全国書店新聞
             

令和3年3月1日号

万引防止で利益確保/出版万防3年間の成果と今後の展開/万引防止出版対策本部事務局長・阿部信行氏

万引防止出版対策本部(出版万防)の活動が4年目に入った。出版万防は、出版業界の万引防止活動の普及と、その結果としての各書店の利益改善を目的に、全国万引犯罪防止機構(万防機構)の下に2017年9月に設立。日書連、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本出版インフラセンター、日本医書出版協会、日本図書普及の6団体1企業で構成し、賛助会員としてブックオフコーポレーション、出版文化産業振興財団が参画している。昨年10月8日の第4回総会で報告された3年目の活動と4年目の計画、今後の構想の詳細について、阿部信行事務局長に寄稿してもらった。
【警察庁後援「万引防止ポスター」/全国の書店9千店に配布、犯罪抑止に大きな効果】
(1)全国統一書店万引防止ポスターの掲出活動
日書連初の統一した、かつ初の警察庁後援を得た万引防止ポスターを作成し、10月22日に日本図書普及の販促物配送便を活用させていただいて約9000店に配布しました。デザインは来店するお客様に圧迫感を与えることなく、しかし万引犯には敢行を諦めさせるものを考えました。
(2)盗品のインターネット出品監視体制の研究
万防機構インターネット委員会で継続して研究しています。先行して取り組んだ他業界の例では、成果を出しました。出版万防は書店での写真集の大量万引事案につきモニタリングを実施しました。まだまだ難しさが残っています。
(3)万引防止セミナーの開催
セミナー開催がコロナ禍のため困難な状況から、6月1日より2ヵ月間、YouTubeに万防機構制作の万引防止研修DVDを期間限定にてアップしました。同内容を出版業界紙等にリリースし、日書連他万防機構参加企業に広く活用を呼び掛けました。
同時に同DVDの販売を実施。日書連から計2組合計3枚の受注がありました。また、他業界からは600店強ある支店へ店長教育用として配信用データの購入があり、加えて商業施設内企業の集合研修用に受注がありました。最近では2021年4月の新入社員教育用にデータの購入がありました。
(4)被害届受理迅速化のための書き方研究
被害届を迅速に処理することで小売店の負担をできるだけ軽減するためにマニュアル『万引事件被害届の手引き』を試作版として作成しました。同手引きを日書連加盟組合他100ヵ所の書店に配布しています。今後、即使用可能な簡易版の作成が求められています。
(5)渋谷書店万引対策共同プロジェクトの状況
2019年7月30日から2020年7月31日の1年間、何の問題も起こさずに実施され、40人53件の事案を登録しました。その内再来店事案は13件と約4分の1を占めます。また8月から始まっている2年目も1月末現在、21人24件、再来店4件の事案を登録しました。お店の盲点を熟知し、多頻度来店する常習者の存在がクローズアップされています。
(6)万引犯に対する損害賠償請求方式の普及
想定する方法ではなく弁護士を介し実施しました。同方式普及ネットワークに加入する13法人の内の1社に万引事案が発生し、損害賠償の支払いが実現しました。事案が発生した場合における書店側対応の強烈な参考事例となりました。
(7)新古書店との連携
新古書店とも兼ねがね接触してきました。ブックオフがポスター掲出による盗品買取防止策を講じようとする中、出版万防もそれに参画するというアドバイスを受け、両方のクレジットが併記されたポスターが2020年7月1日より全店へ掲出されました。
そして、それを契機に今後ブックオフとの間で、他チェーンを巻き込み「新古書部会」を設立する基本合意が成立しました。
(8)買い物袋有料化に伴う万引被害急増の声を受けた緊急対応
万防機構は買い物袋有料化に伴う万引被害急増の声を受けた緊急対応として、マイバッグ使用におけるマナーポスターを作成しました。出版万防は日書連などに紹介し、データを配布。「日販通信」へのインタビュー記事掲載なども行った結果、全国の組合や書店から申請があり、行政や警察からも引き合いがありました。書店専用のマナーポスターを作ってほしいとの要望も数多く寄せられました。
【4年目の事業計画】
4年目を迎え、万引防止策をどのように組み立てたらいいか再考しました。計画にもある通り、書店を取り巻く環境への働き掛けと書店自身が取り組むことに二分しました。更に、顔認証カメラ等の最新技術が導入可能なお店、ビデオカメラが導入済みのお店、ビデオカメラのないお店と三分されます。
それらを踏まえ4年目の施策を立案しました。
(1)書店の外的環境への対応
