全国書店新聞
             

平成18年12月1日号

特賞英国旅行など決定/読書週間書店くじ抽選会

第33回「読書週間書店くじ」の抽選会が11月21日午後5時から神楽坂の日本出版クラブ会館で開かれ、特賞「英国7日間の旅」はじめ1等から4等まで各賞の当選番号を決定した。
抽選会は日書連伊澤崇常任委員の司会で進行。丸岡義博会長は「日書連懸賞論文特選に選ばれた久住さんは『本屋のオヤジのおせっかい』というフェアをやっておられるが、やはり書店がおせっかい的なことをやらなければ新しい読者の開拓は難しい。書店くじをそのツールとして頑張っていきたい」とあいさつ。
続いて舩坂良雄増売委員長が経過報告を行い、「新販売システムで講談社の2点を取り上げさせていただいたことに感謝する。町の本屋は厳しい状態で1冊でも多く売ろうと考えており、新刊に頼るだけでなく、いい本を掘り起こして提供していきたい。書店は、読者を育てていくという気概を持つことが大事だ。皆様の協力を得てますます頑張っていきたい。今後もお客様に喜ばれる書店くじを目指していく」と述べた。
このあと抽選に入り、濱田博信講談社取締役相談役、大竹靖夫昭和図書社長、名女川勝彦文藝春秋取締役、橋昌利日販専務取締役、山下正書協専務理事の各氏が4等から順にボウガンで当選番号を決定。濱田取締役相談役の発声で乾杯した。賞品引き換え期間は12月5日から来年1月10日まで。

33年の歴史に幕/日書連共済会解散を決議/残余財産は日書連に帰属

日書連共済会は11月22日午前10時から文京区湯島の東京ガーデンパレスで総会を開き、本年12月31日をもって組織を解散すること、現在の会員に対する給付請求は平成19年3月31日で打ち切り、残余財産は日書連に帰属させることを決議した。昭和49年に発足した日書連共済会は33年にわたる歴史に幕を閉じた。
日書連共済会の会員は本年11月15日現在2477名。総会には82名の会員と委任状1991名分を集めて4分の3以上の出席を確保した。
総会では議長に丸岡会長、副議長に木野村共済会運営委員長を選び、第1号議案の「日書連共済会の解散決議」は伊澤運営委員会副委員長が説明。①4月の改正保険業法施行により、中小規模の共済会は運営できなくなった、②今年12月31日をもって組織を解散し、来年1月1日より清算業務に入る、③事故等の請求は来年3月31日で締め切り、4月1日以降に残余財産が確定する――とした。
また、第2号議案の「残余財産を日書連に帰属させる決議」については、大橋副会長が主旨説明。「残余財産を会員に分配できないかも検討したが、日書連共済会の会員個々には請求権がない。このまま放置すれば国庫に没収の可能性があり、日書連に帰属させたい。使途については、今後、日書連理事会で決める」と提案した。
この提案に対し、「半額程度は口数に応じて返金できないか」「各県共済会支部に分配して欲しい」「取次共助会はどのように対応するのか」「残余財産はどの程度残る見通しなのか」などの質問があったが、大橋副会長は「あらゆる可能性を検討した上での結論。33年の歴史の上で残った財産は、日書連に移し、使途を検討していきたい」と述べ、両議案とも拍手で可決した。

平成19年理事会日程

委員会理事会
1月新年懇親会26日(金)
2月20日(火)21日(水)
3月休会
4月18日(水)19日(木)
5月23日(水)
定時総会5月24日(木)
6月20日(水)21日(木)
7月18日(水)19日(木)
8月休会
9月19日(水)20日(木)
10月移動理事会18日(木)
11月21日(水)22日(木)
12月19日(水)20日(木)

トーハン前向き回答/返品入帳改善で一歩前進/11月理事会

日書連は11月22日午後1時から書店会館で理事会を開催。返品入帳処理の問題でトーハンは現行締め切り基準を遅らせると回答したことが報告された。
〔環境改善〕
日書連は10月理事会で取次8社に返品入帳処理の改善を申し入れていたが、トーハン、大阪屋、栗田の3社から回答があった。
このうちトーハンは「一定の方式に従った返品業務を行っている書店には、入帳締切の基準日を現行から数日遅らせる」と回答。新基準の適用は平成19年の早い時期からと、一歩踏み込んだ回答を行った。
また、栗田、大阪屋は請求書締切日から逆算して3営業日前までに入帳処理しており、今後も努力を続けるという回答があり、環境改善ワーキング機関鈴木機関長は「一定の成果があったが、残る取次5社の回答を待ちたい」とした。
〔実態調査〕
書店経営実態調査に寄せられた書店経営者の意見を集めた「生の声」は12月21日に出来るが、高須委員長は8千部程度製作して全組合員に配布するべく検討していると報告した。
〔取引改善〕
国際地学協会が9月末に民事再生法の適用を申請し、書店からの返品が不能になっている問題で、下向委員長は「直前までフリー入帳を前提にセールスが来ていた。慣行として委託を受ける買切り。ある時点を機に(取次が)一方的に返品を受けないのは問題。出版社の倒産は特別なケースだが、取次がリスクを負うべきで、書店に負担させるのはどうか」と問題提起を行った。
柴崎副委員長は「一方的に取次の裁量で決め、返品すれば逆送され、運賃、手数料まで取られるのは不公正。今後も有事出版社は出てくるので(返品不能品の扱いなど)ガイドラインを作りたい」と述べた。
〔流通改善〕
『窓ぎわのトットちゃん』『だいじょうぶだいじょうぶ』の2点の新販売システム銘柄については、12月中に振り込み料を上乗せした販売報奨金を各県組合に振り込むことになった。新販売システムの検証は、12月6日、講談社、日書連で総括座談会を開催し書店新聞に掲載する。
〔再販研究〕
出版流通改善協議会による今年の『再販弾力運用レポート』がまとまり、現在の再販制度と弾力運用の状況を報告する再販関連会員説明会が12月8日、書協で開催される。当日は公取委取引部の担当官が出席するほか、小売公取協井門会長が5月に改訂された景品規約の説明を行う。
〔指導教育〕
インターネットによる書店新入社員、パート社員向け教育講座「eラーニング」は10月中旬スタート以来、330件のアクセスがあり、80件エントリーしたことが大橋委員長より報告になった。
〔情報化〕
大阪組合面屋理事長から「府立高校99校に日書連マークが入ったが、TRCマークに比べ検索が落ちるという声がある。日外アソシエーツを加えれば、TRCに匹敵する。現場の司書の声を聞いてほしい」と要望があった。12月13日には情報化委員長会議を開き、図書館で進む指定管理者制度の対応について議論する。〔組織強化〕
今月の新規加入は12店、脱退は22店で、組合員総数は前月より10店減って6463店になった。加入は福岡組合の新規加入で、同組合山口理事長は「万引き防止シールの扱いで、アウトサイダー書店が加入した」と報告した。
〔増売運動〕
読書週間書店くじ申込店の中から抽選で招待する「英国7日間の旅」無料随行は千葉市・三省堂書店そごう千葉店、大田区・イケダ多摩川書店、伊賀市・ブックス芳文堂の3店に決まった。来春の「春の書店くじ」は特賞がギリシャ7日間の旅。店頭活性化の一貫として、組合員全店にくじ50枚とポスター1枚の書店くじセットを配布する。
〔読書推進〕
高須委員長は愛知、岐阜、三重3県で展開されている「中学生はこれを読め」キャンペーンについて、朝日新聞が見開きで書名、実施店を取り上げたことを紹介。「孫の日」も含め、運動が全国に拡がるよう願っているとした。

