全国書店新聞
             

令和2年12月1日号

九州地区ムック返品を現地で古紙化/書店の運賃負担軽減へ出版社に協力求める/九州雑誌センターで来夏に本稼働

九州各県の書店商業組合で構成する「九州地区ムック返品現地古紙化推進協議会」(安永寛代表=日書連九州ブロック会会長、福岡県書店商業組合理事長)は11月13日、東京・千代田区の出版クラブビルで出版社説明会を開催し、九州地区のムック返品を現地古紙化することについて協力を求めた。ムックを定期雑誌と同様に九州雑誌センター(福岡県飯塚市)に返品することで、書店の返品運賃コストの軽減を図るもので、来年夏頃に本稼働を予定する。説明会にはZoomでの配信と合わせて出版社170社が出席した。
説明会の冒頭で、九州雑誌センターの近藤敏貴社長(トーハン)が、ムック返品現地古紙化の必要性と意義について説明した。近藤社長は出版流通の現状について、1990年代半ばをピークに流通部数は現在40%の業量まで減少し、特に流通のベースとしてきた雑誌マーケットの急激な縮小で出版流通ネットワークは戦後最大の危機に瀕しており、抜本的な構造改革が急務だと指摘。そして、「さらに深刻なのは書店の経営環境の悪化。特に2016年以降は運賃コストが急激に上昇し、九州地区から首都圏への返品運賃の負担が書店経営に与える影響は甚大だ」として、九州雑誌センターで定期誌同様にムックを現地古紙化することで、書店の返品運賃を大幅に削減できると強調した。
そして、ムックの返品率は50%超で、最終的に約半分が古紙化されていること、また総返品量における九州地区の割合は約8%、九州雑誌センターに返品する書店の占有率は約5%と説明し、「今回の取り組みで出版社の再出荷に影響が出るのは全体の約2・5%。量がわずかだというつもりはなく、出版流通ネットワークの全体最適化の体現、再デザインに向けた取り組みの第一歩であり、ぜひご理解とご協力をいただきたい」と述べた。
続いて、BOOKSあんとく(福岡県久留米市)の安徳紀美社長が、昨年九州地区で返品運賃が8~10%上昇し、書店経営は緊迫していると現状を報告。同社のあらお店(熊本県荒尾市)から出版共同流通蓮田センター(埼玉県蓮田市)までの返品運賃は1箱1300円かかるが、九州雑誌センターまでなら890円となり、入帳も早くなると説明。「ムック現地処理化の声に耳を傾けてほしい。この流通改革を出版社に承諾していただくことで削減される運賃を、本業に活かしていきたい」と話した。
福岡金文堂(福岡県福岡市)の山本良社長は、「『この銘柄は再出荷する予定だから古紙化はやめてほしい』ということもあるだろうが、書店の現場としては、『この銘柄は東京に返す』という判別は不可能。申し訳ないが出版社ごとに(古紙化に)OKを出してほしい。遠隔地の九州は運賃が非常に高く、これ以上は耐えられない状況になりつつある」と訴えた。
この後、九州雑誌センターの石橋武取締役支店長が、センターの施設概要とムック対応の管理業務体制について、トーハンの牧野宏章雑誌部長が、九州地区ムック返品現地古紙化の承諾と申込手続き方法についてそれぞれ説明した。
日書連の矢幡秀治会長は「コロナで特需が生まれた書店もあったが、売上が悪くなった店も多かった。書店経営の厳しい状況は変わらず、日書連傘下組合の加盟書店も全国で3千店を切り、非常に危惧している。その中で、ムックの返品現地処理を実現することで九州の書店が経費を節減できるのは非常にありがたいこと。出版流通改革の第一歩であり、ぜひご協力をお願いする」と要請した。
日本出版取次協会(取協)の平林彰会長(日販グループホールディングス)は「10月の取協理事会でも全面的にこの企画を支援していこうと決議した。この企画の成否は出版社のご賛同にかかっている」と協力を呼びかけた。
最後に、協議会の安永寛代表が閉会あいさつ。「九州雑誌センターは約30年前、明治・大正生まれの先輩たちが作った。我々も後を引き継いで一生懸命やろうと思っている。ぜひこの事業に参加していただきたい」と結んだ。