常習犯による大きな万引被害が発生する要因となっている転売を防止するため、不正品を「出品させない」「買い取らない」仕組み作りに向けた活動を展開しています。総会の最後の相賀昌宏副本部長の挨拶にもあった通り、転売市場との連携がカギになります。個人情報に配慮しつつ進めています。
①インターネット事業者との協働
万防機構内インターネット委員会との関係強化を図り、同委員会のインターネット事業者による不正出品に対するモニタリング手法の出版バージョンを構築することを目的としています。そのために出版万防にてモニタリング要員をスポットで活用し試行することを考えています。
現在は事業者と、出品された「盗品」の特定や出品した「人物」の特定の方法や、特定後のアクションにつき協議を重ねています。
②新古書部会の創設〈新規〉
インターネット事業者と並び盗品転売抑止のカギである新古書店への対策実行を目指し、新古書部会創設を構想しています。
現段階における構想は、新古書部会に新古書店グループと新刊書店グループを置き、新古書店グループには複数の新古書店チェーンの参画を求め、新刊書店グループからの情報をもとに、常習者の大量買取事案の分析とそれに対する防止対策実施を協議する――というものです。
今後、基本構想を更に取りまとめ、各新古書店チェーンと協議して参ります。
③万引被害実態調査の実施
今年、万防機構は3年に一度行っている「万引被害調査」を実施します。合わせて出版万防も更に簡潔な調査を実施する計画です。
④研究活動
・インターネット他の活用による出版業界の万引防止メッセージを研究し、発信強化を必須とします。
・進化する単品識別方式(ICタグ、電子透かし、QRコード)の情報を把握し、出版物への活用具現化を研究する。
(2)書店の内的環境に対する働きかけ
書店が自ら自店で万引防止に取り組むことへの支援施策を展開します。
①研修支援対応
経営者向けに万引き関連の法的対応等の理解と習得を図るものと、従事者(社員、アルバイト、パート等)向けに、万引防止の基礎から教育する研修の斡旋をします。
②万引防止ツールの提供
ポスター、基礎的事項をまとめた教育用小冊子、その他各種資料等を提供します(一部有償)。
③渋谷プロジェクトの成果の水平展開
渋谷プロジェクトで得た成果の内、可能なものの共有を図ります。
④地元警察関係、万引防止協議会等との地域的連携体制構築のための資料提供
「全国万引対策実態調査報告書」を提供します。他地域がどのような防犯協力体制にあるか、参考になろうかと思います。
⑤万引犯に対する損害賠償請求の実施支援
有償により弁護士等ご紹介する計画もあります。
【直近の行動計画】
(1)即時対応2案件
出版万防総会の後、日書連・矢幡秀治会長から要請があり、②は当職の試案として作成しました。
①「お買い物マナーポスター」を三洋堂書店(加藤和裕社長=万防機構理事)のポスターをもとに、万防機構名義で新たに作成しました。万防機構ホームページから画像データをダウンロードできます。店頭に掲出してご活用ください。
②万引防止チェックシートは経営者用と従事者用の2種類作成しました。従事者用は先に紹介したDVDの内容をメモ化したものです。DVDと併用すれば効果は大きいと思います。経営者用はエッセンスのみを記載しました。各店の状況に合わせてご利用ください。
(2)LPテキストの出版とWEB試験の実施
万防機構LP教育制度作成委員会編著『【ロス対策士】検定試験公式テキストロス対策テキスト2021』(万防機構発行、星雲社発売)が2月24日に刊行されました。同書は近々実施を予定しているロス対策士WEB検定テストのテキストです。万引防止を大きく店のロス予防という観点から捉え、委員たちが2年かけて本にしたものです。
「LP=ロス・プリベンション」と言われても「聞いたことがない」「知らない」という方が大半でしょう。ロスは、損失という意味です。一方、プリベンションは、予防といった意味です。つまり、「損失を防ぐ」ということです。では、ロスとは何を指すのか、プリベンションとはどうやって防ぐのか、それを学ぶために作られたのが本テキストです。経営と店舗運営に必読の書です。
(3)情報提供
各組合宛に前出のポスター、教育用小冊子としてウェリカジャパン代表取締役の豊川奈帆氏の著書『書店員さんができる万引き防止対策』(明日香出版社)、全国の警察本部、都道府県庁、都道府県教育委員会などの協力により自治体が行う万引対策の実態と事例を紹介する報告書『全国万引対策実態調査報告書2020』(全国万引犯罪防止機構)等を3月中にお送りします。参考にしていただければ幸いです。
万引防止にゴールは有りません。顔認証という最先端技術を導入しても、現場の地道な取り組みがなければ成果は上がりません。自店の利益を確保し、職場から万引犯罪を一掃し、顧客と従業員の安全を守るため、引き続き粘り強く活動していきましょう。

