全国書店新聞
             

平成21年1月1日号

地域の書店守る取組み強化/2009年の課題を大橋日書連会長に聞く

米国サブ・プライムローンの崩壊に端を発した世界的不況が深刻になる中で迎えた2009年。出版業界に対してどのような影響があり、日本の文化と書店を守っていくためには、どのような取り組みが必要なのか。この1年の日書連の課題について、日書連大橋信夫会長に聞いてみた。聞き手は本紙田中徹編集長。
――出版科学研究所がまとめた昨年1―10月の出版販売額は書籍が2・3%減、雑誌4・5%減、総合3・5%減でしたが。
大橋会長感覚的には書店の売上げは3・5%より悪い。ただ、経済は悪い悪いと言うとますます悪くなるし、ますます財布のヒモが固くなる。その辺の心理を考えると、あまり悪いというのもむずかしいね。
――金融不安の影響が売
上げに影を落とす一方、銀行の貸しはがしとか貸し渋りはありませんか。
大橋金融引き締め以前に、銀行が書店に金を貸してくれないから貸しはがしもない。ただ、書店の商品回転率、利益率からいうと慢性的にキャッシュフローはよくない。教科書扱い店などは手形で回していると思いますよ。その手形が落ちないで閉店した老舗もあります。日書連が昨年8月、キャッシュフローを中心に研修会をやったのもそのためです。結局は売上げをどう確保するか、愛知の高須さんなどから工夫の一端を聞いて勉強しました。
――書店の閉店はいぜん高い水準を保っています。
大橋廃業の原因は売上不振、店主高齢化、後継ぎ不在で、書店という業態が伸びる業態でなくなっている。ネット書店とか従来と違う競争相手も出てきた。携帯電話にしても、今まで書店は記事をコピーされると排除してきたが、逆に携帯というツールを利用してコミックの試し読みシステムとか、東京組合のブッカーズがスタートしました。携帯電話を利用して書店店頭でもっと本が売れるようにという研究が始まっています。
ただ、この分野は競争が激しく、そこに参入して成功するかどうかはわからない。ブッカーズは今はAUだけですが、今年はソフトバンクやドコモも使えるようになるので、また展望が見えてくると思います。
――昨年、日書連が重点的に取り組んだ運動の一つに取引問題改善があり、送品・返品の同時精算を取次に求めました。大手取次を訪問した成果をどのようにお考えですか。
大橋日書連はこれまで、返品入帳の締め切りをできれば月末に限りなく近づけてほしいと求めてきました。これについては、取引先が都市部に多ければ、29日ぐらいまで入帳してくれた取次もある。ところが全国規模で取引している取次は輸送面で無理があり、25日とか20日に締め切られてしまう。書店の分布によって違うことが取次各社と話してわかりました。
もう一つ、金融的に金がかかって大変なんだと言う取次もあった。では誰が負担しているかといえば全国書店です。そういう問題のありかが明確になってきた感じはしています。
――出版社の対取次決済を動かさないとできないという意見もありましたね。
大橋それはその通りだと思います。取次は出版社と書店の間にあって、しかも特徴的なのは大手出版社が数社、あとはあまたの出版社がある。書店は圧倒的に中小零細が多い。その間に取次は2社がガリバー的な立場です。取引上の優位さを背景に、わがままがきくこともある。
要するに伝票を作るとか物理的な理由で返品入帳が遅いのではなかった。経費が何十億も必要というなら、いくらでも反論がある。書店としては、これは取次に求めることだと思います。ただ、版元への支払いサイトの問題があるとすれば、業界としても検討が必要でしょうが。
――40年前ならブック戦争になりましたか?
大橋それは、今、とてもブック戦争をやっているだけの体力が業界にない。われわれが今回行ったのはあくまで説明とお願いということです。
――今後は、どのように展開していきますか。
大橋問題のありかがわかりましたから、一つひとつ気長に説得して回ろうと思います。あとは返品入帳がどうなっているか調査を続けていく必要もある。
それを詰めていくと、今度は業界の中で取引用語の統一が必要になってくる。それぞれの立場で都合のよいように言葉を解釈している。辞書を売り、文字・活字の大切さを標榜している出版業界として恥ずかしい話で、これを整理して議論に入らないと、何のことやらわからなくなる。いわゆる「新刊委託」は委託でない。こんな馬鹿なことが業界でまかり通っているところに問題がある。
――「返品フリー入帳」という言葉も問題ですね。
大橋版元がフリー入帳といえば、書店はそう思いますよ。ところが間に入っている取次にフリー入帳という言葉はない。「買切り」だと逆送される。取引用語の統一は、出版4団体で検討していく路線は引かれたので、あとはテーブルに付く段階です。
――日書連共済会の残余金処理の見通しはいかがですか。
大橋税務問題も法律的問題も弁護士の意見を整理して、粛々と2年前、日書連共済会が解散総会で行った決議を実行に移していくことだと思います。
ひとつ忘れていたのは当初、残余財産は道に落ちているお金と同じという議論があった。それでまるまる国庫に召し上げられると懸念していたが、途中から税金を取られたくないという話になった。没収を避けるべくやっていたのが、いつか税金が怖くなって足がすくんじゃった。そこに税金の解釈で最初は課税されませんというものだから、もったいなくなっちゃった。
課税はやむをえない。ただ経費を差し引いてですから、日書連が赤字を出していれば、それを差し引いての課税です。
12月理事会で結論はまとまらなかったのですが、1月までに、他の共済会組織の動向も調べて、再度検討したいと考えています。
――読書推進の取り組みについては、どのようにお考えですか。
大橋今までは出版業界の人たちが読書推進を一所懸命やってきた。それがもう一つ輪が広がり、業界外の方々を巻き込んで動き出し追い風になっている。
一つの動きとしては文字活字文化推進機構が国会議員と一緒になって、6月6日に、2010年を国民読書年にしようと決議した。政治家の方々を巻き込んで、いかに読書が大事かというところへきている。
最近、猟奇的な事件や、すぐキレる若者が多いと思います。誰かを殺してみたかったとかと言うのは、ゲームをやりすぎで、非常にこわい。これに対する免疫力を高め、切れにくい頭脳を作るには読書が必要です。昔の文化人はそうやって作られた。
――「サンジョルディの日」は見直しするということですね。
大橋見直しというより資金が尽きたということです。いままで資金協力してくれていた出版社が今回限りでと言われ、あと3年間は続くことになりましたが。業界でやってきた実行委員会は同じ形がとれない。今年3月に実行委は一応解散し、そのあと日書連の出来る範囲で、やっていくよう研究しています。
――書店くじも、組合員が減少し、発行枚数がずいぶん減ってきました。
大橋これも中途半端なやり方をしていると、あの店ではくじをもらえなかったという苦情で逆効果になりかねない。書店くじ取扱店と非取扱店があり、取扱店でも非組合員がいるなど、問題がある。
組合員の加入メリットということで、組織として非組合員との差別をどこまでやっていいか。重要な問題なので、全国中央会から講師を派遣してもらい、日書連という組合の性格とか仕事について1月に勉強会をやりたいと考えています。
以前、日書連加盟店の看板を作ろうという提案がありました。見れば本屋だということはわかる。ただ、最近は新刊書店と、古本屋、新古本屋がまぎらわしい。いろいろわからない業態が出てきたので、日書連加盟店の看板をというのもわからないではない。
――組合員の減少はまだ続くでしょうか。
大橋書店の数が減っていることと、組合から抜ける自由脱退という2つの問題があります。チェーン店で最初から組合に入らない場合もあります。商店街に出てきたフランチャイズ店に加入をお願いに行くと、本部に聞いて下さいで1カ月も返事がない。街路灯は商店街でやっています。明るく、交通量の多い商店街の特質を見極めて出店しているのに、商店街に入らないというのはどうでしょうか。全国商店街連合会の桑島会長は、地域はそういうことに強制力をもつべきだと言っています。
――書協の菊池副理事長が小売りが衰退すれば出版業界全体が衰えていくと言っていましたが。
大橋全く同感です。出版業界の存亡につながっています。売るところがなくなれば業界が衰亡します。
北海道組合の総会に行った時、主要都市に今までは必ず複数の書店があり競争していたが、競争相手が廃業してしまった。その分、来年は売上げがプラスになるが、その後が怖い。2店分の売り上げにはならない。競争相手がいて切磋琢磨していた方がよかったと言っていました。
――今、独立店の新規参入が減っていますよね。
大橋それは、わが国全体に言えることで、酒の蔵元などは焼酎にやられ、造り酒屋が壊滅状態になっている。じっくり醸成を待つ味噌もだめらしい。造り酒屋、味噌屋、本屋は、地域の文化人と目される人たちがやってきた。いま、本が読まれなくなって、お酒も飲まれなくなって、味噌もだめ。そうやって日本全体の文化が失われていくんですよ。大メーカーが供給するから、地域の文化はなくていい。アメリカの競争原理がグローバルスタンダードと入ってきた結果、地域の文化性を殺してしまった。それで地域の商店街がシャッター通りになっちゃった。ホームセンターができて、全部そこで買うから地域の小売店はみんないらなくなる。そういう形で地域の特異性がなくなり、文化が死んでいく。
各地にお祭りがあります。神田祭りはワッショイワッショイと掛け声に地域性があった。それがいつの間にか、ラッセラッセになっちゃった。お囃子もレコードになっている。地域の伝承が消えちゃうのは、さびしいですね。
便利さとは別に、地域の核になるのが書店だと思う。だから「中学生はこれを読め」とかね。北海道の読書運動が愛知でも展開されていますが、それでいいと思うんですよ。みんなで工夫してもらいたい。
いまは地方の時代だと思いますよ。それを日書連がコーディネーターとしてお手伝いしていく。講演会も東京ばかりに一極集中するのではなくて、地方でもやっていただきたいし、これからは地方発信型の文化を大事にしていかなくてはいけないと思います。

