全国書店新聞
             

平成21年10月11日号

ホームページを再リニューアル/滋賀組合

滋賀県書店商業組合(平柿宗敏理事長)は9月29日、近江八幡市・Gnet滋賀で定例理事会を開催した。
委員会報告では、流通発売日励行委員会から北陸自動車道神田PAで週刊誌5誌の早売りがあったが、本部委員会に報告し前渡し中止になった旨の報告。また、広報委員会からホームページを再リニューアルし、滋賀県に関する本の紹介HPを充実すること、図書館サポート委員会から日書連MARCの導入状況が報告された。
審議事項として、21年度委員会構成、組合加入脱退申込、取次等懇親会の開催、移動理事会の日程について討議した。
検討事項として、中央会の補助金を活用した研修会開催を提案され、検討することになった。
(岩根秀樹広報委員)

松信泰輔氏ら3氏を合祀/出版平和堂合祀者顕彰会

10月2日に箱根・芦ノ湖畔の出版平和堂で営まれた出版平和堂合祀者顕彰会で、日書連からは松信泰輔(神奈川・有隣堂)、松本一男(香川・松本書店)、白幡義博(日書連事務局)の3氏が合祀された。

東京組合Bookers/企画推進チームが発足

東京都書店商業組合は10月6日に定例理事会を開催。電子サイト運営推進委員会は同委員会内に企画立案、出版社との交渉等を行う企画推進チームを発足、大中小規模の書店20名編成で第1回全体会議を実施したことが報告された。また、携帯向け電子書籍サイト「Booker,s(ブッカーズ)」で、『笑う警官』の映画化を記念し原作者・佐々木譲氏の文庫3作品セットフェアを展開している。
〔電子サイト運営推進委員会〕
委員会内に企画推進チームを立ち上げ、9月28日午後3時からACCESS本社で「第1回企画推進チーム全体会議」を開催。紀伊國屋書店、丸善、有隣堂、八重洲ブックセンターから7名、大盛堂書店、オリオン書房、優文堂書店、こみや書店、新橋書店と運営委員を合わせて計20名のチームを編成した。会議では「電子コンテンツ市場について」「ブッカーズの考え方と企画推進チームの活動」「店舗連動企画について」などを説明。約3時間にわたり意見交換を行った。今後、勉強会形式から実務へと移行していく。次回会議は10月14日に開催。
また、同委員会が運営する携帯電話用電子書籍サイト「ブッカーズ」は、佐々木譲による警察小説『笑う警官』の映画化とブッカーズでの電子書籍化を記念して、角川春樹事務所との合同企画「『佐々木譲』文庫3作品セットフェア」を実施している。セット内容は『笑う警官』『警察庁から来た男』『牙のある時間』の3点・22冊。3作品にブッカーズのQRコード入りオリジナル帯を付け、QRコードからサイトにアクセスした購入者の中から抽選で100名に映画鑑賞券をプレゼントする。さらに、ブッカーズサイト内で『笑う警官』を宣伝することで書店店頭への顧客誘導を図る。なお、電子書籍はブッカーズ独占配信。
〔指導・調査委員会〕
09中小書店研修会を11月9日午後3時から書店会館で開催する。講師は東京組合特任理事の丸善・小城社長。テーマは未定。
〔厚生委員会〕
平成22年新年懇親会を1月14日午後5時半から東京ドームホテルで開催する。
〔流通改善委員会〕
TS流通協同組合は物流問題が存続に関わる大きな問題になっているが、栗田との協業化が成立したことで物流コストが従来の半分以下になった。10月1日に動き出した新物流体制は今のところ順調に推移しているとの報告があった。
同組合の9月期(9月1日~30日)売上金額は785万6115円(前年比81・5%)、発注件数は7956件(84・7%)、書店数は72書店(112・5%)だった。

10月27日からスタート/第63回読書週間

10月27日から始まる「第63回読書週間」(読書推進運動協議会主催)のポスターが出来上がった。今回の標語は「思わず夢中になりました」。イラストは、全国から集まった1209点の中から選ばれた、イラストレーター・前川弘さん(大阪)の作品。