「全国農村読書調査」読書率、やや増加/家の光協会

家の光協会は1月28日、第75回「全国農村読書調査」結果速報を発表した。全国60ヵ所の農林業地区在住の16歳から79歳の1800名を対象に、「月刊誌・週刊誌・書籍の読書状況」などを調査したもの。
総合読書率は前年比8ポイント増の63%、雑誌読書率は同4ポイント増の48%、書籍読書率は同5ポイント増の36%と、全体的にやや増加した。

「春夏秋冬本屋です」/「届ける努力」/鳥取・今井書店経営企画本部広報グループ長・津田千鶴佳

当社では、2018年秋に広報部門を新設し、それ以降、一員として私も業務を担って参りました。
広報部門ができる前と後との一番の違いは、メディアでの取り上げ回数です。以前は、当社で行っている各種事業や取り組みなどについて、身近なところでのお知らせを行って参りましたが、基本的には書店という受動的な職業柄か広く伝えるということが出来ておりませんでした。広報部門が出来てからは、新事業はもちろん、イベントであったり自社開発の新商品発売であったりと細かなところまでプレスリリースを出すように努めたところ、年々メディアでの取り上げが増えて参りました。お客様や近隣の方からも、テレビや新聞で見聞きしたという声も届くようになりました。書店は実に幅広いお客様が来店されます。棚は世の中を映す鏡ですから、話題には事欠きません。メディアの方も何度も足を運ばれるようになると書店について感じられるところもあるようで、次第に先方から「○○について取材をさせて欲しい」という依頼が増えてくるようになりました。
「広報」はゴールがありません。会社の価値を上げることが目的なので、販促のような明確な数値としてのゴールがないのです。この2年強、習いながら、学びながら、実践しながら、やっとそのコツが少し見えてきたような気がします。