書店新聞からのお知らせ

次号は1月11・21日合併号を21日に発行します。

取引用語、業界で統一化/上限20万円で活性化資金/12月理事会

〔取引改善〕
取引用語の統一問題について、柴崎委員長は「物流と商流で『新刊委託』が違う意味に使われている。出版社有事の場合も、『フリー入帳』をめぐって問題が生じている。流通上、注文品の返品は出版社の了解が必要だが、いちいち了解をとっていないのも事実」と指摘。『出版事典』(出版ニュース社)や書協の新人研修用テキスト、書店の用法などを比較して、取次の解釈と突き合わせていきたいとした。
一方、長野の書店からは発行所が倒産して返品したところ、発行所と発売元が異なり、発売元が返品を拒否した事例が報告された。大橋会長は取引取次に照会するよう指示した。
秋田組合からは「出版社倒産時は、取次から各書店に速やかな連絡を願いたい」と要望があり、柴崎委員長は「倒産出版社のお知らせは、取次営業から行うことになっている。東京組合では全書店にFAXで流している」と報告した。
〔情報化推進〕
組合活性化活動の補助金として、今年も1組合上限20万円まで「活性化資金」の申請を受け付ける。締め切りは1月19日まで。
小学館、集英社、講談社3社のコミックを携帯電話を利用して試し読みするシステム「ためほん」は、12月24日から三省堂書店本店、書泉グランデ、教文館、大盛堂、オリオン書房と、今井書店グループの6店、計11店で少女コミックからスタートすることが報
告された。
店頭掲示ポスターのQRコードを読むと、各シリーズ1巻の冒頭16頁分が携帯電話にダウンロードされ読める仕組み。同時に、どの書店からアクセスがあったか把握できるため、販売との連動データもとれる。
このほか、財団法人図書館振興財団が文部科学省の認可により11月19日に設立されたことが報告された。同財団の理事長は図書館流通センター(TRC)代表取締役の石井昭氏。図書館専門職の育成、民間図書館設立の助成、図書館運営の助成などを掲げている。井門委員長は大日本印刷の下にTRCと丸善が経営統合し、図書館、ネット書店をめぐる再編成が進んでいることを指摘した。

現行規約は維持を/小売公取協

小売公取協影山専務理事は12月9日、元永顧問、大川事務局長とともに公取委消費者取引課に笠原宏課長らを訪ね、現行規約の見直し問題で意見交換を行ったことを報告した。
公取委は改訂作業の進捗状況について報告を求めた
が、小売公取協側は「現行の規約は3年目で業界全体に認知され始めた状況。相談事例も多く、有効に作用している。経済情勢が厳しい今、これ以上の規約緩和は受け入れがたい。当面、現行制限を維持したい」と述べた。
これを受けて、18日の理事会では現行規約維持の方針を改めて承認した。

