全国書店新聞
             

令和5年11月1日号

全国の書店組合加盟店舗2598店/半年で67店減少/新規加入3店、脱退70店

10月1日現在で日書連会員の45都道府県書店商業組合に加盟する店舗数は、4月1日対比で67店減(2・5%減)の2598店になったことが組織委員会(安永寛委員長)の調査で分かった。
この半年間の新規加入は3店だったのに対し、脱退は70店。組合加盟店舗が増加した組合はなし。前年と同数は、青森、秋田、岩手、群馬、石川、福井、奈良、和歌山、鳥取、徳島、愛媛、熊本、大分、宮崎、沖縄の15組合。30組合は組合加盟店舗数が減少した。
この半年間で新規加入があった組合は東京、愛媛、福岡(いずれも1店)の3組合。残る42組合は新規加入ゼロだった。一方、脱退があった組合は30組合で、脱退数が多い順に①福岡(9店)、②大阪(6店)、③静岡(5店)、④宮城、広島(4店)、⑥北海道、千葉、京都、兵庫(3店)、⑩埼玉、東京、岐阜、三重、長野、島根、高知、佐賀、長崎(2店)、⑲山形、福島、茨城、神奈川、山梨、愛知、新潟、富山、滋賀、岡山、香川、鹿児島(1店)。
脱退数から加入数を差し引いた半年間の純粋な減少数では、減少数が多い順に①福岡(8店減)、②大阪(6店減)、③静岡(5店減)、④宮城、広島(4店減)、⑥北海道、千葉、京都、兵庫(3店減)。減少率でマイナス幅の大きい順に見ると、①佐賀(9・1%減)、②島根(8・7%減)、③広島(7・5%減)、④長崎(6・3%減)、⑤高知(5・9%減)、⑥岐阜、福岡(4・8%減)、⑧静岡(4・7%減)、⑨山梨、三重(4・2%減)。
組合加盟店舗数の多い組合は、①東京(263店)、②大阪(169店)、③福岡(160店)、④愛知(126店)、⑤兵庫(114店)、⑥京都(107店)、⑦埼玉(105店)、⑧静岡(101店)、⑨宮城(96店)、⑩茨城、千葉(75店)の順。
一方、少ない組合は、①高知(16店)、②徳島、佐賀、宮崎(20店)、⑤島根(21店)、⑥青森、山梨(23店)、⑧秋田、鳥取(24店)、⑩香川、愛媛(25店)の順だった。
各都道府県書店商業組合に加盟する店舗数は1986年(昭和61年)の1万2935店をピークに前年割れが続いている。10月1日現在の組織規模は、ピーク時の5分の1に縮小した。

「帯コン」表彰式、11月11日に開催/大阪組合

大阪府書店商業組合は10月14日、大阪市北区の組合会議室で理事会を開催。2023第19回大阪こども「本の帯創作コンクール」(帯コン)の最終審査会を10月2日に行い、応募作品1万9022点の中から受賞作品93点を決定したことを報告した。表彰式は11月11日午後2時、東大阪市の大阪府立中央図書館ライティホールで開催する。
(石尾義彦事務局長)

