全国書店新聞
             

令和3年12月1日号

出版業界の課題解決担う組織に/書店の経営課題解決へ特別委員会設置/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC、近藤敏貴理事長=トーハン)は11月9日に評議員会と理事会を開催し、JPICを出版業界の課題解決のため中心的な役割を担う組織にしていく方針を決定した。まず書店、出版社、取次の有志と有識者で構成する「特別委員会」を設置し、書店の経営課題解決に取り組む。
7月1日にJPIC理事長に就任した近藤氏は、同6日開いた理事懇談会で、日書連・矢幡秀治会長など出版業界4団体のトップが副理事長を務めるJPICを、業界課題解決のための中心的役割を担う業界横断型組織へ進化させることを提案。JPICを「議論の場」「出版業界の総意醸成の場」「指針を指し示す場」としていくとの認識を共有し、まず書店が抱える課題の解決に最優先で取り組むことを確認した。
これを受け、全国の書店30法人に経営課題についてアンケートとヒアリングを実施。内容を集約した結果、「書店の収益改善」「読書推進と店頭活性化」「書店員の人材育成と労働環境の改善」の3テーマを設定し、特別委員会を設置して検討することとした。特別委員会は月次定例会議を行い、討議内容をもとに、課題解決の実務を担う専門委員会を適宜立ち上げる。
特別委員会第一次書店メンバーに、笠原新太郎(笠原書店)、藤則幸男(紀伊國屋書店)、亀井崇雄(三省堂書店)、長﨑健一(長崎書店)、井之上健浩(久美堂)、奥野康作(ブックエース)、岡山好和(丸善ジュンク堂書店)、斉藤晋一郎(谷島屋)、松信健太郎(有隣堂)の各氏が就くことが決定している。出版社、取次、有識者のメンバーも加わり、12月にスタートする予定。
書店の収益改善に向けたアプローチとしては、出版情報登録センター(JPRO)と連携した近刊情報利用促進、キャッシュレス決済の経営への影響と手数料軽減の調査・研究やロビー活動の展開、図書カードの利用普及促進、書店存続を第一とした業界4団体の意見調整などを行っていく方針。読書推進と店頭活性化については、読書習慣がない層に向けたアプローチや、図書カードを店頭誘引の鍵とする施策を展開する。図書カード掘り起こしのため、22年3月~5月に「磁気式図書カードを使えばチャンス!『図書カードでお得キャンペーン』」を、帳合取次を横断して約3千書店で実施する予定(参加申込制)。

日書連、コロナ拡大予防ガイドラインを改訂

日書連は「書店における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」を経済産業省の要請に従って11月12日に最新の改訂を行い、ホームページに全文を公表した。今回は従業員の感染予防・健康管理を実施する上で取り組むべき事項を加えるなど、新たな知見や状況を踏まえた対応策を盛り込んでおり、各店舗における感染拡大予防に活用願いたい。

河出書房新社『ピーナッツ大図鑑』を特別増売/東京理事会

東京都書店商業組合は11月4日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
総務・財務委員会では、令和4年1月以降の理事会等の日程を次の通り承認した。▽理事会=1月休会、2月3日(木)、3月3日(木)、4月5日(火)、4月22日(金)臨時理事会、5月休会。▽通常総代会=5月18日(水)。
事業増売委員会では、河出書房新社『ピーナッツ大図鑑スヌーピーとチャーリー・ブラウンと仲間たちのすべて』(11月25日発売)の特別増売企画の実施を承認した。キャラクターとエピソードの徹底解説や貴重なビジュアルを満載するファン必携の豪華愛蔵版で、初回特典に日本版オリジナル特製リーフレットが付く。全組合員に1冊送品して増売に取り組む。