弁護士の見解を確認/日書連共済会の財産引き継ぎ

12月5日、東京富士法律事務所に須藤英章、赤川公男両弁護士を訪ね、日書連共済会残余財産の引き継ぎについてアドバイスをもらったことが報告された。
弁護士の見解を要約すると、①共済会の清算業務処理後も残余財産を日書連に移行させずにいれば国庫没収の恐れがある、②財産の分配は不適切で、債務があるので弁済ならよいが、債務認識の不足分を追加処理するとしても、債務額が適正な根拠か問題が残る、③清算人は債務処理以外は行えない。利殖等は認められない、④日書連が預り金勘定で受けておくことは解散決議に反した処理となる。
報告を受けた12月18日の清算人会議では「国庫に没収される可能性があるなら、納税を急ぐべきではないか」「もう少し解散した他団体の動きを見て判断したい」などの意見が出た。この結果、1月までに他団体の事例を調べた結果を待って、結論を求めることになった。

11月期売上げ96.9%/休み多くビジネス街は打撃/日販調べ

日販経営相談センター調べの11月期書店分類別売上調査がまとまった。11月期は平均で前年同月比3・1%のマイナスだった。売場規模別では50坪以下が6・2%減と最もマイナス幅が大きい。土日休日が前年より3日多かったため、ビジネス街立地の多い「その他」では89・0%と前年を大きく下回った。
分類別で前年を上回ったのは文庫102・8%、辞典101・0%の2ジャンル。文庫は『容疑者ⅹの献身』(文藝春秋)に加えて『うそうそ』(新潮社)、『日暮し』(講談社)の売れ行きが好調で7カ月連続のプラス。辞典は昨年、『広辞苑』発売を前にした買い控えがあり、その反動と見られる。ビジネス書は88・9%で、11カ月連続の前年割れ。
客単価は平均1111・5円。各規模とも客単価はプラスであり、13カ月連続で前年を上回っている。

新販売システムを研究/返品運賃の実態全国調査へ/日書連理事会

〔流通改善〕
買切り、返品なし、高マージンの新販売システムをめぐり、2月17日に開かれる出版社・取次・書店を対象にした物流セミナーで書店側の提言が求められていることを藤原委員長が紹介した。12月の書協会員社説明会でも菊池副理事長から高マージンの買切り商品をと提言があり、藤原委員長は「一歩踏み出さなければ前進はない」とする考え方を述べた。
発売日関連では、平成21年の土曜休配は6月13日、7月11日の年2回。9月に20日(日)から23日(水)まで4連休があり、この間の配送が検討課題になっていると説明があった。
〔指導教育〕
鈴木委員長は「地方書店の資金繰り悪化の要因の一つ」として返品運賃の問題があることを指摘。返品運賃の実態を把握するため全国的な資料を作成するとした。1月、2月の委員会で調査項目を決め、3月以降に調査を実施する。
NPO法人全国万引犯罪防止機構が2月、名古屋、大阪、広島、福岡の4地区で「万引防止実践講座」を開催することになり、各県組合に出席の呼びかけがあった。
〔政策審議会〕
業種組合として日書連の性格や、組合員と非組合員の差別化、可能な対外的活動などを再確認するため、1月23日の理事会当日、全国中央会から紹介された厚谷弁護士を講師に勉強会を開くことになった。
また、12月17日、皇居前・パレスホテルで初めて開催した出版販売年末懇親会については、360名が出席して有意義な会になったと評価が高かったことが報告された。
〔読書推進〕
愛知組合が実施して5年目になる「孫の日」読書推進運動について、谷口委員長から実施概要が報告された。同キャンペーンは9月15日の敬老の日に子どもたちからおじいちゃん、おばあちゃんの似顔絵を募集。店頭に掲示して来店を促すとともに、10月第3日曜日の孫の日には「読み聞かせ絵本ガイド」を配布して、おすすめ絵本を販売。「お孫さんには豊かな心を、おじいちゃん、おばあちゃんには生きがいを」というキャッチフレーズで展開している。
「孫の日」運動を全国展開できないかという意見に、谷口委員長は「運動が盛り上がりを示してくれば、検討してみたい」と述べた。
児童図書出版協会とタイアップしてすすめる「第4土曜日は、こどもの本の日」キャンペーンは北海道から再スタートを切ったが、参加者に配布した「読書ノート」が紹介された。
〔増売〕
来春実施する「春の書店くじ」のポスター・デザインが決まった。特賞は「北京4日の旅」ペアで招待。
くじ裏面の住所、氏名記入欄については、今後、特賞当選者のみ別途記入してもらい、1等以下については住所・氏名の記入を求めない方針を確認した。
来年のサン・ジョルディの日キャンペーンについては、各県組合に独自企画案を求めていたが、17組合からプランが提出され、総額3百万円を補助する。
〔再販研究〕
広島・啓文社が11月25日から1~3%のプレミアムが付くプリペイドカード「COREカード」をスタートさせた事例が報告され、岡嶋委員長は再販研究委員会に照会するとした。〔共同購買〕
日書連のオリジナル手帳「ポケッター」09年版は完売となったが、中山委員長は次年度製作部数は今年より5千部減らすことを説明した。
〔書店経営健全化〕
各都道府県組合の11月期異動は、加入2店、脱退14店で、理事会当日の組合員総数は4月対比270店減の5653店になった。
〔消費税〕
3年後の増税を明記するかどうかをめぐり政府与党の混乱が続いている消費税については、面屋委員長が出版物の低率減税を求めていく場合、地方議会への請願が必要であることを指摘し、情勢を見て研修会などを企画すると述べた。
〔広報〕
直近1年間の各都道府県組合理事会・役員会等の開催状況について調査を行い、組合活動が活発でないところは、全国書店新聞を通じて組合の方針を伝えていきたいと調査の狙いを説明した。
〔その他〕
先に発表していた「平成21年日書連理事会日程」のうち、5月は20日が東京組合総会のため、5月21日(木)が各種委員会、22日(金)が理事会に変更になった。

