全国書店新聞
             

平成19年9月1日号

読書週間書店くじ

▽実施期間平成19年10月27日(土)より11月9日(金)まで書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数600万枚。書店には1束(500枚)3750円(税込)で頒布
▽申込方法返信用申込書に必要事項を記入し、束単位で所属都道府県組合宛に申し込む。
▽配布と請求方法くじは取次経由で10月25日前後までに配布。代金は取引取次より請求。
▽当選発表12月5日。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品賞品総額8680万円、9・8本に1本の当選確率
特等賞=台湾周遊4日間の旅ペアご招待
60組
1等賞=図書カード1万円600本
2等賞=同上または図書購入時に充当千円1800本
3等賞=同上5百円1万2000本
4等賞=図書購入時に充当百円60万本
ダブルチャンス賞=全国共通図書カード1万円100本
▽賞品引き換え特等賞は当選券を読者より直接日書連まで送付。1、2、3、4等賞は取扱書店で立て替え。図書カード不扱い店または図書カードが品切れの場合は、お買い上げ品代に充当。ダブルチャンス賞は平成20年1月15日(当日消印有効)までに読者が直接日書連にハズレ券10枚を送付
▽引き換え期間読者は12月5日より平成20年1月10日。書店で立て替えたくじは平成20年1月31日までに一括とりまとめて「引換当選券・清算用紙(発表ポスターと同送)」と一緒に日書連事務局まで送付
▽PR活動「読書週間書店くじ」宣伝用ポスター。全国書店新聞に実施要綱を掲載。日書連ホームページで宣伝

返品入帳改善、読書推進に努力/長谷川理事長が活動方針示す/神奈川組合総会

神奈川県書店商業組合は、8月24日午後1時半から横浜市中区の神奈川平和会館で第30回通常総会を開催し、組合員194名(委任状含む)が出席。長谷川義剛理事長(長谷川書店)は、平成19年度の活動として、取次の返品入帳改善をさらに求めていくとともに、官民一体となった読書推進活動に努力すること、新販売システムに積極的に取り組むなどの方針を示した。
総会は岩下寛治副理事長(岩下書店)の司会で進行、井上俊夫副理事長(井上書房)の開会の辞に続いて長谷川理事長が「今年4月に改正組合法が施行され、コンプライアンスへの対応に一段と責任の重さを感じる。本日の総会資料作成についても、神奈川県中央会の指導のもと、各般にわたって透明性の高い報告ができたと思う。組合員の皆様には、より一層の組合運営への理解をお願いしたい」とあいさつした。
村上弘一常務理事(村上書店)を議長に選任して進めた議案審議では、平成18年度事業報告、平成19年度事業計画案、決算・予算案など全ての議案を原案通り可決承認した。このうち事業報告と事業計画案は長谷川理事長が一括提案。①昨年の総会で返品入帳問題の改善を求める決議を行なった。取次の対応は前向きな処理に向かっているが、今年度も改善へさらなる努力を進めていく。決算月だけでなく平月の状況もチェックしていきたい。②神奈川県読書推進会は4月に「第1回大好きな本絵画コンテスト」を行い成功を収めた。神奈川県教育委員会、子ども読書活動推進会議などが主催する平成19年度第2回「子ども読書活動推進フォーラム」が10月27日にはまぎんホールで開催される。活字文化の振興に官民一体となって一層努力したい。③日書連の新販売システムは今秋第2回が実施される。さらなる挑戦で標準化したシステムを構築していきたい。組合員の協力を得て成功に持ち込みたい――などの報告があった。
質疑では、新販売システムについて、中小書店の利用が少ないことや、再販制度の崩壊につながるのではないかとの意見があり、長谷川理事長は「新販売システムは書店マージンの拡大と適正配本を望む書店の声に対応しようという取り組み。よりよい方法へと模索してやっているのでいま少し努力を見守ってほしい」と回答した。また、日書連共済会解散に伴う残余財産の取り扱いについて、「もっと会員書店に分配すべきだ」「日書連でしっかり有効活用してほしい」との意見が出た。
来賓の日書連・大橋信夫会長はあいさつで、「新販売システムについては広く意見をだしていただき、検討していくことが大事だと思う。再販問題についても忌憚のないご意見をいただき、受け止めていきたい」と述べた。
続いて神奈川県中小企業団体中央会・稲野達也氏、神奈川県組合顧問弁護士の増本一彦氏のあいさつがあり、堀護副理事長(宮崎台書店)の閉会の辞で総会を終了。午後5時半から中華街の中華料理店「華正楼」に会場を移し、尾高暉重・神奈川県副知事、出版社、取次などを交えて懇親会を開催した。

新理事長に玉山哲氏/岩手総会

岩手県書店商業組合は7月27日午後2時から盛岡市盛岡駅前通りのホテル・ルイズで第18回通常総会を開催。組合員52名(委任状含む)が出席した。
総会は玉山慶彦理事(東山道支店)の司会で始まり、冒頭、赤澤桂一郎理事長があいさつ。「今期、役員改選の年であり、本日、東山堂書店・玉山哲社長が都合がつかず欠席されているが、新理事長に就任していただく予定。私も早いもので『短期間の理事長で』と説得されてから13年が経過した。その間、日書連理事会にできるだけ出席し、たくさんの課題を抱えてきたが、組合員皆様のご支援により無事に理事長をつとめ終えることができた。今後も組合加入促進、出版物販売倫理、特に万引き防止、書店情報化の促進、図書館問題、児童図書増売運動、書店くじ等、多くの課題が山積しているが、新理事長に絶大なるご支援をお願いしたい」とあいさつした。
続いて松田和英理事(松田書店)を議長に各議案を審議し、平成18年度事業報告、平成19年度事業計画案、収支決算、予算案などを可決承認した。続いて役員改選を行い、選考委員の理事により新理事長に玉山哲氏(東山堂書店)を選出した。副理事長その他については後日選出することになった。
玉山慶彦理事の閉会の辞で総会を終了。引き続き懇親会を開いて解散した。
(栗原秀郎広報委員)

