全国書店新聞
             

令和4年10月15日号

矢幡会長、藤原流通改善委員長ら、Pubtex訪問/同社構想実現なら「書店に有益」/日書連9月理事会

日書連は9月15日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開き、理事会前日の14日、矢幡秀治会長ら9名でPubteX(パブテックス)を訪問したことを報告した。同社は、講談社、小学館、集英社と丸紅がDXで出版流通を持続可能なものに改革することを目指して3月に設立した新会社。AIやRFIDタグの活用を通して業界サプライチェーン全体を改善し、書店経営改善も支援したいとしている。日書連一行は8月に開設したばかりのRFIDショールームを見学し、永井直彦社長と各事業担当者から説明を受けた。流通改善委員会の藤原直委員長は「同社の構想がすべて実現すれば書店にとって有益」と語った。
理事会は理事総数52名のうち本人出席29名(来場出席27名、ウェブ出席2名)、書面出席18名で成立。冒頭、7月11日死去した田中隆次理事(宮崎県書店商業組合理事長、田中書店代表取締役社長)に黙祷を捧げ、矢幡秀治会長を議長に議案審議に入った。
各委員会からの報告は以下の通り。
[流通改善委員会]
▽矢幡秀治会長、藤原直、柴﨑繁、渡部満、春井宏之、安永寛、光永和史、深田健治各副会長、髙島瑞雄理事の9名は9月14日、パブテックスのショールームを見学し、入荷作業から品出し、商品検索、棚卸、防犯対策など書店店頭における一連の作業を通して、RFIDタグ導入による実際の効果を体験した。パブテックス側は永井直彦社長らが応対し、同社のAI発行・配本最適化ソリューション事業とRFIDソリューション事業について説明した。
藤原直委員長は「現段階で決まっていることがすべて現実になれば、書店にとってこんなにいいことはない。パブテックスは23年に講談社、小学館、集英社のコミックからRFIDの装着を始め、25年より各出版社に働きかけることを目標にしている。多くの出版社でRFIDタグの装着が進むにはある程度時間がかかるのではないか。書店側の意向を反映させるため意見交換を行っていくことも考えたい」と報告した。
▽「雑誌発売日諸問題解決に向けた対応のお願い」と題する要望書を8月9日付で雑誌発売日励行本部委員会に提出した。今回の要望は次の9項目。
①全国同時発売を目指して、発売日格差の解消に努めていただきたい。まずは、全誌とも三日目地区(北海道ならびに九州地区)を二日目地区に繰り上げるご努力を願いたい、②沖縄地区の「週刊誌航空輸送」の早期実現に向けて、格段のご尽力を賜りたい、③年間購読など、出版社が読者に販売する雑誌の着荷日については、該当地区の発売日に合わせた調整を願いたい。また、dマガジンの配信についても同様のご配慮をいただきたい、④次号発売告知の際に、地方の発売日遅れの現状を勘案して「一部地域遅れ」の注意書きのご努力を願いたい、⑤「雑誌発売日励行に関する協約」と「契約」の普及と「正しい解釈」の啓蒙を促進するために、強力な指導力を発揮願いたい。特に、悪質な違反に対しては資格の取り消しも含めた厳格な対応を願いたい、⑥読者目線に立って合併号を廃止し、年間を通してレギュラー発売が出来るようなシステムを構築していただきたい、⑦「週刊朝日」「サンデー毎日」の同一地区、同時発売に向け、関係各位の格段のご努力を願いたい、⑧休配日などの日程決定に際しては、書店側の意向も反映されるよう検討願いたい。特に新学期は休配日の設定を避け、閑散期に回す調整を望みたい、⑨業量平準化の更なる促進のため、発売日の分散など様々な施策に取組んでいただきたい
[政策委員会]
矢幡秀治会長は、「全国の書店経営者を支える議員連盟」(書店議連)について「全国書店から各地元議員への積極的な働きかけもあり、議連メンバーは110名超と大きな勢力になりつつある」と報告した。
[組織委員会]
日書連会員の45都道府県組合に加盟する組合員数は、6月が加入1店・脱退9店で8店純減、7月が加入なし・脱退5店で5店純減、8月が加入なし・脱退4店で4店純減だった。
安永寛委員長は、各組合が行っている加入メリット追求のための活動を把握するため、アンケート調査を実施する考えを示した。
[読書推進委員会]
春井宏之委員長は、間近に迫った「秋の読者還元祭2022」について、図書カードネットギフト1万円分が200名に当たることや当選確率が高いことを顧客に積極的にアピールしてほしいと求めた。
[図書館委員会]
▽ベースMARC切り替え時に生じた日書連MARCのトラブルは7月末に解決したと髙島瑞雄委員長が報告した。
▽東京都町田市の町田市立鶴川駅前図書館で、同市を中心に書店を展開する久美堂とダイレクトマーケティング事業・図書館関連事業を行う㈱ヴィアックスが共同で指定管理者となり、4月1日から運営を開始したことについて、髙島委員長は「共同事業体として手を挙げることも、地域書店が指定管理者に選定される一つの方法」と述べた。
[書店再生委員会]
渡部満委員長は、理事会前日の14日にオンラインで開催された全国公正取引協議会連合会による「消費者庁と連合会会員の意見交換会」に出席し、出版物小売業公正取引協議会の規約を非会員書店にも守ってもらうための広報活動をどのように行うかについて意見を聞いたと報告した。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、前日の委員会で本以外の取り扱い商材について聞いたところ、文具、雑貨、コーヒーのほか、英検の試験代行やギャラリーなどの事例もあがったと報告した。
[広報委員会]
光永和史委員長は、10月19日に東京・千代田区の出版クラブホールで予定している全国広報委員会議は、出席者約20名と小規模かつ書店のみの会合であることから、コロナの感染状況が悪化しない限り予定通り開催すると報告した。
[出版販売年末懇親会]
12月14日に東京・文京区のホテル椿山荘東京で予定している「令和4年度出版販売年末懇親会」について開催の賛否を諮ったところ、賛成多数だったため、予定通り開催することを決めた。
開催形式など詳細は10月定例理事会で報告する。
[後援など名義使用申請]
「BOOKEXPO2022秋の陣~今こそ集まれ!書店人~」(主催=同・実行委員会、開催日=11月2日、会場=大阪市北区・グランフロント大阪)、「絵本ワールドinひょうご2022」(主催=同・実行委員会、開催日=10月8日、会場=神戸市須磨区・須磨寺青葉殿講堂)の後援名義使用申請をそれぞれ承認した。
また、取次協会読書推進事業「読み聞かせ会」(主催=日本出版取次協会、実施日=10月22日から12月18日までの土・日・祝日で書店が希望する日)の協賛名義使用申請を承認した。