21年度学参・辞典勉強会を動画配信で開催

学習参考書協会・辞典協会は、来年2月初旬に開催を予定する「2021年度新学期学参・辞典勉強会」を動画配信で行うと発表した。視聴は学習参考書協会のサイト上で登録する(https://gakusan-kyokai.jp/benkyokai2021)。勉強会の講師は、世界思想社教学社の赤阪泰志氏(元ちくさ正文館書店ターミナル店)、旺文社教育情報センターの石井塁氏。

1等賞はじめ各当せん番号を決定/第47回「読書週間書店くじ」

日書連が主催する第47回「読書週間書店くじ」の抽せんが11月11日、東京・千代田区の書店会館で行われ、1等賞「図書カード1万円」から4等賞まで各賞の当せん番号を決定した。読者への当せん番号発表は12月5日(土)に日書連ホームページと書店店頭に掲示するポスターで行う。
抽せんは、書店くじの協賛社、協賛団体、日書連役員の立会いで行うことが通例となっているが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、日書連・矢幡秀治会長が代表して番号の抽せんを実施。0から9までの番号を記した10個のボールを抽せん箱に入れ、中からボールを1個取り出す方法で、1等賞から4等賞までの各当せん番号を決定した。矢幡会長は、「読者の方には、1等賞を5千円から1万円に復帰させたのでぜひ楽しみにしていただきたい。書店に足を運び、読書週間標語の『ラストページまで駆け抜けて』のように、たくさん本を読んでいただけたらうれしい」と話した。
書店くじの引き換え期間は、12月5日(土)の当せん番号発表から21年1月10日(日)まで。書店で賞品に立て替えた当せん券は、当せん番号発表ポスターと同送する「引換当せん券清算書」に必要事項を記入の上、一緒に同1月31日(日)までに日書連事務局へ送付する。当せん番号発表ポスターは、日書連ホームページ(http://www.n-shoten.jp/)からダウンロードして印刷することもできる。

官公需の受注推進へ定款改訂/SNS活用し情報伝達迅速化/兵庫総会

兵庫県書店商業組合は10月20日、神戸市の神戸市立婦人会館で第32回通常総会を開催、組合員65名(委任状含む)が出席した。
総会は中島良太副理事長(三和書房)の司会で進行し、森忠延理事長(井戸書店)があいさつ。森理事長は、「今年はコロナ禍により、絵本ワールドが中止となり、半年ほどの間十分な活動ができなかった」と回顧。兵庫組合の組合員数は5店減の123店と報告するとともに、コロナ禍の中で日書連傘下組合の加盟店には、全国書店再生支援財団より新型コロナウイルス対策支援金として1店舗当たり5万円が支給されたこと、マスクの確保が困難な時期に、出版社有志と取次の支援でマスクが配布されたことを紹介して、「組合に加盟するメリットがあることは明確だ」と指摘。「大きな転機に立っている今、組合の継続的運営に協力を」と呼びかけた。
続いて、山根金造理事(巌松堂書店)を議長に選出して議事を審議し、各委員会報告、各支部報告、収支決算報告、監査報告が行われ全て原案通り承認可決した。また、官公需の受注を積極的に行うため、定款の一部変更と、官公需共同受注規約案が議案提出され、賛成多数で議決した。
令和2年度事業計画について森理事長は、新型コロナウイルス感染拡大対策を掲げたほか、改訂された定款と官公需共同受注規約を兵庫組合のホームページで閲覧可能にするとともに、SNSを活用して情報伝達のスピード化を図り、理事会についてもリモート参加を可能にするとの方針を示した。(安東興広報委員)

9月期販売額は0・5%増/書籍、雑誌とも前年比プラスに/出版科研調べ

出版科研調べの9月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比0・5%増となった。
内訳は書籍が同0・3%増、雑誌が同0・8%増。書籍は、大部数の新刊のヒットが多数登場。雑誌は有力新刊の刊行が相次いだコミックスが好調だった。雑誌の内訳は、月刊誌が同3・6%増、週刊誌は同12・7%減。
書店店頭の売上は、書籍が約1%増。文芸書は、池井戸潤『半沢直樹アルルカンと道化師』(講談社)や馳星周『少年と犬』(文藝春秋)が牽引し約27%増となった。雑誌の売上は、定期誌が約6%減、ムックが約10%、コミックスが約15%増。コミックスは、『鬼滅の刃』(集英社)の売行きは落ち着き始めたが、『ONEPIECE』『キングダム』(ともに集英社)など人気作品の新刊が集中し大きく伸長した。

