全国書店新聞
             

令和3年1月1日号

コロナを乗り越え 飛躍の年に/21年の抱負・矢幡秀治会長に聞く

新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言に伴う外出自粛や一斉休校、人々の生活様式の激変など、かつて経験したことのない事態に見舞われた2020年。コロナ禍で本の価値が見直され、『鬼滅の刃』のメガヒットもあり、書店の販売状況には持ち直しの兆しも見える。コロナ禍を乗り越えて生き残っていくために何をすべきか。書店の粗利益率改善に向けた取り組みを中心に、矢幡秀治・日書連会長に話を聞いた。 (聞き手=本紙編集長・白石隆史)
〔「書店組合に入っていてよかった」/コロナ対策支援金に感謝の声相次ぐ〕
――新型コロナウイルスの書店への影響についてどのように考えていますか。
矢幡 4月に緊急事態宣言が出されましたが、書店は休業要請の対象外となりました。書店が社会生活を維持する上で必要なものと判断してもらえたことは大きかったと思います。
組合加盟書店にコロナ禍の影響についてヒアリング調査を実施したところ、営業を続けた書店の売上は概ね好調だったようです。特に郊外型書店は売上が前年比2~3倍になったところもあったほどです。緊急事態宣言による外出自粛の中、近隣住民の需要を取り込んだ街の書店に客足が戻り売上がアップしました。
一方、厳しかったのは都市部の大型書店です。テナントの意向で休業店が多く、外出自粛やテレワークの浸透でオフィス街を中心に苦戦を強いられました。
――地方・郊外型書店と都市部・大型書店に二極化することになったとはいえ、全般的に好調だった要因は何でしょうか。
矢幡 自粛による巣ごもり需要を取り込めたことが大きかったです。移動や密集を伴う旅行、会食、カラオケ、コンサートなどへの抵抗感が強まる中、家で楽しめる娯楽として本が必要とされました。もっとネット書店や電子書籍に流れると思っていましたが、むしろ身近な近所の書店で紙の本を買うお客様が増えたのはありがたいことです。
――巣ごもり需要の恩恵を最も受けたのはどのジャンルでしょうか。
矢幡 コミックです。外出自粛やテレワークで余暇時間が増え、コミックに馴染みのなかった層まで読むようになりました。普段コミックをまったく読まないという女性のお客様が、休校で家にいるお子さんのために買ってあげた『鬼滅の刃』を自分も読んでみたらすっかりハマってしまい、全巻揃えたとおっしゃっていたほどです。小説を読む人も増えました。
――学校の一斉休校に伴う需要も発生しましたね。
矢幡 自宅学習用の児童書、学参の売上が伸びました。大阪府ではコロナ禍で休校が続く子供たちへの学習支援策として、図書カード2000円分を府内の幼稚園、小中学校、高校などに通う児童・生徒約100万人に配布しました。大阪府書店商業組合に府から協力要請があり、ある組合加盟書店では4月下旬から5月上旬の大型連休中、連日10人を超える児童・生徒が府の学習支援図書カードを利用して書籍を購入したといいます。こうした図書カードを活用した学習支援策が全国の多くの自治体で行われたことも、好調の一因になったと思います。
――自治体による学習支援のほか、出版業界独自の書店支援もありました。
矢幡 4月20日付で「緊急事態宣言を受けてのお願い」と題する要望書を日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会の3団体に提出し、①マスク、消毒液などの物資支援、②報奨企画の実施、③作家からの読書推進メッセージ、④支払いへの考慮――の4点をお願いしました。コロナ後も生き延びて、変わらず本を売り続けたいという気持ちからです。
これに応えて、出版社の有志が1書店あたり100枚のマスクを取次経由で配布してくれました。マスクが不足していた時期でもあり、ありがたかったです。
全国書店再生支援財団が全国の組合加盟書店約3000店に1店舗あたり5万円の支援金を支給してくれたのも大きかったです。感染リスクもある厳しい状況の中で仕事を続ける経営者・従業員のモチベーションにもつながりました。
実際、「書店組合に入っていてよかった」という感謝の声を数多くいただきました。このような活動を通じて、書店組合が苦しい時の助けになることを多くの書店に知っていただき、全国で我々の仲間を増やしていきたいと思っています。
〔粗利改善 最優先課題に取り組む/多数の出版社が書店応援企画実施〕
――「書店経営を続けるためには30%以上の粗利益率が必要」という多くの書店の声を受け、書店を取り巻く経営環境を改善するため出版社や取次との話し合いを続けてきました。現状と今後の展開についてお聞かせください。
矢幡 多くの関係者が我々の話に真摯に耳を傾け、施策を検討し、実行してくれました。
河出書房新社は20年10月発売のユヴァル・ノア・ハラリ『緊急提言 パンデミック 寄稿とインタビュー』で書店マージンを30%とする書店応援企画「河出39〈サンキュー!〉トライアル」を実施しました。全国の書店を勇気づける大きな一歩と感じる施策です。通常の新刊書籍でこうした試みをやってくれたことに意義があります。
このほか、新型コロナウイルス対策として、多数の出版社が書店支援のために報奨金などの形で還元を行ってくれました。
こうした企画が実現したのも、我々が地道に書店の窮状を訴え続けてきた成果と言えるのではないでしょうか。書店の利益率を改善する試みが、今後も各社各様のやり方で広がっていくことを期待しています。
書店は本を売ってなんぼですから、出版社の努力に対しては本を売ることで応えるしかありません。「粗利益率30%以上なければ経営が成り立たない」と訴えながら、同時に増売運動にも積極的に取り組んでいくというアプローチを続けていくことが重要です。粗利益率改善にはこれからも最優先課題として取り組んでいきます。
〔万引防止対策で収益性改善図る/ポスターの店内掲示に抑止効果〕
――利益率の低い書店にとって、万引防止対策も重要ですね。
矢幡 店頭ロスによる利益の流失を食い止め、お客様に安心・安全な購入環境を提供するという書店の責務を果たしていきたいと考えています。舩坂良雄前会長のリーダーシップで、日書連を中心に出版業界全体の課題として万引防止対策に取り組む体制が構築されました。今、その成果が表われ始めています。
東京・渋谷区内の3書店が19年7月に始めた、防犯カメラの顔認証システムで集めた個人データを登録して万引被害を未然に防ぐため共同利用する取り組み「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」の1年間の成果と課題をまとめた報告書を公表しました。これまで写真や従業員の記憶頼みだった万引犯の実態把握を、顔認証の技術で詳細に把握できたのは大きな成果です。万引件数を減らすこともできました。
同時に街の書店が簡単に取り入れることのできる、原点に立ち返った地道な取り組みも進めています。
たとえば、日書連と万引防止出版対策本部が協働して、万引防止のためのポスターを初めて作成しました。全国規模の配布であることから、日書連として初めて警察庁から後援をいただくこともできました。店内掲示による万引防止効果が大いに期待できます。
また、レジ袋有料化に伴う万引被害急増の声を受け、全国万引犯罪防止機構と協力してマイバッグ使用マナー啓発ポスターを作りました。こちらも店内に掲示して万引防止に役立てていただきたいと思います。
〔コロナ禍で進むキャッシュレス化/中小業者も参画しやすい決済手数料に〕
――コロナ禍で感染予防の観点から現金を使いたくない派が増え、支払い手段としてのキャッシュレス化が加速しています。そんな中、国のキャッシュレス・ポイント還元事業が20年6月で終了し、決済手数料の負担が書店経営に重くのしかかっています。対策をお聞かせください。
矢幡 まず書店におけるキャッシュレス決済利用状況を把握するため、20年夏に全国6組合の加盟書店1003店を対象にアンケート調査を実施しました。
現在、キャッシュレス決済を導入している書店は約65%。キャッシュレス決済の売上比率は国の還元事業開始を契機に上昇し、終了後も高止まりしています。事業の効果があったと回答した書店は40%程度。来店客数・売上の増加に多少はつながったものの、国の補助終了後はむしろ決済手数料の負担が重くのしかかっているという実情が分かりました。現行のキャッシュレス決済手数料では採算割れとなり、キャッシュレス化は更なる経営悪化を招く要因にもなっています。
キャッシュレス化を推進することに異論はありませんが、中小小売商業者が参画しやすい決済手数料となるようきめ細かな施策が必要です。決済手数料の値下げについては他業界と一緒に声をあげていきたいと考えています。
――20年秋、平井卓也デジタル改革相と河野太郎行政改革相が、教科書の原則デジタル化や規制緩和など教育分野のデジタル対応を加速するよう文部科学省に求めたとの報道がありました。国の動きをどう見ますか。
矢幡 デジタル化の推進に反対するものではありませんが、コロナ禍で紙の本の価値が見直される中、これからも紙の本は廃れることなく、電子書籍に追い越されることはないと確信しています。私は理系出身ですが、数学についてはデジタル教科書よりも紙の教科書のほうが優れています。端末に式を入力すると自動的にグラフが作成されるのではなく、自分の手を使って紙に式とグラフを書かなければ数学的思考力は養われません。教科書のデジタル化にあたっては、紙の本の優れた点も評価した上で慎重に検討していただきたいと思います。
〔業界課題の根本的な解決目指す〕
――今年の抱負をお聞かせください。
矢幡 コロナ禍で本の価値が見直され、『鬼滅の刃』のメガヒットもあり、20年の書店市場は久しぶりに前年超えの可能性も出てきました。しかし、この好調はいわば特需によるところが大きく、21年も続いていくかは不透明です。書店の抱える根本的な問題も何ら変わっていません。
出版社に売れる商品を出していただくことは大切ですが、同時に業界全体の仕組みも変えていかないと根本的な問題の解決にはなりません。書店の利益率は低すぎます。このままでは経営を続けることはできません。粗利益率30%以上を実現するための運動に、これまで以上に積極的に取り組んでいきたいと思います。
本の定価を上げること、返品率を下げることへの取り組みも必要です。日本出版インフラセンター「BooksPRO」の発売前の新刊書籍の書誌情報を使い、書店が必要な商品を必要な数だけ自ら注文すれば、返品も改善します。「BooksPRO」の活用を進めていきたいです。
コロナ禍というこれまで経験したことのない事態を乗り越え、出版業界全体が発展するよう全力を尽くします。皆様のご協力をお願いします。