組合加入メリットを追求/井之上理事長が方針示す/鹿児島総会

鹿児島県書店商業組合は12月10日午後4時から鹿児島市のサンロイヤルホテルで第23回定時総会を開き、組合員85名(委任状含む)が出席した。
総会は石井俊司専務理事(石井書店)の司会、村永直美副理事長(共研書房)の開会あいさつで始まり、井之上博忠理事長(ブックス大和)があいさつ。「出版不況が深刻さを増した1年だった。原因として活字離れ、読書離れ、書店離れ、パソコンや携帯電話での情報収集が容易になったことなど、日常生活の環境が大きく変化したことが一因とされている。今後、互いに知恵を絞り、組合員のメリットを限りなく追及し、『加入していてよかった』と実感できる組合に生まれ変わりたい」と述べ、協力を求めた。続いて、この1年間の取り組みについて報告。特に公立図書館でのTRC対策や増売運動への取り組みについて詳しく説明した。また、この1年間に6店の退会と1店の加入があったと報告した。
楠田哲久理事を議長に議案審議に移り、事業報告、収支決算報告、事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。役員補充の件では、理事欠員のため黒木淳一氏(黒木書店)を新たに理事に選任した。
このあと、永年勤続者表彰を行い、書店従業員として中村傳人(金海堂)、テジマの従業員として松元敏広、末吉正和の3氏に井之上理事長が表彰状を手渡した。
講演会では、日書連事務局・石井和之総務部長が「日書連の日常業務について」と題して講演した。
総会終了後、出版社、取次、輸送など業界関係者を交えて合同懇親会を催した。
(楠田哲久広報委員)

新春読者の投稿/全国いいものうまいもの

〔京野菜など/亀岡市・さわだ書店・澤田直哉〕
京都の特色ある特産品の中で、まず「京野菜」と呼ばれる、京都の伝統野菜からご紹介します。「壬生菜」や「万願寺とうがらし」、「賀茂なす」など多数あるなかで、「聖護院かぶ」(写真)は、京都を代表する漬物「千枚漬」の原材料。「千枚漬」は11月頃から3月頃の間、この材料の収穫と同じくして漬け込み販売される、京都の冬の味覚の一つです。また、この「千枚漬」のほか、「しば漬」とともに京都の三大漬物に数えられるのが「すぐき」。大根を短くしたような形の「すぐき菜」を塩だけで漬け込んだこの漬物は、乳酸菌により発酵作用した味わい深い酸味が特徴です。
京都府北部の冬の味覚といえば、「蟹」。京都北部の日本海沿岸は、良質な「ズワイガニ」が水揚げされます。その中でも希少価値が高く幻の蟹と称されるのが、京都府京丹後市間人(たいざ)で水揚げされる「間人ガニ」。なぜ幻なのかと言えば、通常の蟹漁は、中型船が沖合いで停泊しながら数日間かけて行うところ、間人では蟹の鮮度を保つために、漁は日帰り。しかしながら操業するのは、わずか5隻でしかも小型船のため、冬の海が時化ると出港できず、漁獲高が少なくなり幻の蟹となるのです。「間人ガニ」を食すには、予約は必須と言えるでしょう。
最後に、こちらも予約が必要な隠れた名物を。京都観光の保津川下りやトロッコ列車で知られる保津峡に近く、ひっそりとした山間部に嵯峨・水尾の里があります。予約が必要な理由、それは、この里には料亭や旅館、民宿が一軒もないこと。民家のうちの数軒が客人をもてなしてくれる、隠れ家です。訪れるとまずは特産の柚子を使った香り高い「柚子茶」でお出迎え。続いて「柚子風呂」で道中の疲れを癒した後は、名物の「水炊き」が登場。旨みが凝縮されたスープに絡み、弾力があり噛むほどに鳥本来の味わいが広がる地鶏を、取れたて新鮮な柚子を搾った特製ポン酢でいただく。素朴な温かさが伝わる鍋は絶品です。
その他、特色ある地元特産品を多く有する京都では、素材が持つ味を大切に、伝統の食文化が育まれています。
〔しじみラーメン/平川市・滝忠黒滝書店・黒滝恭一〕
念願の東北新幹線・青森駅開業が2010年12月に決定した。いまどき、津軽でお客様をご案内するとしたら、田舎館村の「田んぼアート」と五所川原市の「立ちネブタ」を見ていただこう。さらに津軽半島を北上して、食事は十三湖の「しじみラーメン」がおすすめだ。
津軽平野を日本海へ向かって流れ、馥郁たる岩木川は十三湖に流れ込む。中世の豪族安東氏や北前船による貿易など歴史も面白い地域だ。その十三湖の汽水域、ミネラルをいっぱいに含んだ土砂の中で育ったヤマトシジミははちきれんばかりにむっちり太っている。良質のたんぱく質を含み、味はまさに日本一といってよい。昔から味噌汁で食べるのが一番で、昭和の頃には丼にシジミ貝山盛りの味噌汁を出す食堂もあった。遠く弘前市周辺まで売りに来る行商もあって「シジミか~い、シジミかい」と叫ぶ声も聞かれていた。
近年ではシジミ貝の値段が上がったこともあり、ラーメンブームに乗って「しじみラーメン」が人気を博している。シジミ貝でとっただしに関しては申し分ないのでスープは薄い塩味で十分である。運ばれてきたときのの芳香と味は期待を裏切らない。また何といってもヘルシーなので、得をした気分になれる。蜆エキスは肝臓によいのでアルコールの好きな方、内臓疾患などで体力の弱っている方には特にお勧め。シジミエキスの入ったドリンクなども販売されている。二日酔いで疲れた肝臓には抜群の効き目がある。
十三湖のシジミ貝は冷凍技術が発達したので一年中味わえるが、資源確保のため秋から春までは禁漁になる。おいしいシジミ貝は夏から初秋にかけてが旬で、その頃は日本海で獲れるイカやフクラゲも最高だ。
〔鶏飯/奄美市・楠田書店・楠田哲久〕
今上天皇がまだ皇太子であった頃、美智子妃と共に奄美へ初めておいで頂いた時の逸話です。奄美空港で歓迎の昼食会が催されました。奄美の郷土料理「鶏飯」を初めて食されてあまりのおいしさに、「おかわり」の代わりに「いま一度」と申されたそうです。
昭和47年頃のお話が、今なお、語られるぐらいに「鶏飯」の味は一生に一度は食してもらいたい、奄美の郷土料理です。
江戸時代に薩摩の代官所が赤木名(奄美空港の近く)に置かれていた頃に、薩摩からの役人をおもてなしする為に、奄美のニワトリを使った料理として、生み出されたものです。
「鶏飯」の名前だけみると鶏の炊き込みごはんと勘違いするようです。鶏のささみなどの具をご飯に盛りつけ、アツアツのスープをかけて食べるもので、雑炊に近いものです。
季節を問わずに食欲を満たしてくれ、小さなお子様からお年寄りまで食べることが出来、健康志向の、奄美の郷土料理といえます。
鶏肉のササミを細かく裂いたもの、たまご焼き、しいたけ、のり、香りのよい柑橘類の皮を干したもの、パパイヤの漬物を細かくし、材料とします。あったかいご飯に具を盛り付け、鶏のスープをたっぷりとかけて食べます。
この時に気をつけるのは、スープに湯気が立っていないのでさほど熱くないと思い、一気に食べると、火傷しますので、ゆっくりゆっくりと味をかみしめながら食べてください。生きていてよかったと、幸せになる「鶏飯」料理です。
詳しいレシピは「鹿児島県奄美パーク」のホームページから入って「奄美の郷土料理」をクリックすると一番はじめに「鶏飯」が出てきます。
一度奄美にきて本物の鶏飯を食べて、「いま一度」と言いに来てください。

