全国書店新聞
             

平成25年9月15日号

図書館と書店の役割考える/大阪・柏原市でシンポジウム

文字・活字文化推進機構、柏原市図書納入組合、大阪府書店商業組合主催の全国リレーシンポジウム「公共図書館と知の地域づくり」が8月5日、大阪・柏原市の柏原市文化会館リビエールホールで開かれ、府民、市民、近畿ブロックの書店など約300名が参加した。シンポジウムは大阪組合理事長の面屋龍延氏の主催者挨拶、柏原市長の中野隆司氏の来賓挨拶に続き、慶應義塾大学法学部教授で元総務大臣の片山善博氏が講演。この後、片山氏、中野氏に日本図書館協会前理事長の塩見昇氏が加わりパネルディスカッションを行った。司会は大阪組合副理事長の萩原浩司氏(宮脇書店大阪柏原店)が務めた。概要を紹介する。
【面屋大阪組合理事長の挨拶(概要)】
図書館法は1950年に制定された。公共図書館は国民的財産を国民の知的意欲に基づいて媒介する「大人の学校」の役割を担っている。
10年前に指定管理者制度が出来て、民間業者への図書館業務の丸投げが各地で起きるようになった。図書館運営で儲けることが出来る時代になった。
本の売上はこの16年間落ち続けている。96年に2兆6千億円あった出版販売金額は、昨年1兆8千億円と3分の2に落ち込んでしまった。書店の数もこの10年間で2万5千店から1万4千店と3分の2に減ってしまった。
図書館貸出冊数は10年に6億6千万冊と前年から5・0%増えている。一方、書籍の販売部数は7億冊で2・2%減。両者は拮抗してきている。こうしたことがいいか悪いかではなく、国民は本を読んでいる。
本を巡る世界に大きな問題が起きている。今日のシンポジウムが出版の世界に新しい活路を見出す機会になることを期待している。
【片山慶大教授の講演(概要)】
鳥取県知事時代に、これからの鳥取県をどういう地域にするか考えた。自分たちの地域の問題は自分たちで考え解決する。国や中央への依存から脱却することが課題だった。そのためには地元が知の力を身につける必要がある。そこで、知の地域づくりとして、学校教育とともに生涯学習に力を入れて取り組んだ。その拠点となるのが図書館だ。
図書館はリタイアした人たちが利用するものというイメージがあるが、本当は違う。市民、多忙なサラリーマンなどすべての人が利用できるものにしなければならない。図書貸し出し以外の利用法を考えることも必要だ。図書館と書店があいまって地域の読書環境を整備することも大切。鳥取県の図書館は地元の書店から本を購入している。書店が選書し、司書に相談する。書店と司書が切磋琢磨し、書店間で選書能力の競争も起きる。競争によって質が向上する。
図書館は人的継続性が重要で、司書が長期間見ていかねばならない。図書館に指定管理はなじまないと思っている。
【パネルディスカッション】
萩原片山先生が講演で示した「知の地域づくり」についてどう考えるか。
塩見図書館は人と資料が確かな出会いをすることを公的に保証する仕組みと考えている。知識、情報を提供する機関としてもっと活用されてしかるべき。知の地域づくりの観点から言えば、自分で考え判断し行動できる主体的な市民を作る上で、図書館は大きな役割を果たすことができる。
中野私が考える図書館は「知の地域づくり」より「知の拠点」であってほしい。柏原は歴史ある街で遺跡もある。柏原市民としてのプライドを持っていただくための知の拠点としたい。天王寺から15分と利便性も良いので、柏原に人がたくさん集まるようにしたい。子育てしやすい街を作り、幼児から本に親しんでもらえるようにする。画一的ではない、柏原独自の図書館像を思い描いている。
