全国書店新聞
             

平成20年11月21日号

京都府書店商業組合が京都市から表彰状

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は10月15日、京都会館で挙行された京都市自治百十周年記念式典で門川大作京都市長から表彰を受けた。京都市が自治百十周年を迎えるにあたり、京都市発展の歴史に功績を残した団体および個人を表彰したもの。京都組合は積極的な読書推進活動などが評価された。また、中村理事長は個人としても表彰を受けた。
京都組合は近年では京都市内の市立小中高校あわせて三百校全校に教育システムの情報BOXを導入し、学校図書館電算化の支援に大きく貢献したことをはじめ、京都市「子ども読書の日」記念事業の運営に協力したなどの貢献が認められ、平成17年に京都市教育委員会の表彰も受けている。(澤田直哉広報委員)

包括指定の基準強化/大阪府健全育成条例改定へ

大阪府書店商業組合は11月8日、組合会議室で理事会を開催。庶務報告では、来年の大阪出版業界新年互礼会は1月9日午後3時からホテル・グランヴィア大阪で行い、組合員が多数参加できるよう組合員の参加費は無料にしたいと提案があり、承認された。
【読書推進】
08年度前期読書ノート読了達成者は11月11日のアサヒコム上に61校328名、朝日新聞紙上に73校335名を掲載。「本の帯創作コンクール」は約1万3千点の応募から入賞79点が選定され、10月21日の朝日新聞に掲載された。発表展示会と表彰式は11月15日。
【出版販売倫理】
大阪府青少年健全育成条例改定案が12月9日から始まる府議会定例会に上程される。10月29日、大阪府生活文化部から山口宗久青少年課長、木村みどり主査が組合を訪れ、面屋理事長、戸和副理事長、野村出版販売倫理委員長らと懇談。
大阪府は女性向けコミック誌の性表現に著しく過激なものがあり、従来は有害図書類として個別指定してきたが、包括指定基準を強化して事態を改善したいという。基準は総頁数の5分の1超又は30頁以上から、総頁数の10分の1超又は10頁以上となる。組合は「有害と判断するのは個人差がある。拡大解釈のおそれがある」「一般週刊誌まで区分陳列しなければならず、売れなくなる」「違反が発見されると即処分されるのでは」等の疑問点を質した。大阪府は「意見は一応聞きおくが、改定の方針に変わりは無い。処罰は口頭による警告、文書警告等3回の警告の後、罰金等の刑罰」ということだった。
【経営活性化】
雑誌愛読月間定期購読キャンペーンの予約数は前年より5576部多い1万8657部で過去最高。上位30店に大阪組合の書店がベスト4を含め11店入った。
【再販・公取協】
再販制度弾力運用レポートに関連して「書店に在庫があるものが自由価格本として出回り一物二価となっている。在庫を引き取るという告知が必要だ」という意見が出た。
【出店問題・組織強化】
11月1日にコーナン箕面萱野店の出店説明会が開催され、11日にはコーナン南津守店の説明会が開催される。(中島俊彦広報委員)

