全国書店新聞
             

令和4年12月1日号

街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟/新たな議連名に変更/来年5月までに提言書とりまとめ

自民党の衆参両院議員による「全国の書店経営者を支える議員連盟」は11月2日、東京・千代田区の憲政記念館代替施設で総会を開き、文化的側面での街の書店の重要性に鑑み、議連の名称を「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に変更した。今後、書店を継続していくために何ができるか課題を検討し、2023年5月までに提言書をとりまとめる。
総会の冒頭、塩谷立会長(衆議院議員、比例東海)があいさつ。「出版物の販売金額は1996年の2兆6563億円から2020年には1兆2237億円になり、書店数も15年で約40%減少した。そういう状況の中、何とか街の書店を守ろうという危機感を持っている。書店を続けたいという皆さんの思いが先生方に届き、平成28年の発足時に40人だった議連メンバーは現在145人まで拡大した。問題は数々あるが、この議連で具体的にしっかり解決していく。図書館との関係や諸外国の事例を学びながら、課題をしっかり受け止め、先生方にも理解していただき、解決に向けて努力していく。書店は日本の文化を支えている。その文化を継承して地域の発展を担うという考え方で進んでいきたい」と述べた。
齋藤健幹事長(衆議院議員、千葉7区)は、議連で検討する主要テーマとして、①深刻化する不公正な競争環境(ネット通販業者問題=過度な値引き、送料無料、発売日違反)②公共図書館問題(ベストセラーの過度な複数蔵書、著者権利の保護)③書店負担経費の増加(キャッシュレス手数料等)④万引きリスクの拡大(防犯カメラ・警備会社契約は書店負担。警察手続き負荷、買取業者の買取審査)――を挙げ、「様々な問題があって街の書店がなくなっていくことは文化の劣化につながる。衰退に歯止めをかけなくてはいけない」と呼びかけた。
書店業界を代表してあいさつした日書連・矢幡秀治会長は「議連は145名と大きな勢力になった。全国各地の書店が先生方に書店の厳しい状況を訴えた結果だ。街の本屋はなくなってはいけないと思ってくれている方々が多い」と謝意を表明。「9月の売上げも前年比80%程度と厳しい数字となった。コロナ禍の巣ごもり需要は数年前の話で、今はまったく状況が変化している。なかなか本屋に足を運んでいただけない。紙の本から離れている気がする」と危機感を示し、「日本人の勤勉さは紙の本を読んできたことで成り立っている。デジタルではやはり覚えられない。紙の本を読むことで頭の中に入る。キャッシュレス、万引き、売上減、紙の本離れなど様々な問題があるが、一つひとつ解決していきたい。しかも早急に迅速に、対策を一緒に考えていきたい」と訴えた。
書店事務局を務める出版文化産業振興財団(JPIC)・松木修一専務理事は、①書店産業振興のための経済対策(仮)の実施②再販制度を基盤とした公正な競争環境の整備③書店と図書館共存・共栄のための環境整備④出版物への消費税軽減税率適用――の4項目の要望を示した。
①書店産業振興のための経済対策(仮)の実施では、ICタグを活用した高度な商品供給インフラの整備・促進(ICタグの産業への大規模活用の実験的事例とするための、国の補助によるDXモデル事業の創出)、セルフレジ・キャッシュレス決済の普及への対応支援(対応途上である書店業界の対応加速化への国の支援)、書店産業への助成(店舗運営に必要な固定費補助や新規出店の助成制度)、書店・出版社系スタートアップへの助成(広く書店関連・出版関連のスタートアップ企業を支援)――を求めた。
②再販制度を基盤とした公正な競争環境の整備では、著作物再販制度の適切な運用が必要(ネット書店等における送料無料化の禁止=公正な競争を妨げないよう、制限を課す法の整備が必要。入札値引き問題=入札時の過剰な値引きを禁ずる措置が必要)と求めた。
③書店と図書館共存・共栄のための環境整備では、永年出版界と図書館界での懸案となっている「複本」や「新刊本の貸出不可期間」について一定のルールを設ける必要がある、原稿図書館法第7条の2にある「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を書店との共存も含めた内容に改正する必要がある、「図書館蔵書等における地元書店からの優先購入」等の措置が不可欠――とした。
④出版物への消費税軽減税率適用では、先進諸国では出版物は軽減税率が適用されているとして、各国の適用状況を紹介した。
このあと今後の取り組みについて意見交換を行い、書店側からは日書連・春井宏之副会長が入札問題に言及したほか、大垣書店・大垣守弘会長が発言した。
最後に、齋藤幹事長は「年内に中間報告を出し、来年5月までに最終的な提言書をとりまとめたい。11月末の会合では文化庁と経済産業省から書店がどんどんなくなっていること、公正取引委員会から現状公正な取引が行われているかについて、それぞれ見解を聞きたい。街の書店がなくなることは文化の劣化であるのは揺るぎない事実。その前提に立って政策的な対応が必要な段階に来ている。各省庁の見解を聞いた上で最終とりまとめを行いたい」と今後のスケジュールを示した。

12月14日に出版販売年末懇親会

日書連は12月14日午後6時、東京・文京区のホテル椿山荘東京で「出版販売年末懇親会」を開催する。
書店が主催する出版業界の懇親の場として出版社、取次、業界団体などを招いて行う恒例行事だが、新型コロナウイルスの影響で20年、21年は開催を取り止めた。今回は3年ぶりの開催となる。

