全国書店新聞
             

平成21年6月21日号

県図書館納入組合設立めざす/森井清城理事長を再選/石川総会

石川県書店商業組合は5月26日、金沢市の金沢勤労者プラザで第21期通常総会を開き、組合員54名(委任状含む)が出席した。
総会は菊澤平光副理事長の司会、開会で始まり、森井清城理事長があいさつ。続いて森井理事長を議長に選出して議案審議を行い、第21期事業報告、決算報告、第22期事業計画案、予算案など、すべての議案を原案通り承認可決した。
このうち石川県図書納入組合を設立する件について、「一昨年来、理事会で県立図書館、県立大学の図書購入入札では地元書店優先、適正価格購入を県当局や議員に働きかけている。金沢市では一歩先に金沢市図書納入協力会を設立し、同協力会が金沢市との契約窓口となり取引を始めている。これを契機に、県当局に対しても石川県図書納入組合の設立により金沢市同様に契約者として認可されるよう運動を強化する」と報告があった。
また、定款変更の件については、第27条第1項で理事数が「15人以上17人以内」となっているのを、組合員数の減少により、「12人以上15人以内」に変更することを決定した。
任期満了に伴う役員改選では、指名推薦制により理事15名、監事2名を選任。このあと理事会を開き、森井理事長を再選した。
〔石川組合役員〕
▽理事長=森井清城(紀陽館森井書店)
▽副理事長=忠谷久志(忠谷書店)宮本秀夫(ブック宮丸)菊澤平光(きくざわ書店)

高校生はこれを読め/今秋読書週間に実施計画/北海道総会

北海道書店商業組合は6月9日午後4時半から札幌市中央区のホテル札幌ガーデンパレスで第33回通常総会を開き、組合員83名(委任状含む)が出席。久住邦晴理事長(久住書房)は「厳しい時代に生き残るためには、顧客に付加価値を提供していくことが必要」として、北海道組合が読書推進運動として実施している「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め」に引き続き取り組むとともに、今後は高校生に対象を拡げてフェア展開を図る考えを示した。
総会は村上正人副理事長(マルイゲタ)の司会で始まり、久住邦晴理事長があいさつ。「生き残りを賭けた厳しい時代が続いている。こうした時代に組合は組合員のために何ができるか、真剣に考えねばならない。東大の教授がある新聞でこう書いていた。『書店のビジネスは驚くほど単純だ。本の価格は再販制度で決まっている。取次が中間流通のすべてを担っている。書店は場所貸し業に過ぎない。売れ残ったものは返品できるからリスクもない。右から左へ大量に商品を流していく仕組み。付加価値はほとんど提供されていない。書籍は文化的要素が強く個性もあり、多くの顧客を店舗に引きつける力があるはず。単なる場所貸し業ではなく、顧客にどのような付加価値を提供できるのか徹底的に検証することが必要。それが厳しい時代に生き残る唯一の策だ』と。耳の痛い発言だが、書店は一人でも多くのお客様をつかむため、付加価値を積み上げていくことが必要。北海道組合が進めている企画『中学生はこれを読め』は、今年の夏に6回目のフェアを実施する。朝の読書に熱心に取り組んでいる学校に対して中学生の棚を作ってアピールすることなどは大きな付加価値になる。高校生向けフェアはいつやるんだという声も多く寄せられており、検討に入ったところ。ネット書店、新古書店、コンビニに負けない付加価値を提供し、競合店との差別化を図るためにも積極的に参加していただきたい」と話した。
続いて中尾邦幸理事(中尾書店)を議長に議案審議を行い、平成20年度事業報告、収支決算報告、平成21年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
このうち読書推進運動については、第5回「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め」フェアを昨年7月19日から8月24日まで実施し、48書店が参加したと報告があった。今年は7月17日から8月23日まで実施する。また、北海道書店商業組合編集のブックレット『中学生はこれを読め』(北海道新聞社発行)の改訂版の発売を予定している。
さらに、同フェアを実施していく中で「高校生向けのフェアも実施してほしい」との声が多数寄せられていることから、「高校生のための困ったときはこれを読め」(仮題)の実施を計画していることが久住理事長より報告された。全道の高校教師に「自分が読んで感動した本、救われた本、心を揺り動かされた本等の中から高校生に読んで欲しい本を教えてください」とのアンケートを送付しており、これに基づき書目リストを作成、秋の読書週間に合わせてフェアを実施する予定。
総会終了後、出版社、取次などを交えて懇親会を行った。
なお、総会に先立ち午後3時から同ホテルでPOSレジのビジュアルジャパンによる「書店向け戦略的レジスター研修会」を開催した。今回の研修会は組合員のみならず道内組合未加入書店145店にも案内し、1書店が参加。同書店は組合加入の意向を示している。久住理事長は「研修会を通じて組合未加入書店に組合のことを知ってもらい、組合加入につなげたい」としており、今後も組合未加入書店に参加を呼びかけていくという。