高齢者対象にも拡がり/3団体、1個人に読書推進賞

第38回野間読書推進賞の贈呈式が11月7日、新宿区の日本出版クラブ会館で行われ、北海道・十勝子どもの本連絡会、山梨県・図書館朗読ボランティア千の風、熊本県・みすみ絵本サークルの3団体と、個人の部で石川県・道勝美さんが受賞。賞状と賞牌、副賞の賞金が贈られた。読書推進運動協議会野間佐和子会長は「2000年の子ども読書年以後、行政による読書環境整備とボランティアによる活発な取り組みが進んで心強く思っております。昨年10月には文字・活字文化推進機構が設立され、今年6月には2010年を国民読書年にという国会決議が行われました。こうした読書推進運動の大きな流れをますます発展させていくよう努力していきたいと思います。今後とも一層のお力添えをお願いします」とあいさつ。
選考経過を報告した栗原均副会長は「これまでは子どもを対象にした読書推進の取り組みが中心だったが、子どもの読書に対する取り組みは国をあげて盛んになってきた。今回は特別養護老人ホーム、デイサー
ビスなどの施設への働きかけなど、お年寄りへの配慮が増えてきたのが特色。地域の昔話への関心も高まってきたこと、初めは少人数のグループの熱意が地域全体の熱意を呼び起こしたなどが目についた」として、各受賞者の受賞理由を説明した。
栗原副会長から各受賞者に読書推進賞が贈呈されたあと、文部科学省生涯学習政策局森晃憲社会教育課長が祝辞。「読書は人生を豊かにし、子どもの感性と知性を磨く。今年3月には子どもの読書推進に関する基本計画を閣議決定し、6月には2010年の国民読書年を国会決議した。文部科学省としても図書館法の改正など、読書活動推進に力を入れていく」とあいさつした。
受賞者あいさつでは「103歳の高齢者に『万葉集』の朗読を続けている。今後もお年寄りが輝く時を持てるように続けていく」(千の風・笠井京子代表)、「20年前に活動を始めて、地域の子供たちから育児サークル、障害児、高齢者へと交流を拡大していった。気持ちを新たに活動を続けたい」(みすみ絵本サークル・橋本由子代表)などと謝辞を述べた。

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

当紙でも報じられましたが、10月22日に神戸一の老舗「宝文館」の柏秀樹さんが逝去されました。ご訪問時や電話で挨拶をしただけですが、優しいお声が印象に残っています。本屋の歴史を伺いたい方でした。ご冥福をお祈りいたします。
例年のことながら、10月末になると元町商店街に流れる音楽はクリスマスソングです。当店はBGMをかけていない静かな静かな本屋です。お客の賑わいもない、と言えば身も蓋もないのですが。で、店外のスピーカーから侵入してくるメロディを、私、童心に帰り喜んで口ずさんでしまいます。思い起こせば、カトリック教会の付属幼稚園でした。園児はほとんどが下町の悪ガキです。家の仏壇に手を合わせるのは、お供え物のお下がりをもらう時だけでございます。それが幼稚園では「てんにましますわれらのちちよ、アーメン」とお祈りするのですから、親も含めて天真爛漫・融通無碍そのものです。お寺の子もいました。宗教的対立で戦争など考えもつきません。洟垂れガキ共でも、年に数回の儀式にしか入れない教会では、荘厳な雰囲気の中、おとなしく神の世界を感じとるのでした。
そういうお育ちゆえ、クリスマスをドンチャン騒ぎにする輩の神経が理解できませぬ。さは申せ、音楽に心ウキウキ、身は踊り、バイト君に感づかれて、「楽しそうですね」という話になって、いつもの漫才が……。全国の真面目な書店の皆さんは、毎回きっとお怒りと共にお嘆きでしょう。ご心配なく、私がレジで歌って踊っているのは1日のうちほんの短い時間です。「それならもっとマジメにせい」とのご意見、ごもっともです。大丈夫です。笑顔で楽しくやっております。
景気悪い、売り上げアカンとばかりも言ってはおれず、11月のイベントは多種多様です。なかでも、郷土出版「のじぎく文庫」(神戸新聞総合出版センター)創刊50周年の講演会と全230点展示・販売は、地元書店としてうれしいものです。郷土史蒐集で定評のある古書店「ロードス書房」のご協力を得ました。恒例の芦屋での古書即売会にも同書房のスペースに参加します。テーマは「モダニズムと戦争」、終了後は店頭にて展開いたします。古書と言えば、年内に「古書市」はあるでしょうか。タイガース「逸優勝」でフヌケ状態店長の〝やる気〟は甦るのでしょうか。「野獣系古本者」復活を待つのみです。
10月「読書」フェアで昔のカバー(書皮)のコピーを展示いたしました。黄色地に帆船と本読む人のイラスト、室生犀星の詩「本」です(写真)。古老によると、1950年代から80年まで使用していたとか。撮影して愛好家に送信してくれた人がおられます。