「春夏秋冬本屋です」/「書店の1日」/埼玉・水野書店代表取締役・水野兼太郎

商店街の一角にある弊店の朝は、6時の雑誌開けからスタートする。寒い冬の時期は、厚いダウンを着て開梱する。スタッフが入り、9時から朝礼が始まる。オープンまでにカフェのテーブルを下ろし掃除する。10時開店だ。
ある日、雑誌を買いに来たお客様が「あれ、久しぶりにきたら変わっちゃったね」と言う。「水野書店&cafemao-mao」としてリニューアルオープンして11月で3年目を迎えた。開店後、少し軌道に乗ったと思ったら、コロナ禍で閑古鳥の鳴いている状態が続いた。また第8波がやってきているようで心休まることないこの頃だ。そして、午前中は雑用を済ませて息子(外商)と打ち合わせ、学校廻りや企業、病院、個人のお客様宅に配達する。
11月から来年度の教科書が入ってきている。倉庫の中はあっという間に教科書でいっぱいになる。一般企業では当たり前の電子書類がペーパーであり、相手先に取りに行くことや集金に出向くなどデジタルとはほど遠い世界で仕事をしている。店はクレジットカードや電子マネー決済ができるようになっているが、自分では分からなくなりもたついてしまうことも多い。カフェのランチ時間はドリンクの用意や時折接客もする。お客様との会話が楽しい。
スタッフや家族の力で何とか書店の1日が終わる。時間は夜9時。アルコールが飲めないので、好きな歴史小説でも読みながら床につく。

「本の日」オンラインイベントを開催/小説紹介クリエイター・けんごさんが本と書店を語る

「本の日」実行委員会(矢幡秀治実行委員長=日書連会長)は「本の日」当日の11月1日、SNSで小説の読みどころを紹介する30秒ほどの動画を次々に投稿し、若い世代から絶大な人気を集める小説紹介クリエイター、けんごさんのオンライントークイベント「けんごさんと本トーク。本と、読書と、本屋さんと。」を東京・千代田区のワテラスコモンホールで開催。YouTubeでライブ配信した。
イベントは双葉社、出版文化産業振興財団(JPIC)、淡路エリアマネジメントが協力。けんごさんが今年4月に上梓した小説デビュー作『ワカレ花』の編集を担当した双葉社・藪長文彦氏、けんごさんが解説を書いたミステリー小説『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』(双葉文庫)の著者・青柳碧人氏も出席し、流泉書房(神戸市)の書店員・大橋崇博氏が司会進行を務めた。
小説を書いたきっかけについて話したけんごさんは、「僕は今24歳で、大学1年生の時にやっと小説の魅力に気づいて読み始め、小中高生時代の読書経験がないことをものすごく後悔している」と振り返って、「今の小中高生の皆さんには早く小説を手に取ってほしい、思春期の頃しか味わえない小説の魅力に気づいてほしいと思い、紹介を続けている。『ワカレ花』も、小説を読んでいない方のきっかけになる1冊になればいいなと思いながら書いた」と、紹介活動や執筆の背景を明かした。
書店では、真っ先に文芸書の新刊コーナーへ行くという。「目的以外の作品と出会える、運命的な出会いができるのがリアル書店の良さ。今日はどんな運命的な出会いができるだろうかとウキウキしながら書店に行っている」と話し、「いちファンとして作家を応援したいという気持ちがある。リアル書店で本を買うことを続けていて、発売日に書店に行けないがすぐ読みたいから電子書籍で、ということはあるが、面白かった作品を書店にもよく買いに行く。自分の中では自然な行動で、アイドルを応援する人がグッズを何個も購入するのと同じように、好きな作家の『推し活』をしている感じ」と熱い気持ちを表現した。
本屋への要望について聞かれると、青柳氏は「やはり知らない本を紹介してほしい。他の本屋にはない本の感想が書かれていると目をひく」と指摘。けんごさんはこれを受けて「書店でPOPを見て本を手に取ったことが何度もある。作品愛にあふれた紹介が世間的にもっと評価されてほしい。書店員さんの努力や本屋の意義を伝えていきたい」。藪長氏は「書店員さんはこういう作品を推したいんだなと伝わると、その店に行く意味や楽しさが出てくる。癖のある書店員さんがもっと増えると楽しいのでは」と提案した。
けんごさんは最後に「今はSNSやサブスクサービスなどエンタメがあふれていて、小説は難しいと思われがちだが、本当は気軽に楽しめるもの。世の中には読みやすい作品や、好きになるきっかけになるような作品がある。そういう作品をこれからも伝えていきたい」と意欲を語った。また、SNSのライブ配信機能を使って「出版業界の人に直接聞いてみよう」企画をスタートすると発表。第1回は11月30日にポプラ社の協力で開催するとした。

本の日ブックカバー大賞表彰式/『本を持って旅をする。』卯月小春さんに大賞

「本の日」実行委員会は11月1日、東京・千代田区のワテラスコモンホールで「本の日」ブックカバー大賞表彰式を開催した。大賞作品には如月小春さん(神奈川県在住、イラストレーター)の『本を持って旅をする。』が選ばれ、矢幡秀治実行委員長から表彰状と副賞の図書カード5万円分が贈られた。大賞作品のブックカバーは同日から、全国の参加書店259店舗で文庫購入者に配布されている。
今回は「本をもって出かけたくなるブックカバー」をテーマに、7月15日から8月31日まで文庫用ブックカバーのデザインを募集し、学生とプロのイラストレーターを中心に219作品の応募があった。参加書店で選考結果を踏まえ、矢幡実行委員長を審査委員長にデザイン・美術系雑誌4誌の編集長で構成された審査委員会で審査を行い、大賞1作品と各編集長賞4作品を選出した。
各編集長賞は、「イラストレーション」編集長賞がおくむらさなえさん(岡山県、イラストレーター・デザイナー)の『愛本とお散歩』、「芸術新潮」事業部部長賞が亀谷まおさん(東京都、学生)の『山羊と羊』、「アイデア」編集長賞がkeema_comicさん(兵庫県、イラストレーター・デザイナー)の『おのおの読む』、「美術手帖」編集長賞がswtiihgreenさん(神奈川県、描き手)の『ようこそ、こんにちは』。
実行委員会の奥野康作店頭活性化委員長(ブックエース)は、「コロナの行動制限がなくなり、お出かけの際に本を持っていきたくなるブックカバーを募集した。全国29都道府県と、アメリカ、イギリス、オランダ、ポーランドの4ヵ国から219作品の応募があった。最年少は12歳、最年長は64歳だった」と報告した。
受賞した卯月さんは、ブックカバー大賞の存在を、購入した文庫本にかけてあった第1回受賞作で知ったという。「書籍に関わる絵を描くのが夢だったので、少し夢に近づけたかなとうれしく思う。このブックカバーは、本にはまって聖地巡礼に行くウサギの物語を描いたもので、絵巻物のように右から左に物語が流れて、拡げても楽しいデザインにした。このカバーは私の経験も入っていて、コロナ前は好きな本や漫画のイベント、聖地巡礼によく行っていた。最近ようやく遠出できるようになったので、本とブックカバーを旅のお供に連れて行ってくれたらうれしい」と受賞の喜びを語った。

