近くの酒屋の立ち飲みから始まり安くてたらふく飲み食いできればどこへでも行ったものだ。3年目は博打、オートレース、競輪、競馬、競艇、麻雀と休みごとにどこかのギャンブル場にいた。4年目は上記のすべてを両立しようとしたが出来るはずもなかった。
俺はいったい何をしてるんだろうと悩んだ5年目、いつも立ち寄る書店だが近寄ったことのない児童書売場にふらふらと迷い込んでしまった。そこで目に止まったのが、少し色あせてしまった『ドリトル先生航海記』だ。気がついたらレジに持っていっていた。
電車の中で読み始める。ストーリーも勿論楽しめたのだが、ドリトル先生の言葉で「鳥や動物のごくこまかいところに注意をはらうことが大切」「動物の言葉を覚えるのはすべてに辛抱強くなければならない」に、人の生きていくことと同じだなと思い、「トラやライオンは檻に入れてはならない」「私は目的地に向かうと必ずそこに着くのだ」という信念を感じた。
何故あんなに感動したのだろう。自分でも不思議だが、その年にお世話になった会社を退職して、その後すぐに結婚という航海(後悔ではない)に出ることになった。
新社会人となった時から仕事の厳しさと楽しさを教えてもらい、嫁と出会えたトーハンの皆さんには今でも感謝している。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・福谷雅子

◇2歳から/『あめ!Rain』/マニャ・ストイッチュ=作
/くどうなおこ=訳/ポプラ社1400円/2002・6
かわいた大地に雨が降る。雨のにおい、いなびかり。動物たちは、徐々に近づく雨の気配に大喜び。雨の恵みに感謝し、やがて来る乾季を冷静に受け止めます。厳選された言葉が、まるで絵の一部のように並べられ、ダイナミックな絵を、より一層強く見せています。
◇4歳から/『なにをたべたかわかる?』/長新太=作/絵本館1000円/2003・11
ねこが、釣った魚をかついで歩いていると、ねずみが近づいて来ました。魚はパクッとねずみを食べ、その分大きくなりました。ウサギ、キツネ、次々食べてドンドン大きくなる魚。そうとは知らないねこは、ついに魚を食べることに…。さて、ねこは一体何を食べたのかな?

◇小学校低学年向き/『まいごのフォクシー』/イングリ&エドガー・ドーレア=文・絵/うらべちえこ=訳/岩波書店1900円
2002・6
犬のフォクシーはほねが大好き。ある日、飼い主のポケットにあるほねを追いかけ庭を飛び出した。迷子になったところを親切なおじさんに拾われ、猫やおんどりと共に芸を仕込まれ、舞台に立つことに…。はたしてフォクシーはほねを手に入れることができるでしょうか。

私の好きな偉人・歴史上の人物/「折口信夫」金沢市・ヨコノ書店・横野浩

石川県羽咋市一ノ宮町「気多大社」そばの、日本海を見晴らす小高い丘の上に折口信夫の墓所はある。
民俗学者、国文学者、神道学者、小説家、そして歌人でもあった折口は1887年、大阪市に生まれた。小学校時代から古典文学に親しみ、1910年國學院大學卒業後に今宮中学に勤務、この間柳田國男主催の「郷土研究」に「三郷巷談」を発表し、以後知遇を得た。その後國學院大學、慶応大学の教授となり、53年に死去するまで勤めた。この間、「折口学」と呼ばれる特異な学風と強烈な個性で民俗学、国文学の世界に不滅の貢献をした。よく使われる「まれびと」という言葉は折口固有の学術語である。代表的著作として『古代研究』(民俗学)、『死者の書』(小説)、『海やまのあひだ』(歌集)などがある。
ところで、大阪生まれの折口の墓所が、なぜ能登にあるのか。学問に打ち込み生涯独身を通した折口のもとにはたくさんの弟子が同居していた。なかでも羽咋出身の藤井春洋(はるみ)を深く愛し、彼が太平洋戦争末期南方戦線に送られる間際に、わが子として入籍した。しかし、春洋は硫黄島で戦死。父信夫は春洋の生家の墓所に父子墓を建て、自らも没後はその墓に入ることを希望した。そして、その4年後、66歳で亡くなった折口は、本人の希望通り春洋の眠る父子墓に埋葬されたのである。
「もっとも苦しき/たたかひに/最もくるしみ/死にたる/むかしの陸軍中尉/折口春洋/ならびにその/父信夫の墓」と碑銘が刻まれた墓に、父子は寄り添うように眠っている。

