全国書店新聞
             

平成22年3月21日号

書店くじ立替金振り込みました

昨年秋実施した「2009読書週間書店くじ」で各書店にお立て替えいただきました1等1万円、2等千円、3等5百円、4等百円の精算業務は終了いたしました。入金をご確認いただくようお願いします。
書店くじ係

売上で例年以上の成果/本屋さんへ行こうキャンペーン/京都組合

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は「本屋さんへ行こうキャンペーン」をこの1月末まで実施、集まったキャンペーンの応募券を集計し抽選を終え、今年度のキャンペーン事業を終了した。
京都組合が行う年間の販売促進活動では最も中心となる事業で、今回は「龍馬本フェア」と題し、組合加盟書店の全店舗で昨年12月からおよそ2カ月間実施した。読者から寄せられたキャンペーン応募券の総数は305通。3月3日には担当である活性化委員が立会いのもと厳正な抽選が行われ(写真)、応募者の中から100名を当選とした。景品の図書カード2千円分については、応募券に記載された当選者の住所まで直接郵送する。
黒澤靖活性化委員長はキャンペーンを終えて、「例年のキャンペーンでは、組合加盟書店への来店客数の増加と顧客へのサービス還元を目的としていたので、来店者であれば応募できた。しかし今回は店舗売上の向上も目指したことから、応募にはキャンペーン対象商品に指定された坂本龍馬関連書籍を京都組合加盟の店舗で購入してもらうことが条件として加わった。そのため応募数の減少が懸念されたが、京都組合のマスコットキャラクター『ブックン』のイラストを今回からキャンペーンのポスターやチラシに多用してアピールに努めたほか、広告にも重点を置いた結果、応募総数では例年並みに集まった。集客と顧客へのサービス、売上に貢献できたという面を総合して、例年の数字以上の成果があったと考えている。しかしさらに効果を追求するなら、このキャンペーンの存在を消費者に一層周知してもらうことが重要で、京都府内一円に及ぶような宣伝手法を再考することは、今後の課題の一つと言える。今回届いた組合員の方々からの意見も参考にしながら、当委員会としてこのキャンペーンをはじめとする様々な活性化事業を行うことで京都の出版業界を盛り上げ、京都組合として加盟店の商売に貢献できる活動をこれからも行いたい」と総括した。(澤田直哉広報委員)

4月から月2回発行に変わります

本紙は4月から毎月1日、15日発行の月2回刊に変更いたします。日書連財政健全化および編集体制見直し(担当者1名減)の一環として発行回数減を図るものです。
この措置にともなって月間ページ数の減少と速報性は低下しますが、各種webサービスの積極的活用等によりこれを補い、今まで以上にきめ細かい情報提供、相互交流の場を提供し、紙面の充実を図ってまいります。全国の広報委員と組合員、読者の皆様には大変残念なことになり申し訳ございません。広報委員の方々には編集部カバーのため、今後一層記事を送ってくださいますようお願いいたします。皆様方のご理解とご支援をお願いいたします。日書連広報委員長・面屋龍延

特賞は図書カード5万円/4月20日から春の書店くじ

4月23日の「世界本の日サン・ジョルディの日」に合わせて、4月20日から「春の書店くじ」の配布が始まる。今回は、特等賞に「図書カード5万円」100本を用意した。25年目を迎える「世界本の日サン・ジョルディの日」に合わせて今年も「春の書店くじ」を実施する。宣伝用ポスター(写真)では、「世界本の日サン・ジョルディの日」とともに今年が「国民読書年」であることもPR。特等賞の図書カード5万円のほか1等賞から4等賞までと、ダブルチャンス賞を合わせて合計51万7700本が当たることを大きくアピールしている。
店頭活性化活動の一環として、組合加盟書店全店に無料の「書店くじセット」(くじ券50枚、ポスター1枚)1組を送付する。くじ配布期間は4月20日(火)から30日(金)まで。

特任理事4氏にグループ別分担/東京理事会

東京都書店商業組合は3月2日に書店会館で定例理事会を開いた。
〔組織委員会〕
特任理事4氏のグループ別分担を以下の通り決めた。▽乙津宜男(紀伊國屋書店)=Aグループ(組織、発売日、指導・調査)▽渡辺泰(有隣堂)=Bグループ(経営・取引、流通改善、電子サイト運営推進、万引・出店問題)▽大越久成(丸善)=Cグループ(厚生、再販研究、出版物販売倫理)▽望月伸晃(八重洲ブックセンター)=Dグループ(事業・増売、共同受注、読書推進)
〔電子サイト運営推進委員会〕
現在Booker,sの会員数は約7万名、auでは67サイト中8位。

