全国書店新聞
             

平成26年12月15日号(後)

出版輸送の厳しい現状を報告/出版輸送懇談会

東京都トラック協会の出版・印刷・製本・取次専門部会は12月1日午後3時から、東京・墨田区の東武ホテルレバント東京で第36回出版物関係輸送懇談会を開催。トラック、出版、印刷、製本、取次、書店各業界から約50名が出席し、出版物輸送の現状と課題について意見交換した。
冒頭で瀧澤賢司部会長(ライオン運輸)は「出版物の輸送量が減少を続ける中で、5年、10年先の出版輸送をどうしていくのか、いま各団体や会社でそれに関して取り組んでいることや考えなどを披露いただきたい」とあいさつした。
この後懇談に移り、東京都トラック協会から出版輸送の現状を報告。瀧澤部会長は、ドライバーの人手不足や燃料価格が高止まりする一方、出版物の輸送量の減少が経営を圧迫していると説明し、輸送の効率化や適正な運賃設定の検討を期待したいと述べた。
日本雑誌協会物流委員会の勝野聡委員長(文藝春秋)は「4月の消費税増税でもう一段売上が落ちた。いいものを作って業量を上げていくということは今後も変わらないが、厳しい時代に来ているというのが実感だ。1つの正解を追い求めるのでなく、様々なやり方でバランスを取りながら、従来のタブーにとらわれず改革していかなければいけない」と指摘。印刷、製本、出版社、取次、書店の出席者が各業界の動向を説明するとともに、今後の出版輸送に関する見通しや、輸送業者に期待することなどについて意見を述べた。

平成27年の理事会日程を決定/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(筒井正博理事長)は11月13日、横浜市のかながわ労働プラザで定例理事会を開催した。
始めに河出書房新社より『日本文学全集』(全30巻)の発売説明が行われた。理事会では、第1号議案の「平成27年新年会・理事会日程」を審議し、以下の日程を決定した。1月16日(金)新年会、2月25日(水)、5月12日(火)、7月22日(水)、8月25日(火)総会・懇親会、9月9日(水)。
第2号議案は、前回提起された「書店の経営環境悪化の問題点」を協議。今回は再販制度について意見書などを提示し、出来うる点から改善を求めていくことにした。
(水越孝司広報委員)

総代会は来年5月22日開催/大阪組合

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は11月8日に大阪市北区の大阪組合会議室で定例理事会を開催した。主な審議・報告事項は以下の通り。
〔庶務報告〕
第33回(平成26年度)大阪組合総代会は5月22日(金)にウェスティンホテル大阪で開催する。
〔読書推進〕
11月15日開催の第10回「大阪こども本の帯創作コンクール」表彰式について、前日の作業や当日の進行を説明した。
〔広報・ホームページ〕
日書連書店経営・販売研修会が10月21日・22日に行われ、大阪組合から深田副理事長、萩原副理事長、松田常務理事が参加したと報告した。
〔経営活性化・書店環境改善〕
全国各地で開催されている「町には本屋さんが必要です会議」が、10月17日に大阪市中央区の隆祥館書店で開催された模様を説明。「流通のしくみ」「利益率」が取り上げられ、愛される町の本屋を目指すことが大切と報告があった。
〔レディース〕
1月21日(水)にランチの会を開催、和食を予定していると説明した。
〔消費税問題〕
軽減税率を求める署名は、10月末までで合計114書店1万3267名分を日書連に送付したと報告した。(金田喜徳郎事務局長)

全国統一発売目指し活動を継続/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は11月18日に札幌市中央区の北海道建設会館会議室で定例理事会を開催した。
志賀理事長、高橋千尋副理事長から日書連理事会と委員会の報告が行なわれた後、北海道組合の活動について審議。発売日問題では、引き続き全国統一発売を目指し活動していくことを確認。また、平成27年北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会について案内及び進行担当等を確認した。この他、2015年理事会日程の調整や、未納の賦課金問題等について協議した。
(事務局・髙橋牧子)