改正組合法と会計実務を学ぶ/組合事務局間の親睦深める/事務局職員研修会

日書連は8月21日、22日の2日間にわたり東京で「事務局職員研修会」を開き、各都道府県組合事務局職員ら総勢41名が出席した。全国から書店組合の事務局職員が一堂に会して会合を開くのは初めての試み。
中小企業協同組合法改正の要点および組合会計の実務を研修して組合事務の専門性を高め、先進的な書店の見学と研究を通して書店業への知識を深めるとともに、参加組合相互の親睦と協調を高めることが目的。全国中小企業団体中央会の中小企業活路開拓調査・実現化事業補助金の交付を受けて、日書連指導教育委員会が企画・実施したもの。
21日は東京ガーデンパレスで開催。午後1時から始まった研修会は冨永指導教育副委員長の総合司会で進行し、大橋会長が冒頭あいさつ。「皆様は孤立無援で仕事をしながら、疑問や悩みをたくさん抱えていると思う。この機会を利用して他組合の事務局職員と親睦を深めてほしい。横のつながりで問題解決を図ることができる。協同組合法と組合会計実務の講習を業務に活かして」と話した。
鈴木指導教育委員長は「皆様は日書連事務局と電話で話をしていると思うが、実際に接する機会はあまりなかったのではないか。膝を交えて意見交換する中で日書連に親しみを感じていただきたい。組合法についても単組が集まって勉強することで新しい発見がある」とあいさつした。
このあと午後1時15分から全国中小企業団体中央会政策推進部・矢田部宏志氏が「協同組合法改正の要点について」、午後3時から税理士・中小企業診断士の増田茂行氏が「組合会計実務の講習」と題して講演。
協同組合法改正の概略、決算関係書類等の作成・手続き(総会スケジュール)などについて学んだ。講習終了後、丸の内OAZO内に3年前オープンした丸善丸の内本店を見学し、斎藤店長と意見交換を行った。
2日目は書店会館に会場を移し、午前9時から「日書連活動の現状と展望」と題して大橋会長、藤原流通改善委員長が講演。大橋会長は定款に沿って日書連の目的、事業、組織形態、役員定数、理事会の権限と機能について話した。また、藤原委員長は日書連活動の歴史をふりかえり、再販擁護、取引改善、流通改善、増売運動に日書連が果たしてきた役割を強調。さらに「日書連の歴史は正味闘争の歴史」と述べ、直近の取り組みとして新販売システムについて説明した。
続いて午前11時から「単組の抱える問題点」をテーマに参加者全員で討論会を行った。このなかで、多くの事務局職員が最大の懸案としてあげたのは「組合員数減少に歯止めがかからず、組合運営に影響が出ている」こと。関連して「新規出店は大型書店ばかりで、組合加入を拒否するケースが多い」「インサイダーとアウトサイダーとの差別化をもっと図るべき」「加入促進を図るためのパンフレットを作って」「書店経営者は高齢化している。後継者育成への取り組みが急務」「共済会に代わる福利厚生の検討が必要」等の意見が出された。このほか賦課金徴収や書店くじ、ポケッターについて様々な意見、提案があった。
最後に山口指導教育委員が「単組が抱える悩みはみな同じ。不安にならず、共有する悩みを横の連携で解決してほしい。自信と誇りを持って仕事を」と激励し、閉会した。
〔事務局研修会出席者〕
▽本部=大橋信夫会長、柴﨑繁副会長
▽指導教育委員会=鈴木喜重委員長、冨永信副委員長、山本裕一委員、作田幸作委員、山口尚之委員、小泉忠男委員、藤田彰委員
▽各都道府県組合事務局=阿知良由紀美(北海道)熊谷清彦(青森)深瀬勝照(山形)星川まゆみ、上平しのぶ(宮城)松崎正信(茨城)石坂幸男(群馬)山口洋(埼玉)足立晴美、長谷部泰三(千葉)北住和弘(東京)浜口登美子(三重)治田正良(新潟)吉田良一(石川)宮原洋一(長野)金田喜徳郎(大阪)安田誠治(京都)西本功(奈良)久保田修平(和歌山)加藤幸典(鳥取)洲脇慎一郎(岡山)光永和史(愛媛)安重裕(福岡)小寺まゆみ(佐賀)相良英文(熊本)森永美枝子(鹿児島)大湾喜代一(沖縄)
▽日書連事務局=大川哲夫、石井和之、小澤誠、難波恵、白石隆史

7月期は平均95.5%/全ての規模でマイナスに/日販調べ

日販経営相談センター調べの7月期書店分類別売上調査がまとまった。これによると、7月期は平均95・5%で前年同月を4・5ポイント下回った。
売場規模別では全規模で前年割れとなった。201坪以上店98・5%、151~200坪店97・6%、101~150坪95・8%、51~100坪94・3%、50坪以下93・1%と、規模が小さくなるほどマイナス幅が大きい。
ジャンル別では新書110・4%、その他102・7%の2ジャンルが前年を上回った。新書は『女性の品格』がテレビで取り上げられたこともあり先月に続き大きくプラスとなり、すべての規模・立地で前年を上回った。一方、昨年7月期に前年を大きく上回る実績だったコミック、文庫、実用書の3ジャンルは反動で落ち込んだ。
7月の客単価は前年比101・0%の1153・8円。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・嶋田小夜子

