全国書店新聞
             

平成24年12月1日号

特賞は57912番/「読書週間書店くじ」抽せん会

第39回「読書週間書店くじ」の抽せん会が11月14日午後2時から書店会館で開催され、日書連役員、出版社、取次、関係会社の立会いのもと、当せん番号を決定した。
抽せん会は、これまでホテルなどの会場を借りて行ってきたが、経費削減のため書店会館での開催に変更した。日書連書店再生委員会・舩坂良雄委員長の司会で進行し、大橋信夫会長が「厳しい状況の中、節約ということでこういう形式で抽せん会を行うことにした。ご協力をお願いする」とあいさつした。
抽せんは、0から9までの番号を記した10枚のカードを抽せん箱に入れ、中からカードを1枚取り出す方法により実施。日本書籍出版協会・中町英樹専務理事、日本雑誌協会・勝見亮助専務理事、日本出版取次協会・金田徴書籍研究委員会委員長、日書連・大橋会長、日本図書普及・平井茂取締役が1番から5番までの抽せん箱を担当し、順番にカードを引いて特賞から3等賞までを決定。最後に日本図書普及の濵田博信社長が4等賞の番号を引いて全当せん番号を決めた。

万引犯罪発見後の処理、全件警察に通報は75%/万防機構・小売業万引被害実態調査

全国万引犯罪防止機構は第7回(2011年度)「全国小売業万引被害実態調査」の報告書を発表した。これによると、調査に回答した企業の1社平均の万引被害件数は300件で、万引を発見したら全件警察に通報すると答えた企業は全体の約75%にのぼることがわかった。
この調査は、全国万引犯罪防止機構が全国の小売業・サービス業における万引被害の現状を把握するために毎年実施しているもの。調査票を郵送配布・郵送回収する形で、今回は26業態930社を対象に行い、有効回収数は25業態300社(有効回収率32・3%)。回答企業の業態別分布は、企業数の多い順に次の通り。
スーパー73社、百貨店40社、コンビニ・ミニスーパー29社、ドラッグストア20社、生活協同組合19社、ホームセンター・カー用品14社、スポーツ用品12社、婦人服・子供服、書籍・文具各11社、その他専門店9社、宝飾品8社、服飾・服飾雑貨、時計・めがね各7社、紳士服6社、カジュアル衣料、家電製品、靴、総合ディスカウント各5社、呉服、家具各3社、楽器・CD、酒類、生鮮各2社、玩具・ホビー用品、100円ショップ各1社(カメラは回答社なし)
〔青少年の万引は2割弱〕
直近決算年度における万引犯罪被害件数を聞いたところ、この質問の有効回答244社の被害総件数は7万3214件で、1社平均では300件となった。平均件数の多い業態は、スーパー884件、ホームセンター・カー用品729件、ドラッグストア313件、総合ディスカウント211件、書籍・文具190件となっている。
確保した(捕まえた)万引犯の人数は、有効回答257社の総人数で3万6435人。平均人数の多い業態は、ホームセンター・カー用品516人、総合ディスカウント514人、スーパー345人、書籍・文具177人だった。
確保した万引犯の男女別内訳は、男性60・3%、女性38・6%。職業別内訳は、無職の34・1%をトップに、主婦19・4%、社会人12・7%、不明10・4%、中学生8・8%、高校生6・4%、小学生3・7%の順。小・中・高校生を合わせた「青少年」は18・9%だった。また、確保した万引犯は単独犯が85・0%、複数犯10・7%、不明4・2%となっている。
万引被害金額について1年前と比較したときの増減傾向を聞くと、「変わらない」が最も多く25・3%。「大変増えた」と「やや増えた」を合わせた「増加」が21・6%、「大変減った」と「やや減った」を合わせた「減少」が25・4%となった。
〔警察の手続き簡素化を〕
万引犯罪を発見した場合、その後の基本的な処理方針について尋ねると、最も多かったのは「全件警察に通報、家族や学校へはケースバイケース」の52・0%。次いで「全件警察に通報、未就学児・学生は家族および学校にも連絡」22・7%となり、全件警察に通報すると答えた企業は合わせて74・7%にのぼった。以下、「一部警察に通報する」17・0%、「その他」4・0%、「通報しない」0・3%。
万引犯罪の処理方針で、警察に「全件通報」または「一部通報」と回答した企業に、書類作成等で警察に居た平均時間を聞くと、「1~2時間」が最多で37・8%。次いで「30分~1時間」31・6%、「2~3時間」12・0%、「3時間以上」6・9%、「30分以下」4・4%だった。警察の対応時間を昨年と比較すると、「変わらない」が56・7%。「短くなった」20・4%、「わからない」14・5%、「長くなった」1・8%となっている。
また、警察に居た時間の中で「手間と感じた手続き」は(複数回答)、「警察に行くこと」「参考人調書」がともに43・3%。次いで「被害届」40・4%、「実況見分」29・5%、「証拠関係」18・9%。警察での参考人調書と被害届の負担感が大きく、手続きの簡素化が求められている。
〔店内捕捉実施は約10%〕
回答各社が店舗レベルで実施している万引犯罪防止策は(複数回答)、「従業員にお客様への声かけをさせている」が最も多く85・3%、次に「防犯カメラをつけさせている」78・0%となった。このほか多かったのは、「保安警備員を配置させている」44・0%、「商品陳列を工夫させている」43・0%、「店内ポスター、掲示物等を作り貼らせている」40・3%。
万引犯を補足した際の費用(人件費)を請求しているかを尋ねたところ、「請求はしていない」が82・0%、「請求をしている」が10・0%だった。また、万引犯の店内捕捉について考え方を尋ねると、「検討したことがない」34・0%、「他社の動向を静観している」28・0%、「検討している」11・7%、「すでに実施している」10・3%、「店内確保については反対である」8・7%という結果になった。