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

温かい日が続くかと思えば寒い日があり、冷たい雨もよく降ります。それでも確実に春がもう来ています。
本紙上でしてよいかどうか悩みながら、します。クールな女の話です。地元紙で3年半、他の書店員2名と続けてきた本紹介コーナーが、今春から「書店日記」になるとのことです。これを期に、私、引退を決意しました。年寄りがいつまでも居据わっていてはいけない、自分だけが書店員ではない、若い人・新しい人にどんどん書いてもらうべき……、私なりの決断です。未練がないと言うと嘘になります。しがみつきたい気持ちもあります。それでも、やはりここは退くべきです。しかし、会社に忠誠を尽くす超マジメな私は、店の宣伝・広報のことも考えねばなりません。後任に若手を何とかと、担当デスクにお願いし、了承を得ました。それはそれでありがたいことで、いいのです。でもね、デスク女史は「(若手の)文章が楽しみ」とワクワクしている様子です。ちょっと待って、私の決意そのものは堅いのだけれど、こういう場合の社交辞令というか、お愛想というか、世間一般の慣習であろう、「辞めないで、捨てないで」の一言あってもいいじゃあありませんか。別れ話がこじれて刃傷沙汰は望みません。「あなたに会えてよかった」と熱い抱擁くらいあってもバチは当たらないんじゃあないでしょうか。
世の中は、そういうものです。こっちが思っているほど、あっちはこっちを思っていないのです。私に女性を惹きつけられる訳がないのです。常々書いておりますように、私「運」はないのです。すべて「美人妻」と「同僚」で使い果たしています。これ以上何を望むことがありましょう。ごく身近なところにオベンチャラして、体裁を整え、この話を終わります。
本紙上でしてよいかどうか迷いながら、します。ホットな「愛読者」の話です。私、仕事をさぼりながら、「H本」ばかりの変てこ通信を書いております。愛読者の本名は避けます。東京J堂S店のMさんが本を教えてくれました。変な本ばかり紹介する私がバカなのか、変な本を出す版元が悪いのか、変な本を教える人がアホなのか、いずれにせよ出版界はまだ大丈夫だと思います(どういう論理か?)。初めて聞く出版社で大手取次と取引がありません。専門取次に返品条件付きで出荷のお願いをしました。月曜に発注したら木曜に到着しました。出荷日のタイミングもあったのでしょうが、即日出荷してくださったようです。ありがたいことです。皆さん気になるでしょう。見て怒らないでください。
ヒント(1)彼女の推薦のことば。「……マイナーな出版社ですが、秘宝館に全精力を傾けている真摯な取り組みには、頭が下がります。内容はオツムの弱い路線で、とても素敵な出来栄えです」。
ヒント(2)版元は名古屋。
これで探せるでしょう。少なくとも彼女の店と当店にはあります。見て呆れないでください。

「万引きは犯罪です」/ステッカーを組合員に送付/日書連

日書連と全国古書籍商組合連合会、リサイクルブックストア協議会が共同で製作する「万引き防止ステッカー」1万7千枚がこのほど出来上がり、日書連では3月下旬に組合加盟店に送付する。
小売3団体は3月2日に共同声明を発表し、団結して青少年の万引き問題に改めて真剣に取り組む決意を表明。併せて、店頭に貼る万引き防止の統一ステッカーを披露していた。日書連は、このステッカー2枚と「三者共同声明」を全国の書店組合加盟店約5500店に送付して、店頭での掲示を呼びかける。全国古書籍商組合連合会、リサイクルブックストア協議会とともに、すべての加盟店舗に統一ステッカーを導入することで、万引き犯罪根絶に向けた環境整備を進めていく。