出版界の課題と紀伊國屋書店の取り組み/紀伊國屋書店・高井昌史社長が講演/東京組合経営研修会

東京都書店商業組合は11月20日、東京・千代田区の書店会館で平成26年度書店経営研修会を開き、紀伊國屋書店の高井昌史社長が「出版界の課題と紀伊國屋書店の取り組み」をテーマに講演。アマゾンへの対抗、再販制度の弾力的運用、正味改善などについて提言した。概要を紹介する。
1996年に2兆6千億円あった出版販売金額は、2013年に1兆7千億円を切った。この間、年率で3%ずつ落ちている。このままでは、東京オリンピック華やかな2020年には1兆3千億円まで落ち込んでしまう。1兆3千億円という市場規模は、今のトーハンと日販の売上を足した数字。いわばトーハンと日販以外の取次は要らなくなるという大変な数字だ。ただ、これは年率3%マイナスが前提。実際はもっと落ちているから、1兆2千億円、1兆1千億円の時代が来てもおかしくない。
今年1月~9月期の出版販売金額を見ると、消費税増税後の4月~6月が悪く、7月~9月に少し持ち直しているが、合計5・0%減。先程、成長率3%減を想定して20年に1兆3千億円になると申し上げたが、5%減だと大変な数字になる。
紀伊國屋書店の店舗売上は、1996年は37店1万1009坪で584億円。13年は64店3万89坪で579億円。店舗数は2倍、売場面積は3倍になったにもかかわらず売上は横ばいだった。新宿地区の店舗売上は、1996年は1店1030坪で119億円。13年は2店2813坪で107億円。南店を合わせて売場が2・8倍になったのに107億円にとどまった。会社全体の売上は、1996年は1070億円、13年は1071億円と変わらずに推移した。業界の市場が2兆6千億円から1兆7千億円に下がっても、当社全体の売上は営業他が寄与して維持することができた。また、システム化によって店舗運営を合理化し、経費を削減した効果も出た。
本の未来を揺るがすものとして、「少子化」「大学生の40・5%が読書時間ゼロ」「ネットとスマホの普及」「電子書籍の普及」「図書館の貸出増」「コンビニと新古書店の存在」「万引き問題」をあげなければならない。
このほか、昨今の出版界を揺るがしている問題は、ネット書店の拡大だ。アマゾンが本格的に日本に参入したのは01年だが、紀伊國屋書店はそれより5年前に「紀伊國屋書店BooKWeb」というネット販売のサービスを始めていた。当初は年会費をいただいていたが、アマゾンは会費ゼロ。アマゾンに大きく水をあけられ、会費を無料にした。それでもアマゾン優位は変わらなかった。
一番大きかったのは送料無料のシステム。当社でも当初は5千円以上のお買い上げで送料無料にしていたが、現在は1500円まで引き下げた。書店としての利益を保つためにはその条件が限界だ。文庫本1冊でも送料無料にすれば赤字になってしまう。
さらに、アマゾンはポイント制販売を始めた。一例として「AmazonStudentプログラム」があり、学生を対象に10%のポイントサービスを行っている。これではわれわれに勝ち目はない。
出版社はアマゾンに任せれば本を売ってくれる。初めはアマゾンも低姿勢だった。だから、出版社はアマゾンの要望に沿って本をどんどん出荷した。しかし、業界トップとなったアマゾンは、今度は出版社に対して厳しい取引条件を要求するようになった。出版社も困っているという。
本の売上は、実店舗84%に対してネット書店16%の比率。われわれ書店の比率はどんどん下がっている。出版業界全体が落ちているのに、なおかつネットでアマゾンに負けている。危機感を持ってアマゾンに対抗しなければ、日本の出版業界はアマゾンの独占市場になってしまう。街の本屋が廃業し、地域文化の担い手が消えてもいいのか。日本の出版業界は結束しなければならない。
フランスでは14年、通称「反アマゾン法」が成立した。文化の保護を目的に、ネット通販業者が書籍を販売する際、配送料無料サービスを禁止する法律だ。フランスが保護する文化とは、アマゾンの攻勢で苦境に陥った国内約3500店舗の街の本屋だ。フランスは便利さよりも本という文化を守ることを選択したと言っていい。アメリカでも、出版社のアシェットがアマゾンへの出荷数を制限するなど、アマゾンに対抗する動きが出ている。
13年の電子書籍の市場規模は936億円、雑誌を加えれば1千億円を突破した。電子書籍の普及は、時代の流れを考えれば必然であり、読書機会の拡大という意味では意義のあることだと思う。紀伊國屋書店も07年から「NetLibrary」による日本語電子書籍の販売を開始し、10年には電子書籍向けアプリ「Kinoppy」をリリースしている。
疑問に感じるのは、不公平課税の問題だ。現行の法制度では、アマゾンなどが海外から提供する電子書籍については、日本の消費税は適用されない。われわれ国内事業者は8%のハンディを背負った状態で海外事業者と同じスタートラインに立たされており、国に是正を求めている。
再販制度について触れたい。主要国における再販制度の状況は、イギリスは廃止。ドイツとフランスは再販制度を採用しているが、発行から2年を経たものは時限再販が適用され、小売店がそれぞれ定めた価格で販売することが可能になっている。一方、日本ほどこの制度を堅持している国はない。もう少し弾力的かつ柔軟に運用してもいいのではないか。
日本の出版業界は返品率が40%を超えている。書店のマージン率を上げるためには、返品率を20%以下に抑えるべきだ。時限再販制度の運用も含めて、10~20%とある程度の返品枠は設けつつも、商品の買切を拡大して返品率を改善するべきだ。
同時に考えなければいけないのは、正味改善の問題。現状であれば、せめて30%のマージンを書店に出していただかないと、書店の経営はますます立ち行かなくなる。
紀伊國屋書店は出版界に元気を取り戻そうと様々な取り組みを行っている。いちばん大切なのは、地元に根差した店作り。札幌本店で「北海道大学サイエンスカフェ」、前橋店で「群馬の本コーナー」、徳島店で「地元同人誌コーナー」を設けている。海外ではマンガ、アニメ、コスプレなどのお客様参加型イベントを積極的に展開している。
一般の方々から「本屋さん、もっと頑張ってよ」と言ってもらえるよう、今後も力を尽くしていきたい。

