全国書店新聞
             

令和3年6月15日号

「秋の読者還元祭」×「本の日」キャンペーン/協業化で規模拡大めざす/5月定例理事会

日書連は5月26日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。10都道府県で新型コロナウイルス対策として緊急事態宣言が発令されていることから、実出席と書面出席、Web出席を併用するハイブリッド形式で行った。読書推進関係では、書店くじに替わる新事業として今春初めて実施した「春の読者還元祭2021」のキャンペーン規模拡大を図るため、今秋実施する「秋の読者還元祭2021」で、「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンと協業化することを承認した。また、矢幡秀治会長は3月と4月に開催された「全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)」の会合の模様を報告し、今後、書店議連の議員を中心に政治への働きかけを強化していく方針を示した。
読書推進委員会の春井宏之委員長は、4月20日~30日に実施した「春の読者還元祭2021」について「まず認知度を上げることを目標にチャレンジしたが、読者からも業界からも評判は良かった。参加店舗数も書店くじ時代より増えた」と手応えを語り、この勢いを維持・拡大するためには、「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンとの協業化が効果的との考えを示した。
「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンは、日書連が事務局を務める「本の日」実行委員会が2019年から実施している。「本の日」の11月1日から始まるキャンペーン期間中、書店でポスターやチラシに記載されたQRコードを読み取ることで応募し、抽選で図書カードネットギフトが当たるもの。日本図書普及が協賛。
賞品総額は、今春の「春の読者還元祭2021」が300万円、昨秋の「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンが200万円だった。これを合わせると500万円になる。春井委員長は「協業化で規模が拡大すれば、当選者や賞品金額が増え、読者にとってより魅力的なキャンペーンになる。認知度向上にも寄与する」と話した。
〔政治への働きかけ強める/書店議連や各県組合地元議員中心に〕
「全国の書店経営者を支える議員連盟」は3月23日と4月21日に会合を開き、図書館関係の権利制限規定の見直し、キャッシュレス推進に伴う手数料負担の増加、再販制度の遵守などについて議論した。日書連から矢幡秀治会長らが出席した。
柴﨑繁副会長は、城内実衆議院議員(静岡7区)が書店の窮状を訴えるなど協力的な姿勢だったと指摘し、地元の吉見光太郎理事(静岡県書店商業組合理事長)へ城内氏にコンタクトをとってほしいと求めた。
吉見理事は静岡組合が取り組んでいる政治への働きかけを報告。城内氏とは、すでに静岡組合常務理事(前理事長)で谷島屋会長の斉藤行雄氏が話し合いの場を持っており、塩野立・元文部科学大臣(静岡8区)とも話していることを明らかにした。吉見理事は上川陽子法務大臣(静岡1区)にデジタル教科書関連の資料を渡すなどして理解を求めているという。
吉見理事は「地元でできることはやったほうがいい。それと並行して、日書連幹部が議員会館を回ることも大切」と述べた。
矢幡会長は「デジタル教科書問題では活字文化議員連盟の笠浩史事務局長や丸山洋司文部科学審議官を訪問し、意見書を手渡した。日書連としてもっと積極的に動く必要がある。各都道府県組合でも地元議員への訴えを行ってほしい」と述べ、政治への働きかけを強化する方針を示した。
《全国の書店経営者を支える議員連盟》
【衆議院】
▽赤澤亮正(鳥取2、幹事)▽伊藤達也(東京22)▽伊東良孝(北海道7、事務局長)▽上杉謙太郎(福島3)▽上野宏史(比例南関東)▽小倉將信(東京23)▽小田原潔(東京21)▽鬼木誠(福岡2、幹事)▽鴨下一郎(東京13、副会長)▽河村建夫(山口3、会長)▽城内実(静岡7)▽木村哲也(千葉4)▽高村正大(山口1)▽小寺裕雄(滋賀4)▽小林茂樹(奈良1)▽齋藤健(千葉7、幹事長)▽坂本哲志(熊本3、幹事)▽左藤章(大阪2)▽繁本護(京都2)▽鈴木隼人(東京10)▽武井俊輔(宮崎1)▽武部新(北海道12、幹事)▽橘慶一郎(富山3、幹事)▽谷公一(兵庫5)▽中曽根康隆(群馬1)▽長島昭久(東京18)▽根本幸典(愛知15)▽馳浩(石川1、副会長)▽鳩山二郎(福岡6)▽原田憲治(大阪9)▽福山守(比例四国)▽平沢勝栄(東京17)▽船橋利実(北海道12)▽古川康(佐賀2、事務局次長)▽松島みどり(東京14)▽松本洋平(東京19)▽三原朝彦(福岡9)▽宮澤博行(静岡3)▽山下貴司(岡山2)▽山田賢司(兵庫7)▽簗和生(栃木3)▽渡辺孝一(比例北海道)
【参議院】
▽猪口邦子(千葉)▽岩本剛人(北海道)▽加田裕之(兵庫)▽髙橋はるみ(北海道)▽豊田俊郎(千葉)▽長谷川岳(北海道、幹事)▽山谷えり子(比例)
※カッコ内は選挙区と議連での役職、五十音順、2021年4月21日現在
〔雑協、付録の重量とかさ高規定を撤廃/書店現場の付録組み負担へ配慮必要〕
日本雑誌協会は「雑誌作成上の留意事項」を2001年以来20年ぶりに大幅に改訂し、ホームページで公開した。「付録の総重量は本誌の重量以内を基準とする」「付録のかさ高の合計は3㎝以内とする」という規定を撤廃。付録の大きさは、折り加工したものも含め、雑誌の底面積を超えないようにし、雑誌の4分の1以上にすることを明記した。また、店頭の陳列を阻害しないよう十分配慮することを求めている。
これについて、柴﨑副会長は「出版社は雑誌を売るために付録が必要で、出来るだけ制約のないように作りたいことは分かる」と理解を示す一方、書店現場にとってはプラス面ばかりではないと指摘。付録組みにかかる労働コストの問題について、今後も雑協と話し合っていきたいと述べた。
このほか理事会では、出版文化産業振興財団主催「JPIC読書アドバイザー養成講座」(実施期間=8月28日~2022年3月27日)への日書連後援名義使用を承認した。
また、各都道府県組合の月次加入・脱退状況については、2月が加入なし・脱退7店で7店純減、3月が加入1店・脱退10店で9店純減、4月が加入1店・脱退18店で17店純減と報告があった。

