全国書店新聞
             

平成22年8月15日号

千葉・勝浦市で総会を開催/関東ブロック

日書連関東ブロック会は7月12日に千葉県勝浦市の勝浦ホテル三日月で総会を開き、関東6県幹部と日書連から柴﨑繁副会長、大川哲夫専務理事ら総勢20名が出席した。今年の総会は千葉県が設営し、各県組合から以下の取組みや課題が報告された。
〔千葉〕
共同購買事業として「県民手帳」「百科クスリになる食べ物」「ふさの国文学めぐり」を委託販売している。
〔神奈川〕
返品入帳の件で、県下の4書店で公正取引委員会取引企画課を訪問した。
〔茨城〕
組合が図書館にコピー機を設置し、得た収益を組合の財源にしている。
〔栃木〕
出版社12社の5百点を揃え展示会を開催し、2百名のお客様が参加した。来年はさらに輪を広げたい。
〔群馬〕
国民読書年に合わせ日書連からの補助金20万円で新設小学校へ本を贈呈した。
〔埼玉〕
万引対策について、県警ともども対策を練り実施している。県の予算として2010年は4200万円が組まれた。

今年上期は2・8%減/雑誌媒体の低下顕著に/出版販売額

出版科学研究所は2010年上半期(1月~6月)の出版概況をまとめた。出版物販売金額は前年同期比2・8%減の9606億円で、前年の4・0%減より落ち込み幅は縮小したものの、減少傾向が依然続いている。内訳は、書籍が3・1%減の4441億円、雑誌が2・6%減の5165億円だった。
書籍の販売金額の3・1%減は、上半期として4年連続の前年割れとなった。推定販売部数は3億7142万冊と1・7%の減少で、販売部数より販売金額の減少幅が大きいのは、売れ筋商品の単価が下がっていることが要因。ミリオンセラーは『1Q84(BOOK3)』と『バンド1本でやせる!巻くだけダイエット』の2点で、ビジネス書でのドラッカー本ブームや、コミックエッセイ、児童向け図鑑のヒットなど明るい材料はあったものの、売行き上位の本が群を抜いて売れる現象が続き、売れない本との二極化が進行している。
返品率は37・7%と1・3ポイント減少。新刊点数は3・8%減の3万8545点で、このうち取次仕入窓口経由は4・0%減の2万9502点だった。ゴマブックスの倒産による純減に加え、くもん出版や宝島社など点数を大幅に減らした出版社も目立った。平均価格は、出回りが1・6%減の1116円、新刊が3・0%減の1132円。低価格志向に対応したタイトルが増加していると見られ、多くのジャンルで前年を下回った。
雑誌の販売金額は2・6%減の5165億円。雑誌は98年以降12年連続の減少で、10年上半期もマイナスとなった。内訳は月刊誌が2・6%減の3999億円、週刊誌が2・9%減の1166億円。雑誌の長期低落について出版科学研究所は、ネットなどデジタルメディアの台頭や若者人口の減少といった要因が長らく影響し、広告収入の大幅減も続いており、雑誌媒体そのものの価値が低下していると分析している。
上半期の創復刊点数は前年同期より19点減の68点。発行部数は17・5%減でともに大きく縮小した。分冊百科は引き続き刊行が活発で、前年と同じ20点が創刊された。一方、休廃刊点数は109点で、過去最高だった前年同期より10点減少したが依然として高水準。「小学五年生」「小学六年生」の学年誌や「おしゃれ工房」「NAVI」など主要誌の休刊が目立った。不定期誌の新刊点数は増刊別冊が2382点で2・7%減少。ムックは4528点で8・5%増加した。

気がつけば、もう降りる駅。/読書週間標語

読書推進運動協議会(野間佐和子会長)の主催により、文化の日をはさんで10月27日から11月9日まで実施される第64回読書週間の標語が「気がつけば、もう降りる駅。」に決まった。野間読書推進賞、全国優良読書グループ表彰などの行事が行われる。