10月27日から「秋の読書推進月間」BOOKMEETSNEXT/「新しい取り組み」ポスターでアピール

読書推進運動協議会、日本図書普及、出版文化産業振興財団、「本の日」実行委員会で構成する「秋の読書推進月間」運営委員会(高井昌史委員長=紀伊國屋書店会長兼社長)と同・実行委員会(近藤敏貴委員長=JPIC理事長、トーハン社長)はこのほど、書店、出版社、取次や関係団体など出版業界が一丸となって取り組む新しい事業「秋の読書推進月間」(10月27日~11月23日)のキャンペーン名称を「本との新しい出会い、はじまる。BOOKMEETSNEXT」に決めた。
ポスターも新しい取り組みを象徴したインパクトの強いデザインとし、書店用と書店以外用の2種類を作成した。
書店用のポスターには、BOOKスタンプラリーのスタンプ取得QRコードが掲載され、スタンプを5つ集めると豪華賞品に応募することができる。スタンプは出版社の協力で有名キャラクターが登場する。
キャンペーン期間中、全国各地で読書関連イベントを開催し、SNSを使った#ハッシュタグキャンペーンも開催する。
キャンペーンサイトも開設し、読書関連イベントや全国の書店が独自に企画する店頭イベントを随時掲載する。
〔オープニングイベントは豪華ゲスト登場/今村翔吾氏、角野栄子氏、中江有里氏〕
キャンペーン初日の10月27日午後7時~8時45分、東京・新宿区の紀伊國屋ホールで豪華ゲストによるオープニングイベントを開催する。
当日は、直木賞作家の今村翔吾氏が「本の旅」をテーマに講演し、児童文学作家の角野栄子氏と女優・作家・歌手の中江有里氏が「出会い」をテーマに対談する。また、キャンペーン内容の説明とアンバサダーの発表を行う。
定員300名、無料招待。申し込みは先着順。出版文化産業振興財団のホームページ(https://www.jpic.or.jp/)から申し込む。
問い合わせはBOOKMEETSNEXT事務局/出版文化産業振興財団まで。電子メール=hondeai@jpic.or.jp