共済会給付

(18・10・16~18・11・19)
▼病気傷害山形市七日町1―2―39遠藤書店広田良平殿5口
加美郡中新田町西町16―2高橋洋品店高橋四郎殿5口
京都市左京区太秦堀ケ内町31―10たぬき堂御舘昇一殿3口
京田辺市河原御影30―22山城書店森武泰弘殿2口
豊後大野市緒方町馬場68―6さいとう斉藤勝義殿
▼死亡弔慰古河市東本町1―3―11つかもと書店塚本光三殿3口
金沢市石引2―9―2弘文館書店源明殿
岡山市富田町2―2―17河原書店高田和幸殿
西津軽郡鯵ケ沢町舞戸上富田152―14神書店神健司殿5口
▼配偶者死亡(原裕子)
調布市布田1―36―8真光書店原康殿9口

お節介やめません/懸賞論文特選の久住氏

日書連がこの夏募集した懸賞論文『私の書店論』で特選を受賞した札幌市・久住邦晴氏(久住書房)に対する授賞式が、11月21日夕、東京・神楽坂の出版クラブ会館で行われた。
選考経過を報告した日書連指導教育委員会大橋委員長は「町の本屋は希望を捨てず、日々アイデアを絞って営業している。その知恵を集めてみてはと論文を募集した。応募された27編の論文は、それぞれすぐれたアイデアを含んでいたが、久住さんの論文は、読者の目線に立った棚作りが素晴らしかった」と選評。
丸岡会長から賞状を受け取った久住氏は、20日からいじめに苦しむ子らに向けた緊急フェア「本屋のオヤジのおせっかい君たちを守りたい」をスタートしたことを紹介。「売上げは回復しないが、それでも町の本屋の声を、この先もあげていきたい」と、受賞の感想を述べた。

10月も3・9%ダウン/4カ月連続売上げマイナス/日販調べ

日販経営相談センター調べの10月期書店分類別売上げ調査は平均3・9%減となり、4カ月連続でマイナスになった。
書店規模別で前年を上回ったのは201坪以上の100・3%だけ。立地別では商店街の91・3%、SC内の93・8%が目立つ。
ジャンル別では雑誌が95・0%と、前年を5ポイント下回った。50坪以下、51~100坪店では6%程度のマイナスで、売上げに大きく響いている。
新書は201坪以上店で12・7%増と2ケタの伸びを示したのをはじめ、各規模とも前年をクリア。立地別でもすべてプラスとなった。10月は朝日新書創刊も好材料だった。
コミックはテレビ化、映画化で『のだめカンタビーレ』『DEATHNOTE』が好調。文庫は100・2%と横ばい。
10月の客単価は前年比102・1%の1118・4円。

総合週刊誌の低迷続く/06年上期ABCレポート

日本ABC協会は06年上期の雑誌発行社レポートを発表した。今回の掲載は53社147誌。前年同期と比較した販売指数は週刊誌95・04、月刊誌95・82で、合計95・56となった。主要52誌の販売部数をまとめたのが別表。
総合週刊誌は部数トップの「週刊文春」が約4千部減の57万1千部となるなど、前期に続いて振るわず。中でも「週刊現代」が4万4千部減、「週刊ポスト」が3万3千部減と大きく部数を減らした。新聞社系週刊誌は健闘し、「週刊朝日」は前期とほぼ同数、「サンデー毎日」は7千部増だった。
ビジネス誌は「週刊ダイヤモンド」が7千部減、「週刊東洋経済」が2千部増、「プレジデント」が3千部減とまちまちの動き。「BIGtomorrow」は1万6千部減と大きく落ち込んだ。
女性週刊誌は「週刊女性」が1万4千部減、「女性自身」が2万6千部減、「女性セブン」が1万4千部減といずれもマイナスだった。女性月刊誌は「CanCam」が5万4千部増と好調を持続。「non・no」2万1千部増、「ポップティーン」2万部増など盛り返した雑誌も見られたが、全般として不振が続いている。

新理事長に和泉徹郎氏/秋田総会

秋田県書店商業組合は11月16日、横手市・かんぽの宿横手で平成17年度通常総会を開き、組合員34名(委任状含む)が出席した。
総会は藤井暁夫理事(藤井書店)の開会宣言で始まり、木村和一理事長代行(榊田分店)があいさつ。同組合の事業内容や計画の変遷を数値を交えて説明したあと、現在日書連が抱えている諸問題を委員会別に説明し、「書店業界の厳しさを改めて痛感している」と述べた。
このあと和泉徹郎副理事長(金喜書店)を議長に第1号議案から第9号議案までを審議し、すべての議案を原案通り可決した。また、第10号議案の役員改選の件では新理事長に和泉副理事長を選出した。
来賓の全国中小企業団体中央会・佐藤横手支所長があいさつしたあと、各版元説明会、懇親会を催した。
(木村和一広報委員)