「BOOKMEETSNEXT」オープニングイベント/川上未映子氏、神永学氏、本と書店の魅力を語る

秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」は10月27日~11月23日の28日間、全国一斉に開催。第2回目となる今年は、前年よりさらにパワーアップし、全国各地で本にまつわるイベント、書店店頭でのキャンペーンが予定されている。11月8、9日には「KYOTOBOOKSUMMIT」(京都ブックサミット)と題し、豪華ゲストによる講演会や対談、DX化の未来についての展示などが行われる。日書連など後援。
オープニングイベントの冒頭、主催者を代表してあいさつした同運営委員会の高井昌史運営委員長(紀伊國屋書店会長兼社長)は、期間中に行われる各種イベントを紹介し、「このキャンペーンを通じて本の魅力、書店の楽しさを伝えることで、全国の書店にお客様が足を運ぶきっかけにしたい」と述べた。
全国の書店数は過去20年で半減しているが、読書推進に果たす書店の役割はますます重要になっていると指摘。「日頃からの読書習慣が大切なことは誰もが認めること。身近な書店での新たな本との出会いがあって読書の楽しさの発見があり、読書習慣が身についていく。この取り組みが一定の成果を出し、読者と書店に喜んでもらえるよう努める」と話した。
事務局を務める出版文化産業振興財団(JPIC)の松木修一専務理事によるキャンペーン概要説明に続いて、今年のアンバサダーを務める池上彰、増田ユリヤ(ジャーナリスト)、谷原章介(俳優)、村田諒太(ボクシングのロンドン五輪金メダリスト)の4氏がビデオメッセージを寄せ、それぞれ本と書店への思いを語った。
この後、第1部として作家の川上未映子氏が書評家の渡辺祐真氏を聞き手に、「言葉で世界とつながること」と題してトークショーを行った。
川上氏は「本は人生を変えてしまいかねない危険なもの。読書は覚悟がいる」という持論を披露。「誰しも挫折に直面するが、自分の孤独や痛みを代わってくれる人はいない。本を読むと、苦しんだ人がどう過ごしてきたかが書いてあり、孤独なのは自分だけではないと分かる」と語った。
高校卒業後に書店でアルバイト経験のある川上氏は、「今までいろいろな仕事をしてきた中でも、いい思い出の数年間。私が手に取ってほしいと思う本をお客様が買ってくれると『よし!』と思う。その感覚は今も残っている」と振り返り、「書店はどんな人でもどんな状況でも紛れることのできる空間。いつもそこにあってくれるものであってほしい」と話した。
第2部では作家の神永学氏が登壇し、「本嫌いだった私が小説家になった理由」と題して講演した。
神永氏は、高校を卒業するまで本を読んだことがまったくなかったが、それがどのようにして本好きになったかというエピソードを披露。また、デビュー作『心霊探偵八雲』は今でこそシリーズ累計発行部数750万部に達するが、刊行した当時は売れずに苦戦し、書店員の熱意でブレークしたことに触れ、「本来なら私のような自費出版出身で受賞歴のない無名の作家はそのまま消えていたはずだが、なぜ生き残ったかというと、明正堂アトレ上野店の書店員が150冊仕入れ、私の本で棚を埋め尽くしてくれた。こちらが心配になって『大丈夫か?』と言うと、その書店員は『売れる本を売るのは当たり前。売れない本をいかに売るかが書店員の腕の見せ所。君の本は面白いから間違いなく売れる』と背中を押してくれた。私が20年書き続けてこれたのも、書店員1人1人が面白い本を届けたいと読者に薦めてくれたおかげ」と感謝した。
こうした特別な経験から神永氏は出版不況について「悲観していない」という。「書店員の熱はまだ失われていない。私のような書店員発の作家が増えることも、本を広めていくための一つの方法。書店員の皆さんは本の面白さをアピールするために熱をもって出版業界を盛り上げてほしい」とエールを送り、「私も本嫌いだったからこそできるやり方で、本を広める活動を進めていきたい」と抱負を語った。

香川組合総会/宮脇範次理事長を再任/経営環境悪化、組合員数減少に危機感

香川県書店商業組合は8月18日、高松市のホテルパールガーデンで令和5年度通常総会を開催し、宮脇範次理事長(宮脇書店)を再任した。
組合員22名(委任状含む)が出席した総会は、髙木敏彦事務局長の司会で進行し、はじめに宮脇理事長があいさつ。「コロナの影響も緩やかになり、通常の経済活動が再開されるようになった。一方、書店業界は輸送問題や最低賃金の上昇などで経営環境の悪化が続いている。さらに高齢化に伴う後継者不在のため、廃業などで組合員数の減少が続いている」と述べた。
続いて宮脇理事長を議長に議案審議を行い、令和4年度事業報告、決算報告、監査報告、令和5年度事業計画案、予算案などを原案通り可決承認した。
任期満了に伴う役員改選では理事6名、監事2名を選出。その後の理事会で宮脇理事長を再任した。また、副理事長に黒川洋一氏(黒川書店)を選任した。
[香川組合役員体制]
▽理事長=宮脇範次(宮脇書店)
▽副理事長=黒川洋一(黒川書店)
▽専務理事=髙木敏彦(員外)
(髙木敏彦事務局長)