2004年わが社のイチ押し企画/角川書店・角川出版販売代表取締役社長・田中樹生

3月下旬発売の企画2点についてご紹介させていただきます。
1点目は『elBulli1998―2002』=写真=。スペイン・バルセロナの郊外にあるレストラン「エルブリ」。1年のうち、店を開けるのは半年だけで後の半年は料理の研究開発に当てている驚異の三ツ星レストランです。2003年は、1シーズン全8000席に40万人が応募(内20%が日本人客)、今もっとも予約が取りにくいレストランの斬新な発想法と調理法がすべて描かれています。商品の特色として①全30皿超のコース×4年、371点のレシピを完全公開。②料理を理論的に分類、独自の組み合わせ方や発想法を解説。③日本語化にあたっては、シェフ、フェラン・アドリアとプロデューサー、ジュリ・ソレルが自ら監修しているという3点があげられます。また、本の刊行にあわせてシェフとプロデューサーが来日。TV密着取材など数多くのパブリシティが見込まれています。読者特典として予約者のためだけにエルブリが特別に作ったリーフレットをプレゼント。他では手に入らない限定アイテムです。体裁・セット内容はB4変型、上製函入り、本体総ページ496ページ、写真点数422点、別冊(22ページ)、レシピ等収録のCD―ROM付、定価本体2万8千円(税別)、条件は買切(初回出荷分のみ3ヵ月延勘)。
2点目は『映像で甦る世界の恐竜』。世界155ヵ国、約4億世帯が視聴するドキュメンタリー番組の専門局「ディスカバリーチャンネル」。なかでも評価の高い「恐竜の大陸」シリーズを7枚のDVDセットとし発売いたします。商品構成としては①DVD7枚セット(全世界の恐竜を一挙に網羅。その誕生から絶滅までを収録)。②DVD収納ボックス(映像解説に加え、永久保存に耐えられる蔵書的魅力を付加)。③特製オリジナル解説本付(恐竜の謎、不思議をこの1冊で解説。より立体的に恐竜の世界を楽しめます)となっています。体裁・セット内容はA4判、上製化粧函入りDVD7枚、解説付DVD収納本、特製オリジナル解説本付、価格2万5千円(税込)のところ特別価格2万円(税込)2千セット限定、条件は買切(初回出荷分のみ3ヵ月延勘)。
いずれの企画も販売促進費をご用意しております。2点の企画について何卒ご拡売のほどお願い申し上げます。