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

『コピー用紙の裏は使うな!』(朝日新書)は、経費削減の見直す点を間違えていない?という本ですが、私、そんな大それたことは書きません。いつもの海文堂のオボケ話です。
わが大黒柱にして弁財天、黄色の紙が必要で、裏紙をお使いあそばした。この時、表側を見ておれば後々の問題は起こり得なかったのですが、頭の中は「黄色」しかありません。悲劇とはそういうものであります。何に使ったのか、ビニールパックした本に注意書き「内容確認の方は係まで……」と貼るためです。本を出せば透明ですから、当然反対側が見えます。幅1センチ・長さ10センチほどの紙に、たまたま書かれていた文言は、語るもオゾマシイ……、私は書くべきか、書いてしまえば、鼻クソほどの信頼がまた吹っ飛んでしまう。しかし、真実を伝えねば全国の本屋の皆さんに顔向けできない。あえて、嫌われ者の道を選びます。天命です。
「セッ○スレスでお悩みのあなたにお答えいたします……」
どこからこの用紙を探してきたのでしょう、そもそもどういう案内書・注文書だったのでしょう、なぜ、不幸にも彼女の手元にたどり着いたのでしょう。しかも、腰は重いのに口の軽い私に見つかるなんて、二重三重の不幸が折り重なるように、彼女を襲ったのです。まるで海文堂版「花と蛇」でございます。
と、暢気なことを申しておりますが、どん底不況に加え、当地はインフルエンザもあり、売り上げの話をできる状態ではありません。客足の途絶えた商店街はゴーストタウンとなります。おまけに呑み会は中止になるし。
このような時でも、否、だからこそ動かねばなりません。常設古書店が一挙に3店登場しました。「古本ソムリエ」の称号を持つ京都「善行堂」と神戸女子の古本屋「トンカ書店」です。前者は純文学中心、後者は文学・児童・実用・雑貨とザックバランな品揃えです。どさくさまぎれに「海文堂古書部」という大仰なのも混じって、これも徐々に出品が増える模様です。
で、棚の移動です。私の担当部署を明け渡すのですから、あちこち在庫削減して元々あった本の安住地を造らねばなりません。放浪生活は悲しいものです。
ブログ「海文堂日記」、評判はどうなのか知りませぬが、書き手、やる気満々、自分の順番を待ちかねています。先日、私が『消えた横浜娼婦たち』(データハウス)を紹介しましたら、著者から丁寧なお礼メールが届きました。書名と帯の文句を引用しただけで、こちらが恐縮しています。東京・横浜の本屋さんだけでなく、全国の皆さんもぜひ、積極的に販売してください。著者8年に及ぶ調査・研究の成果です。出版社はH本が主ですが、マジメな本も出しています。HP、いきなり『おっぱいの愛し方』で驚きますが、元気があります。書名で検索すれば著者のブログが出ます。