読みきかせらいぶらりい/JPICアドバイザー・大谷孝雄

◇2歳から/『おしりしりしり』/長野ヒデ子=作/長谷川義史=絵/
佼成出版社1365円/2007・8
75調と77調が混ざり合った歯切れのよい文章「おしりしりしり」で始まり、しりとりが続きます。おしり、りんご、ごりら、らっぱ、ぱいぷ、ぷっぷ(おなら)、うんぱっぱ、でうんちが出ます。リズミカルな歌でうんちも楽しくなりそうです。お子さんと一緒に歌ってください。

◇4歳から/『くだものなんだ』/きうちかつ=作・絵/福音館書店1050円/2007・4
「やさいのおなか」に続いて発行された本です。果物の断面を白と黒で描いたページを見ると、果物とは思えません。ページをめくると、カラーで描かれた断面と果物が現れます。白黒の断面に子供ははてな?という表情ですが、果物が現れると、一斉に知ってるコールが始まります。

◇小学校低学年向き/『はっきよい畑場所』/かがくいひろし=作/講談社1260円/2008・8
畑場所に登場する野菜の四股名や出身県、所属部屋が紹介されていますが、とても面白いです。相撲の仕切りや取り組みの実況は、手に汗握るはらはらどきどきの熱戦です。司会のミミズになって読み聞かせてください。大相撲人気はいまいちですが、はっきよい畑場所の本は人気です。

