全国書店新聞
             

平成13年2月14日号

別所氏ら四氏の叙勲祝賀会

松前達郎氏(東海大学総長・参議院議員)、漆原利夫氏(学校図書元社長)、杉田信夫氏(ミネルヴァ書房会長)、別所業啓氏(別所書店社長・三重県書店商業組合元理事長)の叙勲を祝う出版関係受章者祝賀会が二月八日午後五時半から、新宿区の日本出版クラブ会館で開かれた。
今回の祝賀会に出席したのは、平成十二年秋に受章した松前氏(勲一等瑞宝章)、杉田氏(勲四等瑞宝章)の両氏。
勲四等瑞宝章を受章した別所氏と、平成十一年春に勲三等瑞宝章を受章した漆原氏は欠席した。
祝賀会では発起人を代表して講談社野間佐和子社長が、「四名の方の受章は出版界にとりこの上ない名誉。
長年のご努力に感謝申し上げる」と祝辞を述べ、記念品の壷「梅一輪」を贈呈した。
受章者あいさつで松前氏は「受章はいろいろな方と仕事をしてきた成果で、代表としていただいたと思っている。
これまでのご指導に感謝申し上げる。
やりたいことが百もあるので、時間を大切にして努力を続けたい」と述べた。
また、杉田氏は「京都で出版の仕事を始めて五十三年。
あっという間とも、長い道程だったとも感じる。
新しい知恵とエネルギーで京都から出版ルネッサンスが起こることを夢見ている」とあいさつ。
続いて別所氏からのお礼状が代読され、「皇居に参内したとき、この業界に入って以来の思い出が走馬灯のようによぎった。
教科書の完全供給を期した以外に功はなく、受章は面はゆい気持ち。
心を新たに今後も精進したい」との言葉が紹介された。
このあと書協渡邊隆男理事長の発声で乾杯、各氏の受章を祝った。

2月21日に代表者集会

日書連は二月二十二日午前十時半から千代田区永田町の衆議院第一議員会館で「出版物再販制度の存続を求める全国代表者集会」を開催する。
当日は午前十一時から二月定例理事会を予定していたが、理事、常任委員が代表者集会に出席するため、理事会の開催時間を午後一時からに繰り下げる。
六日の再販擁護特別委員会で決定したもの。
著作物再販制度の存廃について、公正取引委員会は平成十三年春に結論を出すと公約しており、いよいよ再販問題は最終段階に突入した。
一月二十六日に箱根湯本で開催された日書連新年理事会では「大変危機感を覚えている。
議員会館で代表者集会を開く時期ではないか」「国会議員の出席を求めよう」という提案があり、二月六日に行われた再販擁護特別委員会で衆議院第一議員会館内に会場を確保、集会が具体化することになった。
当日は自民党、公明党、民主党はじめ与野党の衆・参両院議員、商工委員、活字文化議員懇談会メンバーなどに出席を求め、出版再販制度の存続に向けて緊急アピールを採択する予定。
二月六日の特別委員会では、このほか、ポイントカード制について今後の対応を検討した結果、元公取委事務局長で再販問題に詳しい弁護士の伊従寛氏を招いて、十四日午後三時から書店会館で勉強会を開くことになった。
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親友から写真撮影の楽しさ学ぶ

無芸大食の私を見かねた親友が、去年から写真撮影の楽しみを教えてくれている。
いざ、やってみると難しいものである。
孤島へ朝日、夕日の撮影に誘われて気軽に行ってみたが、愕くことばかりだった。
親友は、ロケーションのいい場所にピタリとカメラの三脚を立てる。
今まで見たこともない大きな朝日が雲間を照らしながら、煌々と波に照らされて神々しく昇ってくる。
思わず連続してシャッターを切る。
わずか十分くらいの出来事である。
なんでこんな絶好の場所にカメラを据えられるのか、親友に訊いてみた。
「先週一人でここに下見に来たんだ」。
ウーム、参った。
短い時間の日の出。
そうした下調べがないと、朝日の撮影などできない話である。
何げなく見ている自然界の写真、自分でやってみて改めて写真の奥深さを感じとった。
つい先日は阿蘇大観望からの朝日を撮りに行くのに四時の出発。
早く着いて、いい場所にカメラを据えるためである。
この日はあいにく雲が厚くて「写真にならない」ということで、残念だったがとりやめにした。
山の中の撮影は天候次第で難しい。
結局は写真撮影会が温泉小旅行に早変わりしてしまった。
南阿蘇の鄙びた温泉宿で、六人が勝手放題な浮世話。
カメラの話も商売の話も抜きにして、酒量と比例しながらの青春回顧談。
過ぎ去った日々の六人の話は続く。
私以外の友は忙中閑ありの者ばかり。
そこは写真は撮れなくても、それぞれの「無所属の時間」の過ごし方は上手く心得ているので愉しいのである。

自由に述べたい自由に生きたい

私はもう五十一歳になった。
こうなったら、言いたいことを言おう。
本音丸出しで、普段考えていることを語ろう。
そう思って、私は以前から書店新聞の「声」欄に投稿している。
すると、それを読まれた書店経営者から電話がかかってきた。
近所にコンビニが二つできて、売上が減っているらしい。
あれこれお話しして、結局中小企業診断士に相談されることになった。
取次の広報からも電話がかかってきた。
取次が発行している雑誌に私の文章を転載したいという。
出版社の社長さんからは、手紙が送られてきた。
私の考えと同意見だと言われた。
テレホンカードまでいただいた。
このように反響がある。
皆さん、書店新聞を隅まで読んでおられるようだ。
掲載されればその文章は永久に記録として残る。
だから迂闊なことは発表できないのだが、それよりも私はもっと自由に述べたい、自由に生きたいと考えるようになった。
二十世紀は暗い戦争の世紀だった。
二十一世紀に至って、人類は自由を獲得すると私は思う。

