全国書店新聞
             

平成23年7月1日号

主な報告事項

〔組織委員会〕
平成23年4月1日現在の日書連傘下組合員数は5000店の大台を割り込み、前年より241店(4・6%)減の4946店。昭和61年の1万2953店をピークに25年連続減少となった。今年度は全国共通の組合加入メリットとして「ためほんくん」「20歳の20冊」などを活用し、組合加入促進を図りたいとの方針を中山委員長が示した。
〔指導教育委員会〕
万引問題では、被害に苦しむ出版、音楽、映像、ゲームソフトの小売業4団体と日本出版インフラセンターが昨年7月23日、「メディアコンテンツストア万引対策協議会」を設立し、結束して万引き撲滅に取り組んだ。具体的には古物営業法施行規則の改正に取り組み、従来義務付けられていなかった1万円未満買い取り時の本人確認、帳簿記載を値段に関わらず義務付けるよう警察庁に働きかけ、その結果、今年4月1日より改正法が施行されたと鈴木委員長が報告した。
出版倫理問題では、東京都青少年健全育成条例改正案が昨年12月15日、都議会本会議で賛成多数で可決された。これに対して日書連も構成団体として名を連ねる出版倫理協議会は抗議声明を発表し、表現の自由など出版業界の主張を訴えた。
また、「電子書籍元年」と言われた昨年、書店が排除されることのないように勉強会を企画。昨年11月18日、文化通信社取締役編集長の星野渉氏を講師に招き「電子書籍ブームと出版業界利害調整と準備の年」を開催した。
〔広報委員会〕
全国書店新聞11月15日号に面屋龍延委員長による講談社・野間省伸副社長(当時)へのインタビュー記事「中小書店はどのようにして電子書籍と関われるか」を掲載した。面屋委員長は「電子書籍の動向を引き続き報道していくほか、東日本大震災で被災した書店を支援するための紙面作りを行う。店頭を支える若手および女性書店人の声も紹介する」との考えを示した。
また、長年にわたり広報委員会が発行してきた『全国書店名簿』『ブロック版書店名簿』の発行を平成23年度から取り止めた。
また、日書連ホームページ「本屋さんへ行こう」の刷新を図るため、広報委員会の傘下に日書連ホームページ部会を設置した。
〔流通改善委員会〕
雑誌発売日励行問題では、全国同時発売を目指して北海道・九州の3日目地区から2日地区への改善、年末年始とゴールデンウィークの合併号の廃止とレギュラー発売の励行を本部委員会に求めていく考えを藤原委員長が示した。。
出版社主導の責任販売企画が相次いでいることについては、書店が求める条件や仕組みの研究を開始したと報告した。
〔取引改善委員会〕
「送品・返品同日精算」の実施要請に対して、日販は3月11日付文書で「4月中締分より返品入帳締切日を締日を含む6営業日前から5営業日前に1日短縮する」、トーハンは3月14日付文書で「入帳締切日の基準日を現行の期末5営業日前処理分から期末4営業日前処理分に変更する。適用は4月期入帳分とする方向」との文書を日書連に提出した。これについて柴﨑委員長は「同日精算の回答になっていない」として、「返品入帳改善」ではなく「送品・返品同日精算」が目標であることを取次側に改めて通告し、引き続き早期実現に向けて働きかけを行っていく方針を示した。
〔情報化推進委員会〕
店頭コミック試し読みシステム「ためほんくん」は今年1月から本稼働。3月までの導入書店は約190店、導入台数は約220台に達した。今後PR活動を強化して端末導入書店数の増加を図る。
平成21年度の全国中小企業団体中央会補助金事業の交付金を受けて完成した図書館向けネット選書システム「選書ツール」は、発注データ送信対応について検討を行っている。また「日書連MARC」のユーザー数は3500校に達した。平成22年度の経済産業省の書籍等デジタル化推進事業に日本出版インフラセンターが代表提案して採択された「フューチャー・ブックストア・フォーラム」については、共同提案者の日書連もワーキンググループで検討や実証に参加すると井門委員長が報告した。
〔再販研究委員会〕
昨年12月に公取委の松山隆英事務総長、今年1月に同・竹島一彦委員長が相次いで「公取委として当面再販問題を取り上げる予定はない」と明言した。岡嶋委員長は「再販は読者にとって有益。全国同一価格は世界に誇るべきこと。日書連は再販護持の立場で運動してきた」と述べ、問題点として「弾力化6項目に入っている時限再販・部分再販が謝恩価格本程度しか行われず、硬直的な運用になっている」ことをあげた。
〔読書推進委員会〕
「2010年サン・ジョルディの日PR企画推進費」は「国民読書年推進企画」として募集。独自企画を提案した27組合に総額998万円の補助金を支給したと西村委員長が報告した。今年は17組合に総額300万円を拠出する。
また、出版文化産業振興財団との協賛事業「20歳の20冊」を国民読書年を記念して実施した。地元書店が成人式に新成人へ本を贈る運動で、28地区の地元書店が新成人3548人に2860冊を納品した。
〔増売委員会〕
児童書増売運動「心にのこる子どもの本セール」の出品条件を昨秋以降、6ヵ月長期委託から7ヵ月長期委託に変更した。これについて舩坂委員長は「秋のセール商品返品時期の4月中旬から夏休みセール商品入荷時期の6月中旬までの約2ヵ月間の欠品状態を解消。年間を通して販売することが可能になった」として、成果を強調した。
昨年の「春の書店くじ」は500万枚、秋の読書週間「書店くじ」は400万枚を発行。今回も組合活動活性化の一環として組合加盟全店に無料の「書店くじセット」(くじ50枚、ポスター1枚)1組を送った。
〔共同購買・福利厚生委員会〕
特製手帳「ポケッター」は今年度7万2千部程度の製作斡旋を予定。中山委員長は「昨年に続き、今年も完売を目指す」とした。
〔消費税問題特別委員会〕
昨年9月定例理事会に、勝間和代氏のブレーンの一人として活躍する経済評論家・上念司氏を講師に招き、講演会「増税原理主義者の正体~消費税増税で国が滅ぶ」を開催。また、書協、雑協、取協、日書連の出版4団体は昨年7月27日付で経済産業省、今年2月1日付で政府税制調査会に対して、出版物の消費税率を軽減税率または据え置きとすることを求める要望書を提出した。面屋委員長は「心の糧である読書に課税するなという日書連の姿勢に変化はない」と強調した。
〔財産運用特別委員会〕
日書連共済会残余財産の有効活用については各県組合からの提案を検討してきたが、不動産購入については休眠にすることにしたと木野村委員長が報告した。
〔出版販売年末懇親会実行委員会〕
本年度も各種委員会当日の12月14日午後6時から帝国ホテルで開催すると木野村委員長が報告した。
〔地震対策本部〕
東日本大震災に対する日書連の取り組みを大橋本部長が説明した。
日書連は地震発生当日に対策本部を設置。文化産業信用組合とみずほ銀行に被災書店救援のための義援金口座を設け、被災が大きい書店から一律5万円の送金を開始した。また、義援金とは別に、激甚被災地の岩手、宮城、福島の3組合に組合員数×1万円(合計259万円)の災害見舞金を送った。集まった義援金は5月30日現在、259件6679万2885円に達している。
書協、雑協、日本出版クラブによる「〈大震災〉出版対策本部」に設けられた、出版業界関連団体を横断的に統括する連絡協議会に日書連も参加し、被災地への図書寄贈、震災関連情報の一元化などの取り組みに全面協力している。