YouTubeチャンネル「東京の本屋さん」開設/街の書店と読書をPR/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は、読書の楽しみ、本屋が街にあることの喜び、紙の本の良さをアピールすることを目的に、YouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」を開設した(https://www.youtube.com/channel/UCC-Xr3O33ApZwx_V_pzVNVQ)。
この企画は、東京都中小企業団体中央会の支援事業「新しい日常対応型業界活性化プロジェクト」を活用し行うもの。小川頼之常務理事(小川書店)を委員長とする特別委員会を設置し、①インフルエンサーマーケティングを活用した書店の価値と読書推進の啓蒙、②動画メディアによる各書店情報の発信、③SNSを活用したマーケティング手法の各書店への導入の3事業に取り組んでいる。
「東京の本屋さん」には港区の小川書店と山陽堂書店の書店紹介動画を皮切りに11月25日時点で6書店の動画をアップしており、22年1月末までに約70書店の動画を公開する予定。また映画監督の篠原哲雄氏による連続ショートドラマや、著者・著名人・インフルエンサー等が出演するPR動画を今後公開していく。この他、書店でのSNS運用のためのマニュアル作成やセミナー等も行う方針。

雑誌詳細情報の表示開始/書誌情報サイト「BooksPRO」で/JPRO

日本出版インフラセンター(JPO)の出版情報登録センター(JPRO)は10月26日、出版社を対象に「JPRO雑誌詳細情報登録」に関する説明会をオンラインで開催した。
JPROは、書店向け書誌情報サイト「BooksPRO」で11月1日から雑誌の詳細情報の登録・表示を開始した。今年1月から雑誌の基本情報(出版社名、誌名、発売日、定価など)を掲載していたが、全ての定期誌・増刊について出版社が目次、特集内容、付録、次号予告等の情報や画像を直接追加登録し、表示できるようになった。
説明会でJPRO雑誌登録部会の井上直部会長(ダイヤモンド社)はBooksPROについて、書籍の新刊・更新情報が日本で最も早く掲載され、販促に欠かせないツールだと書店から高評価を得ている一方、雑誌の詳細情報を求める声が多かったと報告。今回の改修で、詳細情報に加え、表紙や付録などの画像を5点まで、また試し読みも掲載できると説明し、積極的な利用を呼びかけた。
続いて、三省堂書店の亀井崇雄社長が、書店での雑誌情報収集の実情を説明。読者の方が雑誌の掲載タレントや付録の情報をいち早く察知し電話してくるとして、事前に情報を得られれば配本数を増やす努力ができるが、対策も取れずに品切れになるケースが多いと指摘。雑誌情報の有力な情報源はネット書店であり、出版社公式サイトより先に情報が掲載されていると述べ、「BooksPROを見れば一発でわかると言えるように今後の詳細情報登録に期待する」と話した。
また、浜書房の増田めぐみ取締役は効果的な詳細情報登録について説明。「女性誌は特に問い合わせが多いので、目次を入れたり、付録の情報までカバーしてもらえるとありがたい。情報が事前にあれば(対応の)マニュアルも作りやすい」と述べた。

ひろゆき氏、「本」と「読書」を語る/「本の日」に学生60名とトークセッション

「本の日」実行委員会は11月1日、オンラインでトークイベント「ひろゆきと話そう。本のこと、自分のこと、未来のこと。」を開いた。匿名掲示板「2ちゃんねる」創設者で実業家、著作家の西村博之(ひろゆき)氏と学生60名のトークセッションをメインに、ひろゆき氏の著書『1%の努力』の編集を担当したダイヤモンド社・種岡健氏をゲストに迎え、「本」を切り口に2時間におよぶトークを展開。若者たちが抱える疑問にひろゆき氏が答えた。実行委員会の髙須大輔広報委員長(豊川堂)が司会進行を務めた。
おすすめ本を聞かれたひろゆき氏は、『銃・病原菌・鉄』(草思社)、『生命、エネルギー、進化』(みすず書房)、『サードドア』(東洋経済新報社)、『マネー・ボール』(早川書房)、『コンテナ物語』(日経BP)をあげた。
「検索すればたいていのことで答が出る時代に、読書の意義はどこにあるのか」という質問には、「検索しても答が出ないことのほうが多いと思う。質問者の知ろうとしている関心の幅が狭すぎるのではないか」と投げかけ、「コロナのような新しい情報を追っていかなければならない場合はネットを使いこなすのが正解だが、アフガニスタン問題であればネット上で調べた知識はほぼ役に立たない。むしろコーランを読んでイスラム教徒の考え方を知るほうがずっと役に立つ」とネット検索と読書を状況に応じて使い分ける必要性を説いた。
YouTubeのような動画から得られる知識は、他人を説得する材料にはならないという。「誰かと話している時、ユーチューバーがこう言っていたからと言ったらバカだと思われる。他人に説明できるだけの知識を得たければ、動画ではなく本や新聞から知識を仕入れるべき」と述べ、「本にエンタメを求める人は減っている。その部分では動画が優っている。本は動画よりも役に立つ文化だということをもっと言っていくべき」と指摘した。
これから社会に出ていく若者へエールを求められると、「ネット上にある知識だけで戦おうとするとAIには勝てない。検索エンジンが便利だといっても、それならばAIが検索エンジンで情報を拾って答えを出せばいいだけ。ネットで調べても出てこない知識体系をいかに身に着けるかが大切。体系的な知識を持っている人とネットで検索した知識しか持っていない人では、今後、収入面でかなりの差が出てくる。学問として書かれた本当に役に立つ本は、お金を払ってしっかり読んだほうがいい」と、読書が社会人にとって有用であることを強調した。
トークイベントの模様は「本の日」実行委員会のYouTubeチャンネルでライブ配信された。また、同チャンネルでアーカイブ動画を視聴できる。