責任販売制導入は十分議論尽くして

再販制度維持の運動に際して大変お世話になった永六輔さんが新しく『嫁と姑』なる本をお出しになると聞き、早速仕入れることにした。
ただし発注量は販売予定数量の半分に止めることとした。
売り切れた時点で追加注文で入手できればよいが、できなければ諦めてセールスチャンスを逃しても売れ残りを出さないための用心策をとることとした。
理由はただ一つ、版元が責任販売制(買切り制)を実施している岩波書店だからである。
一般の版元のように委託制であるならば、販売予定数量を仕入れることにするであろう。
岩波書店が責任販売制をとられていることは、会社のポリシーであろうから了解する。
しかし日書連が21世紀ビジョンにおいて、責任販売制の導入を推進すると言われれば、誰もが納得する理由を説明していただきたいと思うのは私だけであろうか。
責任販売制になれば売上は確実に下がり、ハイリスク・ローリターンとなる。
確かに現在の制度では返品量が増大し、出版業界全体として非効率なことは否めない。
しかし、これを是正する方法は他にもいろいろあるのではないか。
とにかく、責任販売制の導入を日書連として進めるのであれば、都道府県組合ならびにその支部で、十分議論した上で結論を出してからにしてほしい。

訂正

訂正1月31日付4面掲載「第4土曜日はこどもの本の日読みきかせらいぶらりい」で、小学校低学年向き『世界のむかしばなし』の説明文中「小学館」とあるのは「学習研究社」の誤りでした。
お詫びして訂正します。

読みきかせらいぶらりい

洗濯機に入れてしまえばもうおしまい。
洗濯って、そんなにあっけないもの?ではありません。
大きなたらいに水を入れ、石けんの泡をぶくぶくぷわーとたてて洗います。
洗いあがった洗濯物を干すと風が吹いてきた。
巻き起こされたハプニングに、笑い声がきっと聞こえてくるでしょう。

読みきかせらいぶらりい

「ひぐれの町のまがり道。
何が出るのかまがり道」最初から最後までずっと繰り返されるフレーズに、いつのまにかひきこまれて心はドキドキ。
まがり道で出てくる色々なものにもびっくりだけど、耳に聞こえてくるフレーズに、もっともっとドキッとしてしまうに違いありません。

読みきかせらいぶらりい

お祭のたいこにさそわれるのは、人ばかりではありません。
きんぎょのアカさんも子供達と連れだってお祭へ。
たくさんの人に夜店。
驚きながらも心はウキウキ。
ついに金魚すくいの金魚達まで踊りだしてお祭は最高潮。
読み手も聞き手も、いっしょに楽しめる一冊です。

NHK出版、語学テキスト全点をCD化

NHK出版は二月九日午後四時より新宿の京王プラザホテルに首都圏の書店約二百名を招いて平成十三年度のNHKテキスト、新企画を中心に出版企画説明会を開催した。
第一部の説明会で安藤正直営業局長は、同社の前年の実績について「語学テキストは『基礎英語(1・2・3)』の教材をカセットテープからCDにして実売が上がった。
家庭誌全体は若干のマイナスだった」と報告。
新年度は十四誌を加え語学講座十七点の教材をすべてCDに移行するほか、ハングル講座を月刊化する、語学音声教材は通年、委託で出すなどと説明。
創業七十周年を迎えた今年は「未来をいっぱいゲットする」を合い言葉に、放送と連動した企画を出していくと述べた。
新年度NHKテキストの概要と主要企画については荻野靖乃編集局長が説明。
書籍の重点企画として『NHKスペシャル宇宙』(全4巻)、アニメ『学園戦記ムリョウ』のメディアミックス展開などを説明した。
販売促進計画は熊倉一博販売部専任部長が、■書店のNHKテキスト・コーナー展開と拡財提供、■定期購読者獲得キャンペーン、■全国千九百店のマクドナルドでトレイマットを用いた宣伝展開、■大河ドラマ「北条時宗」の並列販売−−などを報告した。
第二部懇親会でNHK出版安藤龍男社長は「ラジオ第二放送が始まった七十年前、放送をサポートするためNHK出版ができた。
放送の発展とともに実用テキスト、独自企画のNHKブックス、翻訳書、美術とジャンルを広げてこられたのはご支援のおかげ」とお礼の言葉を述べ、日書連萬田会長の発声で乾杯した。

うちそと

「本は文明の旗だ、その旗は当然美しくあらねばならない」と論じたのは版画家で装丁家の恩地孝四郎である。
恩地は、大正から昭和の時代を担う作家たちの大半の本を手がけているが、その卓越した装丁は「作家に負けぬ本」と評された。
本の函やカバーの装丁は、読みたいという思いを誘い手に取られることを目指す大事な表象要素だろう。
もちろん主体はあくまで中身であり、読まれてはじめて本になる。
しかし、装丁には、読者が内なる作品に心をすりあわせて読むための重要な役割をもっているといえる。
当然、文芸作品への十分な理解がなければ描き得ないのではないだろうか。
人にも本にも出会う「とき」というものがある。
私もむかしは、書名や著者名の何たるかよりも前に、綾なす装丁に目を奪われ誘いこまれるように手にする本が多かった。
あの指先から全身へはしる不思議な快感を忘れることができない。
そんな思い出の初版本をいくつか取り出してみた。
谷崎潤一郎の『鍵』は棟方志功の装丁。
井上靖の『淀どの日記』は小倉遊亀で、同じく『天平の甍』のそれは橋本明治、石川達三著『四十八歳の抵抗』が宮本三郎と錚錚たるアーチストたちによるものだ。
これらの古い本にふしぎな愛着があって座右から離せられない。
ちまたに本はあふれているけど、次の世代へ残る本がどれだけあろうか。
どうも現代の版元の状況は、情緒もなく売れる本をできるだけたくさん生産し、消費としてかたちづくられているように思えて辛い。
(銀杏子)