組合員減少対策が最大の問題/北信越ブロック会

北信越ブロック会は7月11日に富山県上市町のホテルでブロック会を開催、各県代表者7名が出席した。
会議では各県から報告が行われ、共通の問題として以下が討議された。①組合員の減少に歯止めがかからず最大の問題として対応していかなければならない。②①と関連して、各県組合の財政悪化により運営が難しくなってきている。③学校図書館、公共図書館問題について検討。④長野県を除く4県について、雑誌発売日を首都圏と同日に早めてもらいたい旨各県代表より要望があり、引き続き日書連とともに各取次、版元に働きかけていくことを確認した。
大型店の出店問題、ポイント制問題について討議したほか、各県から国民読書年の取組みを報告。新潟県からは読者の文学検定を実施した旨の発表があり、大変好評だったとのこと。富山組合は郷土色豊かな図書カードを作成し、各書店で販売したと報告。また、文化講演会を福井組合が開催、長野組合も開催を予定しているとのことだった。
会議の後、富山組合・吉岡前理事長の文苑堂書店各支店を見学。規模の大きさやデジタルを多用したお客様対応など、大変参考になった。最後に次回開催県は新潟県と確認して散会した。(富山県書店商業組合理事長・丸田茂)

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

夏休みを思い出し、日記風に。
○月○日
猛暑なり。帽子かぶって軽装で、大きなトートバッグに水筒とタオル、一番大事な愛妻弁当、ちょっと間の読書用にPR誌入れて。人が見たら、ほんまに仕事かあ?お気楽出勤、セミのシャワーに送られて、徒歩16分のピクニック気分。
○月○日
兵庫の新聞社と本屋が協力して中島らもさんの七回忌追悼フェア。イベントにファンを招待、ご家族・友人がトーク、在りし日の映像を見ながら思い出話に花が咲く。最後は彼のラブソングを合唱して、客席に「チクワの狂い投げ」。個人的には、長女で作家のさなえちゃんに会えてうれしく。さあ店長、サイン会の交渉、しっかりね。生きる希望ができたじゃないか。(後日決定、店長、告知に大忙し)
○月○日
土曜というのに営業さんが何人も。ギャンブル本に芸能本が大当たりのT出版I氏。「儲かって儲かって……」と豪語。業界の荒波を渡ってきた大ベテラン。ただ、当店の売れ筋ではないのが非常に残念。
いつも一生懸命の在阪N嬢、夏の営業は美容と健康にくれぐれもご注意ください。
東京から人文社会のH嬢。フェア展開は明日からでごめんなさい。同社参加の別の社会問題フェアを撮影してくださる。
○月○日
東京から家族旅行を兼ねてK舎のI嬢。前日京都で同社のフェア取材や古書店まわり。わざわざ神戸まで。本お買い上げありがたく、「スケベ通信」を差し上げる。迷惑やろねー。
午後から近所のホールで詩人が講演。開演前に詩人ご来店。私、この方に30数年前お会いした。やはり講演会で本を販売に行った。今回は留守番部隊なので、元気なお姿を拝して感激。サイン本が楽しみ。詩人、本ご購入。レジに居合わせず、売り上げスリップ見ながら、「この本か?」と想像も楽し。
講演会は大成功で、担当T嬢の奮闘努力に敬意と拍手。
○月○日
読者として、本屋として、電子ナントカに関心がない、というよりわからないのだ。出版社がたいへんなのはわかる。本屋にとっては、ケータイ小説とどうちがうの?ネットで情報を読んでいる人はいっぱいいる。私は鈍い。時代は変化して、教科書も電子ナントカになるのでしょう。急いで洋書を読む必要のある人には便利なのだろう。でも、紙の本がなくなるのではないよね?なくなるの?
新聞を見ると、アメリカ最大書店チェーンが身売りを検討とか。小さな書店を駆逐してきた報い(?)かどうかは知らんが、ネット書店や電子ナントカに負けているのでしょ。あちらとこちらでは出版・販売の構造も価値観も違うのではないか。
○月○日
宝塚在住の時代小説作家Tさん、文庫新刊にサインのため酷暑の中ご来店。恒例になり読者も楽しみに。私もサインをお願い。「スケベ通信」イラスト入りで、みんなに自慢しまくる。宝物。本そのものも大事だが、人間関係を大切にしてくれる作家と読者が確かにおられる。