女性役員に聞く/兵庫組合理事・流泉書房・大橋洋子氏、同・小林書店・小林由美子氏

〔町の本屋の代弁者として行動/本好きが商売して成り立つ業界に〕
出版業界はマイナス成長が続き、2009年も厳しい経営環境が続きそうだ。現状を打開する突破口はどこにあるのか、また組合および中小書店活性化を図るにはどうしたらいいか――日書連傘下組合員の多くは中小書店で、町の本屋は夫婦とパート・アルバイトで営んでいるところが多く、今も昔も女性の力が書店業界を支えているといってもいい。そこで本紙はシリーズで各都道府県組合の女性役員に話を聞いている。今回は2名の女性理事を擁する兵庫組合から大橋洋子理事(神戸市・流泉書房)、小林由美子理事(尼崎市・小林書店)にご登場いただき、出版不況下における中小書店の生き残り策などについて語っていただいた。
〔中小書店廃業で荒廃する地域の読書環境〕
――兵庫組合の雰囲気を教えてください。
小林兵庫の理事は本当にいい人たちばかりなんですよ。みんな優しい。それに、個々に書店経営で大変なことを抱えながらも、組合のために一生懸命やっています。
大橋仲良く、和気あいあいとやっています。
――組合の役割はなんだと思いますか。
小林組合とはまず個々の書店のためにあるべきものだと思います。県組合理事の立場から言うと、私は「10坪の店の代弁者」としてこの役にいることを忘れてはならないと、いつも自分に言い聞かせています。
大橋まず組合員の意識を組合に向けることですね。そして、組合員の数が増えれば組合は元気になり、個々の書店も元気になります。
――日書連傘下組合員の多くは中小書店です。中小書店が疲弊している原因は何だと思いますか。
小林大きな資本をもった、たとえば電鉄系の書店がよそから入ってきて、大きい売場面積で、いい場所に、いい条件で出店する。そういう書店があちこちにできれば、それは中小書店は疲れますよ!
大橋正味も違い、不公平です。
小林本当かどうか知りませんが、○年延勘みたいなことをしているという。で、その皺寄せは全部中小書店に来て、「100%払え」となる。それは疲れますよ!出版業界の多くの人たちが目先の利益のことばかり考えている。そうせざるを得ない状況もわかるのですが、お客さんのことを考えていない。業界が荒れてしまっています。
――地域でコツコツとやってきた書店が次々と廃業に追い込まれています。
小林それは文化云々よりも、地域の人たちにとって不幸なことです。個人の店が閉店すると「これからどこに本を買いに行ったらいいの」って、みんな言われるらしい。大きな書店が小さな書店を潰して出てくるなら、その地域に根を張って、その地域の人たちのために死ぬんだぐらいの意気込みで出てきてほしい。駄目だったら「はい、やめた」は無しにしてほしい。
――地域に書店がなくなってしまいます。
小林そうです。その地域で本を買っていた人たちはどうなるんですか。
〔努力している書店に相応のマージンを〕
――出版不況はいつ底を打つと思いますか。
小林今が底だと思いたいですけど、実は底はもっともっと深いのかもしれません。
大橋みんな必死に棒にぶら下がっている。誰が手を離して落ちていくか。手を離さず残った数がある程度のところに来て、はじめてこの業界は少し良くなっていくだろうという話を、10年前、業界の人から聞きました。この業界は半分の規模になる、と。そのときは「嘘でしょ」と思いました。でも、現実はそれに近い数字になっている。だから、まだもう少し淘汰されて、そして残っている本屋の正味が下がって、それでなんとか商売として成り立っていくようになる。儲かりはしないけど安定する。だから、棒から手を離さずにどこまで持ちこたえることができるか……。
――厳しいですね。この業界は理不尽なことが多いと思います。
大橋先日、書店新聞に「無駄な送品が中小書店の経営を圧迫」という投稿が掲載されました(11月21日号)。「要らないものばかり送ってきて、うちを潰したいのか」って。これ、ほとんどの書店の実感だと思いますよ。
小林地方は返品運賃がかかる。それもおかしいと思う。何度理由を聞いても理解できません。返品代だけで月に何万円なんて、そんなの絶対おかしい。
――組合は組合員のために何をしたらいいのでしょうか。
大橋1%でも正味が下がればとても大きい。そのために何かできれば。
――日書連はマージンアップを求める書店の声に応えるため、新販売システム「これが本屋のイチオシ」という企画を実施しました。
大橋考え方は素晴らしいと思います。
――小学館が『ホームメディカ』で、責任販売制と委託制を併用し、書店が2つの取引条件から選べる試みを行っています。
大橋あれ、マージン35%ですよね。小学館の試みに感謝します。書店マージンがよりアップするための企画を今後も実施していただければと思います。
小林自分の中では、企画ものはすべて買い切りだと考えています。予約を取らずにたくさん仕入れて残ったら返品というのは、変と思っていましたから、予約を取った分マージンが高いのはありがたいですね。
大橋小林さんのように企画ものを頑張って売っている書店は、すごく努力しています。ところが、今、そういう店がどんどんなくなっているのが現実です。頑張っているところには努力に見合うだけのものを与えてほしい。オバマ次期大統領が言うところの「チェンジ」に取り組まなければ、この業界も衰退してしまいます。
〔地域に合った接客と品揃えで客をつかむ〕
――読者が本を入手する場所は、大手ナショナルチェーン、コンビニエンスストア、インターネット書店など多様化しています。こうした環境の中で町の本屋が生き残るにはどうしたらいいでしょう。
小林異業種からの参入については、既存書店にも責任があるのではないでしょうか。本の中身について知らなくてもできる、定価があるから難しくない、入ってきた本を並べて売ればいい、とりあえず仕入れて残ったら返せばいい――そういう考え方のツケがもうだいぶ前から回ってきています。私たちのような町の本屋が生き残っていくには、地域に合った接客と品揃えでお客をつかむ。きれいに言えばですよ、使い古された表現ですが、それしかありません。
――小林さんのお店ではどのようなことをされていますか。
小林ある専門家の方に「あなたの店は女性客しか来ないのに、どうして男性誌を置いているのか。全部、女性誌にしたらいい」と指摘されました。そんなことできないとずっと思っていましたが、今のやり方が駄目ならやってみる価値はあるかな、と。確かに男性誌は動いていない。今も金太郎飴のつもりはありませんけど、もっと女性客が入りやすい店作りをしてもいいかもしれないと思います。小さい店も自店に合った店作りを考えていかなければ。あと、大型商業施設をなかなか利用できないお年寄りや子供連れの方が気軽に来店できる店でありたい。
――大橋さんは。
大橋高齢のお客様は「これが欲しい」ではなく「何かないか」とおっしゃられます。こちらが「これが出ていますよ」と言うと、「じゃ、それ貰おうか」と。また、お客様が「これ」と商品を差し出したら、「これはこないだお買い上げになられましたよ」とか。そうしたやりとりの中で、お客様を囲い込んでいくしかありません。――日書連に望むことは。
小林ご努力いただいているのは理解していますし、感謝もしています。ただ、運動を尻切れトンボで終わらせないようにしていただきたい。倒産した出版社の問題でも、そのとき話題になっても、仕方ないよなで終わってしまう。
大橋書店新聞に投書しても載っただけで終わってしまう。
小林先ほども話が出ましたが、「無駄な送品が中小書店の経営を圧迫」という投稿。これを書いた人は載せてもらっただけでは納得していないはず。やはり回答がなければ。
大橋「そうだ、そうだ」ってみんなが思っているだけでは、問題の解決にもつながりません。
小林「大取次のリストラに立ち向かうにはどうしたらいいか」「地方の小売店の戦略を聞かせてほしい」とあるわけですよ。これについて意見を募って、喧々諤々の議論を展開することがあってもいい。
〔2009年は明るく元気に商売を!〕
――仕事をする上でモットーとしていることは。
小林お客様に対しても、出版社に対しても、取次に対しても、嘘を言わないことです。自分にできることしかできないし、できたことが自分の力。それを大きく言ったり、自分を偉く見せようとして無理をしたり、そういうことをしていると信用されなくなります。たとえば10冊でいいのに20冊、30冊と注文する。だから大変になってしまうんですよ。自分が売り切れる数だけが自分の力なんだということを、自分に厳しく言い聞かせています。いい格好をせず、嘘を言わなければ、見る人は見てくれているものです。
大橋いろいろな人に助けられて、ここまでやってくることができました。だから「感謝」だけですね。
――出版業界で尊敬する人は。
大橋出会う人すべてが尊敬に値する人だと思っています。
小林主人にいつも言われるんですよ、「人は自分よりみんな賢いと思え」って。人から学ぶということを、常に自分に言い聞かせています。
――2008年はどんな年でしたか。2009年の抱負も聞かせてください。
小林業界としては大変な1年でしたが、個人的には最高の1年でした。2月に東京に行ってポプラ社の社員さんの前で講演させていただいたことが強く印象に残っています。「私が大切にしていること」をテーマに話しました。子供の頃から両親が本屋をやっている姿を見て育って、自分で本屋をやり始めて30年がたちました。講演では自分の書店人生の集大成の気持ちで話しました。今でも思い出すと元気になります。2009年も元気に明るく頑張りたいです。
大橋2008年も「大変、大変」で1年明け暮れたような気がします。いま後継ぎがいなくて消えていく店、子供に継がせてもいいものか思い悩んでいる店が多い。だから2009年は商売として成り立っていくような業界になるよう努力したい。いま本屋をやっている人は皆本当に本屋が好きでやっているんです。だから、そういう人が商売をして成り立つ状況を作っていきたいと思います。