◇2歳から/『まてまてまて』/小林衛巳子=案/真島節子=絵/こぐま社900円/2005・9
追いかけてくるぬいぐるみ、逃げながら振り返る赤ちゃん。その楽しそうな様子に思わず微笑んでしまいます。ハイハイし始めた赤ちゃんも結構大きくなった子もお父さんやお母さんに追いかけてもらうのが大好きです。読み終えた後は、きっと親子で「まてまてまて」が始まるでしょう。
◇4歳から/『みーんなかめ!』/ふくだとしお・ふくだあきこ=作/幻冬舎1300円/2007・6
ころころ卵が転がって、ぱかっと割れると生まれてきたのは小さなかめ。「ぼく、かめ」と元気一杯。ページをめくると次々に登場するかめ、自分こそが本当のかめと自慢します。やさしい色彩と楽しいストーリーに、親子でかめを大好きになりそう。巻末の解説を読むと気分はかめ博士。
◇小学校低学年向き/『ひよこのコンコンがとまらない』/ポール・ガルドン=作/福本友美子=訳/ほるぷ出版1200円/2007・7
ひよこのタッペンは、大きな大きな種を飲み込んでせきがとまりません。めんどりのコッコさんは、タッペンを助けるため水を探しに走り回ります。スカンジナビア半島の昔話がポール・ガルドンの絵と再話で楽しい絵本に。くりかえしがとても愉快で、何度でも楽しめる一冊です。

平成19年「敬老の日におすすめする本」/読進協

読書推進運動協議会は平成19年度「敬老の日読書のすすめ」リーフレットを作成した。各都道府県の読進協から寄せられた推薦をもとに選定した26点を掲載している。
▽『鈍感力』渡辺淳一、集英社▽『秘花』瀬戸内寂聴、新潮社▽『95歳からの勇気ある生き方』日野原重明、朝日新聞社▽『上を向いて歌おう―昭和歌謡の自分史―』永六輔、飛鳥新社▽『学んで楽しんで86歳、こころ若く生きる』清川妙、あすなろ書房▽『昭和すぐれもの図鑑』小泉和子著・田村祥男写真、河出書房新社▽『結党!老人党』三枝玄樹、毎日新聞社▽『幸せを呼ぶ美人話法』広瀬久美子、海竜社▽『養老院より大学院―学び直しのススメ―』内館牧子、講談社▽『銀しゃり』山本一力、小学館▽『中高年のためのらくらく安心運転術』徳大寺有恒、草思社▽『和のしきたり―日本の暦と年中行事―』新谷尚紀、日本文芸社▽『覚えていない』佐野洋子、マガジンハウス▽『老いを生きる暮しの知恵』南和子、筑摩書房▽『家計簿の中の昭和』澤地久枝、文藝春秋▽『定年後―豊かに生きるための知恵―』加藤仁、岩波書店▽『”手”をめぐる四百字―文字は人なり、手は人生なり―』季刊「銀花」編集部編、文化出版局▽『病気にならない生き方②実践編』新谷弘実、サンマーク出版▽『健康問答』五木寛之・帯津良一、平凡社▽『おばあちゃんの出番!孫と楽しむ手の仕事』田中周子著・石橋富士子イラスト、大月書店▽『医者が泣くということ』細谷亮太、角川書店▽『幸福のヒント―「主婦の友」90年の知恵―』主婦の友社編、主婦の友社▽『大切なひとへ―生きることば―』瀬戸内寂聴、光文社▽『異国を楽しむ』池内紀、中央公論新社▽『感動する脳』茂木健一郎、PHP研究所▽『林住期』五木寛之、幻冬舎

取次上位3社は揃って減益/日経流通新聞「卸売業調査」

日経流通新聞は8月1日号で「第36回卸売業調査」を発表した。これによると06年度の全13業種の売上高は前年比4・1%増、経常利益は1・8%増。2年連続の増収増益だが、増益率は15・5%だった前回調査を大幅に下回った。増収は8業種で前回調査より2業種減った。また、増益は5業種で3業種減った。
同調査では書籍・CD・ビデオ・楽器を「書籍ほか」として1つのグループにまとめているが、売上高3・9%増、経常利益18・2%減と増収減益だった。ここから書籍卸売業の上位6社を抜粋したのが別表。
売上高を見ると、トップの日販はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と設立した、レンタル店向け卸のMPDを連結対象に加えて10・6%増となった。トーハンは1・8%減。大阪屋4・3%増、栗田2・6%減、太洋社0・8%減、日教販1・0%減だった。
また、上位3社は前年に続き揃って減益となった。営業利益は日販7・3%減、トーハン9・9%減、大阪屋12・0%減。経常利益は日販25・0%減、トーハン19・2%減、大阪屋4・4%減。コンビニエンスストアの雑誌不振や中小書店の廃業、取引先向けの設備投資などが減益要因になった。
売上高経常利益率は①トーハン1・0%②日販0・6%③日教販0・3%の順。売上高販売管理費率は①大阪屋7・9%②トーハン10・1%②太洋社10・1%の順。1人当たり売上高は①大阪屋2億7394万円②日教販1億2972万円③太洋社1億494万円の順になった。

