全国書店新聞
             

令和5年5月1日号

全国の組合加盟書店数2665店に/1年間で138店(4・9%)減少

4月1日現在で日書連会員の45都道府県書店商業組合に加盟する組合員(日書連所属員)は、1年前と比べて138店減(4・9%減)の2665店になったことが組織委員会(安永寛委員長)の調査で分かった。
この1年間の新規加入は5店だったのに対し、脱退は143店だった。
組合員数が増加した組合は、愛媛(1店増)の1組合のみだった。前年と同数は、青森、秋田、山形、熊本、沖縄の5組合。残る39組合は組合員数が減少している。
各組合ごとに加入の内訳をみると、新規加入があった組合は、東京、福井、奈良、愛媛、沖縄(1店)の5組合。一方、脱退が多かった組合は、①佐賀(16店)、②東京(14店)、③千葉、大阪、福岡(8店)、⑥愛知、石川(6店)、⑧岩手、静岡、宮崎(5店)の順。
脱退数から加入数を差し引いた純粋な減少数をみると、①佐賀(16店減)、②東京(13店減)、③千葉、大阪、福岡(8店減)、⑤愛知、石川(6店減)、⑦岩手、静岡、宮崎(5店減)、⑩埼玉、兵庫(4店減)。また、減少率でみると、①佐賀(42・1%減)、②宮崎(20・0%減)、③石川(14・6%減)、④岩手(12・5%減)、⑤山梨(11・1%減)、⑥福井(10・0%減)、⑦千葉(9・3%減)、⑧徳島(9・1%減)、⑨長崎(8・6%減)、⑩鳥取(7・7%減)の順。
組合員数が多い上位10組合は、①東京(264店)、②大阪(175店)、③福岡(168店)、④愛知(127店)、⑤兵庫(117店)、⑥京都(110店)、⑦埼玉(107店)、⑧静岡(106店)、⑨宮城(100店)、⑩千葉(78店)。一方、組合員数が少ない組合は、①高知(17店)、②徳島、宮崎(20店)、④佐賀(22店)、⑤青森、島根(23店)、⑦秋田、山梨、鳥取(24店)、⑩愛媛(25店)の順となっている。
各都道府県書店商業組合に加盟する組合員数は1986年(昭和61年)の1万2935店をピークに前年割れが続いており、今年で36年連続のマイナス。組織規模はピーク時の20・6%まで縮小した。

5月8日に「新型コロナ予防ガイドライン」を廃止

5月8日(月)より、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、「書店における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」は廃止いたします。
日本書店商業組合連合会

都中央会の委託事業が完了/『木曜日は本曜日』継続施策を実施/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は4月4日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
〔『木曜日は本曜日』習慣化プロジェクト特別委員会〕
東京都中小企業団体中央会の委託事業を活用して取り組んでいた「『木曜日は本曜日』習慣化プロジェクト」が3月で完了したことを報告した。著名人20名が選書した本を昨年10月から20週間にわたり毎週木曜日に組合加盟書店で販売。組合のYouTubeチャンネルで各著名人が本屋の魅力を語る動画を公開するなど、週に一度本屋に足を運んでもらう取り組みを展開し、約半年の期間中、組合加盟店でのキャンペーン対象書籍の売上は平均2倍超となった。
また『木曜日は本曜日』習慣化プロジェクトの継続施策として、かんき出版による芸人・漫画家の矢部太郎氏をキャスティングした動画制作と、店頭展開の実施について説明。矢部氏の『マンガぼけ日和』のプロモーションを兼ねるもので、動画の制作費用はかんき出版が負担し、組合YouTubeチャンネルで公開する。矢部氏が選書した3点と『マンガぼけ日和』の計4点を『本曜日』プロジェクト参加店に配本することと、その他の動画内容、動画収益化などの企画運営については特別委員会に一任することの2つを諮り、承認された。
〔総務・財務委員会〕
4月1日現在の組合員数は、前年同期と比べ脱退14店、加入1店で264店になったと報告した。また6月以降の理事会の日程を次の通り決定した。6月2日(金)、7月4日(火)、8月休会、9月5日(火)、10月3日(火)、11月2日(木)、12月5日(火)
〔事業・増売委員会〕
KADOKAWAから、4月25日~5月31日に実施する「カドカワ祭ゴールデン2023」の説明があった。KADOKAWAの全書籍を対象に、書店で購入した回数に応じて購入金額の最大50%分の金額にあたる図書カードネットギフトをプレゼントする読者還元キャンペーンで、店頭での展開強化を求めた。