「春夏秋冬本屋です」/「ブックハンティング」/岩手・小原書店店長・小原玉義

「今年は図書委員全員でお店に伺います。始める前に選ぶ方法をアドバイスしてくださいね」。地元・大東高校の先生からブックハンティングの依頼があった。学校図書館に置く本を生徒が本屋で選ぶ。ネットで調べると、この活動を行っている高校は多くないようだ。
当日の放課後、先生と一緒に大勢の生徒さんが現れた。3年生は2年前に林真理子さんたちに特別授業を受けた子たちだ。店員から「自分が読みたい本。みんなに読ませたいもの。小説などに偏らず、いろんなジャンルから選びましょう」と話しかけ、1人3冊のハンティングが始まった。本を選べるのがうれしいのだろう。いきいきとして店の中に散らばって行った。お目当ての棚を見つけると真剣なまなざしで中身を確かめる。先生に持って行くと、「いい本を選んだね。もう少し選んでもいいぞ」と声を掛けてもらっている。最後に図書委員長があいさつしてくれて選書会が終了した。
月に1冊も読まない生徒の割合を不読率というそうだ。最新の「学校読書調査」によると、小学生7%、中学生13%と低いのに高校生だけ55%と高い。では、本を読む方の高校生は何をきっかけとしているのか。1位は「書店での広告」、2位は「友達からのおすすめ」とする調査がある。
大東高校が行っている地元書店と図書委員の融合活用は的を射た不読対策になっている。全国の高校にブックハンティングがもっと広がればいいな。

「本の日」ブックカバー大賞表彰式/大賞はセキサトコさん「本のまち」

「本の日」実行委員会(矢幡秀治実行委員長=日書連会長)は「本の日」当日の11月1日、東京・千代田区のワテラスコモンホールで「本の日」ブックカバー大賞表彰式を開催した。大賞作品にはセキサトコさん(山口県在住、イラストレーター)の「本のまち」が選ばれ、矢幡実行委員長から表彰状と副賞の図書カード5万円分が贈られた。大賞作品のブックカバーは同日から、全国の参加書店171店舗で文庫購入客に配布されている。
ブックカバー大賞は2019年に実施したが、昨年はコロナ禍のため中止となった。復活した今年は「読書が楽しくなるブックカバー」をテーマに、8月1日~9月20日まで文庫用ブックカバーのデザインを募集し、516作品の応募があった。その後、参加書店で選考を行い、その結果を踏まえ、矢幡実行委員長を審査委員長にデザイン・美術系雑誌4誌の編集長で構成された審査委員会で審査し、大賞1作品と各編集長賞4作品を選出した。
各編集長賞は、「イラストレーション」編集長賞がなりたきよしさん(神奈川県、学生)の「ふしぎなせかい」、「芸術新潮」編集長賞が小林大悟さん(東京都、自由業)の「目も皿にして読み耽る」、「アイデア」編集長賞が徳永実華さん(兵庫県、学生)の「はじまりとおわり」、「美術手帖」編集長賞が大久保澪さん(神奈川県、学生)の「プロローグ」。
実行委員会の奥野康作店頭活性化委員長(ブックエース)は、応募総数が前回の2倍以上になったことを報告した。「42都道府県から応募があり、米国フロリダ州からも応募があった。学生やイラストレーターからの応募が半数を占め、ハイレベルな作品が多かった。年齢は8歳~70歳。多岐にわたる応募があったのも特徴」と説明した。
受賞したセキさんは、ツイッターで今回の募集を知ったという。受賞作品のデザインには「本の楽しみ方は自由である」という思いを込めた。「座って読むもよし、誰かと楽しむもよし、寝転がってパラパラとめくるもよし。様々な人の日常の中で自由に本を楽しむ姿を描くことができた。『本の日』というワードを随所にちりばめたのもポイント。『11月1日=本の日』ということがますます認知されるきっかけになるよう願った」と制作にあたった際の思いを語り、「このブックカバーが、様々な人が本を手に取るきっかけになればうれしい。私自身も書店に足を運んでゲットしたい」と受賞を喜んだ。

