全国書店新聞
             

平成29年4月15日号

第21回春の書店くじ/4月20日から配布スタート

4月23日の「世界本の日サン・ジョルディの日」に合わせて、第21回「春の書店くじ」の配布が4月20日からスタートする。1等賞には、「図書カード1万円」400本を用意した。4月30日までの実施期間中、書籍・雑誌500円以上を購入した読者に「書店くじ」を進呈する。
第21回「春の書店くじ」の宣伝用ポスターは、フランス・ロココ期を代表する画家ジャン・オノレ・フラゴナールの「読書する女(読書する娘)」を用いたデザインのもの。
ポスターでは、4月20日(木)から30日(日)までの実施期間や、賞品総額が2860万円で9・6本に1本が当たり、当選本数は合計20万9000本であることをアピール。1等賞の図書カード1万円以下、4等賞までの各賞の賞品と当せん本数、くじの配布方法、当せん発表日と発表方法、賞品引換期間などを記載している。
「春の書店くじ」を申し込んだ書店には、取引取次店経由で4月18日前後までにくじを送付する。宣伝用ポスターは、日書連ホームページ(http://www.n-shoten.jp/)からファイルをダウンロードして印刷する方式になっている。
※書店くじの申込みは2月20日で締め切っています。締切日以降の申込みはできません。

京都ブックフェスティバル/4月22日、23日に開催

「京都ブックフェスティバル2017」が4月22日、23日の両日の午前11時~午後7時、京都市中京区・ゼスト御池特設会場で開かれる。主催は同実行委員会。京都府書店商業組合、日本書籍出版協会京都支部が後援。
2回目となる今回は、地元出版社の本の割引販売、バーゲン本フェア、作家・畠山健二氏、国際日本文化研究センター教授・井上章一氏、京都高低差崖会崖長の肩書を持つ梅林秀行氏のトーク&サイン会、JPIC読書アドバイザーの絵本の読み聞かせ、図書館仕様のビニールカバー掛けを有料で行うサービスなど、様々なイベントを催す。

読者念頭に再販弾力運用進める/出版再販研究委員会懇親会で相賀委員長

日本書籍出版協会(書協)、日本雑誌協会(雑協)、日本出版取次協会(取協)、日本書店商業組合連合会(日書連)の出版4団体で構成する出版再販研究委員会は3月7日、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で懇親会を開き、各団体代表者や関係者39名が出席。相賀昌宏委員長(書協理事長、小学館)は「読者サービスを念頭に、再販制度の弾力的運用を進めたい」との考えを示した。
各団体代表のあいさつは以下の通り。
【出版再販研究委員会・相賀昌宏委員長】
2月27日の公取委の再販ヒアリングで、新しい取引企画課長と課長補佐は、このまま進めてほしいとのことだった。再販制度を守りながら、読者サービスを念頭にしっかりと弾力的運用をやっていきたい。
富士山マガジンが大幅値引きで定期購読を獲得していることについては、同社の西野伸一郎社長と話し合い、書店のことを考えながらやってほしいと伝えた。
一番苦労している書店のことを考えながら、同時に再販制度を持続する。それぞれの立場や考えをすくい取る委員会にしたい。
【取協・平林彰会長(日本出版販売)】
中国ではネット書店のシェアが5割を超え、北京の民間書店はほとんどなくなってしまった。それを見て、再販制度はしっかり守らなければと思った。弾力的運用を形式的なものでなく、実のあるものにしていかなければいけない。
また、ネット書店の学生向け割引サービスについては、弁護士に聞くと、契約の建て付けが出版社が起点になっており、出版社からの指示がなければ取次が動くことはできない。
最近、出版社と小売が直接取引を行うようになっている。ビジネスは自由だが、弁護士によると、これまでの再販契約の建て付けは出版社と取次、取次と書店になっており、出版社と小売が直接取引する場合は契約が成立していない可能性がある。仮に再販契約を結んでいないとすると、定価表示をやめるようお願いしなければいけないのではないかなど、色々と派生する問題が出てくる。
【日書連・舩坂良雄会長(大盛堂書店)】
公取委の取引企画課長が代わったのであいさつに伺い、取次の入帳、新刊配本、アマゾンなど書店業界の諸問題を説明した。努力するので、今後も再販堅持をお願いしたいと話した。
先日、万引問題でテレビの取材を受けた。本の売上が厳しい時に、加えて万引被害が足を引っ張っている現状を説明した。今、万引被害による損失の負担は書店だけが負っている。顔認証技術による万引防止システムの導入の際、出版社や取次にも費用の負担をお願いするなど、業界3者で負担を分かち合うやり方を検討したい。