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・菅原梨花

◇2歳から/『やまのおふろやさん』/とよたかずひこ=作/ひさかたチャイルド1050円/2006・11
しんしんと雪の降る日、動物たちが次々と山のお風呂にやってきます。いい湯だなぁ~。あれっ、雪だるまもお風呂に!?そしてみんなが帰った後、お風呂はぐらぐらと動き出し…。繰り返し読みたくなるリズミカルなテキストと意表をつく展開。カバーの折り返しまで楽しい絵本です。
◇4歳から/『ゆきだるまのクリスマス!』/キャラリン・ビーナー=文マーク・ビーナー=絵/評論社1365円/2006・11
クリスマス・イヴの夜、みんなが眠るころ、雪だるまたちが動き出す!街の広場でパーティーが始まるのです。輝くような美しい色使いで描かれた絵は、まるで夢の中のよう。生き生きと動きのある絵に、子どもでなくともクリスマスが待ち遠しくなります。かくし絵もお見逃しなく!
◇小学校低学年向き/『おひさま』/片山令子=文/片山健=絵/ビリケン出版1365円/2006・11
のうさぎさんが大好きな誰かさんって?おおかみくんはとても気になります。誰かさんは、いつものうさぎさんのことをみていてくれますが、雨の日は苦手。でも、おおかみくんは、どしゃぶりの日だってのうさぎさんに会いにきてくれますよ。相手を想う気持ちに、心温まるお話です。

業量平準化、高効率輸送実現めざす/出版物輸送懇談会

東京都トラック協会の出版・印刷・製本・取次専門部会は11月17日、四谷の主婦会館プラザエフで第28回出版物関係輸送懇談会を開催。トラック、出版社、印刷、製本、書店業界の代表者ら総勢55名が、出版物輸送を取り巻く現状と課題について話し合った。
懇談会の席上、同協会の瀧澤賢治部会長はトラック業界が抱える問題点として①軽油価格高騰に対する運賃転嫁②駐車違反への取締強化③人手不足――に言及。また、出版物輸送の現況について「出荷業量は減少基調。輸送効率の悪化から1車輛当たりの売上げは減少しているが、経費は増えている。業量平準化を前提に高効率輸送を構築したい。トラック業界は小規模零細業者が多い。会社力を向上し、提案型物流を実践しなければ、生き残ることはできない」として、荷主側と問題意識を共有することが重要と指摘した。
荷主側を代表して雑協物流委員会・藤原卓委員長は「業量平準化は大きなテーマ。時間通りに搬入することを肝に銘じている」と述べた。取協輸送研究委員会・鈴木章雄委員は「商品ごとの業量調整を念頭に努力する」、日書連流通改善委員会・梅木秀孝委員は「トラック業界の苦労はよく理解できる。書店業界でも廃業が相次いでいる。夜12時まで営業している店や、年中無休の店も珍しくない」と述べた。