蒲田さんらに大賞

文庫による読書感想文・表現コンクール「BunBun大賞」の表彰式が三日正午から浜離宮朝日小ホールで行われた。
一万二百二十三編の応募作品から第二回BunBun大賞に選ばれたのは読書感想文部門に行田市・蒲田良恵さん『喪失が教えてくれたこと』、作家への手紙部門は愛知県立岡崎北高校・大島菜美子さん『山田詠美さんに言いたいこと』、ビジュアル表現部門に名古屋市・古川あづささん『智恵子の気持ち』。
このほか各部門ごとに朝日新聞社賞、角川文化振興財団賞、中学・高校・一般の部優秀賞が選ばれた。
校内コンクール参加校は千百六十六校に達し、学校賞として熊本県甲佐町立甲佐中学など四校が選ばれた。
表彰式で朝日新聞社箱島社長は「朝日新聞は明治十二年に創業し、三世紀にわたって新聞を発行してきた。
活字文化をさらに普及させるため一昨年から読書応援団の推進キャンペーンを展開。
この一環として角川文化財団とともにコンクールを主催している。
豊かな活字文化を発展させていきたい」と述べた。
また、角川文化振興財団角川理事長は「新聞のブン、文庫のブン、文章のブンを重ね合わせ、新しい時代の読者を模索していくのが作文コンクールの意味」と、コンクールの役割を強調した。

総理大臣賞など68名を表彰

毎日新聞社・全国学校図書館協議会が共催する第四十六回青少年読書感想文全国コンクールの表彰式が二月九日午後一時から東京・日比谷の東京会館で行われた。
今回の作品応募総数は前回を一万一千七百七十四編上回る四百二十八万二千五百六十三編、参加学校数は二万九千十八校だった。
このなかから内閣総理大臣賞五、文部科学大臣奨励賞五、毎日新聞社賞二十五、全国学校図書館協議会長賞三十一、サントリー奨励賞代表一、入選代表一の合計六十八名が表彰式に出席し、出版社、書店、作家・評論家、教育関係者ら約七百名が受賞者を祝福した。
表彰式の席上、主催者を代表して毎日新聞社の斎藤明社長は「四十六回目を迎えて四百二十八万人が参加する大コンクールに成長した」、全国学校図書館協議会の鈴木勲会長は「読書こそ教育の原点。
人間性と感受性を涵養するのに、読書に勝るものはない。
本を読む喜びを一人でも多くの友達に伝えてほしい」とあいさつした。
また、田代紗恵子中央審査委員長は「どの作品も素晴らしく、一人ひとりの個性が伝わってきた」と選考経過を報告した。
賞状授与の後、内閣総理大臣賞を受けた岡山県倉敷市立万寿小学校二年の渡邊真衣さんが受賞作品「『たんぽぽさいた』を読んで」を朗読すると、著者の小川潔氏は「読書を考え、行動するための出発点にしてほしい」と励ましの言葉を述べた。
続いて北海道苫小牧市立豊川小学校四年の三津谷百恵さんが「私を本好きにしてくれたのはお母さんの読み聞かせ。
本は私の心を豊かにしてくれます」と受賞の喜びを語り、全国学校図書館協議会・笠原良郎理事長のあいさつで閉会した。
〈内閣総理大臣賞〉▽小学校低学年=岡山県倉敷市立万寿小学校2年・渡邊真衣▽同中学年=北海道苫小牧市立豊川小学校4年・三津谷百恵▽同高学年=岩手県宮古市立山口小学校5年・寺崎雄大▽中学校=岩手県北上市立北上中学校1年・加藤光晴▽高校=石川県立金沢桜丘高等学校3年・高見優

催し

◇21世紀へ向けて書店の学習会「21世紀へ勝ち残る書店の課題」京都府書店組合の書店学習会第11回は二月十七日(土)午後二時半から、烏丸丸太町下ル、京都商工会議所で開催する。
講師に日本書店大学学長で田辺企画代表の田辺聰氏を迎え、「21世紀へ勝ち残る書店の課題」を聞く。
参加希望者は電話かFAXで京都組合までお申し込みを。
学習会終了後、懇親会を予定。
◇トーハン総研カルチャーフォーラム「売るためのマーケティングを見極める」三月十六日午後二時から東池袋の「かんぽヘルスプラザ東京」で平成十三年度カルチャーフォーラムを開催。
講師は「『ポスト・イット』知的生産術」「ルート16の法則」などの著作で知られる経済キャスター・西村晃氏。
テーマは「売るためのマーケティングを見極める−発想の方向性と顧客吸引の戦術を探る」。
受講料は五千円、定員百名。
お申し込みは三月六日までにトーハン総研セミナー事務局へ。
■03−3268−0731、FAX03−3268−0756