絵本専門士と絵本作家が選書/「逢いたい誰かに贈る絵本」フェア/10月から来春まで展開

「絵本・日本プロジェクト」(髙橋小織会長=隆文堂)は、第3回贈る絵本企画「逢いたい誰かに贈る絵本」フェアを企画し、全国の書店に提案した。10月22日から来春まで、各書店の都合に合わせて自由に展開する。全国書店再生支援財団が協賛。絵本専門士委員会、日本図書普及、日書連、出版文化産業振興財団が協力。
コロナ禍で自粛生活が続いた2020年~21年は「逢えない誰かに贈る絵本」と銘打ったが、本年度は「逢いたい誰かに贈る絵本」と改称し、企画内容もパワーアップ。絵本の知識を豊富に有する「絵本専門士」の協力を得て、書店店頭で展開する絵本フェアを企画した。
このフェアは、別れと出会いの季節である春に向けて「逢いたい誰かに贈る絵本」をテーマに、全国で活躍する絵本専門士107名が選んだ20冊と、人気絵本作家の荒井良二氏とえがしらみちこ氏が各2冊ずつ選んだ4冊、計24冊から書店が自由に選書してコーナー展開する。展開時期も、クリスマス商戦や年末年始の繁忙期を経て、春の参考書等の商戦が始まるまでとなっており、各書店の都合に合わせて自由に取り組むことができる。
選定された絵本は、子どもだけでなく大人を対象にしたものも多く、通常の絵本コーナーとは異なった切り口で展開することができる。
注文書やPOPなどの拡材は10月22日以降、日書連ホームページ(https://www.n-shoten.jp/)のバナーからダウンロードできる。
問い合わせは、絵本・日本プロジェクトの加藤氏まで。電子メール=kato@ajpea.or.jp

出版女性人の会、11月16日にオンライン講演会/上野千鶴子氏が登壇

出版業界に勤める女性有志による「出版女性人の会」は11月16日午後6時~7時半、オンライン講演会「ホモソーシャルな出版業界―その悪しき体質、変えられますか?―」を開く。
講師は社会学者で東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長の上野千鶴子氏。『女ぎらいニッポンのミソジニー』(朝日新聞出版)、『在宅ひとり死のススメ』(文藝春秋)など数多くの著書がある。
講演はZoomを使用。定員200名。参加費は500円~3万円(参加費に同会支援金をプラスしたチケット計8種類有り)。申込締切は11月6日(日)。申し込むとZoomのURLが送られる。申し込みはホームページ(https://shuppan-josei221116.peatix.com)から。
この会は2016年に始まり、今年で7回目。コロナの影響で一昨年、昨年に続き3年連続オンライン開催となる。「出版」「女性」をキーワードに業種を問わず会社や世代を超えて書店、出版社、取次などが参加する。
発起人は、隆文堂・髙橋小織、朗月堂・須藤令子、BOOKSあんとく・安徳紀美、講談社・植羅美佳、小学館・矢崎恵里子、KADOKAWA・上村裕子。幹事は主婦の友インフォス・上田奈実、小学館パブリッシング・サービス・中島愛絵、ワニブックス・出原亜紀子の各氏。
問い合わせは小学館パブリッシング・サービス・中島愛絵氏(n-aika@sho-ps.co.jp)、ワニブックス・出原亜紀子氏(idehara@wani.co.jp)まで。

「春夏秋冬本屋です」/「地元話に花が咲く」/愛知・近藤商店代表取締役・近藤五三六

今夏に全国区になった豊田市発のニュースといえば、明治用水の頭首工に穴が空き、十分な水流が取れずに農工業に影響があったことですが、矢作川からはもうひとつ灌漑用水が流れています。枝下(しだれ)用水といいます。
この用水路の研究や旧水路の保存活動を行っている人がいて、その資料室があります。週に一度傍を通るのですが、その日は休館日なので寄りたくても寄れませんでした。先日、近所に急ぎの納品があり、その帰りに開館日であることを思い出し、寄ってみました。
古民家をそのまま利用した、研究の拠点となる資料室で、50代の女性が週に3回来ているとのこと。他の日は別の用水の研究もしているそうです。小学生の頃社会見学(遠足?)でこの用水を辿って歩いたことを告げると、その方から恩師の名前が出て来ました。「私、教え子です」と言うと、先生からもこの社会見学をした話を聞いたそうで、「あの話は本当だったんだ」と感心されていました。もう一人、この資料室に関わりのある元教師の名前を出し、「両先生とも、今も本や雑誌をお届けしていますよ」と伝えると、打ち解けて会話が出来るようになりました。
地元の文化や歴史について興味、関心を持つことは大切なことだと改めて思うひとときでした。「7番目の水準点があるべきところに見つからないので探してほしい」と、宿題までもらってきてしまいました。