平成25年日書連理事会日程

委員会理事会
1月休会
2月20日(水)21日(木)
3月休会
4月17日(水)18日(木)
5月15日(水)16日(木)
6月委員会19日(水)理事会・総会20日(木)
7月17日(水)18日(木)
8月休会
9月18日(水)19日(木)
10月休会
11月休会
12月18日(水)19日(木)

BOOKEXPO2012/書店711人が来場/前回を上回る大盛況

「BOOKEXPO」実行委員会(萩原浩司代表幹事=宮脇書店大阪柏原店)は11月9日、大阪市の梅田スカイビル10階「アウラホール」で「BOOKEXPO2012秋の陣~極めろ!書店力~」を開催した。
2回目となる「BOOKEXPO」には141社・136ブースが出展。成立商談数は3669件(昨年3223件)、成立商談金額は6979万1479円(同5880万円)、来場書店は711人(同672人)という大盛況となった。
当日は午前11時の開会を前に入口前のエレベーターホールは書店人でいっぱいに。人出は正午過ぎからピークとなり、午後4時頃まで混雑が続いた。各ブースで活発な商談や情報提供が行われたほか、会場の一角で講演会・トークショーを開催、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。来場書店からは、「情報を得ること、現物を見ながら仕入れることが難しくなった近年、こうした商談会はもっと増えてほしい」との声が聞かれた。
午後3時からのセレモニーでは、世話人会の林田芳幸代表(啓林堂書店)、日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長、出版文化産業振興財団・肥田美代子理事長があいさつ。林田代表は「街の書店は、インターネット書店や電子書籍に負けないよう、読者に魅力ある出版物を提供し続けなければならない。そのためには、『極めろ!書店力』に尽きる。出版社、取次会社のご指導ご支援をよろしくお願いする」と述べた。

山陰に懇親旅行/京都組合

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は10月20日~21日に大山・山陰方面へ懇親旅行を実施。組合員と家族、従業員、取次ほか関係者66名が参加した。
当日は、京都駅八条口バスターミナルを午前8時45分に出発。蒜山高原で昼食をとり、鳥取県西部にあるフラワーパーク「とっとり花回廊」へ。参加者は花を愛でながら散策したり、園内を周遊するフラワートレインに乗車した。
午後4時15分に宿泊地のリゾートホテル「大山ロイヤルホテル」に到着。午後6時からの懇親会では、中村理事長、杉立元一トーハン京都支店長があいさつし、田辺茂日販京都支店長が乾杯の発声を行った。料理は地産を中心とした旬の食材を用いた和会席で、参加者は適温適時に提供される料理を食しながら、会話に花を咲かせていた。
翌日は、東郷湖畔の本格的中国庭園「燕趙園」で昼食。鳥取砂丘の傍に位置する「砂の美術館」を訪れ、大英帝国時代の建造物や歴史的場面を再現した砂像などを見学。鳥取市から近い賀露港で買い物を楽しみ、午後7時30分頃京都に帰着した。(澤田直哉広報委員)

武雄市図書館の指定管理者問題等を報告/佐賀理事会

佐賀県書店商業組合は10月16日、佐賀市アバンセで定例理事会を開催した。
岩永理事長はあいさつで「武雄市立図書館の指定管理者の件は日書連でも大きな関心をもたれている。武雄市民への武雄図書館のアンケートではスターバックスの併設は若い方の関心が強く、次いでDVD等のレンタル、ツタヤのポイント付与と続いている。電子書籍は今後ますますハード、ソフト共に活発になりそうで関心を持つことが必要だ」と述べた。
日書連活動については書店再生の増売企画実施などを報告。公取委が電子書籍は非再販という見解を示している件について、佐賀県学校教育のICT整備の過程で、デジタル教科書が普及した時に大きな懸念があると説明があった。武雄市立図書館の動向については、武雄市の図書館納入組合は市の動向や内部情報を知ることが出来ず、新聞等で知る以上の事が出来ていない状態だと報告された。
協議事項では、来年度の県教職員互助会の図書券購入が廃止になるため、次年度の収入減と経費削減をもとに予想予算案を示し、組合事務所移転について安価な物件の確保に取りかかる必要があると説明があった。(古賀嘉人広報委員)

加賀谷理事長を再選/辞書引き学習会を開催/秋田総会

秋田県書店商業組合は11月4日午前10時に秋田県JAビル9階で第26回通常総会を開催、組合員20人(委任状含む)が出席した。
始めに加賀谷龍二理事長があいさつし、日書連他の報告と、総会後に開催する「深谷圭助先生の辞書引き学習会」の広報活動・準備活動で組合員及び関係者各位に感謝を述べた。引き続き議事を協議し、各議案を可決承認した。
役員改選では副理事長の和泉徹郎氏(金喜書店)が退任し、和泉正之氏(金喜書店)の就任を了承した。他の理事・監査役は留任。休憩の後、初理事会を行い加賀谷理事長を再選した。
深谷氏の学習会には200人程が来場。有意義な話に来場した父兄も真剣に聞き入り、子どもたちは我々が想像した以上に辞典に付箋を貼っていた。終了後のサイン会には大勢の来場者が並び、「私たちの時にもこういう指導があったら辞書をもっと活用していた」と話していた。
なお、組合の新年会を平成25年2月下旬に由利本荘市にて行う予定。
(石川信広報委員)

10月は6・7%減少/コミック5ヵ月ぶりプラス/日販調べ

日販営業推進室調べの10月期書店分類別売上調査は、対前年売上増加率が6・7%減と先月を1・3ポイント下回った。
雑誌は全体で3・9%減と先月から1・8ポイント上昇した。月刊誌は8・8%減で、前年にティーンズジャンルの売上が良好だった影響を受けた。コミックは4・4%増。『NARUTO62』(集英社)、『銀の匙5』(小学館)など人気タイトルが発売され、5ヵ月ぶりにプラスに転じた。
書籍は全体で9・9%減で先月を4・8ポイント下回った。文芸書は18・8%減。『禁断の魔術』(文藝春秋)が好調だったものの、前年に売上を伸ばした『謎解きはディナーのあとで』(小学館)、『スティーブ・ジョブズⅠ』(講談社)などの反動で大きく落ち込んだ。書籍コミックは、前年発売された銘柄のうち、今年発売設定のなかった銘柄が売上を牽引したため、22・2%の大幅減。