連載コラム「春夏秋冬本屋です」~阪神タイガース優勝!~/京都・宮脇書店亀岡店代表取締役・服部義彌

あまりよく知らない人と話すときに政治と宗教とプロ野球の話はしない方が喧嘩にならなくてよいと言われますが、今年は18年ぶりの優勝なので何卒ご容赦いただいて書いてみたいと思います。
今年は本当に強かったと思います。特に京セラドームでは負けなしでした。私も今年はよく現地観戦したのですが、半分ぐらい京セラ(雨中止が嫌なので)での観戦でしたので甲子園での1敗だけですみました。
印象的だったのは開幕2戦目のベイスターズ戦です。1戦目快勝後の今年初観戦。大きな期待を持って臨んだのですが、いきなり初回4失点。今年も5割付近をうろうろするのかなと一瞬思いましたが、あれよあれよと同点に追いつき、引き分け寸前の12回裏2アウトランナー無しからヒット、四球、ヒットで満塁から、近本選手のヒットでサヨナラ勝ちしました。四球でつなぐ下位からのつなぎで得点する今年の強み・勝利パターンが見えた試合ではなかったかと思います。
1985年、2003年、2005年の時も嬉しかったですが、今年は家族で観戦に行ったことが多かったこともありひとしおです。
この投稿が掲載されるころには関西ダービーも終わり日本一が決まっていることでしょう。1985年以来38年ぶりの日本一を祈念しておきます。そう言えば38年前の日本シリーズも結婚前の家内と一緒に見に行きました。

都内の本屋が謎解きスポットに/「本屋巡り謎解きゲーム」開始/東京都書店組合

東京都書店商業組合は10月3日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
謎解き・デジタルサイネージ特別委員会は東京都中小企業団体中央会の委託事業を活用して取り組む「黙示録の四騎士×本屋巡りLINE謎解きゲーム」の進捗状況を報告した。TVアニメ「七つの大罪黙示録の四騎士」とコラボして行うもので、都内の本屋を謎解きスポットとして巡り、頭と身体を使って謎を解く体験型ゲーム。新しい本屋の楽しみ方を提供することを目指す「明日にも、本屋さんを」プロジェクトの一環として実施する。第1弾「本の迷宮からの脱出編」を10月27日~来年2月12日、第2弾「謎の聖騎士との対決編」を12月1日~来年2月12日、都内180店舗で開催する。送られた謎パネルは必ず店頭に掲示するよう求めた。
デジタルサイネージのディスプレイについては希望書店75店舗に順次設置中だが、数に余裕があるので希望する書店は東京組合事務局に連絡するよう伝えた。また、マガジンハウスの絵本『おだんごとん』に関しては、組合オリジナル小冊子に著者ガタロー☆マンの描き下ろしイラストが掲載されることもあり奮って注文するよう呼びかけた。
事業・増売委員会では、令和5年度読者謝恩図書カードについて、協賛を得た出版社の状況を報告。事務局販売は11月29日から行いたいと説明した。
厚生・倫理委員会は、4年ぶりとなる新年懇親会を来年1月16日(火)午後5時30分より、東京・文京区の東京ドームホテル地下1階「オーロラ」で開催すると報告した。
また、書店経営研修会を11月24日に東京・千代田区の書店会館で開催する。キャッシュレス推進協議会事務局長常務理事の福田好郎氏が「キャッシュレス決済のこれからの動向について」をテーマに講演する。