メディア規制強化を危惧

人権擁護推進審議会が昨秋発表した「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」に対して、マスコミ各界から「言論・表現・出版の自由」の観点から疑問を呈する意見書の提出が相次いでいる。
この中間取りまとめは、人権擁護機関や訴訟で救済できない人権侵害に対応するため、政府から一定の独立性を有する強制調査権を持つ救済機関を設置することなどを提言したもの。
「人権侵害の類型」に「差別」「虐待」「公権力」と並んで「メディア」が取り上げられている。
日本雑誌協会は中間取りまとめに対して、「過剰な取材」「行き過ぎた取材活動」という表現の意味、範囲が曖昧で、「そこまで取材するのは行き過ぎ、過剰」と強制的に「待った」がかけられるとなると「知る権利」「表現の自由」「報道の自由」に制限をかけ、言論封殺につながると問題点を指摘。
さらに、マスメディアへの人権侵害に対する強制調査を重大な疑点の一つにあげ、憲法上、民主主義の柱とも言うべき「報道・表現の自由」にも抵触しかねないと危惧を表明。
中間取りまとめの抜本的見直しを強く要望している。
また、日本書籍出版協会は「メディアによる人権侵害」を「公権力による人権侵害」と同列に扱い、メディア側の諸問題を積極的救済の対象としていることに大きな違和感を覚えるとして、メディアを対象とする新たな強制調査権限を有する人権救済機関の整備について民主社会を危うくするものとして懸念を表明。
公権力に対する監視機能を有するメディアの力を削がんとする意図を感じざるを得ないと指摘している。
書協は「言論・表現・出版の自由」を尊重する一方で、差別表現等への配慮と人権意識を醸成する不断の努力を強調。
出版綱領に則り出版人として適切な自主規制に今後とも努めるとしている。

10会場で文化講演会

第16回を迎える「世界本の日=サン・ジョルディの日」実行委員会が二月五日に書店会館で開催され、今年も全国縦断文化講演会はじめ、多彩な催しが準備されていることが報告になった。
文化講演会の準備については、実行委員会越石武史事務局次長が報告。
六月一日、東京組合が集英社の協賛により文京シビックホールで北方謙三氏の講演会を開くのを皮切りに、十ブロックの担当組合が決まり、会場の設営が進んでいる。
四月十九日から東京ビッグサイトで開催される東京ブックフェアでは、今年も第二出版販売の協力で「読者謝恩セール」を開催。
今年は市会機能をさらに充実させ、書店の積極的来会を呼びかけているところ。
地区イベントは、例年三十万人の人出で賑わう名古屋が二十一日、二十二日に中区の久屋大通公園で本と花の市を行う。
九回目のチャリティ・バザー、本の読み聞かせなどを予定している。
北海道十勝地区では、四月二十一日に帯広・北海道ホテルで桂文我の親子寄席を企画。
このほか、「春の書店くじ」配布、雑誌社共同企画「心が揺れた一冊の本」などのキャンペーンを展開する。

USA書店情報(46)

出版関連上場会社の二〇〇〇年の株価推移が『パブリッシャーズ・ウィークリー』一月八日号に載っている。
パブリッシャーズ・ウィークリー株価指数(PWSI)に採用されている二十二の会社のうち、二〇〇〇年末が九九年末を下回った社が十三社。
この間PWSIは七・五%下落した。
同時期ダウ・ジョーンズ平均株価はPWSIより少しましな六・二%マイナス。
しかし、情報産業、インターネット関連を多く含むナスダック(米店頭株式市場)指数は三九・三%のダウンを記録していた。
PWSI採用銘柄でもインターネット関連会社の株価は昨年、さんざんだった。
アマゾン・ドット・コムは、九九年末七六・一三ドルから二〇〇〇年末一五・五六ドルと七九・六%ダウン。
バーンズ&ノーブル・ドット・コムにいたっては一四・一九ドルから一・三一ドルと、なんと九〇・八%の落ちとなった。
一方、実在書店の株価を見ると、健闘したのはバーンズ&ノーブル。
二〇・六二ドルから二六・五〇ドルへ二八・五%上昇した。
しかしそれ以外は苦戦で、ボーダーズ・グループは一年で二八・一%落とし、ブックス・ア・ミリオンは八三・四%の下落。
上昇率上位三社には、出版社三社が並ぶ。
教育、辞典分野に強いグロリアを買収し、『ハリー・ポッター』のアメリカ版の出版社、スカラスティックが四二・五%のアップ。
医学書を中心にトップックラスの地位を保つハーコート・ジェネラルは、リード・エルセビアによる買収の動きもあって、四二・一%株価を上げた。
それに続いたのが、金融収支の改善が株価に好結果を与えたリーダーズ・ダイジェストの三三・八%だった。
『パブリッシャーズ・ウィークリー』一月十五日号によれば、大手書店の約二カ月に及ぶクリスマス商戦の結果は、がっかりさせるものだったという。
バーンズ&ノーブルやボーダーズでも、総売上は前年同期を上回ったが、当初見積もりには達せず、同一店舗比較でも期待に反してしまった。
アマゾン・ドット・コム、バーンズ&ノーブル・ドット・コムの売上は、実在書店よりも予想に近かったが、ウォール・ストリートに好印象を与えるほどではなかった。
そうした中、独立系書店は総じて良い結果が出たようだ。
大手チェーン書店の不振は、ベストセラーの目玉がなかったこと。
客足の伸び悩みは、大統領選のごたごたに起因するところもあったようだ。
天候不順も影響している。
いすれにしてもモール店での売上減が目立った。
チェーン書店は、引き続きモール店を整理し、スーパーストアへのシフトを続けている。
二〇〇〇年末、四大チェーン書店の総店舗数は二千四百五十四店。
前年と比べ〇・五%の増加となった。
スーパーストアの数は九・一%増だから、その分モール店が閉鎖されたことになる。
大型化をリードしているのは相変わらずバーンズ&ノーブルで、スーパーストアは三十一店増の五百五十九。
逆にモール店のB・ドルトン六十六店を閉鎖、残り三百七十八店とする。
ナンバー2のボーダーズ・グループは、新規にスーパーストア四十九店を開き合計三百四十九店となり、モール店のウォルデンブックスは十店閉じ八百九十店とした。
ブックス・ア・ミリオンはスーパーストア十一店増加で百四十六店、小規模店は三店減らし、四十二店。
経営再建がなったクラウン・ブックスは、店の閉鎖にストップがかかり、スーパー・クラウン三店を開き七十一店とし、小規模店四店を閉じ十九店。
バーンズ&ノーブルは、引き続きインターネット関連への出資、eブック、ビデオ・ゲーム市場への進出をはじめとし、創造的な動きを繰り広げる。
インターネットの影響度を見るために意識的に抑えてきたというスーパーストア展開も、もう少しペダルを踏み込んでも大丈夫と判断。
今年は四十〜五十店を予定している。
一方、ボーダーズはその経営のビジョンのなさを投資グループなどから指摘され、改善に努めるも、なかなか成果があがらない。
オンライン書店も急成長の時代は終わりつつあるとの見方が一般的になってきた。
アマゾンの成長が減速し始めたこと。
バーンズ&ノーブル・ドット・コムも、アマゾンからマーケットシェアを奪って成長中とはいうものの一株あたりの損失額は改善せず、前述の株価がこれを反映している。
独立系書店が健闘した要因をいくつかあげる。
天候が悪かったせいで、お客が近所の書店で用を足したというもの。
大ベストセラーがなく、書店が幅広いタイトルの本をお客にていねいにすすめることができたこと。
独立系書店のマーケティング・キャンペーンの一つ、おすすめ本の「ブックセンス76リスト」が書店にも読者にも知れ渡ったこと。
お客が手間どるオンライン書店から実在書店に戻ってきていること。
本が再び人気の贈り物になっていること。
(竹)