新刊配本シェア50%を超える/JPO近刊情報センター

日本出版インフラセンター(JPO)は11月2日、同センターが2011年4月に本稼働したJPO近刊情報センターの近刊書誌配信データの新刊配本点数に対するシェアが50%を超え、さらに利用が拡大していると発表した。
10月末時点の登録出版社は364社、書店は84社、取次は11社。9月の近刊書誌配信データは2398点で、新刊総点数の36・3%、新刊配本点数の50・0%を占める。

書店70名来場と盛況/美ら島沖縄商談会

沖縄県書店商業組合は11月8日午後12時半から那覇市の沖縄船員会館2Fホールで「美ら島沖縄商談会」を開催した。
書店組合主催の商談会は沖縄では初めて。県内の書店が一堂に会し、出版社と情報交換を行うことで、店頭活性化を図ることが目的。期間中に沖縄トーハン会、沖縄日販会がそれぞれ総会を開き、来場促進に貢献した。
当日は書店70名が来場し、出版社51社が出展。県内出版社も6社が出展した。冒頭、小橋川篤夫理事長があいさつしたあと、243㎡の会場で3時間、活発に商談が行われた。
今年は沖縄県が本土へ復帰して40周年という節目にあたる年でもあり、このような記念すべき年に大きな商談会が行われ、盛況だったことに、関係者一同、大いに満足した。
(安仁屋博一広報委員)

駐車場の日貸し仲介サービス開始/軒先

賃貸スペース仲介サイト運営の軒先(東京・目黒、西浦明子社長)は10月17日、空き駐車場を貸したい期間、曜日、時間帯だけ貸し借りする仲介サービス「軒先パーキング」を始め、まずスマートフォン向けβ版をリリースした。今後パソコンからも利用できるようになる予定。
借り手は、外出前にスマートフォンから駐車場を予約すれば、混雑時でも探し回ったり待つことなく簡単に駐車場を確保できる。貸し手は、軒先パーキングに登録し、利用していない駐車場を貸し出すことで、副収入を得ることができる。また、近隣の迷惑駐車、迷惑駐車軽減にもつながる。
同社は人気スポットの東京スカイツリーなど駐車場ニーズの高い施設やエリア周辺を中心に登録駐車場を獲得していくとしている。
同社は3月1日に日書連と業務提携し、傘下組合加入書店の空きスペースの日貸し仲介サービスを行っている。

輸送効率化に向けて意見交換/出版物輸送懇談会

東京都トラック協会の出版・印刷・製本・取次専門部会は11月7日、東京・四谷の主婦会館プラザエフで第34回出版物関係輸送懇談会を開き、版元、印刷、製本、取次、トラック各業界の代表者ら55名が主席し、出版物輸送の現状と課題について意見交換した。瀧澤賢司部会長は事業者数の減少、営業収入の大幅な落ち込み、運転手不足、燃料価格の高止まりなど、トラック業界を取り巻く厳しい環境を説明し、輸送の効率化に向けて業量の平準化に期待したいと述べた。

生活実用書/注目的新刊

師走である。出版界では、まだ半袖のシャツを着ている頃から、年末商品の暦や手帳の仕入れが始まっている。季節の先取りといえばそうなのだが、結局12月に入ってからがピークなのに、なぜこれほど早い陳列なのかいつも不思議に思う。ある書店では、年賀状関連本を年賀はがきの発売日まで1冊も店頭に並ばせないが、この方がかえって季節を感じさせてくれている。
ホームライフ取材班編『見てすぐできる!「たたみ方・折り方」の早引き便利帳』(青春出版社P969 952円)は、押し入れ、たんす、クローゼットを片付けるためのたたみ方から始まって、日頃使っている様々なものの便利で速い収納方法を教えている。
Tシャツ、セーター、各種の肌着などが全てコンパクトにたたまれる。たとえばGパン。前身頃を表にして広げ、両足を二つ折りにして重ね、股の部分を内側に折って長方形にする。それを二つ折りにしてから三つ折りにすると、ほぼ正方形にできあがる。Yシャツをたたむのも、旅行や出張に便利な収納法である。
イラストで紹介され、わかりやすく年末は必携の本。
箸置き、紙箱の折り方など暮らし、趣味、アウトドア、冠婚葬祭、和物に至るまで約80種のもののたたみ方、折り方も掲載されている。巻末には索引があるので、必要な時に調べることができる。
南野忠晴著『正しいパンツのたたみ方』(岩波ジュニア新書674820円)は、サブタイトルに、新しい家庭科勉強法とあるように、家庭科という授業を通して、基本的な生き方「生活力」を育んで欲しいと説くのである。
高校の英語教員として13年勤めながら、家庭科で教員採用試験を再受験。大阪府立高校初の男性家庭科教員になったのは、生徒達の様子が気にかかっていたからという。
ちなみにパンツのたたみ方は、男女各3通りの方法がイラストで紹介されている。
たたみ方にこだわる妻と、たたみ方に悩む夫からの相談が発端なのだが、そこにはお互いの考え方、個性、育った環境などの違いが厳然としてある。たとえば、家事を手伝うのが当たり前だった生徒とそうでない生徒とは、包丁が使えるか使えないか以上の隔たりがある。英語や数学と違い、家庭科は模範解答が用意されているわけではない。つまり、お互いの違いを知る教科なのだと著者は言う。師走に日常の細かな生活の知恵を取り戻そうという本である。
(遊友出版斎藤一郎)