子どもの本BFに約千四百名が来場/熊本

熊本県書店商業組合は5月29日から31日の3日間、恒例の「子どもの本ブックフェア2009」(協力・トーハン、熊本県教科書供給所)を熊本市の興南会館で開催した。
初日は主催者を代表して宮崎副理事長が参加者へ歓迎の意を表するとともに、関係者に対し日頃の活動への協力に謝意を述べた。最後にこの秋、冊子「本はよかバイ!」第3弾を刊行すると発表した。
次に来賓を代表して福音館書店の塚田和敏社長が、節目となる10回目の開催へ祝意を述べ、近年の読書活動の実態を交えてあいさつを行なった。宮崎、塚田両氏と小野晴輝トーハン九州営業部長に市内の園児が加わりテープカットを行ない、会の幕を開いた。3日間の入場者は計1473人、来館図書館数は計84(小中高・公共図書館等)にのぼった。行なわれた主なイベントは次の通り。
①手づくり絵本教室(講師=大日本絵画・嵐田氏)
②迷路絵本遊び&サイン会(講師=香川元太郎氏)
③2009世界天文年星空ブックフェア(講師=熊本県民天文台台長・艶島氏)
④東京学芸大学附属小金井小学校司書・中山美由紀先生講演会「ページをめくると〝時〟がながれる~学校図書館からみえること~」
⑤カルタ大会(「くまもと・デ・カルタ」を使用)
(宮崎容一広報委員)

第25回太宰治賞に柄澤昌幸氏/筑摩書房・三鷹市

筑摩書房と三鷹市が主催する第25回太宰治賞が柄澤昌幸氏の「だむかん」に決まり、6月15日に千代田区丸の内の東京會舘で贈呈式が行なわれた。
三鷹市の清原慶子市長は「柄澤さんはしばらく筆を折られていたようだが、今一度文学をと太宰賞に応募してくださった。その志に心から敬意を表する。昨年三鷹市は没後60年の展覧会を催すことができた。生誕百年の今年、『太宰が生きたまち・三鷹』の取り組みをさらに強めていきたい」とあいさつ。
筑摩書房・菊池明郎社長は「昨年は『思考の整理学』が地方書店の手作りPOPですごく売れたという話しをした。大学生協のデータを調べて、「東大・京大で一番売れた本」という言葉を付け加えたら、その後も売れ続けている。適切に働きかければ読者は反応してくれる。文学はなかなか大変な時代だが、村上春樹さんの『1Q84』が売れているのを見ると勇気づけられる。私どもも、この文学賞を三鷹市の協力を得ながら今後も頑張り抜き、良い作家を世に送り出したい」と述べた。
加藤典洋氏の選評の後、菊池社長、清原市長から表彰状と正賞・副賞を贈呈。柄澤氏は「お世話になった方々への恩返しとして今後も心を込めて書き続けていきたい」とあいさつした。

新会長に牛房邦夫氏/携帯事業を積極展開/東京青年部

東京都書店商業組合青年部は6月10日午後5時から飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで第19回通常総会を開き、会員85名(委任状含む)が出席。新会長に牛房邦夫氏(赤城書店)を選出した。
総会は秋葉良成氏(江戸川書房)の司会で進行し、山辺真次会長(新橋書店)があいさつ。正副議長に小宮仁(こみや書店)、渋谷眞(四季書房)両氏を選任して審議を行ない、平成20年度事業報告・収支決算、平成21年度事業計画・収支予算などすべての議案を原案通り承認可決した。
活動報告では、青年部新ホームページを携帯電話サイト「Booker’s」に合わせて開設、ホームページ内に「東京都書店案内」を設置して書店の各種情報を表示する機能を搭載したことなどが報告された。また事業計画では、青年部設立20周年行事の開催や、ブックフェスティバル等各種増売活動の推進、ホームページの「書店案内」への新機能追加、携帯サイト事業における店頭連動企画の積極展開などに取り組むことを決めた。このほか青年部規約改正の件で、役員定数について理事の数を現行の「19名以上40名以内」から「12名以上17名以内」に変更することを承認した。
役員改選では会長に牛房邦夫氏、副会長に小川頼之氏(小川書店)、吉田敬弥氏(三弥井書店)を選任。牛房会長は「理事数が少なくなり、今までと同じような活動はできなくなってくる。やるべき活動を選択し集中して行なっていきたい。青年部のこれまでの活動の積み重ねを踏まえながら、少し方向性を変えていく形で2年間活動していきたい」と所信を述べた。
相談役の東京組合・岡嶋成夫副理事長は「牛房新会長は青年部創立以来の展開をよくご存知なので、いい舵取りをしていただけると期待している。現在は、経済も再販制度も非常に不安定な状況にある。後になって悔やむより、いま現在に一生懸命努力し、頑張っていただきたい。新会長の力量に不安はない。理事に選ばれた方々や会員の協力が必要で、親会の方も努力する」とあいさつした。