のぼりで読書週間をPR/沖縄組合

沖縄県書店商業組合(小橋川篤夫理事長)は、読書週間をアピールする「のぼり」を作成し、期間中に書店店頭に掲げて「本を読もう」と読者に呼びかけた。
このキャンペーンは、8月の増売委員会で、秋の読書週間をアピールする企画について話し合い、実施を決めたもの。今回は、読書週間を認知してもらうためののぼりを店頭に設置し、読者に広く訴求することにした。沖縄組合ではのぼり142枚を作成して組合書店に配布した。〔写真は沖縄教販豊見城店に立てられたのぼり〕
(安仁屋博一広報委員)

故人を偲び物故者法要/京都組合図書まつり

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は、11月7日に京都市中京区の書店会館にて通常理事会を開催した。
まず理事会に先立ち、同月4日に享年74歳で急逝された故・北野一男氏(京都市右京区・花園商事㈱)に対し、出席者より黙祷をささげた。北野氏は京都組合で長年にわたり理事を歴任するなかで、京都組合の発展に尽力し、多大な功績を残した。現在は監事の任にあった。
理事会終了後は「図書まつり」として物故者法要を営んだ。これは、書店業に従事する日々の鋭意努力と貢献により京都の出版業界発展の歴史を築き担った故人に対し、敬意を払い感謝を表する目的で行っているもの。京都組合では、組合名義人を対象としたこの法要を、長年にわたり慣例としている。本年も京都市中京区の善導寺にて午後4時30分から、京都組合の理事・監事と主要取次から代表者ら、あわせて25名が参列。この一年に逝去された故人の法要がしめやかに執り行われた。本年の物故者は故・吉見脩三氏(京都府京丹後市・マルヨシ書店)享年90歳。
法要後は会場を料亭に移し、物故者のご子息の吉見敏明氏が席上であいさつ。「京都府北部の地に昭和24年に創業して以来、およそ60年にわたり、書店業に従事してきた父だが、その若い頃にはこの京都市にも数年住んだことがあった。この思い出の地で法要してもらったことを、大変喜んでいると思う」と感謝の気持ちを述べた。出席者は故人の業績を称え哀悼の意を表するとともに、思い出話に故人を偲んだ。
(澤田直哉広報委員)

和泉徹郎理事長を再選/秋田総会

秋田県書店商業組合(和泉徹郎理事長)は11月11日午後3時から岩手県境に位置する秋田県仙北市田沢湖「プラザホテル山麓荘」で平成19年度第22回通常総会を開き、組合員26名(委任状含む)が出席した。
総会は、高堂晃治専務理事の司会で始まり、和泉理事長があいさつ。組合加入の直接メリットを積極的に追及するとともに、現況正会員の退会があるなかで、新たに設けた賛助会員の組合への加入募集を含め、会員のさらなる協力と団結を求めた。
続いて和泉理事長を議長に議案審議を行ない、第1号議案の平成19年度事業報告、収支決算報告から、第8号議案の定款変更の件まで議案通り承認した。また第9号議案の役員改選で、和泉理事長を再選した。
なお、10月23日に日書連移動理事会を秋田組合が補助金を受けて設営、その収支報告と無事終了を確認した。さらに来年7月開催の東北六県書店ブロック大会は秋田組合が主管を引き受けるため、総力を上げる旨事業計画で決議した。
休憩の後、来賓の中央会から「経済産業省委託地域力連携拠点事業―あなたの経営課題を解決します!地域力連携拠点に相談いただければ、いろいろなことが実現できます」の事例説明と講話があり、続いて版元、トーハン、日販による説明が行なわれた。
総会終了後、出版社、取次など業界関係者を交えて懇親会を行なった。
(木村和一広報委員)▽理事長=和泉徹郎(金喜書店)
▽副理事長=木村和一(榊田分店)平野史郎(ひらのや書店)加賀谷龍二(加賀谷書店)
▽専務理事=高堂晃治(高堂書店)