電子書籍の動向を懸念/岡山総会

平成22年度岡山県書店商業組合総会が6月22日、組合員57名(委任状含む)参加のもと岡山メルパルクで開催された。
総会あいさつで吉田理事長は電子書籍について言及し、電子書籍の価格の問題や、出版社の今後の動向に懸念を示しつつも、自店の力を把握し、企業努力を糧にこの環境を直視し、適応していくことも重要なのではないかと呼びかけた。議事は、今城副理事長を議長に選出して進行し、第1号議案から第6号議案までを承認した。
引き続き、産業カウンセラー・秋山幸子氏による『経営者のためのワークバランス―生き方と働き方の調和を考えるために―』と題したセミナーを開催。厳しい経営状況、経済不安に駆られ、精神的にも不安を抱えた経営者のメンタルヘルスについて分かりやすく講義した。終了後、懇親会を行った。
(荒木健策広報委員)

読書年で講演会を開催/山形総会

山形県書店商業組合の平成21年度通常総会が、7月23日に山形市グランドホテルで組合員32名(委任状含む)が出席して行われた。
総会は五十嵐太右衛門理事長のあいさつの後、遠藤澄男副理事長を議長に平成21年度事業・決算報告、22年度事業計画・予算案を満場一致で可決した。22年度の事業計画では、①雑誌同日発売の推進、②新規組合員加入の要請、③国民読書年推進企画として深谷圭助先生の講演会を11月に実施、④組合ホームページの完全リニューアル、⑤日書連マークを活用した学校図書館システムの啓蒙、⑥運送会社との連携による書籍雑誌の運送体制の強化――などの取組みを承認した。
(五十嵐靖彦広報委員)

支部再編で理事数を変更/中山寿賀雄理事長を再選/長崎総会

長崎県書店商業組合(中山寿賀雄理事長)は7月28日午前10時半から諫早市「水月楼」で第23期通常総会を開催、組合員54名(委任状含む)が出席した。
総会は草野専務理事の司会で始まり、中山理事長があいさつ(写真)。決算書の書式変更や「発売日ハンドブック」の説明のほか、現在話題になっているiPadについて話があり、いろいろな問題があると思うが今後の動向を見て研究していきたいと述べた。
続いて尾崎副理事長を議長に議案審議。平成21年度事業報告・決算報告、平成22年度事業計画案・収支予算案など全ての議案を可決承認した。昨年より提案があった市町村合併に伴う支部編成問題では、県北支部の佐世保支部への編入について説明。これにより理事数が減少し定款の変更が必要になったことから、理事数を12人以上15人以下に変更することを決めた。任期満了に伴う役員改選では、中山理事長を再選した。
総会終了後、来賓として中央会の野村氏があいさつ。懇親会ではテジマ運送の手島専務からあいさつをいただき、無事総会及び懇親会を終了した。
(古瀬寛二広報委員)

仲間の連携強め難局を乗り越えよう/長野総会で赤羽理事長

第26回長野県書店商業組合定時総会は6月28日に上田市鹿教湯温泉「鹿鳴荘」で開催、組合員64名(委任状含む)が出席した。
冒頭あいさつで赤羽理事長(写真)は「中小書店にとって大変な時代を迎えている。特に取次の送本の差別は目を覆う状態で、売れ筋は大型店には山積みされ、中小書店には予約分さえ入荷しない。そんな中、電子書籍が市場に出回り始め、誠に先の見えない業界になってしまった。これからは、とにかく仲間の連携を強め、この難局を乗り越えよう」と呼びかけた。
その後犬飼隆氏(明金堂書店)を議長に議事に入り第25期事業報告・収支決算報告、第26期事業計画案・収支予算案を承認。「心にのこる子どもの本」増売への協力が呼びかけられた。引き続き、地元版元3社より新企画発表が行われ、夕方には日頃配送等でお世話になっているトナミ運輸、阿南自動車も加わって盛大に懇親会を開催。出版業界の今後についての激論が夜遅くまで続いた。
(宮原洋一広報委員)