読書促進事業「やま読ラリー」/今年度は書店と図書館参加で開催へ/山梨総会

山梨県書店商業組合は5月11日、甲府市の割烹きよ春で第33回通常総会を開催し、組合員19名(委任状含む)が出席。役員改選で大塚茂理事長(柳正堂書店)を再任し、渡辺卓史副理事長(卓示書店)、河野洋己専務理事(ブックスステーション)を新任した。
冒頭のあいさつで大塚理事長は、新型コロナウイルス感染症対策を講じた上で総会開催に至ったことを説明し、「時間等の制限はあるが活発な審議をお願いしたい」と促した。山梨読書活動促進事業については、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、当初の予定通り活動できなかった。書店と図書館を巡るスタンプラリー『やま読ラリー』は図書館の参加を見送り、書店のみを巡る方式で実施した。今年度は従来通り図書館にも参加してもらい実施する方向で準備を進めている」と述べた。
続いて大塚理事長を議長に議案審議に入り、令和2年度事業報告、決算報告および監査報告、令和3年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
参加した組合員から「昨年度は廃業等で4店が組合を脱退し、組合員数の減少が続いている。コロナ禍で組合員が集まることが難しい状況が続いている。オンライン会議システムやSNS等を利用して意見交換や成功事例の情報発信などを行い、組合員同士のつながりを大切にしていく必要がある」との意見が出された。(事務局・萩原清仁)