懸賞論文入選/「やはり小さな店こそ素晴らしい」/砂川市・いわた書店・岩田徹

〔本造りの現場は幸せなのでしょうか〕
今年もハリー・ポッターの予約を取って、たくさん販売しました。パックされた商品をお客様にお渡しする時に僕の胸に去来したなんとも言われぬ違和感のようなものの正体は一体何だったのでしょう。「コンビニやアマゾンなら特製○○が付いてくるってさ」という子供たちのささやき声が聞こえたからでしょうか。まるで新発売のゲーム機商戦のような騒がれ方に対する拒絶反応でしょうか。これはコンビニやネット通販と同じレベルに見られてしまった、もしくは個々の書店人としての資質や誇りというものを完全に無視されてしまったという事にあると僕は考えています。
とにかく売れたのだからイイじゃないか、という人には何とも説明しづらいのですが、売れなければもちろんの事、売れれば売れたで気持ちの悪い澱のようなものが心の底に溜まっていくのです。これは自分自身が本屋として目指していた姿とはどうも違うのではないかというわだかまりです。おそらくは作者のJ・K・ローリングがそして訳者の松岡佑子さんが思っていたのとも違う売られ方をしてしまったためにハリポタは特異な商品に変貌してしまったように思うのです。同じように映画やテレビとタイアップして大量販売を狙う動きが目に付きます。発売後すぐにネットオークションに登場し、どんどん値段が下がっていく…文化は消費されるべきものではないだろうという言葉はこんな現実を前にいかにも無力でしかありません。
話題を盛り上げて売上げを作る事が上手な出版社があります。都市部の大型店には山積してあるそれが、町の本屋からの客注分1冊1冊には全く反応してくれません。かといって注文してくださったお客様に言い訳は出来ないのです。旅費をかけ図書券を使ってでも読者に届ける時の屈辱感はとても耐えがたいものです。そうまでして届けた本が、どんなにベストセラーといわれようとも1年後にはブックオフの特価コーナーに溢れかえり、5年もすれば誰も覚えていないのが実情です。こんな本作りに振り回される現場ではどうなのでしょう?作者や編集者、出版社の人間はこれで幸せなのでしょうか?
〔流通の現場は幸せなのでしょうか〕
二大取次はそれぞれに流通の合理化を推し進めてきています。無伝返品、定番自動発注、POSデータに基づく雑誌の定期改正など書店の労力を軽減するような謳い文句はとても魅力的に感じられます。しかし実際は商品の供給者側に立った設計のそれは書店(販売)の現場では無用の混乱を招いています。
無伝返品は確かに便利です。入帳も早くなりました。しかし同時に理屈に合わない逆送品が増えました。そしてこれには運賃ばかりか手数料がかかってしまいます。そもそも新刊配本の段階で書店が注文もしていない商品が「注文」とか「買切」というマークがついて入荷してきます。おそらくは出版社と取次の間での政策的な配本なのでしょう。この手の販売残の返品入帳には手を焼かされます。瑣末な連絡や交渉事に煩わされて一日が過ぎて行くのです。「まったくするべきではないことを能率的にする。これほど無駄なことはない。」というP・ドラッカーの言葉が本質を言い当てています。
定番自動発注のしくみは今現在、何を何冊注文しているのかという情報を書店の現場から奪ってしまいました。毎日入荷してくる補充品をひたすら開梱し、棚に並べる作業だけを強いられるのです。たまたま品切れの状態で販売機会を逸する商品もあれば、無駄な仕入れによって返品だけを増やしてしまう事は少なくありません。
もっと恐ろしいのは現場の担当者自身が、日々の売れ行きをチェックし発注するという作業から解放(疎外)される為に書棚の魅力は日を追って色あせていってしまう所にあります。どんな棚を作っていくかを考える能力を失ってしまうということが大問題なのです。お客様との対話や、そこから注文に結びつく事例によってその地域の店に必要な本がなんであるかを担当者は学ばされます。地域の人々の人生に寄り添っていける本屋は地域の人々によって作られるといってもいいかも知れません。
規模の競争、メガストア同士の競争はそれが生来、一番争いの競争でしかありえませんから、実に不毛な戦いであると言えます。あれ程の商品量の売り場を維持していくのには膨大なエネルギーを必要とします。商品を提供する出版社の負担も並大抵のものでは無いことでしょう。そこで働く人たちは幸せなのでしょうか。
超一流の立地に出来た巨大な店舗の一階に広大なコミック売場が広がっているのを見た時、大書店の「売る側の効率の論理」を思いました。レジに並ぶ客を捌く論理でありシステムです。おそらくは北海道各地からナショナルチェーンのブランドを信頼してはるばる遠くから来たと思われるお客様にとってはどんなに不便であるかを感じ取れない感性なのでしょう。
『出版物販売額の実態とその分析』という資料の中に都市別書籍・雑誌推定販売額の数字が公表されています。2005年8月のデータを見ると興味深いことが判ります。注目すべきは「一人当たり年間購入額」です。全国平均は1万2694円、北海道全体では1万4078円です。札幌市は中央区が4万4720円と突出していますが全体では1万4583円に止まります。北海道全域から買い物に行く事を考えると、札幌市民には本が遠くなっているように思われます。
それに対して市民に本が届いている町は1万9434円の帯広を先頭に富良野・稚内・士別・名寄・砂川・北見・留萌・網走…と地方の町が続きます。取次の相談役に大手出版社が名を連ね、特に日販の役員にCCC=TSUTAYAの増田社長が就任した事を重ね合わせると、地方の書店が積み上げた利益の集積の上に大書店やチェーン店が支えられているという構図が見えてきます。新刊やベストセラー商品の偏った配本にもかかわらず健闘する地域の書店群。これを見ると何か確信のようなものが感じられてくるのです。それは小さな町こそ、小さな店こそ面白いという事です。
〔まずは書店自身が変わる為に僕らは何ができるでしょう〕
二大取次が構築しようとしている、誰でも出来る書店オペレーションの仕組みはおそらくコンビニやチェーン店、もしくはアルバイトを大量に使わざるを得ない大型店を想定しているものなのでしょう。そうさせた背景には、取次任せの仕入れに依存してきた多くの書店の経営姿勢があるのでしょう。だからこそ今、変わらなくてはならないのは書店自身なのです。
書店をやっていて一番理不尽だと思われる事が「配本」という言葉に象徴されるものです。取次からは勝手に本が送られてきて、翌月末にはその全額の支払いを求められます。注文した本はなかなか手に入らずに支払いの義務だけを迫られるのでたまりません。この苦しさをいくら訴えても聞き入れられるものではありませんでした。多くの仲間が閉店を余儀なくされてしまいました。
ここを打ち破るものは仕入れの自由と権利の獲得でしかないだろうと思います。仕入れた商品の代金を全額支払うためにも、見計らいによる過剰な送りつけ、企画商品の無理な押し付けには断固とした意思を示さなくてはならないのでしょう。一部の大型書店の店頭に無駄に山積などせずに、一冊一冊の客注に答えてくれるように要求すべきです。つまり金を払うから本を送れという、ここに書いていても恥ずかしくなるような当たり前のことを要求できる書店になりましょうという事です。
数年前から本屋としての反省を込めて、自分で数字を拾う作業に取り組みました。ウインドウズパソコンに「本屋の村」が開発したソフト「ラクプロⅡ」をインストールし外商管理と発注管理に取り組みました。雑誌の管理だけでしたらこれで充分です。問題は日々増え続けるISBNコードがついている商品です。
昨年、日販POSレジのリース契約が終了するのを待ってPOSレジの自作に取り組みました。バーコードスキャナー、キャッシュドロア、カスタマディスプレイ、レシートプリンター等を購入し、組み立てました。レジ専用のパソコンも含めて30万円くらいでしょうか。
実は事はそう簡単には進みません。パソコンが使い易くなったとはいえ、まだまだ初心者の域を出ない者にとっては幾つものハードルが待ち構えているのです。しかも「本屋の村」のメンバーは関西に集中しているため、ちょっと教えに来てよという訳には行きません。全ての疑問点は電子メールを駆使して解決せざるを得ませんでした。メーリングリストに疑問を提示しておくと、仕事の合間に「本屋の村」のメンバーが返事を書き込んでくれるのです。幾つかの躓きと試行錯誤の末に何とかやり遂げることができたのは本屋の仲間の手助けがあればこそであるのです。
ゴールデンウイークの閑散期に思い切って実地稼動に踏み切りました。レジの機能を一つずつ確かめながら9月末の棚卸までには更に2台のノートパソコンを導入して、返品作業や棚卸に使える「子機」として仕立て上げました。自店の在庫を把握する事が何と言っても第一歩ですから。
一昨年までは一日店を閉めてやっていた棚卸を、店を開けたままでやり抜きました。娘と二人で2台のノートパソコンを使い、店内の商品のISBNコードをスキャナーで読み込んでいくのです。何とか2日がかりで終わらせる事ができました。