書店再生へ議論進める/大橋信夫会長を再選/日書連通常総会

日書連は6月23日午後1時半から東京・千代田区の書店会館で第23回通常総会を開き、書店再生、取引改善、読書推進など今年度の取り組みを決めた。任期満了に伴う役員改選では理事54名を承認したあと、初理事会で会長以下の三役を決定。大橋信夫会長(東京)を再選し、舩坂良雄氏(東京)を新副会長に選出した。3期目を迎える大橋会長は「書店業界を再生したい」と決意を表明した。
通常総会は佐藤光弘理事(愛知)の司会、鈴木喜重副会長(千葉)の開会の辞で始まり、大橋会長があいさつ。「再販は大正時代の導入から100年以上たち、制度疲労を起こしている部分もある」と指摘。「再販堅持が前提」とした上で、「値付を出版社、商品構成を取次まかせにしてきたことが現在の書店の弱さにつながっている」として、再販は今のままでいいのかを含め、書店が再生するため聖域を設けず議論していく必要があるとの考えを示した。
議案審議は大隈劭(大分)、山本裕一(神奈川)両理事を正副議長に選び、第1号議案の平成22年度事業報告と第3号議案の平成23年度事業計画案を各委員長が一括して報告と提案を行い、質疑応答のあと、拍手で承認した。第2号議案の平成22年度決算報告と第4号議案の平成23年度予算案は大橋会長が説明し、監査報告のあと、原案通り承認された。第5号議案の平成23年度借入金最高限度額決定に関する件は1億円とすることを承認した。
第6号議案の任期満了に伴う役員改選では、鶴谷祿郎(青森)、杉山和雄(栃木)、筒井正博(神奈川)、井上喜之(兵庫)、大川哲夫(事務局)の5氏を選考委員に指名推薦制で理事54名、監事3名を選出。これを承認したあと、初理事会で大橋会長を再選した。副会長は鈴木喜重(千葉)、藤原直(宮城)、中山寿賀雄(長崎)、面屋龍延(大阪)、柴﨑繁(東京)、木野村祐助(岐阜)、西村俊男(新潟)の7氏が留任。新しく舩坂良雄氏(東京)が副会長に選ばれた。大川哲夫専務理事は再任された。
再選された大橋会長は「舩坂新副会長が担当する書店再生委員会が中心となって、書店が生き残るためあらゆる手段を検討する」と所信を語った。
委員会編成は、初理事会で大橋会長の私案が示され、同案を了承した。
主なポイントは①委員会数を常設委員会11・特別委員会3から常設委員会8・特別委員会2に集約する、②財産運用特別委員会を廃し、政策委員会の下に財産運用部会を置く、③組織委員会と共同購買・福利厚生委員会を一つにまとめ、組織委員会とする、④広報委員会と消費税問題特別委員会を一つにまとめ、広報委員会とする、⑤広報委員会の下に日書連ホームページ部会を置く、⑥流通改善委員会と情報化推進委員会を一つにまとめ、流通改善委員会とする、⑦流通改善委員会の下に図書館サポート部会、「ためほんくん」部会を置く、⑧再販研究委員会、増売委員会、書店再生委員会を一つにまとめ、書店再生委員会とする――など。
第7号議案のその他に関する件では、専務理事並びに員外監事の役員報酬限度総額を1500万円とすることを承認した。
〔新副会長の略歴〕
舩坂良雄(ふなさか・よしお)氏
東京都渋谷区・大盛堂商事㈱大盛堂書店代表取締役社長。昭和24年1月22日生まれ、62歳。同42年駒沢大学中退。同年大盛堂書店入社、同58年代表取締役社長。平成7年東京都書店商業組合理事、同11年同組合副理事長、日書連常任委員。同21年日書連理事。

大橋会長の総会あいさつ

日書連傘下組合員数は最盛期の半数を切った。このままでは書店という「船」は沈んでしまう。
書店の棚を変えるためには、読者が何を望んでいるかを敏感に感じ取らねばならない。しかし、それができていない。顧客の顔を見ず、商品構成もわからないまま本を売っているのが、多くの書店の今日の姿ではないか。
いくらで本を売るかは本来は小売が考えるべきことだ。ところが、出版社が定価を決めている。商品構成も本来は小売が考えるべきだが、取次が見計らいで本を持ってくる。すべて他人に委ねられているのが問題と言いたい。何もしないでもやってこれてしまったところに、現在の書店の弱さがある。
大正時代に再販制度を導入した出版業界の先達は偉かった。当時、書店は無理な値引き競争を続けていた。それに歯止めをかけるため定価販売という縛りをかけたということだ。ところが100年以上経過して、再販は制度疲労を起こしている。日書連の歴代会長は再販堅持を謳ってきた。私も再販を正しいと思っている。しかし制度疲労を起こしている部分まで是認することはできない。
再販は大事なものという前提に立って、今のままでいいのかということを皆さんに問いたい。日書連の会長に再選されたら、今後この部分に踏み込んでいきたい。アンタッチャブルだった部分に手をつけていきたいと考えている。
日書連はこれから変わっていくということを念頭に置いて、本日の総会を進めていただきたい。