萩原「知の地域づくり」を「知の地産地消」につなげることについて、片山先生はどのようなイメージを持っているか。
片山鳥取県知事をやっていた時、地域の実力を増していかねばと考えていた。何でも東京から調達するのではなく、地域で必要なものは地域で賄えるようにすることが、経済を含め地域振興の上で必要。質の高い文化芸術を鑑賞できる機会を自治体が提供する。ホールを作り、文化芸術を自分たちの力で生み出す努力をしなければならない。地域が生んで、地域で消費する。「知の地域づくり」は「地産地消」につながると提唱した。
萩原図書館と地元書店との関係について。
塩見町の書店が減っている。本屋も図書館もない大分・耶馬渓町が自治体で本屋を運営する試みを行い、調査に行ったことがある。地元の人たちの手で、町の顔として書店が維持されることの意義は大きい。
中野大事にしたいのは地域であり、地域ならではの本。柏原のことをよく知っている町の本屋と図書館との関係構築を大切にしていきたい。
萩原いま全国各地で新しい図書館像が模索されている。佐賀県の武雄市図書館についてどう考えるか。
片山武雄市のことというよりも、私が鳥取県知事時代にやったこと、いま考えていることについて話したい。鳥取の図書館も指定管理にしてはどうかという議論があった。そのほうが効率的な運営ができる、行政がやると硬直的な運営しかできないという意見もあった。しかし結果的に図書館の運営くらいは自分たちの手でやろうと指定管理に出さないことを決めた。硬直的な運営しかできないというのは思い込みで、やり方を変えれば柔軟な運営はできる。
図書館は学校教育と並んで一番重要で基礎的な行政運営。図書館や学校くらい自前で運営したい。図書館運営を中央の大手に発注すれば、下請け構造の中で、よいところはすべて東京に取られてしまう。指定管理だと3年~5年と雇用が細切れになり、長期的視点で責任をもって運営することがおぼつかなくなる。図書館は司書、ライブラリアンが中心になって、長期の雇用で安定的に運営してほしい。
中野武雄市図書館は内容は別にして、国民、府民、市民が図書館について考えるよい機会になった。図書館で最も大事なのは利便性。サラリーマンであれば夜10時まで開いていてほしい。年間を通して色々な立場の方々が不自由なく使えるようにしたい。子供たちに本に親しんでもらうための施策も真剣に検討している。
萩原図書館の理想像について話してほしい。
片山図書館は今、岐路に立っている。指定管理の形式でアウトソースする自治体が増えている。私の偏見かもしれないが、図書館が行政の隅っこに追いやられている印象を受ける。アウトソースすることには色々な理由があり一概には言えないが、経験上、行政の中で重要性の低い分野が多い。自治体行政の基礎であり核である図書館が重視されていないのではないかと危惧している。
私は本を買う。本を読むとき線を引くが、図書館の本にはそれができない。一度読んだ本は手元に置いておかなければ気が済まない。多くの皆さんにも本を買うという生活習慣を維持していただきたい。図書館には色々な機能があるが、書店に並んでいない本や資料を揃えて研究者の需要に応える側面が重要で、新刊やベストセラーは書店に任せたらいいと思う。書店と棲み分けをしながら、図書館が多くの人たちに利用されることが必要だ。
萩原全国の図書館が今、新しい形を模索し始めている。20年後、30年後の図書館、未来を作ることは我々の責任。我々がこれからの世の中を作っていくという自負を持ちながら、その大きな役割を図書館と書店で担っていきたい。