「春夏秋冬 本屋です」/「地域の魅力を伝える」/鳥取・今井書店経営企画本部広報グループ長・津田千鶴佳

山陰本線、一畑電車、木次線、境線、伯備線…、これらは山陰の野を分け、山を分け走る鉄道です。
当社グループには印刷会社があります。創業は、書店創業の12年後の明治17年。書店の隣に活版印刷所を設け、足踏み式の印刷機で裁断も包丁で行っていたそうです。
その今井印刷が出版した本の中で、最近人気なのが山陰の鉄道の写真を綴ったシリーズです。きらきらと輝く日本海の海岸線を走る山陰本線や、美しい秋の紅葉を楽しめる木次線、雪の降りしきる中を力強く進む伯備線など、山陰の魅力でもある美しい四季折々の風景とともに各線の列車の姿を掲載しています。
暮らしの足でもある鉄道には誰しも思い出があることでしょう。斯く言う私も学生時代は電車通学で、同じ車両に憧れの先輩を見つけて友人と手を取り合って喜んだり、部活の後は駅まで猛ダッシュという、数少ない電車の本数に悩まされたりしたこともありました。この鉄道写真集のシリーズをご購入された方も同じように思い出を振り返られているようで、全国から寄せられた「読者カード」には、山陰の地を懐かしんだというエピソードがたくさん書かれていました。
全国の書店の中でも印刷会社があるのは珍しいかもしれません。出版物を通して、山陰の文化や魅力をこれからも発信していけたらと思います。