私の好きな偉人・歴史上の人物/「新渡戸稲造」一関市・北上書房・栗原秀郎

「われ太平洋の橋とならん」――西洋文明を日本へ、日本文化を西洋へ紹介することに力を尽くした新渡戸稲造は、日本を代表する最初の国際人といっていいだろう。1984年から使われている5千円札の顔としても親しまれている。
1862(文久2)年、岩手県盛岡市に生まれ、9歳で上京、13歳で東京英語学校に学んだ。その後、札幌農学校に内村鑑三らとともに第2期生として進学。この頃キリスト者となり、冒頭の「われ太平洋の橋とならん」という言葉を発する。札幌農学校卒業後、東京大学に入学した新渡戸は、入学試験の面接官にも「西洋の思想を日本に伝え、東洋の思想を西洋に伝える橋になる」との理想を述べたという。新渡戸のその後の人生は、この理想を実現するために捧げられることになる。
欧米に留学して農学や経済学など幅広く学問を学び、当時の日本人としては破格の国際性を身に着けて帰国。帰国後は札幌農学校、京都大、東大などの教授をつとめ、18年に東京女子大学の初代学長に就任、立ち遅れていた女子教育にも尽力した。さらに20~26年まで国際連盟事務次長をはじめとする要職につき、国際協調に尽力した。7年の任期を終えて辞任するとき、「国際連盟の輝く星」とまで賞賛されたという。英文で『武士道』という本を書くなど、日本文化の海外紹介にもつとめた。
33年、カナダ・ビクトリア市にて没。同・バンフで開かれた太平洋会議に出席した帰路、病に倒れ、愛妻メアリーに看取られて天に召された。71歳だった。現在、盛岡市とビクトリア市は姉妹都市になっており、ビクトリア市の太平洋を望む丘には、盛岡の岩手公園と同じ記念碑が建てられている。
「国際人」という言葉が気軽に用いられる昨今であるが、今こそ新渡戸の生涯と業績に思いを馳せ、その豊かな国際性と学識に学びたいと思う。

2004年わが社のイチ押し企画/講談社販売促進局局長・重村博文

昨年秋の「さすが電子レンジ!料理大全集」につきましては書店様のお力添えで目標の10万部を大きく突破でき、重版もかけることができました。本当にありがとうごさいました。
特に店頭に電子レンジを持ち込んで「実演販売」をしていただいた書店さまも全国に多数あり、販売方法に一石を投じることができました。私たちもワンパターンの販売手法ではなかなか売れない時代であることを再認識した次第です。ご協力いただいた書店様や販売会社の皆様にこの場をお借りしてあつく御礼を申し上げます。
さて今年の春の企画は次の4本です。週刊分冊百科として、1月15日に「20世紀シネマ館」(全50巻)=写真=、2月12日に「週刊花百科」(全80巻)を創刊いたします。両企画ともテレビや新聞等で宣伝いたしますので店頭での装飾展開や「一声掛け」等で読者のみなさんにおすすめください。「20世紀シネマ館」の創刊号は「ローマの休日」ということもあり、すでに40代、50代の女性の予約があがっており、50代、60代の男性とともに読者の広がりが期待できそうです。
一方、書籍は3月に「旬の食材」(全7巻各巻定価本体2500円)、「日本の家」(全4巻各巻定価3900円)を刊行する予定です。特に「旬の食材」は春夏秋冬の「魚」を4巻に収め、「野菜」は春夏、秋冬の2巻に、そのほか「四季の果物」を1巻に収録するという巻編成です。
日本人は世界で一番「食にこだわる」国民です。また「日本の食文化」はあらゆる面で世界に誇ることができます。
しかし昨今世界各地からの食材の輸入や「ハウスもの」が珍重されることで、私たちの食卓から「旬という季節感」がすっかり喪われてしまいました。しかし「旬」こそが「おいしさと栄養」の面で優れていることは広く知られています。新企画「旬の食材」(全7巻)はあくまで「旬」にこだわり、徹底した現地取材でもう一度「食」を見直す絶好の企画です。
「食材を選ぶ時のポイント」「食材の持ち味をいかす料理法」「食の栄養と安全」など実用記事プラス薀蓄情報などが満載です。料理に興味をお持ちの方はもちろん、仕入業者、スーパーや魚屋さん、八百屋さん、料亭、飲食店など幅広くおすすめください。
また「日本の家」(全4巻)は「ヨーロッパの家」「アメリカの家」「日本の洋館」につぐ第4弾の企画です。日本固有の優れたすまいのなかから現在使用されている「日本の家」を地域別に編集した企画です。外観だけでなく、町並みはもちろん家屋内も写真で紹介されています。現在住居になっているため、取材にずいぶん時間がかかってしまいました。それだけに貴重な編集内容になっています。
住まいづくりのヒントになるのはもちろんですが、プロの建築家の方にも参考になります。
以上新春の4大企画をご紹介いたします。今年も読者に受け入れていただける企画を用意いたしますのでなにとぞよろしくお願いいたします。