棚卸のデータが登録されて始めてPOSレジは命を吹き込まれます。一日の売上を集計し、レジとして使っているパソコンからサーバーにしているメインのパソコンにデータを吸い上げます。ディスプレイに外商と店売の一日の売上データが表示された時の感動は現場で苦闘し続けてきた人間にしか判らないものでしょう。
この一覧表には売れた商品の履歴が出ているのです。発売日、入荷数、前日の売上数、過去の売上実績、現在の在庫数が表示されているので、これを参考に発注するかどうかを判断します。発注するものはその数を入力していって、最後に日販NOCS9000のコード発注に流し込んで終了です。半月経過しても入荷のない商品は再度一覧表に登場しますから、再注文するかどうかを改めて判断する事ができます。
〔本が売れないという現実と向き合う〕
POSによる管理とは「売れない事」と向き合う作業に他なりません。日々の販売データが蓄積されていくと棚の見直しに取り掛かることが可能になります。ジャンル別、もしくは出版社別に在庫している商品の一覧表を表示してみると、棚に並んでいる商品の履歴がわかるのです。気がつかないうちに何回転もして、累計では思わぬ売上実績を残しているイキのいい本。反対に売れているような気がしていたけど実は壁の花、もしくはババ抜きのババに過ぎなかった本もその正体を現してしまいます。
よく言われることですが、全体の2割の商品が売上の8割を担っていると言うことが数字で証明されるのです。文庫を例にとりますと新刊のパターン配本というものがあります。いわゆる実績に応じてランクが決められ、新刊が配本されます。これはと思う本が平台に並べられ、平台から棚へ、そして押し出されて返品されるという繰り返しに私たち自身が慣らされてしまっているものです。
文庫はこんな雑誌のような売り方でいいのだろうかと考えてみます。POSのデータを見ていくと何だか違ったものが見えてくるのです。
今年で3回目となる北海道書店組合のキャンペーン『中学生はこれを読め!』が始まりました。本の帯に付いているシールを2枚はがきに貼って応募すると(運がよければ)図書カードが当たるかもしれませんというものです。
本屋というのは不思議な存在で、誰もが気楽に入れて、何も買わなくとも(もちろん買っていただければ嬉しいのですよ!)別にどうということもなく出ていける唯一のお店です。威勢のいい呼び込みもなければ、何をお探しでしょうか?などと訊く事もまずありません。
店の側もそれに慣れてしまって何となく今までどおりに本を並べていたのです。で、最近めっきり本を読まなくなった(と言われている)中学生に本屋のオヤジが勧める本を一カ所に並べてみたのです。するとどうでしょう、これが何ともイイ味の棚になったのですよ。
つまり今までとても内気で消極的な本屋のオヤジたちが始めて「自分が売りたい本はこれだ!」と自己主張したのです。プロジェクトXではありませんが、ついに男たちは立ち上がり、勇気を奮い起こして「中学生はこれを読め!」と声を上げたのです。
ですから中学生だけに限定するのはもったいない、親や先生にも読んでもらいたい本が並んでいるのです。
この『中学生はこれを読め!』キャンペーンが気づかせてくれた事はとても重要です。なんとなく売れそうだからと仕入れてみたり、いや自分が仕入れたわけでもないのだけれど、何故かたくさん送られてきたから店頭に並べ、以前からあった本をなんとなく返品するというのではマズイのではないかと思うのです。今の時流に会わない本だって大切で、それを自身が判断し、自分で選んで店に並べる事ができないというのでは、本屋としては失格なのではないかと反省したのです。
中学生に「これを読め!」と言うように、医師や看護士には患者の気持ちがわかるような本を、行政マンには社会の下流で喘ぐ弱者の気持ちをわかるような本を棚で提案させて貰えるというよう「楽しみ」が無くては詰まらないのではないでしょうか。
多くの書店が売れない棚の一部を使って「本屋の棚を遊び」だしたとしたら、きっと面白くなると思うのです。今とは逆に、各地に癖のある書店が存在するという状況にこそ文化的な豊かさを感じます。何しろ個性は競合しないのですから。
商店街は町の中でそこに生きる人々の人生が交差する「場」です。一人一人の人生がかけがえのないものであるように、商店街を構成する商店の一軒一軒がかけがえのないものでなくてはならないと思うのです。本屋というのは特に一人一人に寄り添って生きることができる数少ない仕事のひとつです。たとえて言うと個人病院に似ているでしょうか。であるからこそ自身の数字を分析し、面白い本を発見し、仕入れて売るという事に努力を傾注していきたいのです。
効率を追求して大規模書店に集約すると、顧客一人当たりの販売額は下がります。お客様一人一人には本が届きにくくなるのです。すべての新刊を展示し得たとしても、見えてくるものはインターネットの荒野に似た風景でしょうか。広大な売り場の前で立ちすくむお客様の側に立って考えてほしいのです。
山積みされた本の姿が累々たる屍骸のように見えてくる瞬間があります。労力を傾注して創り上げるべきものはそちらではない、少なくとも僕の感性はそう訴えてきます。
作家と出版社が協力して一冊の本が出来上がります。この瞬間に「価値」が生まれるのでしょう。それが書店の店頭で読者に手渡され代金をいただいた瞬間に「利益」は生まれるのです。その両者を効率的に結びつけるのが取次の役割であるのでしょう。この三者が共に栄えていかなくてはいけないと言う事はかねてより言われ続けてきました。
しかし今、本という文化財と、作家、編集者、書店人という人材が共に疲弊しつつあるように思えるのです。大出版社と巨大取次が目指している、書店も含めた販売現場の系列化という道筋とは違うもうひとつのあるべき道を現場から提案しなくてはと考えるのです。
〔小さな店こそ素晴らしいのではないでしょうか〕
結論に持っていかなくてはならない時間帯に入ってきました。勝負はいつもロスタイムにもつれ込むのです。売上の8割を占める2割の商品を強化するのは勿論の事ですが、問題は残りの8割の商品の一部でもいいから「なんとなく売れているような気がする本」ではなく「自分が売りたい本」を並べる事で店を作ろうよという提案をしたいと思います。
そのためには、出版社と取次の協力がなくては、すぐに資金的に行き詰まってしまいます。でも、もしも書店員の我儘(売りたい本を仕入れて売るという)が通用するような業界であったなら、書店の世界の風景はがらりと変わることでしょう。
読者がふらりと入って見て歩ける面積は、生活時間の一部としての「書店巡り」の生理的な「快・不快」から言うとそんなに広大なものではないと思われます。それと同じように一人の書店人が構成できる書店空間もその規模は限られることになるでしょう。好きな本を読む時間もないくらいに忙しく、本をたくさん売ることだけに邁進させられるような暮らしの中では書店人は幸せにはなれないと思うのです。本が好きで飛び込んだこの業界で幸せでない人間が地域の人々の暮らしとその人生に寄り添うことができるのでしょうか?
僕はこのPOSレジを組み上げ、稼動する過程で本当に多くの書店さんに助けていただきました。メールでパソコンに関するアドバイスを戴くなかで、全国に同じ悩みを持つ仲間と出会いました。パソコン以外の事にも話が及び、目から鱗の経験は何度もありました。どんな書店員育成セミナーよりも有益で役に立つメーリングリストです。
さらには年に一度東京に集まる会合はとても楽しく有意義です。はるばる夜行バスで駆けつけ、更に夜行で帰っていくような強行軍を物ともしない熱い人たちです。今までは競争相手でしかなかった書店さんがかけがえのない仲間(同志)になったのです。
メガ書店同士はパイの奪い合いでしかありませんから最初から共存などと言うことはあり得ません。しかし、個性的な小書店は林立してこそ魅力のある書店群として読者の前に立ち続けることができるのです。典型的な多品種少量生産である本という商品は多様性こそがその魅力の源泉に他なりません。持続可能な書店世界の構築を考えた時、やはり小さな店こそ素晴らしいのではないでしょうか。
「本屋の村」で開発した書店経営ソフト「楽樂ほんやさん」には「ラク注」という客注管理ソフトがあります。たとえばこんな事がありました。
年末と云うにはまだ早い10月の末にそのお客様はやって来ます。高島暦を買って、僕の顔をじっと見てから「ほれ、いつものあれ又頼むわ」と言います。この方は毎年同じ日記帳を注文されるのです。
はい、わかりました。入荷したらご連絡しますね、電話は何番でした?と返事をしてパソコンに電話番号を打ち込みます。画面には名前と、これまでに取り寄せた商品の一覧が現れます。「△△社の××ですね、○○さん」と確認して発注します。僕がお客様の名前を覚えていたわけではなくパソコンがエライのですが ○○さんはとても喜んでくれます。「したら頼むわー」と言って帰っていきました。
あれ?と思ったら、買った本がカウンターの上に。そればかりか突いて来た杖までもが立てかけてあります。慌てて追いかけ、息を切らして帰ってきたらレジの前でお客様が笑って待っていてくれました。ぼくはこんな本屋さんを続けて行きたいのです。普通の本を当たり前に買って読んでくれる人々に寄り添って暮らして行きたいのです。
(完)