平成23年度日書連各種委員会

(◎は委員長、○は部会長)
〔常設委員会〕
◇政策=◎大橋信夫(東京)、鈴木喜重(千葉)、藤原直(宮城)、中山寿賀雄(長崎)、面屋龍延(大阪)、柴﨑繁(東京)、木野村祐助(岐阜)、西村俊男(新潟)、舩坂良雄(東京)、久住邦晴(北海道)、吉田達史(岡山)、平野惣吉(徳島)、大川哲夫(事務局)※財産運用部会=○木野村祐助、赤羽好三(長野)、中村晃造(京都)、西尾文士(香川)
◇組織=◎中山寿賀雄、五十嵐太右衞門(山形)、塚越賢次(茨城)、竹内靖博(群馬)、江﨑直利(静岡)、森井清城(石川)、平柿宗敏(滋賀)、戸和繁晴(大阪)、櫻井晃二(奈良)、井上喜之(兵庫)、西尾文士、長谷川澄男(福岡)、岩永藤房(佐賀)、田中隆次(宮崎)
◇指導教育=◎鈴木喜重、鶴谷祿郎(青森)、西猛(福島)、杉山和雄(栃木)、小泉忠男(東京)、岡森泰造(三重)、丸田茂(富山)、安部悟(福井)、田江泰彦(鳥取)、山本秀明(広島)、西尾文士、五藤栄一郎(高知)、山口尚之(福岡)、長﨑晴作(熊本)、楠田哲久(鹿児島)
◇広報=◎面屋龍延、玉山哲(岩手)、小泉忠男、東浦澄夫(山梨)、佐藤光弘(愛知)、平柿宗敏、光永和史(愛媛)、山口尚之、大隈劭(大分)、辻本和樹(京都)※日書連ホームページ部会=○辻本和樹、東浦澄夫、庫本善夫(奈良)、岩田徹(北海道)
◇流通改善=◎藤原直、加賀谷龍二(秋田)、塚越賢次、竹内靖博、筒井正博(神奈川)、佐藤光弘、戸和繁晴、中村晃造、井上喜之、田江泰彦、吉田達史、平野惣吉、長﨑晴作、大隈劭、小橋川篤夫(沖縄)
※図書館サポート部会=○高島瑞雄(福島)、大隈劭、楠田哲久、岩瀬且敏(東京)、湯本光尚(東京)、長尾幸彦(愛知)、中尾隆一(福岡)、川崎孝(長崎)、村田征禧(日外アソシエーツ)、岡本公一(フィルムルックス)、杉本弘(内田洋行)※「ためほんくん」部会=○田江泰彦、片岡隆(東京)、高島瑞雄、深田健治(大阪)
◇取引改善=◎柴﨑繁、鶴谷祿郎、川島孝文(埼玉)、山本裕一(神奈川)、江﨑直利、佐藤光弘、森井清城、戸和繁晴、宇治三郎(和歌山)、今井直樹(島根)、平野惣吉、岩永藤房
◇読書推進=◎西村俊男、久住邦晴、川島孝文、筒井正博、東浦澄夫、赤羽好三、宇治三郎、今井直樹、光永和史、五藤栄一郎、楠田哲久
◇書店再生=◎舩坂良雄、久住邦晴、加賀谷龍二、玉山哲、五十嵐太右衞門、西猛、杉山和雄、山本裕一、片岡隆、江﨑直利、岡森泰造、丸田茂、安部悟、中村晃造、櫻井晃二、吉田達史、山本秀明、長谷川澄男、長﨑晴作、田中隆次、小橋川篤夫
〔特別委員会〕
◇出版販売年末懇親会実行=◎木野村祐助、鈴木喜重、藤原直、中山寿賀雄、面屋龍延、柴﨑繁、西村俊男、舩坂良雄
◇東北地方太平洋沖地震日書連対策本部=◎大橋信夫、柴﨑繁、鈴木喜重、川島孝文、山本裕一、筒井正博、舩坂良雄、大川哲夫

新会長に野間省伸氏/出版クラブ

日本出版クラブは6月9日、東京・新宿区の日本出版会館で理事会・評議員会を開き、新会長に野間省伸氏(講談社)を選出した。野間佐和子会長が逝去した後、会長代行を務めていた上野徹副会長(文藝春秋)は顧問に退き、新副会長に石﨑孟氏(マガジンハウス)が就任、併せて平尾隆弘氏(文藝春秋)の理事就任を承認した。
また、書協、雑協、出版クラブの3団体で作る〈大震災〉出版対策本部が計画している「大震災出版復興基金」(仮称)について相賀昌宏副会長(対策本部常任委員会委員長、小学館)が説明した。基金は出版クラブ内に設置し、文化産業信用組合に口座を開くことを承認した。口座は文化産業信用組合本店・普通預金・口座番号18998・口座名義「大震災出版復興基金」。今後は業界全体として合意を得た上で設立趣意書、事業計画書等を作成し、出版関連各社に協力を呼びかける。
5月13日に開催された「第50回全出版人大会」について武田一美専務理事から報告された後、被災した書店の復興に役立てるため、大会収益金の一部50万円が野間新会長から日書連の大橋信夫会長に目録として手渡された。
理事会・評議員会後の記者会見で、相賀副会長は基金設置について「被災地支援を長期的に行っていくには財源を確保しなければならない」と説明し、使途については図書カード配布や被災した書店への支援などを考えていることを明らかにした。図書カードは被災地の小学生5~7万人に1人千円を配る。7月20日までに配布する。市町村の教育委員会や学校と連絡をとりながら配布方法を検討する。書店支援については、出版対策本部の連絡協議会で日書連と話し合いながらスキーム作りを進める。
第7代会長に就任した野間会長は「出版クラブがやってきたこれまでの活動に加えて、被災地を助けるため『読書環境の復活』『販売環境の復活』『心の復活』の活動に積極的に関わっていく。長丁場になるが貢献していきたい」と所信を語った。

営業再開書店へのケア課題/日書連と取協が定期会合/震災対策

日書連と取協は、東日本大震災で被災した書店の救援活動を協力して行い、情報共有を図るため、定期的に話し合いの場を持つことを決め、6月15日に東京・千代田区の書店会館で第1回会合を開いた。
日書連からは、地震対策本部の大橋信夫本部長、柴﨑繁副本部長、鈴木喜重、山本裕一、筒井正博、舩坂良雄各構成員、大川哲夫事務局長のほか、被災地から宮城組合の藤原直理事長、福島組合の西猛理事長、茨城組合の塚越賢次理事長が出席。取協からは山﨑厚男会長(トーハン)、阿部好美理事(同)、安西浩和理事(日販)らが出席した。
日書連の大橋地震対策本部長は、これまで被災した書店約120店に一律5万円の見舞金を送金したなどの取り組みを説明。今後は組合員だけでなく非組合員に対象を広げ、被災した全書店への救援活動を迅速に行っていくと述べた。
続いて被災地の各理事長が被害状況を説明。宮城組合の藤原理事長は「早期に営業を再開した書店から『店を開けているのに商品が届かない状況が長く続いた。きめ細かく商品供給してほしかった』という声があがっている。教訓にしてほしい」、福島組合の西理事長は「福島第一原発から半径20キロ圏内の書店は営業再開のめどすら立っていない。買掛金を帳消しにしてほしいとの声もある」、茨城組合の塚越理事長は「汚損商品について特段の配慮を」と窮状を訴えた。
これを受けて、取協の山﨑会長は「営業を再開した書店に荷物を届けることの大切さは十分認識している。ただ、デリバリールートの寸断とガソリン不足の問題が大きかった。国も衣食住優先の考えだった。しかし、本には衣食住に匹敵するニーズがある。今回の震災を教訓にインフラの改善を図りたい。これからも緊密に連携をとっていくことが大切」と述べた。