障害者への読書推進に脚光/4団体・1個人に野間読書推進賞

読書推進運動協議会は11月8日、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で第42回野間読書推進賞の贈呈式を開き、「てんとうむし文庫」(静岡)、「関音訳の会しおん」(岐阜)、「ひろしまストーリーテリングの会」(広島)、「人形劇団んまだいしょう」(沖縄)の4団体と、奨励賞の清水泰子さん(栃木)を表彰した。
贈呈式の席上、同協議会の小峰紀雄会長は「震災の被災者の皆さんが、本に親しむことで、悲しみを乗り越え、明日に向かって力強く歩んでほしいと願いながら、すべての人たちがいついかなる時でも本の力を糧と出来るよう、読書推進運動に取り組んでいきたい」とあいさつした。
選考経過を報告した全国学校図書館協議会の笠原良郎顧問は、今回の特徴として推薦された候補者が比較的若かったことをあげ、「活動が第2世代、第3世代に移ってきたかなという印象を持った」と述べた。また、障害者への読書推進の働きかけを行っている個人、団体が目立ったことを紹介。「読書推進は子供を対象にした活動が多いが、従来の枠を超え、読書から遠い境遇にある視覚障害者に読書の喜びを伝えようという活動が熱心に行われている」と述べ、各受賞者の受賞理由を説明した。
受賞者のうち視覚障害への読書推進を行っているのは、地域の情報を音訳、録音図書を作成し、関市内の障害者宅に送っている「関音訳の会しおん」と、図書の点訳、児童・生徒への点訳指導、点字図書の作製を行っている清水さん。
このあと小峰会長から賞を贈呈し、受賞者あいさつではそれぞれ今後の活動への意欲を語った。

ライトノベルの販売のポイント/東京組合経営研修会

東京組合は11月7日、平成24年度書店経営研修会を開催。「ライトノベルの販売のポイント」をテーマに、角川グループパブリッシング販売促進部コミック・ライトノベル促進課担当の池田一樹次長が講演し、市場動向や売場の作り方などを解説した。
〔既刊が売上の7割を占める〕
矢野経済研究所が発表した2010~2011年度のオタク市場の分野別市場規模調査によると、出版市場が縮小している中で、ライトノベルの市場は成長を続けている。最近は参入出版社が増え、まさにライトノベルの戦国時代となっている状況だ。角川グループのライトノベルは、2001年を100とした場合、2011年では234%とずっと伸び続けている。
文庫ジャンル市場も大きく変化した。ライトノベルの売上シェアはこの5年で1・4倍になったのに対し、「コミック文庫」「雑学文庫」の売上シェアは約半分にまで落ち、ライトノベル市場とシェアが逆転している。
ライトノベルの増売をどうすればいいかという話になったとき、皆さんの頭に浮かぶのは新刊ではないか。しかし、電撃文庫の販売が全国1位のコミック専門店と、商店街にあるコミックが得意な中型店、駅中にある書店、典型的な大型総合書店の4店を例に、新刊、メディアミックス、売れ筋シリーズ(既刊)の売上の割合をみると、意外と新刊の比率は低く、売上のだいたい7割はメディアミックスを含む既刊で成り立っていることが分かる。
ライトノベルの新刊配本については、特約店になることを目指していただければと思う。ライトノベルは巻数ものが多いので、前の巻の実績に応じて配本する仕組みになっており、既刊を売っていただくことで配本が増えていく。新刊と既刊をうまく組み合わせて売っていただくことが特約店への道であり、さらに販売を伸ばしていく基本になる。
今年は、角川グループのアスキー・メディアワークスが20周年、富士見書房が40周年を迎えた。強力なアニメの企画、強い商品を集中させており、売り伸ばすにはもってこいの年だ。来年は角川文庫の各レーベルの多くが周年を迎えるので、来年以降も大きな企画が仕込まれると思う。
〔アニメ化作品をコーナー展開〕
ライトノベルの売上を上げるために、どのようなことに取り組んでいけばいいか。まず売場だが、ライトノベルとコミックは非常に親和性が高く、お互いにコミカライズ・ノベライズを頻繁にやっている。相乗効果が生まれるので、ライトノベルとコミックのコーナーは近くにあったほうがいい。
売上を伸ばすために一番手っ取り早くて確実なのは、アニメ化の作品を展開することだ。それから売れ筋、新刊というように、だいたい三つの構成で作られていくと考えてほしい。各社のアニメ化作品を全部まとめて「アニメ化コーナー」として展開することで、多くの読者の目を引くことができる。
地方では自店のエリアで放映していない作品を置かないことがよくある。ただ、最近はニコニコ動画などで普通にアニメが見られるようになっており、放映しているエリアと未放映のエリアでは、ほとんど商品の動きは変わらない。
角川のアニメ作品を注文しても、なかなか入荷されないというご意見もよくいただく。アニメ化作品は放映前に拡材などを入れてセットを組むので、通常は倉庫にある商品もセット組みのために全部集めてしまう。アニメが当たって売れることが分かれば十分に在庫も用意できるのだが、売れてから重版対応するので、ご迷惑をおかけすることもある。アニメ放映の1ヵ月ほど前から売場を作って、なるべく品切れを防いでいただくのが一番よいと思う。
平台の展開方法だが、ライトノベルは巻数が多い作品が多く、それを横に並べていくと視線が散漫になってしまい探しにくくなる。棚前などは、だいたい2~3段を置けるような平台構成になっていると思うので、シリーズごとに四角形に近い形でまとめていくと、視線が留まって見やすい。
エンド台などで平台展開するときに、手前を積み上げてしまうと後ろがほとんど見えなくなる。スペースボックスを使いながら、階段式に商品を積むことで、見やすく効率のよい売り場が作れる。
棚数は一般文庫の3割くらいとし、男性向けと女性向けの比率は6対4くらいがいいと思う。ライトノベルが一般文庫と大きく違うのが表紙。この表紙のイラストで購入されるお客様も多いので、動線や視線上に面陳、平台で展開することで、売上につながる配置ができる。
1巻目から続けて買っていくお客様が多いため、タイトル数はいっぱい入れるのではなく売れ筋のシリーズを1巻から全部揃えてほしい。動きのいい作品は1巻目を複数冊棚に入れて、リピートのお客様を呼び込むようにするとよい。
売れ筋の商品を見つける方法について。新刊に挟み込まれている「電撃の缶詰」などの冊子にはアニメ化やコミック化の情報がたくさん載っているので、今どのような作品が推されているかが分かる。また、コミック誌の表紙と次号の予告を見るだけでも、今後注目される作品を読み取ることができる。基本的にライトノベルは人気が出ると、アニメ化する前にコミカライズすることが多いので、早いタイミングで売れ筋商品をつかめる。角川グループの注文書には、作品ごとに売れ筋に応じた商品ランクを振っていて、毎月ランクを見直している。これを参考にして売れ筋や展開する商品を決めていくこともできる。
売れ筋を展開するとき、もう平台がいっぱいでスペースがないといった場合は、棚の面陳を使ってみるのもよい。例えば周りが差しで1面だけ面陳にすると、お客様の視線は必ずそこに行くので、本当に一押ししたいものは平台よりも効果が高いことがある。視線の位置にメインで見せられる面陳があれば、視界に入ることも多くなり売上につながっていく。15歳の平均身長は男の子が168㎝、女の子は157㎝なので、その辺りの視線に合わせて面陳を作る。
〔売れ筋の1巻目は多めに補充〕
補充は1巻目の存在が非常に重要だ。自動発注システムを入れているお店が多いと思うが、機械的に発注するため、たまに欠本したままになることがある。気づかないうちに1巻目がなくなり、棚の動きが止まっていることがあるので注意したい。ライトノベルのお客様は商品に対してうるさい方が多いので、カバーが破れたり日焼けしたものは入れ替えるようにする。
平台の補充は、売れ筋シリーズの1巻目は多めに発注する。また、発注する際は、商品が店に到着する間に売れる分を予測し、加味して発注することで、売り逃しのない売場が作れる。
アニメの放映開始時期は1月、4月、7月、10月と4回あって、番組の入れ替え時期やその前月になると少しずつ売上が落ちるので、12月、3月、6月、9月は補充について注意することが大事だ。
ライトノベルとコミックは一緒に展開すると相乗効果があると述べたが、売場が離れているお店ならば、例えば双方のコーナーで「これはコミカライズ(ノベライズ)しています」というPOPをつければ連携が図れると思う。
ライトノベルでは、各レーベルでいろいろな賞を設けている。お客様はアニメ化や有名作家の作品を買っていくが、それ以外の指標として賞を取った作品を買う方も多い。アニメ化されて関連本などが出ることも多く、特に女性は関連本を買うケースが多いのでまとめて展開する。
シュリンクについてだが、埼玉のある書店では、立ち読みのお客様が常に棚前をふさぎ、平台を見ることができないような状況に陥ってしまった。神奈川のある店舗では、シュリンクを行ったところ売上が1・4倍になった例もある。きれいな商品を求めるお客様が多いので、シュリンクした方がよいと考える。
最後に、売り伸ばしのためのポイントを。まずは平台を見直していただきたい。アニメ化のコーナーやエンド台、棚前平台が今の売れ筋に合った展開になっているかどうか、お店に帰ったらチェックしていただければと思う。
棚も同様で、コーナーの位置を変えることは難しいが、棚の中身や段数を変えることはやりやすいと思う。回転していない作品をはずして、面陳を作ってみるなどの工夫をするとよいのではないか。そして、メディア化やフェア作品を揃えることが一番売上につなげられるので、積極的に展開していただきたい。