軽減税率署名運動に協力を

日書連は、消費税増税の際に出版物への軽減税率適用を求める「50万人署名」運動を展開しています。4月初旬に各書店に直送した署名用紙で、運動へのご協力をお願いします。署名は日書連事務局まで、同封の返信用封筒にてご送付ください(切手貼付不要)。第2次締切は9月末日必着です。

新理事長に堤洋氏/佐賀組合第31回通常総会

佐賀県書店商業組合は7月20日、佐賀市の観光ホテル朝風で第31回通常総会を開催し、組合員29名(委任状含む)が出席した。
総会は西田理事の司会で進行。小野副理事長の開会の辞に続き、岩永理事長があいさつ。「書店業界は低迷し、視界不良の状況に入っている。佐賀県はICT推進事業のもと、来年度から全高校の全生徒にタブレット端末が供与される。紙の教科書のことを考えれば心配な面も多々ある。沖縄組合の方々が武雄市図書館を視察し、武雄市内の書店と意見交換した。宮城県多賀城市ではカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の市立図書館管理運営が報道されている」と述べた。
このあと近藤理事を議長に議案審議に入り、すべての議案を原案通り承認した。役員改選の件では、理事12名、監事1名を選出し、新理事長に堤洋氏を選出した。
最後に中島理事の音頭で大会スローガンを出席者全員で斉唱し、高田副理事長の閉会の辞で総会を終了。引き続き懇親会を行った。
(古賀嘉人広報委員)
〔佐賀組合役員体制〕
▽理事長=堤洋(ブックスグリーンウッド)
▽副理事長=小野賢一(ブックランドしろいし)高田悟(ブックマート日の出)

春の書店くじ立て替え金を振り込みました

今春実施した「2013春の書店くじ」で各書店にお立て替えいただきました1等1万円、2等千円、3等5百円、4等百円の清算業務は終了いたしました。入金をご確認いただくようお願いいたします。
日書連書店くじ係

「組合が元気であること示そう」/筒井理事長、厳しい状況打開へ檄/神奈川総会

神奈川県書店商業組合は8月22日、横浜市中区の神奈川平和会館で第36回通常総会を開き、組合員126名(委任状含む)が出席。筒井正博理事長(伊勢治書店)は「神奈川組合が元気であることを示そう」と訴えた。また、来賓として出席した日書連の舩坂良雄会長は日書連の諸活動を約50分にわたり詳細に説明し、理解と協力を求めた。
総会は井上俊夫常務理事(井上書房)の司会で進行。堀護副理事長(宮崎台書店)の開会の辞で始まり、筒井理事長が「理事長に就任してから1年たったが、もう何年もやったような気持ち。皆さんのおかげでやってくることができた。まだ通過点。本日の総会で出された意見をもとにこれから1年間やっていきたい。いま大変厳しい状況の中で神奈川組合が元気であることを示そう」とあいさつした。
村上弘一副理事長(村上書店)を議長に選んで議案審議を行い、平成24年度事業報告、決算・監査報告、平成25年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決。田中吉明監事(大塚書店)の退任に伴い、新監事に田口裕朗氏(田口書店)を選出した。
事業報告全般について筒井理事長は、組合加入書店数はこの1年間で17店減少して232店になったと報告。取り組んだ組合事業として①読書推進②季刊横浜の販売③広告入りポリ袋の斡旋・販売④神宮館の暦の販売⑤写真集「横須賀・三浦の昭和」の販売――などを説明した。
このうち増売・読書推進委員会からは、県内の幼稚園・保育園に通う子供たちに好きな絵本の主人公などを描いてもらう第7回「みんなで描いてみよう!大好きな本絵画コンテスト」について報告があった。神奈川県読書推進会が主催し、神奈川新聞社と神奈川県書店商業組合が後援。今回は1878作品が寄せられた。6月8日、横浜市中区の神奈川新聞社で表彰式を開き、県読書推進賞などを表彰した。
出版物への軽減税率適用を求めて日書連が取り組んでいる50万人署名については、神奈川組合は5月末現在、50店が2313名の署名を集めたと報告した。
来賓あいさつした日書連の舩坂会長は、8月6日に開催された活字文化議員連盟総会と税制・再販制度等に関する懇談会で新聞協会、書協、雑協、取協、児童出協とともに軽減税率の適用を申し入れたと報告。「50万人署名達成に向けて息の長い運動を展開する」とした。
また、書店再生のための事業である実用書増売企画「食と健康」第2弾がスタートしたことを報告し、「一書店では難しいが、日書連という組織が出版社と話し合い、責任をもって販売する。本を売った実績で報奨金をもらう。神奈川組合でこういう本を売りたいという企画があれば喜んで動くので、提案してほしい。日書連を4400店のナショナルチェーンと考え、ものを売る集団にしていきたい」と述べた。