読者が読み終えた本を集めて寄贈/霧島市・ブックス大和

鹿児島県霧島市「ブックス大和」の井之上博忠社長(鹿児島県書店商業組合理事長)は、読者から読み終えた本を回収し、集まった本約5百冊を姶良町の北山校区地域コミュニティ協議会に寄贈した。
井之上社長がこの事業を始めるきっかけとなったのは、友人から「読み終わった本の処分に困っている」という話を聞いたこと。そこで、書店店頭に読み終わった本の回収箱を設置したところ、文庫、辞典、文芸書、ムックなど約5百冊が集まり、3月6日に同協議会に寄贈した。これらの本は集会所や小学校などに置かれて活用されるという。
井之上社長は「寄贈先は、山間集落のため図書館から遠い地区で、公民館活動が活発なところということで選んだ。今後は県下各地域で賛同者を募り、書店のボランティア活動として行なっていきたい」と話している。

島根・鳥取組合/共催で万引き対策セミナー

島根県書店商業組合と鳥取県書店商業組合は2月23日、米子市の「本の学校」を会場に、共催で「万引き防止対策セミナー」を開催した。
講師には、島根県松江警察署生活安全課の丸本到氏と㈱リテールサポートの山内三郎氏を迎えた。丸本氏は、管内の万引き発生状況はここ3年間増加していること、その中でも書籍の万引き被害額は前年比32%増加したと報告した。
山内氏は、「商品ロス」には3つの要素があり、1つは万引き、2つ目は社内不正、3つ目は伝票関連のミスであると説明。その中で「万引き被害にあわない店作りのポイント」として①「盗られ筋商品」の把握、②万引き行為が行われる場所=死角位置の絞り込み、③お客さまへの声かけ、④万引きが多い時間帯の把握――を上げた。
一番の対策として、万引き犯を捕まえるのではなく予防するのだということを、店のスタッフが日常業務の中へどのように取り込んでいけるかが基本であること。そしてすぐに実行できることは、お客さまへの「声かけ(あいさつ)」をすることであると述べた。山内先生のお話は非常に具体的でわかりやすく、参加者から「参考になった」「出席してよかった」「早速、ロールプレイングを実施したい」などの声があった。
セミナーには両県組合から50名を超える出席者があり、現場での万引きに対する切実さが感じられた。
(井澤尚之広報委員)

読書年企画を審議/埼玉理事会

研修会に先立ち、埼玉県書店商業組合の理事会が午後1時から開催された。
日書連報告は、水野理事長より、①書店会館不動産取得問題について、②春の書店くじについて、③書店ポータルサイト化構想について――の3点の説明と報告があり審議を行なった。
次に「国民読書年」の企画について、県内の公共機関を利用した「お話会」の開催(予定)を審議。午後2時20分に閉会した。
(石川昭広報委員)

万引実態調査を元に対処法学ぶ/埼玉組合

埼玉県書店商業組合(水野兼太郎理事長)は、万引防止をテーマにした平成21年度研修会を2月8日午後2時半から浦和ワシントンホテルで開催し、37名が出席した。
研修会は、根岸秀夫教育指導委員長の司会で進行し、水野理事長があいさつ。「万引防止から事後処理まで」と題し、浦和警察署より生活安全課安全係長の猪狩拓氏、同少年係長の大河原正貴氏を講師に迎えて行なった。講演では、埼玉県の少年による万引実態調査結果を元に、いろいろな事例や対処法などの具体的な説明があった。参加者も実務上の疑問や対処法等で多数質問ができ、有意義な研修会となった。
続いて行なわれた懇親会の席では、日書連・大川哲夫専務理事が乾杯の発声。懇親の場では業界の現況等、最新の情報を交換して組合員の親睦を深めた。
(石川昭広報委員)

並べるだけでは売れない/二玄社専務・名女川勝彦

二玄社で30万部に向かって突き進んでいるシリーズがあります。『ほっとする禅語』『続ほっとする禅語』ですが、書道具専門店では売れない。全国の書店店頭を通じて読者の手にわたる商品です。
今日、紹介するのは良寛さんの書です。一休さん、良寛さんは誰もが知っていながら、その内実は案外知られていない。良寛さんの74年の生涯は厳しく孤独であるが故に、すばらしい書が生まれている。そういう良寛さんの側面を書家でもある田中副編集長から話してもらいます。
お習字がブームといっても、この本はそう簡単に売れません。世間に知られている良寛さんと相当違うので、並べていれば簡単に売れるという本ではない。自分の店に合っているかどうか。合っていなければ仕入れなくて結構です。これからは、うちの店にこんな本はいらないと平気で突き返す、とんがった書店が生き抜いていくと思う。
出版社も書店も読者から選別されていきます。生き残るには自分たちの目を鍛えていくことです。店に合わない本を置いても仕方ない。なじみ客、町内の客は自分の店に全部取るんだという本屋さんになっていただきたいと思います。