私の好きな偉人・歴史上の人物/「蒋介石」小田原市・平井書店・平井弘一

この人を偉人として扱うと異論が出るかもしれない。確かに日本人にとっては悪役であったし、今でも「負け犬」「独裁者」「白色テロ」といった悪いイメージの強い人である。私があえてあげるのは、日中戦争が日本の敗北に終わった時、全中国軍に布告した文の中にある「恨みに報いるに徳をもってせよ」の言葉である。戦争が味方の勝利に終わった時、この言葉がいえるということは、単なる軍人政治家の出来ることではないと思う。
蒋介石がこの言葉をどの程度実行したかには意見もあるが、日本兵を抑留せずすぐ帰したこと、賠償金を請求しなかった、中国軍の日本占領参加も辞退した等、かなりの配慮をしたことと思う。
最近における中国・台湾の経済発展を見るにつけ、もし日中戦争がなく、破壊のエネルギーが建設のため使われたならば、日中両国にとって大変な幸せになったと思う。今、イラク問題、拉致問題等きなくさい話題が多いが、こんな時にこそ「恨みに報いるに徳をもってせよ」との言葉を噛み締めるべきではないか。

私の好きな偉人・歴史上の人物/「中上健次」和歌山県・堀光文堂・堀康雄

小学館が文庫版選集を刊行し、宇多田ヒカルが愛読者であることを公言していることから、近年、新たな読者を獲得している中上健次。彼は1946年、和歌山県新宮市に生まれた。新宮高校卒業後に上京し、同人誌「文藝首都」の同人となる。69年、「一番はじめの出来事」が「文藝」に掲載されデビュー。76年、「岬」で第74回芥川賞を受賞、戦後生まれで初の受賞者となる。その後、「枯木灘」「地の果て至上の時」「日輪の翼」「讃歌」「奇蹟」「異族」などの長編小説、「化粧」「熊野集」「重力の都」などの短編小説、紀伊半島のルポルタージュ「紀州木の国・根の国物語」など数多くの意欲作を発表。92年、腎臓癌のため和歌山県勝浦町の病院で死去した。享年46歳。
紀州に生まれ、紀州に死んだ中上健次。その作品の多くは彼が生まれた紀州南端の地、新宮の「路地」を舞台としている。被差別部落出身の作家である彼は、そこを「路地」と呼び、生涯にわたって「路地」の人間を描き続けた。彼が描いたのは紀州から日本、アジア、そして世界へと広がりをもつ普遍的人間性であった。