日書連のうごき

8月5日出版サロン会に舩坂会長が出席。
8月6日活字議員連盟総会に舩坂会長が出席。
8月7日消費者庁を舩坂会長ほか幹部で訪問。
8月8日海外事業者に公平な課税適用を求める対策会議。
8月19日政策委員会。
8月20日全国中央会月例研修会。
8月21日書店再生で小学館を訪問。
8月22日神奈川組合総会に舩坂会長が出席。
8月23日全国中小小売商団体連絡会。芥川賞・直木賞贈呈式に幹部出席。
8月28日ためほんくん部会、移管準備会。インターネットサービスにおける公正な消費税課税を求めるフォーラム。

工夫凝らし孫の日をPR/愛知組合西三河支部から取り組み報告

愛知県書店商業組合の「孫の日」読書活動は、本年は推進モデル地区として西三河支部が担当しています。特に今回は、地元の絵本作家、こじましほさんにポスター作製に参加していただきました。
また、『読者がえらぶ孫の日絵本募集』や『町の書店がすすめる絵本リスト』(後掲)の企画に対して、たくさんの出版社からご協力をいただきました。何もかも手づくりで皆で力を合わせてやってきましたが、関係者はじめ皆様のご理解をいただいたことが、読者の皆様にもきっと伝わると確信しております。
祖父母の方が、お孫さんへの愛情を再確認される一助になれることが、町の本屋の存在感につながることと願っております。また、期間は9月14日より10月第3日曜日(孫の日)までですが、年間を通した書店店頭の活動にしたいと思っています。
(愛知県書店商業組合西三河支部長・原田書店・原田一司)〔協賛出版社〕
小学館・偕成社・文溪堂・徳間書店・ブロンズ新社・ひさかたチャイルド・鈴木出版・小峰書店・理論社・岩崎書店・ほるぷ出版・大日本図書・中日新聞社・風媒社・講談社・ポプラ社・土屋書店・絵本館・童心社・佼成出版社・主婦の友社
〔孫の日「当店のおすすめ絵本」〕
▽岡崎市・ホリホック=主婦の友社『ちいさなあなたへ』、ひさかたチャイルド/チャイルド本社『ぽんたのじどうはんばいき』、福音館書店『こんとあき』▽同・原田書店=偕成社『ちか100かいだてのいえ』、講談社『てぶくろをかいに』、岩崎書店『おやすみくまちゃん』▽刈谷市・刈谷日新堂書店=小学館『パンやのろくちゃんでんしゃにのって』『はなたれこぞうさま』、ブロンズ新社『いろいろジャッキー』▽西尾市・文海堂書店=偕成社『おおきなおひめさま』『ちいさなおうさま』、絵本館『いいからいいから1~4』▽岡崎市・シビコ正文館書店=ほるぷ出版『寿限無』、大日本図書『にん・にん・じんのにんじんじゃ』、土屋書店『にほんのあそびの教科書』▽同・正文館書店本店=福音館書店『おおきなかぶ』、偕成社『はらぺこあおむし』、あかね書房『トリックアートゆうえんち』▽同・岡崎書房=岩崎書店『花さき山』、講談社『ぼくを探しに』▽豊田市・近藤商店=理論社『チョコレート戦争』、福音館書店『もけらもけら』▽安城市・安城日新堂書店=偕成社『チョーシンくんのだいぼうけん』、徳間書店『かしこいさかなはかんがえた』▽岡崎市・けやき書房=偕成社『なぞなぞのみせ』、佼成出版社『ゆめにでてあげたい』、童心社『みずいろのマフラー』