OKC戸田センター開設/大阪屋・栗田の提携事業

大阪屋と栗田出版販売は7月29日、東京・新宿区の研究社英語研修センターでOKC戸田センター開設説明会を開き、出版社に同センターの概要を説明した。
センターの住所は埼玉県戸田市氷川町3丁目4。敷地面積は4069坪、建物は3階建てで延べ床面積は4801坪。両社が昨年11月30日に共同出資で設立した㈱OKCが建設を進めてきたもので、竣工は7月31日。主要業務は雑誌新刊整品・書籍新刊整品・注文品(一部倉庫・取り寄せ)。
1階は荷受け・荷捌きと仕分・出荷を行う。新刊スペースはオリコン用とパレット用に分かれる。トラックパースは10t車26台分の広さ。デジタルピッキング方式を導入、書籍・雑誌以外の商材にも対応するとともに、品質と配本の精度を高める。2階は専門書倉庫、集品・起票、注文仕分けのマテハン機、書籍を中心とした注文品とセット常備のゾーン。3階は事務所、倉庫、関連会社の作業場となっている。
今後のスケジュールは、書籍新刊が、栗田は10月下旬、大阪屋は11月下旬から。雑誌新刊は、栗田が2011年1月下旬、大阪屋が同2月下旬から。注文品は、大阪屋が9月21日、栗田が11年1月5日から。
受品時間は、雑誌・書籍新刊が6時~21時(書籍は月~土、雑誌は月~日)で、荷姿は両社合算。注文品は9時~17時(月~土)で、荷姿は各社個別。納品伝票は大阪屋、栗田ごとに作成し、納品時の受領印はOKCを使用。窓口業務については従来通り大阪屋、栗田ごとで行う。
説明会の席上、大阪屋・南雲隆男社長は「2社の業務を集約するだけでなく、新たな付加価値をつけることが使命。出版物流に資する物流基地として整備し、効率化と精度の向上を実現したい」、栗田・郷田照雄社長は「搬入を簡略化するための施策。一緒になってよかったと言われる会社にしたい」と述べた。

給与格差でプロ育たず/大沢在昌氏が業界構造に苦言/首都圏栗田会

首都圏栗田会は7月14日、東京・文京区の椿山荘で第2回総会を開き、会員書店、栗田、出版社など約250名が出席した。大阪屋の南雲隆男社長、大阪屋友の会連合会の田村定良会長も来賓として出席した。
総会であいさつした奥村弘志会長は、個店売上アップのため会員書店同士で店舗診断や意見交換、アドバイスを行う「書店バックアップシステム」について「相互扶助が実を結びつつある」と評価した。
栗田の郷田照雄社長は「首都圏栗田会は想像以上に活発に活動している。栗田の営業も変わっていかねば」、大阪屋友の会連合会の田村会長は「書店バックアップシステムで書店同士が店舗診断していることに驚いている。素晴らしい試み」と祝辞を述べた。
総会終了後に行われた記念講演では、人気作家の大沢在昌氏が出版業界の現状に苦言を呈し、将来に向けて提言を行った。
大沢氏は、本が売れなくなった原因は「出版社と書店間の給与格差」「膨大な新刊点数」と指摘。「大手出版社員の給料は書店員の3~5倍。トヨタと販売店の間でもここまでの格差はない。給料が安くてはプロは育たない」と述べ、出版物が大量に流通する中で、商品を棚に並べるだけで疲弊している書店員と、何を買っていいかわからず困惑している読者の現状に危機感を示した。そして「出版社は新刊点数を減らし、売りたい本、売れる本しか作らないこと。本屋に並んでいる本は買う価値があるものという感覚を読者に持ってもらおう」と提言した。
また、電子書籍については「紙の本が売れなくなることはないが、減るのは避けられない。5年後に5対5になるのではないか」と予測。町の本屋の未来については「電子書店とナショナルチェーンには出来ないことをやる。地域の読者の心をつかみ、相対して本を薦めることができる書店はなくならない」とした。

紀伊國屋など大手3社減収/日本の専門店ランキング/日経流通新聞調べ

日経MJ(日経流通新聞)は7月14日付で第38回日本の専門店調査(2009年度)を発表した。
これによると、09年度の専門店402社の売上高伸び率は前年比2・0%増と前回調査の1・6%増を上回った。営業利益も16・6%増と3期ぶりにプラス。ただ、エコポイントの押し上げ効果があった家電製品を除くと、増収率は1・7%と前回を0・6ポイント下回った。消費不振の中、商品力に磨きをかけた上位企業が強みを増したと、同紙では分析している。
23業種のうち増収増益は9業種と、前回調査より3業種増えた。減収は11業種と前回の9を上回り、玩具・ホビー用品と楽器・CDは経常赤字となった。
書籍・文具業種の増収率は前回より0・9ポイント縮小して0・9%。景気低迷による書籍・雑誌販売額の低迷やインターネット通販の拡大で、紀伊國屋書店4・4%減、丸善7・2%減、有隣堂1・7%減と大手3社は減収となった。また、大日本印刷傘下となった丸善、ジュンク堂、文教堂は揃って経常赤字だった。一方、ヴィレッジヴァンガードは2桁増収かつ高利益。書籍以外の雑貨等の販売が貢献したようだ。
総売上高経常利益率はヴィレッジヴァンガードが10・0%、1人当たり総売上高は戸田書店が6740万円、3・3㎡当たり直営店舗売上高は京王書籍販売が285万円、直営+FC新設店舗数はヴィレッジヴァンガードが59店で、それぞれトップだった。