電撃大賞

アスキー・メディアワークス主催の「第19回電撃大賞」贈呈式が11月14日に明治記念館で開かれた。
応募総数は小説部門6078作品、イラスト部門693作品の合計6771作品と史上最多。小説部門は大賞に桜井美奈氏『きじかくしの庭』、茜屋まつり氏『ハロー、Mrマグナム』ほか、金賞2点、銀賞1点、メディアワークス文庫賞1点、電撃文庫MAGAZINE賞1点、選考委員奨励賞1点の受賞。イラスト部門は大賞の該当作がなく、金賞2点、銀賞2点の受賞となった。
小説部門で大賞受賞作が2作品選出されるのは初めてで、『ハロー、Mrマグナム』は電撃文庫から、『きじかくしの庭』はメディアワークス文庫から来年2月に刊行予定。
贈呈式で塚田正晃社長は、「今回受賞した皆さんにいい作品を作っていただき、皆で力を合わせて大きな作品にしていきたい」と述べた。

文字・活字文化推進大賞に大熊町教委/久原小など3校に朝の読書大賞

読書推進と文字・活字文化振興に貢献し、業績をあげた学校、地方自治体、団体、個人を顕彰する、第6回髙橋松之助記念「朝の読書大賞」「文字・活字文化推進大賞」(全国出版協会主催)の表彰式が10月26日に東京・大手町のクラブ関東で行われた。
朝の読書大賞を受賞したのは、久山町立久原小学校(福岡県糟屋郡)、伊丹市立東中学校(兵庫県伊丹市)、文化学園大学杉並中学・高等学校(東京都杉並区)。文字・活字文化推進大賞は福島県大熊町教育委員会が受賞した。
贈呈式は、全国出版協会・田中健五会長のあいさつに続き、選考顧問の植田康夫氏が選考経過を報告。朝の読書大賞は髙橋松之助記念顕彰事業委員会の朝倉邦造委員長から、文字・活字文化推進大賞は文字・活字文化推進機構の肥田美代子理事長から受賞者に表彰状と副賞が贈られた。
活字文化議員連盟の山岡賢次会長、選考顧問の井出孫六氏の祝辞に続き各受賞者があいさつ。福島県大熊町教育委員会の武内敏英教育長は「大熊町は原発事故で全町避難となり、人っ子一人住めない町になっている。教育委員会が読書の町づくりを始めてから今年で10年目になるが、この間小中学校3校が読書活動優秀実践校として文部科学大臣表彰を受けた。また町民の読書クラブや読書会が立ち上がり、着実に成果が出てきている。人間には心の栄養も必要であり、私たち大熊町はそれを読書に求めている。受賞を機に、さらに読書活動を推進したい」と述べた。