「声」/無駄な送品が中小書店を圧迫/長岡市・笠原書店・笠原昭二

近頃における取次の強気の裏には、中小小売店切捨てのたくらみがあるとしか思えない。
店には不向きの本を送ってくるし、月刊誌は多すぎるので定期改正をしても一向に直らない。それで月末には100%の支払いを要求する。返品すればいいとはいうものの、返品の運賃で少々売れた分のマージンも飛んでしまう始末だ。それで駄目なら送品停止、こんな業界があるのだろうか。
近頃は今まで書籍なんか来なかったのに送品されてくる。これって押し売りではないだろうか。地方文化の拠点と思って週刊誌1冊でも配達しているのに、このざまの実態では、遅かれ早かれ閉店に追い込まれるのは明白である。大取次のリストラに立ち向かうにはどうしたらよいか、地方の小売店の戦略を聞かせてほしい。

紙とデジタルの融合/アジア太平洋デジタル雑誌国際会議

国際雑誌連合(FIPP)、日本雑誌協会共催の「第1回アジア太平洋デジタル雑誌国際会議」が11月13日、14日の両日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開かれ、世界の雑誌関係者総勢528名(国内384名、海外16カ国144名)が参加。「紙とデジタルの融合」をテーマに、世界の出版界が直面しているデジタル・ネットワーク社会における出版事業のあり方や雑誌の将来をめぐって、さまざまなディスカッション、講演が行われた。
〔かつてない変化チャンスに/雑誌出版産業の潜在力活用を〕
同会議は13日午前8時45分に始まり、主催者を代表して雑協の村松邦彦理事長が開会あいさつ。「この大会はアジアで初めての開催。世界の雑誌に携わる皆様が一堂に会し、雑誌のネット社会への融合に対して現状を報告、情報を共有することは大変意義深い。IT技術は急速な革新の途上にあり、これから大きな変化の時代が到来する。グーテンベルク以来のことか、それ以上かもしれない。雑誌出版は100年以上の歴史を持ち、独自の文化産業を形成してきた。これまでに培った編集力はじめ雑誌出版の潜在力は必ず活かすことができる。かつてない変化をチャンスに変えたい」と話した。
FIPPのドナルド・D・カマーフェルド会長は「雑誌業界は現在、デジタルプラットフォームと紙との融合に直面している。これは課題だがチャンスでもある。今回の会議では世界各国から業界のリーダーと専門家を招聘している。デジタル出版の成功事例を可能にした戦略について知識や経験を共有したい」とあいさつした。