「春夏秋冬本屋です」/「わが町〈亀岡〉紹介」/京都・宮脇書店亀岡店代表取締役・服部義彌

はじめましてですので、わが町亀岡市を少しご紹介させていただきます。
京都府亀岡市は京都市の北西にある、人口9万人弱で京都府第3位の市です。京都市とは隣接しており、京都駅までも直線距離で30㎞もないほどの位置です。場所によっては京都市内の町よりも近いです。なのに京都市内の人たちからは「遠いところご苦労様です」と言われたり、大阪の人たちからは日本海側の市だと思われがちです。しかし、位置的には京都市だけではなく大阪府の茨木市や高槻市などとも隣接しており、衛星都市としての側面もあります。大阪にとってもお隣さんなのです。
市の売りとしては、三大観光として「保津川下り」(事故があり休止しています)や「トロッコ列車」「湯の花温泉」があります。近年では京都サンガFCのホームスタジアム「サンガスタジアムby京セラ」が建設され、脚光を浴びています。「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」は全国的に先駆けた取り組みとしてニュースになりました。また、「子どもファースト宣言」で子育てに優しい街づくりをし、住みやすい街・住みたい街を目指しています。
すべては人口を増やすため。私たち商売人からすれば人口が増えてくれないことには先細りは目に見えていますから、当店も頑張って協力しているサッカー観戦や観光旅行でお越しの際は、是非亀岡市をお楽しみください。

書店組合総会スケジュール

※開催日時や会場は変更される場合があります。最新情報を各組合までご確認ください。
◆青森県書店商業組合「第36回通常総会」
5月10日(水)正午、青森市・アラスカ会館で開催。
◆東京都書店商業組合「第47回通常総代会」
5月18日(木)午後1時半、千代田区・ホテルメトロポリタンエドモントで開催。
◆大阪府書店商業組合「令和4年度通常総会」
5月18日(木)午後2時、大阪市北区・組合会議室で開催。
◆沖縄県書店商業組合「第35回通常総会」
5月22日(月)午後2時、那覇市・組合会議室で開催。
◆埼玉県書店商業組合「第39回通常総会」
5月24日(水)午後3時半、さいたま市・埼玉書籍で開催。
◆福井県書店商業組合「令和4年度総会」
5月29日(月)午後4時、あわら市・灰屋で開催。
◆京都府書店商業組合「第39回通常総会」
5月30日(火)午後3時、京都市中京区・ホテルオークラ京都で開催。
◆愛媛県書店商業組合「第35回定時総会」
6月13日(火)午後4時(予定)、松山市・ANAクラウンプラザホテル松山で開催。
◆愛知県書店商業組合「第40回通常総会」
6月14日(水)午後3時、名古屋市千種区・ホテルルブラ王山で開催。
◆北海道書店商業組合「第47回通常総会」
6月20日(火)午後2時半、札幌市中央区・北海道建設会館で開催。
◆茨城県書店商業組合「第36回通常総会」
6月27日(火)午前10時、水戸市・茨城県教科書販売で開催。