新・アジア書店紀行/ノセ事務所代表取締役・能勢仁

韓国の書店をめぐるに当たり、良書が発刊されたので、その本をご紹介します。「韓国の出版事情」(館野哲、文燕珠共著、出版メディアパル刊)である。館野氏は韓国出版事情に詳しい翻訳家であり、文氏は韓国生まれ、上智大を卒業した新進気鋭の女性新聞学博士である。
韓国は日本同様再販国であるが、IT先進国故ネット書店の進出が目立ち、ネット購買では定価の20~30%の割引販売が常習化している。こうした行き過ぎた割引販売は、書店経営を圧迫し、転廃業者を続出させた。書店組合連合会の要求によって、03年2月「出版及び印刷振興法」が施行され、「出版物の定価販売」が確認され、割引販売の規制が図られた。しかし抜け道は多く、ネット販売では10%の範囲内で割引販売が出来たり、一年を経過した刊行物は定価販売を適用しなくてもよい。つまり時限再販制度を容認したことになる。
韓国のオフライン書店数は約2200店と推定される。取次の事情は日本と異なる。卸売業者は300~500社といわれる。全国をカバーする機能を有する書籍流通会社は少なく、BOOKSEN(ブックセン)、松仁(ソンイン)書籍、韓国出版協同組合、学園書籍、ブックプラス位である。なお雑誌流通と書籍流通は全く異なる。雑誌は雑誌社が総販(一手販売)や支社を置き、書店を通して販売したり、郵送や宅配便で定期読者に届けるシステムである。
書籍流通も通常ルート(出版社→卸売業者→書店→読者)と直接取引ルート(出版社→書店→読者)に分かれ、その割合は4対6といわれる。出版社が定価の65%で卸売業者に出し、書店に75%前後で供給していた。しかし相対的に正味は低下傾向にある。逆に書籍の返品率は上昇傾向にあり、20~45%に達する。
〔書店の現状〕
韓国書店組合連合会の調査によると、04年1月現在、オフライン書店数は3589店である。これらの書店は中高生を対象にした学習参考書主体の「文房具型書店であり、単行本、雑誌などの一般出版物を扱う「書店」は2200店と推定される。
代表的な書店としてはソウル市光化門の教保文庫が知られている。その他、永豊文庫、バンディ・アンド・ルニス(Bandi&LunilsBookstore)、ブックス・リブロがある。
〔教保文庫・江南店〕
この店は総面積3600坪、保有図書約35万点(200万部)という国内最大規模である。二層に分かれている。壁面書架の裏側にレールが敷かれてあり、トロッコによって新刊書籍、補充書籍が各売場に送りこまれるシステムが出来ている。すべてコンピュータ制御であり、IT韓国面目躍如といったところである。一階路面と地下一階の書店であるが、地下書店という抵抗感は全くない。
この店のコンセプトは1、高品格、2、出会いの場、3、顧客志向である。教保文庫(チェーン店10店)の会員クラブは300万人いる。インターネットで会員申し込みが出来る。特典は①10%引き、②マイレージが3%つく、③オンラインの時は50%マイレージがつく。
ワンフロア1800坪の広さには驚嘆するが、韓民族の教育熱心がこの店を作ったといってよいほど、利用者が多い。店頭路面では、ワゴンによるバーゲンセールが大々的に行われている。神保町すずらん通りの読書週間の時の賑わいと同じである。本を熱心に探す眼差しが凄い。店内ではサイン会が行われていた。こちらも人の列である。
心理学関係の本であったが、男女半々、若い人が多かったが、順番よく待っているのが印象的であった。著者は若い男性であり、大学の助教授クラスの人であろうか。
店内にベビーカーが目立った。お母さんと子供、若い夫婦と赤ちゃんが店内を歩むのは微笑ましい。買い物を楽しんでいる風である。書店という意識よりショッピングセンター内部の買い物といった方が当たっている。広い売り場故に醸し出せる雰囲気であった。売場は壁面を除いて高い棚はない。店内中央の棚は1300㍉以下に抑えてあるので、見通しがよく、ますます広さを感ずる。これは目的の本を探すのに最も大切なことで、読者志向に立ったレイアウト、サイン看板、レジ位置であった。店内の所々にレストスペースが設けられ、ベンチであったり、背もたれのついた椅子であったり、テーブルを囲んで10脚ほど椅子が置かれていたりした。
レジは円形の全方位スタイルで、前方180度はレジ機能で、3~5台のレジがフル稼働、後方180度のカウンターはレファレンス機能である。書誌検索、受注、読書相談等、読者との対面接客である。椅子が用意されているので、ゆっくり応接できる。
通路に置かれた平台に、所々20%セールの看板を見る。これは時限再販を活用したセールで、本来10%オフの本を20%まで拡大したものと思われる。ハードカバーの本が多く、読者にとっては価格メリットが感じられる。教保文庫はオンライン書店も経営しているので、そちらで買えばもっと安いのであろう。以上