良寛『草庵雪夜作』の魅力/二玄社書道美術編集部副編集長・田中久生

東京都書店商業組合が行った3月2日の「書店のための出版研修会」第2部は、二玄社書道美術田中久生副編集長による良寛の遺偈『草庵雪夜作』の解説。良寛の生涯をたどりながら、専門家ならではの視点から遺偈と言われる同作の深い精神性と、その書の魅力について語ってくれた。

二玄社は主に東洋美術と自動車の書籍・雑誌を刊行しています。書道具の代理店でも結構売っていました。ところが10年ほど前、書道界の大御所が亡くなって以来、書道界という大きな団体のピラミッドが完成してしまった。組織自体が固まってきたのが見え始めたので、これは今までどおりではいけない。なんとか書店で売っていただける本を作ろうと、「ほっとする禅語」シリーズを出し始めました。それまではお手本として書の古典の出版が主でした。
今はもう実作活動はやめていますが、書は好きで、毎晩、何か臨書してから床に入るようにしています。学校も、偉い書家になるか、漢文の先生になるかという学生ばかり集まっているところでしたから、在学中から遊びがてら「書道編集」にお邪魔していて、そのまま30年近くたってしまいました。
日中国交が回復した頃ですが、台湾の故宮博物館の収蔵品をすべて撮影させてくれないかという交渉に入り、大学4年のアルバイトの時に3、4カ月かけて全部撮影しました。3畳間くらいのカメラを組み立てて、500点くらい撮影して300点ぐらいを複製しました。4色刷りではなく、4色機に3回、4回かける。その技術が世界的に評価され、東アジアでは今でも台湾、中国、もちろん日本でも販売しています。
そのあと、もう会社に入ってからですが、三井財閥に三井文庫というコレクションがあります。中国の書の拓本の稀代のコレクターだった三井高堅さんが存命中に、交渉して全部撮影しました。その中から名品を選び書の手本を出版しました。その中からさらに百点を選び、三井記念美術館に陳列しています。
そういう大部のものをやってきたのですが、5年前、二玄社創立50周年で何かやろうという時に、良寛さんを思いつきました。良寛には木村家、寺家、安部家のご三家があります。新潟の豪農が良寛さんを庇護し、良寛さんが亡くなった後も良寛さんの書が新潟に集まってきた。木村家は良寛さんが晩年をすごしたお宅で、よい作品がたくさんあるが、自宅でしか公開していなかった。木村家の家長しか開けてはいけないという巻き物もありました。
和歌巻三巻という巻き物ですが、まさか撮影できるとは思わなかった。漆箱を三重にした中に入っていました。撮影とは別に東京美術倶楽部でイベントをやりました。5日間で2万人の来場をいただき、2万2千円の本が会場で3千部売れました。良寛さんの人気には本当に驚きました。これは今でも書店で売っていただいています。そのあと続いて、安部家の本も作り、一連の名作を複製しました。
良寛さんは1758年生まれ、江戸時代中期の人です。去年が生誕250年でした。出雲崎出身で、得度して弟に家督を譲り、各地を歩いた修行僧です。岡山の円通寺も有名で、良寛の書が残っていると言われています。
その後、両親が亡くなり、家が没落して、新潟に帰ってきた。ところが良寛さんは何も求めないし、寺に入ってくれと言われても入らない。無欲で、乙子神社という神社に住んだり、山の中腹に五合庵という掘立小屋を建て、20年ほど修業し、町へ降りて托鉢して暮らしていた。
老いて69歳になった時に木村家の当主が「寒いところにいては身体にも毒だから」と部屋を用意したのですが、良寛さんは家に上がらず、木村家の裏の小さな納屋に住み、74歳の誕生日がきてすぐ亡くなります。その4年間、亡くなるまで納屋で暮らし、その間に漢詩や和歌を作って書き残した。その中で和歌巻3巻を永年お世話になったと木村家に置いていかれた。
木村家に1週間通って全部撮影し、帰ってきてフィルムができあがるかどうかという時に新潟地震がありました。木村家もかなり太い梁にひびがはいったりして、あの地震が1週間早く撮影中だったら大変だったと思いました。
その本の編集作業に入ると、いろいろ調べなければいけないんですが、最晩年の有名な「草庵雪夜作」という作品が見つからない。最晩年の作だから、木村家で書いているはずです。この作品にはすごく思い出があります。28年前、会社に入ったか入らないかという頃、今の会長、当時の渡邉社長が「おまえ、良寛の『草庵雪夜作』を知っているか」と言われた。「本で見たことがあります」と返事すると、「あれはいいよなあ」と言うんです。