講演会をオンライン配信/上野の森親子ブックフェスタ

子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、出版文化産業振興財団が主催する「上野の森親子ブックフェスタ2021」(日書連など後援)の講演会が5月3日~5日、東京・千代田区の出版クラブビルホールで行われ、オンラインでライブ配信された。
主催3団体のもとに組織する運営委員会では、来場者を想定した講演会を、新型コロナウイルス感染症対策をとった上で開催し、オンラインイベントとしても中継し全国に配信する準備を進めていた。しかし4月23日に緊急事態宣言が再発出されたため、無観客で講演会を開催することを決めた。なお、台東区の上野恩賜公園で例年行っている「子どもブックフェスティバル」は2月に開催中止を決定していた。
今回行われたのは、「マジックと音楽と絵本の世界」「対談児童文学よもやま話」「お笑い芸人たかまつななと笑って学ぶSDGs」「発表!【第2回親子で読んでほしい絵本大賞】~『聞かせ屋。けいたろう』と素敵な仲間たち~」「『辞書引き学習』体験授業!~ことばのちから、ぐんぐんのびる!~」「あんびるやすこ講演会とっておきのおはなし」の6講演。オンライン配信では、チャット機能を使って、視聴者が出演者に希望の曲目をリクエストしたり、質問が多く寄せられたりするなど、ライブ配信ならではのやり取りが多く見られた。

景品規約の適正な運用図る/出版物小売公取協通常総会

出版物小売業公正取引協議会(小売公取協、矢幡秀治会長)は5月26日、東京・千代田区の書店会館で通常総会を開催、理事49名(委任状含む)が出席した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、実出席を少人数に絞り実施した。
総会は石井和之事務局長の司会で進行。矢幡会長が「コロナ禍ということもあってか前年度は相談が少なかったが、日頃商売している中で出てくる景品についての問題を皆さんから寄せてもらい、我々が対応していくことで規約の運用をしっかり行っていきたい」とあいさつした。
続いて矢幡会長を議長に議案審議を行い、令和2年度事業報告、収支決算報告、令和3年度事業計画案、収支予算案を原案通り承認可決した。
事業報告では、「組織及び運営に関する規則」について、現状の法令や小売公取協の実情に合わせて部分的な見直しを行い、今年1月6日付で公正取引委員会、消費者庁から承認を得たことを報告。また規約の運用について、小売公取協に寄せられた相談のうち代表事例4件を説明し、回答内容を解説した。
事業計画については、①出版物小売業公正競争規約の普及と違反防止、規約を更に普及し、正しく運用してもらうための活動(研究会等の開催)、②景品表示法をはじめとする関係法令の研究、③一般消費者、消費者団体並びに出版業界団体との連携、④関係官庁との連絡、⑤広報活動――の方針を決定した。
今回は、消費者庁表示対策課の西川康一課長から書面であいさつが寄せられた。この中で西川課長は、景品表示法の運用について、令和2年度は消費者庁は33件の措置命令、都道府県は8件の措置命令を行ったと報告。「消費者庁は引き続き景品表示法に違反する行為には厳正な対処を行っていく。小売公取協をはじめとして各公取協による厳正な規約の運用は、景品表示法の効果的な施行や消費者による合理的な商品・サービス選択に不可欠だ。引き続き、公正競争規約の適正な運用を通じ、出版物小売業の健全な取引のために尽力されることを期待する」とした。