「モルカー」グッズ好調/発売初日に完売店も/マリモクラフト

トーハングループの㈱マリモクラフトは、「モルカー」オリジナルデザインの文具・雑貨を集めた「PUIPUIモルカーBOOKSTORE」を企画し、11月10日に書店限定で発売。展開店舗で限定オリジナルグッズやノベルティが販売され、好調な売れ行きを見せている。
丸善(丸の内、池袋、梅田)、スーパーブックス13店舗でほぼ完売。未来屋書店でもチェーン全体で発売初日に半分以上売れているという。
トーハンとマリモクラフトの資本業務提携後初めての書店限定企画。セット内容は、YOJOテープ、ブックカバー、3連アクリルキーホルダー、マスコット付きボールペンなど7種。条件は買切で、専用紙製什器とポスターが付く。
「PUIPUIモルカー」は見里朝希監督によるパペットアニメのTVシリーズ。独特な世界観が幅広い世代で話題となり、公式Twitterのフォロワー数は40万人超の大ヒット。関連書籍やグッズも多数発売されている。

金賞は『対岸の家事』(講談社文庫)/勝木書店「本の日」に合わせ全店で文庫フェア

北陸を中心に店舗展開する勝木書店は、11月1日の「本の日」を前に、グループ全スタッフが本気でおすすめしたい文庫10作品を販売する「KaBoSコレクション2022」を開催し、9月1日~10月31日に一番売れた本を、11月1日に金賞として発表。今回は朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)が受賞した。金賞作品はグループ全店で重点販売している。
朱野氏は同日ツイッターを更新し、「書店さん独自のコンクールの金賞に選んでいただいたことがうれしい」「力の入った売り場を作っていただいてる…。嬉しいです」と受賞の喜びをつづった。