「若い人に贈る読書のすすめ」/推薦図書24点掲載したリーフレット作成/読進協

読書推進運動協議会(読進協)はこのほど「2021 若い人に贈る読書のすすめ」のリーフレットを作成した。各都道府県の読進協から寄せられた「若い人に是非読んでもらいたい本」の推薦書目をもとに、読進協事業委員会で選定したもの。掲載図書は以下の24点。
▽『逆ソクラテス』伊坂幸太郎、集英社▽『ハナコの愛したふたつの国』シンシア・カドハタ/もりうちすみこ(訳)、小学館▽『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』大前粟生、河出書房新社▽『イマジン?』有川ひろ、幻冬舎▽『金子と裕而』五十嵐佳子、朝日新聞出版▽『鐘を鳴らす子供たち』古内一絵、小峰書店▽『なぜ僕らは働くのか』池上彰(監修)/佳奈(漫画)/モドロカ(画)、学研プラス▽『未来の自分に出会える古書店』齋藤孝、文藝春秋▽『泣いたあとは、新しい靴をはこう。』日本ペンクラブ(編)、ポプラ社▽『14歳の教室』若松英輔、NHK出版▽『ハリネズミは月を見上げる』あさのあつこ、新潮社▽『赤毛証明』光丘真理、くもん出版▽『空気を読む脳』中野信子、講談社▽『ほんとうのリーダーのみつけかた』梨木香歩、岩波書店▽『「さみしさ」の力―孤独と自立の心理学』榎本博明、筑摩書房▽『10代からの批判的思考』名嶋義直(編著)、明石書店▽『たちどまって考える』ヤマザキマリ、中央公論新社▽『コロナの時代の僕ら』パオロ・ジョルダーノ/飯田亮介(訳)、早川書房▽『何のために本を読むのか』齋藤孝、青春出版社▽『人生で大事なことはみんなゴリラから教わった』山極寿一、家の光協会▽『人も街も動かす!巻き込み力』水野孝一、KADOKAWA▽『13歳からのアート思考』末永幸歩、ダイヤモンド社▽『すごいぞ! はたらく知財』内田朋子・萩原理史ほか/桑野雄一郎(監修)、晶文社▽『専門学へのいざない』新里卓(編著)、成文堂

「新春の集い」オンラインで開催へ/近畿ブロックの書店、関係者も参加/兵庫組合

兵庫県書店商業組合(森忠延理事長)は1月19日午後1時~4時、Zoomによるオンライン方式で「新春の集い」を開催する。今回はコロナ禍の中、一堂に会することを避けるためリアルの会場は設けず、オンラインのみで開催する。
兵庫組合加盟書店のほか、近畿ブロック会の会員組合(滋賀、大阪、京都、奈良、和歌山)から数名、および取次や出版社など業界関係者の参加を予定している。当日は森理事長の年頭あいさつ、乾杯の発声を行い、そのあと書店、取次、出版社の順に社名50音順であいさつ。各自の職場や自宅などで飲食し、オンラインで懇親を深める。会費は無料。
森理事長は「従来のリアルでなく、不慣れなオンラインによる開催のため不便をおかけするかもしれないが、新年の互礼を兼ねて画面上だけでも皆さんにお目にかかりたい」としている。

粗利改善運動に協力呼びかけ/藤原直理事長「経営継続できる環境を」/宮城組合総会

宮城県書店商業組合は11月15日、仙台市青葉区・ホテルベルエア仙台で第39回通常総会を開き、組合員63名(議決書出席48名含む)が出席。藤原直理事長(金港堂)はコロナ禍でも粗利益率改善の運動に引き続き努力すると決意を語った。
梅津専務理事の開会宣言の後、藤原理事長があいさつ。新型コロナウイルスの影響に触れ、「本年度は組合および日書連でも十分な活動ができなかった。日書連は感染拡大予防のためのガイドラインの作成やマスクの調達などの活動を行ってきたが、最優先課題として取り組んでいる粗利益率拡大で経営環境改善を目指す活動は、実質的に一時休止せざるを得なかった。業界の年末年始の会合についても次々と休止の連絡が入っている」と今後の感染拡大を懸念。「いずれにしても、書店が経営を継続していくことができる環境作りに努力していくことに変わりはないので、引き続きご協力をお願いしたい」と呼びかけた。
引き続き藤原理事長を議長に議案審議を行い、令和2年度事業報告、決算報告、令和3年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認。梅津専務理事の開会の辞で総会を終了した。
永年勤続表彰は7名。本年度はコロナの影響で本人出席の表彰式の開催は見合わせた。
また、毎年1月上旬に開催している恒例の「書店・出版・取次・運輸合同新年懇親会」の中止を決定した。 (照井貴広広報委員)