ふるさとネットワーク/中国ブロック編

〔鳥取〕
日本海に面し、東西16キロ、南北2・4キロ、最大高低差92メートルの日本最大規模の砂丘、鳥取砂丘。その鳥取砂丘で毎年恒例の「鳥取砂丘イリュージョン」が今年も開催される予定です。
第4回目となる今年も、約20万球のイルミネーションで、鳥取砂丘の夜をロマンチックに演出します。また、今年も馬の背(砂丘の盛り上がった部分。馬の背中に似ていることからこう言われるようになりました)のライトアップが行なわれ、普段見ることの出来ない夜の砂丘の雄大な景観をお楽しみいただけます。初日にはオープニングセレモニーがあり、毎日の点灯式など、連日様々なイベントも開催される予定です。
今年の開催期間は12月22日~1月3日まで。点灯時間は午後6時の予定です。夜の砂丘をご覧に、是非鳥取へお越しください。(津田千鶴佳)
〔島根〕
鳥取と島根、両書店組合の共催、11月14日に本の学校(鳥取・米子)で、顧客マーケティングの概念を最初に日本に紹介した荒川圭基氏を講師に研修会が行われました。
約50人の書店が参加。研修テーマは「2006コミュニケーション相対性乗数論」。なにやら難しい感じですが、話の中身は顧客情報の価値ある活用について。待ちから攻めへの転換、顧客情報を識別し仕掛けて売上につなげていくというものです。攻めるとは営業。営業とはマーケティング。マーケティングの基本とは①セグメントする②ターゲットする③ポジショニングをする。要するに、個人購買情報を基に欲しているお客様を絞り、販促するというピンポイントの手法です。
日頃、店頭で客注を受けている我々ですが、上手に次の売上に生かしているだろうかと思うと、正直疑問が生じます。経費節減の折、今後は確率高い販売をしたいものです。(桑原利夫広報委員)
〔岡山〕
大和と並び栄えた吉備の国、巨大古墳や古代山城、備中国分寺。さあ、出かけませんか。ゆったりとした時の流れる歴史浪漫の舞台へ。
岡山市の西の郊外から総社へ、丘陵地と田園の連なる古代のふるさと「吉備路」。東の入口には国宝建築「吉備津神社」、西に進むと全国4番目の規模を誇る「造山古墳」、そして五重塔のある「備中国分寺」へと続く。吉備路の北には、今なお解明が続く桃太郎伝説のルーツ古代朝鮮式山城「鬼ノ城」。
東西約20キロにわたる歴史のふるさとに文化遺産をつなぎながら吉備路自転車道が伸びている。のんびりウォーキングもいい、風をきってサイクリングもいい、四季を通じて吉備路はいつも温かい。ロマンを秘めた風が吹く、歩けば出逢う古代の香り。
(荒木健策広報委員)
〔広島〕
広島県の名物菓子に「もみじ饅頭」がある。特に日本三景の一つ、宮島には多くの店が軒を連ね、緑茶やコーヒーとともに焼きたてを食べることができる。
小麦粉、卵、砂糖、蜂蜜から作ったカステラ状の生地で餡を包み、広島県の県の木であるモミジの葉の形に焼き上げたもの。基本はこし餡だが、現在はつぶ餡、白餡、抹茶餡、栗餡、カスタードクリーム、チョコレートクリームなど様々なバリエーションがある。
元々、広島には土産物に適した菓子が少なかったため、明治時代以降に考案されたにもかかわらず、すっかり広島銘菓として定着している。だが、全国的に有名になったのは、80年代の漫才ブームにおける漫才コンビB&B島田洋七さんの一発ギャグからだろう。島田さんは広島市東区出身だ。
〔山口〕
山口県から8人目の内閣総理大臣が誕生した(日本一)。
①伊藤博文(初代)…幕末、松下村塾に学び、英国で吸収した進んだ文化と知識。現代日本の形を創る原点となった。②山県有朋(第3代)…富国強兵、殖産興業のもと海外進出の道に。③桂太郎(第11代)…幕府との戦いで大村益次郎の戦術に感動し軍制の道を歩む。④寺内正毅(第18代)…初代朝鮮総督、至誠一貫の人物。⑤田中義一(第26代)…陸軍大臣から政友会総裁、内閣総理大臣へ。⑥岸信介(第56代)…満州で政治家の目を養いA級戦犯容疑で新たな出発誓う。座右の銘は「至誠」。これは吉田松陰が生涯、貫いた姿勢。⑦佐藤栄作(第61代)…沖縄返還に全力を尽くし、ノーベル平和賞受賞。⑧安倍晋三(第90代)…祖父、父たちの生き方を見つめ、初の戦後生まれの若き内閣総理大臣誕生。確たる信念で、真の日本国改革を目指す。(山本信一広報委員)

会社分割で事業の専門化を推進/角川グループ

角川グループホールディングス(本間明生代表取締役社長兼COO)は11月22日開催の取締役会で100%子会社の角川書店と同ホールディングスの分割を決議した。
同グループ内の出版事業会社を専門出版社として分社・特化していき、オンリーワン体制を目指す目的。角川書店は出版事業部、カルチャー・コンテンツ事業部を新設分割し、小説・コミックのコンテンツ、映像ソフト、書籍・ムック・雑誌を含むカルチャー・コンテンツを中心とした専門出版社として特化、㈱角川書店とする。
分割会社にはサポート部門を残し、㈱角川グループパブリッシングとしてグループ出版事業における販売・調達を担う。雑誌事業部(CDデータ、DVDデータ等)は独立して㈱角川マガジンズ、映像関連事業は角川ヘラルド㈱に吸収。
角川ホールディングスの行っていた㈱角川・エス・エス・コミュニケーションズの管理事業は、新設の㈱角川マガジングループが行い、同社は角川マガジンズとエス・エス両社の持株会社となる。
この結果、角川グループは出版事業、クロスメディア、映画・映像事業、事業サポートの4つのドメインからなる国内28社、海外含め46社の事業会社に再編されたことになる。第2ステージでは、販売、購買印刷、宣伝の一体化も視野に入れており、3年後に2千億円の売上を目指す。