高井社長の著書『本の力』/東京組合、増売商品に選定

東京都書店商業組合は、11月にPHP研究所から刊行された紀伊國屋書店・高井昌史社長の著書『本の力われら、いま何をなすべきか』を増売商品に選定し、専用注文書を作って拡販に取り組んでいる。
同書で高井氏は、アマゾン、再販制度、電子書籍、新古書店、コンビニエンスストアの書店化戦略、業界再編など出版界が直面する諸問題について具体的な提言を行い、本と出版界の未来をグローバルな視点から解き明かしている
出版界低迷の要因として「少子化」「読書離れ」「インターネットやスマートフォン等の普及」「公共図書館の貸出増加」やネット書店の登場、電子書籍の普及をあげ、ネット書店などに対抗するには再販制度の弾力的かつ柔軟な運用、正味の改善、書店による直仕入れなど、よりダイナミックな変化が必要と指摘する。さらに、今後は世界に誇るべき日本の文化としてマンガを発信するなど、海外展開による成長戦略を目指すべきと提言する。
同時に、原点に立ち返って未来を描く必要性も指摘。書店は街の文化の担い手として、本と出会う楽しさ、本を買う楽しさをお客様に提供するため努力し、出版に携わるすべての人々が一丸となって行動しなければならないと訴えている。
巻末には、紀伊國屋書店資料として、同社の年表や受賞一覧などを掲載。
四六判、204ページ、定価本体1500円。