ふるさとネットワーク/北信越ブロック編

〈新潟〉
日本のスキーは明治44年1月、オーストリアのレルヒ少佐が上越市でスキーの指導を行ったことが始まりとされている。毎年2月1日~11日の期間に日本スキーの発祥の地、金谷山スキー場を会場に「レルヒ祭」が開催される。発祥当時の様子を再現した伝統の一本杖スキーの披露をはじめ、モーグルやワンメイクジャンプ大会、世界一流のスキーヤーによる指導、さらに地元小学生による郷土芸能、金谷山太鼓の演奏といった多彩なイベントが繰り広げられる。前夜祭では大花火大会が開催され、澄み切った冬の夜空に大輪の華が鮮やかに咲く。また開催日の前後には「レルヒウィーク」として、食の陣、屋台村in本町(商店街)、コンサートといった協賛行事も数多く行われる。地元ではまさしく冬の風物詩として定着している。
(熊田雅明広報委員)
〈富山〉
ブリとノーベル賞で飛越活性化――江戸時代、富山湾で水揚げされた寒ブリを松本まで運んだ交易の道「ブリ街道」。近年は同街道沿線の市町村に縁のある田中耕一さんら4人がノーベル賞を受賞したことで注目されているが、これにちなんで昨年12月7日、「ぶり・ノーベル出世街道祭り」が開かれた。
富山湾で獲れるブリは古来「越中ブリ」と呼ばれ、今も最高級ブリの代名詞である。秋から冬にかけて獲れるブリは全身が霜降り肉と言っていいくらいに脂が乗っている。10キロを超える精悍かつグラマーな魚体は「富山湾の王者」と称するにふさわしい。刺身はもちろん塩焼き、ブリ大根、かぶら寿し、どれをとってもうまい。特にかぶら寿しは塩漬けしたカブラに塩ブリを挟み込み麹やご飯とともに漬けこんだもので、私の大好物だ。(渋谷恵一広報委員)
〈石川〉
昭和ひとけた生まれの私が戦後間もなく本屋の仕事についてからを思い出してみる。
初めの頃は本は文化娯楽の大きな媒体で、当時取次から来る雑誌は国鉄の客車便で各駅の駅止扱い。毎朝列車の着く時間に自転車で金沢駅まで行き、荷台に山と積みペダルを踏んで帰るのだが、たまに転倒することもあった。その中モータリゼーションの波が来てバイクに切り換わり、そして四輪車となった。昭和40年頃から取次からの配送も自動車便となり、店頭まで配られることになった。客への配達は当時は月刊誌が主で週刊誌はほとんどなく、今よりも気楽にやっていた。やがて週刊誌ブームとなり、仕事に追われ忙しいばかりの日々に。いま中古書店で捨値で売られている文学全集を見て、昔書店のドル箱だったことを思い感無量の思いである。最近はインターネットの普及で書店もこれからどうなるかと思う昨今である。(横野浩広報委員)
〈長野〉
国宝松本城が世界遺産登録を受け、世界的文化遺産として恒久的に保存が成されるよう運動が行われています。
天守は外観五重で内部は六階の櫓、高さ30メートル、北に乾櫓、南には辰巳櫓、月見櫓と均整のとれた美しい姿をしています。400余年もの昔、5メートルもの大石をどのように運んできたのか、直径50センチもの大木をクレーンもない時代、どのようにして組み立てたのか。階段の高いこと。昔、侍は5尺足らずだった由。どのように昇り降りしたのか不思議である。
観光客のミニスカートのお嬢様、ズボンに履き替えて下さい。中が丸見えになってしまいます。月見櫓は時の城主松平直政が、いとこの3代将軍徳川家光をお迎え接待するため増築したとのこと。将軍と一献傾けながら月見の宴を行ったであろう。
(高嶋雄一広報委員)
〈福井〉
現在、世界最高のクラシックカーレース復活版「ミッレミリア」。世界各国から参加の375台がブレシアをスタートし、公道1600キロ3日間のイタリア半島を走り抜く過酷なレースに、福井県組合理事の石倉勇次郎氏が弟さんのブランカスポルト1100㏄でエントリー。コ・ドライバー(ナビ)を勤めた。自動車、バイク関係の品揃えでは北陸随一で知られるブックスノバを経営しながら数々の年代物のバイクや車を修理手直しも趣味の域を越えていた同氏は昨年ついに念願の同レースに参戦。飲まず、食わず、休まずという過酷なレース展開で3分の1はリタイアする中、見事176位で完走した。イタリア行きを奥さんに1年がかりで承諾させた苦労もすべて報われたそうである。そして今は不休で本業に勤しんでいる日々である。
(清水祥三広報委員)

学校・養護施設に児童書プレゼント/トーハン従業員組合

トーハンの従業員組合はクリスマスプレゼントとして、児童書14冊と児童向けビデオ2本、小学館「おひさま」の年間購読を1セットにして全国23ヵ所の学校・養護施設などに寄贈した。
同社従業員組合では、北海道南西沖地震が起きた平成5年に被災した子どもたちに本を贈ったのを機に、全国の学校や施設等へ毎年クリスマスプレゼントとして児童書を贈る活動を続けており、今年で11回目。同組合の本・支部ではクリスマスを前に代表者が各地域の学校や施設を訪問し子どもたちに本を寄贈した。
12月13日には同組合の代表4名が葛飾区の児童養護施設・希望の家を訪れ、子どもたちに児童書とビデオを手渡し、幼児向け雑誌が1年間届くことを伝えた。