10月に河出ブックス6点で刊行開始/創業123周年記念

河出書房新社は創業123周年記念企画として、10月に「河出ブックス」の刊行をスタートする。
第1回配本は石原千秋『読者はどこにいるのか』、島田裕巳『教養としての日本宗教事件史』、橋本健二『「格差」の戦後史』、紅野謙介『検閲と文学』、坂井克之『脳科学の真実』、西澤泰彦『日本の植民地建築』の6点。以後、12月から毎月2点、10年4月から隔月2点以上刊行。B6判・ソフトカバー、平均224頁、定価1260~1365円。初版各8千部。
また、大型本企画として英国の大手出版社DK社が発行した『ART』の翻訳版として『世界の美術』を10月20日に刊行。先史時代から現代まで世界各地の2500の絵画や彫刻を解説する。B4変形判・上製カバー装、オールカラー612頁、定価1万3650円。8千部。
同じくDK社が世界17カ国で25万部発行したヴィジュアル百科『WOW!』の日本語版として『なんでも!いっぱい!こども大図鑑』は11月10日刊。B4変形判・上製カバー装、オールカラー304頁、定価4980円。対象年齢は小学校低学年以上。2万部を予定。
このほか、07年より刊行中の池澤夏樹個人編集による「世界文学全集」の追加として第Ⅲ集全6巻を刊行する。第1回配本は10年5月。以後、隔月刊行。ルポルタージュ性を持つ文学、日本語で書かれた文学、短編などを加える。
6月12日、出版クラブで行われた企画説明会で、若森繁男社長は「『河出ブックス』のようなシリーズを出すことは長年の念願だった。雑誌が低迷し、新書がブームになった。新書でも物足りない読者は選書を読む。『河出ブックス』は柔らかすぎず、硬すぎず、隙間を狙った企画。このほか大型本など外商向け企画を用意し、書店を応援していく」と説明した。

都ホテルで親睦食事会/女性限定に96名/京都組合

京都府書店商業組合は5月31日正午からウェスティン都ホテル京都で、女性限定の食事会を開催した。日頃店頭で活躍される女性に感謝の意を表すとともに、懇親を深めてもらうため企画したもの。今回は96名参加と、昨年を20人ほど上回った。
開会の辞、中村理事長から参加者に感謝の言葉のあと、参加者を代表してきぬがさ書房山路薫さんが「状況は待っていても何も変わりません。情報を共有し、書店に携わる方々の生活を守るため組合として活動が行えれば、きっとこの時代を乗り越えていけると思います。食事会が書店の横のつながりの場として来年も開催され、発展していくことを願っています」と述べられた。
続いて、宮脇書店京都店野村久美江さんが、「美しい庭園を背に皆様とお食事をご一緒できることを有難く思っています。これからも長く続きますように」と乾杯の発声をされた。
会場となった「葵殿」は会場両側が総ガラス張り。窓からは東山を眼下に京都市内を一望する景色と、京都市文化財登録の回遊式日本庭園「葵殿庭園」が眺められる。伝統と格式の高さで知られる同ホテルで最も人気がある宴会場で、これまでも皇室関係者主催の食事会や、各国元首、国賓が利用されることも多い。
料理はフランス料理フルコース。料理長とソムリエの説明を聞きながら、前菜からスープ、肉・魚料理、デザートまで、季節の食材を生かした豪華な料理が振舞われた。京都東山の緑に囲まれ、静かな時が流れるなか、参加者は日々の繁忙から離れ、老舗ホテルでの食事と歓談を楽しんだ。
中締めとして神戸厚生委員長が挨拶した後は、ホテル内の名園、佳水園庭園を散策した。
(澤田直哉広報委員)