自然科学書協会が60周年祝賀会

自然科学書協会は11月8日午後6時から東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で創立60周年記念祝賀会を開催した。
志村幸雄理事長(工業調査会)は、1946年に任意団体として発足した当時のことやその後の活動を振り返り、「これまで取り組んできた課題は複写権、再販、出版者権利保護、消費税問題。出版不況は深刻だが、今後も出版文化のあるべき姿を追求し、専門書・学術書の羅針盤的な役割を果たしていきたい」とあいさつした。
続いて功労者表彰を行い、朝倉邦造氏(朝倉書店)をはじめ11名に表彰状と記念品を贈呈した。朝倉氏は「77年に理事になって、来年で30年になる。今後も社会発展と読書推進に努めていきたい」と述べた。
このあと書協・小峰紀雄理事長(小峰書店)、文部科学省研究振興局学術機関課の森晃憲課長が祝辞を述べ、取協・山﨑厚男会長(トーハン)の発声で乾杯した。

柴田錬三郎賞に小池真理子氏/集英社

第19回柴田錬三郎賞に小池真理子氏『虹の彼方』、第30回すばる文学賞に瀬戸良枝氏『幻をなぐる』、同佳作に吉原清隆氏『テーパー・シャンク』、第19回小説すばる新人賞に水森サトリ氏『でかい月だな』、第4回開高健ノンフィクション賞に伊東乾氏『さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生』が選ばれ、11月16日に帝国ホテルで贈賞式が行なわれた。
集英社山下秀樹社長から各賞が贈られた後、伊集院静、笙野頼子、阿刀田高、佐野眞一の各選考委員が選評。柴田錬三郎賞について伊集院氏は「小池さんは今一番脂の乗った作家。一貫して男女の愛をテーマに揺るぎなく進んできた。受賞作は女優と作家の恋が描かれている。世間ではゴシップとして扱われる素材だが、恋愛はこれほど男女を狂わせるものかと思った」と述べた。
小池氏は「初めての新聞連載で勝手が分からない上に、男女がひたすら溺れ求めあうだけの長大な作品なので、文学賞の対象にはならないと思っていた。受賞はとてもうれしい」と喜びを語った。

飾り付けコンペで3店に大賞/祥伝社

第20回祥伝社オンステージ飾り付けコンペ大賞に堺市・書院バンブーハウス、四国中央市・大久保書店、佐世保市・福家書店佐世保店の3店、優秀賞に伊東市・サガミヤ広野店など20店が決まった。バンブーハウス、大久保書店は2年連続の受賞。
今年のオンステージには2339店が参加し、飾り付けコンペには154店の応募があった。社内の1次選考で45店を選び、報道関係者の投票と合算して大賞、入選作を決めた。
27日に行われた審査会であいさつした祥伝社竹内社長は「10月で36期が終わり、37期に入った。前期は『下山事件最後の証言』が日本推理作家協会賞、古川日出男『LOVE』が三島由紀夫賞、内田康夫『還らざる道』がベストセラー入りするなど話題が多く、佐伯泰英の時代物フェアも好調に推移している。新しい期には雑誌の建て直しを緊急課題として取組んでいきたい」と述べた。

書店は地域文化の核に/総会あいさつで読売新聞滝鼻社長/読売中公会

書店読売中公会の第22回総会が11月20日午後2時半から千代田区のパレスホテルで開かれた。
冒頭、亀井忠雄会長(三省堂書店)は「書店を取り巻く環境は予断を許さないが、現実を見つめ丹念な仕事をしていきたい。当会は昨年よい成績をあげ、今期も数字を伸ばしている。単行本、新書が順調に推移するなど確実に実績を上げている。さらに発展したい」とあいさつ。
読売新聞東京本社飯山雅史出版部長、中央公論新社吉村治販売部長から主要企画について説明があった。このうち、来年実施した『婦人公論』増売は421店が参加し、参加店の返品率は1・6%低下したと報告があった。今年3月からは店舗の特性に合わせた『中公新書の100冊』を選択制で展開、500店舗の参加をめざす。『読売PC』はABC部数調査で上期5万3千部となり、115%の伸び。田村定良副会長(田村書店)から増売への協力要請があった。
総会第2部であいさつした読売新聞東京本社滝鼻卓雄社長は活字文化推進の運動に触れ「国語力の強化と育成が求められており、文字活字文化推進機構の発足も同じ趣旨だ。読売新聞は活字文化プロジェクトのほか父母が本を読み聞かせる運動を展開している。書店は誇りを持って地域文化の核になってほしい」と呼びかけた。
中央公論新社早川準一社長は「2005年度の書籍は前年比3%強の伸びで、会員書店は6%。今年上期はヒット作が相次いで単行本、中公新書ラクレは4%強、会員店は5・5%の伸び。会員店の書籍販売シェアは昨年の64%から今年上期は65%となり、パワフルな販売組織に発展した。05年の業績は売上げ、営業利益、経常利益とも大幅な増益。創業120周年にあたり、さらに業績の安定、拡大に努めたい」と感謝の言葉を述べた。

本屋のうちそと

小学校から体験学習の依頼があった。
例年だと2月の行事なのだが、2カ月ほど早い。今年は12月に行なうため多少は忙しくなることは覚悟している。
引き受けるのは6年生4人、日数は3日。毎年のことなので、体験コースは決まっている。1日目は概略説明とPOP書き。2日目は雑誌の付録組みと返品作業。3日目はパソコンでの検索と発注作業。その時の入荷量と種類によってコースの日程を変更する。
POP書きは、生徒さんに好きなコミックのPOPを書いてもらう。毎回優秀な作品が出来るので、店頭に掲示することにしている。これが意外と好評で、それぞれが親や友達を伴って来店をしてくれて、幾ばくかの売上につながる。
雑誌の付録組みを書店で行なっていることにびっくりする。ものによっては変形の付録のため、組むと座りが悪く積むと倒れてくる事がある。倒れる現実を見せて、倒れないようにするために付録をどう組むかを工夫させる。子供の知恵とはいえ、本屋をうならせる工夫をするものもいる。
最近ではパソコンを使いなれている子供が必ず何人かいて、キーボードを素早くタイピングする。在庫量をチェックして、発注させると目を輝かせてデスプレイを覗きこんでいる。
デジカメで作業の様子や各自のPOPを手にした記念撮影をプリントして、最終日に手渡すと感激して帰っていく。
(井蛙堂)