平成23年度日書連新役員

(◎は新任)
▽会長=大橋信夫(東京・東京堂書店)
▽副会長=鈴木喜重(千葉・ときわ書房)、藤原直(宮城・金港堂)、中山寿賀雄(長崎・好文堂書店)、面屋龍延(大阪・清風堂書店)、柴﨑繁(東京・王様書房)、木野村祐助(岐阜・東文堂本店)、西村俊男(新潟・文信堂書店)、◎舩坂良雄(東京・大盛堂書店)
▽専務理事=大川哲夫(事務局)
▽理事=久住邦晴(北海道・久住書房)、鶴谷祿郎(青森・鶴常書店)、加賀谷龍二(秋田・加賀谷書店)、玉山哲(岩手・東山堂)、五十嵐太右衞門(山形・八文字屋)、西猛(福島・西沢書店)、塚越賢次(茨城・大塚屋書店)、杉山和雄(栃木・杉山書店)、◎竹内靖博(群馬・シロキヤ書店)、◎川島孝文(埼玉・川島書店)、山本裕一(神奈川・信濃屋書店)、筒井正博(同・伊勢治書店)、小泉忠男(東京・小泉書店)、◎片岡隆(同・ブックスページワン)、東浦澄夫(山梨・徴古堂)、江﨑直利(静岡・藤枝江﨑書店)、佐藤光弘(愛知・光書店)、岡森泰造(三重・岡森書店)、丸田茂(富山・清明堂書店)、森井清城(石川・紀陽館森井書店)、赤羽好三(長野・凌雲堂書店)、安部悟(安部書店)、平柿宗敏(滋賀・平柿文仙堂)、戸和繁晴(大阪・トーワブックス)、中村晃造(京都・桂書房)、櫻井晃二(奈良・櫻井誠文堂)、宇治三郎(和歌山・宇治書店)、井上喜之(兵庫・井上書林)、田江泰彦(鳥取・今井書店グループ)、今井直樹(島根・今井書店)、吉田達史(岡山・研文館吉田書店)、山本秀明(広島・金正堂)、西尾文士(香川・西尾誠文堂)、平野惣吉(徳島・平惣)、光永和史(愛媛・松山堂書店)、五藤栄一郎(高知・冨士書房)、長谷川澄男(福岡・ブックイン金進堂)、山口尚之(同・三山書店)、岩永藤房(佐賀・鹿島書房)、長﨑晴作(熊本・熊文社)、大隈劭(大分・おおくま書店)、田中隆次(宮崎・田中書店)、楠田哲久(鹿児島・楠田書店)、小橋川篤夫(沖縄・いしだ文栄堂)
▽監事=◎中村宣勝(神奈川・中村書店)、◎藤田彰(大阪・ブックプラザ)、影山稔(員外)
▽顧問=◎高島瑞雄(福島・高島書房)、◎辻本和樹(京都・向島書店)
〔事務局人事〕
(○は昇任)
事務局長○石井和之
総務部長○小沢誠
編集長○白石隆史

中村晃造理事長が6選/京都総会

京都府書店商業組合は5月25日午後2時から京都市中京区の京都ホテルオークラで第27回通常総会を開催、組合員117名(委任状含む)が出席した。
あいさつで中村晃造理事長は「今年も厳しい1年が予想されるが、行政や各種団体、出版社、取次との連絡を密にして持てる力を結集し、地域との絆も深めながら、未来のある書店づくりを目指すことで、書店をはじめとする業界全体の発展を望みたい」と述べた。
議長に澤田直哉氏(さわだ書店)、副議長に北野裕行氏(花園書店)を選出して議事を進行し、全議案を原案通り承認可決した。平成22年度会計報告では、収入財源である京都市立図書館からの図書発注費が昨年度は大幅減少となったこと、支出面では、組合が所有する会館の修繕費を計上したことなどの要因から、最終的に当期決算は赤字となったことを報告。23年度予算案については、図書館売上の減額を見越しながらも、経費を見直し圧縮することで概ね昨年度同様としたことが報告された。
各事業委員会報告では、厚生委員会から、恒例の秋の組合旅行は財政が厳しいながらも創意工夫して計画していくこと、ITサポート委員会からは、組合員の間で情報交換や商品の融通などを効率的に行うため、「京都組合メーリングリスト」を本格稼動させることなどが報告された。
役員改選では理事24名、監事2名を選出。第1回理事会で中村理事長を再選した。中村理事長は「組合加盟書店に役立つことを第一義に、集大成となるような2年間の任期としたい」と決意を述べた。中村氏は理事長6期目を務める。
引き続き会場では、京都組合から「役員・従業員表彰」と「小学一年生飾り付けコンクール表彰」、京都新聞社から「第40回京都新聞お話を絵にするコンクール販売促進キャンペーン表彰」が行われ、午後5時から懇親会を開催した。
(澤田直哉広報委員)

新理事長に川島孝文氏/埼玉総会

埼玉県書店商業組合は5月23日午後3時から、さいたま市の埼玉書籍会議室にて第27回通常総会を開催、組合員103名(委任状を含む)が出席した。
総会は山口事務局長の司会で進行。昨年度物故者ならびに東日本大震災の被災物故者に黙祷を捧げた。水野兼太郎理事長はあいさつで一年間の活動を振り返り、送返品の同日精算問題、組合員減少に対する取り組み、東日本大震災被災書店への義援金募集活動を報告。また教育情報事業の一つとして、埼玉県学校図書館協議会選定「埼玉夏休みすいせん図書」の目録・ポスターを学校へ配布し、児童生徒にチラシを配布すると述べた。
続いて、野澤恒雄常任理事を議長に選任し、平成22年度事業報告、決算報告、平成23年度事業計画、予算案などの議案を承認可決。役員改選では、理事40名、監事3名を選任したのち、川島孝文氏(川島書店)を新理事長に選出した。川島新理事長より、水野氏に永年にわたる理事長の職務に感謝の意を表し、感謝状と記念品を贈呈した。
また、出版物公正取引協議会「平成22年度埼玉県支部総会」を開催して全ての議案を承認。最後に来賓の県中央会・竹内正美氏よりあいさつをいただき総会を終了した。引き続き懇親会を開催して情報交換等、有意義な一時を過ごした。
(石川昭広報委員)
〔埼玉組合執行部〕
▽理事長=川島孝文(川島書店)▽副理事長=宮川清一(みやかわ)吉田勝久(謙受堂)藤村誠一(藤村書店)奈良俊一(ならいち)▽専務理事=高野隆(須原屋)