「声」/「本屋のうちそと」に反論/㈱宮脇書店代表取締役社長・宮脇範次

さて本日は、「全国書店新聞」5月11日号の第4面「本屋のうちそと」欄の記事内容につき、一言抗議申し上げたく書面を差し上げる次第です。当欄の「沖縄の方~無責任出店を問うべきだろう」については、「失礼だが」とは書かれておりますが、東京、大都市中心の優越感が感じられ、極めて暴論と感じ、誠に遺憾に存じ上げます。
その中での文章ですが、ジュンク堂様についてはいざ知らず、当社「宮脇書店」の名を上げて、「10年後も沖縄に存在するだろうか」「無責任出店を問うべきだろう」との論旨には、強く抗議いたします。
当社と沖縄の関係は22年前の浦添市へのFC店出店まで遡ります。当時、流通経費の負担や大都市中心の重点配本の関係で、沖縄までは十分な書籍の供給がなされていなかった状況を少しでも改善するために、当社といたしましても努力を続けて参りました。「浦添店」出店の後も、県内各地への出店を継続し、現在では沖縄県内に15店舗を数えるに至っております。沖縄の県民の皆様にも、宮脇書店が出店してから、本が手に入りやすくなった、との感謝の念も持たれ、ほぼ地元書店として認知されるに及んでいます。(極端な話ですが、沖縄から四国に観光に来られた方が、「高松にも宮脇書店があるんですね」と言われた、という実話もあるくらいです)
また、今回出店いたしました那覇市の「とまりん」につきましては、平成7年の創業時より平成13年までFC店、及び直営店として営業していた場所であります。その当時、沖縄での最大規模の書店として、地元の方の記憶にも残っております。8年前に第3セクターの経営改善の方策として那覇防衛施設局を導入されたために閉店を余儀なくされましたが、今回防衛施設局の移転に伴い、その後の空床部分(かつて出店していたスペースが主ですが)に復帰したことは、なんらの不思議もございません。
全国各地での、過剰出店、オーバーフロアヘの懸念の意見を持たれることは、もとより自由ではございますが、過去の出店の経緯等について何らの知識も無いままに、具体名を挙げて、誹誘に近い論旨を展開されることにつきましては、強く抗議いたします。
【編集部から】
5月11日付4面掲載のコラム「本屋のうちそと」の内容について宮脇書店から抗議と訂正の申し入れがあり、話し合いの結果、同店の抗議内容をそのまま掲載いたしました。