10月期は3・5%減/コミックは8・2%増に/日販調べ

日販営業推進室調べの10月期分類別売上調査は、雑誌・書籍・コミック合計で対前年売上増加率が3・5%減(先月5・9%減)となった。
雑誌は7・0%減(同7・2%減)。月刊誌は前年の『アイカツ!公式ファンブックStage1』(小学館)を含む売上良好銘柄の影響を受け、マイナスが続いた。
書籍は6・0%減(同9・1%減)。文庫は10月17日よりドラマがスタートした湊かなえ著『Nのために』(双葉社)が売上を伸ばしたものの、前年のメディア化銘柄を含む売上良好銘柄の影響を受け、継続してマイナスとなった。
コミックは8・2%増(同2・5%増)。最終巻となる『東京喰種14』(集英社)の売上が好調だったことに加え、『七つの大罪1~11』(講談社)などメディア化銘柄が売上を伸ばしたため、プラス幅が拡大した。

ブックライナー「本の特急便」客注獲得強化実験を開始/トーハン

トーハンは書店向け客注インフラ、ブックライナー「本の特急便」を活用した客注獲得の強化実験を12月1日から開始した。書店特性に応じた最適な客注獲得の方法を検討・実施し、効果を検証する。15年2月28日まで全国の取引先書店20店で実施。
実験では、トーハン各支店と書店が一緒に、客注の増加が店頭売上の拡大につながることを実証する。ブックライナーを活用した取り寄せサービスを訴え、取り逃している客注を最大限獲得できるよう、店頭告知や接客、店頭オペレーションの見直しを図る。
11月26日の記者会見で、大西良文執行役員経営戦略部長は「大半の読者は探している本が店頭になければネット書店に注文している。店頭に読者を引き戻すポイントは客注対応にある」として、明屋書店でブックライナー「本の特急便」を活用した客注対応強化に取り組んだ結果、売上に占める客注の比率が3%を超え、5%近くまで増えた店舗もあると事例を紹介。「まだ書店ごとの利用度にばらつきがある。浸透しきっていないのが実情。ブックライナーを使えば満足のいく客注ができることを証明し、取引先書店に利用を促したい。実験のプロセスと検証結果を公表し、全国の書店にノウハウを水平展開することを計画している」と述べた。

紙書籍に電子書籍無料で提供/「プラス電書」サービス開始/ポット出版

ポット出版は11月初旬、紙の書籍を購入すると電子書籍が無料で付いてくる「プラス電書」サービスを開始した。
帯に印刷されたクーポンコードを対応電子書店で入力すると、無料でダウンロードできる仕組み。全国どの書店で紙の書籍を購入しても利用でき、複数の対応電子書店の中から利用者が自由に選択しダウンロードできる。現在、対応している電子書店は、honto、紀伊國屋書店、BOOKSMART、BookLive!の4店だが、順次拡大していく予定という。
同サービスの第1回対象書籍は『電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2014』(編著=植村八潮、野口武悟/著=電子出版制作・流通協議会)、『アーカイブ立国宣言日本の文化資源を活かすために必要なこと』(監修=福井健策、吉見俊哉/著=青柳正規、御厨貴、ほか)の2タイトル。どちらも非再販商品で、『電子図書館~』は希望小売価格2600円+税、『アーカイブ~』は希望小売価格2300円+税。

三つ星レストランは12店/『ミシュランガイド東京2015』

日本ミシュランタイヤは12月2日、東京・港区の東京プリンスホテルで飲食店・レストランやホテルの格付け本『ミシュランガイド東京2015』の出版記念パーティを開き、掲載店を発表した。
同書はこれまで横浜・湘南エリアも含んでいたが、15年版は、初めて刊行した08年版と同様、エリアを東京に限定した。また、昨年から登場した、星はつかないものの良質な食事を1人5千円以下で提供する店を表す「ビブグルマン」に新たに和食を加えた。
最高評価の三つ星は12店。まき村が二つ星から昇格した。二つ星は53店。一つ星は161店。ビブグルマンは325店で、213店が初登場、和食から22の料理カテゴリーが追加され、ラーメンやとんかつの店も選ばれた。掲載店数は合計551店となった。
出版記念パーティでベルナール・デルマス社長は「20年の東京オリンピック開催に向け、今後さらに東京は発展していくと思う。ミシュランタイヤも、ミシュランガイドを通じて東京の魅力を伝え、タイヤを通してより良いモビリティを多くの人々に提供していきたい」とあいさつした。
同書は12月5日に発売された。定価本体3000円。