BOOKEXPO2022秋の陣/3年ぶり開催、1193名が来場

関西の大商談会「BOOKEXPO2022秋の陣~今こそ集まれ!書店人~」(主催=同実行委員会、後援=日書連など)が11月2日、大阪市北区のグランフロント大阪で開かれた。
コロナ禍の影響で3年ぶりの開催となった今回は、204社・205ブースが出展。1193名が来場した。内訳は書店584名、出展社519名、取次75名、報道4名、その他11名。商談成立件数は5603件、商談成立金額は6374万9675円となった。
開会セレモニーで大垣全央実行委員長(大垣書店)は「3年ぶりの開催で、出版社が集まるのか、書店人が集まるのか、当日は開催できるのかと心配ばかりしていたが、皆さんのお力をお借りして開催できた。秋の読書推進月間『BOOKMEETSNEXT』の期間中ということもあり、関西からも一体となって業界を盛り上げる機会になればと思い開催した」とあいさつした。
続いて、「目指せPOPの西日本№1『西日本POP王決定戦』」の表彰式を行った。「手書きPOP部門」はブックスキヨスク尼崎店、「ディスプレイ部門」は水嶋書房くずは駅店が金賞に選ばれた。各部門の応募総数は613作品(手書きPOP部門327作品、ディスプレイ部門286作品)だった。
会場には一般書、コミック、児童書、第三商材の各コーナーを展開。熱心に商談や情報交換が行われた。また、「大阪ほんま本大賞」、「京都本大賞」、「ひょうご本大賞」、「料理レシピ本大賞inJapan」、「BOOKMEETSNEXT」の特別コーナーが設けられ、来場者の注目を集めた。

大河「どうする家康」関連本を増売/書店議連の活動に期待/静岡総会

静岡県書店商業組合は10月24日、静岡市葵区の静岡教科書で第35回通常総会を開催し、組合員81名(委任状含む)が出席した。
総会は、江﨑直利副理事長(藤枝江崎書店)の司会で進行し、吉見光太郎理事長(吉見書店)があいさつ。吉見理事長ははじめに、9月23日から24日に襲来した台風15号で被災した書店にお見舞いの言葉を述べた。そして、「コロナ禍の現在、書店を取り巻く状況は大変厳しく、売上も前年を大きく下回っている。諸経費の上昇、キャッシュレス決済の増加で売上の現金化が遅れることによる資金繰りへの影響がある。売上は下がる、経費は上がるという困難な時だが、自民党の国会議員が結成する『全国の書店経営者を支える議員連盟』に大勢の方が加入しているという明るいニュースもある。このような時だからこそ、組合員の間で有益な情報を共有し、理事会の議案に出ているNHK大河ドラマ『どうする家康』関連本増売で店頭を盛り上げていこう。そして気持ちを前向きにしていきたい」と話した。
続いて吉見理事長を議長に選任して議案審議を行い、2022年度事業報告、決算報告、監査報告、2023年度事業計画案、収支予算案、任期満了に伴う役員改選のすべての議案を承認した。
役員の勇退は、古澤隆常務理事(マルサン書店)、斉藤行雄常務理事(谷島屋)、中村真也理事(岳陽堂)、中野弘道監事の4氏。長きにわたり組合の発展にご尽力いただいたことに改めて感謝申し上げる。
次回の新年総会は1月26日(木)午前11時にに静岡市葵区のレイアップ御幸町で開催の予定。
最後に理事会の議案として、2023年NHK大河ドラマ「どうする家康」販売支援について協議し、全県で関連書籍の増売運動を行うことを決定した。
(佐塚慎己広報委員)

インボイス制度の講習会を開催/組合員の疑問点解説/大阪組合

大阪府書店商業組合(深田健治理事長)は、来年10月1日から始まるインボイス制度について、開始時にインボイス発行事業者となるための登録申請が来年3月31日までと期限が迫っていることから、10月26日に大阪市北区の大阪駅前第3ビル会議室でインボイス講習会を開催、組合員35名が出席した。
講習会は、堀博明副理事長の司会で進行。深田理事長のあいさつの後、大阪府中小企業団体中央会顧問税理士の坂本幹雄氏による講習が行われた。なお、組合員が不安に感じている点や疑問点について事前にアンケート調査を行い、講師に手渡して講習の中で説明を入れてもらった。
講習では、「消費税の免税業者がインボイス(適格請求書発行)事業者になる必要があるのか。免税業者が適格請求書発行事業者になるのは任意であるが、適格請求書発行事業者になると課税売上高が1000万以下であっても免税事業者にはなれず、消費税の申告及び納税義務が発生する。
免税事業者のままだとインボイス(適格請求書)を発行できず、適格請求書でないと仕入れ税額控除ができないことから、取引先から取引を敬遠される可能性が発生する。未使用の納品書や領収書がある場合、インボイスナンバーや消費税率と税額を記入できるゴム印で対応できる。レジで最近導入したものである場合、インボイスナンバーが打ち出せる機能が付与されているものがあることから、確認すること。インボイスナンバーの印字機能がないときは入れ替えの検討が必要」などとポイントについて説明があった。
出席者からは消費税の表記の仕方や端数処理の問題、権利なき団体(みなし法人)のインボイスナンバーの取得が可能か等の質問があり、熱をおびた講習会となった。
(石尾義彦事務局長)