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に新風賞/『鬼滅の刃』が特別賞、コミックで初受賞

書店新風会(大垣守弘会長)は12月9日、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)を「第55回書店新風賞」に決定したと発表した。また、コミック作品としては初めて吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(集英社)を特別賞に選んだ。
同日に開いた記者会見で、大垣会長は「審議では爆発的なブームを考えて『鬼滅の刃』を推す声もあったが、『ぼくは~』の得票数が『鬼滅の刃』を上回った点、世界的に拡がっている人種差別やジェンダー、格差といった現在の問題を反映している内容となっており、老若男女を問わず多くの読者が購入し、書店員の推薦も多かった」と選出の理由を説明した。
特別賞については、「新風会内外を問わず全国の書店で品切れが続出し、新風賞の設立趣旨にある『書店店頭活性化に貢献した出版物』という点において評価された。これまでコミックが上位10作品に選ばれることはなく、ブームの凄まじさを物語っている」と報告した。
『ぼくは~』は今回の受賞で10冠を達成。累計発行部数58万部のベストセラーとなっただけでなく、刊行から1年半が経過してなお増刷を重ねるなど、異例のロングセラーとなっている。
書店新風賞は、斬新な出版活動によって読者に感銘を与え、書店店頭活性化に貢献した出版物を年1回顕彰するもの。全国の会員書店30社の全従業員が推薦権を持ち、現場のスタッフが肌で感じた実感から投票を行う。前回は『こども六法』(弘文堂)が受賞した。
贈賞式は1月6日に行う予定。

総額表示義務免除の継続求める/書協・雑協、財務省に要望書を提出

日本書籍出版協会(書協)と日本雑誌協会(雑協)は11月11日、両協会の連名で「消費税の総額表示義務免除継続に関する要望書」を財務省に提出した。
同要望書は、現行特例措置として認められている総額表示の義務免除が継続され、出版物の価格表示については外税表示が存続することを要望するもの。消費税転嫁対策特別措置法の失効に伴う総額表示義務の特例(総額表示の義務免除措置)が21年3月31日で終了予定であることから、4月1日以降も特例を継続するよう求めている。
理由として、「出版物は多品種少量生産の商品であり、ロングセラーの出版物は10年、20年といった長期間にわたり販売されるものも少なくない」「約半数の出版社がスリップを廃止している状況で、改めてカバーやオビなどに総額表示を印刷しなければならないとすると、各出版社に新たに大きなコスト増が発生。長い出版不況に加え、コロナ禍によりさらに厳しい経営状況にある中小零細出版社にとっては、総額表示による新たな費用・事務負担は経営に少なからず影響を与えること」「書店店頭において、出版物の価格表示は『本体価格+税』ということが読者に定着し、外税表示による店頭での混乱や読者からのクレームは皆無といっていい状態であること」「総額表示の復活後に消費税率が変更された場合、書店店頭には新税率の総額表示の商品と旧税率の総額表示の商品が混在することになり、かえって読者を混乱させることになりかねないこと」をあげている。
両協会では、19年12月以来、同要望書の内容と同様の要望を続けてきたが、書協が会員出版社に実施したアンケート結果等を踏まえ、書面の形式で改めて財務省に対して総額表示義務免除の継続を求めた。
当日は、書協の小野寺優理事長、村上和夫理事(出版経理委員長)、雑協の坂本隆専務理事らが財務省を訪問。住澤整主税局長に要望書を手渡し、主旨を説明した。

加賀谷龍二理事長を再選/コロナ禍 生活様式変化への対応が課題/秋田総会

秋田県書店商業組合は11月8日、秋田市・加賀谷書店本社会議室で第34回通常総会を開催し、組合員16名(委任状、書面議決書含む)が出席。任期満了に伴う役員改選で加賀谷龍二理事長(加賀谷書店)を再選した。
総会は平野専務理事(ひらのや書店)の司会で進行。はじめにあいさつした加賀谷理事長は、新型コロナウイルスの感染拡大に言及し、「2019年の消費税増税で売上げや諸経費への影響が出ているところにコロナ禍が重なり、営業時間短縮や休業など重大な決断をしなければならない書店もあった。売上げ減少が続く中、国や自治体の各種給付金や全国書店再生支援財団と日書連による支援金に感謝する。人々の生活様式の変化や働き方の変化に書店はどのように寄り添っていけばいいのかなど、これから様々な問題が出てくるだろう」と述べた。
また、20年のレジ袋有料化に伴い、マイバッグを悪用した万引が増加していることに懸念を示し、スリップレスも要因の一つではないかとの考えを示した。コロナ禍によるキャッシュレス化の加速化で、書店の決済手数料負担や手間が問題になっていることにも触れた。
引き続き加賀谷理事長を議長に選任し議案審議を行い、第1号議案~第7号議案まですべての議案を異議なく可決決定した。
役員改選は選考委員による指名推薦で行い、第1回理事会で加賀谷理事長の再選など新役員体制を決定した。
[秋田組合役員体制]
▽理事長=加賀谷龍二(秋田市・加賀谷書店)
▽副理事長=和泉正之(横手市・金喜書店)、岡田和浩(美郷町・岡田書店)
(石川信広報委員)