それで、それっきりだったのですが、おととし、「『草庵雪夜作』が見つかったぞ」と言う。会長は個人的にずっと探していたのですね。で、連絡先を探り当てて、直接会長と一緒に行き、新潟で三代にわたる良寛のコレクターが所蔵されていたのですが、その方に交渉したところ、快く複製の許可をいただきました。
書は読まなくてもいいのですが、遺偈(ゆいげ)というか遺言に近い詩ですね。
「頭を回らせば七十有余年、人間の是非飽くまで看破す。往来の跡幽かなり深夜の雪。一◆の線香古窓の下。良寛」
これを読みながら、ぜひ指でたどっていただきたい。それだけで書の良さがわかる。字は確実にうまくなります。書はそういうものです。実際にやってみるのが一番です。
良寛の書はたくさんあります。新潟はお米がたくさん取れ、豪農が何人もいまして、余裕のあるお宅ですとお茶会をやる。その時には良寛の書を掛ける。それが新潟人のステータスになっている。
お茶はご存じのとおり、お茶を飲むだけではありません。お作法から書画、茶器の観賞、建築様式まで味わう。新潟では良寛の本物を掛けられるというのが一番の誇りです。そこに京都、東京の業者がどんどん作を送り込むから当然、作が増える。
王義之と良寛を研究している吉川蕉仙という大学の書道の先生が、京都にいます。この方に「草庵雪夜」の本をお願いしました。富山で展示会をやった時、2週間限定で「草庵雪夜」が展示され、それを吉川蕉仙先生がご覧になった。「いや、これはすぐに1冊本が書ける」と言う。
それで書かれたのが『草庵雪夜作/やすらぎを筆に託して』で、先月末出ました。この35字しかない書で1冊の本はできないだろうと思っていたら、112頁の非常に分かりやすい本ができました。ぜひお勧めいただければと思います。
この書はうまい、へたという域ではない。ほめるなら、いいとしか言いようがない。良寛さんは寺も持たない無欲の方だから、うまく書こうとせずに出来てしまった作品じゃないかと先生は書いています。こどもでも書けそうですけれど、大人には書けない。
習いこんでしまうと、欲が勝って、俗になってきます。それがすべてない書ですね。良寛の魅力とは何か。線そのものはもちろん、引かれた線によって分かたれた空間、それが日本人の美意識が最後にたどりつくところだと思います。清楚、簡素な美しさが空間からにじみ出てくる。余韻ですね。それが良寛の書の好かれるところだと思います。二玄社が東京美術倶楽部で展示会をやった時に、良寛さんの書の前に正座して拝んでいるおばあさんが何人いたことか。
先日亡くなられた立松和平先生も、その展覧会に来て、木村家の作品を見て「魂を吸われるような字だ」とおっしゃいました。それ以来、原稿をお願いして『立松和平が読む良寛さんの和歌俳句』『立松和平が読む良寛さんの漢詩』を亡くなる直前の1月に頂戴しました。あとは作る段階という時に亡くなられて、本当に残念です。それも4月に刊行します。
書のことを習字と言いますね。きれいな字、元気な字、暑苦しい字、涼しそうな字、いろんな字がありますが、「字が汚い」と怒られた経験がおありだと思います。テストの答案とか、急いで書いたとか。それを最近全然聞かない。私の娘に「よそで字が汚いと言われるだろう」と聞くと、「言われないよ」という。これは一つの文化の消滅です。
書作品を見る時、字が書いてあるから、習慣的に読んでしまうが、読む必要はない。好きか嫌いかでいいのです。まず見てください。中国から伝来されてきた漢字は篆、隷、楷、行、草、全部一緒に渡ってきた。日本人がそれを加工して「かな」を作り、漢字とあわせて実用面と芸術面で発展したわけです。
お茶がお茶を飲むだけではないのと同じで、書も書くだけではない。詩を読む。印をとる。画を描く、表具を見立てる。あとは筆墨硯紙すべてが書の世界です。これからも私どもは書画の名品と、名品についての書き下ろし、現代作家の書の作品で、毛筆と手書き文字の魅力を伝えていこうと思っています。平安時代のかな文字のすばらしさは、日本人なら誰でも認める。日本人が作り上げてきた文化が絶えてしまわないよう、これからも本を作っていきたいと思います。