休配日数の促進に取組む/常務理事に川村興市氏(楽天BN)/取協総会

日本出版取次協会(取協)は4月21日に東京・千代田区の出版クラブビルで第69回定時総会を開催し、令和2年度事業報告、収支決算を承認。任期満了に伴う役員改選を行い、常務理事に川村興市氏(楽天ブックスネットワーク)が新任、その他の役員は重任した。
平林彰会長(日本出版販売)はあいさつで「2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、社会全体が様々な課題や困難に直面した。出版業界は非常に厳しい環境が続いているが、今年度の事業計画において、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた現状の様々な制約を見直すことを柱に安定的、効率的な出版流通改革への取り組みを推進していく」との方針を示し、特に年間稼働日において休配日数の促進を行い、早期に週5日以内稼働を目指すこと、雑誌・書籍の搬入業量平準化をさらに推進することを掲げた。
令和3年度事業計画における推進・重要テーマは、持続可能な出版流通構造の推進として、①休配日及び完全休配日の拡大、②雑誌・書籍の搬入業量改善の検討、③輸配送面の検討、④BCP(事業継続計画)――を進めることを決定。また、日本出版インフラセンターの出版情報登録センターへの近刊情報登録及び内容登録の充実促進、再販制度の弾力運用(時限再販・部分再販)の拡大と実績向上を掲げた。さらに、23年10月1日に導入されるインボイス制度について、20年度途中に新設したインボイス対策委員会において、取次各社の情報共有や今後の対応を検討・確認していくとした。
[取協役員体制]
○印は新任
▽会長=平林彰(日本出版販売)
▽常務理事=近藤敏貴(トーハン)、○川村興市(楽天ブックスネットワーク)、森岡憲司(中央社)、渡部正嗣(日教販)、貝沼保則(協和出版販売)
▽理事=奥村景二(日本出版販売)、田仲幹弘(トーハン)、安西浩和(日本出版販売)
▽監事=岩田浩(共栄図書)、山本和夫(公認会計士)

日書連のうごき

5月7日全出版人大会に矢幡会長、渡部副会長が出席。
5月10日日書連監査会に矢幡会長、葛西、小泉両監事が出席。
5月13日全国書店再生支援財団臨時理事会に平井理事が出席。JPO運営委員会に事務局が出席。
5月14日JPIC団体事務局打合せに事務局が出席。
5月19日JPO運営幹事会に事務局が出席。東京都書店商業組合総代会に事務局が出席。
5月20日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。読書推進運動協議会理事会に矢幡会長、春井副会長(Zoom)が出席。
5月21日本の日実行委員会に矢幡会長(Zoom)が出席。
5月24日日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。
5月26日出版物小売業公正取引協議会総会に矢幡会長、柴﨑副会長、渡部、春井、平井各理事が本人出席。5月定例理事会に矢幡会長、柴﨑、渡部、春井各副会長、平井理事、葛西監事が本人出席。

「春夏秋冬本屋です」/「売り場は『世界の縮図』」/千葉・ときわ書房本店文芸書・文庫担当・宇田川拓也

本屋の店員になって21年。振り返ると、数々の得難い経験や貴重なご縁に恵まれてきたが、そのなかで美達大和氏とのつながりは常々ありがたいと思っている。
2012年、小説『塀の中の運動会』について拙いレビューを書かせていただいたことがきっかけで、以来ご著書を上梓される都度、ご恵贈くださる間柄が続いている。
美達氏は無期懲役囚として服役しながら執筆活動を行なっている。近著に『罪を償うということ自ら獄死を選んだ無期懲役囚の覚悟』(小学館新書)、『塀の中の残念なおとな図鑑』(主婦の友社)があり、毎月100冊以上の本を読み、これまでに8万冊を読破した読書人でもある。
こうした経歴を持つ著者の書籍を扱うことに否定的な向きもあるだろう。だが私は、本屋の売り場とは光も闇も混在する「世界の縮図」であるべきだと考える人間である。無期懲役囚という立場だからこその問題提起と塀のなかのリアルを綴った内容は、ゆえに私が耕し整える棚と平台からは欠くことができない。私には私の品揃えに対する覚悟があるのだ。
今後、美達氏に直接お目に掛かる機会が訪れることはないだろう。何度か手紙をしたためてみようかとも考えたが、博覧強記の目を汚すだけにしかなるまい。できることはただひとつ、売り伸ばしに努めるのみである。