わが社のイチ押し企画/講談社・販売局局次長・吉田俊輔

新年明けましておめでとうございます。昨年は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございました。今年も宜しくお願い申しあげます。
【講談社 春のマンガまつり2021】
今年もコミックス読者に向けたキャンペーン「講談社 春のマンガまつり」を開催します。昨年はコロナ禍の影響により、招待イベントは当初予定から延期して実施いたしました。本年もさらにパワーアップしてキャンペーンを開催します。
お客様のご応募方法は変わりません。コミックス裏面貼付のバーコードシールを2枚1口で官製ハガキあるいは応募専用ハガキに貼ってご応募いただきますと、ディズニーランドの貸し切りプライベート・イブニング・パーティー(10月実施予定)へ抽選で8千名のお客様をご招待します。講談社のフィルムパックされた全コミックスが対象商品です。
従来のペアチケットに加えて、今年はご家族やご友人4名1組で参加が出来るファミリーチケットを用意いたしました。更に、お客様ご自身の写真を表紙に印刷した「世界に1冊だけの週刊少年マガジン」をお届けする別賞もあります。賞品のバリエーションが増えて、より幅広い層のお客様に訴求できるものと考えております。
ご応募期間は2月1日から5月9日です。お客様へのお知らせとしては小社ホームページの他、コミック定期誌での告知や、期間中に発売されるコミックスにキャンペーンチラシを投げ込みます。また基本セットお申し込みの書店様には1月下旬にポスター等の宣伝物をお届けいたしますので、ぜひご掲出をお願いします。セットお申し込みをされていない書店様も店頭に在庫されているコミックスはキャンペーンの対象商品です。
書店様には今回も店頭オペレーションのお願いがございます。カバー掛けをご希望されるお客様には商品と一緒にバーコードシールもお渡しくださいますよう、大変お手数をお掛けしますが宜しくお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/小学館PS・営業企画部・中村大蔵

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
激動の1年となった昨年、所謂『おうち時間』が増え、何気なくつけていたテレビから「ピッカピカの、一年生♪」と懐かしいメロディが聞こえてきた、という経験はございませんでしょうか。小学館刊行の雑誌『小学一年生』のCMです。実は「ピッカピカの一年生」シリーズとしてCMを放送するのは25年ぶりのことで、この件は非常に多くのメディア・SNS等にてご拡散をいただき、予想以上の反響となりました。本年も昨年に引き続き『小学一年生』を盛り上げるべく、2021年3月発売予定の4月号ではドラえもんがしゃべる「めざまし時計」、4月発売予定の5・6月号では必修となったプログラミングを楽しく学ぶことができる「プログラミングタケコプター」などを付録とし、楽しく知識を高められるような『小学一年生』らしいラインナップを予定しております。多くの方のお手元に届きますようお力添えの程、どうぞ宜しくお願い致します。
さて、その「小学一年生」の中でも昨年圧倒的な人気を誇った「アンキパンメーカー」という付録をご存じでしょうか。ドラえもんに登場する秘密道具「アンキパン」を手軽に自宅で再現できることから、子どものみならずドラえもんファンの間でも『ドラえもんの世界を体験できる』『のび太になった気持ちだ』と話題になりました。昔は憧れでしかなかった「ドラえもん」「のび太」はいよいよ身近な存在になりつつあるのかもしれません。
そんな「のび太」のことを「これからおとなになる子どもたち」と捉え刊行したメッセージエッセイ集『おとなになるのび太たちへ』も多くの方にご支持をいただいております。ドラえもんを通じて届けられる俳優・作家・スポーツ選手・絵本作家など子どもたちが憧れる職業に就いた10人のおとなたちによるメッセージは「のび太」だけではなく「〝元〟のび太」の心にも強く響く内容となっておりますので、是非、ご一読ください。
未だ先の見通せない未曾有の災禍の最中ではございますが、業界一丸となりこの難局に立ち向かっていければと存じます。本年も特別のご愛顧、ご支援を賜りますよう、何卒、宜しくお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/学研プラス・コンテンツ戦略室・エグゼクティブ・プロデューサー・目黒哲也

「5分後に意外な結末シリーズ」累計310万部突破。
このシリーズを立ち上げたとき、書店の児童書コーナーには、小学校高学年から中学生向けの書籍は、あまり置かれていませんでした。「5分後に意外な結末」というタイトルも、「感傷的」というより「機能的」で、「読者に喜んでもらえるだろうか」という不安もありました。
が、今では、多くの出版社がタイトルに「5分後」と銘打った書籍で後に続いてくださり、YAコーナーには、多くの書籍が並んでいます。児童書のコーナーに、そのような本も並べられ、棚が形成されることになったのは、本当に嬉しく、有難いことです。
もともと「中学生くらいの読者」をイメージして作った「5分後に意外な結末」シリーズは、中学生に圧倒的に支持されている人気雑誌「nicola」の「好きな本ランキング」や「中学生の朝読人気ランキング」でも、「人気第1位」に輝くなど、多くの読者に愛される本になっています。
が、小学生を対象とした、「こどもの本総選挙」でも、ベスト100の中に、シリーズの10冊がランクインするなど、今や、小学生にとっても「超定番」の読み物になっています。
また、講談社文庫で、本シリーズの「ベストセレクション版」が出ているのですが(現在、3冊を刊行)、それも累計22万部を超える人気タイトルになっています。それはつまり、一般成人層にも読まれていることにほかなりません。
小中学生~一般成人層に読まれている本シリーズは、現在、累計310万部を突破しており、まだまだ勢いは続いています。
本シリーズの最大の魅力は、シリーズ内で、いろいろなチャレンジをし、新しい驚きを提供をしている点にあります。
「定番」でありつつ、これからも変化、挑戦を続ける本シリーズを、楽しみにしていてください。