講談社、冬春の新刊書籍を発表/「なかよし」60周年企画など

講談社は11月11日、東京・文京区の本社で「2014年・冬春新刊書籍説明会」を開催。11月から来春までに出版される新刊書籍を中心に、各部局ごとに著者、担当編集者らがプレゼンテーションを行った。
野間省伸社長は「当社は毎年1700点以上の書籍を刊行しているが、本日はこの中から選りすぐりの作品を紹介する。ここからロングセラー、ベストセラーが生まれる可能性がある。お聞き逃しのないようお願いしたい」とあいさつした。
コミック販売部は、日本最古のマンガ雑誌「なかよし」の創刊60周年を記念して①「カードキャプターさくら」プロジェクトの始動(第1弾=15年1月、「クロウカードセット」完全復刻)②なかよし名作総選挙(読者投票により過去の名作を復刊。11月から全国の書店で開催)③「プリキュアコレクション」全12冊刊行(12月から4ヵ月連続刊行)――を発表。
また、『水木しげる漫画大全集』(第2期・35巻)について、監修を務めた作家の京極夏彦氏が「漫画は世界に誇る日本の文化。きちんと読者に届けたい」と話した。
文芸ピース出版部の発表では、人気作家7人が戦国絵巻を描く『決戦!関ヶ原』について、作家陣のうち葉室鱗、冲方丁、伊東潤の3氏が執筆エピソードなどを語った。
児童局の発表では、累計600万部を超える人気シリーズ「陰陽師」の絵本版『おんみょうじ鬼のおっぺけぽー』について、著者の夢枕獏氏が「母親が子供に読み聞かせ、子供が大人になったとき小説のほうも読んでほしい」と話した。
生活文化局は、『「リアル不動心」メンタルトレーニング』の著者、初代タイガーマスクとして知られる佐山聡氏が、格闘技と武道の経験から編み出した自律神経の整え方を話した。
第四編集局は、12月に映画化される『海月姫』などヒット作を連発する漫画家、東村アキコ氏が登壇。自ら監修を手掛けた研究本『東村アキコ解体新書』を紹介し、『海月姫』の誕生秘話などを語った。

『婦人公論』『谷崎潤一郎全集』/書店読売中公会「増売に全力」

書店読売中公会は11月13日、東京・千代田区の東京會舘で第30回総会を開き、会員書店、取次、読売新聞東京本社、中央公論新社関係者ら計156名が出席。2016年に創刊100周年を迎える『婦人公論』、没後50年と創業130年を機に15年5月から刊行を開始する『決定版谷崎潤一郎全集全26巻』の増売に連携して取り組むことを申し合わせた。
冒頭、あいさつした亀井忠雄会長(三省堂書店)は「今年、読売新聞社は創業140周年を迎え、大手町にグループの拠点を築き、中央公論新社は新社長が就任した。新しい施策を期待している」として、『婦人公論』『谷崎全集』の増売に力を入れる考えを表明。「われわれが売りたくなるような販売の施策を検討するとともに、モチベーションの上がる企画を出していただきたい」と求めた。
中央公論新社の大橋善光社長は「この6月に社長に就任したが、想像以上に厳しい環境。13年度、新社になって初めて赤字となった。14年度上半期はさらに厳しさを増し、半期ベースで最悪の状況。ただ、もがき苦しむ中で、足の底に触れるものも感じ始めている」と報告。「大切なのは情報と仲間。読者と直接関わる書店の皆さんから売り方について声を聞かせていただきたい」と述べ、『婦人公論』『谷崎全集』の増売へ協力を呼びかけた。
来賓の日販・平林彰社長があいさつしたあと、田村定良副会長兼販売委員長(田村書店)のあいさつで総会を終了した。
懇親会では、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長・主筆が「日本は知的水準が高いために発展してきた。国民の教養と国力を上げるため、役に立つ本を作り、売っていただきたい」とあいさつ。白石興二郎社長は「新聞業界は、消費税率引き上げの際、軽減税率を適用するよう求めている」と述べた。