5月10日に春のくじ抽せん会

1等賞「図書カード1万円」が当たる日書連主催、第21回「春の書店くじ」の抽せん会は、5月10日午後0時半から東京・千代田区の書店会館で、出版社、取次、関係会社、日書連役員の立会いのもと行われる。当せん発表は5月25日(木)、日書連ホームページと書店店頭掲示のポスターで。

書店が選んだ絵本の販売など/4月23日にサン・ジョルディ名古屋

「サン・ジョルディフェスティバル名古屋2017」が4月23日午前10時~午後5時、名古屋市中区の名古屋テレビ塔1Fタワースクエアで開催される。サン・ジョルディ名古屋実行委員会(愛知県書店商業組合、日本・カタルーニャ友好親善協会)と中日新聞社が主催。カタルーニャ州政府が特別後援。
32回目となる今回は、「本屋さんが選んだ子供に読み聞かせたい絵本101冊の展示・販売」をはじめ、バラや中古本・中古CD販売、絵本作家宮西達也さんらによる絵本読み聞かせとサイン会、ビブリオバトルin名古屋テレビ塔など、様々な催しが用意されている。また、初の試みとしてビブリオバトルチャンプ本の展示・販売を行う。
午前9時45分に始まるオープニングセレモニーでは、主催者を代表して愛知県書店商業組合の春井宏之理事長があいさつする。

「春夏秋冬本屋です」/創業百年へ、志高く/神奈川・長谷川書店ネスパ店店長・長谷川静子

他の書店さんで勤まるかはわからないが、書店店頭業務は、ひととおりは出来る。自分の行動=お店はどれほどお役に立てているのか、自分は稼いでいるのかはわからない。売上数字は右肩上がりにはならないが、〝志〟だけは変わらずに持っている。
当店は、今年創業七十年である。「本は〝心〟と〝頭〟の栄養です」を合言葉に、地域のお客様に文化と情報と感動をお届けすることにより、毎日の暮らしと社会が一層明るく豊かになるよう貢献するという理念に基づき、「知的文化情報発信基地」を目指し、行動している。実際には、本を売ることと読書推進活動を積極的に行うことの二本柱で営業している。
「教育環境の創造による小書店の成長」という小論文で日書連の懸賞論文に入選し、東京国際ブックフェアで「地域との信頼関係こそ『町の書店』が生きる鍵」と題し、セミナー講師を務めるなど、人生に二度とない経験をさせていただいた。これらはすべて、お店をやりながら、スタッフと一緒に切磋琢磨して現場から導き出した解である。しかしながら、何年も経っているのに、未だに理論構築まで至らず、数値での表現も出来ていない。自分のことなのにサボっているため、非常に不安で仕方ない。「戦略のない戦略」というとカッコイイのか…。
一応、創業百年を目指しているお店です。おつきあいくださいませ、ね。

帯コン課題図書は版元14社が協賛/大阪理事会

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は3月11日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
読書推進委員会の報告では、「本の帯創作コンクール(帯コン)」課題図書の協賛社は、あすなろ書房、アリス館、金の星社、くもん出版、小峰書店、小学館、新日本出版社、鈴木出版、汐文社、童心社、徳間書店、BL出版、ほるぷ出版、理論社の14社と説明。また、読書ノートの特別協賛について現在の交渉状況を説明した。
雑誌発売日励行委員会からは、2月9日開催の委員会について報告。西川地区委員長が近鉄阿部野橋駅売店・親栄会の事例について小学館より大阪屋栗田へ2月22日付で口頭にて厳重注意する旨報告したことを説明した。
出版販売倫理委員会では、2月28日開催の大阪府警「大阪府万引き総合対策協議会」設立総会に出席した藤田委員長が、総会の模様を報告した。
(石尾義彦事務局長)