プロに聞く雑誌販売のヒント/雑誌売り名人発掘プロジェクト

雑誌の売上げ低迷が指摘される中で、雑誌協会は創立50周年の「店頭売り伸ばし」「雑誌売り名人」発掘プロジェクトを展開している。7月7日に行われた本の学校シンポジウム第2分科会で聞いたくまざわ書店森岡、さわや書店伊藤、お2人の雑誌販売のアイデアと工夫を紹介する。
〔読者と従業員から情報収集/くまざわ書店営業推進部・森岡葉子〕
本部の営業推進部に入り約2年半になります。その前に店長経験を12年。メトロポリタン・プラザにある「いけだ書店池袋店」の店長は10年やりました。池袋店は雑誌売上げが高い店だったので、どんな工夫で売上げを伸ばしてきたかお話しし、雑誌が売れなくなってきているので、1冊でも多く売る工夫として何かの参考になればと思います。
なぜ雑誌が売れなくなったのか。私は今、本部にいて全国180店舗からいろんな情報が入ります。以前は「雑誌が足りない」「定期改正しても欲しい雑誌が入らない」という声が多かったのですが、最近では雑誌の返品が多く、返品用ダンボールが足りなくて困っているという声が多くあります。特に小規模店は書籍が1日10箱ぐらいしか入らず、書籍の返品も出るので、足りなくなります。取次のダンボールも有料になったので、ダンボールを注文していいかと聞いてきます。なるべくダンボールは拾ってくるように言っています。しかしダンボールがないからと返品をためこんでおくと売場がだんだん乱れてきます。
雑誌が売れなくなってきた原因を業界全体、出版社や取次の問題、書店の問題に分けて考えてみたいと思います。昨年は過去最大の雑誌の落ち込みでした。当社も同様に、前年比を超えている店は新店で2年目の店くらい。既存店で前年比を超えるのはむずかしくなっています。原因は明確で、まず他業種との競合。インターネットやフリーペーパーの影響でエンターテインメント系の雑誌が大幅にダウンしています。
ジャンルでいうと情報誌系がきびしい。それからテレビ番組誌。年末のテレビ番組誌は過去最低の記録になりました。それから時刻表、旅行情報誌、求人誌、一時ブームになった通販雑誌。すべてインターネットの影響で売れ数を落としています。売上げシェアの高い女性誌やファッション誌は付録に左右され、付録がよければ大爆発しますが、付録がなければ全く売れない状態が続いています。
書店から出版社、取次に言いたいこと、問題点をいくつか紹介します。
①自動配本システム
雑誌の自動配本システムのメリットは効率化が進み、実績に応じた配本になっているので、書店が手間をかけなくても、ある程度実績に応じた数が入ってきます。しかし、これが曲者で、デメリットにもつながっています。自動配本システムにどこまで人の手を加えることができるのかが今後の課題だと思います。
取次は実績、実績で、現場の売上げや前年比をもう少し細かく見て欲しい。別冊・増刊ですが、ある店で商品が14冊入りすぐに完売してしまいました。配本数は1年前の実績です。オープンして2年目で、売上げが120%ぐらい伸びている店なのに1年前の実績で配本されては足りなくなります。それらをどの程度取次がチェックしているのでしょうか。
②定期改正
欲しい雑誌が増えずに小部数雑誌がカットされてしまいます。3冊仕入れても、毎月3冊返品が出てしまう雑誌はたくさんあります。それでも店としてはどうしても品揃えしたい。それが実績で3カ月後にはカットされてしまう。
一方、売れない雑誌はなかなか減らないので、返品につながります。定期改正が生かされないので、「定期改正しても無理だよ。どうせ駄目だから」という中堅店長からの声を非常によく聞きます。
③ムックの増加
ムックで雑誌売場が占領され、陳列しきれないムックがあふれかえっています。月刊誌や週刊誌のスペースまで占領してしまう。ムックの新刊が毎日出るので、昨日入荷したものも返品せざるを得ませんが、何を返品してよいのかわからない。棚差しがパンパンになってしまっても、アルバイトやパートの経験では抜くことができなくて、月刊誌も週刊誌も抜いてしまう状態が続いています。
ムックの種類も多いので、爆発的に売れるものやブームになっているもの以外は、ほとんどの商品が売りっぱなし。3冊入って売れて、それに気がついていれば10冊売れた可能性もあるのです。
④目玉雑誌が減った
超売行き良好雑誌の数が頭打ちになっています。以前は各店から「コロコロが足りない」「チャオをよこせ」と言われましたが、最近は全く聞かれません。取次がきちんと配本している結果ならいいのですが、ピークに比べて半減している雑誌が多い。
この雑誌でこの特集を組めば売れる、『アンアン』のダイエット特集、『サライ』の京都特集は爆発するという過去の経験、数字が役立たなくなっています。どんな特集が売れるか分からなくなった。少し元気なのは団塊世代向けの雑誌で、NHKの『趣味悠々』『おしゃれ工房』あたりは多少元気になっている。一昨年あたりから家庭教育誌の動きがよかったのですが、これも種類が出過ぎて拡がらなくなりました。あとはパズル誌もお客様が売場にかなり立っています。
書店の側の問題点では慢性的な人不足が起きています。アルバイト、パートが採用できないし、常に人が足りない状況で売場のマネジメントをしています。メンテナンス不足が問題視されています。