河出「文藝別冊」を特別増売/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は11月2日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
総務・財務委員会では、令和5年1月以降の理事会等の日程を次の通り承認した。▽理事会=1月休会、2月2日(木)、3月2日(木)、4月4日(火)、4月21日(金)臨時理事会、5月休会。▽通常総代会=5月18日(木)。
事業増売委員会では、河出書房新社「文藝別冊フェア」の特別増売企画の実施を承認した。4ヵ月長期の条件で組合員書店に10点各2冊を送付して拡売に取り組む。また、暮しの手帖社「暮しの手帖22年12月‐23年1月号」を増売商品とすることを承認した。このほか、増売商品として取り組むことを決めたNHK出版『名刀甲冑武具大鑑』は、11月22日発売の予定が来年3月10日発売に延期されたと説明した。
令和4年度読者謝恩図書カードは、出版社から合計20・5口の協賛を得て発行すると報告した。
共同受注・デジタル委員会では、次年度も納入業務を受託する日本教育公務員弘済会東京支部の学校図書助成事業について、同支部のホームページに募集要項が掲載されており、取引先の学校や近隣の学校に周知してほしいと要請した。
「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクトが10月6日にスタートし、同特別委員会は、メディア向けプロジェクト発表会を開催したことや、現在の進捗状況について報告した。
議事終了後、トーハンから、書店スペースレンタルサービス「ブクマスペース」の説明が行われた。

訃報

辰巳壽一氏(たつみ・としかず=奈良市・たつみ書店元社長、奈良県書店商業組合元理事長、日本書店商業組合連合会元理事)
11月12日、肺炎のため死去。享年99歳。通夜は13日、告別式は14日、奈良市の平城典礼会館で家族葬として執り行った。喪主は長男・信篤氏。
辰巳氏は1986年から2001年まで15年間、奈良組合理事長、日書連理事を務めた。日書連では主に取引改善や広報の分野で活躍した。

9月期販売額は4・6%減/店頭売上、各ジャンルで苦戦/出版科研調べ

出版科研調べの9月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比4・6%減だった。内訳は、書籍が同3・7%減、雑誌が同6・0%減。雑誌の内訳は月刊誌が同5・2%減、週刊誌が同10・5%減となった。月刊誌は定期誌、ムックの返品が改善。コミックスは、前年同月に『東京卍リベンジャーズ』(講談社)がブレイクしていた反動で苦戦。週刊誌は発行ベースでの減少に加え、改善が続いていた返品率が今年初めて前年同月を上回り、2桁マイナスとなった。
返品率は、書籍が同0・7ポイント減の30・9%、雑誌が同1・8ポイント減の39・4%。書籍は6ヵ月ぶりに改善した。雑誌の内訳は、月刊誌が同2・2ポイント減の38・4%、週刊誌が同0・7ポイント増の44・7%。
書店店頭の売上は、9月中旬に大型台風が相次いで上陸したことによる客数減も影響し、全体的に厳しかった。書籍は約9%減。各ジャンルが落ち込む中で、児童書は絵本「パンどろぼう」(KADOKAWA)や読み物「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」(偕成社)など人気シリーズの新刊が発売され前年並みで推移した。
雑誌の売上は、定期誌が約9%減、ムックが約10%減、コミックスが約22%減。コミックスは、前年同月は『ONEPIECE』100巻(集英社)の発売や『東京卍リベンジャーズ』が伸長したため大きく落ち込んだが、『キングダム』(集英社)などの新刊は健闘した。