学習参考書協会・辞典協会「学参・辞典勉強会」/「店頭販売の経験から」/世界思想社教学社(元ちくさ正文館書店)赤坂泰志氏が講演

学習参考書協会と辞典協会は、「2021年度新学期学参・辞典勉強会」の動画配信を、学習参考書協会のホームページ上で実施。世界思想社教学社の赤阪泰志氏(元ちくさ正文館書店ターミナル店)による「店頭販売の経験から」、旺文社教育情報センターの石井塁氏による「コロナ&入試改革!2021年大学入試はこう行われる!」の2つの講演を3月31日まで配信している。赤阪氏は、「学参担当って難しい?」「顧客をつくる、自分をつくる」「自動補充~みんなで創る学参棚」の3つをテーマに、書店現場で働いた経験に出版社の視点を交えて書店業務に役立つヒントを語った。この概要を紹介する。
【学参担当って難しい?】
現役の書店員時代、他書店の方から「学参担当は難しい」という話をよく聞いた。あるチェーン店の新人学参担当者と話す機会があったが、他業種からの転職で、しかも学参の分かる社員がいなかったとのこと。経験のあるアルバイトからルーチンを教わり何とかできるようになったという。売場を拝見すると、受験の年度版問題集はきちんと展開しているし、各コーナーの平台も売れ筋がちゃんと並んでいた。専門取次の方が来店したとき結構修正していき、ある程度教えてもらえるということだ。でも最終的には自分で年間スケジュールをコントロールするしかないので、1年を一回りやってみるしかないということになるだろう。
売場では、学校の年度が始まる時や、定期試験、夏休みに入る前といったタイミングで、必要とされる時期に合わせて少し前から計画してコーナー展開してみる。ある書店では、21年度から始まる大学入試の総合型選抜の参考書3点が平積みされていた。他店で平積みは見かけなかったので聞いてみると、「新刊で少し入ってきて、新しい制度の学参だったので注文して展開してみた」と話していた。学参売場は定番中心で同じような品揃えになりがちだが、担当者自身のアイデアを織り込むと、お客様へのアピールになり、他店との差別化につながる。
参考書の「はじめに」を読むと、その本の良し悪しがよくわかる。定番の本はどうして売れるのか、出版社の営業が来たときに聞いてみると、自分の知識も深まるし、出版社とより深いコミュニケーションもできるようになる。
ある学参担当初心者の方は、新規出店の際に学参担当になった。棚構成に慣れるまで補充も時間がかかり大変だったが、しばらくやってみて、学参は小中高など大きな分類がありそれぞれに科目が分かれているので、文芸書などよりは補充がしやすいんじゃないかと思い始めたという。棚補充では自動発注を導入していて、年度版商品も前年のデータを活用できる。難しいと思っていたけれど考え方次第では案外そうでもないという良い例ではないか。
【顧客をつくる、自分をつくる】
客注やお客様への対応を通じて自分の仕事を見直してみよう。客注対応は神経を使う作業だが、顧客と深いコミュニケーションが図れる。私が勤務していた書店は検定教科書の取扱店なので、来店する塾の先生は教科書だけでなく生徒の使っている教材を注文することが多かった。そういう方の注文を拾っていくことで、口コミで先生たちが集まる店になっていった。
できる範囲で様々な要望にお応えしていくと、小売店と顧客というハードルの高さが少しずつ低くなっていく。いろいろな先生方と交流していると、普通の書店では考えられないような要求も出てくる。小論文を教えてくれる方を知らないかと聞かれ、紹介したこともあった。直接金銭に結びつかないようなお客様とのやりとりは、仕事とは言えないのかもしれないが、問いかけにできる範囲でお応えしていくことで信頼感は深まる。
多くの書店では、ほとんどの仕事はマニュアル化して誰でも同じようにできることを目指していると思う。でも接客の場面を共有したり、一緒に棚卸しをしたり、どういう意図で棚作りをしていくかなど、いろいろな経験を共有していくと、属人的なやり方を共有していけることもある。先輩の仕事をまねすることで、マニュアル化された業務でも、1人ひとりの手順に違いや工夫、こだわりなどを見出し、自分自身のオリジナリティが発揮できる場面が見つかると思う。
【自動補充~みんなで創る学参棚】
最近では、注文カードや売上スリップを目にする機会が少なくなった。90年代半ばくらいから書店にPOSが導入され、自動発注システムを多くの書店が利用するようになった。
私が仕事を始めた頃は、その日売れた分のスリップを確認し、必要なものを注文した。それが私に売場でアクションを起こさなければいけないという兆しを教えてくれることがあった。今は売れた情報はデータ管理できるので、毎日パソコンで確認すれば、そういう兆しに気づくことができるかもしれない。でも書店で話を聞くと、そういうチェックは1週間に1回程度ということが多い印象だ。自動発注で売れたものは基本的に補充されるので、特に兆しなど感じなくても問題ないと考える方も多いと思う。でもそのせいで棚の状態が気にならなくなるようになるならば問題だ。
私が学参担当だったときは、自動発注を導入しておらず、自分で入力して注文し、補充は基本的にアルバイトの方にやってもらっていた。自分で何が売れているか把握できるし、スタッフも商品に触れることで問い合わせにも対応でき、皆で売場を気にしようという形を作っていた。先日ある書店で専門取次の方と出会い、業務を見せていただいたが、その店には年4、5回訪問し、2時間くらいかけて棚を丁寧にチェックするとのことだった。書店側が細かく棚を見ることができなくなった分、代わりに定期的にチェックしているということなのだと思う。自動発注であっても完全ではない。やはり日々棚に向き合い、少しでも気にかけていくことが大事だ。
世界思想社教学社では、赤本の発注支援システムを提案している。地域や時期によって売れ筋が変わる赤本の販売の難しさを低減しようと考案されたものだが、お店ごとに完璧に配本するのは不可能なので、8割程の精度で送品し、後はお店の方で手直ししていただくことを目指している。いわば、当社と書店の共同作業のようなイメージだ。
このイメージは、自動発注に置き換えてもよさそうに思う。棚補充は書店が手間をかけずに自動で発注できる分、余裕のできた時間を売り伸ばしのために使うようにできる。その時間というのは、取次が社内で時間をかけてピッキングしたり発送作業をしたりしてできた時間なのだと思う。出版社の立場になってみて、書店、取次、出版社の3者を出版販売という大きな生き物のようなイメージで捉えるようになった。手に取った本がどういう経路でここまで届くのかをイメージできたときに、自分のしている仕事が思っていたよりも大切に感じることができるのではないか。