〔Eコマースで収益構造転換/雑誌出版社のデジタル戦略〕
13日午前に行われたディスカッション「雑誌出版社のデジタル戦略経営の視点」では、野間省伸(講談社副社長)、ジョン・ウー・キル(韓国、中央m&b社長兼CEO)、ジョン・S・ツィーザー(アメリカ、メレディス社CDO)の3氏がパネラーをつとめ、激変するメディア環境をチャンスに変える経営戦略、いかにデジタルと協調していくかについてトーク・セッションを行った。
この中で野間副社長は、インターネットおよびモバイル・メディアの普及に歯止めがかからず、日本の雑誌業界は販売と広告という2つの収入に依存してきた従来のビジネスモデルから新たしいビジネスモデルへの転換を迫られているとの認識を示し、女性ファッション誌『ViVi』のウェブサイトを例にあげて、雑誌のブランド価値を向上させながら新たな収益を獲得するための講談社の戦略を説明した。
野間副社長は「00年、雑誌と連動した形でサイトを立ち上げた。雑誌と読者とを結ぶコミュニティ要素と雑誌の宣伝要素が中心で、まだ事業を手掛ける段階ではなかった。ブランド・ビジネスをスタートしたのは04年、『ViViコーディネート・コレクション』という、本誌と連動したEコマース・サイトを始めた。読者が本誌を見て手に入れたいと思った靴やバッグなどの商品を場所、時間に関係なく提供できるサービスを提供している。現在は読者のネット利用状況を考慮してモバイルサイトを立ち上げ、若者ユーザーからの商品購入にもつながって急成長している。08年度、ウェブとモバイルを合わせたViVi関連コマースの商品販売総額は11億円となり、事業を開始した04年の130倍、前年比で倍以上の伸びとなっている」と述べた。そして、ウェブとモバイルの役割について「紙媒体に代わるコンテンツ配信メディアとしてだけでなく、紙媒体では不可能な読者との双方向性を利用した新しいツールとして利用している。今後は読者同士をつないだり、読者からの情報発信に利用したい」として、このことが「紙とデジタルの融合」につながると指摘した。
このほかViVi関連事業としてイベント、クレジットカード、海外ライセンスなどに触れ、「今後は従来の雑誌販売収入、広告収入に加えて第3の収入を伸ばし、雑誌の媒体価値、ブランド価値の向上につなげたい。また、ViViで展開しているブランド事業を他誌にも広げる」と、デジタル時代の雑誌の成長戦略を語った。
〔ネットコンテンツを味方に/日本発雑誌とデジタルの融合〕
14日午後に行われた「雑誌とデジタルの融合日本からの発信」では、角川グループホールディングスの角川歴彦会長兼CEO、エンターブレインの浜村弘一社長が講演した。
角川会長はテレビ放送がデジタルに完全移行する2011年には、書籍・雑誌や映画ソフト、音楽ソフト、ゲームソフトなどもデジタル化に向かわざるを得ないと指摘。「次世代ネットワークのイメージは大容量の高速通信網という『土管』。この土管の中をすべてのデジタル化されたコンテンツが一体となって流れ、利用者のパソコン、携帯電話、ゲーム機などの端末に届く環境が生まれるのではないか」と予測した。出版産業の現状については「出版界は今、成長の限界という大きな曲がり角に立たされている。戦後60年におよぶ出版体制が制度疲労を起こしていることを多くの人たちが感じている」として、「新たな成長モデルを創出しなければ出版界に明日はない」と危機感を示した。具体的には書籍・雑誌コンテンツのデジタル化とデータベース化を進め、あわせて顧客データベースの構築も必要とした。
最後に「出版業界が大同団結して新しいインターネット向けのプラットフォームを作る必要がある。競争は編集力、マーケティング力、営業力ですればいい。変化に対応するための時間は残り少ない」と訴えた。続いてエンターブレイン・浜村社長が具体的施策を説明。「インターネットの影響で情報誌の部数は低迷しているが、インターネットを敵視しているだけでは部数がさらに下がるだけ。逆に味方につけることにより、雑誌の媒体価値を上げ、新たな収益をあげることができる。紙媒体が次世代に生き残る道はそこにある」と、発想の転換を力説した。
その鍵となるのは動画コンテンツの活用。「当社ではゲーム雑誌を数誌発行しているが、ゲームの攻略記事を掲載するだけでは他誌との差別化が図れない。そこで2次元バーコードとURLを付けて、ネットに飛んで動画を見ることができるようにしている。さらに、ゲームプレイの動画を見て実際にゲームが欲しくなったユーザーのために、ワンクリックでECサイトに飛んで購入することができるサービスも行っている」と述べた。
また、ゲーム雑誌の広告について「タイアップ広告はどの雑誌にも載っているが、そこにURL、二次元バーコードを載せることで動画投稿サイトYouTubeに飛んで動画を見ることができるようにしている。YouTubeというと著作物が勝手にアップロードされているので出版社の敵と考えている人が多いが、逆に利用してメリットを享受したい。YouTubeを使うメリットは動画サーバーのコストを下げることができること。また、YouTubeに動画をアップロードすれば、雑誌を通じて見に来る人のほか、YouTube独自検索で見に来る人もいる。つまり広告をよりたくさんの人に見てもらえるということで、広告効果を上げ媒体価値を高めることができる」として、YouTubeは利用の仕方次第で敵にも味方にもなるとの考えを示した。