わが社のイチ押し企画/KADOKAWA・宣伝局

あけましておめでとうございます。旧年中は格別なるご支援を賜り誠にありがとうございます。KADOKAWAは今年も皆様に楽しんでいただける作品を多数ご用意致しました。
まずは文芸書。深緑野分著『この本を盗む者は』。本の魔力と魅力を詰め込んだ至極の冒険譚、今年の各賞レースを狙って行きたい一冊です。そして東野圭吾著『魔力の胎動』。『ラプラスの魔女』の前日譚を描く衝撃のミステリが、角川文庫で登場です。
ノンフィクションからは下山進著『アルツハイマー征服』。こちらはアルツハイマー病解明をめぐる研究者と患者の100年の物語です。また、昨年巣ごもり需要に見事にマッチ『やせ筋トレ』から新たに『はじめてのやせ筋トレ おうちレッスンDVD』が登場。160分の動画DVD付きです。
KADOKAWAと言えばメディアミックス。まずはコミックもライトノベルも絶好調の『無職転生~異世界行ったら本気だす~』。異世界物のビッグタイトルは1月10日(日)よりTVアニメがスタートです。ビッグタイトルと言えばライトノベルからは『Re:ゼロで始める異世界生活』も1月6日(水)よりTVアニメ放送開始。そして第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作の『86‐エイティシックス‐』。こちらは4月よりTVアニメ開始の話題作です。新文芸では『蜘蛛ですが、なにか?』が1月8日(金)よりTVアニメ放送開始。さらに角川文庫より塩田武士著『騙し絵の牙』が3月26日(金)から実写映画公開されます。
児童書では、KADOKAWA版『世界の歴史』シリーズが2月にいよいよ発売となります。日本で一番売れている『日本の歴史』シリーズの編集部が贈る新シリーズ。ぜひご注目ください。
また株式会社KADOKAWA Game Linkageでは、ゲーム雑誌№1ブランド『週刊ファミ通』が創刊35周年を迎えます。
今年も多種多様なKADOKAWAのコンテンツにぜひご期待いただくとともに、引き続き一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/文藝春秋・第二文藝部部長・武田昇

中学生のとき、初めて自分の小遣いで買った単行本が藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』だった。そんな呉勝浩さんが描く、過去に悔いを残したまま大人になった男たちの再生の物語、それが2月発売予定の『おれたちの歌をうたえ』です。
昭和34年に生まれ、長野県上田市で育った幼馴染み五人。彼らを「栄光の五人組」と呼ぶ初老の田舎教師をはじめ大人たちに可愛がられて育つも、高校生だった昭和51年冬、ある事件が起きて五人の未来は大きく舵を切ることに。
金融マンや詐欺師など、それぞれバラバラの進路をたどるが、やがて刑事になった主人公の河辺のもとに、五人組の仲間だった一人の死を告げる連絡が入り、止まっていた時間が動き出す――。
長野県上田市、松本市と東京を舞台に、昭和から平成、令和と紡がれる壮大な骨太の小説は、まさに令和版『テロリストのパラソル』の誕生です。
1月に『料理なんて愛なんて』を刊行する佐々木愛さんは、2016年にオール讀物新人賞を受賞、昨年に『プルースト効果の実験と結果』でデビューした若手の作家です。誰にでも心当たりのある思春期の苦くて甘い心情を綴る筆致が鮮やかでしたが、今回のテーマはずばり「料理」。バレンタインデーにずっと好きだった男性に高級チョコレートを渡すも、「好きな人に手作りチョコをもらったから」とあっさりフラれてしまう主人公の優花。男性が好意を寄せる相手が料理教室の先生ということで、その日から苦手な料理を克服すべく奮闘を開始しますが……。「理想の女性=料理上手」という呪縛から逃れられない主人公が自分なりの答えにどうたどり着くのか。是非、本を読んでお確かめください。
そのほか、辻村深月さん、柚月裕子さんなど新聞や週刊誌連載で話題となった作品の単行本化をはじめ、シリーズ物では、昨年に第2部がスタートし大人気の阿部智里さん「八咫烏」の続編、畠中恵さん「まんまこと」第8弾、夢枕獏さん「陰陽師」などなど、続々と刊行予定です。

わが社のイチ押し企画/金の星社・編集部・平山美穂

鬼となってしまった妹を人間に戻すため、「鬼殺隊」に入隊し、鬼との戦いの世界へ足を踏み入れる……。昨年社会現象となった『鬼滅の刃』は、子どもだけでなく大人も熱狂した作品でした。
日本人の生活の中に「鬼」はとけこんでいます。日常会話では、わがままを言う子どもに「鬼が来るよ」と脅し、とても怖い顔をしている人を「鬼のような顔だ」と表すこともあります。数年前に女子高生の間で「鬼かわいい」という言葉が流行しましたが、言葉としての「鬼」は、「怖い」「にくらしい」という意味だけでなく、「かっこいい」「すごい」といった意味に使われることも増えてきたように思います。
しかし「鬼」は、誰もが知っているのに、そのイメージははっきりと定まっていません。鬼とはなんなのか? どういう存在なのでしょうか。本書では、般若、山姥、阿修羅、風神・雷神といった有名なものから、天邪鬼などの妖怪の鬼、三途の川や地獄の鬼、日本各地に伝わる伝説・伝承の鬼、海外の鬼まで、神話や民話、宗教や信仰などに登場する五十七体の鬼を、逸話とともに美麗なイラストで紹介しています。
昔話や有名な寺院の像などから姿形を想像できる鬼でも、背景やエピソードは意外と知られていません。数々の文献をたどり、そのルーツを探りました。
日本では、古くは奈良時代に成立した正式な歴史書『日本書紀』の中に「鬼」に関わる記述が見られます。『御伽草子』の中で、源頼光が四人の家来とともに、京の都をおびやかした最強の鬼「酒呑童子」を退治したエピソードは、現代の少年漫画さながらです。陰陽師・安倍晴明や坂上田村麻呂も、鬼退治の伝説が残されています。歴史上の人物と鬼にまつわる話は多くあり、まるで日本には「鬼」が実在していたのではないかと思わせるものばかりです。
『鬼大図鑑』を紐解いていくと、歴史や日本文化、宗教にも興味が湧いてくることでしょう。B5変型判、144ページ、定価4180円。