第20回「2023年本屋大賞」/凪良ゆう氏『汝、星のごとく』/20年に続き2度目の栄冠

全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ第20回「2023年本屋大賞」の発表会が4月12日に東京・港区の明治記念館で行われ、凪良ゆう氏の『汝、星のごとく』(講談社)が本屋大賞に輝いた。凪良氏の受賞は20年の『流浪の月』に続き2度目で、本屋大賞を2回受賞したのは05年、17年受賞の恩田陸氏以来2人目。
受賞作は、瀬戸内の島で高校時代に出会った男女の約15年間の恋愛と成長を描いた作品。凪良氏は、「コロナ初年度と呼ばれる年に『流浪の月』で賞をいただいたが、発表当日が緊急事態宣言と重なり、歴代の受賞者の中でたった1人この会場にすらたどり着けなかった受賞者になってしまった。その時に応援してくれた書店員さんに直接お礼が言えなかったことと、同じ場所で喜びを分かち合えなかったことが、この3年間ずっと悔いになって残っていた」と初めて受賞した当時の心境を打ち明けた。
昨年『汝、星のごとく』を刊行した際、多くの書店を訪問したという。「『ずっと応援していました』と言葉をかけていただき、会場には行けなかったけど、こんなにたくさんの書店員さんが応援してくれているんだと思ったら、もうこれでいいと納得した。だから、今日再び受賞者としてこの場に立っていることが夢のようにうれしい。でも、これは物語を愛する書店員さんが作ってくれた現実です」と涙ながらに喜びを語った。
今回の本屋大賞は、21年12月1日から22年11月30日に刊行された日本の小説が対象。1次投票には471書店から615人が参加、1人3作品を選んで投票し、上位10作品をノミネート。2次投票では333書店422人が10作品を読んだ上で全てに感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票した。
本屋大賞の2位以下は次の通り。
②『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒(集英社)③『光のとこにいてね』一穂ミチ(文藝春秋)④『爆弾』呉勝浩(講談社)⑤『月の立つ林で』青山美智子(ポプラ社)⑥『君のクイズ』小川哲(朝日新聞出版)⑦『方舟』夕木春央(講談社)⑧『宙ごはん』町田そのこ(小学館)⑨『川のほとりに立つ者は』寺地はるな(双葉社)⑩『#真相をお話しします』結城真一郎(新潮社)
〔クリス・ウィタカー氏の『われら闇より天を見る』/本屋大賞翻訳小説部門〕
翻訳小説部門は、『われら闇より天を見る』(クリス・ウィタカー著、鈴木恵訳、早川書房)が選ばれた。無法者を自称する少女ダッチェスと警察署長のウォークが、30年前に起きた悲劇に端を発する事件の真相を追う。翻訳者の鈴木氏は「この作品はミステリー小説だが、世の中の全てを敵に回して戦おうとする13歳の少女の成長物語であり、過ちを犯した男の贖罪の物語でもある。特にダッチェスのキャラクターが秀逸で日本の読者の心にも長く残ると思う」と述べた。
ビデオメッセージでウィタカー氏は、20年前に強盗に刺され、セラピーとして文章を書き始めたことを明かして、「この小説は、ダッチェスのキャラクターから始めた。私は自分の気持ちを書き出し、自分の身に起こった悪いことの影で生きてもがき苦しんでいる女の子に重ねた。自分の人生が変わるようにと願いながら。この小説は、私にとって非常に身近な物語であるだけでなく、どんなに人生が困難であっても、ポジティブな変化を起こすことは可能であることを思い出させてくれる物語でもある」と語った。
また、既刊本の掘り起こしを目的に、21年11月30日までに刊行された作品を対象に投票する「発掘部門」の中から、本屋大賞実行委員会が選出した「超発掘本!」として『おちくぼ姫』(田辺聖子著、角川文庫)が発表された。「落窪物語」を題材に、おちくぼ姫と青年貴公子の恋を描いた「王朝版シンデレラ物語」。KADOKAWA文芸・映像事業局角川文庫編集部、角川文庫日文編集長の佐藤愛歌氏が、田辺聖子氏の姪・田辺美奈さんのコメントを代読。その中で田辺さんは「伯母は日本の古典を若い人に読んでもらいたいと常日頃話しており、古典の面白さを分かりやすく伝えるため、特に若い方に向けてたくさんの作品を残した。もし伯母が推薦コメントを読んだら、大変喜んだと思う」と述べた。