電子書籍市場は5510億円/26年度に8000億円規模と予測/インプレス総研調査

インプレスのシンクタンク部門であるインプレス総合研究所は、2021年度の電子書籍市場動向を発表。電子書籍市場は前年比14・3%増の5510億円で、20年度の4821億円から689億円増加した。年度前半は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による巣ごもり需要で、前年度から引き続き追い風を受けたが、年度後半は自粛要請が緩和され、外出やリアルの活動も戻って消費行動の変化も見られたことから、市場動向が落ち着いた。インプレス総合研究所では、26年度には8000億円の市場に成長すると予測している。
21年度の電子書籍市場規模の内訳を見ると、コミックは前年度から658億円増の4660億円(市場シェア84・6%)、文字もの等(文芸・実用書・写真集等)が同41億円増の597億円(同10・8%)、雑誌が同10億円減の253億円(同4・6%)となった。
モバイル(スマートフォン・タブレット)ユーザーに対して、電子書籍の利用率を調査したところ、有料の電子書籍利用率は19・8%となり、前年から0・7ポイント減少した。一方、無料の電子書籍のみを利用している人は、前年から1・3ポイント増えて26・1%となった。
有料電子書籍利用率が高いのは男性20代の29・3%、男性30代の26・5%、女性20代の24・1%で、男女とも20代、30代の利用率が高い。無料の電子書籍のみの利用率が最も高いのは女性10代の41・5%で、女性20代の30・1%、男性10代の28・7%と続く。前年調査時よりも有料での利用率が増加している年代は男性40代・60歳以上、女性10代・40代・50代で、有料での利用率が低下している年代の方が多くなっている。
最近注目を集めているオーディオブックについて、利用経験と利用意向を尋ねると、「よく利用する」が1・9%、「たまに利用する」が6・1%で、両者を合わせたオーディオブックの利用率は8・0%と、前年調査から1・9ポイント増加した。また「利用したことはないが、利用したいと思う」と回答した利用意向を持つ人は19・3%で、1・4ポイント増加した。
利用している電子書籍サービスやアプリは、「LINEマンガ」が29・3%で最も高く、2位は「ピッコマ」28・7%、3位は「Kindleストア」23・6%、4位は「少年ジャンプ+」17・9%、5位は「マガポケ」14・0%。上位5つのうち4つがメディア型のマンガアプリとなった。また、利用している電子書籍サービスやアプリのうち、購入・課金したことのあるものを聞いたところ、「Kindleストア」が最も高く33・2%。2位「ピッコマ」20・0%、3位「楽天Kobo電子書籍ストア」18・5%と続く。
スマートフォンでの購読に最適化した韓国発の縦スクロールのカラーマンガ「WEBTOON」に対する好みを聞くと、「とても好き」「好き」を合わせた好意的な評価は28・7%。若年層の方が好意的なユーザーの比率が高く、「とても好き」「好き」を合わせた比率は、女性10代で53・0%、男性10代で37・7%、男性20代で36・6%、女性20代で36・1%。
21年度のマンガアプリの広告市場は前年から横ばいの260億円。無料でマンガを読めるアプリやサービスの利用が引き続き拡大している一方、新型コロナウイルス感染拡大による広告指標の悪化から広告単価が下落。また、海賊版サイトや個人情報保護強化による影響も受けている。
調査結果の詳細は『電子書籍ビジネス調査報告書2022』にまとめられている。購入はインプレス総合研究所のHPから(https://research.impress.co.jp/)。

他団体と連携し読書推進活動/長﨑晴作理事長を再選/熊本総会

熊本県書店商業組合は8月19日、熊本市北区の熊本県教科書供給所で第35回通常総会を開催し、組合員31名(委任状含む)が出席した。
総会では、事業報告・決算報告などが行われ、すべての議案を原案通り承認可決した。令和4年度事業計画では、他団体と連携を取りながら読書推進を行うことを決めた。任期満了に伴う役員改選では、役員全員が留任。長﨑晴作理事長(熊文社)はじめ正副理事長を全員再選した。
(宮﨑俊明広報委員)