松下電器、日本リーバが大賞受賞/講談社広告賞

読者の投票で入賞作品が決まる第25回「読者が選ぶ・講談社広告賞」は、男性誌・情報誌部門の大賞に「松下電器産業」(掲載誌「オブラ」)、女性誌部門の大賞に「日本リーバ」(掲載誌「with」)が選ばれ、12月8日、東京・日比谷の帝国ホテルで贈賞式が開かれた。
この賞は2003年3月から4月の2ヵ月間に発行された同社発行の12誌に掲載された1ページ以上の広告のなかから、読者の直接投票によって優れた広告を選出する読者参加型の広告賞。今年は5万8千通の投票により各雑誌賞(金銀銅)を決定し、さらに投票した読者のなかから代表審査員を選び大賞を選出した。
贈賞式で野間佐和子社長は「今期業績は前年を下回る厳しい内容で、広告収入も若干前年割れになった。厳しいなかで女性誌、情報誌が伸びるなど、明るい面も出てきた。雑誌広告のさらなる発展を目指して努力する」とあいさつした。

参考図書

◇『いつでも本はそばにいる』
「朝の読書」でよく読まれている作家による読書体験記の第2集。朝の読書推進協議会編、メディアパル刊、四六変形判224頁・本体950円。
巻頭で柳田邦男氏が「かけがえのない本との出会い」と題し、生涯の心の習慣をつくる大切さをつづるのをはじめ、「朝の読書」で人気の作家33名が子どもの頃の読書体験談などを記している。巻末に文中で紹介された本のリスト。

第40回のマネジメントセミナー開催/日販

日販は2月25日、26日に東京江東区のホテルイースト21東京で第40回「日販マネジメントセミナー」を開催する。
このセミナーは書店経営者層を対象に実施しているもので、今回は「転換期の経営戦略」をメインテーマに、業界を超えた勝ち組企業の経営者、著名人を迎えて行う。また第40回を記念して、初日の講演終了後に参加者の情報交換を目的とした懇親会を開催する。
会費は、日本出版共済会加盟店が宿泊なし3万円、宿泊4万円、1日受講1万5千円。未加盟店は宿泊なし4万5千円、宿泊5万5千円、1日受講2万5千円。締切は2月18日、申し込みは日販各営業部・支店および経営相談室まで。
〈講演テーマ・講師〉
2月25日=第1講「競争を勝ち抜く、先取り経営」㈱樹研工業代表取締役・松浦元男氏、第2講「転換期こそチャンス~今、書店経営者が取り組むべきこと」SNSムラカミ研究室代表・村上忍氏、第3講「書店に読者を呼び戻すために―私の提言―」㈱資生堂名誉会長・福原義春氏
2月26日=第4講「ロスプリベンションについて」㈱リテールサポート代表取締役・山内三郎氏、第5講「どうなる今後の日本経済」㈱UFJ総合研究所主席研究員・森永卓郎氏、第6講「勝ちに不思議の勝ちなし~繁盛店の秘密」経済評論家・キャスター・西村晃氏