東日本大震災義援金

NHK出版は6月21日、日書連の「東北地方太平洋沖地震被災書店義援金」に100万円を寄付した。
(6月6日~27日)
平和の棚の会、イトウショウジロウ、大阪府書店商業組合、セイフウドウショテン、トーワブックス、ナダヤショテン、ヤナガワショテン、ブックスフカダ、トラタニセイセイドウショテン、ハギワラミヤワキショテンオオサカカシワラテン、ブックスアイランド、リュウショウカンショテン、ホリコウキョクドウ、ハセガワショテンシマモトテン、マツダショテン、コウブンドウショテン、イタカノショテン、ブックス・サトウパルネットオオワダエキテン、大阪府書店商業組合中央支部、大阪府書店商業組合北東支部、大阪府書店商業組合南東支部、大阪府書店商業組合南西支部、大阪府書店商業組合豊能支部、大阪府書店商業組合吹摂支部、大阪府書店商業組合北河内支部、大阪府書店商業組合南河内支部、大阪府書店商業組合堺支部、トランスビュー、スクールカドワキ、沖縄県書店商業組合、広島県書店商業組合、愛知県書店商業組合、日本出版クラブ、マンネンヤショテン、マンネンドウ、フクシマブンシンドウ、PHP研究所、NHK出版、セイシンショボウ、セキグチショテン、出版流通対策協議会、ニトウユウゾウ、オオバトシヤス、草文会
(受付順、敬称略)
総額8221万1960円

被災書店への支援求め決議/青森総会

青森県書店商業組合は5月20日午後1時、青森市のアラスカ会館で第24回通常総会を開き組合員27名(委任状含む)が出席した。
はじめに、東日本大震災で亡くなった方々に黙祷が捧げられた。司会進行は黒滝専務理事が務め、成田副理事長が開会宣言。続いて鶴谷理事長はあいさつで東日本大震災の被害状況について説明。本県の被害は12書店であると報告し、別掲の決議文を発表した。
鶴谷理事長が議長に選出され、平成22年度事業報告・収支予算、平成23年度事業計画・収支予算案などを報告、承認可決された。このうち平成22年度事業報告では、①青森組合が主管して「第62回書店東北ブロック大会」を三沢市小牧温泉青森屋で開催。②国民読書年記念事業として、木村秋則氏、森沢明夫氏の記念文化講演会を開催。また〈青森県読書大賞〉を初めて企画、「心に残った本とその本に対するコメント」を募集して、読者大賞1点・読者賞13点・ネーミング賞2点を決定。その後平成23年3月1日から組合書店にて読書大賞受賞作品16点でブックフェアを開催。③読書推進事業として、中川ひろたか氏、角野栄子氏の講演会を開催――などが報告された。
また、平成23年度事業計画として、①青森県地産逸品の発掘とコラボ②書店間配送システムの活用の促進③委員会部会活動の活発化の促進④公共・学校図書館情報化推進事業⑤万引き防止事業⑥ブックフェア・新販売システムの実施⑦組合員の増強⑧「ためほんくん・電子書籍」導入検討について――を決めた。
田中副理事長が閉会を宣言して総会を終了、取次・出版社・新聞社・運送会社を交えて懇親会が行われた。(伊藤篤広報委員)
〔第24回通常総会 決議文〕
この度の東日本大震災で被災された方々に心からお見舞申しあげます。
青森県書店商業組合でも、県南地域の書店が大きな被害を受けており、お取引様はじめ関係機構、団体各位の温かいご支援のもとで、一日も早く復旧および営業活動が正常化いたしますことを心から願っております。
被災地では二ヶ月以上が経っても、残念ながら営業活動が正常化いたしておるところが少なく、特に、外商活動では、売掛金の回収が思うようにいっておらず、資金繰りが大変厳しい状況になっております。
出版社様、取次会社様には、被災地域の復興状況に応じて、尚、一層のご支援とご配慮を賜りますよう切にお願い申しあげます。
平成23年5月20日
青森県書店商業組合

安部悟理事長を再選/福井総会

福井県書店商業組合は5月23日、芦原温泉「灰屋」にて通常総会を開催、組合員38名(委任状含む)が出席した。
総会は出口昌之理事(出口書店)の司会で進行。物故者と東日本大震災での犠牲者の方々に黙祷を捧げた。安部悟理事長は大震災被災地へ日書連を通じ10万円の義捐金を送ったことや、電子出版の現状、日書連会員数5千人割れ等の問題を訴え活動への協力を呼びかけるあいさつをした。
京堂敏実理事(ひしだい書店)を議長に審議を行い事業、決算報告など各議案を可決承認。役員改選では組合員数の減少に伴い県内9支部を福井、奥越、坂井、丹南、嶺南の5支部に変更、現理事が再任され、安部理事長を再選した。新任の副理事長に京堂氏を選出、清水祥三副理事長(じっぷじっぷ)を再任した。
議事終了後、深田健治氏(ブックスふかだ)を講師に「ためほんくん」の講習会を開催。今後の顧客サービスとコミック増売への貴重なツールとしての認識が深まった。終了後、来賓のトーハン・佐々木基樹北陸支店長、日本出版販売・伊藤友正北陸支店長、太洋社・池田喜久夫北陸支店長、聖教新聞社・河上和浩福井支局長があいさつ。その後懇親会が行われた。
(清水祥三広報委員)

6氏に黄綬褒章

6月14日に発表された春の叙勲で、教科書供給協会関係から次の6氏が黄綬褒章を受章した。伝達式は6月29日にフォーシーズンズホテル椿山荘で行われた。
千葉県=淺野常夫(浅野書店)
東京都=加藤浩一(玉泉堂書店)
和歌山県=富永兼次(富永)
岡山県=山本卓郎(山本弘文堂)
広島県=小池榮三(小池書店)
熊本県=宮原一吉(カメヤ本店)

雑誌・書籍の発送日短縮等に取組む/沖縄総会

沖縄県書店商業組合は5月26日午後2時から書店組合会議室で第23回通常総会を開催し、組合員34名(委任状含む)が出席した。
総会は、大湾喜代一事務局長の司会で進行し、小橋川篤夫理事長があいさつ。東日本大震災の被災者へのお見舞いの言葉を述べるとともに、店頭での募金活動は5月31日をもって終了し、6月中旬には沖縄組合として日書連へ義援金を送りたいとした。また、本年度の重点施策として「雑誌・書籍の発送日短縮に向けてのさらなる改善」「電子書籍に関する研究」「組合員店を読者にもっとアピールできることはないか」「10月に開催される世界のウチナーンチュ大会に向けての取り組み方」等を提案した。
小橋川理事長を議長に選任し、第1号議案から第6号議案を審議し、いずれも原案通り承認可決。最後に大城行治副理事長のあいさつで閉会した。
(安仁屋博一広報委員)