紙との補完関係目指す/講談社の書籍電子化戦略/東京組合研修会

東京組合が6月2日に開いた「書店のための出版研修会」で、講談社・吉羽治ライツ事業局長が「講談社の書籍デジタル化に向けた取り組み」を講演した。同社は今年、五木寛之『親鸞』上巻全文ネット無料公開、京極夏彦『死ねばいいのに』電子書籍版配信などの試みを行っている。講演の概要は以下の通り。
五木寛之氏からの申し出もあり、5月12日から1ヵ月間期間限定で『親鸞』上巻のネット無料公開を実施した。65万部出ている本の上巻だが、無料公開をきっかけに「1人でも多くの読者に読んでもらいたい」という提案だ。講談社としても売り伸ばしができればとの思いで取り組んだ。
また、5月28日にiPadが日本発売されたのと同時に、京極夏彦氏『死ねばいいのに』電子書籍版のiPad向け販売を始めた。京極氏は「出版社の役割、本の良さを守っていきたい。出版社が積極的に電子書籍に取り組んでもらわねば市場が荒れてしまう」と考えている。
『親鸞』『死ねばいいのに』は、電子書籍が話題を集めている中における実験的な取り組みと理解していただきたい。同様の形で次から次へと新刊を電子化してiPad向けに販売することは、現時点ではない。アマゾンとアップルの日本における動向や、ソニーなど国内勢の具体的な動きが明確ではない現状では、環境が整っていないと認識せざるを得ない。読者が電子化された本をどう受け止めるかを探っている状況だ。
講談社は、紙とデジタルの良い形での補完を目指すという考えをベースに持っている。新たなチャンネルを開拓して新たな読者を獲得し、市場の活性化につなげたい。
「版元不要論」にも対抗しなければならない。内外IT事業者による版元飛ばしを警戒している。日本語の縦組み・右開き文化軽視にも危機感を持っている。米国の標準仕様ePubでは漢字とひらがなの間が空いてしまったり、日本語がきれいに表示されない。これは出版社にとって耐えがたいこと。ePubが電子書籍の唯一の仕様にならないようにしたい。
紙とデジタルの補完関係を目指すのは簡単なことではないが、講談社にはモバイルFRIDAYやケータイコミックでの経験がある。本誌の部数に影響がなかったことで、モバイルの読者は紙の読者とは異質であることを認識できた。
デジタル化を進めながら同じ作品を書店店頭で買ってもらい、書店店頭でなければ手に入らない商品を開発していく。この両輪を進めることが出版社として必要だと考えている。

6月期は7・5%減/文芸書が大きく落ち込む/日販調べ

日販経営相談センター調べの6月期書店分類別売上調査がまとまった。これによると売上高対前年比は7・5%減となり、2ヵ月連続マイナスとなった。客数は5・7%減と5ヵ月連続で前年を下回った。
文芸書は23・4%減と大きく落ち込んだ。09年5月に発売され大ヒットした『1Q84Book1、2』の反動があらわれた形だ。
実用書も14・9%減と振るわず、これで18ヵ月連続で前年を下回った。『体脂肪計タニタの社員食堂』など既刊ロングセラーは好調だったものの、販売力のある新刊がなかったことが響いた。
一方、ビジネス書は1・2%増と前年を上回った。『もしドラ』『20歳のときに知っておきたかったこと』など売上上位銘柄が全体を牽引した。
客単価は0・6%減と2ヵ月連続で前年を下回り、4カ月ぶりに1200円台を割り込んだ。