マガジンエキスプレス/書店の定期購読サービスを支援/日販

日販は、書店での雑誌定期購読サービスを支援する「マガジンエキスプレスサービス」を1月20日から全国500書店で開始する。
書店の定期購読処理の負担を軽減すると共に、潜在需要を喚起し、新たな購読者獲得によって書店店頭での売上拡大をめざす。
1月スタート時点での対象雑誌は出版社130社500誌。契約雑誌は今後は直販誌なども含めてゆき、2004年4月時点で出版社350社1000誌、サービス参加書店1500店をめざす。
新サービスでは、書店は店頭で読者からの雑誌定期購読の注文を受け、日販へFAXやPC―NOCSⅡで申し込み手続きを行う。読者は書店での受け取りか、希望する住所への直送を選択する。送料は、本体価格500円以下で直送の商品は一部読者負担となるが、それ以外は全国無料。
日販は、書店からの受注データをもとに顧客、商品、物流などの管理業務を行う。書店店頭受け取りの場合、商品は顧客宛名を添付したビニール袋に1誌ずつ梱包し、通常の雑誌配送ルートで送品する。読者への直送は、メール便で発売日に読者の希望する住所へ届ける。
書店との受注情報等の連絡はFAXを活用するが、PC―NOCSⅡ導入店では、受注入力・顧客リスト管理・直送分の出荷状況確認などが行えるサービスメニューを用意。また、書店や読者からの問い合わせ窓口として、雑誌定期購読に関するサポートセンターを設置する。
参加書店の初回費用は千円。初回参加キットとして、店頭告知ポスター、カタログラック、読者向け商品カタログなどの予約獲得ツールを送付する。商品カタログは年4回発行予定(初回申し込み時以外は有料の予定)。代金決済は、書店は読者から年間定期購読分の金額を前払いで受け、日販へは雑誌定期購読サービス用に設定された口座で決済を行う。
この新サービスにより、従来の雑誌定期購読サービスで書店が行っていた顧客別台帳作成、商品の選別・取り置き、配達、伝票起票・代金回収といった管理業務が大幅に軽減。また店頭非在庫商品も取り扱いが可能になり、新規顧客の拡大が見込める。

本屋のうちそと

万引きがひどいようだ、と他人事のように自分の店のことを言っても仕方ないのだが、如何せんこの1年余りの間、1人も捕まえていない。言い訳の理由は2つある。
その1、売上大幅減で人件費を切り詰めギリギリでやっている。その2、万引き犯に多少なりとも罪の意識があれば、盗む盗まないの時に挙動不審になってくれるものなのだが、万引きの低年齢化に伴い、子どもが相手ではその判断がつきにくい。
1年ちょっと前に捕まえたのは小学2年生の2人組だった。捕まってすぐに慌てて名札を胸から外して隠すところが可愛いねッて!警察と学校へ連絡した。その後、父親が「万引き位で警察とはナンダ!」と騒いでいたが、ウチ以外にも近所のコンビニを結構荒らしていたのが取調べで発覚し、静かになった。
先日は、顔馴染の小学5年生の女の子が母親に連れられてやって来た。「お宅で万引きしていたそうで」と。どうやら、この前近所のコンビニで捕まった小学5年生が1人いたのだが、その子の取調べから芋蔓式に十数人万引きが発覚し、巡り巡ってウチにも謝りに来たようだ。「まだ何人かお詫びに来るかと思います」とその常連客の母親は言って帰ったのだが、1人も謝りには来ない。
何かが何時からか違ってしまった。人と人の間に確かに壁はある。けれど同じこの「場所」で生きていく者同士としての、最低限度の共通認識のようなものは、昔はあると思っていた。いつどこで、僕らは間違ったのだろう。
(海人)

竹西寛子氏『贈答のうた』に野間文芸賞

平成15年度野間文芸賞に竹西寛子氏『贈答のうた』(講談社)、野間文芸新人賞に島本理生氏『リトル・バイ・リトル』(講談社)、星野智幸氏『ファンタジスタ』(集英社)、野間児童文芸賞にいとうひろし氏『おさるのもり』(講談社)が決まり、12月17日、帝国ホテルで贈呈式が行われた。
野間児童文芸賞は三木卓氏、野間文芸新人賞は笙野頼子氏、野間文芸賞は川村二郎氏が選評。このうち川村氏は竹西氏の受賞作について「音楽への思いと王朝時代の和歌の贈答について書かれた上質な室内楽。めざましいお仕事」と述べた。これに対し竹西氏は「最初は学ぶ対象だった詩歌が、日常の言葉に欠かせないものになった」と、御礼のあいさつを述べた。