学校図書館電算化で研修会開く/山形組合

山形県書店商業組合(五十嵐太右衞門理事長)は、7月29日に三川町「文化館なの花ホール」で、7月30日に山形市「山形県産業創造支援センター」で2013学校図書館電算化システム研修会を行い、延べ60名の先生方が参加した。
講師は、教育システムの長尾幸彦氏が担当。図書館電算化システム「情報BOX」の司書業務に際しての活用法から、眼からウロコの全国の事例、こうすればうまくいく図書貸出倍増作戦など、情報BOXと日書連マークの活用方法や全国事例をくまなく説明した。
先生方からは、「まだ電算化をしていないが、今日の研修会で是非入れたいと強く思った」「今までできないと思っていた処理が、全てできると知り、驚くとともにこれから活用したいという気持ちになった」等々の声があり、導入後の定期的なフォローの重要性が発見できた。
(五十嵐靖彦広報委員)

アマゾンのポイントサービスで要望書/出版協加盟社

日本出版者協議会(出版協、高須次郎会長)は8月7日、東京・文京区の文京シビックセンターで「AmazonStudentポイントサービス」について会見を開き、出版協加盟98社のうち51社(うち賛助会員1社)が個別に、自社の出版物を同ポイントサービスの対象から1ヵ月以内に除外するよう求める要望書をAmazon.comInt’lSales,Inc.(アマゾン)に送付したと発表した。
要望書には、自社の出版物をポイントサービスから除外しない場合は、再販契約書の規定に従い、取次に対して同社への出版物の出荷を停止するよう指示することもあるという警告もある。また、取次の日販、大阪屋に対しても、ポイントサービスの対象から早急に除外するよう指導を求める要望書を送付している。要望への回答期限は8月20日としている。
これまで出版協は、アマゾンが学生向けに実施している書籍購入時の10%のポイント還元サービスを、再販売価格維持契約に違反する値引き行為と判断し、昨年10月以来、3度にわたり中止を求めている。
高須会長は「同サービスは10%の高率。これがすべての読者に拡大すると書店への影響は決定的になり、街の書店はますます苦しくなる。再販制度を内部から崩壊させ、読者や書店、出版社の利益を毀損させることになりかねないことから、要望書を送付することにした。中小出版社のアマゾン依存率は大手出版社より高く、自社商品を供給しないことになれば売上不振に陥ることも考えられる。大きな決断をした上での要望であることを理解してほしい」と訴えた。

生き残れる書店とは/総会でパネル討論会を開催/長野組合

長野県書店商業組合(塩川明人理事長)は6月11日に開催した総会の第2部として、パネルディスカッション「書店の未来は?~生き残れる書店とは~」を行った。
パネリストは、越高一夫氏(ちいさいおうち書店)、中島康吉氏(中島書店)、奈良井功氏(興文堂)。進行は、書店活性化委員会の笠原新太郎委員長(笠原書店)が務めた。
第1テーマ「今まで書店として~わが店の方針・理念」について、中島氏は「お客様に利益を還元する、楽しんでもらうということを思い、日々商売をしている。本好きな人にも来てもらえるように、過去の名作と現在の本を並べるなど深い品ぞろえを心がけ、また関連する本などを選んでおすすめするようにしている」と説明。
奈良井氏は「現在3店舗あるが、古さ(本店)と新しさ(新店)という特色を生かして営業している。本を中心にして、ディズニーランドのように楽しい本屋を作りたいと思った」。また越高氏は「1980年に子どもの本専門の書店を始めた。本屋オンリーでなく異業種との組み合わせ、関わり合いも必要。その際の選別が大事で、当店では絵本美術館とつながったのは大変良かった」と述べた。
第2テーマ「現在の自店・業界の課題は」について、越高氏は「2002年以降売上げ減少が続いている。一部改装をしてカフェを設置した。何か発想の転換が必要だ」と指摘。奈良井氏は「現在は本屋対本屋でなく、本屋対他業態だ。皆で協力して対策を練る必要がある」と語った。
また、中島氏は「公共図書館は、知の地域づくりの面では大変重要な役割を果たすが、書店にとっては脅威だ。地域の書店から公共図書館に本を納入する機会を増やすなどしてもらわなければ、書店として本の文化を守っていくのは大変だ。アマゾンに対抗するには、トーハン、日販などがタッグを組んで対策を考えるなどしないと日本の文化がなくなってしまう」と懸念を表明した。
第3テーマ「書店の未来は~どうしたら生き残れるのか」については、奈良井氏は「関連商品を導入して利益を上げる努力が必要。異業種との組み合わせを考えるなど、自営業でなく、会社として生き残れるようにしていくことが大事」。越高氏は「本だけでなく関連する商品も同じ場所に陳列するなど工夫が必要。お客様の満足度を上げることを第一に考え、提案をしていく」。中島氏は「本を1冊1冊、もっと深く掘り下げることが必要。棚、平台づくりなどに一つこだわりを持つ。本を読む時間をとって、読者と共感できるようにすることが大切だ」とそれぞれ述べた。
(渡辺学広報委員)