組合員数は370店に/河出書房のゴッホ画集などを増売/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は4月4日、東京都千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
総務・財務委員会では、5月19日開催の第41回通常総代会に向けて、平成29年~30年度役員推薦会議を開催したことを報告。また、4月1日現在の組合員数は前年同期と比べ脱退29店、加入4店で370店になったと報告した。6月以降の理事会日程については以下の通り決定した。6月2日(金)、7月4日(火)、8月休会、9月5日(火)、10月3日(火)、11月2日(木)、12月5日(火)
事業・読書推進委員会の増売企画では、WAVE出版と河出書房新社の担当者が企画を説明した。WAVE出版は「WAVE出版30周年フェア」について説明、さらに東京組合を対象にしたセットとして、Aセット「明日を生き抜く『暮らし』のヒント」、Bセット「親子で楽しめる絵本」(ともに5点各3冊)の2つを用意するとして増売を呼びかけた。
河出書房新社は、ゴッホの未公開スケッチ65枚を収録した画集の日本版『フィンセント・ファン・ゴッホ失われたアルルのスケッチブック』(4月20日発売、本体1万円)について、東京組合限定企画として1冊3百円の実売報奨をつけると説明。また「大人の塗り絵」シリーズについて、東京組合限定の報奨を設定し、年間で最も販売が伸びる時期である「母の日」に向け拡販を求めた。

読書アドバイザー講座・第24期の修了式/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC)が主催する第24期読書アドバイザー養成講座の修了式が、3月27日に東京都新宿区の日本出版クラブ会館で行われた。
冒頭であいさつしたJPICの肥田美代子理事長は「養成講座は24期で読書アドバイザー2400人を世に送ったことになる。全国各地で読書の仲間を50人、100人と作ってくださるのはとても大事なこと。アクティブ・ラーニングが2020年からの新学習指導要領で始まる。この新しい教育は、読書や図書館なしには進められない。私たちの時代が来るのだと、自信をもって地域での活動を頑張っていただきたい。そして読書アドバイザーの横のつながりを大事にしてほしい」と述べた。
来賓の日本雑誌協会・鹿谷史明理事長は、雑誌市場の変遷に言及し、現在の厳しい状況を説明。「マガフェス」や昨年末の特別発売日設定などの取り組みを紹介し、「今年も様々な施策を展開するので雑誌の動きも気にしていただけるとありがたい」と呼びかけるとともに、「ご自身が読書を楽しむのはもちろん、1人でも多くの方が読書を楽しまれるよう、ご指導をお願いする」と今後の活躍に期待した。
続いて、第24期修了生86名を代表して島袋妙絵さん、橋本敬さん、山城則子さんが修了証書を受け取り、受講の感想や今後の抱負を語った。