「トーハン施策説明会」オンラインで動画配信/「本業の復活」新局面に入る/近藤社長「書店粗利改善は必須」

トーハンはオンライン施策説明会の動画を5月10日~24日まで配信し、近藤敏貴社長が2021年度全社方針、川上浩明副社長が営業施策を説明した。例年は4月に全国トーハン会代表者総会に書店や出版社など主要取引先を招き方針説明を行っているが、昨年に続き今年も新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止とし、代わりにオンラインで動画配信を行った。
近藤社長は、20年度の業績を発表。単体売上高は3990億円(前年比104・0%)となり、目標を超過して達成。重要指標の返品率も36・2%(同3・4ポイント減)と改善。効率販売の徹底に加え、種々の施策の成果が利益改善に貢献した。この結果、単体・単体ともに増収増益の見込みと報告した。コロナ禍の巣ごもり需要や「鬼滅の刃」の社会現象化が好業績につながったが、あくまでも「一時的な特需」「一過性の好況」と気を引き締め、20年度も物流コストの高騰は続き、取次業が構造的な赤字状態に陥っていることに変わりはないと危機感を示した。
5ヵ年中期経営計画「REBORN」3年目の21年度全社方針については、「出版流通ネットワークの再構築」「旧来の取次事業モデルのアップグレード」を推進するとして、同計画の2つの基本方針「本業の復活」「事業領域の拡大」の取り組みを説明した。
「本業の復活」では、出版流通ネットワークの安定維持のため、効率販売を徹底し、計画最終年度の目標である返品率34・1%を前倒しで達成すると目標を掲げた。さらに、日販との物流協業の推進、昨年度から出版社に要請している物流コストの負担配分の見直しも行う。
また、マーケットイン型出版流通を具体化するため、流通の起点を読者や書店ニーズへと移していくことを目指す。新仕入プラットフォーム構想は、書店店頭での事前予約などのマーケット情報を仕入配本システムに組み込んでいくもので、JPROの書誌情報やTONETSネットワークとシームレスに連携し、AI(人口知能)を活用したプラットフォームを構築する。23年度中の本稼働を目指す。「トーハンの配本・仕入れが大きく変わる」と自信を示した。
さらに、書店業が持続可能な事業となることが重要として、そのためには「書店の粗利改善が必須」と指摘し、実現に向けてマーケットイン型販売契約を提案していることを説明。適量仕入れと実売の改善による流通部数の最適化を書店粗利改善の原資とする考えを示し、「書店業を再生しない限り、出版流通に未来はない。そのくらいの危機感と覚悟を持ってこのスキームの成功に向けて努力する」と決意を語った。
本業とのシナジーを追求した新規事業開発、メディアドゥとの資本・業務提携を第一歩とするデジタル領域への参入にも言及した。メディアドゥとの提携では「リアル書店での電子書籍販売事業」「電子図書館事業、オーバードライブ事業」「デジタル教科書・デジタル教材の流通事業」に取り組むことを説明した。
中期経営計画の第2の柱である「事業領域の拡大」については、先行する不動産事業で最大資産である旧本社跡地の活用を図る。フィットネス事業とコワーキングスペース事業はアフターコロナを見据えて戦略を見直し、店舗拡大を検討する。
経営計画が折り返しの3年目を迎える21年度は、5月10日に新社屋での営業が始まり、デジタル領域への新たな挑戦も始まる。近藤社長は「経営計画は新局面に入り、第2の創業期を迎えた。ここからトーハンの復活劇が始まる」と今後の事業展開へ意欲を示した。
続いて、「全国トーハン会プレミアムセール」の入賞会を発表。年間総合1位は山陰トーハン会、2位は岡山トーハン会、3位は四国トーハン会。店頭書店向けコンクール「プレミアム+(プラス)」は、1位が宮崎トーハン会、2位が大分トーハン会、3位が広島トーハン会だった。
山陰トーハン会の古泉淳夫代表幹事は「1冊1冊をお客様のところに届ける、説明するということを、会員各店が一生懸命にやった結果が、年間1位につながった」とビデオメッセージで喜びを語った。
川上副社長は、「従来の紙の出版流通」「オリジナルグッズ開発、ポップアップショップ展開」「デジタル領域での出版コンテンツ流通」「デジタル技術を活用した体験・イベント」の5つのアプローチで書店の魅力・付加価値を高めていくと営業施策を説明した。