東日本大震災支援活動などで報告/群馬総会

群馬県書店商業組合は5月30日、前橋問屋センター会館において第24回通常総会を開き、組合員42名(委任状を含む)が出席した。
総会は高塚副理事長の開会の辞で始まり、大澤理事長があいさつ。東日本大震災の仲間の被災者に対してお見舞いの言葉を述べるとともに、支援できることがあれば積極的に係わっていきたいと述べた。
その後、議長に成田理事(星彦書店)を指名して議案審議に入り、平成22年度事業報告・決算報告、監査報告、23年度事業計画案・予算案などを審議し原案通り承認可決した。
続いての議案では、理事長より東日本大震災に対して日書連義援金に組合より拠出することへの説明があり、承認された。
議事終了後、群馬県中小企業団体中央会の石井主事より祝辞をいただき、その後、小林副理事長が最近の業界の動向を報告し、閉会の辞を述べて総会を終了した。
総会終了後、出版社の新刊説明会及び運送会社との懇談会を行い、幕を閉じた。(鹿沼中広報委員)

7月から雑誌愛読月間キャンペーン/雑誌協会

日本雑誌協会は「2011雑誌愛読月間」キャンペーンを7月21日から8月20日まで1ヵ月間にわたって展開する。
日書連、日本出版取次協会と共催で行う恒例の「年間定期購読キャンペーン」は、7月1日から8月20日までの期間中に、45社118誌の中から年間定期購読を申し込んだ読者を対象として、「1ヵ月分無料および特大号差額サービス」を実施する。昨年は5517書店が参加し、1503店が予約を獲得、予約受注総数は3万2458件にのぼった。
「雑誌愛読月間」は、今年はイメージキャラクターに女優の武井咲さんを起用し、「世の中のちょっと先、雑誌で読もう」をキャッチフレーズに展開する。期間中は、愛読キャンペーンとして雑協会員社発行雑誌3百誌以上にPRを掲載、武井さんのオリジナル図書カードを抽選で2011人にプレゼントする企画を実施する。雑協や会員社ホームページなどでPRするほか、全国の書店、公立図書館にポスター約3万枚を掲示。首都圏と関西の主要電鉄会社でも電車中吊り協賛広告約10万枚を掲出する。

新会長に秋葉良成氏/東京組合青年部総会

東京都書店商業組合青年部は6月8日午後4時からホテルメトロポリタンエドモントで第21回通常総会を開き、会員79名(委任状含む)が出席した。
総会で牛房邦夫会長(赤城書店)は「人数が少ない中活動してきたが、各役員がそれぞれ充分に仕事をしたと思う」と2年間を総括。正副議長に渡辺眞氏(ワタナベ書店)、青木寛司氏(南平松明堂)を選出して審議を行い、平成22年度事業報告・収支決算、平成23年度事業計画・収支予算などすべての議案を原案通り承認可決した。
役員改選では新会長に秋葉良成氏(江戸川書房)を選出。副会長は小川頼之氏(小川書店)が留任、新たに磯田直樹氏(文星堂)を選任した。秋葉会長は「青年部の新しい仲間を増やし、ともに考え議論して進めていきたい。青年部で大震災の被災地を訪問し、何か手伝うことができないか考えている」と述べた。
相談役の東京組合・片岡隆副理事長は「会員を増やし、新しい知恵を集めて幅広い活動を行ってほしい」とあいさつした。

辞書引き学習法の講演会を開催/兵庫組合はりま支部

兵庫県書店商業組合はりま支部主催の辞書引き学習法講演会が、5月15日に姫路市あいめっせホールで開催された。
講師は深谷圭助先生(中部大学准教授)で、先生が提唱されている、小学1年生から辞書を引き自ら学ぶ「型」を身につけさせる学習法について約2時間にわたり講演をいただいた。
会場には親子連れ、学校の先生ほか約百名の参加があり、協賛の小学館より貸し出された国語辞典に実際に付箋を貼るなど実践を交えた会となった。中には、終了時間となっても熱心に辞書を引くお子さんも多数あった。また、後段では父兄より活発な質疑応答があり、この学習法に対する興味関心の深さがうかがえた。
会場では、小学館『例解学習国語辞典』の販売も行い、多数の方のお買上げをいただいた。この会を通して組合員一同活字の力を実感することとなった。
なお、開催に当たり、NHK神戸放送局、神戸新聞社には、会の事前告知に絶大なるご後援をいただいた。(安井唯善広報委員)