日書連のうごき

3月1日文字・活字文化推進機構理事会に舩坂会長が出席。
3月6日公正取引委員会取引企画課訪問に舩坂会長、柴﨑、本間両副会長が出席。会計士による定期監査。
3月7日出版再販研究委員会・懇親会に舩坂会長、藤原、面屋、西村、本間各副会長、田島、安永両理事が出席。
3月8日JPO運営幹事会に事務局が出席。
3月9日JPO運営委員会に柴﨑副会長が出席。取次協会と春の書店くじ打合せに事務局が出席。
3月10日万引対策強化国際会議2017に舩坂会長が出席。JPIC理事会・評議員会に舩坂会長、藤原、西村両副会長、田島理事が出席。
3月14日JPO理事会に藤原副会長が出席。
3月15日出版倫理協議会に事務局が出席。
3月16日全国中小企業団体中央会理事会に舩坂会長が出席。学校図書館整備推進会議運営委員会・総会に西村副会長が出席。
3月17日九州雑誌センター取締役会に舩坂会長が出席。
3月22日雑誌発売日励行本部委員会に藤原、西村両副会長、井上、田島、塩川、長﨑各理事が出席。文化産業信用組合理事会に舩坂会長が出席。全国中小小売連絡会に事務局が出席。
3月23日光文社三賞贈呈式に事務局が出席。
3月24日活字文化推進会議に舩坂会長が出席。出版情報登録センター管理委員会に事務局が出席。
3月27日JPIC読書アドバイザー養成講座修了式に舩坂会長が出席。
3月28日日本出版クラブ理事会に舩坂会長が出席。全出版人大会事務局打合せに事務局が出席。日本絵本賞贈呈式に事務局が出席。
3月29日政策委員会に舩坂会長、鈴木、藤原、面屋、柴﨑、西村、本間各副会長が出席。日本図書普及臨時総会・役員会に舩坂会長、鈴木、藤原、面屋、西村各副会長が出席。
3月30日会計士による定期監査。

会費制度等検討WGを設置/JPO

日本出版インフラセンター(JPO)は3月14日に理事会を開き、会費制度等検討WGの設置や、書店マスタ提供サービスの利用規約改訂などを承認した。
会費制度等検討WGは、年会費と運営する各センターの利用料金の一本化や、財政的な安定収入を図るための施策について、今年12月をめどに仕組み作りを進める。リーダーは運営委員会委員の原本茂氏(小学館)が務め、書店マスタ管理委員会委員長の岡垣重男氏(河出書房新社)や、JPOを構成する5団体から推薦されたメンバーが参加する。
書店マスタ提供サービスの利用規約改訂は、会員資格を緩和し、日本出版取次協会のコードを持っていない出版社でも利用目的が適切であると判断した場合は利用可能にするとしたほか、規約全体をわかりやすく整備した。

訃報

宇都木孝一氏(うつぎ・こういち=日書連顧問会計士)4月7日逝去、89歳。通夜は同12日、告別式は同13日に東京都荒川区の町屋斎場で営まれた。喪主は妻の治子さん。

2016年書店倒産25件、前年比1・5倍/東京商工リサーチ調べ

東京商工リサーチが発表した「2016年(1―12月)『書店』の倒産状況」によると、16年に倒産した書店は前年比1・5倍の25件となり、2年連続で前年を上回った。
ネットメディアの浸透やオンライン販売、電子書籍の普及など市場環境が大きく変化し、書店経営の苦境を反映した。出版業界は、書店だけでなく出版社、取次など業界全体で厳しい状況が連動しており、抜け出すのは容易ではない、と見ている。
負債総額は同55・4%増の52億9800万円。負債1億円未満が13件と小規模事業者が過半数を占め、小・零細規模書店の厳しい実態が浮き彫りとなった。また、従業員別では、5人未満が22件と同2・4倍に増え、家族経営の小規模事業者の倒産が際立った。
取次の業績不振も影響した。太洋社が昨年3月に破産を申請。この影響を受けた書店は判明分だけで、連鎖倒産が2件、休廃業が17件、閉鎖店舗が19店舗。
原因別では、「販売不振」が同41・6%増の17件、次いで「他社倒産の余波」3件、「事業上の失敗」2件だった。
形態別では、破産が同69・2%増の22件と全体の約9割。一方、再建型の民事再生法は前年と同じくゼロで、一度業績不振に陥った書店の立て直しは難しいことを浮き彫りにした。
地域別では、全国9地区のうち8地区で倒産が発生。最多は関東の9件で、次いで中国4件、近畿3件、九州が各3件、東北、中部が各2件、北海道、四国が各1件の順。
休廃業・解散は41件で前年より3件増えた。11年の23件を底に年間40件前後で発生し、倒産を上回るペースで推移している。家族経営の小規模事業者を中心に、先行きを展望できないケースや後継者難などで事業継続を断念するケースも目立つ。