文藝賞

河出書房新社が主催する第49回文藝賞は谷川直子氏『おしかくさま』に決まり、10月23日に山の上ホテルで贈呈式が行われた。
式典では山田詠美、角田光代、星野智幸、高橋源一郎の各選考委員が選評。高橋氏は、谷川氏が元妻であることから選考会で投票を棄権することを決めていたと明かした上で、「谷川さんは詩もエッセイも書くが結局たどり着いたのは小説だった。それもいい小説家になって、人ごとのような自分のことのような不思議な気持ちがするが、とてもよかったと思う」と話した。
谷川氏は「本格的に小説家になりたいと思ったのが40歳を過ぎてから。すぐに賞を取れるだろうと甘く思っていたら厚い壁に跳ね返された。『おしかくさま』を書いて初めて自分の中から出てきた言葉で書けたと思った」と喜びを語った。

野間文芸賞

第65回野間文芸賞は山田詠美氏『ジェントルマン』(講談社)、第34回野間文芸新人賞は日和聡子氏『螺法四千年記』(幻戯書房)、山下澄人氏『緑のさる』(平凡社)、第50回野間児童文芸賞は石崎洋司氏『世界の果ての魔女学校』(講談社)に決定し、11月6日に帝国ホテルで受賞者記者会見が行われた。
野間文芸賞の山田氏は「受賞して記者会見に臨むのは、25年前の直木賞以来。それからいろいろなスキルは身についてきたが、恐れを知って小説に対して謙虚になっている時に、このような大きな賞をいただき本当に光栄だ」とあいさつ。野間文芸新人賞の選考経過を報告した選考委員の松浦理英子氏は「『螺法四千年記』は、この人にしか書けない独特のものがあり、言語的な才能は非常に高い。『緑のさる』も独特の語り方、言葉遣いが評価された」と述べた。

メディア各社と懇談/野間講談社社長

講談社は11月8日、野間省伸社長とメディア各社との懇親会を東京・文京区の椿山荘で開催した。
野間社長は「昨年7月に第1回の会を開き、私どもも思いのほかよい会だったと思っており、2回目が開催されることになった。ぜひ楽しんでいただきたい」とあいさつ。古川公平取締役、メディア推進部・濱崎峰夫部長、海外文芸出版部・山口和人部長が壇上で紹介された後、メディア関係者と懇談のひとときを過ごした。
中締めで森武文専務は「日本の経済も政治も閉塞感たっぷりだが、活字の力で日本の文化をなんとか元気にしていきたい。講談社もその先頭に立って活字文化を活性化していければと考えているので、よろしくお願いする」と意気込みを語った。

ベストキャラクター賞に剛力彩芽さん/講談社広告賞

1万人を超える読者の投票で決まる第34回「読者が選ぶ・講談社広告賞」の贈賞式が11月1日、東京・千代田区の帝国ホテルで開かれ、女性誌部門は花王、男性誌・情報誌部門は第一三共ヘルスケアが受賞した。また、「いま最も輝いているキャラクター」「いま雑誌広告に一番出演して欲しいキャラクター」を選ぶベストキャラクター賞は剛力彩芽さんが受賞した。
贈賞式で野間省伸社長は「決算は全体的に厳しい。書籍、雑誌、コミックの販売収入が落ち込み、書店店頭での売上不振が続いている。ぜひ書店に足を運んでほしい。電子書籍は紙には及ばないものの好調。広告収入は11年ぶりに前年を上回った。雑誌ビジネスは引き続き厳しいが、読者を捕まえられるよう取り組む」とあいさつした。

『日本美術全集』など/出版企画18点を発表/小学館

小学館は10月23日、東京・千代田区の学士会館で報道関係者向けに出版企画発表会を開催。創業90周年企画9点をはじめ出版企画18点のプレゼンテーションを各担当者が行った。発表会では、聖路加国際病院理事長の日野原重明氏と『世界の中心で愛を叫ぶ』の著者、片山恭一氏が登壇し、日野原氏は『いのちの使い方』、片山氏は『愛について、なお語るべきこと』と、それぞれの著作をPRした。
冒頭、相賀昌宏社長は「創業90周年という節目の年を迎えることができた。創業翌年に関東大震災があり、ほとんどの印刷物が燃えてしまったが、立ち直ることができた。これからも先の見えないことが続くだろうが、それを乗り越えることで、我々の力が磨かれるという気持ちでやっていきたい。今回発表する企画は、本と向かい合う時間を持ち、自らを知り、世界を知る企画を揃えた」とあいさつした。
このあと各担当者がプレゼンテーションを行った。
創業90周年記念企画は、半世紀ぶりの刊行となる『日本美術全集全20巻』、総語数25万部を超える最大級の国語辞典『大辞泉第二版』をはじめ『こども大百科大図鑑』『白川義員作品集永遠の日本』『学習まんが世界名作館』『落語研究会柳家小三治大全上』『フラワーコミックスマスターピーシーズ』『るーみっくわーるど35SHOWTIME/少年サンデーコミックススペシャル犬夜叉』『「マンガ古典文学」シリーズ』の9点。記念企画以外では、東川篤哉著『謎解きはディナーのあとで3』など9点。