書籍はメンテナンスをしようという意識がありますが、雑誌の仕事は朝来た雑誌を並べるだけで終わってしまいます。整理をまったくしない。朝、売場に商品を陳列したら夜まで誰も雑誌売場に行かない。行かないというより行けない状況です。売場が乱れたままでは雑誌は売れません。朝のメンバーが並べた陳列の修正も出来ない。朝のメンバーはほとんどがパート・アルバイトで成り立っています。人不足の中で新人で売場を回しているので、朝のメンバーが並べた雑誌は全く違う場所に並んでいてお客様が探せない。特集によって多面陳列や複数箇所陳列が必要な雑誌もあるのに、そういう修正をする時間と出来る人が少なくなっています。朝来て陳列する時、昨日発売で並べた雑誌が売れてしまったことに気づいてくれない。空いていた場所に商品を詰めて終わってしまう。
数の確保、管理もできなくなっています。定期改正をする時間も無く、細かいデータ管理をする時間が無い店もでてきています。追加手配ができなかったり、遅れることもしばしばあります。書籍のように毎日チェックをしないし、配本任せでほとんどが売りっぱなしでは、小部数で仕入れた雑誌がカットされていること自体に気づきません。
もう1つは情報収集不足。これも書店員の怠慢によるものだと思います。雑誌は出版社や取次からの情報が少ない。出版社の営業の方が店に来ても「来月出る雑誌の付録がいいよ」とか、「特集はどうだ」とか、雑誌の紹介をしてくれません。書籍のように事前注文書もないので、発売日に初めてこの雑誌にこんな付録がつくということがわかります。営業の方は書店を回るときに、ぜひ自社の雑誌について宣伝してください。
最近は付録組みが非常に多く、人手や時間を割かれています。ショッピングセンター内の店が多いので、1日、3日は朝から晩まで誰かが付録組みしています。ゴミも出るし、非常に非効率。もし、この人員を売場に割ければ1冊でも多くの雑誌が売れます。付録組みは、こんなふうにしたらいいという意見があれば、お伺いしたいと思います。
池袋店でやってきた雑誌販売の工夫を紹介します。数の管理ですね。その雑誌が何冊入って何冊売れて何冊返品したか。これは1年毎日やるべきことで、継続してやらなければいけません。少部数雑誌を切られる前に気がつくということ。毎日の積み重ねが売上げに結びつきます。小部数雑誌の場合は仕入れたら仕入れっぱなしにしないで、陳列の工夫をする。3冊入るとだいたいの店は、入ったその日に差しにしてしまいます。それをいかにお客様の目の届くところに陳列するか。そういう指導を店長自身していかなければいけないのです。
情報収集で私が意識したことは、売場で情報を収集して売場作りに生かしました。1つは従業員からの情報収集。私のいた店はアルバイト、パートが常時20人ぐらい登録していましたが、一人ひとり趣味も興味も違う。ある時、大学生の男性アルバイトの趣味が釣りでした。店は8割が女性客で従業員もほとんど女性だったから、釣りは全くわからない。来たものをただ並べるだけでした。彼に聞くと、「ぼくがほしい釣り雑誌がない。釣り雑誌といえば、これですよ」というので、切られていた雑誌を改めて3冊入れ、目立つところに陳列したら毎月3冊売れるようになりました。
ある時、東洋経済だか週刊ダイヤモンドで「ルイ・ヴィトン」特集をやったことがあります。ルイ・ヴィトンの大好きなアルバイトの子にどう思うと聞いたら、「売れると思います。でも、ビジネス雑誌のところでは動かない」と言うので、少し部数を追加して女性誌のところにも置いたら、普段の倍以上部数を伸ばしました。
お客様の話を聞くことも重要です。接客サービスにもつながりますが、私が売場にいる時はできる限り現場に立ちました。お客様もどんどん話しかけてくれますので、この雑誌がないとか、あの雑誌はどこにあるのという質問の中から売上げに結びつけることができました。雑誌の問合せノートを作り、聞かれたものは全部書いてもらいました。
品切れしている雑誌は雑誌担当者が気づかなくてもお客様情報から得ることができて、定期改正とか、追加対応できます。従業員教育にも使うことが出来ましたし、今日はこの雑誌、すごくよく聞かれているという情報交換もできました。
カウンターでは「今日売れている雑誌は何?」「朝から何が売れた?」と常に話しかけていました。23日に『CanCam』が売れるのはわかっているが、「店長、なぜか今日は朝から『VIVI』がよく売れています」「何か特集がいいのじゃないの。じゃあ追加をかけよう」となります。主要ファッション雑誌の次号特集のチェックもやりました。
それ以外に、『日経ウーマン』なども次号の特集を必ずチェックして、特集によっては書籍売場にもその雑誌を置く。いつも置いている場所だけでなく、違う場所に置くことで違うお客様が買います。今出ている『アテス』はアイスクリームの特集です。男性誌ですが、女性も買いたいと思うはずで、女性誌売場にも半分陳列する。売れた雑誌のバックナンバーはしっかり揃えておき、返品しない。アルバイトの子、パートさんが、自動的に明日出る雑誌を抜いちゃうことがあるので、情報教育を徹底して、もうあと半月置いて売り伸ばししようという取組みを心がけています。