日本地図共販、破産手続き開始決定

帝国データバンクによると、2月10日に東京地裁に自己破産を申請していた日本地図共販(資本金9600万円、東京・江戸川区、登記面=同・千代田区、佐藤史泰代表、従業員21名)は、3月21日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。負債は約11億7800万円。
破産管財人は早川学弁護士(千代田区丸の内2―6―1、森・濱田松本法律事務所、℡03―5223―7748)。
グループのキョーハンブックス(資本金1000万円、東京・千代田区、高田登司代表)も、同日、同地裁より破産手続き開始決定を受けた。負債は4900万円。

書店、新古書店、警察、万防機構の連携による万引防止システム構築を/日書連会長・舩坂良雄/「万引対策強化国際会議2017」パネリスト発言集①

全国万引犯罪防止機構(万防機構)が3月9日、10日の両日、都内で開催した「万引対策強化国際会議2017」で、日米の小売業者や専門家らが万引被害の実態と対策について意見交換を行った。各パネリストの発言のうち、今回は日書連・舩坂良雄会長が「書店業界の万引対策」をテーマに話した内容を紹介する。東京都書店商業組合は2003年、都庁を訪ね、万引防止対策への協力を求めた。当時、治安対策担当だった竹花豊副知事に全面的な協力を約束していただいた。
同年12月から翌年3月までの3ヵ月間、「STOPザ万引」を合言葉に、組合加入書店全店の店頭にポスターを掲示して「万引き防止キャンペーン」を展開した。また、書店をはじめとする販売業者や東京都、警視庁、弁護士会、教育委員会などの各機関が「万引防止協議会」を組織し、当時は青少年の初発型非行と言われた万引について情報交換を行った。特に書店では換金を目的にコミックが狙われていることから、新古書店での買い取りを厳格にするようお願いした。
書店の万引被害は深刻だ。現在の万引の特徴は、複数人数によるコミックの大量万引や、万引常習者による医学書や美術書など高額な専門書を狙った繰り返しの万引を挙げることができる。盗んだ商品の換金場所は、従来の新古書店からネットオークションの場に移っている。
日本出版インフラセンター(JPO)が2008年3月にまとめた、書店のロス率に関する調査がある。調査した634書店の平均ロス率は1・91%だった。当時の書店の経常利益率は平均0・6%程度だから、その3倍強のロス率だ。これを金額に換算すると261億円と推定される。26%ある伝票ミスや返品不能品といったうっかりミスを差し引くと、売上の1・41%、193億2000万円が万引被害と考えられる。
万引ロス率を分析すると、圧倒的にコミックが多いことが分かる。次が写真集や高額本、単行本の一般書が続く。換金目的で万引しているので、需要の高い商品ばかり狙われている。コミックの被害は金額こそ写真集、高額本と大差ないが、冊数で見ると他を大きく引き離して7割近くを占める。1冊や2冊ではなく、1巻から最新巻まで一度に盗まれている。換金の際にまとめて売り出さないと、商品価値が下がるからだ。
書店における万引被害の実例を紹介したい。私の店(東京都渋谷区・大盛堂書店)の防犯カメラが録画した万引犯の画像を見ると、地下1階のコミック売場でコミックを手に取り、地下1階から地上1階に上がる階段の途中で肩にかけた鞄の中に商品を隠している。そして店から出て行った。
一般的に商品を鞄に入れた時点で万引が成立しており、店内で捕捉してもよいと言われているが、モニターの前に従業員を張り付けておくわけにもいかない。また、いったん店の外に出てしまえば、ますます捕まえるのは困難になる。
万防機構が検討している、防犯画像を地域の書店間で活用・共有するシステムについて、多くの書店関係者は万引対策として有効と考えている。いま多くの書店が使っている防犯カメラは古い機種。できれば新しい顔認証システムを導入したいと考えている。当店にも顔認証システムの防犯カメラを入れたい。渋谷地域の書店7店、新古書店1店、警視庁、渋谷警察署、万防機構が連携して万引対策のための地域モデルを構築し、渋谷から東京都、全国へ広げていければと考えている。
当店では中学生、高校生など未成年者の万引の場合、よほど悪質でなければ警察に通報しない。悪質な場合は警察官に来てもらって、従業員が警察署で事情聴取を受けるわけだが、以前は事情聴取に3時間から6時間もかかって、その間、従業員が店に戻って来れない状況が続いていた。竹花理事長から渋谷警察署に話をしていただいて、今は万引事案の処理が早くなった。
当店の万引被害は売上の0・6%だが、隣のドラッグストアに聞くと20%だという。「20%だと書店は潰れてしまう」という話をした。万引被害は当店だけの問題ではない。渋谷商店街全体が被害を被っているので、商店街として取り組んでいく問題だと思っている。
顔認証システムは池袋の大型書店が導入して実績がある。ただ、中小零細書店は書籍・雑誌の売上が低迷し厳しい経営状況にあり、高額なシステムを導入することが難しい。出版社、経済産業省から資金面のバックアップを検討していただきたい。万引防止のため早急に導入する必要がある。