「春夏秋冬本屋です」/「全部欲しくてたまらない」/青森・成田本店しんまち店図書部業務係長・齊藤夕子

書店にいて大変なことが一つある。といっても業務上の話ではない。
約20年前に新選組が題材の某少女漫画を読んで興味を持ち、さらには某大河ドラマが始まり、どんどんはまっていった。子母沢寛の新選組三部作、永倉新八の新撰組顛末記も一応読んだ。浅田次郎の壬生義士伝は映画もドラマも見た。
烏合の衆などと言われたり良いイメージを持っていなかったが、その作品や資料によって評価も人物像も全く違ったりするため、だんだんと隊士たちが魅力的に見えてきた。いろんなエピソードを知りたくなり、目にする関連本はなんでも購入した。
せっかく商品を目にしているのだから、ペラペラっと覗いて選別すればいいものを、さして大きくもない本棚にそれを並べ自分の物にしてからじっくり浸ってみたい。そんな自分がいる。帯の魅力的な宣伝文句を見るともう欲しくてたまらない。それを考えた人もプロだからまんまと乗せられているワケだ。
だから、書店にいると大変なのだ。けれど、わざわざ出向かなくてもたくさんの本を目にできるのだから幸せなのかもしれない。
先日、欲しい分冊雑誌がどんどん出て困ってしまうとお客様が嘆いていたが、「全部揃えたい気持ちも分かるし大変ですよね」と思いながら、「毎号取り置きもできますよ」と声をかける。私も書店員(のプロ?)の端くれなんで…。

河出『オリンピックデザイン全史』を特別増売/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は11月5日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
総務・財務委員会では、令和3年1月以降の理事会等の日程を次の通り承認した。1月休会、2月2日(火)、3月2日(火)、4月2日(金)、4月23日(金)臨時理事会、5月休会。通常総代会は5月19日(水)開催。
事業・増売委員会では、出版社3社の担当者が企画説明を行った。
河出書房新社から『オリンピックデザイン全史1896―2020』(12月1日発売)の特別増売企画について説明があり、実施を承認した。条件は4ヵ月延勘(委託扱い)で、売上に対する特別報奨を用意。全組合員に1冊配本して増売に取り組む。販売期間は来年3月31日まで。
小学館からは、『小学館の図鑑NEO+分解する図鑑』(11月26日発売)について説明があり、増売商品として取り組むことを承認した。また、卒園記念辞典の早期採用キャンペーンについて説明があった。
NHK出版は、東京組合が特別増売企画として取り組む『不調を食生活で見直すためのからだ大全』(11月19日発売)について説明。既刊の『からだのための食材大全』も併せて拡売を要請した。
共同受注・デジタル委員会では、日本教育公務員弘済会東京支部から受託した2019年度「学校図書助成事業」について、今後の反省点や改善案を説明。また、20年度の同事業のスケジュールを説明した。

地域の読書普及に貢献/3団体に野間読書推進賞/読進協

読書推進運動協議会(読進協=野間省伸会長)は11月6日、東京・千代田区の出版クラブビルで第50回野間読書推進賞の贈呈式を開催。団体の部で「世田谷親子読書会」(東京都世田谷区)、「おはなしの木」(宮崎県宮崎市)、第50回記念特別賞として「三島読書グループ連絡協議会」(愛媛県四国中央市)を表彰した。
贈呈式で野間会長は「今年は感染症対策のため、図書館の休館、学校の休校を余儀なくされ、各種イベントも中止になるなど、読書推進運動にとり試練の年だった。一方、巣ごもり生活の中で本を読むことの素晴らしさが再認識された。来年こそは感染症が収束して読書推進運動に携わる方々が安心してご活躍できることを祈念する」とあいさつ。選考経過を報告した日本国際児童図書評議会の野上暁副会長は、「今回は候補者推薦で個人部門の推薦がなく残念だった。次年度に期待したい」と述べた。
受賞者あいさつで、世田谷親子読書会代表の工藤知子さんは、「読み聞かせ、読書会に加え、工作やお出かけ、ゲームなど、本に興味を持てるきっかけ作りを積極的に取り入れている。今後も親子や仲間と本を楽しむ環境作りを続けていきたい」と語った。