東京組合書店経営研修会/「ロス対策」をテーマに講演/全国万引犯罪防止機構理事・近江元氏

東京都書店商業組合は10月26日、東京・千代田区の書店会館で令和4年度書店経営研修会を開き、全国万引犯罪防止機構(万防機構)の近江元理事が「ロス対策」をテーマに講演。万引や内引だけでなく検品や手続き上のミスあるいは不正で発生する損失(ロス)の原因を調査追及し、予防や再発防止の施策を講じる「ロス・プリベンション」(LP)について説明した。講演の概要を紹介する。
〔換金目的の「職業的万引」が増加〕
全刑法犯の認知件数は2020年は61万件で、20年前の4分の1に減少している。万引は20年は8・7万件で、やや減少傾向だったのが直近では増加した。全刑法犯に占める万引の割合は21年は15・4%と、2000年の4・6%に比べ3倍以上に増えている。
万引の種類には、「お金がない」「精算が面倒」という動機の「出来心」タイプ、盗癖や認知症などによる「疾病」タイプ、「単独転売常習」タイプ、「組織的窃盗」タイプの4つがある。後者2つは盗ったものをお金に換える職業的万引(経済犯)だ。万引の最近の特徴として、高齢者の犯行が目立つこと、職業的万引が大幅に増加、悪質化していることが挙げられる。
職業的万引の増加の要因に、換金しやすいフリマ・オークションサイトなどの悪用がある。これは匿名で売買取引が完結する仕組みのためだ。メルカリやヤフーも困っていて、万防機構に加盟してもらい対策に取り組んでいる。
ロス全体についての話をすると、7~8年前のデータだが、全世界のロス額は1234億ドル、日本のロスが1兆6000億円。日本の小売業の市場規模は、車やガソリンなどを除き100兆円前後だと思う。今年9月発表された全米小売業協会のデータによると、全米のロスは約1000億ドル。レートが150円とすれば15兆円にのぼる。
ロスの原因には3つの要素がある。まず内部不正。欧米ではこれが最初に挙げられる。商品の持ち出しとか、レジの空打ち・売上金の抜き取り・不正な返金処理などの、チェックアウトでの不正がある。2つ目が外部不正。これは万引だけでなく、強盗、空き巣、器物損壊もある。詐欺行為は万引に加えてもいいかもしれないが、返品詐欺や、精算済みと偽装する手口などがある。3つ目はミス・エラーだ。人間なので100%正確にやることは難しいが、単純な手順の誤りや違反を見過ごすと従業員は「うちの店はいいかげんだ」と思う。それが不正につながることがある。
ロスの発生要因には、悪意のある「犯罪行為」と、悪意のない「ミス・不履行」がある。犯罪は自分たちでは防げない、やった人が悪いと考えがちだが、実は我々がそうした犯罪の機会を知らないうちに与えてしまっている。悪意のないロスも悪意のあるロスも、結局自分たちの運営管理上の誤り、やるべきことをやっていないからではないかと考えないと問題は解決しない。
ミス・不履行は、管理ミスとして3種類に分けられる。①「商品の出入りとそのデータの不一致」は、商品入荷時の検収作業でのミスや、店舗間での商品移動での手順からの逸脱、チェックアウトでの登録ミスなどだ。②「廃棄、値下げ処理の手順からの逸脱」。廃棄や値下げ処理をしていたのにデータが未入力ならばそれは不明ロスになる。③「実地棚卸でのミス」は、数え間違いや在庫のある場所を失念していた「漏れ」などがある。あるべき帳簿(理論)在庫数より実際の在庫数が多い「逆ロス」が発生しているなら、それは管理レベルの低さの象徴で、不正の温床といえる。
ロス率がどうなっているのかは、時系列で推移を見ていかないとわからない。ロス率の変化が大きい場合は、棚卸によるものかもしれないし、仕入伝票と現物の入荷との不一致や、売掛金の誤りがあるのかもしれない。ずっと率が高いのであれば、本当に何らかのロスが出ていることになる。
〔不正・ミスの予防で損失抑える〕
「ロス・プリベンション」(LP)はロスを予防するという意味で、欧米では30年以上前からリスク・マネジメントの手法として確立している。コンセプトは①予防する、②プロセス主義、③ロスは一定にする、④費用対効果、の4つだ。いわゆる対策と予防策の違いだが、事が起こってから損害を取り戻すのは困難だし、事後処理も大変だ。事前に予防すれば手間もかからないし経済的損失も防げる。ロスの原因はどうしても外部に求めがちだが、LPでは業務プロセス全般に原因があり、あくまでも万引はその一部だと考える。企業全体の経営問題としてとらえ、対策計画は日常的な継続性と、経営者と従業員の共通認識がなければいけない。従来のロス対策はロスをなくすことを目的にするが、LPはロスの発生は必然だと考え、ロスを一定基準以下にすることを目的とする。経営なので、かけるコストと効果を検討することも大切だ。
不正を予防するための考え方がある。犯罪の機会、犯罪をする動機、自己正当化の3つが揃わないと不正(犯罪)は起きない。動機と正当化は個人的な資質や倫理観にかかわるため、企業としての管理監督責任がある「機会」をなくすことに我々は注力するべきだ。
職業的万引に対する予防策のポイントを挙げると、狙われやすい商品は見通しのよい場所に置くなど、陳列場所や方法に気をつけること。同一地域、同一業種で万引被害の緊急通報システムを活用し、同一犯による犯行を防止しているところもある。そして警察との連携だ。全件通報が前提だが、被害届を出さない例が多く、結果として犯行を黙認してしまう。
万防機構の調査で、実施している万引予防策について600社以上に質問をしたところ、約8割の企業が「お客様への声かけ」と回答した。万引で逮捕された容疑者への聞き取りでは、声かけで万引をやめる人が多数にのぼる。もともと声かけはお客様に対するサービスで、印象を良くすることが販売機会や購買点数の向上にもつながる。
防犯機器システムについてだが、監視カメラは、犯人を捕まえる以前に「この店はやりにくい」と思わせることの方が重要で、「ただいま撮影中」といった表示を店の要所に貼っておくと効果的だ。AIカメラは、マスク着用でも90%以上の識別が可能になっていて、データベース化と情報共有により、声かけなど再犯防止に役立っている。防犯ゲートは、実際に発報したときにどうするのか、マニュアルの整備と教育訓練が欠かせない。
ミス・不履行の予防策について。予防とプロセス管理は非常に重要で、業務全般において、①手順やプロセスが明確であること。マニュアルや手順書として文書化され整備されていることが必要だ。②管理担当及び実行者がそれらを理解していること。事前の教育が不可欠だ。そして③手順が順守され正しく実行されていること。できていない場合は指導し、必要に応じて手順の変更を行う。
不明ロスは、帳簿在庫(あるべき在庫)から実際の在庫を引いたものだから、実地棚卸はお店の在庫管理の通信簿と言える。正確に実地棚卸を行うために、きちんと計画とスケジュールを立てることはもちろん、関係者で計画を共有し、役割分担を明確にして実行することが必要だ。
内部不正の予防策としては、従業員同士のコミュニケーションがとられ、商品を大切にする企業風土を作ることが犯罪の機会をなくすことにつながる。商品、お金と伝票の動きを一致させること、1人でやる仕事についても誰かがチェックする仕組みを作るなど、日常的なチェック機能を構築しておくことが重要だ。
不明ロスが経営に与える影響について。例えば年商5億円、営業利益率が2%(営業利益高1000万円)の企業で、ロス率が1%あったとすると、ロス高は500万円。ロス率を0・4%改善して0・6%にするとロス高は200万円減り、営業利益率は2・4%、営業利益高は1200万円と200万円増える。営業利益率とロス率が改善しない状態で、営業利益高を1200万円にするためには年商6億円が必要だ。ロス率を0・4%下げるのと売上を1億円増やすことは同じ価値があり、ロス率改善はインパクトが非常に大きいことがわかる。
「ロス分配率」はロス高を粗利益高で割ったもので、2%以内が目標、7%以上は危険水域となる。粗利益率が30%、ロス率が0・4%の場合、ロス分配率は1・3%。粗利益率が24%、ロス率が0・4%ならロス分配率は1・7%になる。粗利益率が低いほど、ロス率の目標を高めていかないといけない。
〔人材育成へ「ロス対策士」制度開始〕
LPで最優先すべきは人材育成で、現場の従業員に向けた教育が必要になる。万防機構では、ロス対策の体系的な知識を多くの人が学び、実務に活かすことができる教育制度を作るため、LP教育制度作成委員会を設置。21年に「ロス対策テキスト」を出版、「ロス対策士資格試験制度」を立ち上げた。この制度は、万引窃盗に限定することなくロス対策を総合的・理論的に理解し実務に役立てること、小売業とセキュリティ・サービス提供者がロス対策におけるお互いの役割を理解し、協働してロス対策を実行し効率的に効果を上げることを目的とした。21年7月に第1回検定試験を実施し、今年10月現在で424名が「ロス対策士」の資格を取得している。
ロス対策は、ロス率の改善だけにとどまらない。仕事のやり方をより良い方向に変えられたら、ロスの削減と合わせて来店するお客様へのサービスレベルも上がり、安全・安心で快適な買い物環境を実現できる。仕事の品質、精度と生産性を向上させることで、収益が増え従業員の処遇を改善する原資が生まれる。犯罪を未然に防ぐことで犯罪者を作らないのは非常に価値があることだと思う。万引の防止を含むロス対策は、事業の発展に欠かせない基本技術であり、多くの方に学んでいただきたい。