移転

◇草思社
11月17日より左記住所に移転、営業開始した。
〒170―0002豊島区巣鴨4―7ー5営業部℡03―3576―1002fax03―3576―2025

新人物往来社が中経出版に営業譲渡

中経出版(杉本惇社長)と新人物往来社(管春貴社長)は11月17日、千代田区麹町の中経出版で記者発表を行い、新人物往来社の出版部門を中経出版に営業権譲渡することで合意したと発表した。
11月26日以降、新人物往来社の出版事業は社名、定期刊行物、既刊書、店頭在庫のすべてを中経出版の関連会社として継承する。また、新人物往来社の姉妹会社、荒地出版社の営業権も同時に譲渡された。
新人物往来社の新しい役員構成は代表取締役会長に中経出版杉本社長、副会長に中経出版安部毅一副社長、社長に新人物往来社相談役の大出俊幸氏、専務取締役に中経出版飯田日出男取締役が就任。資本金は2千万円、本社は千代田区麹町、営業所は神田錦町に置かれる。
記者会見で新人物往来社管社長は「先代社長の父から40年前に受け継いだが、清涼飲料の仕事も手掛けており、出版のマネジメントは弱かった。中経出版が歴史コンテンツに興味があるということで、話し合って出版事業を継承してもらうことになった」と営業権譲渡に至る経緯を説明。中経出版杉本社長は新人物往来社について「コンテンツはよいものを持っていたが、ロマンと算盤のバランスで中経の営業マインドを注入していきたい」と述べた。
今後、新人物往来社の豊富な歴史コンテンツを生かした文庫発刊、モバイルへのコンテンツ提供や「歴史文学賞」の再開、流通・在庫合理化などの施策を進め、初年度10億円の販売を目指す方針。

過去最高の応募者/電撃大賞小説部門

第15回電撃大賞の贈呈式と祝賀会が11月6日午後4時から元赤坂の明治記念館で行われた。
応募総数は小説部門3541本、イラスト部門538本と過去最高の応募数で電撃小説大賞に川原礫氏の『アクセル・ワールド』、電撃イラスト大賞にゲま氏の『シャープ・エッジ』が選ばれたのをはじめ、金賞、銀賞、選考委員奨励賞、電撃文庫MAGAZINE賞の各賞が贈られた。
表彰式であいさつしたアスキー・メディアワークス高野潔社長は「小説部門はここ数年3千本程度の応募だったが、一気に3500本を超え、電撃文庫に対する期待と責任を感じる。電撃文庫作品はアニメ、コミック、ゲームなどコンテンツビジネスの有力な供給源になっている。今年も『図書館戦争』『アリソンとリリア』『我が家のお稲荷さま』とアニメ化され、好評だ。ライトノベルナンバーワンの地位に安住することなく、たゆまぬ努力を続けていきたい」と述べた。

出版業界の変革呼びかけ/東北日販会総会で藤原会長

第4回東北日販会総会が11月13日、松島「一の坊」で開かれ、東北6県の書店86名と出版社・輸送など197名が出席した。
総会の冒頭、藤原会長は「そろそろ今年の10大ニュースが話題になるが、アメリカのサブプライム・ローンに端を発した金融危機、オバマ大統領は必ず入るだろう。インドのガンジーが『人間の7つの大罪』として①労働なき富、②品性なき知識、③道徳なき経済活動、④人間性なき科学、⑤良心なき快楽、⑥犠牲なき礼拝、⑦原則なき政治という項目をあげている。最初の3つがサブ・プライムの問題だ。出版界もこの10年マイナス成長が続き、閉塞感と活気のなさがみてとれる。来週には小学館からRFIDを装着した本が発売される。知恵を集め、よくしていくのが我々に課された使命。今こそチェンジ、イエス・ウィ・キャン」とあいさつした。
藤原会長を議長に平成19年度事業計画・決算、20年度事業計画・予算案を承認したあと、日販古屋社長が祝辞。
古屋社長は王子NEXT、雑誌Z―トップ、honyaclubなどの諸施策を説明した後、日販の9月中間決算について「日販単体では0・7%の減収。返品率は書籍が改善したが、雑誌が悪くトータルで前年同期比0・5%上がった。最終利益はおそらく減益になる。日教販との業務提携だが、業界では大阪屋と栗田が提携を発表し、出版共同流通でも取次6社が共同で返品処理をしている。今後は送品も考えていく必要がある」などと、日販の施策を説明した。
総会に先立って、午後1時から3時まで商談会、休憩をはさんで研修会「王子NEXTのご紹介」が行われた。
第4部懇親会であいさつした小学館大住常務は「不況で靴が売れなければ、靴クリームが売れる。逆風を
チャンスにするのが腕の見せどころ。責任販売制など一緒に儲ける仕組みを考えていこう」と呼び掛けた。