紹介議員獲得へ協力求める/消費税軽減税率の署名運動で/東京理事会

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は9月3日に書店会館で理事会を開催した。各委員会の主な報告・審議事項は次の通り。
〔総務・財務〕
8月6日に開催された活字文化議員連盟総会と税制・再販制度等に関する懇談会で、出版・新聞業界各団体が消費税増税の際の軽減税率適用を要望したことを舩坂理事長が報告。日書連は各組合に対し、請願書の紹介議員獲得を要請しており、地元の都議会議員や区議会議員を通じて国会議員へ働きかけてほしいと述べた。
〔書店再生〕
日書連が実施する「第2回実用書増売企画」の店頭での展開が始まり、片岡委員長は「ワゴンやコーナーを作ったお店が売上を伸ばしている」と現状報告。また「書店再生のための提案」で、増売企画を除く4項目の今後の取り組み方を検討、まず「雑誌の付録綴じは書店業務からなくす(出版社負担)」に取り組むことを決め、出版社に要請していくと説明した。
〔再販・発売日・倫理〕
児童ポルノ禁止法改定案に対し書店の立場としての考え方をまとめてほしいと提案があり、委員会で検討し、日書連に提案していくことにした。
〔デジタル戦略推進〕
書店店頭連動企画として、12月に映画が公開される『永遠の0』のコミック版(双葉社)の増売に取り組む。全5巻各3冊セットの店頭フェア展開を行い、電子書籍販売サイト「BOOKSMART」では、第1巻の最初の7ファイルを無料で公開する。コミック版の著者と連携した企画も検討していく。

7月期は4・9%減/コミックが再びマイナスに/日販調べ

日販営業推進室調べによる7月期書店分類別売上調査は、対前年売上増加率が4・9%減と先月を2・1ポイント下回った。
雑誌は全体で3・6%減と先月より2・7ポイント下落した。ムックは前年6月30日発売のゲーム攻略本銘柄の売上が引き続き好調だったことに加え、新刊銘柄が売上を牽引していたため、反動で8・4%減と落ち込んだ。コミックは0・3%減。『NARUTO65』(集英社)が売上好調だったものの、前年の売上良好銘柄には届かず、売上増加率がマイナスに転じた。
書籍は全体で6・2%減と先月より1・1ポイント下落。実用書は、前年にロングブレスダイエット関連銘柄が売上を伸ばしていたほか、ポケットモンスターを始めとした攻略本銘柄も複数発売されており、その影響を受けて14・9%減と大幅マイナスが続いた。

イギリス出版市場調査報告書を刊行/出版再販研究委・書協

出版業界4団体で構成する出版再販研究委員会と日本書籍出版協会は、昨年10月に共同でイギリス出版市場の現地調査を行い、結果をまとめた『イギリス出版市場調査報告書2013』を刊行した。
イギリスはNBA(定価販売制度)を1997年に廃止して16年が経過。再販廃止後の出版市場への影響や変化について、最近のオンライン書店、電子書籍の影響等も含めてイギリス現地の出版関係者にインタビューを実施。そのインタビュー調査を中心に、過去の文献や関連データなどを加えてまとめた。
報告書はA4判78頁、頒価1千円。申込みは書協調査部まで。FAX03―3268―1196