〔雑誌も単品管理の手法で/盛岡市・さわや書店店長・伊藤清彦〕
雑誌版元で部長とか取締役、幹部になっている人はだいたい80年代後半から90年代前半に入社した方だと思います。そういう人は若いとき、バブル時代で作ったものを取次を経由して書店に並べれば売れた時代を経験している。書店側も並べれば売れたことを成功経験として持っている人が上にいる。これは非常にやっかいです。自分達のときは売れたという成功体験が邪魔している。はっきりいえば、そういうものは無い方がいいんです。世間のバブルは80年代後半から90年代頭までですけれど、書店バブルは90年代半ばまで続いた。それ以前に書店に入って、今、役職になっている人は今の時代に対する現実的対応がないと思います。
現実を見つめるところから始めましょう。雑誌1誌あたりの売上げ数は確実に減っています。『文藝春秋』は昔、百万部売れましたが、今は遠い数字です。大衆がいなくなったんですね。大衆が消えて、今は分衆です。自分の主義や趣味に走る人たち。昔はある程度の政治的なものとか、論調を見たかったら『文藝春秋』1冊読めばよかった。今はそれじゃもう飽き足りない。まったく違うものを求め、趣味雑誌がどんどん売れている。
女性誌でいえばカバーする読者層に10年ぐらいの幅があったのが、今はみんな1、2歳の幅になりました。どんどん狭くなっています。この流れはもう止められません。マスを対象にたくさん売れる時代はありえないんだ、というところから議論していかなくてはいけません。
簡単にいえば今、必要なのは雑誌の単品管理です。雑誌すら単品管理せざるを得ない。雑誌にはスリップがありません。それをどうするか。
考え方として、雑誌は朝来て並べて終わっているから売れない。並べるのはこういうふうに積んでみたという仮定です。その結果、どう動いたか。動かなかったか。動かなかったのもひとつの情報です。じゃあ、なぜ動かないのか。場所がよくないのか。隣の雑誌との組み合わせがよくないのか。それとも特集が面白くないのか。1冊ずつ検証しなくてはいけないのです。
雑誌の平台がメインだと思いますが、どこが一番売れるでしょうか。それは当然店の人間が知っています。そこにまず何を積むのか。積んでみて売れたか、売れなかったかを、まず検証する。普通の書店は売れても売れなくても次号が入るまでずっと同じところに積んでいます。これは非常に楽なやり方。
『JJ』でも『CanCam』でも売れる号と売れない号があります。次号が何の特集か見るのは当たり前です。それとL表示を見てください。何月何日まで売れるのか。L表示を過ぎても版元と交渉すればいいのですが、普通に返すにはL表示をきちんと見ておく。1回見れば頭の中に残ります。
平積みの考え方としては、売れる速さです。初速ですね。それと値段。うちはカタログ雑誌を昔から敵視していまして、ほとんどカットしています。出版社がきちんと原価計算して560円で売ろう、700円で売ろうと定価をつけてくるところに、150円とか200円、無料でもいい雑誌を置くということは失礼です。同じような厚さ、同じような美しさを持っていて、なぜ片方が800円で、片方が200円なのか。割高感があります。結局、場所を貸す必要はない。
たとえば『T生活』を取次がたくさん送ってくる。最初の日はテレビ宣伝とかあって売れるかもしれませんが、2日目以降はどういう動きをするか。2日目は3冊動いたとして1冊200円なら600円です。だったら平凡社の『太陽』のムックを積んだ方がよい。1冊売れば2千円になります。通販雑誌が数冊売れたところで、『太陽』1冊にはかないません。そこの場所に積んだことでどれだけお金が動くか。お金の計算をしていかなくてはいけないと思います。
平積みをただ無造作に積んでいる書店がありますが、5冊ずつ交互にきちんと積んでほしい。そうすると目で見てわかる。売れたか売れないか、レジで聞かなくても見ればわかる。売行きを目で見て感じて、手で触って感じるということが必要だと思います。
朝は忙しいです。だから朝はとりあえず通路の荷物を売場に並べればよい。朝から完璧は求めない。それで、そのままでいいかというと、それぞれの店には売れるピーク時があります。日中にサラリーマン、OLが来て買っていく。すると棚とか平台とか動くわけですよ。すいたところでもう一度設定し直します。そこで重要なのが目で見て、これは売れている。売れていない。売れていない雑誌が前にあれば場所を変える。これを1日に2回ないし3回やります。
店というのは立地や商圏特性、客層、競争条件と全部違いますから一律に同じようなマニュアルはありえません。マニュアルを作ればそれに縛られて、売れなくなるのは当たり前です。ですから、自分は雑誌に対してこういうふうに考えていますという考え方だけを伝えたいと思います。
朝は出すことが先決。昼のピーク時を過ぎたところで再構築する。その間に何をやるかというと、毎日、平積み商品をチェックして数を書き込んでいく。昨日は『JJ』が2冊売れた、3冊売れたと書き込んでいきます。残のところは赤でわかりやすく、グラフまではいかないけれど一目瞭然でわかりやすくする。それによって動かない商品を早く見つけます。動く商品は優先的によい場所に移動していく。そうやって毎日組み換えをしています。
「これは絶対売れる」とたくさん取ったものは、最初から多面展示します。10日に『文藝春秋』が出れば、レジのところ、平台など多面展示で一気に減らす方法を考えます。売れる早さが大切なんです。POSレジでは1カ月かけて30冊売れたものも、2、3日で30冊売れたものもデータ的に同じです。ところがそれは全然違う。
出版社によっては在庫を持っているところがあります。小学館、講談社などの大手はほとんど在庫を持っていませんが、小さい社は意外に在庫を持っています。注文すれば1週間以内に入る。『ダイヤモンド』とか『東洋経済」あたりで、20、30部と注文すると次の日に宅急便で送ってきます。特集を見て売れそうだなと思えば追加して攻める。
週刊誌の場合は45日、月刊誌は60日使えます。売れないものを60日置く必要はないけれど、売れるものは60日置いてもかまわない。おっちょこちょいの人は古いのを買っていったりしますので、バックナンバーですよという表示は必要ですけれど。
売れる早さということに関して言えば、30冊入荷したものを平積みにして1日、2日で25冊売れた。次に棚に移行しなければいけない。この場合、そのスピードなら棚に移行しても売れるんです。でも棚に移行すれば折れたり破れたりする可能性が高くなる。それで、シュリンクします。この動きの早さからいけば、きれいなもので棚に持っていけば完売する。実際にやったところ売上げが37%伸び、返品は10%を切りました。
追加のきく出版社は個別的に探るしか方法がないでしょうけれど、取次かどこかが一覧表を作ってくれたらいいだろうなと思います。小学館でも『サライ』は在庫を持っているけれど『CanCam』はないとかいうことがあるんです。そういうのがみんなにわかるよう共有のものがあればいい。
これからの雑誌の販売はやはり単品管理だろうと思います。書籍と同じような手法をしていく。雑誌を手にしたら、特集は何なのか。うちの場合だと盛岡に関係する記事はないか。あればそれをメインにPOPを書きます。わずかな記事でも、それによって完売に結びつくことがある。あとは雑誌に関連する書籍があれば、書籍売場にもっていってもいいし、雑誌売場に書籍を持ってきてもよい。最近、主婦と生活社から「品格」の本が出ましたが、それと一緒にPHP新書の『女性の品格』を並べるのは当たり前な話です。
組み合わせることが可能なものはいっぱいあります。たとえば子育て雑誌が出る日にA4判の雑誌のスペースには文庫が4面積めます。そこに子育てに関連する文庫を積めばいいんです。子育てはストレスの最たるものですから、関連本はいっぱいある。一言添えて雑誌のそばに積めば、両方買っていってくれます。プラスワンになります。そういう工夫が必要だと思います。もっとも、それをずっとやっていてはだめで、一週間やって動かなかったらやめてください。
パートワーク誌の扱いは非常に危険な存在だと思います。最初はいいです。テレビでも宣伝しますし。でも、アレを在庫として持ってしまうと、1号目以外は薄くて高い。わずか10㌢、20㌢で何万円という金額の在庫になります。それを気づかないで結構置いている本屋があります。あれは返品した方がいい。データで本当に売れているとわかっているものなら、定期購読に結びつける。そうでない店売のパートワークは危険です。
ムックは鮮度管理が必要です。ムックはフリー入帳という建前が危険なんです。いつでも返せるという安心感で、つい持ってしまう。だからムックはレギュラー誌以上の目配りが必要な商品です。
取次が「こういうのが先月出ましたから活用してください」とデータを持ってきました。1月に持ってきたのが、全部クリスマスのデータでした。その程度のものですよ。
それとデータは地域性を加味していません。東京に出版社が集中することの弊害です。ある出版社は1月に「春の園芸フェア」を薦めて来ました。1月の盛岡は雪と氷に閉ざされて一番寒い時期です。誰が園芸書を買うでしょうか。東京とは2カ月も季節差があるのに全国一様に薦めようとしているのです。
関西の釣り情報誌で「釣りサンデー」が東北にも相当送られてきます。和歌山沖で何が釣れたとか、高知沖がどうだという情報が岩手の釣りファンと関係あるでしょうか?もっと地域に密着した営業の仕方があるはずです。出版社はデータの精度をもう少し上げたほうがいいと思います。これ以上言うと版元攻撃が始まりますので、この辺でやめておきます。