中公新書2千点でフェア/会員販売シェア70・2%に/読売中公会

第24回書店読売中公会総会が11月7日午後4時よりパレスホテルで開かれ、会員98名が出席した。
総会の冒頭、書店読売中公会亀井忠雄会長は「新・読売中公会に変わってから6年。両社が一つになって出版事業を進める風土ができてきた。出版業界は需要が伸び悩んでいるが、中公新社の新書・文庫の伸びは著しく、上半期は13%伸びた。会員の売上シェアは5年前に57~58%だったが、今や70・2%のシェアになった」とあいさつ。
続いて読売新聞東京本社滝鼻卓雄会長は「1943年から65年続いた『読売ウィークリー』だが、新聞社の雑誌として歴史的な役割を終えた。週刊誌マーケット復活は厳しい状況で、12月1日号でひとまず休刊する。読売新聞はここ数年、活字文化復権の取り組みを続けてきた。アメリカ大統領選挙でも全米各地で新聞が増刷された。活字の潜在的需要はある。書店と一体になり出版活動を盛り上げていきたい」と述べた。
中央公論新社浅海保社長は今年3月の同社決算に触れ、07年度売上高は2・6%減の74億5千万円、営業利益4億5千万円、当期利益2億5千万円と堅調だった。今年上半期は若干の増収増益だが、市場が冷え切っている下期は厳しいと予測している。中公新書は来年刊行2千点を迎える。正統的新書として名著にスポットを当て、読者に紹介していきたい」と述べた。
このあと、読売新聞社飯山雅史調査研究本部管理部長が「読売ウィークリー」「YOMIURIPC」増売コンクールについて、中公新社森本広美販促部長が「私が選ぶ中公新書100冊」「全集哲学の歴史」などについて活動報告。新企画では中公新社吉村治営業局長が「私と中公新書フェア」について説明した。
最後に書店読売中公会田村定良販売委員長が「中公新書2000点フェアは900セット用意している。ぜひ成果をあげてほしい」と呼びかけた。
第2部では読売新聞グループ本社渡邉恒雄会長が記念講演を行った。

本屋のうちそと

先月末の夕刻、去年の夏に本屋を廃業した友人が訪ねてきた。近況を訊けば、嫁いだ娘さんに二人目のお子さんが近々産まれるとの由。仕事は朝2時に起床して、5時まで朝刊の配達、仮眠ののち昼から流通倉庫で働いていて、自転車で通っているとのこと。
廃業までにいろいろ経営相談に乗ってきたので元気にしているので安堵し、当方は今年5月末でバイト君が辞めたこと、夏以降の景気落ち込みに加えて、10月の金融危機で経営が極めて厳しいことなどを話し合って別れた。
翌日、また彼がやってきて、倉庫の仕事が引けた後、帰り道の途中の当店で1、2時間働かしてもらえないかとの相談。一瞬熟考の後、現在の時給を質すと950円だという。バイト君の時給が930円だったから、返品業務だったらとフルタイムの時間労働ではなく、業務請負の時間チャージ950円で決した。
長年友人として、また書店組合活動で役員同士としての間柄を、使用者・被使用者の関係に置き換えることは忍びない。また源泉徴収や年末調整などの労務手続きの煩雑さを加えることはしたくない。例えれば、便利屋さんとして役務の提供、役務の購入の商人同士の関係でいたいのが本旨なのだ。副産物として消費税が発生するため、消費税分が控除される結果となる。
年末にかけて、売り上げ不振の中、資金繰りや体力を考慮して正しい判断であったのか自問している。(井蛙堂)