大日本印刷の攻勢に思う/匿名希望

大日本印刷と主婦の友社が業務・資本提携に合意した。大日本印刷が主婦の友社の株式39%を保有し、取締役と監査役各1人を派遣する。大日本印刷は、先にTRCや、丸善、ジュンク堂も子会社化していた。
一方、雄鶏社、一橋出版が相次ぎ破綻した。各社なりの事情があったろうが、結局のところ資金調達に行き詰ったと思われる。各社が資金的に行き詰るのは、次々と開店する大型出店の影響が多大だと思われる。即ち、大型書店の新規出店に際し、初期在庫の多くで常備寄託など各種支払猶予制度が利用される。新刊書も重点配本され、複数個所展示販売が当り前。支払い条件も優遇されている。
これら大型書店にある大量の市中在庫、社外在庫の負担が出版社にとって過大となっている。それも出版社が均等に負担するのではなく、最終負担は中小出版社であり、中小書店だ。中小書店にはほぼ100%の入金率を求めながら、大書店には数々の優遇策で対応している取次が、支払い面でも中小出版社と大手で差をつけて対応している。
取次は差別化で一部出版社や大手書店の資金繰りを助ける金融調整弁の役割を果たしている。差別的取引が常態化していることは昨年公取委が発表した『書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状』でも明らかだ。
この結果、資金回収に手詰まりした中小出版社は、自転車操業的に次々新刊を刊行して資金調達する。また、大手書店からの大量返品を見越し、客注があるにも拘らず重版を手控えし、販売機会を逸する。客注品が遅れ、読者の信用を失う悪循環に陥る。中小書店は客注品もまともに入ってこないのに、取次から入金率で厳しく責め立てられる。
取次から優遇されている大手書店は、大手書店間の競争上、市場規模を無視した店舗展開に走り、資金手当てに困っている。
ここらで取次主導の大型書店優遇の業界慣行を見直し、データベース一元管理、在庫情報共有化など物流の大幅な改善を果たし、不公正取引の無い出版業界を実現しないと、ますます破綻企業が増え、出版業界は衰退産業となるだろう。

売上前年比92.8%に/NM商品の不振が響く/トーハン

トーハンの平成20年度(平成20年4月1日~21年3月31日)決算概況が発表になった。今期の売上高は5748億2600万円、前年比92・8%と低調な水準にとどまった。
損益面では、全社的経費削減に取り組んだ結果、販売管理費が94・4%と減少、営業利益は80億1900万円(103・2%)、経常利益は41億9百万円(134・5%)を確保したが、投資有価証券評価損9億9千万円、退職加算金5億8千万円など特別損失18億円強を計上した結果、当期純利益は10億2100万円(86・9%)の減収減益決算となった。
売上高の内訳は書籍2307億2900万円(97・8%)、雑誌3093憶3300万円(94・7%)、NM商品347億6300万円(61・3%)。返品率は書籍41・2%、雑誌37・4%、NM商品17・8%、合計38・1%。
書籍・雑誌部門の売上げは前年比96・0%だったが、マルチメディア商品の売上が61%と大きく減少したことが影響した。
1年間の転廃業は519店、2万9873坪。期末社員数1879名。子会社12社との連結決算では売上高5835億3700万円(93・1%)、経常利益47億2800万円(136・7%)、当期純利益17億3900万円(109・5%)の減収増益。
10日に行われた記者会見で風間副社長は21年度の目標について、①エリア戦略の強化、②責任販売制500億円、③異業種チャンネルの拡大、④新商材開発の4つの施策で売上高0・9%増、5800億円を目指すとした。
トーハン損益計算書
(百万円)
売上高574、826
売上原価508、624
売上総利益66、201
販売費及び一般管理費
58、181
営業利益8、019
営業外収益4、174
受取利息1、017
その他営業外収益
3、156
営業外費用8、085
支払利息58
売上割引7、819
その他営業外費用207
経常利益4、109
特別利益80
特別損失1、846
税引前当期純利益
2、342
法人税等1、320
当期純利益1、021