暮らしとつながる街の書店を紹介/月刊情報誌「地域人」が特集

大正大学地域構想研究所が編集、大正大学出版会が発行する地域創生のための月刊情報誌「地域人」の第75号(11月10日発売)は、特集「本屋は続くよ」と題して広島、神奈川、栃木、香川、福岡、新潟6県の書店37店を紹介している。また、東京・荻窪の書店「Title」の店主・辻山良雄氏の巻頭インタビューを掲載している。一昨年の第50号「本屋が楽しいまちが楽しい!」に続く、本屋特集第2弾。
同誌は、人が直接つながることが難しいコロナ禍で、書店をはじめ本のある場所の必要性が改めて見直されているとして、暮らしの中で地域とつながりを持つ各書店を取材し、個性的な取り組みを紹介している。
書店組合理事長が経営する書店では、神奈川県書店商業組合・松信裕理事長の有隣堂伊勢佐木町本店、香川県書店商業組合・宮脇範次理事長の宮脇書店本店、新潟県書店商業組合・西村行人理事長の萬松堂の3書店が登場。
明治42年創業、横浜市民に馴染み深い存在の有隣堂は、本プラスアルファの幅広い商材を扱う創業以来の社風に加え、YouTube公式チャンネル「有隣堂しか知らない世界」の動画がバズり、チャンネル登録が10月で10万人を突破したことに注目。「個性」をテーマに新しい顧客を開拓する姿勢を取り上げている。
元高松藩士・宮脇藤太が明治10年に高松の城下町丸亀町に開業した宮脇書店は、その後、新刊書店チェーンとして全国展開。時代の変化に対応しながら、「本なら宮脇」という創業以来の矜持を忘れず、豊富な品揃えで客の期待に応える試みが紹介されている。
江戸時代末期創業の萬松堂は、伝統を守るとともに、新しい取り組みも行っている。本好きの子どもを育てるために設立した出版社「島屋六平」、店頭活性化のために新設したバーゲンブック売場など、老舗書店が仕掛ける新しい挑戦にスポットを当てる。
今回紹介された書店は次の通り(一部抜粋)。
▽広島県=ウィー東城店、本屋UNLEARN、本と自由、古本屋弐拾db+古書分室ミリバール
▽神奈川県=本屋・生活綴方/石堂書店、有隣堂伊勢佐木町本店、ポルベニールブックストア、冒険研究所書店
▽栃木県=うさぎや宇都宮駅東口店、BOOKFOREST森百貨店、内町工場、ハナメガネ商会
▽香川県=なタ書、本屋ルヌガンガ、讃州堂書店、へちま文庫、宮脇書店本店
▽福岡県=ナツメ書店、ブックスキューブリック、本のあるところajiro、徘徊堂、BOOKSHOP本と羊
▽新潟県=萬松堂、本の音、今時書店、【佐渡の本紀行】丸屋書店、kobiri、鳥越文庫
「地域人」は書籍扱いの月刊誌。A4変形判、112ページ、定価1100円(税込)。

街の書店地域とともに歩んだ50年/明石市・巌松堂書店が社史刊行

巌松堂書店(兵庫県明石市)は11月13日に迎えた創業50周年を記念して社史『有限会社巌松堂50年の歩み』を刊行した。
巌松堂書店は、兵庫県書店商業組合元理事長・日書連元理事の山根金造氏が1972年に兵庫県明石市で創業。以来、地域に密着した街の書店として本の魅力を伝え続けている。山根氏は書店経営を続けながら、兵庫組合理事長など業界内外の要職を多数歴任し、1999年から12年間、明石市議会議員にも就いている。地域おこし事業「明石原人まつり」の実行委員長として尽力するなど、地域文化にも貢献してきた。2018年秋の叙勲では旭日双光章を受章している。
社史は巌松堂の歴史を編年体で紐解くとともに、山根氏の個人史・家族史、明石の地域史にもなっており、読み応えがある。現在、同書店代表取締役会長の山根氏は「街の書店が地域とともに歩んだ歴史を紹介し、業界の発展のお役に立てれば」と語る。
A4判、34ページ。800部制作し、取引先や地域の関係者らに配布している。問い合わせは巌松堂書店まで。℡078(936)4069

熊本組合「くまモン」ブックカバー、組合ホームページで注文受付中

熊本県書店商業組合は、熊本県のPRキャラクター「くまモン」をデザインした文庫・新書用のオリジナルブックカバーを作り、熊本組合加盟書店をはじめ全国書店の店頭で配布している。注文は同組合ホームページ(http://kumamoto-books.jp/)で受け付けている。

地域の読書普及に貢献/団体・個人を表彰/野間読書推進賞

読書推進運動協議会(読進協=野間省伸会長)は11月5日、東京・千代田区の出版クラブビルで第51回野間読書推進賞の贈呈式を開催。団体の部として「木刈親子読書会」(千葉県印西市)、「石垣市文庫連絡協議会」(沖縄県石垣市)、個人の部として吉井久子さん(佐賀県神埼市)、鳥羽啓子さん(鹿児島県鹿児島市)、奨励賞として「草津点字グループあゆみ会」(滋賀県草津市)をそれぞれ表彰した。
贈呈式で野間会長は「昨年は新型コロナウイルスの流行で読書推進運動も大きな制約を受けた。その後知見を積み、工夫を凝らすことによって、各地で活動が力強く再開されている。関係者の努力にあらためて感謝する」とあいさつした。
選考委員を代表して日本図書館協会図書紹介事業委員会委員長の秋本敏氏が選考経過を報告したのち、野間会長から各受賞者に賞状と賞牌が贈られた。
受賞者あいさつで、児童文化講演会など様々な事業を継続して行い近隣地域へも普及活動を広げている「石垣市文庫連絡協議会」代表の新城由利子さんは、「素晴らしい賞に恥じないよう会員心ひとつに、出会う子どもたちのつぶらな瞳の輝きや笑顔いっぱいの未来につなげるよう頑張る」と述べ、感謝の気持ちだとして沖縄の教訓歌「てぃんさぐぬ花」を披露した。