西加奈子氏の新刊など/報道関係向け出版企画発表会/小学館

小学館は10月27日、東京・千代田区の学士会館で報道関係者向けに出版企画発表会を開催。秋から来年にかけて予定している出版企画10点について、担当編集者や著者がプレゼンテーションを行った。
冒頭で相賀昌宏社長は「秋から来年初頭にかけての選りすぐった企画を紹介する。担当者や著者の方の話の中から心に響いたものを、ぜひ力を入れてご紹介いただきたい」とあいさつし、この後各担当者が発表を行った。
出版局(文芸)からは4点を企画説明。『サラバ!(上・下)』は、西加奈子氏の作家デビュー10周年記念作品で、登壇した西氏は「作家としてあと10年やっていける自信になった作品」と語った。また、星野伸一氏によるテレビドラマ化原作の続編『脱・限界集落株式会社』と、女優・吉瀬美智子氏の初エッセイ『幸転力』について、著者のビデオメッセージが紹介された。僧侶・小池龍之介氏は「練習シリーズ」の新刊『こだわらない練習』でテーマとする、さまざまな「こだわり」から自分を解放しもっと楽に生きる作法について語った。
出版局(辞書)からの『例解学習国語辞典第十版』『例解学習漢字辞典第八版』は、編集代表に「辞書引き学習法」の深谷圭助・中部大学准教授を迎え、『国語辞典』には新メソッド「深谷式学年別必修基本語7700」を導入。深谷氏は、辞書引き学習によって自ら探究的に調べる子どもの事例や、辞書引き学習を実践する学校の漢字検定成績の推移などを紹介した。
この他、以下の企画説明が行われた。
▽ポスト・セブン編集局=『運命のフォーチュンAmulet2』▽児童・学習編集局(児童図書)=『キッズペディア科学館』『小学館の図鑑NEO』▽ライフスタイル誌編集局=『がんより怖いがん治療』▽出版局(図書)=『空海千二百年の輝き』▽第二コミック局(コロコロコミック)=「妖怪ウォッチ」関連本

人事

大阪屋は11月27日、臨時株主総会並びに取締役会・監査役会で取締役、監査役の選任および執行役員の任命を行い、それぞれ就任した。また、第三者割当増資を同日に実行し、債務超過状態を解消した。
〔役員体制〕○印は新任
代表取締役社長・上席執行役員大竹深夫
取締役・上席執行役員(業務監査室長、企画管理本部長兼同本部経営企画室長、経理部長)○篠田真
同・上席執行役員(流通本部長)○堀江厚夫
同・上席執行役員
○安田博祐
社外取締役○片山誠
同○関谷幸一
同○佐藤隆哉
常勤監査役○池田俊治
監査役○玉井宏平
同○林秀明
同○村上潔
上席執行役員(営業本部長兼同本部営業第2部長、営業企画室長)○竹中繁輝
同(流通改革室長、MD本部長兼同本部配本企画部長)○鵜飼美樹
執行役員(東京支社長)
○古市恒久
同(営業本部副本部長兼同本部教育事業部直轄、大阪屋友の会事務局担当)
○小山登
同(営業本部営業第3部担当)鎌垣英人
同(営業本部教育事業部長、流通本部大阪流通センター所長)木村展幸
同(MD本部仕入企画部長)加治康弘
同(企画管理本部新事業開発室長)今出智之
同(企画管理本部総務部長、同取引部長)
○大井数重