10月29日、30日の両日開催/神保町BF

読書週間の恒例イベント・第30回「神保町ブックフェスティバル」(神田古本まつり協賛)が10月29日(土)、30日(日)の両日、東京都千代田区神田神保町のすずらん通り、神保町三井ビルディング公開空地で行われる。コロナ禍の影響で3年ぶりの開催。
神保町ブックフェスティバルでは、出版社100社による「本の得々市ワゴンセール」や「こどもの本ひろば」絵本・児童書ワゴンセールを実施。今回は1社につきワゴン1台の物販のみで、オープニングセレモニー、パレード、チャリティーオークションなどのイベントは中止。飲食の出店、飲食スペースは無し。
開催時間は、29日・30日とも10時~18時(雨天中止)で、「こどもの本ひろば」は両日とも17時閉場となっている。

訂正

10月1日号1面に掲載した愛知組合の「孫の日キャンペーン」に関する記事で、「孫の日は10月20日」とあるのは「10月16日」、「敬老の日は9月16日」とあるのは「9月19日」の誤りです。お詫びして訂正します。

CCC、1819億円で首位/書籍・文具部門売上高ランキング/日経MJ「日本の専門店調査」

日経MJ(8月10日付)は「第50回日本の専門店調査」(2021年度)を発表した。これによると、収益認識基準の適用企業を除く前年度と比較可能な全国の有力専門店244社の総合売上高は、17兆6934億円で前年比4・1%増。増加は7年連続で、新型コロナウイルスの影響で人の流れが変わり、動く商圏に適応した出店戦略を進めた企業の業績が堅調だった。
その他業種を含む23業種のうち、19業種が増収。前年の8業種を大きく上回っており、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限などが緩和・解除された21年度は、業績を回復させた業種が多かった。外出需要の回復を受けて、呉服や靴が好調だったほか、ゴルフなど屋外でのスポーツ人気を背景にスポーツ用品も伸長した。家の中を充実させたいという消費者ニーズをとらえた家具も大きく伸びた。一方、減収は、紳士服、生鮮、書籍・文具、ホームセンター・カー用品の4業種だった。
書籍・文具部門の売上高ランキングで1位になったのはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)で1819億4200万円だった(収益認識基準の適用で前年度と比較できず)。2位は紀伊國屋書店で前年比0・3%減の978億9000万円、3位は丸善ジュンク堂書店で同4・1%増の699億6600万円。
総売上高経常利益率はリラィアブルが4・8%、1人当たり総売上高は丸善ジュンク堂書店が7億672万7千円、3・3平方㍍当たり直営店売上高は有隣堂が176万円、直営+FC新設店舗数はリブロプラスが12店でそれぞれ首位になった。

紙の教科書の重要性訴える冊子を発行/文字活字機構

文字・活字文化推進機構は、国がデジタル教科書の本格導入を目指していることを受けて、作家、学者、新聞・出版関係者、学校図書館関係者、超党派の国会議員からなる「活字の学びを考える懇談会」を設立。紙とデジタルのバランスの取れた学校教育実現を目指して政策提言を行っているが、このほど懇談会のメンバーによるメッセージ冊子『いま、なぜ「紙」の教科書なのか』を発行した。初版5百部。
冊子には、文字・活字文化推進機構理事長で活字の学びを考える懇談会事務局長の山口寿一氏(日本新聞協会理事、読売新聞グループ本社代表取締役社長)による「冊子発行にあたって」を始め、懇談会会長で作家の浅田次郎氏、文字・活字文化推進機構会長の河村建夫氏(前衆議院議員、学校図書館議員連盟顧問)、建築家の安藤忠雄氏、日本児童図書出版協会会長の岡本光晴氏(あかね書房代表取締役社長)など懇談会委員らが紙の教科書の重要性を訴えるメッセージを収録。このほか懇談会の委員名簿、学校教育のデジタル化に関するこれまでの動向、関連資料、委員が推薦する「紙の教科書の良さを知るための参考文献」などを記載している。
メッセージ冊子のPDFは文字・活字文化推進機構のサイト(https://www.mojikatsuji.or.jp/)から閲覧できる。