−無題−

IT化の波を受け、出版社、取次から様々な流通スピードアップのシステムが提案されている。
愛媛県書店商業組合では、二月六日午後三時より松山市・ワシントンホテルに小学館マーケティング部佐藤善孝部長を講師に迎え、小学館グループの「Sブックネット」をテーマに研修会を開催した。
研修会には組合員五十一名が参加した。
佐藤部長は自己紹介を兼ねて小学館マーケティング部の内容を紹介したあと、Sブックネットの成立した背景と、なぜ三〜五日での配本が可能になったかを説明した。
また五月にスタートする「books・id・net」や、著作権はじめ今後の問題点にも言及した。
Sブックネットが本当に読者に目を向けたシステムであること、われわれ書店も読者を常に念頭において出版社や取次のシステムを活用する必要性を認識させられる講演会であった。
講演終了後には、Sブックネットを利用した体験談や活発な質疑応答が行われた。
(光永和史広報委員)

「黄山・景徳鎮・蘇州・上海7日間の旅」参加者募集

日書連厚生委員会は五月に実施する「黄山・景徳鎮・蘇州・上海7日間の旅」の参加者を募集しています。
世界自然遺産に指定され、山水画の景観を持つ黄山、蘇州古都庭園、陶磁器の景徳鎮、エキゾチックな国際都市・上海と、中国の自然と文化遺産を満喫するツアーです。
実施要領は以下の通り。
▽旅行期間=5月9日(水)〜5月15日(火)▽旅行代金=16万5千円▽募集人員=40名▽申込締切=3月30日(金)▽添乗員=成田より同行▽食事=朝食6回、昼食5回、夕食6回▽申込先=近畿日本ツーリスト池袋支店■03・3971・3853、FAX03・3982・5562<スケジュール>5月9日=午前成田発、午後上海経由で景徳鎮へ。
景徳鎮泊。
10日=景徳鎮市内観光、バスで黄山山麓へ。
黄山山麓泊。
11日=ロープウェイで玉屏風楼へ、黄山観光。
黄山山頂泊。
12日=ロープウェイで下山。
バスで屯渓へ、屯渓市内観光。
屯渓泊。
13日=空路上海へ。
着後バスで蘇州へ。
寒山寺、虎丘、留園観光。
蘇州泊。
14日=バスで上海へ。
上海市内観光。
さよなら夕食会。
上海泊。
15日=午後上海発、夕刻又は夜成田着。

キヨスクの早売り

大阪地区雑誌発売日委員会が一月十九日午後三時半から大阪組合会議室で開かれ、昨年十一月に起きたJR大阪駅キヨスクの『月刊少年ジャンプ』『月刊少年マガジン』早売り問題について、十二月に引き続き検討を行った。
十二月の委員会で、JR西日本デイリーサービスネットに前渡しを認めた文書の確認を求めていたところ、今回も調査中でまだ確認していないという回答だった。
「鉄道弘済会とJR西日本デイリーサービスネットは別会社になったのだから、両社の間で改めて契約が必要では」という指摘や、「キヨスクは小売店なので、本来、前渡しは認められないはず」という意見も出された。
この件に関しては明確な回答がなかったため、二月の発売日地区委員会で再検討することになった。
(中島俊彦広報委員)