上間陽子氏『海をあげる』に/21年ノンフィクション本大賞

ヤフーと本屋大賞実行委員会が主催する第4回「Yahoo!ニュース/本屋大賞2021年ノンフィクション本大賞」が11月10日に発表され、上間陽子氏『海をあげる』(筑摩書房)が選ばれた。
同賞は20年7月~21年6月に日本で発行された国内作家によるノンフィクション本が対象。一次投票で書店員86名の投票があり、上位6作品をノミネート本として発表。二次投票は書店員43名がノミネート全作品を読んだ上で、ベスト3を推薦理由とともに投票し大賞作品を決定した。
受賞作は、沖縄で未成年の少女たちの支援・調査に携わる上間氏の初エッセイ集。上間氏は「歴代の受賞者のお名前や作品を見て、『本当にとんでもない賞をいただくことになったなあ』と思った。選んでいただいたのは、沖縄の今に対する書店員の皆さんからの応援なんだと思う。この賞は私が受けたのではなく、沖縄に対する賞であり、私が調査した子たち、本当にしんどい思いで生きているけれど、その子たちに向けたはなむけのような賞だな、と思っている」と述べた。

江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞/贈呈式を初めて一般公開

日本推理作家協会が主催する第67回江戸川乱歩賞(後援=講談社、フジテレビジョン、協力=豊島区)、第74回日本推理作家協会賞の贈呈式が11月1日に東京・池袋の豊島区立芸術文化劇場で開催された。
同協会は、江戸川乱歩とゆかりの深い豊島区とパートナーシップを結び、これまで関係者のみで開催していた乱歩賞の贈呈式を初めて一般公開で実施。日本推理作家協会賞の贈呈式がコロナ禍で延期されていたため合同で行った。贈呈式の模様は動画でも配信した。
江戸川乱歩賞を受賞したのは、伏尾美紀氏『北緯43度のコールドケース』、桃野雑派氏『老虎残夢』(ともに講談社)。日本推理作家協会賞は、長編および連作短編集部門が坂上泉氏『インビジブル』(文藝春秋)、櫻田智也氏『蝉かえる』(東京創元社)、短編部門が結城真一郎氏『#拡散希望』(新潮社「小説新潮」2月号)、評論・研究部門が真田啓介氏『真田啓介ミステリ論集古典探偵小説の愉しみⅠフェアプレイの文学』『真田啓介ミステリ論集古典探偵小説の愉しみⅡ悪人たちの肖像』(荒蝦夷)。
開会あいさつを行った同協会の京極夏彦代表理事は「公開に踏み切った理由は、1人でも多くの方にこの賞を知ってほしい、1人でも多くの方に祝ってほしい、そして1人でも多くの方に受賞作を手に取ってお読みいただきたいという思いからだ。小説は読者の元に届いて初めて完成する。ぜひご一読をお願いする」と述べた。
乱歩賞を受賞した伏尾氏は「長年ミステリー作家になりたいと思っていたが、なかなか最初の作品を書き上げられなかった。できればもう10年早くデビューしたかったが、この作品は今この時でなければ書けなかった」、桃野氏は「作家になると決めたのは5年ほど前。いろいろあって落ち込んでいたのだが、その時甥っ子が生まれると知り、甥に恥ずかしくない人間になりたいと思って乱歩賞を目指した」と語った。
贈呈式に続き、京極氏と綾辻行人氏、辻村深月氏、貫井徳郎氏という乱歩賞選考委員経験者によるトークイベントが行われた。