東日本地区書店楽結会懇親会/楽天ブックスネットワーク・川村社長「地域書店のサポート続ける」

楽天ブックスネットワークの取引書店が組織する「東日本地区書店楽結会」は、4年ぶりとなる懇親会を10月6日に東京・千代田区のアルカディア市ヶ谷で開催し、会員書店、出版社など145名が出席した。
はじめに髙橋小織幹事長(BOOKS隆文堂)があいさつに立ち、同会の前身は大阪屋栗田の「Oak友の会」だったが、2020年に取次の社名変更に伴い「楽結会」に名称変更したと説明。相次いで逝去した同会前幹事長の奥村弘志(南天堂書房)、Oak友の会連合会会長を務めた田村定良(田村書店)、大阪屋栗田の社長を務めた大竹深夫の3氏に対し弔意を示した。そして、書店の厳しい状況が続くなか、楽天ブックスネットワークの取引書店もおよそ40店が廃業したと報告しつつ、「街の書店が協力して前進していきたい」と訴えた。
来賓祝辞では、まず河出書房新社の小野寺優社長が登壇した。今年に入って生活必需品の値上げが書店への来店客数に影響し本離れの傾向がみられるが、人々が本に対する興味を失ったという考えには違和感があるとし、「今、何をすべきかというと業界をあげて書店にお客様を誘導すること。あらゆる手段を使って普段は書店に足を運ばない人が来店するきっかけとなる情報を発信し、誘導する。『BOOKMEETSNEXT』はその手段となるよう皆で育てていかなければならない。私たちの仕事は著者が精魂込めて書き上げた作品を、多くの人に買っていただくこと。新たな読者を育て、市場が拡大していく方法を考えたい」との見解を示した。
続いて楽天ブックスネットワークの川村興市社長は2020年に社長就任以来、赤字解消のため図書館事業の撤退、社員の楽天への出向を行ったが、根幹である取次事業のコストを自前で用意できず、日本出版販売への業務委託を決断するに至ったことを説明、書店には迷惑をかけたと謝罪した。赤字は解消しつつあるが今後も改善は必要と語る一方、明るい話題として「来年店舗をオープンする取引先もある。こうした地域書店へのサポートは続けていく」と述べた。
この後、日書連の矢幡秀治会長が乾杯の発声を行い、「書店は読書推進と書店の売上げアップの2つを掲げて活動している」と説明。出版社と取次はこの点を理解の上、一層の協力をお願いしたいとあいさつした。

講談社/「本田靖春ノンフィクション賞」「科学出版賞」の贈呈式開催

講談社は9月14日、東京・千代田区の東京會館で第45回講談社本田靖春ノンフィクション賞と第39回講談社科学出版賞の贈呈式・祝賀会を開催した。ノンフィクション賞は伊澤理江氏『黒い海船は突然、深海へ消えた』(講談社)、科学出版賞は椛島健治氏『人体最強の臓器皮膚のふしぎ最新科学でわかった万能性』(講談社)が受賞した。伊澤氏の作品は第54回大宅壮一ノンフィクション賞も受賞している。
はじめに講談社の野間省伸社長があいさつ。伊澤氏の作品について「王道のノンフィクションでありながら上質のミステリー小説を読んでいるような気持ちにさせられた」、椛島氏の作品について「あらゆる能力を持つスーパー臓器である皮膚のことを最新の皮膚医学の知見をもとに科学的に紹介している」と評した。
受賞した伊澤氏は「取材に協力してくれた専門家から『当時、この事故は絶対におかしいと思ったが、自分以外の誰がそう思っているか分からなかった。あなたは散らばった点と点をつなぎ問題を明るみに出した。それはジャーナリストにしかできない仕事』と言われた。志をもって仕事を続けていく上で忘れがたい言葉となった」と話した。
椛島氏は「コロナ禍で、日本人はマスコミの情報で混乱していると思った。きちんとした一般書を、サイエンスに基づいた分かりやすい言葉で書く重要性を感じた。文章を書くのは難しく今回が最初で最後になると思うが、これからも皮膚病の克服に向けて研究と臨床を続ける」と語った。