ページビュー一日一億五千万を達成

インターネットの検索サービス最大手、ヤフー・の井上雅博社長が二月六日、出版科学研究所の主催したセミナーでインターネットビジネスの現状と、同社の今後の戦略を次のように語った。
ヤフーがアメリカでスタートしたのは一九九四年。
翌年の一九九五年に百万人だったユーザーが、二〇〇〇年には一億八千万人に増加した。
ヤフーが展開している地域はアメリカ、ヨーロッパ、中南米、アジアと世界二十四カ国に及ぶ。
日本国内を見ると、インターネットのユーザーは昨年二千万人を越え、今年半ばで三千万人を突破するだろう。
ヤフーは何かを探したり、何かを買いたくなった時にアクセスする唯一の場所になりたい。
このための事業戦略として「ページビューの拡大」が第一で、■ユーザー数を増やす、■訪問頻度を高くする、■滞在時間を長くすることを考えている。
年末年始には一日に一億五千万ページビューを達成した。
ナンバー1サイトであり続けるにはユーザー数、ページビュー数だけでなく、ポータル(玄関)からデスティネーション(目的地)を目指したい。
日本の広告市場は五兆七千億円。
このうちインターネットはまだ百分の一の五百億円で、今後も伸び続ける。
当初は検索サービスの提供だけだったが、現在はショッピング、旅行斡旋、オークションなどの事業も手掛ける。
昨年十二月のクリスマス商戦では、ヤフー・ショッピングは売上高が前年同期比十三倍に成長し、ヤフー・オークションも一日五〜七億円の取引に成長した。
今後、各種サービスをiモードやその他の携帯電話、PDAなどに拡大し、ページビューをさらに増やしていく。

ヤフーの首位続く

インターネットの企業ブランド力は総合評価一位がヤフー、二位マイクロソフト、三位ソニー。
日経BP社は昨年十二月、国内の有力企業五百二十四社のブランド力を調べた「Webブランド調査」を行い、調査結果を発表した。
総合評価一位のヤフーは、ロイヤルティ(サイト利用度)の評価が下がり、マイクロソフトが上がったため、僅差で一・二位が決まった。
上位二十社でブランド指数が下がったのはヤフーだけ。
十五位のANAは一三・五ポイント増、十六位のアドビシステムは一二・五ポイント増と指数を大きく伸ばした。
四位以下の順位は■楽天、■日本IBM、■ニフティ、■NEC、■EPSON、■EPSON、■NTTドコモの順。

日販オンライン接続出版社が400社に

日販とオンライン接続している出版社は今年一月三十一日現在で四百六社になった。
日販は一九九四年から出版社に在庫情報のオンライン化を求めてきたが、同日現在、在庫情報をリアルタイムで把握できる出版社は四百六社(メールによる提供百二十五社含む)、オンラインで受発注を実施している出版社は二百九社を数える。
この結果、日販の自社在庫と出版社在庫を合わせ全注文量の九〇%以上の在庫情報がオンラインで把握可能となった。
出版社とのオンライン接続により、受発注のデータ化、在庫情報共有が可能になり、注文品の供給がスピードアップするほか、書店・読者からの注文品について、在庫の有無の確認、到着予定日がわかるなどサービス向上が期待できる。

新規参加社を受付け

角川書店、講談社、光文社、集英社、新潮社、中央公論新社、徳間書店、文藝春秋の八社で共同運営している電子書籍のダウンロードサイト「電子文庫パブリ」は、このほどシステム運営上の問題にメドがついたとして、新規参加社の受け付けを開始した。
入会条件は■書籍を継続して一年以上発行している、■自社で出版した書籍、出版予定の書籍を自社費用で電子化する、■毎月決まった日時に発行できる−−など。
電子書籍のフォーマットはテキスト、ドットブック、PDF、CXTのいずれかの形式で。
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−無題−

のぞきからくり、写し絵や紙人形の立絵などを源流とする紙芝居は、一九二〇年代後半に登場している。
特に一九三〇年に鈴木一郎作、永松武雄絵、蟻友会という貸元で制作された「黄金バット」は男の間で大人気だった。
山本武利著『紙芝居街角のメディア』(吉川弘文館・歴史文化ライブラリー103、千七百円)は、まだテレビができる前、子供の心を掴んで話さなかった紙芝居を、メディアの歴史として論じている。
テレビの登場により姿を消すが、この劇画スタイルは現在のアニメーションにも受け継がれていて、アメリカでは日本の漫画をジャパニメーションという新語で評価している。
太平洋戦争後の占領当初から、GHQは紙芝居の存在を驚異の目で見ていたという。
一九四八、九年にピークを迎えた紙芝居の観客数は、東京で一日四十万人、大阪は三十五万人、全国では百七十万人だった。
一年にすると六億二千百万人を動員していたことになる。
その頃、鼻を垂らして紙芝居を見ていた子供は、すでに六十代に達している。
水飴や酢昆布がごちそうだった時代ははるか遠くなってしまった。
しかし、紙芝居はマイナーだが双方向性・対面性を盛ったメディアである。
形は変わっても、そんな双方向性メディアの出現が起こるかもしれないと著者は結んでいる。
『別冊太陽子どもの昭和史おまけとふろく大図鑑』(平凡社、二千六百円)も、当時子供の心を掴んだ玩具をずらり並べている。
グリコのおまけ、紅梅ミルクキャラメルの野球カードから、ビックリマンチョコのシール、マクドナルドのハッピー・セットの玩具など、文字通りおもちゃ箱の世界が繰り広げられる。
雑誌の付録は、双六や紙で作る望遠鏡、スライド映写機など、レトロでなつかしいものばかり。
カラーで紹介されている。
「おまけ菓子の昭和年表」が巻末に付く。
というわけで、今回は昭和の子供が支えた文化を取り上げた。
新しく面白いものも数あるけれど、古いものにも不思議な楽しさが詰まっている。
こんあコーナーが書店にあったら、読者は時間を忘れてしまう。
回顧するだけでなく、発見があるからである。
(遊友出版斎藤一郎)