トーハン、書店向けセルフレジの導入開始/図書カード読み取り端末も標準装備

トーハンは、書店向けセルフレジ「POSVセルフ」を開発し、4月22日より店舗への導入を開始した。
このセルフレジは図書カード読み取り端末を標準装備し、磁気カード、QRコード(図書カードNEXT)の両方に対応。また、現金、クレジットカード、交通系ICカード、共通ポイント(Ponta、楽天ポイント、dポイント)、eBSM(e‐honブックショップメンバーズ)、書店オリジナルポイントなど各種ポイントカードにも対応している。電子マネーやQRコード決済にも順次対応予定。
月額利用料金は、クレジットカードや交通系ICで決済する標準料金が3万円。オプションとして、現金決済は2万2900円、共通ポイント決済・付与は7000円。いずれも税別。
既存のPOSレジ「POSV」開発で実績があるメトロコンピュータサービスと共同開発。「POSV」導入済み店舗では、周辺機器の追加とソフトウェア改修により、「POSVセルフ」に転換することもできる。

4月期販売額は9・7%増/前年に休業店が相次いだ影響で大幅増/出版科研調べ

出版科学研究所調べの4月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比9・7%増となった。
内訳は、書籍が同21・9%増、雑誌が同1・8%減。前年同月は新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が初めて発出され、休業または時短営業する書店が相次いだ。この影響で書籍は同21・0%減と激減していた。今年も4月25日に4都府県を対象とした同宣言が発出されたが、休業する書店は少なく、発行・販売ともに大きな影響は見られなかった。このため、書籍は大幅増となった。雑誌の内訳は月刊誌が同0・7%減、週刊誌が同8・2%減。月刊誌はコミックスの伸びが落ち着き、微減となった。
書店店頭の売り上げは、前年に休業店が相次いだ影響で大幅な増加となり、前年比のみでは実勢が読みにくい状況となっている。書籍は約14%増。前年に激増した学参以外はいずれも大幅なプラスとなった。文芸書は、本屋大賞を受賞し累計40万部を突破した『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)を筆頭に売れ行きが好調で、約40%増。
雑誌の売り上げは、定期誌が約3%増、ムックが約4%増。コミックスは約6%増。コミックスは『僕のヒーローアカデミア』(集英社)などが伸長。前年同月は有力新刊が集中し、『鬼滅の刃』(集英社)の勢いがすさまじかったため、増加幅は小さくなった。