13坪の文化空間演出するブックスキューブリック

福岡・天神の繁華街から西に1㌔ほど。「けやき通り」に面して売場13坪のブックスキューブリックがある。フローリングの床、白熱灯の照明、新着雑誌をディスプレイしたウインドウ、入口横に置かれた椅子とテーブル、観葉植物など街の本屋らしからぬ書店を営むのは大井実さん。開店から7年。本のコンシェルジュを目指すという大井さんの書店経営と出版業界への意見を聞いた。
大井さんは福岡で書店を開業する前、東京と大阪でファッションショー、美術展などのイベント、ギャラリー、地域新聞などの仕事を手掛けてきた。1年間、イタリアに住んでアート、建築、街づくりも吸収してきた。
しかし、催し、イベントは一過性。同じ文化にかかわるのでも一般の人に文化、芸術を紹介する身近な窓口は書店ではないのかと考え、福岡に戻って積文館で約1年アルバイト。この間に希望通りの物件が見つかり、39歳で開業した。
書店オープンは2001年。店名の由来はキューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」から連想した。2001年は21世紀の始まりの年で、旅立ちにはふさわしいし、アート系の映画にこだわりながら、興業的にも失敗しなかった同監督に書店の姿を重ねた。アートとビジネスを両立させたいという思いを込めて店名としたのだ。
奥様の真木さんがインテリア・デザイナーとして別会社を経営しており、内装を引き受けた。大井さんは木の床、白熱灯、窓を広くスルーな感じにと注文した。床材は日田の製材所から運んで仕上げた。フローリングの床は温かみがあり、居心地のよい空間に仕上がった。
小さいながら洒落た空間は評判を呼び、ドラマの舞台として使われたほか、熊本の老舗、長崎書店の跡取りがキューブリックを気に入り、昨年自店をリニューアルするにあたっては夫婦で協力した。同規模の街の書店なら店頭に並ぶはずの週刊誌・雑誌販売台がキューブリックにはない。書籍と雑誌の販売比率は6対4で書籍が多い。コミックは販売せず、外商もない。
書籍は新潮文庫をのぞいて版元や取次のパターン配本を断っている。すべて自主発注。取次週報、新聞書評、bk1の新刊紹介、気になる書店のランキングをチェックする。店のテイストに合う出版社には新刊案内を送ってもらう。1日に9号段ボールで2、3箱入荷する書籍はほとんどが発注した商品だ。
大井さんはビジュアル・ジャパンのwebPOSを導入しており、2日に一遍ずつ単品データをチェックしている。これはと思う本は最低2冊で平積みして、お客様の反応を見る。動きがあるようなら補充をかける。版元にはFAXで直接発注する。パソコンFAXだから注文書から出版社を選択して送信まで15秒くらいでできる。
仮説を立てるのは大井さんだが、検証するのはお客様。毎日が仮説、実験、検証の繰り返しで、お客様と一緒に品揃えし棚を作ってきたと大井さんは言う。入口右手の平台に並んでいた谷川俊太郎詩集『すこやかにおだやかにしなやかに』(佼成出版社)は、この1年間で百冊近く販売した。「どこにでも置いてある本はある時点でぱたっと止まるが、あまり置いていない本はコンスタントに売れていく。そういう本をどうやって発見していくかが書店の仕事だと思います」
自主発注で気になるのは返品だが、岩波、福音館や専門書出版社など初めから買切りとわかっているところ以外で逆送になった場合でも、返品了解をとって返しているので、ショタレはまずないそうだ。
それより、大手出版社はランクに沿った配本を優先するため事前注文を一切受けないことが問題で、硬直していると大井さんは批判する。中小版元であれば事前注文を受ければ指定をつけて送ってくれるのに。
「本が売れるにはいろいろな要素があり、値段と内容のバランスが合っていないもの、活字が詰まりすぎているものと、仕入れてみなければわからない要素がある。お客様が本を買う場合、まず手にとって表紙や紙質を見て、パラパラめくって、最後に値段が妥当ならレジに持ってくる。本来、書店がそういうことを全部チェックしなければいけないのだが、現状では無理。だからこそ、事前にカラー画像付きの書誌情報を提供してもらい、事前注文を受け入れる仕組みを作ってもらいたい」
事前注文で部数がまとまれば出版社も計画的な刷りができる。返品率も下がるはず。返品を下げた原資で書店のマージンを増やす。
大手版元のマーケティングに関しては、芥川賞を受賞した『アサッテの人』の受賞後の刷りが3万5千部だったことにも批判が及ぶ。新聞広告を見て地方の読者が読みたいと思っても、この刷りではどうにもならない。問合せに対応する体制を作ってから広告を出すのが真っ当な姿勢ではないか。注文しても重版待ち。ブックライナーにはありますというのはおかしい。これまで販売拠点であった地方の小書店がつぶれていくのは書籍が入らないからだし、規模で書店を選別し、ランクをふりかざした配本では小書店がやる気を起こさないのは当然だと大井さんは指摘する。とにかく13坪の小型書店だ。1㌔離れた天神に足を伸ばせばジュンク堂、丸善、ツタヤが軒を並べる。天神まで行けば欲しい本はあるかもしれないが、バスに乗って出かけ探し回る手間を考えれば、店に無い本はe―hon、ブックライナーで取寄せれば数日で入手できる。それならキューブリックに頼もうというお客様がいる。ホテルのコンシェルジュのように、本に関する相談をしてもらう。そういう役割を担いたいというのが大井さんの考えだ。顧客は30代、40代から団塊の世代が多い。客単価も千七百円とかなり高い。
ブックスキューブリックのホームページは充実している。営業案内、地図・アクセス、書籍紹介、本の注文は当たり前だが、「けやき通り通信」ではギャラリーの催しものを案内し、レストランの紹介や、個性的なカフェのオーナーを紹介するコーナーを持つ。けやき通りのおすすめスポットにもリンクを張る。
来店客数を倍に増やすのは難しいが、ホームページのアクセス数を伸ばすのは不可能ではない。毎日150人が見に来るが、これを500人に伸ばすのが当面の目標。本の紹介は「うちのテイストに合うものならどんどん書いていいよ」とアルバイトのスタッフにも書いてもらう。ホームページを強化して、もっと地域のお店や魅力を紹介していきたいというのが願いだ。
大井さんが中心になって昨年から取組んでいるのが「ブックオカ」のイベント。今年は10月に福岡の書店員70人ほどが文庫本を推薦する「福岡の書店員が選ぶ激押し文庫」の共通フェアを行い、リリー・フランキーがデザインした文庫カバー60万枚を作る。読者が持ち寄る「1箱古本市」や展覧会も計画している。
「本屋は楽しい」ともらした大井さんの言葉が印象に残った。(田中編集長)
〔ブックスキューブリック店舗データ〕
▽所在地/福岡市中央区赤坂2-1-12
▽ホームページ/http://www.bookskubrick.jp
▽代表/大井実
▽売場面積/13坪
▽創業/2001年4月
▽営業/10:30~21:00(日祭日11:00~20:00)
▽定休日/毎月第3月曜
▽書籍対雑誌=6対4
▽客単価=1700円
▽従業員=非常勤3名
〔ブックスキューブリック最新売上げベスト10〕
(8月15日~19日調べ)
①「となりのクレーマー」関根眞一、中央公論新社②「博士の本棚」小川洋子、新潮社③「医療の限界」小松秀樹、新潮社④「写真ノ中ノ空」谷川俊太郎、アートン⑤「女性の品格」坂東眞理子、PHP研究所⑥「デザインのひきだし2」グラフィック社⑦「徒然印度」小坂章子、書肆侃侃房⑧「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦、角川書店⑨「次郎と正子」牧山桂子、新潮社⑩「日本人の矜持九人との対話」藤原正彦、新潮社
〔「心地よい書店空間に感銘」/大阪組合経営活性化委員長・灘憲治〕
本紙田中編集長とともに、福岡のブックスキューブリックを訪問したのは、お盆休みが終わった土曜の午後である。
私の店もキューブリックと同規模の店だが、同じ書店といってもずいぶん雰囲気が違った。訪問した感想をというので、以下にまとめてみた。
××
大井実さんは深く思考し、強く願い、着実に行動した。2001年に混沌の宇宙へ船出したのである。
母船(店)は完全コントロールが出来る大きさで建造してある。
出来上がった本屋は、小書店の誰もが思い描く理想の形に近く、立地・店舗外観・店内装備・厳選した書籍と雑誌には統一感があり心地よい。
お客様は店内をクルリ一廻りすれば、掘り出し物を見付ける時の期待と、高揚感も味わえるだろう。
「中途半端なパターン配本は要らない」「自分が置きたいものしか置かない」と大井さんは言う。(同感!同感!)
従って、コミックや学参は無く、アダルトも無し、週刊誌はわずかしか置いてない。
配達も外売もしないから、店主は選書とお客様への対応に集中出来る。
大人のためのプロ書店を目指しているのである。
大井流常識はずれの経営方針は痛快でもあった。