1月期は前年比5・9%増/初の9ヵ月連続前年超え/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの1月期店頭売上は前年比5・9%増。2008年の集計開始以来初の9ヵ月連続の前年超えとなった。
書籍は1・7%減。文芸書、ビジネス書、学参、児童書の4ジャンルで前年を上回った。文芸書は、芥川賞受賞の『推し、燃ゆ』(河出書房新社)などが売上を牽引。ビジネス書は『人は話し方が9割』(すばる舎)、『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)などが引き続き好調で、9ヵ月連続プラスになった。
雑誌は6・9%減。月刊誌は、『BE-PAL2月号』(小学館)や『&ROSY3月号』(宝島社)などが売上を牽引した。
コミックは33・9%増で16ヵ月連続の前年超え。雑誌扱いコミックの新刊は、『呪術廻戦14』(集英社)、『進撃の巨人33』(講談社)が売上を伸ばした。既刊は、『鬼滅の刃』(集英社)、『呪術廻戦』が好調を続けている。

日販、楽天BN/協業範囲の拡大を検討/楽天一部帳合書店の送品業務等で

日本出版販売(日販)と楽天ブックスネットワーク(楽天BN)は2月15日、協業範囲の拡大について検討を開始することで合意したと発表した。
日販と楽天BNは、2003年12月より返品物流業務について、16年3月より新刊送品物流業務について協業を行っているが、書店数の減少や物流経費の高騰など昨今の市場環境の変化に対応し、業界全体の流通効率化を図るための検討を重ねていた。その結果、将来にわたり持続可能な出版流通を実現することを目的に、以下の内容で協業範囲の拡大を検討していくことに合意した。
①楽天BNの一部帳合書店分の雑誌送品・書籍送品業務を協業する。
・物流業務を日販の流通センターが受託する。
・物流受託する商品の仕入業務を日販が受託する。②店頭客注を支援するサービスを共同で推進する。
支援サービスの内容、実行スケジュール等の詳細については、決定次第発表するとしている。

梓会出版文化賞に東京大学出版会

出版梓会が主催する第36回「梓会出版文化賞」は、東京大学出版会、同特別賞はゲンロンが選ばれた。第17回「出版梓会新聞社学芸文化賞」は、京都大学学術出版会と晶文社が受賞となった。
東京大学出版会は1951年、当時の南原繁総長の発案で設立された国立大学で初めての大学出版部。2011年に創設した「南原繁記念出版賞」で優れた学術論文を掘り起こし書籍化する活動も高く評価された。ゲンロンは東浩紀氏が2010年に創業。大学のアカデミズムなどから距離を置いた新しい「知のプラットフォーム」構築を目指す活動が評価された。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

神舘和典/西川清史著『うんちの行方』(新潮新書720円)は皆が知らんぷりをしている排泄物が、どこでどのように処理されているのかを足で探っていく。
江東区有明の「東京都虹の下水道館」と「小平市ふれあい下水道館」を訪ねる。下水道には排泄物や生活排水を雨水と一緒に流す合流式、雨水の管を別にしている分流式がある。汚水は沈殿池に溜められた後、セン毛虫やゾウリムシなど微生物が加えられ、有機物が分解され浄化されていく。
かつて長距離鉄道は、便器から直接線路に落としていて、駅に停車している時は使えなかったのだが、今は真空式でタンクに吸引、車両基地で処理されている。1970年代から本格化した温水洗浄便座で、日本はトイレ先進国になっている。
湯澤規子著『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』(ちくま新書840円)はウンコの視点から環境、経済、世界を見渡す、人糞地理学。
人口の急増した江戸で下肥として重宝された糞尿は高値で取引されていた。それが世界では誠に不思議に見えたようだ。食べることと同じように、ウンコをするのも生きている証である。汚いと切り捨てられるウンコには深い意味と役割、歴史がこめられている。