小学館、創立100周年ロゴを作成

小学館は、2022年8月8日に迎える創立100周年を記念し、東京藝術大学(藝大)の協力を得て100周年ロゴマークを作成した。同社では100周年事業を22年1月から約1年半かけて展開する予定で、様々な出版物や企業活動の中で使用する。
ロゴマークは、藝大の学生による学内コンペティションで、「世界をもう少しだけ面白くしたい」という想いをテーマに、今年5月から7月まで作品を募集した。88点の応募があり、最優秀作品賞として藝大大学院美術研究科1年の武田栞奈さんの作品を選出した。審査は、小学館の相賀信宏専務取締役のほか、藝大出身でグラフィックデザイナー・アートディレクターの色部義昭氏など4氏により行った。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

柴田重信著『食べる時間でこんなに変わる時間栄養学入門』(講談社ブルーバックス1000円)は、食べる、運動する、休むといった身体活動が、時間によって差があるという時間栄養学をわかりやすく解説する。
人は朝型、夜型と中間型に分けられるが、これは遺伝子が原因という。しかし朝食にタンパク質をしっかり摂取することなどで十分改善できる。
朝の納豆は血糖値上昇を抑え、タンパク質も豊富だが、骨を強くし、血栓を予防する観点からは夕食に摂るのが効果的。しかし、朝のタンパク質摂取は睡眠を整える。また朝の運動は筋肉を増やすのに適し、夕方の運動は筋肉の減少を予防するのに適している。血糖値も夕方の運動が効果が大きいという。何だか結構大変そうである。
辰巳芳子著『いのちと味覚』(NHK出版新書780円)は、味覚こそが自らの命を守ると、97歳を迎える著者が優しく諭す。日本の風土が生み出した世界に誇るべき食物は米、だし、発酵調味料の三種である。レシピも豊富だが、生きやすい食事のポイントを。①畏れを持つ②観応力を磨く③直観力を養う④いざの時を迎え撃つ⑤優しさを育てる。味覚とは、命に直結する「愛すべき感覚」なのであると結ぶ。

野間文芸賞にリービ英雄氏『天路』/野間4賞を発表/野間文化財団

野間文化財団が主催する野間文芸賞など野間4賞の発表が11月4日、東京都内で行われた。
第74回野間文芸賞はリービ英雄氏『天路』(講談社)、第43回野間文芸新人賞は井戸川射子氏『ここはとても速い川』(講談社)、第59回野間児童文芸賞は、たかどのほうこ氏『わたし、パリにいったの』(のら書店)に決定。第3回野間出版文化賞には、漫画「進撃の巨人」作者の諫山創氏、作家の伊集院静氏、2人組の音楽ユニット「YOASOBI」、同賞特別賞に、角川文化振興財団が運営する角川武蔵野ミュージアム(埼玉県所沢市)をそれぞれ選出した。
野間文芸賞受賞の『天路』は、リービ氏が約10年前から続けてきたチベット高原への旅の体験に基づいて書かれた4つの短編で構成する。リービ氏は「野間文芸賞はどっしりした長編じゃないともらえないと思っていて、短編小説に毛が生えたような4つの作品を本にしたものに賞をいただけるとは思わず、驚きとともにうれしさを感じている。2つ目の『西の蔵の声』は、僕がすごく書きたかった作品。ある有名な寺院を回り、生と死の文化に触れながら、私小説的に母が亡くなったことを思い出して書いた」と話した。
野間文芸新人賞を受賞した『ここはとても速い川』は、第1詩集で中原中也賞を受賞した井戸川氏の初めての小説集。表題作と、小説第1作「膨張」を収録する。選考経過を報告した選考委員の川上弘美氏は、受賞作について「選考委員全員が丸を付けたが、それぞれほめる点が違っていたのがユニークだった。文章と物語が複合的に絡み合い、この作者にしかできない表現」と述べた。
井戸川氏は「1作目を書いているときは、これは小説と言えるのかな、表題作を書き終わった後は、道徳的過ぎるかなと思った。いつも自信がないのだが、でも私はこの作品はいいと思うんだよなと、そこだけは自信があった」と受賞の喜びを語った。”