ポプラ社と東大CEDEPが共同シンポジウム/デジタル社会の子ども読書環境を議論/学術研究の成果、学校現場の実践など報告

ポプラ社と東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(東京大学CEDEP)は3月14日、オンラインシンポジウム「デジタル社会は子どもの読書環境をどう豊かにできるか?~『紙』と『デジタル』のベストミックスの模索~」を開催し、約300名が参加した。
今回のシンポジウムでは、2019年からスタートした共同研究プロジェクト「子どもと絵本・本に関する研究」の研究成果を振り返るとともに、デジタル社会における子どもの豊かな読書環境について考えるための報告やディスカッションを行った。
はじめにCEDEP准教授の野澤祥子氏が、子どもを取り巻くメディア環境や価値観の変容を把握した上で、絵本・本の普遍的な価値を評価するとともに、新しい時代に対応する価値についても探求する必要があると問題提起した。
続いて、CEDEP特任助教の佐藤賢輔氏は、CEDEPとポプラ社が21年に行った「幼児の読書とデジタルメディアの利用についての保護者調査」の結果を紹介し、「読書が子どもの発達にとって重要という認識は広く社会で共有されているが、多くの子どもたちは成長に伴って本を読まなくなっていく。今日の子どもたちは小さい頃からデジタル端末に慣れ親しんでいるものの、保護者はデジタル端末の利用に抵抗感を持っている人が多い。子どものデジタル端末利用はゲームや動画視聴が多く、読書はあまり普及していない」と報告。「紙とデジタルそれぞれの良さを活かした読書環境の構築と読書推進が必要」と訴えた。
群馬県甘楽町立福島小学校司書教諭の青木いず美氏は、GIGAスクール構想による学校図書館の変化、ポプラ社の電子書籍読み放題サービス「Yomokka!」と調べ学習応援サービス「Sagasokka!」の授業での利用状況を報告。電子書籍サービスの効果として①児童の選択の幅が広がった②読書量がとても増えた③読書意欲が高まった――の3点を挙げ、「デジタル環境を含めた学校図書館の充実をさらに進めることで、紙とデジタルの相乗効果が期待できる。両方の良さを知った上で使い分けることで、より豊かな読書生活を送れる環境を作っていきたい」と目標を語った。
この後、野澤氏をコーディネーターに、佐藤氏、青木氏、学習院大学教授・東京大学名誉教授の秋田喜代美氏、ポプラ社の千葉均社長の4氏でパネルディスカッションを行い、子どもの読書環境の豊かさと、それを実現するために大人は何ができるか話し合った。
佐藤氏は「多くの人たちが日常的に本を読むような豊かな環境を作りたい。子どもたちが成長とともに本から離れていかないようにするための取り組みをデジタルで行うとともに、紙の本をもっと読んでもらうにはどうすればいいかも考える必要がある。大人もデジタル書籍・絵本を実際に体験し、紙とデジタルそれぞれの良さや違いについて先入観抜きに理解すべき」、青木氏は「豊かさは量よりも質。本を介して色々な人たちと交流できる時間と多様な選択肢を作ってあげたい」、千葉氏は「人間の豊かさは、世界は面白いもので溢れているという実感のこと。色々なものを見て興味を覚えることが豊かさであり、それをブーストするのが読書だと信じている」と持論を語った。
デジタル読書を何歳から始めるのがいいかについては、「まず紙との身体的な接触を通じて五感で読書がどういうものかを習得することが重要」と4氏が共通の認識を語った。一方、「小学校に入る前からデジタル端末を使う子どもは多い。それならば動画を見るばかりではなく、親子が一緒にデジタル端末を使って絵本を読むのもいい」(佐藤氏)など、未就学児のデジタル読書を状況に応じて肯定する見解も示された。
閉会あいさつで、東京大学大学院教授・CEDEPセンター長の遠藤利彦氏は
「GIGAスクール構想が進展し、小中学校での1人1台端末がほぼ完了している現在、子どもたちの文字や情報への向き合い方が大きく様変わりすることは半ば必然的なこと。ただし、それが単にアナログをデジタルへとメディアを置き換えるだけのものでは、教育効果は期待できない。子どもの認知・非認知両面の心の発達を豊かに支え促すことができるような革新的な教育方法を新たに作り出すことが強く求められている」と述べ、今後の研究と情報発信に意欲を示した。