京都本大賞に増山実氏/河原町舞台『ジュリーの世界』

第10回「京都本大賞」の授賞式が10月28日、京都市中京区の京都書店会館で開催され、大賞は増山実氏の『ジュリーの世界』(ポプラ社)が受賞した。
京都本大賞は過去1年間に刊行された京都を舞台とした小説の中から最も読んでほしい作品を選ぶ賞で、京都の書店員と一般読者が投票で決定する。主催は京都の書店や取次などで構成する同実行委員会。
今回は初めての試みとして、「YouTubeLive」を利用して授賞式の模様を全国に生配信し、書店の売場でも公開できるようにした。ライブ放送だけでなく、後日にも視聴してもらえるようにした。
授賞式であいさつした洞本昌哉実行委員長(ふたば書房)は、「京都本大賞も10周年を迎えることができた。この賞は書店業界だけでなく読者にも投票していただく、みんなで決める賞。これをきっかけに本の魅力を再認識してもらい、少しでも多くの人に本を読んでもらいたい」と意欲を見せた。この後、大賞作品を発表し、増山氏に表彰状と記念品の盾を贈呈した。
増山氏は「読者の方々にたくさん投票してもらい選ばれたことに作家として喜びを感じる。学生の頃、京都の書店で読み漁った本のおかげで今の自分がある。その京都の賞を受賞できて感慨深い」と語った。
『ジュリーの世界』は、1970年代の京都河原町界隈で有名だった「河原町のジュリー」をモチーフにした短編小説。フィクションの中にも実際のエピソードを絡めた内容となっている。増山氏は「ある日空を眺めるジュリーが印象的で、いつか小説にしたいと思い、40年越しの宿題として書いた。また京都本大賞を取れるように頑張りたい」とあいさつを締めくくった。
〔京都ガイド本大賞は『地球の歩き方京都』〕
同時開催された「京都ガイド本大賞2022」の授賞式では、大賞に『地球の歩き方京都2023~2024』(地球の歩き方)、上級者向けの京都を紹介するリピーター賞に『京都一周トレイルマップ&ガイド』(ナカニシヤ出版)が輝いた。
大賞を受賞した地球の歩き方編集室の宮田編集長は担当者の堀江氏の話として「コロナ禍で活気をなくした生まれ故郷の京都に恩返しをしたい。京都を再発見してほしい」と語った。
リピーター賞受賞のナカニシヤ出版の中西社長は「書店から始まったナカニシヤ出版だが、今年40年の節目に賞をいただき感謝している。学術書中心の版元だが、ガイド本が思った以上に売れて驚いている」とあいさつした。
授賞式終了後、コロナ感染予防対策を徹底しながら、久しぶりに懇親会を実施した。
(服部義禰広報委員)

ワゴンセール「本の得々市」が盛況/3年ぶり開催神保町ブックフェスティバル

第30回「神保町ブックフェスティバル」が10月29、30日の2日間、3年ぶりに開催され、本を求める大勢の来場者で賑わった。
今回は新型コロナウイルス対策のためオープニングセレモニー、パレード、チャリティオークションなどのイベントを中止し、飲食店の出展も見送った。さくら通りでの開催も取りやめた。
すずらん通りの自由価格本や汚損本を謝恩価格で販売するワゴンセール「本の得々市」、神保町三井ビルディング公開空地「こどもの本ひろば」の絵本・児童書ワゴンセールに絞っての実施になったが、バーゲン本を目当てに多くの読書家が会場につめかけ、コロナの影響を感じさせない熱気だった。
バーゲン本の売上げは好調で、ワゴン2台を出展した東京組合青年部は約40万円を売上げた。早川書房と東京創元社は今年も大人気で、ワゴンの前に長蛇の列ができた。「こどもの本ひろば」にも多くの親子連れが訪れた。