わが社のイチ押し企画/ポプラ社・『百年小説』編集者・野村浩介

あけましておめでとうございます。
昨年末、ポプラ社では『百年小説』という日本の近代文学のアンソロジーを刊行させて頂きました。1300頁を超える大部であり、森鴎外から太宰治まで51人の作家の短篇が収録されております。
もとより、私自身は日本の近代文学など語る資格はないのですが、諸先生方に導かれて編集作業にあたるうちに、改めて日本語の語彙の豊かさに驚きました。暮らしの営みを映した地名、季節の草花、家具や建具、居住空間の呼び名の豊かさ。「春の日の暮れ方しずかに、柳の蔭より段々暗うなりゆけば、頓(やが)ては小流(こなが)れの傍(かたわら)の白躑躅(しろつつじ)ばかりを染め抜いて、地の塵(ちり)は見せぬほどの月の光り柔らかに」と続いていくのは、幸田露伴の『一口剣』です。春の夕暮れ、月光を浴びて浮かび上がる白ツツジが美しく、今の語彙ではないのに安らかな親しみを覚えます。
明治の作家たちは江戸の伝統を受け継ぎつつ、果敢に新文体を生み出していきました。尾崎紅葉、幸田露伴、森鴎外、夏目漱石といった人たちが切り開いた道に、泉鏡花、永井荷風、志賀直哉、芥川龍之介といった若者たちが続いていく――。その流れを感じたとき、生年月日順の編集にさせて頂こうと思いました。
悪戦苦闘しながら豊かな文学世界を育てていった作家たちに感動し、人から人へと灯されていった情熱の軌跡を辿ってみたくなったのです。作品に沿って文壇の流れをたどる小冊子を初回配本限定でつけさせて頂いたのも、そんな思いからです。私たちが読み、書いている文章が、先人の努力が生み育てた言葉の森であったことに感謝したくなりました。
樋口一葉『わかれ道』、国木田独歩『武蔵野』、近松秋江『青草』、岡本かの子『鮨』、室生犀星『生涯の垣根』、川端康成『バッタと鈴虫』、坂口安吾『波子』等など、明治から昭和へとつづく文学の小径を愉しんでいただければ幸いです。

わが社のイチ押し企画/講談社・販売促進局長・川端下誠

新年あけましておめでとうございます。
旧年中は弊社出版物にご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、本年は弊社創業100周年を迎える年であり、書店様と読者の皆様に感謝の気持ちを込めて「本屋さんへ行こう!」ありがとう100年!図書カード毎週100万円プレゼントキャンペーンを4月より実施いたします。
また、今春の新企画としてはパートワーク(分冊百科)を2誌創刊の予定です。
まず未確認飛行物体UFOから神秘体験、超古代遺跡まで、ありとあらゆる謎と怪奇現象に迫る新説を紹介する「世界百不思議」(全50巻)を2月に創刊いたします。
そして、プロ野球有数の人気球団「阪神タイガース」初のオリジナルDVD付きパートワーク。「阪神タイガースオリジナルDVDブック猛虎列伝」(全50巻)も3月に創刊を予定しております。
雑誌が苦戦している中、パートワークのジャンルは活況を呈しています。読者のニーズに応え、書店様の売上に貢献出来る企画を随時刊行してまいります。
書籍につきましては、鉄道ファン垂涎の新企画「〔図説〕日本の鉄道東海道ライン全線・全駅・全配線」(全7巻、予価・各巻税込980円)を3月下旬より刊行いたします。ホームの配置やポイントの位置などを図案化した「配線図」をもとに、全駅の詳細データを加え、東海道ラインの全貌を明らかにした、見ごたえ充分の内容です。鉄道ファンの間では絶大の人気を集める川島令三氏の「見て・読んで・楽しく使える」唯一無二のシリーズですのでご期待ください。
本年もご支援のほどよろしくお願いいたします。

わが社のイチ押し企画/小学館・小学館PS営業企画部・北尾健

明けましておめでとうございます。
2008年下期の新企画「新版家庭医学大事典」につきましては業界を挙げてのご支援を賜り、誠に有難うございました。自動認識システム(RFID)導入による責任販売制と委託販売制を併用した新取引条件設定は業界初ということでもあり、不安もありましたが、皆様のご理解とご支援により、初版7万部でスタートすることが出来ました。心よりお礼申し上げます。さらに昨年は「小学館101新書」を創刊いたしました。書店様の店頭促進のおかげで、発売直後に重版に繋がりました。今後隔月配本で刊行して参ります。引続き展開をお願い申し上げます。
さて、2009年小学館、まずは「小学一年生」です。例年付録の充実を図って参りましたが、今年も楽しい付録が登場いたします。4月号「ドラえもんドレミファピアノふでばこ」、5月号は「はしる!おしゃべりダッシュドラ」です。そして史上初!この2つの付録が合体します。これで5月号への移行率アップを狙います。テレビCMも昨年以上に力を入れて参ります。また、店頭陳列コンクール&増売コンクールへのご参加をお待ちしております。
その他にも雑誌企画として、もう生では聴くことのできない落語名人の十八番を収めた「落語昭和の名人決定版(CD付)」、美術館ブームで中高年層中心に販売が期待できる「西洋絵画の巨匠」、そして「NHK世界遺産100」が発売となり、例年になく雑誌新企画が充実しております。店頭の展開はもちろん、定期読者獲得のお取組みを何卒お願い申し上げます。また、新ジャンル商品として、「勉強ひみつ道具プリ具」が登場します。子どもたちが必ずつまずく分野に特化した、プリントと勉強道具をセットした商品です。
主な新企画ラインナップを紹介させていただきましたが、今年も小学館の雑誌・書籍にご支援賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/小峰書店・広報室室長・松木近司

ヤングアダルト出版会で中高生向けのブックガイドを編集しているが、各社から選定候補見本として届けられる本のなかには、明らかに小学校高学年向きだと思われる児童文学作品(ルビを無くし、組体裁を中高生向けにしたもの)や、見るからに読者対象は大人なのに、ルビを増やした本であったり、これぞYA!という作品にはなかなか出会えなかった。それはひとつにはYA出版会が、児童書出版社と人文書中心の大人の出版社とで成り立っているからしかたないのだが、この3・4年前から、中高生を意識した本づくり、装幀から判型までまさにピッタリなYA本が出るようになった。
小社でもY.A.@Booksシリーズがある。読みはワイエー・アットマーク・ブックス。ターゲットは中高生。そのなかの一冊で『殺人者の涙』(12月刊)、タイトルはちょっと物騒だがお薦めしたい。
南米最果ての地に暮らすポロヴェルド夫妻は、旅人に一夜の宿を提供する善良な人間であった。二人にはパオロという子どもが一人あった。その、滅多に人の来ない辺鄙な場所へアンヘル・アレグリアという人殺しがやってきた。
ここから始まるこの作品は、人間世界のあらゆる問題を内包している。生死、困苦、歓喜、場面は風に吹かれるように、ときには翻弄され、見放され、見つめられ、救われ…。だがストーリーは、たんたんと静かに進む。この本は読者に「生きる」という意味を問いかける。
Y.A.@Books第2期全7巻揃定価1万1655円
『シュワはここにいた』定価1680円ニール・シャスタマン作/金原瑞人、市川由季子訳
『サマーハウス』定価1890円アリソン・プリンス作/鈴木佑梨訳
『ヒットラーのカナリヤ』定価1575円サンディー・トクスヴィグ作/小野原千鶴訳/中嶋香織装画
『8分音符のプレリュード』定価1575円松本祐子作/佐竹美保絵
『キャットとアラバスターの石』定価1470円ケイト・ソーンダズ作/三辺律子訳
『殺人者の涙』定価1575円アン=ロール・ボンドゥ作/唐仁原教久装画/伏見操訳
『ぶらい、舞子』定価1890円北村想作/あおきひろえ装画