上期売上高5・8%減/増税前駆け込み需要で反動も/トーハン

トーハンは11月26日、第68期中間決算(平成26年4月1日~9月30日)を発表した。売上高は2208億700万円で前年比5・8%減となり、7年ぶりの増収となった昨期から再びマイナスに転じた。消費税増税前の駆け込み需要の反動と、本年度から返品入帳の締切を3営業日繰り下げたことが影響したと同社は分析している。
売上高の内訳は、書籍785億6300万円(同6・3%減)、雑誌864億200万円(同8・8%減)、コミック281億4800万円(同2・8%減)、MM(マルチメディア)商品276億9100万円(同2・9%増)と、MM商品を除いて軒並みマイナスになった。
返品率は、書籍が同1・6ポイント増の46・1%、雑誌が同2・8ポイント増の47・0%、コミックが同3・3ポイント増の28・2%、MM商品が同0・9ポイント増の12・5%で、総合返品率は同1・9ポイント増の41・8%と悪化した。
厳しい市場状況の中、TONETSネットワークを活用した各種施策を実施し、外販商品の積極的な取り組みで外販部門は同28%増と大幅に伸長。また、「add文具」「notanova」などの複合店開発を行った結果、マーケット全体で第1四半期は同9・1%減だったが、第2四半期は同2・8%減まで回復した。
売上総利益は原価率の上昇により同6・4%減の251億6700万円。コスト削減の取り組みで管理費は同9・6%減となったものの、運賃や業務委託費などの販売費が上昇した。このため、売上総利益の落ち込み分をカバーするには至らず、営業利益は同20・5%減の25億300万円、経常利益は同15・5%減の17億4300万円となった。しかし、昨年同期に特別損失に計上したトーハンロジテックスへの退職加算金の影響が当期は発生しないため、税引前中間純利益は同15・4%増の17億4500万円、中間純利益は同9・6%増の10億8000万円で、減収増益の決算となった。
連結対象子会社19社を含む連結決算は、売上高は同5・9%減の2290億6500万円、経常利益は同14・4%減の13億7700万円、中間純利益は同25・4%増の6億9800万円で、単体決算同様、減収増益の決算となった。
記者会見で川上浩明専務は「店頭売上の底上げ、複合事業分野の拡大、書店の顧客サービスの向上、新しい分野への挑戦を推進し、魅力ある店頭を作りたい。下半期は特別なマイナス要因は発生しない。通期で売上高4900億円以上を目指す」と述べた。

中央社・共栄図書と返品業務を協業化/トーハン

トーハンは12月3日に東京・新宿区の本社で記者会見を行い、中央社、共栄図書と書籍返品業務を協業化すると発表した。
中央社は来年1月28日、共栄図書は同1月下旬に、桶川SCMセンターで書店からの返品受け入れを開始、出版社への返品も1月末から随時開始する。トーハンは今年4月から協和出版販売、日本雑誌販売の返品業務を受託しており、返品を協業化する取次会社は4社となった。
記者会見で、トーハンロジスティックス部の渡辺泰宏マネジャーは協業化のメリットについて、書店では返品伝票の起票が不要となること、出版社では、他取次を合わせた返品データの提供や、トーハン分と合体した銘柄数の集約による受入れ業務の軽減、全商品の読み取りチェックと自動仕分け機による事故品・仕分けミスの減少、自動倉庫による商品戻しの日数短縮――を挙げた。