《寄稿》街の書店を残すために自治体は「地産地消」で協力を/佐賀県書店商業組合理事長・堤洋

明治維新を成功に導いたのは肥前の国、藩校弘道館の知の力が大きかったと言われています。しかし、現在の佐賀県では「知のインフラ」と言われる書店の数が全国で最少の41店とワースト記録を更新しました。3月には佐賀市で2店、武雄市では唯一の地元資本の書店が閉店しました。さらに5月には他市で1店が閉店します。全国的に見ると毎日2店の書店が閉店している計算になります。多くのナショナルチェーンも縮小を余儀なくされ、規模を問わず厳しいというのが実情です。
書店を取り巻く環境は、読書離れ、ネット書店の台頭、電子書籍の普及などで、日々厳しさを増しています。さらにコロナ禍での来店客数の減少及び人件費の上昇、光熱費の上昇などがあり、街の書店のほとんどは営業利益が出ておらず赤字経営に陥っています。人件費の削減、家賃の値下げ交渉などあらゆるコストダウンに自助努力をしてきましたが、崖っぷちの経営が続いています。努力が報われず閉店する書店も多く、自助では経営上限界にきています。
では、なぜ佐賀県が日本一書店の少ない県になってしまったのでしょうか。最大の要因は、1人当たりの出版物購入額が全国で最下位だからです。本当の意味での地産地消になっていなくて、地元の書店にお金が落ちていないからです。公共図書館、学校図書館への書籍の納入、小中高校への教科書の納入に関して、地域の書店からの納入が他県と比べて著しく少ないのです。
2017年に発足した「全国の書店経営者を支える議員連盟」(書店議連)は、昨年「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に改称し、自民党の衆参両院議員150名超が加盟する同党で最大規模の議連になりました。12月には岸田首相に中間とりまとめを手渡し、街の書店を守るための政策実現や立法化の動きも進んでいるようです。新聞やテレビなど様々なところで街の書店の閉店が報道され、1店でも街の書店を残したいという世論も高まりを見せています。
街の書店は1人でも多くの人に本を手に取ってもらい、本を好きになってほしいと願っています。そして、高い教育レベルと長い歴史を持つ文字・活字文化を支えるという社会的使命感を持っています。街の書店が「知のインフラ」と言われる所以です。また、日々の暮らしに役立つ様々な情報を発信しています。幼児・児童には保護者とともに自ら本を選び購入するという社会体験、読書と親しむ「場」「環境」「きっかけ」を提供しています。まさに「子どもの居場所」であると自負しています。
紙の本からこそ「文化」は発生します。読書は豊かな想像力、思考力、洞察力、判断力を育み、脳を鍛える役割を果たしています。電子書籍にこのような効果は期待できるでしょうか。街の書店がなくなることは、知のインフラの片翼がなくなることです。人々の知識の劣化、ひいては文化、教養、国力の劣化にもつながりかねません。しかし書店が残れば子どもたちに良い本を届けることができ、文化を守ることもできます。
「自助」「共助」のままでは、佐賀県の書店数は減り続けるでしょう。残された時間は少ないと思います。書店の生存のためには「公助」が必要です。公助とは、①自治体の支援=図書資料、教科書などの納入における地産地消、②町の書店の社会的使命、社会的貢献への自治体の理解――のことです。関係者の皆さんに理解と協力をお願いいたします。

山下書店世田谷店で「夜間無人営業」実証実験/売上前年比2桁増と好調/トーハン

トーハンは3月20日から、トーハングループの山下書店世田谷店(東京都世田谷区)で夜間無人営業の実証実験を開始した。20日~25日まで6日間の売上は前年比2桁増と好調な出足となっている。トーハンは実証実験の結果をもとに他の書店への横展開も視野に入れており、街の書店の売上拡大に寄与するシステムとして期待している。
山下書店世田谷店は東急世田谷線の松陰神社前駅から徒歩1分、松陰神社通り商店街に立地し、店舗面積は約30坪。今回の実験では、午前10時~午後7時は有人、午後7時~翌日午前10時は無人で営業する。
無人営業時間帯の入店管理・キャッシュレス決済にはNebraskaが開発した書店向けDXソリューション「MUJIN書店」を活用。有人・無人をハイブリッドに組み合わせた24時間営業モデルの実証実験を行う。従来は営業時間外だった時間帯も営業することで夜間・早朝の顧客を獲得し、売上拡大を図る。
無人営業時間に入店するには、まず山下書店世田谷店のLINE公式アカウントを友だちに追加し、スマートフォンで自動ドア横のQRコードを読み込む。すると即座に認証され、自動ドアの電子ロックが解錠される。会計は完全セルフかつキャッシュレス。クレジットカード決済、電子マネー決済、コード決済に対応する。退店時は解錠作業不要で、再び自動で電子ロックされる。
万引の懸念については、全面ガラス張りへの改装、入店時のLINE・QRコード認証による心理的抑止効果、監視カメラの運用により、防犯の役割を果たしているという。
実験スタート後6日間の「MUJIN書店」会員登録者数は288人。売上前年比は24時間通しで16・5%増と好調に推移している。有人営業時間は4・5%減。無人営業時間は21・0ポイントの増収効果となっている。実証実験は7月31日まで行う予定。
山下書店を運営するスーパーブックスの中村大輔専務は「商店街で書店を維持するのは難しい時代だが、地域住民の拠り所となる店を残したい。こういう現実的な場所で売上を回収できる見込みがたてば色々な書店で利用できる。生活圏の小規模書店を持続させる仕組みを作り、成果をあげ、他の書店にも取り組みを広げたい」と話す。