ギリシャ7日間の旅/日書連企画、参加者を募集

日書連では組合員ならびにご家族を対象とした特別企画「ギリシャ7日間の旅」を11月に実施します。ふるってご参加ください。
〈実施要領〉
▽日程=11月7日(水)~11月13日(火)
▽費用=18万8千円(1人部屋希望の場合は追加料金4万6千円)
▽募集人数=60名(最小催行人数30名)
▽申込締切=9月14日(金)
▽添乗員=成田空港より同行
▽食事=全朝食付
▽問い合わせ・申し込み先=ベストワールド℡03-3295-4111
〈旅行スケジュール〉
11月7日(水)=成田発、イスタンブール着。イスタンブール泊。
8日(木)=イスタンブール市内観光。午後アテネへ。アテネ泊。
9日(金)=アテネ市内観光。第一級の世界遺産、アクロポリス丘上にそびえる守護神、アテネ・パルテノン神殿等。アテネ泊。
10日(土)=終日自由行動。アテネ泊。※オプショナルツアー=①エーゲ海クルーズ(1万8500円)
11日(日)=終日自由行動。アテネ泊。※オプショナルツアー=②コリントス半日観光(1万1600円)③スニオン岬半日観光(1万円)
12日(月)=アテネ発、機中泊。
13日(火)=成田着。

江東・江戸川支部で夏期交流会

東京組合江東・江戸川支部(本間守世支部長)は8
月24日、東京湾に納涼船を仕立て、夏期交流会を実施。支部書店18名、近隣支部10名、出版社18名などが出席した。
納涼船は小名木川から隅田川を下り、海風に吹かれながらお台場沖で夜景を楽しんだ。本間支部長は「今年の夏は年金、参議院選挙、猛暑で経営は苦しいが、今日ばかりはゆっくり楽しんで」とあいさつ。祥伝社石原実営業部長が「毎年楽しみにしている。この納涼船に乗らないと、夏も終わらない」と述べて乾杯の音頭をとった。