組織活性化と会員拡大で意見交換/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は9月13日、札幌市中央区の北海道建設会館会議室で定例理事会を開催した。
理事会では組織活性化と会員拡大について意見交換を行った。
(事務局・髙橋牧子)

11月1日は「本の日」/「けんごさんと本トーク。」/オンラインイベントを開催

本の日実行委員会は、今年の「本の日」メインイベントとして、若い世代から絶大な人気を誇る小説紹介クリエイター、けんごさんのオンライントークイベント「けんごさんと本トーク。本と、読書と、本屋さんと。」を11月1日に開催する。
スマホアプリ「TikTok」などで、小説の読みどころを紹介する30秒ほどの動画を次々に投稿し、SNS世代の10~20代から絶大な支持を得ているけんごさん。リアル書店の店頭でベストセラーを次々と作り出している。今年4月には待望の小説デビュー作『ワカレ花』(双葉社)を上梓した。トークイベントではけんごさんが本のこと、読書と本屋のことや『ワカレ花』の裏側などを、双葉社編集担当の藪長文彦氏、書店員の大橋崇博氏(神戸・流泉書房)を交えて語る。全国の書店店頭から中継で参加する書店員とのリアル書店トークも必見。
開催概要は次の通り。
▽日時=11月1日(火)19時~20時半
▽開催方式=オンラインYouTubeライブ視聴(誰でも視聴可、参加費無料)
▽視聴方法=「本の日」ホームページの「2022本の日メインイベント」記載ページ(https://honnohi.com/archives/623/)で配信

訃報

西山進(にしやま・すすむ=漫画家)
10月6日、心不全のため死去、94歳。葬儀、告別式は本人の希望で行わない。
17歳だった1945年8月9日、長崎市の爆心地から約3・5キロの三菱重工長崎造船所で被爆した。1960年代から漫画家の活動を本格的に開始し、自らの被爆体験を描いた紙芝居で子どもたちに講話。1979年から2021年まで日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の新聞に4コマ漫画「おり鶴さん」を連載し、被爆者の生活を描いた。全国書店新聞では1981年から31年にわたり1コマ漫画を連載し、弱い立場にある街の書店を応援し続けた。

河出書房新社の新雑誌「スピン」/創刊号が発売2日目で増刷

河出書房新社は、9月27日に発売したオールジャンルの新雑誌「スピン/spin」創刊号が予想を超える反響を呼んでいることを受け、発売2日目で1万部の増刷を決定したと発表した。
「スピン/spin」は創業140周年を迎える2026年に向けたカウントダウン企画として16号限定で発行する季刊誌。小説からエッセイ、コラム、企画連載、装画・挿画まで、毎号ジャンルを超えた作家による作品を掲載する。また紙の専門商社・㈱竹尾とコラボレーションし、表紙と目次に毎号違う紙を使用する。錚々たるメンバーが一堂に会した新雑誌に対する期待と、「紙の未来を考える」というコンセプトへの共感から、発売前より各所で評判を呼び、初版部数は当初予定の約3倍となる1万部を発行していた。
発売日当日、紀伊國屋書店、丸善ジュンク堂では「月刊誌」部門で売上第2位を記録。全国の書店から多くの追加注文が寄せられ、読者からの注文、定期購読の申込みが増え続けていることから、急遽初版と同数の1万部の増刷を決めた。なお、27日発売創刊号の表紙と目次はいずれも「現在庫限り」の紙を使用していたため在庫切れとなったことから、増刷分は初版とは異なる「現在庫限り」の紙を使用する。10月7日に出来、翌週以降全国書店に順次着荷予定。

8月期販売額は1・1%減/雑誌が21年5月期以来のプラス/出版科研調べ

出版科研調べの8月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比1・1%減となった。内訳は、書籍が同2・3%減、雑誌が同0・2%増。雑誌がプラスになったのは21年5月期以来。内訳は、月刊誌が同0・3%増、週刊誌が前年同率だった。月刊誌は、大型コミックスの新刊が相次ぎ売行きが好調。定期誌も送品数の大幅抑制で返品が改善しており、プラスとなった。週刊誌は、旧統一教会関連の特集等により総合週刊誌が好調だった。
書店店頭の売上は、書籍が約5%減。文芸書のみが約4%増と前年を上回った。雑誌の売上は、定期誌が約4%減、ムックが約3%増、コミックスは約7%減。ムックはシニア向け企画や旅行ガイドなどが好調だった。