「本屋魂」テーマに講演/恭文堂社長・田中淳一郎氏/本の学校連続講座

「本の学校」運営委員会は5月17日、東京・千代田区の岩波セミナールームで連続講座「本屋の未来を創造する」を開催。第2回として恭文堂(東京・目黒区)の田中淳一郎社長が「本屋魂」と題し講演した。連続講座は、ベテラン書店人に仕事への姿勢やノウハウを開示してもらい、今後の書店人育成に何が必要か探ることを目的として4月から開始したもので、1年間以上にわたり毎月1回程度の開催を予定している。この第2回講演を抄録する。恭文堂は祖父が始めた書店で、僕は3代目になります。子どものころからずっと本屋の仕事を手伝っていたので、遊びや生活の中に本屋の仕事が溶け込んでいました。ですので本屋をやるのは運命だったのだと思います。僕の「本屋魂」とは何かと考えると、本屋は家業、生きていくための業であり、転職不可能なイメージです。「本屋魂」というのは、生業として自分が人生を歩んでいくということだと思っています。
「本屋の使命」は、本をお客さんに売ることです。自分の店はこういう店で、こういう本を買ってもらいたいんですとお客さんにアピールをする。僕は経営者であり、棚の担当、書店員だという意識があります。出版社の営業マンに「社長なのにまだお店に出ているのですか」と言われることもありますが、僕はいつも「本屋が本をいじらなくなってどうするの」と言っています。
棚のマネジメントで欠かせないのは「読書経験」です。読書が好きで、ある種読書体験を生かすために書店という仕事は存在すると思います。また「配本=仕入れ」という考え方は成り立たないだろうと思っています。現状の配本は、出版社のパターンであったり取次配本です。これは仕入れとは言わない。書店にとって仕入れの8割で売上は決まってしまうと思います。要するに仕入れが完璧だったら売上ロスはない。書店で棚のマネジメントをする人は、きちんと仕入れをやってほしいと思います。
僕は棚をいじるとき、5W2Hを使って本を仕入れる要素を考えています。誰にどのような本を提供するのかを明確化しないで本を仕入れても、お客さんに対して説得力を持った販売はできません。
実際には一つずつ明確化して仕入れに結びつけるのは非常に難しいですが、仕入れというのは、カテゴリーとか類似商品などを考えながら、1点1点自分でやっていくのが基本だろうというのが僕の考え方です。一番大事なのは「Why」に当たる「仕入の動機」で、例えば「こういうフェアをやる」というときに、その動機付けがきちんとしていないと、お客さんに受け入れられません。
棚のマネジメントというのは本が接点です。自分が棚に本を詰め、その本を誰かが見る。棚にある本を接点にしてお客さんと僕がコミュニケーションをとっている。お客さんが手に取ってくれた本、あるいは手に取らなかった本。同じジャンルの本なのになぜそれだけ売れたのか。そういうのを突き詰めていくのが僕の仕事だと思っています
僕の棚に対する考え方は、「自分と棚との戦い」というのも変ですが、どれだけ掘り下げられるかという修行だと考えています。自分で棚を一生懸命見る。根気よくそれをやり続けることが重要だと思います。
一方、会社のマネジメントは数字を接点とします。ですが、帳簿を1日中見たり、決算書をずっと見ているからといって、数字が自然と上がってくるものではありません。会社のマネジメントだけしっかりしていれば本屋は成り立つわけではなくて、棚のマネジメントができていなければ会社のマネジメントをする意味がないのです。
会社のマネジメントも、誰に対してどのような価値を提供するのかを明確化する必要があります。自分の店に合う客層の切り口を決め、その方たちに何を提供して、店をどう形作っていこうとするのかという、順番を決めて会社をマネジメントしようという考え方です。どういうお客さんを想定して本屋をやっているのかを頭の中でイメージしながら、会社を運営するようにしています。
お客さんに「このお店はこういう品揃えがいいのよね」と言われると素直にすごくうれしいですよね。僕にとって書店経営の面白さというのは棚をいじることからきています。出版社には悪いですが、書店にとって返品できるということがなかったら、全く面白くありません。失敗しても成功しても返品できるという最終的な処分方法があるから、書店は面白いのです。
最近取次や出版社から「返品は悪である」「返品率が高いから厳しいのだ」という言い方がよくされます。しかし、不要なものは早めにどんどん返品し、その本を必要とする書店に早く回すようにする方が、前向きではないかと思うのです。返品をなるべくしないでくださいと言っていつまでも持っていられるよりは、そのほうが生産性が上がると思います。
会社のマネジメントで経営判断すべきことは、まず仕入れを把握し、売上を把握して、返品すること。粗利も決まっているから基本的には売上が全てであり、売上を上げない限りは商売を畳むしかありません。「売上をしっかり上げてくれ」という一言は現場の担当者にとって分かりやすいので、僕は普段から売上至上主義を貫いています。ただ、現場は売上至上主義でもいいですが、自分自身で会社の方向性が果たして合っているのかを判断する見方としては、利益至上主義でないといけないと思っています。さもないと、自分の会社がどこへ飛んでいってしまうのか分からなくなってしまいます。
地域でかけがえのない会社であり続けるのが、会社のマネジメントの原点です。本を売ることを使命とし、会社の最終的な目標はお客さんに本を何が何でも売っていく。お客さんをつなぎとめておくのは、棚を管理するだけではない。お客さんにアピールするためには接客でコミュニケーションをとることが必要です。その中で生まれてくるのが地域性だったり、社会性だったりするのです。お客さんをよその店で買えなくするようなコミュニケーションも含めて、地域でかけがえのない会社であり続けたいと思っています。

近刊情報センターに管理委員会を設置/JPO総会

日本出版インフラセンター(JPO)は6月15日午後2時から東京・神楽坂の日本出版会館で平成23年度定時総会を開催した。
冒頭で相賀代表理事は昨年度の活動について言及。総務省の委託事業「次世代書誌情報の共通化に向けた環境整備」の実証実験結果をふまえ4月に近刊情報センターを設立したことや、「新刊書店が中古本を併売するに当たっての販売ガイドライン」策定と古物営業法施行規則の改訂、東日本大震災の被災書店営業情報の提供などを説明した。
続いて相賀代表理事を議長に審議を行い、平成22年度活動報告、決算・監査報告、平成23年度活動計画、予算など全ての議案を原案通り承認可決した。
近刊情報センターについては、センター全体の管理・運営を行う管理委員会をスタートさせる。同委員会は、書誌情報交換の国際基準規格を管理する「国際出版EDI標準化機構」の国内での代表機関の役割も担う。また、経済産業省の委託事業「書籍等デジタル化推進事業」を受託、書店を通じた電子出版と紙の出版物のシナジー効果を発揮する仕組みを構築するため、検討委員会としてフューチャー・ブックストア・フォーラムを設置して調査研究と実証実験を行う。
このほか、出版RFIDコード管理研究委員会は、ICタグ研究委員会に統合し、RFIDコード部会として再スタートする。
役員選任では、理事を1名増員して6名とし、相賀、安西浩和(日本出版販売)、佐藤隆信(新潮社)、藤原直(金港堂)、松岡要(日本図書館協会)の理事5氏を再任。新理事に野間省伸氏(講談社)を選任し、相賀氏の代表理事再任を決定した。

義援金で本を購入し被災図書館に寄贈/学校図書館整備推進会議

出版・流通、図書館、新聞等、学校図書館に関連する団体が加盟する学校図書館整備推進会議では、東日本大震災で被害を受けた学校図書館の復興援助を行うため、震災対応プロジェクトチームを立ち上げて支援策を検討。会員から義援金を募集して、本の寄贈を希望する学校に対し、義援金で本を購入して寄贈することを決定した。
対象校は、地震・津波により蔵書に多大な被害を受けたり、原子力発電事故で避難するなどして、図書の寄贈を要望した岩手県、宮城県、福島県の学校で、全国学校図書館協議会からの情報により選定。同推進会議では、会員各団体に義援金募集を依頼するとともに、各団体の広報紙、ウェブサイト等の媒体に義援金募集の記事掲載を依頼して周知を図る。寄贈する本は、学校が指定する地元書店から購入する。
募金の振込先は、三菱東京UFJ銀行・神楽坂支店
普通預金0689365口座名「学校図書館整備推進会議」。締切は今年7月末日とし、8月に図書を発注して地元書店経由で納品する予定。