『エッジ・スタイル』創刊/お姉系ターゲットのギャル誌/双葉社

ギャル向け雑誌『EDGESTYLE(エッジ・スタイル)』を6月7日に創刊する双葉社は、3月15日に東京・渋谷のO‐EASTで媒体説明会を行った。
同誌は「セクシー」「リアル」「ゴシップ」「ラブ」をキーワードに、ギャルは卒業したが大人の雑誌には手が届かない20代半ばのお姉系ギャルにターゲットを絞り、他誌にない個性を打ち出す。また、『ポップティーン』トップモデルの小森純、ギャル社長として知られる藤田志穂らカリスマギャルモデルを「エッジリスタ」と名づけて起用し読者への訴求を図る。
基本コンセプトは「お姉系ギャル&ゴシップ・マガジン」。7割を占めるファッションページが中心となり、エッジリスタのプライベートファッション、米国LAにいそうなお姉系ファッションスタイルなどを紹介。また、海外セレブのゴシップ情報や国内タレントの芸能情報も充実させる。さらに、凸版印刷、関西テレビ放送などのパートナー企業とともに、オフィシャルサイト、エッジリスタのブログ、テレビ番組、コレクションなどのイベントと連動しマルチ展開を図る。海外戦略として台湾、香港、マカオで提携誌を発売する。毎月7日発売。A4変形判、予価500円(税込み)。発行部数15万部。
説明会の席上、渡辺拓滋編集長は「他のギャル誌にない評価を獲得したい。女性ファッション誌の新しいモデルを作る」と話した。

第13回日本ミステリー文学大賞に北方謙三氏、同新人賞に両角長彦氏『ラガド』、鶴谷南北戯曲賞に小幡欣治氏『神戸・北ホテル』が決まり、3月16日夕、東京・丸の内の東京會館で贈呈式と祝賀パーティーが開かれた。
贈呈式で主催の光文社シエラザード文化財団・高橋基陽理事長が「この賞も13回目を迎えた。年輪を重ねてさらに太い木にしたい」とあいさつし、各賞を贈呈した。
選考委員を代表して森村誠一、綾辻行人、山口宏子の各氏の選評に続き、北方氏は「30年間小説を書き続け、それが本になり、賞までもらうことができるのは幸せなこと。今回の受賞でハードボイルドに新たな道が開かれた」と受賞の喜びを語った。両角氏は「50歳のとうのたった新人だが、いま書いている3本は形にしたい」、小幡氏は「60年近く芝居を書いてきた。気力のある限り書き続けたい」とあいさつした。

人事

◇日経BP社
2月22日付で以下の役員人事を内定した。3月29日の定時株主総会・取締役会で正式決定する。
代表取締役社長平田保雄
取締役(人事・労務担当)
秋吉穫
同(経営情報グループ統括、経営情報グループ開発長)小浜利之
同(技術情報グループ統括、技術情報グループ開発長)古沢美行
同(生活情報グループ統括、生活情報グループ開発長)金子隆夫
同(コーポレート担当、関連会社担当、編集担当、出版担当)近藤勝義
監査役大谷清
同新保哲也
同梶原克則
なお、会長の大輝精一氏は退任、取締役の和田洋氏は日本経済新聞社常務執行役員に就任する。
◇河出書房新社
2月24日開催の第53期定時株主総会後の取締役会で以下の通り役員の業務分担を行った。◎昇任、○新任
代表取締役社長(兼管理本部本部長)若森繁男
常務取締役(編集本部本部長兼管理本部副本部長〔総務担当〕)◎小野寺優
同(営業本部本部長兼管理本部副本部長〔製作担当〕兼営業第二部部長)
◎岡垣重男
取締役(営業本部副本部長兼営業第一部部長)
○伊藤美代治
同(編集本部副本部長兼編集第一部部長)○阿部晴政
監査役(非常勤)野村智夫
なお吉田正夫氏は取締役を退任した。