セブン&アイ、電子雑誌で通販サービス

セブン&アイは8月3日、電子雑誌に掲載された商品を自社通販サイトで購入できるサービスを本格的に開始すると発表した。小売大手が電子書籍市場で新たなビジネスを展開する。
同社は7月中旬からネット通販子会社セブンネットショッピングを通じてiPhone/iPad向けの立ち読みアプリ「セブンde立ち読み」を提供しており、今後アプリの書籍や雑誌に掲載された商品がネット通販で売れた際、出版社に成果報酬型の販売ロイヤリティを支払う仕組みを2010年度内に導入する。
来年度には電子書籍のダウンロード販売を開始。他のスマートフォンや電子書籍端末にも拡げていく。
「セブンde立ち読み」は書籍や雑誌の一部を閲覧し、ネット通販で実際の書籍や雑誌を購入したり、掲載されている商品を購入することも可能なサービス。現在は約50アイテムのデータを提供しており、出版社の協力を得ながら拡大していく。コンテンツはトーハンが出版社から仕入れ、電子化してセブンネットショッピングに提供している。
村上龍氏の最新長編小説『歌うクジラ』が、紙の書籍に先駆けて、iPad向けアプリケーションとして7月16日より配信されている。iTunesAppStoreで購入できる。価格は1500円。
『歌うクジラ』は講談社の文芸誌「群像」に連載された作品。紙の書籍は今秋、講談社から発売予定。
村上氏は「百年後の世界を描いた未来小説であり、私の最初の電子書籍に相応しい作品と考えた。新しい試みを講談社も支持してくれた」とコメントした。

ドコモと大日本印刷、電子書籍事業で提携

NTTドコモと大日本印刷(DNP)は8月4日、携帯端末向け電子出版ビジネスで業務提携し、今秋をめどにサービスを開始すると発表した。
書籍、コミック、雑誌、新聞など10万点を超える電子出版コンテンツの収集、電子化、配信を行う。さらに、ドコモの携帯電話やスマートフォン、タブレット型端末、電子書籍用端末に対応した電子書店の運営まで一貫して手掛ける。また、秋のサービス開始に向け、両社で共同事業会社の設立を検討。両社はコンテンツ提供者や端末は限定しない方針で、複数の出版社や端末メーカーに協力を依頼している。すでにNECおよびLG電子(韓国)、サムスン電子(同)の端末メーカー3社が賛同しているという。
ドコモは端末機器や情報配信システム、決済システムを提供する一方、DNPは出版業界との信頼関係を活かし電子化支援等の役割を担う。
ドコモユーザーを核とした電子出版プラットフォームを構築するとともに、丸善、ジュンク堂、文教堂といったDNPグループのリアル書店やオンライン書店「bk1」とも連携。紙の書籍と電子出版コンテンツのハイブリッド型サービス普及を目指す。
電子書籍事業では、ソフトバンクが米アップルのタブレット型携帯端末「iPad(アイパッド)」を販売。KDDIは凸版印刷などと合弁会社を設立するなど、通信大手3社間の競争が激しくなりそうだ。

新キンドル、日本語に対応

米アマゾン・ドット・コムが8月27日に発売する電子書籍端末キンドルの新型が日本語にも対応していることがわかった。これまでのラテン文字とギリシア文字に加え、日本語、中国語(繁体字と簡体字)、ハングル、キリル文字(ロシアなどで使用)が表示できるようになる。
無線LANのみに対応したモデルは139ドル、無線LANと第3世代携帯電話(3G)の高速データ通信に対応したモデルは189ドル。米アマゾンのサイトで購入できる。

村上龍氏の最新小説、iPad向け電子書籍で先行発売

村上龍氏の最新長編小説『歌うクジラ』が、紙の書籍に先駆けて、iPad向けアプリケーションとして7月16日より配信されている。iTunesAppStoreで購入できる。価格は1500円。
『歌うクジラ』は講談社の文芸誌「群像」に連載された作品。紙の書籍は今秋、講談社から発売予定。
村上氏は「百年後の世界を描いた未来小説であり、私の最初の電子書籍に相応しい作品と考えた。新しい試みを講談社も支持してくれた」とコメントした。

中央社共栄会

中央社共栄会は7月11日、12日の両日、都内で第8回懇親の集いを開き、書店92名が出席した。黒田幸雄会長は「自店PR、挨拶励行、商品知識充実で足元を見つめ直し、中小書店が生き残る道を探ろう」と挨拶。中央社の風間賢一郎社長の発声で乾杯した。