8月期販売額は11・3%減/返品率の上昇が顕著に/出版科学研究所調べ

出版科学研究所調べの8月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比11・3%減だった。内訳は、書籍が同10・6%減、雑誌が同12・0%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同12・0%減、週刊誌が同12・0%減。
書籍・雑誌ともに二桁減となり、書籍は出回り金額が同7・2%減と大きく落ち込む一方で返品は増加。雑誌は『ONEPIECE』『呪術廻戦』(いずれも集英社)などの大物新刊が7月に刊行された影響で、大幅減となった。
返品率は書籍が同2・3ポイント増の40・2%と4か月連続で40%を超えた。雑誌も同2・6ポイント増の44・4%と50%に迫る勢いと、返品率が急速に悪化している。
8月期の書店店頭の売行きは、書籍が約6%減。学参は約6%増と健闘をみせ、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社)は累計発行部数が50万部を突破した。一方、文庫は約10%減、児童書は約7%減と低迷した。
雑誌は、定期誌・ムックが約5%減、コミックスは約15%減となった。

東北日販会/藤原会長「本の価格アップを」/書店収益改善へ、出版社に英断求める

東北日販会は10月12日、仙台市青葉区のウェスティンホテル仙台で第18回総会を開催し、総勢120名が出席した。書店会員、出版社会員、日販関係者が一堂に会しての開催は4年ぶり。あいさつに立った藤原直会長(金港堂)は、書店収益改善のため本の価格アップを訴えた。
総会は成田耕造青森ブロック長(成田本店)の司会で進行し、冒頭、藤原会長があいさつした。
藤原会長は、10月11日に仙台で開かれた「第75回中小企業団体全国大会」で採択された宣言に触れ、キーワードは「エネルギー・原材料の高騰」「人手不足による人件費の上昇」「難航する価格転嫁」と説明。また、同日付の読売新聞に掲載された「用紙代・物流費上昇に苦慮/新刊10年前より100円高」の記事を紹介し、「本は物価の優等生と言われる。今これだけいろいろなものの値段が上がっていて、本の値段も少しずつ上がっているが、まだまだ安いのではないか」と指摘。
日書連の副会長を務める藤原会長は「日書連は30%以上の粗利が欲しいと提案している。それがすぐに無理ならば、価格転嫁ができない小売店としては、価格のアップを願いたい。マージンが23%だとすると、1000円の本であれば230円、それが1300円になると299円の粗利額、1000円で仮定すると3割の粗利率と同じことになる。出版社には英断をお願いしたい。価格のアップは避けられない」と来場した出版社に訴えた。
このあと藤原会長を議長に議案審議。各議案の内容は事前に会員に案内し、確認状の提出ですべての議案を原案通り承認可決した。
書店世話人は、赤澤桂一郎氏(さわや書店)と山下淳氏(ヤマテル)が退任し、赤澤徹氏(さわや書店)と佐藤由美氏(朝野堂)を選出。また、出版社世話人は角川歴彦氏(KADOKAWA)と阪東宗文氏(暮しの手帖社)が退任し、夏野剛氏(KADOKAWA)を選出した。
来賓あいさつした日本出版販売の奥村景二社長は「出版業界は勝ち組はいなくて、負け組しかいない状態になりつつある。競業他社と問題意識を一緒にし、業界全体の構造改革に向けてアライアンスするべき時に来ている」と述べ、10月に設立したブックセラーズ&カンパニーとカルチュア・エクスペリエンスに言及。「新会社の目標は書店事業の健全性・安全性・継続性を高めること。そのノウハウは他の取次と書店にも提案して行かなければならないと考えている」として、持続可能な出版流通の実現へ強い決意を示した。
総会に先立ち、第1部で勉強会「書店向け新発注プラットフォーム『NOCS0』のご紹介」、第2部でベアレン醸造所の嶌田洋一社長による講演会「地方の小さな会社が創るもの、ファンと共感の輪作りのストーリー」を行った。