第1回「TSUTAYAえほん大賞」/『パンどろぼう』に決定

蔦屋書店は10月29日、東京都渋谷区の代官山蔦屋書店で第1回「TSUTAYAえほん大賞」の授賞式を開催し、大賞は柴田ケイコ『パンどろぼう』(KADOKAWA)、新人賞はながしまひろみ『そらいろのてがみ』(岩崎書店)に決定した。
この賞は、全国のTSUTAYA・蔦屋書店の児童書担当者が「自分の子どもに読み継ぎたい、語り継いでいきたい」「50年後も読まれている作品をTSUTAYAで育てていきたい」という願いを込めて、直近1年間に出版された絵本の中から選出するもの。
当日は、保育士など育児に関する資格を多数取得しているお笑いタレント・タケトさんが司会、今年ママになったばかりのお笑いタレント・横澤夏子さんをゲストに迎え、受賞上位10作品と新人賞を発表した。
タケトさんと横澤さんは、受賞作品を読んだ感想や、どんな絵本を我が子に読んであげたいかなどの話を交えながら、会場を盛り上げた。大賞受賞の柴田氏は「私にとってパンどろぼうはチャーミングで憎めない存在。これからも愛される存在であれば幸い」と喜びを語った。
受賞作品は10月30日より全国のTSUTAYAでコーナー展開している。2位以下の作品は次の通り。
2位=ヨシタケシンスケ『ねぐせのしくみ』(ブロンズ新社)、3位=松田奈那子『ふーってして』(KADOKAWA)、4位=しもかわらゆみ『ねえねえあのね』(講談社)、5位=鎌田歩『巨大空港』(福音館書店)、6位=えのもとえつこ『ふみきりくん』(福音館書店)、7位=しおたにまみこ『やねうらべやのおばけ』(偕成社)、8位=安東みきえ『ふゆのはなさいた』(アリス館)、9位=長谷川義史『おおにしせんせい』(講談社)、10位=鈴木まもる『どこから来たの?おべんとう』(金の星社)

新型コロナ対策のアンケート結果を掲載/日販「書店経営指標2020年版」

日本出版販売(日販)は、全国の書店の経営関連データを収集分析した「書店経営指標2020年版」(日販営業推進室出版流通学院編、B5判、52ページ、頒価本体1500円)を発行した。本年度は全国59企業675店舗のアンケート調査をもとに、書店の経営効率や書籍・雑誌をはじめとする取扱商品の販売動向などを分析している。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、書店での感染防止対策や店舗運営における変化などに関するアンケート結果も掲載している。
◆企業編
企業ベースの売上高は全体平均で前年比0・8%減、売上総利益は同1・3%増だった。
資産の前年比は、総資産額が同0・1%増、商品在庫額が同2・9%増、短期借入金が同7・1%増、長期借入金が同26・2%増。
書店事業の主な商材の売上高前年比は、Bookが同1・4%減、文具が同28・1%増、レンタル・セルが同8・7%減。
収益性関係比率は、総資本対経常利益率が0・77%で同0・09ポイント減少。自己資本対経常利益率は8・35%で同3・16ポイント増加した。売上総利益率は30・41%で同3・88ポイント増加。販売・管理費率は30・24%、営業利益率は0・17%、経常利益率は0・44%。経常利益率は前年と同じだった。
活動性関係比率は、総資本回転率が1・63回で同0・25回増加、商品回転率が4・08回で同0・03回増加した。
安全性関係比率は、総資本対自己資本比率が13・60%で同2・09ポイント増加、売上高対純借入金比率が49・16%で同25・9ポイント増加、流動比率が109・14%で同6・68ポイント増加、当座比率が26・16%で同2・36ポイント減少した。
◆店舗編
店舗ベースの売上高は全体平均で同1・9%減。最も高い立地は駅ビル(同0・8%減)、低い立地は商店街(同3・1%減)だった。売上総利益率が前年より増加した店舗の割合は44・4%で同4・4ポイント増加した。営業利益率では51・8%の店舗が前年より増加し、増加ポイントは2・7ポイントだった。
◆商材編
商材別の売上高は、飲食料品・雑貨が同9・2%増、文具が前年と変わらず。一方、Bookが同0・7%減、レンタルが同9・0%減、セルが同6・5%減、ゲーム・トレカが同5・8%減と前年を下回った。
◆「新型コロナ感染防止対策」に対するアンケート結果(いずれも複数回答)
「新型コロナウイルスの感染拡大により営業を制限しましたか?」という質問に対し、「通常通り営業」13%、「通常と異なる形で営業」70%、「休業」21%の回答だった。
感染拡大予防について店舗における衛生管理面で講じた対策については、「ビニールカーテンの設置」「コイントレーの使用」「レジ待ちの距離を保つ床サイン」「アルコールスプレーの設置」「お客様への感染防止協力のお願い掲示」「感染対策の従業員指導」の回答が90%を超えた。
店舗運営や方法については、「宣伝/集客キャンペーン自粛」92%、「営業時間短縮」69%、「自粛期間の児童書/学参コーナー拡充」67%、「キッズスペース一時休止」37%、「ラッピングサービスの一時休止」32%の順だった。
〔調査企業の内訳〕
▽Book売上構成比別=「80%以上」43・6%、「50~80%未満」29・7%、「50%未満」26・7%
▽収益(経常利益率)別=「1~3%未満」23・5%、「0~1%未満」41・2%、「0%未満」35・3%
▽売上規模別=「50億円以上」44・4%、「10~50億円未満」38・9%、「10億円未満」16・7%