NHK出版「春の企画説明会」/「基礎英語」のラインナップを一新/テキストの定価・価格を改定

NHK出版は、「2021年NHK出版春の企画説明会」を2月9日、10日にオンラインで開催した。新型コロナウイルスの感染状況を鑑み行ったもので、説明会は、参加申込みフォーム(https://shoten.nhk-book.co.jp/entry/)にアクセスして登録することで、3月31日まで視聴できる。
説明会でNHK出版の森永公紀社長は、「当社が創業90周年となる2021年度のNHKテキストのキャッチコピーは、『変わりつづける。学びつづける。』。今年NHKテキストは大きく変わる。1つは語学テキストで、看板番組の『基礎英語』を大改定する。もう1つは、家庭系、趣味系も含めテキストの値段を少し上げさせていただく。運賃や紙の価格の上昇によるやむを得ない措置で、ご理解をお願いする。この秋から、戦後大ヒットしたラジオ英語講座を題材にした連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が始まる。NHKテキストの販売の大きな追い風となると期待している」とあいさつ。
引き続き、語学テキスト、家庭・趣味テキスト、価格改定・販売促進施策、書籍・ムックについて各担当者が企画説明を行った。
語学テキストでは、新学習指導要領が21年度から中学校で実施されることに伴い、「基礎英語」シリーズは、『基礎英語1』『基礎英語2』『基礎英語3』を新課程に準拠した内容に刷新。中学1年生向けの『中学生の基礎英語レベル1』、中学2~3年生向けの『中学生の基礎英語レベル2』、「オールイングリッシュ」授業に対応した中学3年~高校生向けの『中高生の基礎英語inEnglish』のラインナップに。また、小学生向けの『基礎英語0』は『小学生の基礎英語』にリニューアルする。
『ラジオ英会話』は、テーマを「語順の文法」とし、語順の観点からシンプルに英文法を整理することで、会話に直結する力を身につける。新講座の『ラジオビジネス英語』は、現在放送している『入門ビジネス英語』と『実践ビジネス英語』を1つにしたもの。講師は『入門ビジネス英語』の柴田真一氏。『実践ビジネス英語』は終了するが、講師の杉田敏氏による季刊ムック『杉田敏の現代ビジネス英語』を刊行する。『2021年春号』は3月13日発売予定。
語学テキストはこのほか、『ステップアップハングル講座』(月刊)を創刊する。
家庭・趣味テキストでは、『きょうの料理』は新年度は放送パターンが変更になる。4月号は、巻頭とじ込み付録として「『きょうの料理』テキストのトリセツ」や下ごしらえの基本などの解説をつける。『すてきにハンドメイド』は、付録の型紙を、糊付けからポケットに入れる形に変更し、使い勝手をよくする。『きょうの健康』は、付録の健康カレンダーの大きさを1・5倍にし、書き込む欄も大きくする。大きく見やすい誌面にリニューアルした『趣味の園芸』が好評のため、『趣味の園芸やさいの時間』も文字を大きくし、読みやすくする。
教養テキスト『100分de名著』は、大河ドラマ「晴天を衝け」の主人公、渋沢栄一の『論語と算盤』(講師・守屋淳氏)を4月に予定。夏頃に「名著フェア」を企画する。
テキストの価格改定は、現在本体450円の月刊英語テキストを500円、その他の月刊語学テキストを527円に改定。家庭テキストの『きょうの料理』『きょうの健康』を536円、『きょうの料理ビギナーズ』を500円、『すてきにハンドメイド』を600円に改定。『趣味の園芸』『趣味の園芸やさいの時間』は据え置く。趣味テキストの『囲碁講座』『将棋講座』を545円、『NHK俳句』を636円、『NHK短歌』を664円に改定する。『100分de名著』を545円、『まる得マガジン』を600円とするほか、ムック扱いの語学・教養テキストの価格も改定。いずれも3月発売分から改定となる。また、新商品として、お得な「〔3枚組〕NHK語学テキスト音声ダウンロードチケット」を発行する。
新年度ラインナップについて、3月号テキスト誌面で新年度の番組テキスト価格を案内し、4月号発売以降も新聞広告、ウェブ広告で周知を図る。また店頭でお客様に渡せるものとして、昨年度までの「えらべるガイド」に代わるタブロイド版の「NHK英語テキストガイド」と、全てのテキストを紹介した「NHKテキストナビ」を取次経由で送付する。
飾りつけコンクールは、今年もテキストコーナー用拡材「デコキット」を用意、5月7日応募締切で実施する。定期購読獲得キャンペーンも5月31日締切で実施、お客様へのアプローチで「定期購読申込書」を活用してほしいとして、ともに積極的な参加を呼びかけた。
書籍・ムック企画では、俳優・香川照之氏が「カマキリ先生」に扮して昆虫を紹介する人気番組をムックにした『香川照之の昆虫すごいぜ!図鑑』(全3巻)のvol.1を3月16日発売予定。数量限定で「ご当地着せ替えカバー」(地域別で6種類)を用意する。9月には、21年度後期連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でヒロインを務める上白石萌音氏の初の著書となるエッセイ集(タイトル未定)を刊行する。