人事

★マガジンハウス
12月10日開催の定時株主総会、取締役で左記の通り取締役及び監査役を選任し、就任した。◎昇格、○新任。
代表取締役社長
片桐 隆雄
常務取締役(総務局担当)
◎南 昌伸
同(第一編集局、第四編集局、書籍・ムック出版局担当) ◎鉃尾 周一
取締役(経理・製作局、マーケティング局担当)
浪花 寛通
同(第二編集局、第三編集局担当) ○芝崎 信明
取締役相談役 石﨑 孟
監査役 畑尾 和成
上席執行役員〔クロスメディア事業局・広告局担当、デジタル戦略局局長〕
熊井 昌広
同〔経理・製作局局長〕
西村 吾郎
執行役員〔広告局局長〕
矢代 卓
同〔第三編集局局長〕
○西田 善太
同〔第四編集局局長〕
○北脇 朝子
石﨑孟代表取締役会長は取締役相談役に就任、木滑良久氏、石渡健文氏はそれぞれ顧問に就任。
★金の星社
11月25日開催の定時株主総会、取締役会で左記の役員を選任し、職制担当業務を一部変更した。○新任。
代表取締役社長
斎藤 健司
会長 斎藤 雅一
取締役(営業本部長・特販部長) ○久保田道夫
同(出版本部長・編集長)
○鹿田 裕子
同(経営本部長・経営管理部長) ○加持 孝晃
監査役 鹿田 昌
販売副部長 花ヶ前盛武
広報室長 金澤真美子
営業管理副部長 浅沼 健
製作部長 下川征十郎
奥津惠市、磯貝毅両取締役は退任し顧問に就任。

講談社、光文社、暮しの手帖社/出版社3社の増売企画に取組み/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は12月3日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催。事業・増売委員会の増売企画として、講談社、光文社、暮しの手帖社の企画を承認した。
講談社の企画では、「春のマンガまつり2021」について説明。店頭にある講談社全コミックス(バーコードシールが付いているもの)を対象に、購入者がシール2枚1口で応募する方式で、応募期間は2月1日~5月9日。エントリーセットとして、『カッコウの許嫁』『シャングリラ・フロンティア』など注目作品15点45冊を組んだセットが用意されており、出荷条件は6ヵ月長期、搬入予定日は1月下旬として、取り組みを呼びかけた。
光文社の企画は、光文社文庫『神様からひと言』(荻原浩著)、2月に文庫、3月に単行本が刊行される、あさのあつこ著「弥勒シリーズ」の増売について説明。暮しの手帖社の企画では『暮しの手帖 9号』(年末年始特大号、11月25日発売)について説明し、拡売を求めた。

リアルとオンライン両輪で読書活動推進/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC)は評議員会・理事会を書面決議で行い、2020年度上期事業報告・収支報告、20年度下期事業等の議案を承認した。
JPICの活動は、新型コロナウイルス感染症の影響で、2月中旬から9月中旬頃までリアルイベントは全て中止または延期に。対応策としてオンラインによる読書イベント「JPIC ONLINE」を6月に初めて開催し、その後読書会やトークイベントなどを開催。10月~11月には「ワテラスブックフェス」など3つのフェスティバルを開催して多くの参加者を得た。また10月からは、リアルでの読み聞かせサポーター講習会や実践講座を感染症対策を取りながら再開した。今後もコロナの感染状況を見極めつつ、リアルとオンライン両輪で読書機会の拡充に取り組んでいく。
首相官邸国際広報室と進める翻訳出版事業「JAPAN LIBRARY」は20年度末までに14タイトルを発行予定で、累計発行点数は83タイトルになる。
21年度「子どもゆめ基金」の助成金申請では、新規事業として、子どもたちへ物語・読み物を届ける活動をする人材の育成講座を立案し申請した。

雑誌情報提供、1月末から開始/書店向け情報サイト「BooksPRO」

日本出版インフラセンター(JPO)は12月8日、東京・千代田区の出版クラブビルで定例理事会を開催した。
出版情報登録センター(JPRO)の基本書誌情報登録数は11月末時点で249万9475点に達し、12月の250万点突破が確実になった。委託配本における新刊登録率は86・2%。また、出版権登録点数は20万424点になった。
書店向け出版情報提供サイト「BooksPRO」は、雑誌情報の提供を1月末頃に開始する。日本雑誌協会の雑誌POSセンターから基礎情報を同期する形で受け取り、BooksPROの発売日カレンダーにリストを表示して、個別の銘柄のページを見られるようにする。21年度中には、付録や特集等の情報を出版社が追加登録できる機能を実装する予定。
またBooksPROは3月から「S―book」との連携を開始する予定で、他の出版社系受注サイトとも順次連携を進める方針。BooksPROの書誌情報ページや販促情報ページから、注文サイトのページに直接移行し注文できるようになる。
BooksPROの利用登録数は11月末時点で1677書店、月間アクセス数は約3万ページビュー。

河出書房新社×エブリスタ「5分シリーズ」連動企画を実施/トーハン

トーハンは、河出書房新社がWeb小説投稿サイト「エブリスタ」とコラボして刊行する短編小説レーベル「5分シリーズ」と連動した店頭活性化企画を、1月31日まで全国456書店で実施している。
「5分シリーズ」は、5分で読める短編小説集として中高生に大人気。この店頭フェアでは、同シリーズの作品を購入すると、特典としてオリジナルデザインのA4クリアファイル(全6種)を1冊購入につき1枚プレゼントする。
また、同シリーズに収録されている短編小説の人気投票企画を実施。特設Webサイトからお気に入りの1編を選んで投票すると、抽選で10名に「図書カードネットギフト5千円分」を贈呈する。選ばれた作品は、「5分シリーズベストセレクション(仮)」(21年春頃に河出書房新社より刊行予定)に掲載される。