人事

◇小学館PS
代表取締役社長(営業本部長)秋山豊
代表取締役相賀昌宏
常務取締役(CSC本部・総務本部長)今津貞彦
取締役(営業副本部長)
福井雄治
取締役○大山邦興
同○佐藤隆哉
監査役大木武志
*加藤醇司代表取締役社長は顧問に就任。
◇マガジンハウス
〔組織改革〕
営業局雑誌営業部と書籍営業部を統合し出版営業部とする。
〔職務担当変更〕
常務取締役秦 義一郎ウェブ戦略室長兼務委嘱
常務取締役吉田高
営業局長兼務を依嘱
〔役職変更〕営業関係
執行役員第1編集局長(同営業局長兼製作部長兼ウェブ戦略室長)久我英二
営業局次長兼宣伝事業部長兼製作部長(営業局次長兼書籍営業部長兼宣伝事業部長)芝山喜久男
〔異動〕
出版営業部長(雑誌営業部長)大沢好之
書店営業部長代理(雑誌営業部長代理)高木直人
出版営業部長代理(書店営業部長代理)浪花寛通
出版営業部課長(書籍営業部課長)班石悦夫
書店営業部課長(書籍営業部課長)長尾達憲

不動産投信で純損失37億円/新社長に浜田博信氏内定/図書普及

日本図書普及は運用資産の一部で期末時価が購入価額を大きく下回り、減損会計の適用を受けた結果、特別損失として42億円の有価証券評価損を計上。第49期決算は37億円の当期純損失となった。
評価損を生じた有価証券は「不動産投資信託」(Jリート)で、オフィス、マンション、商業施設などの賃貸用不動産物件から賃貸収入を分配する仕組み。低金利が続く中で、図書普及は01年からJリートの投資を始めたが、昨年9月のリーマンショックから市況が急激に悪化し、減損に至った。減損による特別損失は剰余金を取り崩し、当期で処理する。
今期の図書カード発行高は653億1100万円(前年比96・9%)、回収高は629億3千万円(99・0%)。一般カードが97・6%の伸びに対し、オリジナルカードは86・4%にとどまった。期末の加盟店は前年比492店少ない8847店。読取機設置店は1万1199店。
役員人事では阿部洋一郎(日販)、倉園夏樹(図書普及)両取締役が退任し、新しく古屋文明氏(日販)が取締役になる。6月30日の定時株主総会ならびに役員会では田中健五社長が会長に昇任し、新社長に浜田博信氏(講談社)が就任する予定。
図書普及損益計算書
(百万円)
売上高227
売上原価120
売上総利益106
販売費及び一般管理費
3、041
営業損失2、934
営業外収益2、181
受取利息・配当金
1、604
有価証券売却益505
賃貸収入55
雑収入17
営業外費用27
賃貸費用27
経常損失780
特別利益1、852
未回収収益1、851
貸倒引当金戻入1
特別損失4、766
収益計上券回収損500
投資有価証券評価損
4、265
税引前当期純損失
3、694
法人税、住民税及び事業税
▲174
法人税等調整額194
当期純損失3、714

本屋のうちそと

いろいろなことがあり過ぎる。売上がいつまでも下がり続けている。当然お客さんが減っている。一体どこへ行ってしまったんだろう。まだまだ底が見えないところが苦しい。この先どうなるんだろう…ああ、悩み多き日々が続く。
先日、理論社からFAX「おはなしルネッサンスRくん通信」が届いた。7月発売予定の今村葦子『ひとりたりない』の紹介だ。
「姉と弟にはさまれた少々ワガママな5年生の琴乃は共稼ぎの両親と5人家族。そこに姉の突然の死。両親は酒とケンカにあけくれ弟は一言も口をきかなくなりおねしょもするようになる。家族の崩壊が始まる。琴乃は今まで得意ではなかったことをするようになる。それは「考える」ということ。「悩む」のではなく「考える」ということを。頭が熱くなるほど考えるようになる。なぜ弟は赤ん坊のようになってしまったのか、死んだ姉はどこにいるのか。考えれば考えるほど姉の死というおそろしい事実と向き合うことになるが、少しずつ彼女は変わっていく」
そうなのである。アマゾンの値引き問題、ブックオフの今後の動向、悩みばかりである。悲観していても同じ。考えよう、頭が爆発するくらい考えよう。そしてきちんと対応していこう。今のままでは何も始まらないのだろう。結果、どの方向に進むかは分からないがちゃんとした一歩を踏み出せるのではないだろうか。考えよう。(理)