賀詞交換会を中止/日販

日本出版販売は、例年、新年の仕事始めにあたり、本社5階会議室で取引先とあいさつのため執り行っている賀詞交換会を、新型コロナウイルス感染症拡大の状況に鑑み、取引先関係者の健康と安全を最優先に考慮した結果、明年は中止にすることを決めた。本社・支店への年始の来社については、通常の業務の範囲内での対応を予定している。

12月新刊書籍の事前受注を対象に、直取引で特別卸正味55%/カランタとミシマ社が共同施策

カランタとミシマ社は11月16日、ミシマ社の少部数レーベル「ちいさいミシマ社」から12月15日に刊行する新刊書籍『岩とからあげをまちがえる』(大前粟生著)の書店向け事前受注を対象とした共同施策を実施すると発表した。
カランタが開発・運営する、書店と出版社をつなぐクラウド型受発注サービス「一冊!取引所」を経由して同書籍を事前予約注文した書店に対して、①直取引で特別卸正味55%の適用②著者直筆サイン本での出荷③読者向け特典ペーパーの提供(1冊につき1部、本に挟み込み)――の特別条件を適用する。
あわせて「一冊!取引所」サイト内に共同施策の告知ページを開設し、書店からの事前受注を促進。ちいさいミシマ社ホームページと連動し、一般読者向けに「この本が買えるお店」の情報開示を行う。
なお、発売前日の12月14日までに直取引で予約注文した分が対象となる。サイン本と特典ペーパーとも数に限りがあるため、定数を超えた場合、提供を終了する場合がある。発売日に合わせて出荷可能な初回注文締切は11月25日。以降の注文分は発売日以降の店着となる。
この施策により、Webで受発注が可能な「一冊!取引所」の利用を促進し、出版業界では出版社、書店ともに利用頻度の高い「FAX注文」から「Web注文」への移行を図る。また、出版情報が書店や読者にきちんと届き、書店が仕入れやすい仕組みを作ることを目指すとしている。
問い合わせは「一冊!取引所」問い合わせフォームより。https://forms.gle/Cqo4anVwd2CfA4ef6