「本の日」~地域密着型書店の取り組み~/わが街の本屋思い出す日に/長谷川書店ネスパ茅ケ崎店・長谷川静子

本に親しみ、本の楽しさを知ってもらうため、全国の書店が様々な企画を実施する「本の日」。神奈川県茅ヶ崎市で3店舗を運営する長谷川書店のネスパ茅ヶ崎店では、絵本作家モリナガ・ヨウ氏の原画展とおはなし会、茅ヶ崎市のゆるキャラを招いてのじゃんけん大会、「私の推し本」記念撮影会を開催し、いずれも盛況だった。毎月1回開いている「絵本とおはなし会」は24年目を迎え、本を売ることとともに読書推進運動にも力が入る。その考え方と取り組みを長谷川静子店長に寄稿してもらった。(編集部)
〔イベント助成金を活用する/ロゴマークで〝特別感〟演出〕
「読書の秋」「読書週間」という言葉は恐らく日本国民のほとんどが聞いたことがあるだろう。一方、11月1日「本の日」は業界内では知られていても、一般読者はまだご存じない方も多いのではないだろうか。
これまで当店では、春と秋に書店くじを用意し、お客様のご来店を期待してお渡ししてきた。過去に当店から1万円の当せんが出たこともあり、余裕がある時は「くじに当たった方がいます」とお話ししながら渡す。昨年「書店くじ」からしおり型の「読者還元祭」になってから当せんが増えたように感じている。時流に合わせて読者還元祭を企画した日書連に感謝したい。
日書連は本の日の事務局も務めており、キャンペーン期間が終了すると毎年、報告レポートを制作している。これを読むと、読書週間や本の日をポスターを店内に掲示してくじやしおりを配布するだけで済ませてしまっていたことに気づく。もったいないことをしたものだ。本の日をきっかけにわが街に本屋があることを思い出し、ご来店していただけるようにしたい。
当店では「本の日」のイベントとして、絵本作家モリナガ・ヨウ先生の『らんらんランドセル』絵本原画展を10月18日~11月6日まで開催し、年齢や男女を問わずたくさんの人たちが訪れてくださった。街の書店でも本物の原画を鑑賞できる。本物を見ることで一味違う楽しさを感じていただけたのではないかと自負している。会場に設置した「ひとことノート」には「ランドセルを贈った時のことを思い出しました」「昔は赤と黒だけでしたが、今はカラフルなんですね」といった書き込みがあった。自分と友だちがランドセルを背負う姿を描いた男の子もいた。このノートはモリナガ先生に記念品としてお納めいただいた。
初日の10月18日、当店が毎月1回行っている恒例イベントである第276回「絵本とおはなし会」の第2部として、モリナガ先生による読み聞かせを行った。質問コーナーでは「絵本ができるまで何日ぐらいかかりますか」「画材は何ですか」などたくさんの質問が寄せられ、モリナガ先生と子どもたちのおしゃべりは笑いがあふれる微笑ましいものだった。サイン会ではモリナガ先生の丁寧な応対にお客様はご満悦な様子。笑い声がいっぱいの楽しいひとときとなった。
原画展の開催にあたっては、本の日イベント助成金獲得企画に申し込んだ。助成金は通常、内容の細かな書類申請が多く1人で行うのは難しいため、指導を乞いながら書類作成するものだが、今回は自身の思いのたけを存分に記述してみた。そうしたら幸いなことに申請が通った。これで広告や宣伝などあらゆるものに本の日のロゴマークを入れることができる。ロゴマークが入ることで、当店スタッフも皆、日頃行っている「読書お楽しみ企画」とは違うことを意識する。
〔地域の文字・活字文化を守りたい〕
11月1日には本の日の告知と定着を目的に、茅ヶ崎市観光親善大使のゆるキャラ「えぼし麻呂」を招いてじゃんけん大会を開催した。開催準備ではドキュメンタリー番組になりそうなぐらい店の全員が一致団結して行動した。
まず、「本の日の粗品を配布するためにじゃんけん大会を実施したい。じゃんけんをして話題になるのはえぼし麻呂しかいない!」と、何の予備知識もなく市の担当部署に駆け込んだ。えぼし麻呂の出演依頼は2ヵ月前まで、企業名は出せないなどの注意事項がある。11月1日はたまたま予定が空いているが、出演の可否の回答は前日の10月31日になるという。茅ヶ崎市の文字・活字文化を守り発展させるために行うと、「本の日」の趣旨に沿って出演依頼書を提出した。
10月31日、市から出演オーケーの一報が入った。すぐに「本の日」「読書週間」、そして市立図書館、NPOまちづくりスポットちがさき、地元書店が協力して推進する「本がだいすきプロジェクトちがさき」の3つのロゴマークを施した、1500㍉×1500㍉の背景パネルとぐーちょきぱーのプレートを作り、本の日のラベルを作成して粗品に貼った。
ポスターは掲示したものの、急なことである。果たして人々が目を留め、足を運んでくれるのか。えぼし麻呂の出演は15分だけなので、その間に十分なことができるだろうか。色々なことが脳裏をよぎった。
当日の11月1日午前10時から、えぼし麻呂が来店する11時までの1時間、私は往来に向かって「本日、11月1日は本の日です。皆さん、読書を楽しんでいますか!」と呼びかけ、「皆さんに本の日を知っていただきたいと、えぼし麻呂さんが11時に応援に来てくださいます!」と叫び続けた。事前の告知ができないなか不安でいっぱいだったが、結果は子どもから大人までたくさんの人が参加して大変な盛況になった。
このとき作った背景パネルは自画自賛になるがとても素敵なもので、1日使っただけで処分するのはもったいない出来栄え。そこで引き続き撮影スポットとして活躍してもらうことにした。背景パネルの前で、市民の皆さんに「私の推し本」を掲げて記念撮影してもらうもので、読書の思い出を作っていただければと考え企画した。この時の皆さんの「推し本」は品揃えしてコーナー展開も試みたいと考えている。
本の日のロゴマークを見ると「本屋でまってるよ」と謳っている。そうできるように私たちが書店経営を継続していくことが大切だ。読書週間、子ども読書の日、そしてアンデルセンの誕生日である国際子どもの本の日のポスターは、デザインも標語も素敵だなと思って1年間ずっと掲示している。これからは本の日のロゴマークも店内の風景となるよう掲示していきたいと思っている。

TSUTAYAえほん大賞/大賞はヨシタケシンスケ氏

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は10月26日、東京・渋谷区の代官山蔦屋書店で第3回「TSUTAYAえほん大賞」の授賞式を開催した。大賞はヨシタケシンスケ氏の『かみはこんなにくちゃくちゃだけど』(白泉社)、新人賞は阿部結氏の『なみのいちにち』(ほるぷ出版)に決定した。
全国の児童書に関わる担当者が、50年後も読まれている作品をTSUTAYAで育てていきたいという願いを込めて選んだ。10月27日から全国の店舗でコーナー展開している。
当日はベビーシッターの資格を持つ2児の母・横澤夏子さんがプレゼンターを務めた。ヨシタケ氏は「これからもヘンなテーマをヘンな形で本にして、素敵な苦笑いを提供していきたい」と喜びを語った。