買い切り志向強める/日販wwwカンファレンス

日販は3月10日、東京・港区のザ・プリンスパークタワーで「wwwカンファレンス2010」を開催し、出版社、書店、日販関係者あわせて327名が出席。プロジェクトの現状を報告するとともに、wwwアワードの表彰を行った。
会議の冒頭、日販・古屋文明社長は「機会損失をなくして売上を上げるのがwwwプロジェクトのテーマ。出版物の販売額は約20年前の水準に戻っているが、送・返品合計の総扱い高は約30%増加し、返品率が高くなっている。これを改善しなければ売上が増えない中でコストを吸収することはできない。返品率について、かつてはデータが把握できなかった。現在はITの進化でデータの取得・検証が可能になっている。これを基盤に新しい取引制度の構築を進める。書店、出版社と売上・返品の目標を決めて契約を結ぶ方向に持っていきたい」とあいさつした。
「wwwプロジェクト現状と今後」については鈴木敏夫www推進部長が報告。未刊MD・MD企画・SCMといった商品供給スキームとその効果について説明を行った上で、「SCM実施店は効率的な送品スキームにより返品を抑えながら売上に結び付けることができるようになった」とし、ベストセラー発掘プロジェクトやインセンティブ企画などセールスプロモーションメニューとともに今後も一層充実を図る方向を示した。また、HonyaClubの現状について「会員数は350万名となり、購買履歴データがマーケティング・販売促進に活用されてきている。今後は会員サイトの開設など、より顧客との関係強化に役立つよう進化させる」と話した。
www推進部CRM課の後藤智志氏がHonyaClub会員購買履歴データ分析システム「WIN+(プラス)活用事例」を報告した後、安西浩和常務が「総括と日販の方向性」を説明。「今後はリスク負担を見直した契約の比重を高め、書店への還元金額を増やしていく。出版社との間でも実績を向上させ、売上と返品率に応じたインペナ志向を強めた契約や買切企画を拡大したい」とした。さらに、「委託制度に返品ペナルティを付加して買い切り志向を強めることと、買切制度に不良在庫処理ルールを付加して適用対象を拡大するという二つの考え方を取り入れる」と述べ、業界3者でリスクと利益をシェアする「パートナーズ契約」を進めていく考えを示した。
wwwアワードの表彰では、出版社SCM貢献賞で新潮社と小学館とメディアファクトリー、同MD貢献賞で講談社とダイヤモンド社を表彰。書店は次の各社を表彰した。
▽メニュー徹底部門=すばる、住吉書房、デンコードー▽SCM貢献部門=明屋書店▽HonyaClub会員獲得部門=旭屋書店本店、啓文社

本屋のうちそと

今年もやっと税金の申告が終わった。
ご他聞に漏れず減収減益。なんとか黒字決算となったが、将来を思うと暗澹たるものがある。バイト君が辞め、配達を取りやめたことから、請求書、領収書の発行や年末の源泉調整等の煩雑な仕事がなくなった分幾分か楽な面があったが、棚卸から始まった税金の季節は重苦しい気分だ。
昨年のベストセラーは「1Q84」だけの中、景気が回復して以前と同じように本が売れるようになるかは疑問だ。大量生産・大量流通のビジネスモデルはベストセラーを前提に組み立てられている。これは一億総中流の「大衆」が買い手になっていたため、昨日隣が買ったものを明日は買おうというトレンドがあった。現金がなくてもボーナス払いで買えば良いじゃないかと考えた。
今は何時リストラに遭うか、会社が倒産するか、ましてや数カ月後のボーナスなどは期待が出来ない時代だ。
さらに高度成長期に発生した高層団地を訪れると、かつて子供の甲高い喧騒が鳴り響いていたが、何れから流れてくる線香の香りと静寂。子供は独立して老人と猫の町。人口の減少は都市空間の希薄化をもたらしている。
出版社や取次は企画商品の責任販売制や買い切り制で収益を回復しようとしている。過去の大量販売の成功体験を踏襲するものだ。人口減少(=高齢化・少子化)は所得格差を生じ、小売業の業態・商品の多様化の中、多品種・少量を短時間納品・販売のアマゾンのビジネスモデルが勝ち組となっている。責任販売で大量販売(=ベストセラー)を希求するは「守株待兎」というべし。
(井蛙堂)