トーハンロジテックスを設立/トーハン

トーハンは8月1日、物流系関連会社のベストアシストとトーハン・ロジテムを合併し、トーハンロジテックスを設立。9月1日にトーハン物流部門の業務をトーハンロジテックスに移管した。
トーハンロジテックスの社長は、トーハン近藤敏貴副社長が兼任する。この体制により、トーハンの営業・仕入活動と、トーハンロジテックスの物流機能が一体となり、一層のサービスの向上を図っていく。3PL(サードパーティロジスティクス)事業など物流業務受託を積極的に推進し、新たな事業領域の拡大に取り組んでいく。

子どもの本BFが盛況裏に終了/トーハン

トーハンは取引書店と共催で「2013こどもの本ブックフェア」を全国4会場で開催した。今年は7月19日~21日の岡山会場(コンベックス岡山)を皮切りに、7月21日~23日京都会場(京都市勧業館)、7月29日~31日福岡会場(福岡国際会議場)、8月3日~5日札幌会場(サッポロテイセンホール)で開催、合計約1万7400人、約540校を動員した。
各会場では、絵本、読みもの、児童図書や保育・教育書など出版社約310社2万点、計5万冊をジャンルごとに展示。他に企画コーナーとしてテーマ別に約30のブースを設け、バラエティーに富んだ企画を展開した。会場には親子連れの一般読者に加え、学校図書館関係者も多数来場し、絵本や学校図書館用セット・教育書を熱心に選書する姿が目立った。
また、絵本作家の荒井良二氏、杉山亮氏、たかいよしかず氏、池田あきこ氏、サトシン氏、写真・絵本作家の小寺卓也氏を招き、各会場で連日多彩なイベントを開催。出版文化産業振興財団の主催イベントとして行ったサンキュータツオ氏のトークショー「辞書を読む」(京都・福岡)や、「手づくりしかけ絵本教室」(札幌)、学校図書館向けの壁面製作講習会(福岡)なども注目を集めた。

芥川賞・直木賞贈呈式/藤野、桜木両氏があいさつ

第149回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が8月23日、東京・千代田区の東京會舘で開かれ、芥川賞の藤野可織氏(受賞作『爪と目』新潮4月号)と直木賞の桜木紫乃氏(同『ホテルローヤル』集英社刊)に賞が贈られた。
芥川賞選考委員の小川洋子氏は「初めて読んだとき、なんと愛想のない小説だろうかと思った。ところが愛想のなさが面白い、不思議な吸引力ある小説だなと感じているうちに、『爪と目』の世界に引きずりこまれていた」と祝辞を述べた。
藤野氏は「1作1作違うタイプの小説を書いていきたい。知識、経験、見たもの、聞いたものしか素材にできないことを不自由に思っている。目の前にある出来事も、私の趣味、嗜好、知の限界、感情のフィルターを通してしか使えないことが悔しい。一方、私というものが小説の素材であるということを幸福にも思っている」と話した。
直木賞選考委員の林真理子氏は「切なさを書くことは難しい。人間のずるさ、優しさ、悲しさが全部分かっていないと描写できない。桜木さんはそれを天性でやってしまう」と高く評価した。
桜木氏は「私は北海道生まれなので、ただ走るしか能のない輓馬競争の馬みたいなもの。身に余る評価で、馬そりの砂袋が重くなった気がする。賞の名に恥じないものを今まで通り勉強を続けながら書き続けていきたい」と受賞の喜びを語った。