東西の書店商談会を見て感じたこと/ノセ事務所代表取締役・能勢仁

〔書店が出版社と直接話す貴重な場/各地で定着する書店発の商談会〕
「第3回書店大商談会」が10月11日、東京・新宿区のベルサール新宿グランド、「BOOKEXPO2012秋の陣~極めろ!書店力~」が大阪・大阪市北区の梅田スカイビル10階アウラホールで行われた。
来場書店数は東京、大阪両会場とも昨年を上回った。東京は昨年と違う会場であったが、事前告知の徹底、地下鉄出口からの誘導の良さが功を奏した。来場書店は714名(昨年425名、前年比68%増)であった。大阪会場は昨年と同じ会場で2回目であった。今年は711名(昨年672名、同6%増)であった。
両会場とも昨年と違う新機軸があった。東京会場は一般書、ビジネス書、児童書、コミックコーナーの4つにブースを分けたことである。大阪会場では注文書に18のフェア用テーマを設けたことである。書店が仕入れやすいように配慮されたテーマ別注文書が用意された。
大阪は会場の都合で短時間集中方式(11時~17時)であった。東京は昨年に比べて3時間延長の10時~19時であった。
ほぼ同じ条件の下で、来場書店数と商談率(着席して商談している書店数÷会場内にいる書店総数)を調査したので、別掲の表を参照していただきたい。
両会場に顕著な差がある。それは商談率である。大阪会場はどの定点観測でも50%を上回っていた。つまり半分以上の書店が着席して商談していたことである。注文の意志が強いことの表れである。開場直後の会場では、目指す出版社に急ぐ書店人を見て感動した。11時半の時点では86%の書店が商談していた。
一方、東京で商談率が最高だった時間は11時30分の39・8%である。早朝に見える書店の熱心さの表れである。夕方17時半の34・1%も見逃すことは出来ない。この時間帯の書店の熱心さは凄い。
来場者数をみると、東京会場では17時を過ぎると激減する。総来場者数に占める18時半の来場者数はわずか3・3%である。閉会時間が17時か17時半かなと思った。大阪会場では14時過ぎに来場者が急増し、会場の通路を歩くことが大変であった。15時台は、立ったままの商談が多いのが目立った。
会場内に滞留する書店人が多かったのは、東京会場では16時半の378人、ほとんど同数の371人は15時半であった。つまり来場者のピークは14時~16時であった。一方、大阪会場ではピークは14時半の365人で、次は15時半の277人である。東京より1時間早く前倒しである。開場時間が東京9時間、大阪6時間の差は否めない。
密度の濃い大阪会場は終始活気があった。それは商談率が16時半の定点観測まで衰えることのなかったことが証明している。関西に出版社が訪れることの少ないことの反映でもあった。今年、東京・大阪両会場に出展した出版社は92社であった。全出展社の69・1%である。東京のみ出展社は41社、大阪のみ出展社は29社であった。大阪のみに出展の幻冬舎は行列の盛況であった。
パンフレットは事前に書店に配られていた。この注文冊子は東京と大阪で著しく異なっていた。
東京版は各出版社のページ下に注文申込欄が設けられていた。出版社133社中、注文欄を作っていなかった出版社は15社で、90%の出版社は注文申込書を作成していた。これに対して大阪版は126社中、注文欄を設けていた出版社は僅か4社(池田、光文社、祥伝、光村)のみであった。出版社側から見れば紙面一杯に自社商品の提案できるので、効率的である。
こうしたことから考えるとパンフレットのレイアウトは大阪版に軍配があがる。しかし東京版の良さも見逃せない。それは取引条件について明示している出版社が48社あることである。これは全体の36%の出版社が、仕入れする書店に有利な条件を提案してくれていることになる。買切、委託、返条、3延、4延、歩安入帳、注文締切日、出荷指定、納品時期、返品期限等の流通条件が克明に書かれているのは東京版の特色であった。4延条件の多いのには驚いた。
筆者の目に留まった出版社は、東京版では新潮社、文藝春秋、大阪版では淡交社、技術評論社、幻冬舎、ダイヤモンド社であった。
出展社の会場の位置であるが、東京会場では明暗を感じた。出入口を境目にしてメイン会場と場外会場という印象を受けた。入場者の心理として、人が大勢いるところに流れるのは当然であろう。入口付近は目立つ場所であるが、人溜まりのしないゾーンであった。
しかし当該出版社は頑張ってくれていたので、救われた気がした。大阪会場は五十音順であるので、わかり易い配置になっている。場所による差のないことも事実である。
開場30分前に両会場とも朝礼があった。東京では奥村実行委員長が「商談会は本の甲子園だ」といったのが印象的であった。大阪会場では萩原浩司実行委員会代表幹事が「成功のため、待ちの姿勢ではなく、キャッチセールをしよう」と発言していた。
今年は、大阪会場では午後3時からセレモニーがあった。林田芳夫世話人会代表が「紙の本の大事さ」を強調。その後、書協の相賀昌宏理事長が「出版社と書店の出会いの場」と賞賛した。最後にJPICの肥田美代子理事長が①出版社、取次、書店は腹を割って話す②図書館納品の競争入札にメスを入れる③消費税と再販問題への対応――と3つの提案を行った。このセレモニーの間、商談は中断したが、関西書店人の熱意のほとばしりを感じた。
書店発の商談会が定着してきたことを実感した今回の両会場であった。ここまで育ててくれた2人の委員長、JPIC、その他実行委員の皆さんに拍手を送りたい。福岡で開かれた「第1回九州選書市2012(大商談会)」は、JPICの支援はなかったが盛況であった。全国へ燎原の火のように書店発の商談会が広がっている。書店が直接メーカーと話したいことの証である。出版文化の源泉がここにあると思ったのは筆者一人ではないと思う。

鹿児島、宮崎、熊本3県のトーハン会が合同販売コンクール

鹿児島トーハン会(瀬川浩三会長)、宮崎トーハン会(田中義久会長)、熊本トーハン会(宮﨑容一会長)が3県合同で企画商品を取り上げ、販売コンクールを来年3月末日まで実施する。『ニッポンのおかず』(主婦の友社)1500部、『考える力を育てるお話366』(PHP研究所)700部を目標に増売する。
出版業界を取り巻く環境が厳しい中、目標達成を目指し、各店の売上に少しでも貢献できればと、各県とも意欲的に取り組んでいる。(宮﨑容一広報委員)