独自商品の大幅拡充図る/ニュープロダクト開発部を新設/トーハン

トーハンは3月21日、4月1日付の機構改革と人事異動を発表(別掲)。「出版総合商社」への変化対応をコンセプトに、組織・機構と人財配置の見直しを行った。
機構改革では、複合事業本部内にニュープロダクト開発部を新設し、自社オリジナル商品の大幅拡充を図る。CVS部門の強化として、店舗向けとネット向けの商品の仕入機能を一本化するCVS商品統括室を新設した。また、昨年4月1日付で設置したコールセンター準備室をトーハン桶川コールセンターに改称、得意先へのサービスレベルの向上を図る。
さらに、出版総合商社へと進化する組織設計として、女性や若手の活躍推進を図り、積極的なキャリア支援を基本原則にグループ全体の事業領域の拡大にあわせた組織構築を行った。昇格者は73名で、アシスタントマネージャー・チーフ昇格者の3割強が女性となり、全職制に占める女性比率は約1割まで高まった。
〔機構改革〕
▽複合事業本部にニュープロダクト開発部を置く▽CVS第二部にCVS商品統括室を置く▽デジタル事業部を廃止する。
▽コールセンター準備室をトーハン桶川コールセンターに改称する▽雑誌部の雑誌仕入統括グループ・定期誌グループ・ムックグループを廃止し、雑誌統括グループ・雑誌管理グループ・雑誌仕入グループ・雑誌調整グループを置く▽複合第二事業部のMVPブランドグループを廃止する
〔役員人事〕
▽解外販推進担当兼任委嘱専務執行役員清水美成▽解デジタル事業部長兼任委嘱上席執行役員高見真一▽解CVS第一部長兼任委嘱上席執行役員塚田達夫▽委嘱特販支社副支社長、解九州支社長委嘱執行役員堀内洋一▽委嘱コミック営業推進室長兼任執行役員齊藤貴
▽退任執行役員酒井修

2月期販売額5・2%減/前年の閏年が影響しマイナスに/出版科研調べ

出版科学研究所調べの2月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比5・2%減。前年は閏年で、2月の搬入日数が1日多いことで数字が底上げされていたため、当月はマイナスになった。
部門別では、書籍が同1・9%減、雑誌は同9・6%減。雑誌の内訳は月刊誌が同7・3%減、週刊誌が同19・0%減。週刊誌の大幅減は、前年同月に『週刊文春』がスクープを連発するなど総合誌の実売率が大幅に上昇したこと、閏年で少年コミック誌など送品が増えた雑誌が多く、実売率が持ち上がったことによる反動を受けた。
返品率は書籍が同0・4ポイント減の31・0%、雑誌が同1・8ポイント増の40・9%。返品日数も1日減だったため、書籍の返品は改善。週刊誌は前述の「文春」効果などで前年の返品率が大幅に改善されており、反動で上昇した。
書店店頭の売上は、書籍が約2%減。文芸書は、村上春樹の新刊『騎士団長殺し第1部・第2部』(新潮社)が2月24日に発売されたため、約35%の伸長を見せた。学参は、「ボカロで覚える」シリーズ(学研プラス)の新刊が大部数で刊行されたことにより約7%増。雑誌は、定期誌が約8%減、ムックが約11%減、コミックスが約7%減といずれも苦戦した。