『こども六法』姉妹本を発売/小学館、新企画7銘柄を発表

小学館は5月19日、オンラインで新企画発表会を開催。『こども六法NEXTおとなを動かす悩み相談クエスト』など注目の銘柄7点の著者や編集者が登壇し、作品の魅力をアピールした。また、7月16日に東京・中央区の東急プラザ銀座6階に体験型施設「ZUKANMUSEUMGINZApoweredby小学館の図鑑NEO」を開業すると発表した。
はじめに相賀昌宏社長があいさつし、「小学館はブランド力、読者との信頼関係を大事にしている。一方、自社の出版物が他社の出版物と関係していることも知っており、弘文堂『こども六法』と小学館『こども六法NEXT』は、両社が宣伝と販売で協力している。読者目線で露出しなければいけない」と述べた。
4月14日発売の『こども六法NEXTおとなを動かす悩み相談クエスト』(定価1210円)は、2019年夏に弘文堂が発売した『こども六法』の姉妹本。『こども六法』で身につけた法律の知識をもとに、誰にどう相談すればいいのかなどを分かりやすく解説した1冊。こどもが知識をつけることでいじめや虐待を防ぐ「こども六法プロジェクト」の一環として、講談社や幻冬舎など出版社の枠を越えて関連書籍の発行が続いている。
監修の山崎聡一郎氏は「この本には小学館ならではの特色がある。今まで蓄積してきた子供にアプローチするノウハウが、小学館でしか出せない本として凝縮されている。漫画、解説、対談も楽しく読むことができる」と話した。
このほか、夏川草介氏がコロナに立ち向かった小さな病院の知られざる物語を描いた『臨床の砦』(4月23日発売)、橘玲『無理ゲー社会』(7月29日発売予定)、Atsushi『もっとやせる!キレイになる!ベジたんサラダ50』(5月19日発売)、『365日ポジティブ脳で幸運体質!アンミカ手帳2022(仮)』(今秋発売)、今夏アニメ化が決定した累計発行部数42万部超リアル猫漫画の公式ファンブック『俺、つしまBOOK』(6月22日発売)、小学館の図鑑NEO『深海生物DVDつき』(6月24日発売)を紹介した。

岐阜組合、総会開催日を変更

岐阜県書店商業組合は第38回通常総会の開催日を、当初予定していた6月28日(月)から6月30日(水)に変更すると発表した。開会時間は午後1時、会場は岐阜市・岐阜県教販で、変更はない。

日販と楽天ブックスネットワーク/10月から協業範囲拡大で合意

日本出版販売(日販)は6月1日、楽天ブックスネットワーク(RBN)と協業範囲の拡大について合意したと発表した。
両社はこれまで、2003年12月より返品物流業務、2016年3月より新刊送品物流業務について協業を行うとともに、書店数の減少や物流経費の高騰など、昨今の市場環境の大きな変化に対応し、業界全体の流通効率化を図るための検討を重ねてきた。そして2021年2月より、将来にわたり持続可能な出版流通を実現することを目的に、協業範囲の拡大について協議を開始し、以下の内容で合意した。
1、RBN一部帳合書店分の雑誌・書籍・開発品送品業務で協業する。
・物流業務を日販の流通センターで受託する。
・物流受託する商品の仕入業務を日販が受託する。
2、店頭客注を支援するサービスを共同で推進する。
3、協業範囲の拡大は2021年10月から開始する。

4月期は4・8%増/全ジャンルで前年超え/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの4月期店頭売上は前年比4・8%増。前年、緊急事態宣言の影響で休業店が発生し、大幅なマイナスとなっていたことを主な要因として、雑誌、書籍、コミック、開発品の全ジャンルで前年超えとなった。
雑誌は0・6%増。月刊誌は、「Myojo6月号」(集英社、表紙=HiHiJets)、「BE-PAL5月号」(小学館、付録=SHO’S肉厚グリルパン)が売上を牽引した。週刊誌は、4月1日発売の「最強ジャンプ」(集英社)、4月7日発売の「anan」(マガジンハウス、表紙=櫻井翔、広瀬すず)が売上を伸ばした。
書籍は7・9%増。学参を除くすべてのジャンルで前年超えとなった。文芸書は、本屋大賞受賞作の町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)や東野圭吾『白鳥とコウモリ』(幻冬舎)が好調だった。実用書は、日向坂46『日向坂46写真集日向撮VOL01』(講談社)、東映『スーパー戦隊』(学研プラス)が売上を牽引した。学参は前年同時期に小中学校等に一斉休校要請が出て、学習ドリル等の売上が拡大した反動で大幅減となった。
コミックは2・7%増。19ヵ月連続の前年超えとなり、好調を維持している。雑誌扱いコミックは、原泰久『キングダム61』(集英社)、川上泰樹『転生したらスライムだった件17』(講談社)、堀越耕平『僕のヒーローアカデミア30』(集英社)が売上を伸ばした。書籍扱いコミックは、蝉川夏哉『異世界居酒屋「のぶ」12』(KADOKAWA)、木野咲カズラ『誰かこの状況を説明してください!~契約から始まるウェディング~5』(フロンティアワークス)が売上を牽引した。
開発品は11・0%増。