ITで進むボーダーレス

それから、現在はボーダーレスのデジタルネットワーク時代です。
ボーダーレスという意味の一つは、国境を越えて提携や統合が進んでいる。
出版界も婦人画報社さんがアシェットと一緒になった。
角川書店さんがドイツのベルテルスマンと組んでネット販売をやっておられる。
今まで言語の壁があって、国際化に縁遠かった出版業界もそういう提携が現実のものになっている。
それから業種を超えた提携も非常に増えています。
アマゾン・ドット・コムも去年の十一月から日本で営業を始めました。
アメリカでは書店ばかりではない、一番のネット小売りです。
今後アマゾンがどこまで大きくなるのか注目してます。
そうは言いましても送料を無料にしたときしか伸びていないということですから、ネット販売もこれから体力勝負、消耗戦になってきていると思います。
インターネット販売も、紀伊國屋書店さんのような大手書店、J・book、book・one、BOL、アマゾンと大体出揃ったと思います。
私どもも読者に本やファッション用品などをネット販売していますが、あくまでも読者サービスでしかないのではないか。
ネット販売は取次さん、書店さんを中抜きにして読者に直接販売することでしょうが、ある程度までいくでしょうけれども難しい問題だと感じております。
我々の業界でも、デジタルネットワークの時代になったから提携をせざるを得ない、一緒にやった方がいいという仕事がいくつもあります。
昨年秋に、雑誌発行の二十八社によって雑誌POSセンターを立ち上げました。
これは雑誌の売行調査をする機関です。
パソコン上で書店さんに情報を送ってもらい、一社だけでは意味がないので二十八社でまとまってやることになりました。
これまでは信じられないことなんです。
互いにライバル雑誌の売行きがわかってしまいます。
これはもちろん紳士協定も含めて情報が独り歩きしたり、自社に都合よく使ったりしないようにしております。
小学館グループが書店さん向けのデータベースを構築され、それを使って商品の受発注ができるという仕組み、「S−booknet」を始めました。
小学館さんからお話があり、私どもも「講談社Webまるこ」を立ち上げて一緒にやることにしました。
私どもはコミックから始めますが、ネット上での品揃えが多くなった。
近々小学館さんや異業種の会社と一緒に出資して新しい事業を始めることになっております。
それから携帯電話へのマンガの発信です。
四コママンガ中心ですが、国内だけでなく自動翻訳をしてアメリカ、カナダでも見られるよう、マンガ発行数社で一緒にやっております。
これまでは一橋グループ対音羽グループと言ってとかくライバル関係が強調されていました。
もちろん雑誌や書籍の企画では競争ですが、デジタルネットワークの時代になって、情報と物の流れのインフラ、基盤整備は足並みを揃えないと視聴者・読者のためにならないという時代になったと思っています。
もう一つのボーダーレスは、情報発信に関しプロとアマチュアの区別がなくなりつつある。
インターネットは誰でも自由に、不特定多数に自分の意見や知り得た情報を発信できる仕組みです。
そうしますと、そこに編集者だとか出版者というプロフェッショナルな職業は要らなくなる。
著者と読者の間を仲介する出版という仕事が壊されてしまう。
いろいろな垣根が取り払われてきているなと、日常の仕事の中で感じています。
こんなお話しをしておりますけれども、私もよくわかって話しているわけじゃないんです。
社員の新しい提案や自分で見聞したIT関連のことを「やれ」と言って前に進むしかない。
成否はわからないけどやってみるということ。
ですから、出ていくのは今のところ金ばかりです。
代金を払って見てもらえるようなコンテンツはそうはありません。
活字、紙のメディアでやった記事を、そのままネットで流せば見てくれるということはあり得ないと思います。
先ほどのライバル関係を超えた提携のひとつですが、文庫出版八社で電子出版パブリというサイトを運営しています。
これは各社で絶版になった文庫作品をネットで配信するものです。
売れないから絶版になるわけですから、「ネットで読めます」と言ってもどうでしょうかね。
これからは作家や漫画家を育てて、ネットの機能向けの作品を生み出すべきでしょうね。
版元にとってインターネットやiモードへ金になるコンテンツをどう作っていくか、大きなテーマです。
それともう一つは、本だけでなく、キャラクター商品やアクセサリーといった雑貨のネット販売をどこまで広げられるか。
雑誌という紙メディアの強み、ブランド力を活かした販売方法は期待できると思います。
こういう誌上通販のいいところは、自分たちで在庫しなくてもいい仕組みができることです。
ネットでメーカーと連動していますから、一つの雑誌のために見込み生産をする必要がない。
ネット時代に紙メディアの強さを活用する方法だろうと思っています。
ネットで本を売る専門サイトも出揃い、これから消耗戦になってきた。
本の販売の何パーセントがネットになるかはわかりませんが、あと三年もすれば大体決着がつくのではないかと私は見ています。
これは書籍だけでは成り立たないですよ。
アマゾンももっと値段のはる商品を扱うようになりました。
長期的にみて本の販売でインターネット販売が主流になるなんてありえないと思います。
いま、人口構造の高齢化と少子化の進展が急ピッチで進んでいます。
今の出生率だと二〇〇五年をピークに人口が減る。
六十五歳以上の高齢者が二〇二五年ごろには二七・四%になる。
これは明らかに商品の需要構造が変わるということ、日本が初めて労働不足経済に入るということにつながる。
若い人たちが高齢者を扶養する負担が増える。
ということは若い人の可処分所得も減るということになり、なかなか消費の回復は望みにくいのではないか。
しかし、逆の見方をすれば、高齢化社会は「読書が趣味」の中高年の人たちがいっぱい元気でいるわけですから、工夫すればよい。
また少子化の問題も、子どもが減れば一人当たりにかける費用は増えると考えていきたい。
消費人口と生産人口が減るという心配ばかりでなく、良い方にとらえていきたいものだと思っております。
二十世紀は、アメリカや日本のような工業国では大量生産、大量消費、大量廃棄の時代でした。
二酸化炭素対策がクルマだけではなくて、各業種の企業にも義務づけられてまいります。
我々で言えば、雑誌や書籍の返品が多いことが森林資源の無駄遣いとして社会的にいろいろ指摘されるということです。
三年程前から、王子製紙と共同でオーストラリアで植林事業を始めました。
ユーカリの木が紙の原料であるチップとして使えるのは三十年ぐらいかかります。
地球環境の問題、特に温暖化の問題は、我々紙を扱う業界にとっては、リサイクルを含めてこれから取り組まなければならないテーマとなってきます。
社会や経済の構造が変わってきている中で出版界も例外ではないんだと認識し、日々の仕事をしていく必要があると思います。