「新・よくわかる出版流通のしくみ」/メディアパルから最新版

トーハン関連会社のメディアパルは、出版流通の基礎知識から変貌する出版界の最新情報までを解説したブックレット「新・よくわかる出版流通のしくみ2017‐18年版」を発行した。A5判48頁、頒価本体5百円+税。
このブックレットは3年ぶりの改訂で、出版業界の市場規模や流通ルート、本の製作過程、書店の業務、新刊・注文・返品の物流、図書館や教科書の流通など、出版流通のシステムをデータ・図・イラストを交えて分かりやすく簡潔に解説。特に新入社員の基礎教育テキストとして定評があり、業界全体を俯瞰できるため出版業界に関心のある他業種の読者にも好評を得ている。

日販、近刊予約サービスを稼働/「NOCS7」の機能拡張

日販は、書店向け情報提供システム「NOCS7」の機能を拡張し、3月14日から近刊予約サービスの稼働を開始した。
日販は、出版社や日本出版インフラセンターの協力で近刊情報データベースの整備を進めており、登録商品は常時1万点以上に達している。同サービスは、発売前の商品の予約注文に対する円滑な商品供給と、書店店頭での予約商品の客注対応を効率化するため開発したもの。書店店頭では、既刊商品と同様に、書籍・コミック・ムックの近刊商品の商品情報・発売予定日をその場で確認し、画面操作のみで注文できる。予約した商品は、新刊送品と一緒に入荷するため、発売日に読者に渡すことが可能となる。

日販、単品在庫管理システムをリニューアル

日販は、NOCS7のメニューの1つである書店向け単品在庫管理システム「サポートC」を2月28日にリニューアルした。
サポートCは、POSレジシステムとリアルタイムに連動し、売上速報や店頭在庫を確認しながらの発注オペレーションが可能なツール。今回のリニューアルでは、以下の機能を強化した。①店内の商品在庫場所と地図を登録できる、ロケーション管理機能を追加(別途有料オプション)。「attaplus!」と連動し在庫場所を検索できる。②チェーン本部向け商品管理機能を強化し、本部から複数店舗の実績確認と発注を一括して行えるようにした。③文具や雑貨、CDなどのJANコード商品の単品在庫管理システム「セル蔵人」との連動で、複合商材もまとめて管理できるようにした。④フェア展開している商品をグループ登録することで、売上分析や欠品補充を簡単に行えるようにした。

「能勢仁が語る書店史道を拓いてくれた人」/八重洲ブックセンター・河相全次郎氏

私が河相全次郎さんに初めてお会いしたのは1980年代始めであった。その頃私はアスキーの出版営業統轄部長として、お店にお邪魔していた。そして毎年秋に行われるフランクフルト・ブックフェアにも参加していた。その帰りにロンドンのフォイルズ書店に立ち寄ることが多かった。帰国後河相社長に報告することが私の楽しみであった。
八重洲BCはフォイルズ書店の提携店だった。政治家・愛書家であった鹿島守之助がフォイルズ書店を見て、日本にもこうした大型書店を創ろうと考えたのが1975年である。八重洲BC初代社長は甥の河相全次郎さんだった。店は大店法の規制、全国書店の猛反対に会い、船出は大変であった。しかし反対運動やマスコミ記事が逆に宣伝作用となり、開店は大成功であった。
河相さんはアイデアマンだった。中二階の喫茶室「ティファニー」は開店当初からある。花柄模様の洒落たブックカバーの創案も河相さんである。イベントも多かった。節分の日に福豆をあげたり、雛祭りの時雛あられを配る商法も故人のアイデアであった。
故人が開店時掲げた五訓がある。
1.まずどうすべきか考えよ2.できないといわずにやってみよ3.新知識の採用を怠るな4.一致協力して事にあたれ5.他人のいうことを気にするな。
(ノセ事務所代表)