日書連のうごき

7月1日学校図書館図書整備協会記念祝賀会に大橋会長が出席。
7月2日近刊情報EDI標準化推進・公聴会に大川専務理事が出席。
7月5日「敬老の日読書のすすめ」書目選定委員会に石井事務局次長。
7月6日出版関係受章者祝賀会に大橋会長。「子どもの読書推進会議」平成22年度総会に石井事務局次長。再販研究打合せ会。
7月7日メディアコンテンツ万引防止協議会設立準備会に大川専務理事。
7月8日「東京国際ブックフェア」オープニングセレモニーに大橋会長。全国情報化推進委員長会議。
7月12日関東ブロック会総会に柴﨑副会長が出席。日本書店大学にて「ためほんくん」のデモ実施。
7月13日第11回「読売・吉野作造賞」贈呈式に大川専務理事が出席。
7月14日首都圏栗田会に舩坂理事。JPO第3回運営委員会に柴﨑副会長。
7月15日東北ブロック大会に大橋会長が出席。第64回読書週間標語選定委員会に石井事務局次長。
7月16日出版倫理協議会に鈴木副会長ほか役員。
7月20日「ためほんくん」出版社との意見交換会。デジタルコミック協議会にて「ためほんくん」のデモを実施。舩坂理事がJPIC関連で、講談社とNHK出版に協力要請。各種委員会(組織、増売、読書推進、指導教育、取引改善、流通改善、再販研究、広報、消費税問題、情報化推進、財産運用、政策)。
7月21日日書連定例理事会。再販研究委員会に大橋会長ほか役員が出席。出版物小売業公正取引協議会理事会。
7月22日メディアコンテンツ万引防止協議会設立記者発表会に大橋会長が出席。公正取引協議会月例懇談会に大橋会長ほか役員が出席。凸版印刷会長・社長就任披露に大橋会長。
7月26日日本図書コード管理センター・ワーキンググループに岩瀬専門委員。出版サロン会に大橋会長。読書推進運動協議会常務理事会に大川専務理事。JPIC関連で舩坂理事が光文社を訪問。
7月27日雑誌発売日励行本部・同実行合同委員会に長崎理事が出席。
7月28日JPIC関連で舩坂理事が小学館を訪問。文化産業信用組合理事会に大橋会長。読書週間ポスター用イラスト選定事業委員会に石井事務局次長。流通対策協議会との意見交換会に柴﨑副会長ほか役員が出席。
7月29日出版平和堂合祀者選考委員会に大川専務理事が出席。

兵庫日販会

7月15日に神戸市内で開かれた兵庫日販会の第33回総会で、挨拶した村田耕平会長は「電子書籍は話題先行。今後の動向は誰も予測できない。紙の出版物を守るため業界全体の知恵の結集が必要。来店客減少を食い止め、変革を進めよう」と呼び掛けた。

北海道日販会

日販の古屋文明社長は7月13日、札幌市内で開かれた第31回北海道日販会総会に出席し、「電子書籍元年と言われる中、出版業界は現在の再販制度、委託制度についての見直しが課題。日販の取り組み『パートナーズ契約』は、販売効率を上げ、利益を書店に還元し、出版社とも単品でなく大きな単位でのインセンティヴ契約を進めるもの。MPDとも協力して業界3者が収益をあげる仕組み作り、時代に合った店舗作りを目指す」と挨拶した。

本屋のうちそと

他所の町に出かけて行って、その土地の書店を見学するのはとても楽しく、また勉強になります。以前も京都で勉強会があった時、知り合いの書店さんに案内していただいて、何軒か見て回りました。さすがに京都、オシャレなお店や、個性的な品揃えに驚かされました。
デジカメで写して、参考にすべきすぐにでも取り入れたいことを箇条書きにして…自分の店に舞い戻り、溜まった仕事を片付けて、そうして何日かすると生来の怠け虫が耳元で囁きます。見学してきたお店とは条件が違う。あんな都会とは人口が違いすぎる。お客もいないし金も無い…、という具合ですね。
いつもこうやって、やりもしないうちから出来ない理由と言い訳を見つけて、自分の店の汚点や欠点に目を瞑り続けて来た訳です。こういう場合は自分自身を追い込まなくてはいけません。これはと思う人に来てもらって、自分の店を見てもらう、そしてずばりと忌憚の無い意見(これが難しいのです)を聞かせてもらうのです。人口減少、市場規模が縮小してゆく現実の中で、いかにお客に喜ばれ、楽しく働けるお店になってゆくかを競い合う時代です。お互いに切磋琢磨しあえる友人をどう見つけるか。規模の大小ではなく、「質」の競争で生き延びる道を探していくのだという、本当はイイ時代がやってきたように思います。
(広辞猿)