近隣住民招き感謝祭/トーハン桶川SCMセンター

トーハンとトーハン共栄会は10月21日、埼玉・桶川市のトーハン桶川SCMセンターで第4回感謝祭を開催。近隣住民や出版、輸送関係者を招き、日頃の協力に感謝の意を示した。会場にはフードコーナーなど様々な模擬店が出店、ステージでは読み聞かせなど多彩なイベントが行われ、訪れた家族連れを楽しませた。
来賓あいさつで桶川市の岩崎正男市長は「トーハンの進出は雇用面、財政面で桶川市に貢献している。地元を大切にしてくれる企業が発展するのはうれしいこと」と述べた。続いてトーハンの藤井武彦社長は「市と地域の皆様のお力添えで、SCMセンターは日本一の物流拠点になった。出版界のベースは地域の書店と紙の本。不断の改革に取り組み、出版業界と地域の発展に貢献できるよう努力する」とあいさつし、鏡開きを行った。

パンパクなどの活動進める/合併後初の総会開催/関西日販会

関西日販会は11月7日、大阪市北区のホテルグランヴィア大阪で、大阪日販会、京滋日販会、兵庫日販会が合併してから初めてとなる第1会通常総会を開催。会員書店、出版社、日販関係者など315名が出席した。
冒頭あいさつした長谷川政博会長(ダイハン書房)は「6月に従来の大阪、京滋、兵庫の各日販会が1つになり、関西日販会が設立された。お互いの特色を活かしながら運営していこうと、この5ヵ月間、パンパクや分科会活動を進めてきた。会員の皆さんが色々な活動をしていきたいという意欲があるので、その通りに進めていきたい。景況感が良くなく、書店店頭も厳しいが、本や関連商品を売って収益を上げていくしかない。日販が色々な施策を提案してくれるので、積極的に参加して成果をあげていただきたい」と述べた。
総会に続いて、コラムニストの勝谷誠彦氏が「国難の時代をどう生きるか」と題して講演した。出版社、書店のあり方についても提言がなされた。
引き続き催された懇親会では、日販の古屋文明社長があいさつ。日販の諸施策を説明し、関西日販会も積極的に取り組んでほしいと求めた。

「紙の本をしっかり売ろう」神奈川日販会総会で松信会長

神奈川日販会は11月13日、横浜市のヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルで第42回総会を開き、会員書店、出版社、日販関係者など167名が出席した。
冒頭、松信裕会長(有隣堂)は「苦境にあるのは出版業界だけではなく、経済全体が厳しい状況。工夫を凝らし、変化を起こして生き残らねば。日販も変革に着手し、PARTNERS契約の締結や利益率の高い商品の供給に取り組んでいる。書店には送られてきた本を売り切る義務が発生するが、返品率も少しずつ改善されている。前向きに取り組んでいただきたい。新しい端末が相次いで発売されているが、書店はなかなか流れの中に入っていけない。紙の本をしっかり売っていくことが最も大切。自助努力で低マージンを打破しよう」とあいさつした。
来賓を代表してあいさつに立った日販の古屋文明社長は「日販のPOSデータで4月~9月の店頭販売額は対前年比6・0%減と大きく落ち込んでいる。客単価は変わっていないが客数が減少している。読者を店頭に呼び込まないと商売にならない。来店を促し売上アップを実現する“祭り”に取り組む。チラシ配りやポイントラリー、抽選会などオーソドックスなものだが、組織的に展開して店頭を盛り上げる。このほか、書店が新刊を予約できるアドバンスMDや不稼働在庫の入れ替え、書店マージンが高い商品を供給するHigh―Profit契約など様々な施策で、年末の商機に売上を上げていきたい」と述べた。
総会終了後、日経BP社の品田英雄氏が「世の中のトレンド・出版業界を取り巻く環境」と題して講演会を行った。

「出版業界は衰退しない」東北日販会で藤原会長/文化が低成長社会支える

東北日販会は11月21日、宮城県松島町の松島一の坊で第7回総会を開き、会員書店、出版社、日販関係者など251名が出席した。
あいさつに立った藤原直会長(金港堂)は「東日本大震災から1年8ヵ月たったが、まだすべてが復旧したわけではない」として、震災の記憶を風化させないよう理解を求めた。また、東北日販会の前身、宮城日販会が発足した昭和37年当時は高度成長期で、日販の売上高も224億円で伸長率は対前年115・9%だったことに触れ、「50年後の今日ではこのような成長は考えられないが、出版業界が衰退してしまったわけでは決してない。イタリアのルネサンスや江戸時代の町人文化が興隆した時代も、人口が減少し、生産能力が衰えた社会だった。成長なき社会が文化を作ったのではなく、文化が成長なき社会を支えていた。今の時代にも文化は必要で、出版業界は衰退するはずなどなく、努力で乗り切っていける。創意工夫で盛り上げていこう」と呼びかけた。
来賓を代表してあいさつした日販の古屋文明社長は「被災地の皆様はまだまだご苦労が多いことと思う」と労いの言葉を述べ、3・11以降、日販取引先のうち21店舗が閉店したままで、取次全体では33店が閉店していると報告した。また、日販のPOSデータの4月~10月累計で、雑誌5・1%減、書籍7・1%減、合計6・0%減だったとし、「東北エリアはさらに厳しい状況」と話した。そして、「書店店頭の状況が厳しい一方、公共図書館の貸出冊数は伸びており、複雑な思いもあるが、本に対する需要はあるということ。売上低迷の要因は、客単価は変わっていないが、客数が減っていること。そこで店頭を賑やかにするための“祭り”を始めた。スタンプラリー、チラシ、抽選会とオーソドックスな手法だが、効果は出ている。不稼働在庫の見直しも行い、売上を上げる。色々な手を打ち年末の商機に臨む」と述べた。
総会に先立って行われた商談会は、83社のブースに書店担当者が訪れた。また、「スマート・エイジング社会と上手な脳の鍛え方~年を重ねるのが楽しくなる生き方~」と題して、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏が講演会を行った。