出版平和堂出版功労者顕彰会/第52回~第54回の出版功労者18氏を顕彰

日本出版クラブは10月7日、神奈川・箱根町の出版平和堂で「出版平和堂第54回出版功労者顕彰会」を開催した。新型コロナウイルス感染症の影響で一昨年の第52回、昨年の第53回は中止となっており、今回合わせて版元、取次、書店の関係者18氏を新たに顕彰した。書店関係の顕彰者は以下の通り。
〈令和4年(第54回)〉
丸岡義博(廣文館書店)村田耕平(三宮ブックス)
    *  *
〈令和3年(第53回)〉
谷口光正(愛知県教科用図書卸商業協同組合)安藤實(神奈川県教科書販売)奥村弘志(南天堂書房)萬田貴久(万田商事オリオン書房)

東京・足立区/書店などで「足立関連本」をコーナー展開

東京都足立区は、書店とタッグを組んで読書の秋を盛り上げる「足立にまつわる本」の特設コーナーを、10月1日から同30日まで区内で展開している。
足立区出身の著名人が執筆した本や、足立区がテーマ・舞台となった本など、「足立区にまつわる本」を集めてコーナー化するもので、区内の住吉書房五反野店、駅前の本屋まこと、小泉書店、ブックスページワン北綾瀬店など協力書店12店舗で新刊を中心に販売を行う。このほか、区立図書館15館などでも特設コーナーの設置や本の展示を実施する。この企画は、当初は足立区千住の魅力をPRする企画として平成29年度にスタートし、令和2年度に「足立区の魅力をPRする企画」としてバージョンアップ。今年は江北や北綾瀬エリアの書店など3店舗が初参加し、過去最多の協力店舗数となっている。

日販と中三エス・ティが文具の共同商談会/雑貨展示会も同時開催

日本出版販売(日販)とグループ会社の中三エス・ティは9月16日、東京・台東区の都立産業貿易センター台東館で、文具の共同商談会「NEOStart!+12022」を開催。日販による雑貨の新商品展示会「NewItemConvention」も同時開催した。
開会にあたり、日販の野口瑞穂取締役文具雑貨商品本部長があいさつ。「今回の共同商談会は、雑貨商談会との同時開催とともに、特別展示として『サステナブル・ステーショナリー』コーナーを設置した。今後、このジャンルへの消費者の関心はさらに高まると考える。店頭の売上は依然として厳しいが、今後は外国人観光客の受け入れ再開によるインバウンド消費も期待できる。日販と中三エス・ティが対応できる文具・雑貨のマーケットにはまだまだ広がりがある。さらなるマーケットの拡大を図っていく」と述べた。
当日は文具メーカー120社、雑貨メーカー30社の計150社が出展。新商品や季節商品、店頭企画コーナー向けの雑貨などが展示された。雑貨展示会の会場では、日販のPB商品コーナー「Komamonobase」や、日販が提案する「いくつのぎふと」「ゲームのひろば」などの雑貨企画、日販のESG推進企画「ONEECOPROJECT」から生まれたエコバッグ「本袋」などを展開した。

「本屋のあとがき」/「紡いできた信頼」/ときわ書房本店 文芸書・文具担当宇田川拓也

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、KADOKAWA会長が贈賄の罪により、東京地検特捜部に逮捕、起訴された。まだ2022年は終わっていないが、今年最大の業界ニュースとなってしまうことは間違いあるまい。書籍を扱う者のひとりとして、残念としかいいようがない。
魔が差して道を踏み外してしまったのだろう。商いとはなにか、斯くあるべきか。どちらも本をひもとけば難なく識ることができ、いくらでも活かすことができただろうに。日々扱っている商品の価値と自身の成すべき務めを見失ってしまった結果が、こうした形でさらけ出されてしまったのではないかと、つい考えてしまう。
とはいえ個人的には、KADOKAWAという企業に対しての失望感はほとんどない。本屋に勤めて20年以上、まだ社名が「角川書店」の頃から多くの方々と顔を合わせ、ともに売り伸ばしを目指してきた。そうして時間を掛けて繋ぎ培ってきた、版元と本屋という関係だけでは表せないひととひとの信頼は、この一件で霧消してしまうほど薄く儚いものではない。
先日、研修の名目で新人の方が売り場を訪れてくださった。入社していきなりの「まさか」の事態に、その不安の大きさは察して余りあるが、新たな風となり、この濁った空気を一掃してくださることを切に願っている。