「この児童書がすごい!」YouTubeで配信開始/学研

学研ホールディングスのグループ会社、Gakkenは3月29日、YouTubeチャンネル「学研ミリオンず【公式】」で新企画「この児童書がすごい!」の配信を開始した。
配信は毎週(または隔週)水曜日。Gakkenの腕利き編集者たちが面白く夢中になれる児童書を厳選し、チャンネル専属のユーチューバー「虎仮面(とらかめん)」が分かりやすく解説する。
第1回は発刊3年で50万部の大ヒットとなった池上彰監修『なぜ僕らは働くのか』、第2回は世界1000万部・国内340万部の世界中で愛される絵本「ぴよちゃん」シリーズの『ぴよちゃんのおたんじょうび』を紹介した。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

検見崎聡美著『かけるだけで絶品おかずかけだれ30』(青春出版社新書1300円)は、料理が面倒、苦手、苦痛と思っている人向きに、混ぜるだけで作れる、万能だれを紹介している。
塩昆布カリカリ梅だれは刻んだ塩昆布大さじ1に、刻んだカリカリ梅を大さじ2、白いりごま大さじ2を混ぜ合わせる。肉や魚にかけて和風おかず。ゆでたほうれん草などや生野菜、ふりかけとしてご飯にも合う。さらに、レンチン蒸し手羽先と、ちぎりレタスすサラダの作り方を解説する。薬味ポン酢だれなどの人気だれ、ご褒美のデミグラだれ、ピリ辛好きにはナンプラー甘酢だれと続き、パルメザンペッパーだれ、ピーナッツ酢みそだれなど発酵かけだれまで30種類、それぞれのたれを生かす料理のレシピが54。全てが混ぜるだけで簡単にできる。オールカラーで見やすい。
土井善晴著『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書820円)は父土井勝氏の背中を見ながらフランスでの料理修行や味吉兆での学びなど、料理との半生を語って清々しい。料理に失敗なんて、ない。家庭料理とは無償の愛です、と語る。勝氏から始まった番組は65年になる。一汁一菜を土台に家族、年齢に合わせるのが一番である。

日販、Webメディア「ほんのひきだし」リニューアル

日本出版販売は3月27日、本や書店に関する情報サイト「ほんのひきだし」を全面リニューアルした。これまでは本の内容紹介や著者インタビューなど本に関する情報を中心に掲載してきたが、これからは書店に関する情報を増強する。全国の書店が独自に取り組むフェアやイベントや個性豊かな書店員たちのこだわりの売場作りなど、書店と書店員にフォーカスした情報を多く掲載し、書店への集客に寄与するメディアを目指す。その一環として、3月に休刊した「日販通信」の「街の本屋さんの取り組み」の特集などを一般消費者向けにアレンジして掲載していく。

文化通信社「BookLink」/出版社の販促情報をデジタルチラシで/新規登録書店を募集

文化通信社が提供するデジタルチラシ配信サービス「BookLink」は、書店の新規登録を呼びかけている。現在の参加出版社は約60社で、2000件以上の注文書・POPを書店向けに公開している。登録書店は本部を含めて約1000店舗、書店会員は1500を超える。書店の利用料は無料。
「BookLink」は販促チラシを閲覧できる書店・出版社向けのウェブサービス。出版社が登録した注文書・POPやパブリシティ情報(新聞・テレビ・ラジオ・ウェブメディアへの掲出)が公開され、会員向けメールマガジンでも情報を発信。スマートフォン表示にも対応している。
毎月200点の書籍が発売され、出版社から書店にはあらゆる販促情報がファックスで届けられる。書店はこれらの情報から自店で販促に注力する書籍を選別しなければならず、情報を取得するためのファックス費用も負担してきた。
「BookLink」を利用すれば出版社から届く情報を効率的に取得でき、受信費用や紙代・インク代・プリント代などの経費を大幅に削減できる。
同社は「出版社が届けたいお知らせと書店が知りたい情報をマッチングするサービス。街の書店にこそ利用していただきたい。現場での利用を促進するため書店の店長会などで説明会を実施中だが、今後は全国の書店組合でも説明会を行っていきたい」としている。
説明会の開催依頼などは公式サイトの問い合わせフォーム、またはメールアドレス「booklink@bunkanews.co.jp」で受け付けている。