「出版物で人々の心を豊かに」/講談社春夏新刊書籍説明会で野間社長

講談社は5月18日、本社で報道関係者を対象に「2011年・春夏新刊書籍企画説明会」を開催した。
冒頭で野間省伸社長は、東日本大震災の支援活動として、救援金の募集や図書寄贈、コミック誌のウェブ上無料公開などの取り組みを説明。「面白くてためになる出版物で人々の心の豊かさに資することが、わが社がすべき最大の仕事。被災地はもとより日本全国を明るくする作品を数多く出版したい。今回も各出版局が独自の斬新な企画を発表する。力のある作品を、紙や電子様々な組み合わせで世界中に届けることがわが社のミッションだと考えている」とあいさつした。
続いて各出版局の書籍担当者が各自の持ち時間を駆使して工夫を凝らしたプレゼンテーションを展開。井上ひさし氏の未完の遺作『黄金の騎士団』(発売中)、『一分ノ一』(10月発売予定)の紹介をはじめ、企業スポーツ小説『ルーズヴェルト・ゲーム』(8月発売予定)の著者・池井戸潤氏や、東日本大震災をルポした『津波と原発』の著者・佐野眞一氏らが登壇して自著を紹介した。

総務省委託事業の成果発表/電流協

電子出版制作・流通協議会(電流協)は、総務省の委託事業として実施した「平成22年度新ICT利活用サービス創出支援事業」の出版印刷関連合同成果発表会を、6月16日午後2時から千代田区のグランドアーク半蔵門で開催した。
この発表会は「新ICT利活用サービス創出支援事業」10事業のうち、出版印刷会社主体の5事業について成果報告を行ったもの。
始めに電流協の大湊満副会長が「今後日本の電子出版がどのような形で市場を形成し、同時に文化としての出版産業をどう維持拡大していくのか、活動の成果と課題を発表する。今後の事業活動に役立てていただきたい」とあいさつ。続いて総務省情報流通行政局情報流通振興課の安藤英作課長が基調講演を行い、同支援事業が実施された経緯や10事業の概要等を説明。技術的な問題は解決されつつあるが、電子出版への参入の効率化とコスト面の問題解決が今後の大きな課題だと述べた。
このあと、①「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」(日本電子書籍出版社協会)、②「次世代書誌情報の共通化に向けた環境整備」(日本書籍出版協会)、③「次世代電子出版コンテンツID推進プロジェクト」(日本雑誌協会)、④「アクセシビリティを考慮した電子出版サービスの実現」(電流協)、⑤「電子出版の流通促進のための情報共有クラウドの構築と書店店頭での同システムの活用施策プロジェクト」(出版文化産業振興財団=JPIC)の5事業の成果が発表された。
このうち⑤については、JPIC矢作孝志専務理事が報告。「この事業は、電子出版に関する情報を整備し、誰でも閲覧できる環境を構築するとともに、現在の出版マーケットを支えるリアル書店でこれらの情報を活用することが市場拡大につながるとの仮説に基づき実施したもの。情報サービスクラウド『ヨムナビインフォ』の構築や、リアル書店での情報端末設置、電子出版物専用プリペイドカードの販売などの実証実験を行った。一般読者にとって、いつも行っている書店で発信する情報は大変重要。今後クラウドを運用継続していくためには、業界としてビジネスモデルを作っていくことが課題になる」と述べた。

5月期は3・2%減少/書籍扱いコミックが大幅増/日販調べ

日販営業推進室調べの5月期書店分類別売上調査が発表され、売上高対前年比は3・2%減で先月を0・5ポイント上回った。
雑誌は全体で4・2%減と先月を2・6ポイント下回った。2月から売上を牽引してきたコミックが、4・7%減とマイナスに転じたことが影響した。
書籍は、文芸書と文庫の伸びが改善したこと、書籍扱いコミックが先月に続きプラスだったことから、全体で2・2%減と先月を3・8ポイント上回った。書籍扱いコミックは、メディア化銘柄の既刊が好調を持続したこと、売上好調な新刊が前年と比較して豊富だったことから19・6%増と大きく伸長。文庫は、映画化銘柄の好調と、下旬に販売された角川GP『涼宮ハルヒの驚愕〈初回限定版〉』が売上を伸ばしたことにより、1・1%増と先月の4・2%減からプラスに転じた。

10年下期は前年同期比95・87%/ABCレポート

日本ABC協会は2010年下半期雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載した43社164誌の前年同期比指数は週刊誌93・86%、月刊誌96・65%で、合計では95・87%となった。
総合週刊誌は、部数トップの『週刊文春』が3千部減の48万2千部。2位の『週刊新潮』が6千部減の39万2千部で、ともに減少した。『週刊現代』は3万3千部増の40万1千部と続伸し、40万部を回復。『週刊ポスト』は3万7千部増の31万部と切り返した。新聞社系では、『週刊朝日』が9千部減の15万1千部、『サンデー毎日』が1万1千部減の6万8千部と落ち込んだ。
女性週刊誌は、『女性セブン』が4千部減の27万1千部、『女性自身』が4千部減の25万2千部、『週刊女性』が1千部減の16万8千部といずれも微減。女性月刊誌では、月2回刊から月刊化した『non・no』が8万8千部増の36万8千部となっている。

小峰書店と岩崎書店の企画が入賞/学校図書館出版賞

全国学校図書館協議会と日本学校図書館振興会が主催する第13回「学校図書館出版賞」で、小峰書店と岩崎書店の出版企画が入賞した。表彰式は6月11日、千代田区の学士会館で行われた。
この賞は、学校図書館活動に役立つ優良図書を選定、その出版企画に対して出版社を顕彰し、学校図書館向き図書の一層の充実を図ることを目的に行われているもの。
今回入賞した小峰書店の『身近な地名で知る日本』(黒田祐一著・全6巻・揃定価2万475円)は、代表的な地名を分野ごとに網羅し、郷土学習・総合学習に役立つほか、歴史・地名ファンも基礎資料として活用できる。岩崎書店の『子ども・平和・未来21世紀の紛争』(吉岡攻編集・全5巻・揃定価1万5750円)は、世界各地の紛争地に入った日本人ジャーナリストたちが、そこに生きる人々、子どもたちの声を伝える最新レポート。

クドカンの『うぬぼれ刑事』が受賞/向田邦子賞

脚本家で俳優の「クドカン」こと宮藤官九郎さんが、優れたテレビドラマ脚本家に贈られる「第29回向田邦子賞」(向田邦子賞委員会、東京ニュース通信社主催)を受賞し、5月31日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれた贈賞式に出席した。受賞作品は『うぬぼれ刑事』(TBS系、10年7月9日~9月17日)。式には同作主演の長瀬智也さんや出演者の生田斗真、中島美嘉さんらも出席し祝福した。三田佳子、竹下景子、薬師丸ひろ子さんらも登壇した。宮藤さんは「みんなで頑張って作った作品で賞をもらえてうれしい。これからもオリジナル連続ドラマの脚本を書き続けたい」と喜びを語った。