講談社・浜田専務講演・リード

講談社浜田博信専務は一月十日に行われた「須原屋研修生OB会」研修会で、「新しい世紀と出版」と題して講演。
出版業界が二十世紀から持ち越してきた課題を示すとともに、日本の経済構造が激変する中で改革にどう取り組むべきかを提言した。

課題山積で迎えた21世紀

新しい世紀の幕開けですので、少しは明るい話をしたいと思っていましたけれども、なかなかそうはいかないようであります。
日本の政治の混迷、経済の低迷と同じように、わが出版界も難しい問題を引きずってきたと認識するところから、今世紀が始まったんだと思います。
その第一は、書籍や雑誌が売れなくなってきた。
これに歯止めをかける有効な対策があるのか、大きな課題であります。
昨年まで、四年連続のマイナス成長。
売上げの規模が一九九二年の水準に戻ってしまった。
消費需要の伸びが期待しにくい中でこの課題を克服しなければならない。
さらに、我が国の少子化が急ピッチで進み、将来の読書人口である子どもの数が減っていく中で、規模の縮小をどうカバーしていくかが大きなテーマです。
二番目は、我が国も好むと好まざるとにかかわらず、デジタルネットワークの時代になってきています。
第三次産業革命が進んでいると言えます。
国境を越えた、あるいは業種を超えた、またはライバル関係を超えた競合、融合がどんどん進展している。
紙の出版が果たしてきた、情報を記録し、伝達し、保存するという機能が、他のメディア、例えばインターネットとか、iモード、デジタルテレビなどと、どのように競合していくのか。
流通の面では、ネットによる直販がどこまで拡大するのか、皆さんの店売りにどういう影響が出るのか。
これも大きな課題です。
第三番目は、前世紀末にいっせいに出てきた政治的課題にどう対処していくのか。
三月に公正取引委員会が結論を出すことになっている著作物の再販制度がどうなるのか。
それから個人情報基本法、青少年社会環境対策基本法の制定や、強制調査権のある人権救済機関設立の動きなどがあります。
プライバシーの保護、あるいは青少年の健全育成、悪書追放、風俗浄化に絡めて公権力の介入が非常に露骨になってきている。
我々はどう対処していくかという問題があります。
そのほかにも全国に新古書店やマンガ喫茶が氾濫し新刊書の売行きに影響が出ている。
あるいは万引きが助長され、不正取引が起きている。
これらに対抗策があるのかということもあるでしょう。
ネット時代になって著作権、知的財産権という概念が薄れてしまうといった心配もあり、出版の存立そのものにかかわる問題も出てきており、これらも出版産業の縮小傾向に含まれる課題と考えております。
二十世紀の百年は、「本が売れない」とか「本が読まれない」といろいろな人が嘆いてきた歴史ではないか。
大正の初めに書かれた内田魯庵の随筆に「人が本を読まない、女子どもは特に読まない、家庭にも読書室みたいなものを作るべきだ」というのが出ています。
また平田禿木という人も、「喫茶店ができて大学生は本を読まなくなった。
喫茶店に時間と金が取られる」と書いています。
今の我々も同じような悩みをしているわけです。
講談社の『80周年史』をひもといていきますと、富国強兵、殖産振興の時代にも、戦後の高度経済成長時代にも、出版は経済の波にさらされ影響を受けています。
社史には、本が売れない、出版不況だといっぱい出てくるんです。
出版に不況はないと言う人もいますが、必ずしもそうは言えない。
経済の動きに連動してきているのがわかります。
面白いのは、大正十一年に雑誌回覧業というのができた。
雑誌回覧の増加によって売上に悪影響が出たので、雑誌販売業組合が対策を考えたとあります。
また昭和四年には、有力新聞社が出版に力を入れるようになって、東京出版協会が特別委員会を作り対策を考えたとも出ております。
その他、関東大震災や太平洋戦争で壊滅するのですが、そこから立ち上がってきています。
いつもいつも順調に来たのではないということです。
先程申し上げましたが、言論・出版に対する弾圧、介入は出版条例(後の出版法)や新聞条例(後の新聞法)があったときも、表現の自由が憲法二十一条で保障された戦後にもいろいろあるんです。
戦争に負けて、GHQが言論の自由を制限する法令は全部撤廃せよと言ったのが昭和二十四年の九月です。
そして十一月には校閲、検閲制度が完全撤廃になりました。
しかし舌の根も乾かぬその翌年には、GHQが映画の検閲を始めました。
この検閲は日本が独立するまで続きました。
今の自分だけが苦しいのではなくて、先輩たちはもっと苦しみ、悩み、嘆きながらそれをバネにして今日の出版界を築いてきてくれたんだと理解し、その歴史を教訓にしなければと考えています。