「enCONTACT」運用開始/マーケットイン志向の新刊流通プラットフォーム/トーハン

トーハンは10月27日、書店と出版社を結ぶ新たなプラットフォーム「enCONTACT」(エン・コンタクト)の運用を開始した。一部取引先より先行し、順次拡大を図る。近刊情報や市場ニーズを取引先と共有し、書店を起点としたマーケットイン型の流通構造への転換を促進する。
「enCONTACT」は、書店向け・出版社向けの2つのウェブシステムで構成される。書店向けシステムでは「近刊商品の事前申込」や「入荷予定数の確認」、出版社向けシステムでは「搬入受付」「部決」「書店からの事前申込の確認」の各機能を実装している。
「enCONTACT」を通じて、書店はJPRO近刊情報を元に販売計画を立案・実行でき、出版社は事前申込状況などから需要予測の精度向上が図れる。また、一連のプラットフォーム上で情報が連動するため、書店・出版社・トーハンで相互にデジタル化による業務合理化が可能になる。
「enCONTACT」は、利用料無料で、書店・出版社に広く提供する。
トーハンは中期経営計画「REBORN」を通して本業の復活を目指すにあたり、書店店頭や読者のニーズを起点とする「マーケットイン」の視点に立ち、出版流通ネットワークの改革を進めている。「enCONTACT」はそのネットワークの重要な部分を占める「新刊流通」で、業務のデジタル化を進めて取引先との情報連携を強化し、ともにマーケティング活動の進化を図るという構想のもとに開発した。
今後、一層きめ細かくマーケットのニーズやウォンツに応えられる新刊流通を目指し、システムの利用拡大を図っていくという。
書店向けウェブシステムは、10月31日に稼働をスタートした。先行してグループ書店約300店舗で運用テストを行っている。その検証を踏まえ、取引先書店には来年1月よりサービスを提供する予定。
出版社向けウェブシステムは、10月27日より、まずマーケットイン型販売契約施策への参加出版社14社を対象にスタートした。来年3月をめどに、新刊ライン利用出版社へ案内を拡大していく。

〝サンタになって本を贈ろう〟/「ブックサンタ」今年も開始/全国779書店で本の寄付を受付

貧困、病気、災害などで苦しい生活を余儀なくされている子どもたちにクリスマスの思い出として絵本や図鑑を贈る社会貢献型プロジェクト「ブックサンタ」が、今年も11月1日から始まった。
子どもたちに贈りたい本を購入し、レジでその本を寄付すると「サンタクロースから本が届く」という取り組み。NPO法人チャリティーサンタが「誰でも書店で本を買って子どもたちのサンタになれる」と呼びかけ、2017年にスタート。参加書店は年々拡大し、6回目となる今年は全国47都道府県779書店で実施している。目標は5万冊。
寄付の受付はクリスマスイブの12月24日まで。

谷口会長を再選、2期目に/書店現場改善へ「提言委」新設/中部トーハン会

中部トーハン会は10月27日、名古屋市中区の名古屋観光ホテルで第55回定例総会を開き、会員書店、出版社、トーハン関係者ら総勢240名が出席した。
はじめに2004年から20年まで8期16年会長を務めた髙須博久相談役(豊川堂)が登壇。「デジタルの便利さだけではなく、こうして人と人が向き合って話をすることが一番。AIに使われるのではなく、使いこなす人間になってほしい」と述べ、同会と出版業界のますますの発展を祈念すると結んだ。
谷口正明会長(正文館書店)は、GIGAスクール構想をはじめ経済の論理で動いていることが多すぎると強い危機感を示し、「本当に子どもたちの教育にとって何が良いのか、文科省内にも考えている部署はない。情けない国になってきた。せめて出版界だけでも何とかしたい」と語った。
谷口会長を議長に進めた議事では、すべての議案を原案通り承認した。役員改選では谷口会長、別所信啓(別所書店)、木野村匡(東文堂本店)両副会長を再選した。谷口会長は提言委員会の新設を報告し、「書店現場の問題を出し合い、業界全体であれば改善できることを提言していく」と方針を説明した。
このあと、講談社・峰岸延也常務、トーハン・近藤敏貴社長があいさつした。近藤社長は、この日からスタートした新しい読書推進運動「BOOKMEETSNEXT」に言及し、「書店、出版社、取次がワンチームになって盛り上げたい」と述べた。また、大日本印刷との協業やメディアドゥとの資本業務提携、書店と出版社を結ぶ新しいプラットフォーム「enCONTACT」など同社の施策を説明。「店頭を盛り上げ、書店を人の集まる場所にしていきたい」と力を込めた。
このあと中部トーハン会プレミアムセールの表彰を行い、国際ジャーナリストの堤未果氏が「報道されないデジタルの真実と守るべき活字文化」をテーマに講演。懇親パーティーではNHK出版・土井茂紀社長の発声で乾杯した。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

脳は、記憶を積極的に消す機能を持っている。岩立康男著『忘れる脳力脳寿命を伸ばすにはどんどん忘れなさい』(朝日新書810円)は、学校で忘れ物をすると叱られ、多くの人がそう教育され思い込んできたのだが、忘れることこそ脳を柔軟に保つことになると、脳神経外科医師。
脳には記憶情報を伝える神経細胞、ニューロンと記憶を定着させる3種のグリア細胞があり、ニューロンにはシナプスという樹状突起がある。シナプスには化学信号を電気信号に変換し、それをまた化学的物質を用いた信号に換えている。これが物忘れの装置であり、コンピュータと違う生きた脳の真骨頂なのだ。 歩き方など脳の神経回路に組み込まれた記憶は忘れないが、加齢による物忘れは神経細胞の減少で記憶の総量が減っているからだ。脳機能を最大限引き出すには忘れた方が良いのである。
落合陽一著『忘れる読書』(PHP新書1000円)も、忘れるための読書を提案。今、身につけたいのは抽象化する力と、点と点を結ぶ「気づく力」を鍛えること。それには何といっても読書が一番なのである。本は読み通さずにざっと読むなど自由で良い。古典、哲学、理工書、小説など27の本も紹介する。