4期連続で増収決算/第三者割当増資を実施/中央社

中央社は8月20日、東京・板橋区の本社で定時株主総会と取締役会を開き、平成24年度(平成24年6月1日~平成25年5月31日)決算書案などを承認した。
今期の総売上高は前年比0・4%増の273億1933万円で4年連続の増収となった。内訳は、雑誌が141億4587万円(同1・0%増)、書籍が88億3655万円(同2・8%増)、特品等が9億6649万円(同22・3%増)、その他営業収入33億7042万円(同11・9%減)。書籍では、特に書籍扱いコミック、文庫、ライトノベルが好調だった。
営業利益は4億4192万円(同9・0%増)、経常利益は2億4448万円(同1・5%増)。前期に比べ法人税が大幅に減少した結果、当期純利益は2億4390万円(同113・2%増)となり、増収増益の決算になった。
返品率は、雑誌29・9%(同0・5ポイント減)、書籍29・4%(同1・1ポイント増)、特品10・3%(同1・1ポイント減)で、合計では前年と同率の29・1%だった。
また、事業資金の調達を図るとともに、関係企業との提携・協力関係を一層強固にするため、第三者割当増資の実施を決議した。1株205円で普通株式26万7千株を上限に発行し、大手出版社、書店、同業他社、提携業者など8法人に引き受けを要請。資本金を5千万円から7750万円に増資する。
今回の資金調達によって、①物流インフラ(雑誌新刊発送ラインの改修改善、商品在庫センター管理システム強化による客注迅速対応)②販売施策(出版社とタイアップした企画立案等の開発)③商品供給力(取引書店に対するタイムリーな営業提案・商品供給)――の3点を強化する。
〔中央社役員体制〕
(○新任)
代表取締役社長総合経営計画本部長兼営業本部長
風間賢一郎
専務取締役社長補佐管理本部長兼物流・渉外担当
外山義朗
常務取締役名阪支社長兼関西支店長新谷喜代春
取締役仕入本部長兼中長期経営計画室長大谷敏夫
同取引部担当兼総合経営計画本部副本部長兼株式法務室長矢下晴樹
同営業本部副本部長兼営業統括部長兼中長期経営計画推進室副室長○山本章雄
監査役小暮豊博
執行役員総合推進室長兼中長期経営計画推進室推進担当兼物流管理部長
片山秀樹
同経理部長江上浩
同第三営業部長斎藤進
同名古屋支店長
竹内文利

本と遊ぼうこどもワールド/名古屋と大阪で開催/日販

日販は8月3日~5日に名古屋と大阪で「本と遊ぼうこどもワールド2013優良児童図書展示会」を開催した。7月13日~15日に行われた青森会場(青森県総合社会教育センター)に続く開催。
【名古屋会場】
名古屋会場は1979年から連続35回目の開催となった。名古屋市公会堂のオープニングセレモニーで日販・吉田英作専務、日本児童図書出版協会の小峰書店・小峰紀雄社長があいさつ。児童福祉施設への図書贈呈に続き、東海日販会・宮川源世話人代表、中日新聞社・磯部真広告二部部長、小峰社長、吉川専務、幼稚園児3名がテープカットを行い開場した。
今回はサブテーマを『えほんのお祭り!ワッショイ!ワッショイ!』とし、会場中央にやぐらを設置。縁日ブースでの遊戯、スタッフと子どもたちによる盆踊りなどの企画でお祭りムードを演出した。展示会場では「祭りの本」コーナーや、地元作家「新美南吉の生誕100周年」特設コーナーを設けるなど、来場者に児童書の魅力を様々な形で伝えられる会場作り・商品陳列を行った。来場者数は3日間で7176人。
【大阪会場】
大阪市の大阪マーチャンダイズ・マートBホールで開催。オープニングセレモニーでは、日販・安西浩和専務と、日本児童図書出版協会を代表し評論社・竹下晴信社長があいさつ。児童福祉施設への図書贈呈の後、関西日販会・長谷川政博代表、大阪府書店商業組合・面屋龍延理事長、竹下社長、安西専務によるテープカットで開場した。
大阪会場は4年続けての開催で、今年は会場のレイアウトを大幅に変更、シンボルツリーを中心に配置して明るく居心地の良い雰囲気作りを演出した。読み聞かせ会やお客様参加型の企画も大好評で、3日間の入場者数は昨年を5百名以上上回る4092人となった。展示では、大阪の郷土絵本や大阪会場オリジナル企画「本の帯創作コンクール」コーナーなどが注目を集めた。