日販GHD決算、8期ぶり増収/取次事業も3期ぶり黒字転換

日販グループホールディングス(日販GHD)は5月26日、2020年度決算(20年4月1日~21年3月31日)を発表。日販グループ(連結子会社34社)の売上高は5210億1000万円(前年比100・7%)と、2012年以来8期ぶりの増収となった。コミックス売上の大幅な伸長と新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり需要で、取次事業と小売事業の売上げが増えた。
営業利益は41億5100万円(同167・8%)、経常利益は44億2000万円(同181・0%)。増収による売上総利益の増加に加え、返品率削減による取次事業の販売費比率の改善、固定費の削減が貢献した。親会社株主に帰属する当期純利益は24億3900万円(同312・2%)と、利益面でも大幅な増益となった。
事業別では、取次事業が2017年以来3期ぶりに営業黒字に転換し、小売事業、雑貨事業、コンテンツ事業も増収増益となった。一方、コロナの影響を強く受けた海外事業、エンタメ事業は減収減益、不動産事業も減益となった。
取次事業は売上高4792億7000万円(同100・7%)、営業利益11億7500万円(前年は3400万円の損失)、経常利益13億7300万円(同542・4%)。店頭売上の回復に加え、日本出版販売(日販)が取り組むマーケット需要に基づく送品施策や低返品・高利幅スキームの推進、МPDが取り組む買切スキームの拡大などが複合的に作用し、送品高の減少を上回る返品高の減少を実現。流通コストの減少に加え固定費の削減も要因となり、黒字化した。
小売事業は売上高621億2100万円(同101・8%)、営業利益3億2800万円(同1876・0%)、経常利益3億3600万円(同667・0%)で、大幅な増益となった。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言の発出により、大型商業施設内店舗の一時的な休業や営業時間短縮などの影響があったが、それを除けば、年間を通して好調に推移した。グループ書店の新規出店は8店舗、閉店は14店舗で、2021年3月末時点の店舗数は245店舗となった。
海外事業は売上高62億8900万円(同91・7%)、営業利益1億6900万円(同79・4%)、経常利益1億6800万円(同75・6%)。
雑貨事業は売上高24億9500万円(同129・1%)、営業利益1億1000万円(同1224・6%)、経常利益1億6100万円(同142・1%)。
コンテンツ事業は売上高19億4600万円(同112・5%)、営業利益5億4900万円(同107・0%)、経常利益5億5300万円(同108・0%)。
エンタメ事業は売上高12億7900万円(同73・6%)、営業損失1500万円(前年は6100万円の利益)、経常損失1600万円(前年は6100万円の利益)。
不動産事業は売上高30億8900万円(同104・8%)、営業利益11億2200万円(同96・0%)、経常利益10億4600万円(同93・0%)。
その他事業は売上高89億1800万円(同168・1%)、営業利益1億7500万円(同165・1%)、経常利益3億5000万円(同65・6%)。
日本出版販売(日販)単体の売上高は4201億5100万円(同196・6%)、営業利益は10億1400万円(前年は2億5300万円の損失)、経常利益は11億5500万円(前年は4100万円の損失)、当期純利益は3億9600万円(前年は2億8200万円の損失)と黒字に転換した。
商品別売上高は、書籍が2045億100万円(同99・8%)、雑誌が1091億7000万円(同88・4%)とマイナスとなった一方、コミックスは880億2400万円(同130・6%)、開発品は271億4200万円(同100・9%)と増加した。
返品率は、書籍28・7%(2・2ポイント減)、雑誌47・1%(同0・3ポイント減)、コミックス19・7%(同6・1ポイント減)、開発品36・0%(同4・8ポイント減)、合計33・6%(同3・1ポイント減)と改善した。書籍返品率が20%台の水準になったのは29年ぶりのこととなる。