岩波書店・新企画発表会/総合誌「世界」リニューアル/女性・若年層にも訴求する誌面に

岩波書店は10月4日、東京・千代田区の如水会館で新企画発表会を開催し、総合雑誌「世界」のリニューアルをはじめ主要企画について説明した。
はじめにあいさつした坂本政謙社長は「当社は今年、創業110年を迎えた。出版業界はこれまでにない厳しい状況にある。今一度、創業者・岩波茂雄の精神に立ち返って社の運営に取り組んでいきたい。創業者同様、全社をあげて商売人に徹し、進取を貴ぶ気風や商売人としての強かさを取り戻し、変わることを恐れず、事に当たっていきたい」と抱負を語った。
続いて、「世界」のリニューアルについて堀由貴子編集長が説明した。
1946年創刊の「世界」は2024年1月号(23年12月8日発売)より四半世紀ぶりににリニューアルする。定価本体950円。A5判・296頁。電子版も配信開始する。
アートディレクションに須田杏菜氏を起用。縦置きのロゴ、西村ツチカ氏による雑誌キャラクターの誕生など、より手に取りやすいデザインに表紙を一新する。一方、長めの記事も読みやすい本文レイアウトを模索する。
政治・社会のトピックはもちろん、書評をはじめ文化欄を充実させ、作家によるリレーエッセイも始める。また、新しい書き手を起用して議論の場を作り、ジェンダーやAIなどこれまで大きく扱ってこなかったテーマにも挑戦する。
堀編集長は「女性や若い読者も自分に語りかけていると思える雑誌、持ち歩きたい、そばに置いておきたいと思える雑誌にしたい」と語った。
山本賢執行役員編集部長は、今後の新企画を紹介。岩波新書の新赤版が来年1月に2000点を突破することから、政治思想・フェミニズム理論の第一人者岡野八代氏の『ケアの理論』など、強力な新刊を立て続けに刊行する。10月にはPR誌「図書」の連載をまとめた大江健三郎氏の新刊『親密な手紙』を刊行。また、四半世紀ぶりとなる『岩波講座社会学』(全13巻)の刊行を10月17日から開始する。このほか、岩波現代文庫の桐野夏生氏『日没』、岩波新書の高木和子氏『源氏物語入門』などを注目新刊として説明した。
この後、永田淳執行役員営業部長が、22年度の書籍・雑誌の売上は前年比94%と報告。活動方針について「注目されている本をより動かしていくことを目的に、近年、プロモーションを重視している」と説明。また、21年8月に倉庫を移転し、ポプラ社ロジスティクスに業務委託したことに触れ、「様々な場面で素早い流通のための最適化が可能になった」と話した。

読売世論調査/地域書店保護「国・自治体が支援するほうがよい」50%

読売新聞社は「秋の読書推進月間」(10月27日~11月23日)に合わせて全国世論調査を実施し、結果を10月27日付朝刊に掲載した。
全国の市区町村のうち約3割が「無書店自治体」になっていることについて、改善する必要があると「思う」とした人は61%、「思わない」は35%だった。
地域の書店を保護するために、国や自治体が支援するほうがよいと「思う」人は50%、「思わない」は46%だった。
調査は8月22日~9月27日に実施し、2062人が回答した(回答率69%)。

連載「生活実用書・注目的新刊」/『ほんとの野菜は緑が薄い』(日経プレミアシリーズ)/遊友出版・齋藤一郎

川名秀郎著『ほんとの野菜は緑が薄い』(日経プレミアシリーズ900円)は、農薬も肥料も使わない自然栽培野菜にかかわり続ける著者が明かす、自然な暮らしの方法である。副題は「自然を手本に生きる」編。
きゅうりの腐敗実験を
試みる。①農薬や化学肥料を使った一般栽培のもの②有機肥料を使った有機栽培のもの③農薬も肥料も使わない自然栽培のもの。この3つを同条件で様子を見ると、①②は腐り③はほとんど腐らなかった。米や柿でも結果は同じ。不純物を蓄えた作物は菌を呼び、浄化しようとしているのではないかと著者は推測する。
問題は土なのである。生産の速度や収穫量を上げるために、農薬や肥料を入れるほど、土の機能は失われる。自然栽培は時間がかかるが、土を本来の姿に戻していく。不純物がなくなれば、病害虫は来ないし、余計な草も生えない。種も栽培した野菜から採れるし、自然が呼び戻せるという。人間も野菜も同じで、薬や医者に頼らない健康な体を保つことができると声高に語りかけている。
大竹道茂著『江戸東京野菜の物語』(平凡社新書900円)は失われかけた野菜の復権。練馬大根、小松菜、東京ウドなど栽培復活を目指す。都会にも野菜が結構ある。