「リスクを恐れずに行動を」/東北日販会総会で藤原直会長

東北日販会は11月11日に宮城県松島町の「松島一の坊」で第9回総会を開催。会員書店、出版社、日販関係者など総勢235名が出席した。
冒頭であいさつした藤原直会長(金港堂)は「『人生は巨大なロシアンルーレット』と言った人がいる。自然災害や病気、交通事故など、当たる可能性は低いがゼロではない。何もせず家にいたら当たる確率は低いが、何のために生きているのか分からない。リスクをかけて自分の望みを実行する、リスクがあるからこそ生きている充実感があるのだと考えると、企業も一緒ではないか。新たな分野に踏み込むのを恐れ、他社と同じことを考えていればじり貧だ。今の我々の業界はそんな感じがしないでもない。人生も企業も、時には積極的に進んで引き金を引く必要があるのではないか」と語った。
総会は藤原会長を議長に審議を行い、平成25年度事業報告・会計報告、平成26年度事業計画案・収支予算案などをいずれも原案通り承認。新任の世話人として山下淳氏(ヤマテル)を選出し、新会員の汐文社とブティック社を紹介した。
来賓としてあいさつを行った日販の平林彰社長は、同社が推進する雑誌の拡販と「Base+1」の施策について説明。雑誌の拡販では、今秋実施した「秋マガ!」のフェア企画展開や、売行き良好銘柄の売り伸ばしについて説明。売行き良好銘柄は、エンド平台1等地での集中展開や「お薦めPOP」によるアピール、併売誌の並列展開など、店頭での実施事例を紹介し、「冬マガ!」でエンド平台の鮮度管理とカテゴリ陳列の方法を提案したいと述べた。
「Base+1」に関しては、「五感に訴求するという、リアルの店にしかできないことで来店動機を増やし、集客力を高めていく。そのベースとなる雑誌・書籍に価値を付加していこうというのが『Base+1』の考え方だ。それが、販売機会の損失を防止する『attaplus!』や、定期誌取り置きサービス『Maga―STOCK』といった施策であり、文具、雑貨などの商品展開となる。いろいろなものを提案していきたい」と述べた。
総会に先立ち、第1部として商談会を開催。第2部として、直木賞作家の熊谷達也氏を講師に、「震災後の小説~被災地の書き手として」と題する講演会を行った。

中間決算は減収減益に/書店店頭の売上げ減が響く/日販

日販は11月28日、第67期中間決算(平成26年4月1日~9月30日)を発表。連結、単体とも減収減益となった。
日販グループ(連結子会社20社)の連結売上高は3165億2500万円で前年比3・9%減、129億4500万円の減収となった。消費税増税や市況の停滞などで消費支出が減少したことにより、書店店頭の売上が伸び悩んだことが影響した。
売上高の減少と、燃料高騰による荷造運送費の値上げ等の影響が大きく、一般管理費を抑制したものの、営業利益は13億1000万円(前年比51・6%減)、経常利益は17億3900万円(同42・4%減)で、投資有価証券評価損など特別損失1億3600万円等を加えた中間純利益は6億3900万円(同61・4%減)と、減収減益の決算になった。
単体の売上高は前年比130億3600万円減少して2602億9100万円(同4・8%減)。営業利益は同5億9300円減の6億1100万円、経常利益は同5億900万円減の10億3600万円で、中間純利益は同3億5400万円減の6億7200万円(同34・5%減)となった。
返品率は、書籍は前年比0・3ポイント増加して34・5%。雑誌は38・8%で同0・8ポイント改善した。開発商品は同1・4ポイント増の25・8%となり、合計では同0・3ポイント改善して36・4%となった。
商品別の売上概況は、雑誌は売上シェアが高い月刊誌の落込みが響き、少年コミック誌や女性誌など好調な銘柄もあったものの、全体では大幅な減収に。書籍は学参書や「アナと雪の女王」関連の児童書が堅調だったが、文庫は1点あたりの売上規模が大きく縮小、文芸書も既刊の落ち込みをカバーできず、大幅減となった。
開発商品は、文具パッケージ「Sta×2(スタスタ)」の浸透で、文具売上は前年比31・6%増。セルでは「アナと雪の女王」の売上が非常に好調だったが、レンタルの不振が大きく、グループ全体では微減にとどまった。コミックスは、メディア化作品や特装版商品が好調で書店店頭の売上は前年を上回ったが、コンビニの廉価版コミックが不振で、全体では同0・9%減となった。
記者会見で加藤哲朗専務は、4月以降の厳しい書店店頭状況を説明し、「まず、本の面白さを認識して購入してもらうことが大事。その上で、本以外の商材でいかに今の時代を生き抜くかを提案していきたい」と語った。