文藝春秋がnoteと資本業務提携/クリエイター発掘・育成などを推進

文藝春秋は12月10日、メディアプラットフォーム「note」を運営するnote㈱の第三者割当増資を引き受け、出資と資本業務提携契約を締結したと発表した。
「note」は、クリエイターが文章や画像、動画等を発信、販売できるプラットフォーム。文藝春秋は、19年11月に「文藝春秋digital」をnoteを利用してスタート。noteで人気があるクリエイターを月刊誌『文藝春秋』の書き手に迎えたり、共同イベントの開催、読書感想文コンテストの実施などのコラボレーションが生まれていた。今回の提携で両社の関係をさらに強め、「クリエイターの発掘と育成」「新たなコミュニティの創出やイベントでの協業」「社員交流の実施」「新規事業に向けての展開」の各事業を進めていく。
文藝春秋の中部嘉人社長は、「出版業界ではプリントメディアとデジタルメディアの垣根がなくなりつつあり、今やコンテンツは両方の空間を自由に行き来している。この先も読者にずっと良質なコンテンツを届けていく上で、noteとの協業は大きな効果をもたらすと信じている」とコメントを発表した。

日教販、春季大市会を動画配信

日教販は第70回「日教販春季展示大市会」を、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、動画配信の形で開催する。配信は1月12日午後1時から3月31日まで。以下のURLからアクセスする。(https://www.nikkyohan.co.jp/special/ichikai/2021/)
配信では、同社の渡部正嗣社長や日書連・矢幡秀治会長など各団体代表のあいさつ、書店向け研修会、出版社&メーカー企画紹介、日教販ミニセミナー等のプログラムを予定する。

11月期は前年比5・6%増/初の7ヵ月連続前年超え/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの11月期店頭売上は前年比5・6%増。2008年の集計開始以来初の7ヵ月連続前年超えとなった。書籍は同1・1%増、雑誌は同6・5%減、コミックは同31・4%増、開発品は同4・7%減。書籍は4ヵ月連続、コミックは14ヵ月連続前年超えと好調を維持した。
書籍では、文芸書は『オルタネート』(新潮社)、『デスマーチからはじまる異世界狂想曲21』(KADOKAWA)が売上を牽引。実用書は、『「ディズニーツイステッドワンダーランド」FAN BOOK』(講談社)などが好調だった。ビジネス書は『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)、『人は話し方が9割』(すばる舎)などが継続して売上を伸ばしている。
コミックは、雑誌扱いコミックの新刊では、完結を迎えた『ハイキュー!!45』の売上が伸長。既刊は『鬼滅の刃』や、10月からテレビアニメが放映中の『呪術廻戦』が好調だった。書籍扱いコミックは、『約束のネバーランド ART BOOK WORLD』、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 新装彩録版4』(いずれも集英社)が売上を牽引した。

「早稲田新書」が創刊/年間6点程度を刊行へ/早稲田大学出版部

早稲田大学出版部は12月10日に「早稲田新書」を創刊、『生きることに疲れたあなたが一番にしなければならないこと 加藤諦三の新・人間関係論』(加藤諦三著)、『AとZ アンリアレイジのファッション』(森永邦彦著)、『村上春樹の動物誌』(小山鉄郎著)の3点を発売した。
新書のシリーズ刊行は同社134年の歴史で初めて。早稲田新書は、2009年創刊の「早稲田大学学術叢書」、11年創刊の「早稲田大学ブックレット(「震災後」に考えるシリーズ)」、16年創刊の「早稲田大学エウプラクシス叢書」に続く大型シリーズ第4弾と位置づけ、年間6点程度を刊行していく。当面は早稲田大学教員、卒業生の中から、特に注目を集めている「早稲田文化人」へ書き下ろしを依頼し、新書の知名度が一定程度確立された段階で若手研究者らに執筆の門戸を広げていくとしている。新書のカバーには早稲田大学のスクールカラーであるえんじ色を用い、大隈重信像と大隈講堂のイラストを配した。
11月30日にオンラインで開催した記者会見で、同社の須賀晃一社長(早稲田大学副総長)は、「現在、新書を刊行している大学出版部・出版会はないことから新書シリーズの出版を決めた。目標とする既存の新書はないが、一般的な実用新書のレベルにとどまらず、学術情報の一端を示せるものでなくてはならないと考えている」と創刊の意図を説明。続いて創刊3点の著者が本の内容を紹介した。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

今年は、丑年である。武光誠著『日本人にとって干支とは何か』(KAWADE夢新書 880円)は十二支の成り立ちや、生活に溶けこんだ干支の謎を解明していく。
干支はもともと十支と十二支との組み合わせを指すものだった。起源は紀元前4000年前に遡る。方位と結びつくのが紀元前11世紀頃。
古代中国の精霊崇拝から生まれた「気」という概念、陰陽説、五行説が結びつき、季節の区切りや方角が決められていった。占術もその一つで、風水は陰陽五行説を基に良い気の流れを呼びこむという占いなのである。
縄文時代の遺跡から、祭祀に用いられた猪や猿などを象った土器が出土している。動物の精霊は神として祀られていた。だから十二支もスムーズに受け入れられてきた。同様に熊、鹿、狼、狐や狸も崇拝の対象だった。
丑年生まれは、忍耐強く勤勉と記されている。
戸部民夫著『「日本の神様」がよくわかる本』(PHP文庫 629円)は50刷のロングセラー。
お稲荷さん、八幡さまなどの霊威神、聖母と純愛の女神、諸工業に関する神々など、全8章にあらゆる神社を網羅する。神社の由来と全国の神社ガイドがある。巻末には参拝の仕方と祈願の方法などミニ知識も豊富。