わが社のイチ押し企画/双葉社・営業局局次長・戸塚源久

明けましておめでとうございます。旧年中は格別なるご高配を賜り、誠にありがたく厚く御礼申し上げます。
さて昨年末は、第29回小説推理新人賞受賞作家・湊かなえ著の『告白』が大好評を博しました。〝週刊文春ミステリーベスト10〟の第1位をはじめ、〝このミステリーがすごい!〟が第4位など高い評価を頂き、年を明けても益々売れ行きの勢いは上昇しております。
弊社では近年、文芸作品に力を注いで参りましたが、順調な成果が生まれておりますのは書店様のご支援の賜物と感謝申し上げます。
さて、本年は『双葉文庫』創刊25周年を迎えます。ここ数年、売上げが前年比120%と伸び続けており、本年も一層の伸長を目指します。好評の文芸作品の文庫化や、絶好調の書き下ろし時代文庫などを中心に、強力な作品を用意して参ります。
1月13日搬入で、佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』最新刊28巻を刊行致します。シリーズ累計900万部を突破し、一層の読者拡大を目指します。同日搬入で、西村京太郎著『十津川警部三河恋唄』が、また、NHKテレビドラマが1月10日よりスタートする築山桂著『緒方洪庵浪華の事件帳』第2巻も刊行されます。時代小説ファンが新たに広がるチャンスと期待しております。
5月には、読者プレゼントを付けた『双葉文庫ベストセット』をご用意致します。貴店の増売施策にご活用頂けますと幸いです。
コミックスにつきましても、裁判員制度を題材とした郷田マモラ著『サマヨイザクラ』(下巻3月発売)、1月17日全国公開映画の原作『大阪ハムレット』(全2巻)をはじめ、TVドラマ化・アニメ化が予定される話題作が豊富にございます。是非ご注目下さい。
本年も倍旧のご支援、ご協力を賜りたく宜しくお願い申し上げますとともに、貴店の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

わが社のイチ押し企画/マガジンハウス・書籍営業部・長尾達憲

昨年9月、新たな飛躍を目指して創刊しました「マガジンハウス文庫」は、おかげさまで好調な売れ行きを見せております。2009年は書籍に加え、文庫も強力な企画を新春から揃えて勝負します。
新しい年のトップを飾る注目の企画は、雑誌「アンアン」で20年以上も〝当たる〟占いを担当してきたG・ダビデ研究所が手がける血液型別占いの文庫4冊です。タイトルは「恋するA型」「恋するB型」「恋するAB型」「恋するO型」!
協調性豊かでマジメ、群れるのが好きなA型女性はどんな恋をする?マイペースで裏表がなく、喜怒哀楽をそのまま表現してしまうB型女性の恋のゆくえは?二重人格、何を考えているのかわからない、などと言われるAB型女性は実は恋の駆け引きが得意?バイタリティにあふれ、おおらかで明るいのが特徴のO型女性は少女マンガのような恋愛を求める?……とこんな感じで、日本のあらゆる女性の恋愛、結婚、セックスの悩みを解決していきます。巻末にはそれぞれの血液型のオトコの「操縦マニュアル」も付き、税込550円。1月22日、4冊同時発売です。
このほか、2月には〝プチ・ヘヴン〟シリーズと銘打ち、内藤みかさんほか3人の注目の女性作家による女性向けエロティック・ノベル3冊を同時刊行。そして3月には自己啓発モノの人気作家、佳川奈未さんが、成功と幸運を惹き寄せるためのあらゆる秘訣を一挙に6冊書き下ろすという大型企画が控えています。
文庫という激戦のつづく市場に乗り出して迎えた2009年。すでにマガジンハウス文庫で棚を用意してくださっている書店様もあり、我々としては嬉しい限りです。1月からさらにバラエティ豊かな内容となって送り出されるマガジンハウス文庫に、ご期待下さい。

わが社のイチ押し企画/三省堂・常務取締役営業局長・佐久間孝夫

今年のわが社のイチ押し企画は、昨年11月に新発売した『三省堂例解小学国語辞典第四版』です。
今回の改訂には、市場状況の背景があります。
ご存じのように、紙の辞書の市場縮小が続いて久しい状況ですが、そのなかで唯一売上が拡大しているジャンルがあります。それが小学校辞書市場なのです。小社の調査によると、このマーケットはここ10年で3倍近くになっています。とりわけ、すべての漢字にふりがなを付けた総ルビ版国語辞典が好調です。おそらく、立命館小学校の校長である深谷圭助先生の著書『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』や、「ゆとり教育」の見直しによる学力向上への関心の高まりなどが、複合的に作用しているものと思われます。
小社の『例解小学国語辞典』は従来より定評をいただいておりましたが、残念ながら、三年生以上で習う学習漢字にしかふりがなを付けておりませんでした。そこで今回、すべての漢字にふりがなを付けた総ルビ版として、第四版を企画・刊行した次第です。この改訂により、一年生から使っていただける国語辞典ができました。
収録語数は小学生向けでは最大級の3万3千、かねてより評判の多彩なコラムや、例文を示して語の理解を深める例解方式など、前版までの特長はそのまま引き継ぎ、いっそうブラッシュアップされています。しかも、軽くて強い本文用紙を新しく開発し、前版と比べ20%の軽量化を実現、類書中で最軽量の辞典となりました。併せて、小学生向けでは最大の親字3千字を収録した『三省堂例解小学漢字辞典』も、同じ本文用紙で軽量化し、第三版新装版として新発売いたしました。
書店様にとっても、お客様にお薦めしていただきやすい好商品かと思います。新学期に向け、この「例解小学国語」と「例解小学漢字」をどうかよろしくお願い申し上げます。