第8回京都本大賞/大石直樹著の光文社文庫『二十年目の桜疎水』が受賞

「第8回京都本大賞」の授賞式が10月30日、京都市中京区の京都書店会館で開かれ、2019年9月に光文社文庫より刊行された大石直紀氏『二十年目の桜疎水』が受賞した。
過去1年間に刊行された京都を舞台にした小説の中から最も地元の人々に読んでほしい作品を選ぶ賞で、京都の書店員と一般読者が投票で決定する。京都の書店や取次などで構成する同実行委員会が主催、京都府書店商業組合、京都新聞、KBS京都が後援。
授賞式では、洞本昌哉実行委員長(ふたば書房)が受賞した大石氏に盾と賞状を贈呈した。大石氏は「京都本大賞史上最高齢の62歳の大石です」と場の雰囲気を和ませる自己紹介に続き、「今までの大賞受賞者の方々のような、すでに他の話題作品があるわけでもない作家の受賞も史上初。3年前に単行本を出した時はノミネートすらされず、文庫が発売されてもさっぱり売れなかっただけに、こんなこともあるのかと驚いた」と受賞の喜びを語った。
同時開催の「京都ガイド本大賞2020」の授賞式では、大賞にJTBパブリッシングが20年8月に発売したムック『芸妓さんが教える京都ええとこ映えるとこ』、上級者向けの京都を紹介するリピーター賞にリーフパブリケーションズが19年11月に発売したムック『京都滋賀うまいラーメン』を選んだ。
2年ぶり2度目の大賞を受賞したJTBパブリッシングの編集部デスク・長谷川氏は「『芸妓さん』というキーワードが先に決まったものの、芸妓さんの知人がいる社員がいなくて困った。なんとか現役の芸妓さんに取材を受けてもらうことができ、芸妓さんの目を通したセレクトで京都を紹介した」と話した。
リピーター賞を受賞したリーフパブリケーションズが主に関西で発行している月刊誌「Leaf」の加藤編集局長は「この本を読んで店主の物語が詰め込まれた温かい一杯を食べてほしい」と述べた。
閉会あいさつで京都組合・服部義彌事業活性化副委員長(宮脇書店丸亀店)は「回を重ねるごとに認知度が上がり、受賞作の売上げも増えている。来年以降も続けて盛り上げ、伝統にしたい」と締めくくった。
なお、今回は密を避けるため懇親会は行わなかった。(若林久嗣広報委員)

9月期は前年比2・1%増/集計開始以来初の5ヵ月連続前年超え/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの9月期店頭売上は前年比2・1%増。2008年の集計開始以来初の5ヵ月連続前年超えとなった。雑誌は同7・3%減、書籍は同1・1%増、コミックは同15・7%増、開発品は同1・1%減。コミックは12ヵ月連続前年超えと好調を維持した。
書籍は文芸書、ビジネス書、専門書、児童書、文庫の5ジャンルで前年を上回った。文芸書は『半沢直樹アルルカンと道化師』(講談社)が売上を牽引。ビジネス書は『人は話し方が9割』(スバル舎)などが好調。文庫は『マスカレード・ナイト』(集英社)、『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)が牽引し、18年12月以来の前年超えとなった。
コミックは、雑誌扱いコミックでは『ONEPIECE97』(集英社)、『進撃の巨人32』(講談社)、書籍扱いコミックでは『とんでもスキルで異世界放浪メシ6』(オーバーラップ)、『ある日、お姫様になってしまった件について4』(KADOKAWA)などの作品が売上げを伸ばした。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

人類は常に感染症と戦い続けてきた。パンデミックを克服した日本のたたくましい歴史である。
磯田道史著『感染症の日本史』(文春新書800円)は1700年前『日本書紀』に記載のある崇神天皇時代の疫病から、1858年にペリー艦隊がもたらしたコレラ
まで、先人の知恵にスポットライトを当てる。
江戸時代には、約20年周期で麻疹(はしか)の流行があった。麻疹は一度かかると免疫抗体を持てるが、コロナウイルスはそうでもなさそうである。今と違い、麻疹は命を落とす感染症だった。
幕末に江戸を襲った麻疹は、長崎に入港した異国船が感染源。やがて京都、大阪に広まった。この時には移動の多い修行僧がウイルスを運び、寺院がクラスターだった。
新しい国防とは仮想敵の人間ではなく、多数の命を奪うウイルスこそが共通の相手だと語る。
安藤優一郎著『江戸幕府の感染症対策』(集英社新書800円)も感染症と戦った江戸の姿。
天明の飢饉の頃、松平定信が作った町会所ではすでに持続化給付金を支給して、窮民救済が行われていた。町奉行が名主に該当者をピックアップさせ、わずか12日間で給付を完了させていた。コロナ禍の現在、歴史に学ぶことは限りなくある。”