読書週間書店くじ/特賞は図書カード5万円分

10月27日から始まる第36回読書週間書店くじのポスターが出来上がった。特賞として図書カード5万円分が100本当たることを大きく打ち出し、総計51万7700本が当たるとPRする。

2日間で児童書1243万円を販売/上野子どもの本まつり

子どもの読書推進会議と出版文化産業振興財団(JPIC)は9月26日と27日の両日、台東区の上野恩賜公園で第7回「子どもの本まつりinとうきょう」を開催した。
この催しは、両団体が春の「上野の森親子フェスタ」とともに平成15年度から毎年開催しているもの。中央噴水池広場では児童出協会員社を中心に「チャリティ・ブック・フェスティバル」を実施。絵本・児童書・ヤングアダルト作品をおおむね2割引の価格で販売したほか、5割引の読者謝恩価格本コーナー(神保町ブックハウス)など2日間で1243万3034円を売上げた。1日当たり平均売上げは620万円超と過去最高を記録した。
会場では、人気絵本作家のサイン会や、JPIC読書アドバイザーなどによるおはなし会が随時開催され、多くの親子連れで賑わった。26日午前には、東京都美術館講堂で「JPIC読みきかせサポーター実践講座特別編」を開催し、235名が参加した。

1月開催の絵本ワールドで即売会/鹿児島組合

鹿児島県書店商業組合(井之上博忠理事長)は、第4回理事会を9月19日午後2時から鹿児島書籍会議室で開催、以下の報告事項があった。
①「書店商業組合親善グランドゴルフ大会」を10月14日(水)午前10時から、県立吉野公園で実施する。この大会は、組合員の福利厚生活動の一環として実施しているもの。終了後、午後6時からパレスイン鹿児島で表彰式と懇親会を行なう。
②来年1月23日と24日に南日本新聞会館で開かれる「絵本ワールドinかごしま」で、鹿児島県組合として絵本の展示即売会を開催する。
③6月19日~20日に1泊2日の日程で17名が参加して行なわれた「あじさいの会」の報告があった。
(楠田哲久広報委員)

人事

◇太洋社(9月28日付)
代表取締役社長国弘晴睦
常務取締役(経営戦略室担当兼各本部統括)沢野豊
取締役(管理本部長兼内部統制担当)大和政之
同(仕入本部長)
牧野伸一
同(営業本部長兼物流本部長)土屋正三
同(管理副本部長兼総務人事・取引担当)永澤克彦
監査役泉信吾
*西尾慎之助監査役は任期満了により退任。

生活実用書/注目的新刊

ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
という啄木の短歌を何となく覚えてしまったのは、中学生の頃だった。東京しか知らなかったので、雑踏にふるさとの言葉を探しに行く郷愁の想いに憧れたのを思い出す。
あれから40年!は綾小路きみまろ氏の決まり文句だが、今では標準語を話す若い層が増えて、方言を肌で感じる機会がめっきり減っている。
篠崎晃一+毎日新聞社『出身地(イナカ)がわかる!気づかない方言』(毎日新聞社900円)は新聞の暮らし欄の連載をまとめたもの。方言の一言で出身地がたちまちバレますよ、という各地の独特の言い方を採取している。
例えば疲れた時、北海道・東北の人は「こわい」、中部・近畿・中四国「えらい」、九州では「きつい」という。東京で「とても」を、西日本、特に関西では「めっちゃ」というが、最近は東京の女子高生なども使うようになってきた。それは関西のお笑い芸人からテレビによって広がってきたもののようである。
後半は全国の各県別の出身がわかる言葉である。北海道は空揚げをザンギという。東京の方言では、かたづけるのをカタス。京都は鳥肌のことをサブイボ。福岡の出身地バレ語は小銭に替えるのをコマメルというなど、思わず使う言葉が取り上げられている。
真田信治著『方言の日本地図ことばの旅』(講談社+α新書133―1C780円)は、失われつつある日本人の心に響く方言を、むしろ日本語の原点として捉え直す試みである。
岩手県遠野では「昔あったずもな」と始まり、「どんとはれ(これでおしまい)」で終わる民話の語りが、訪れる人を惹きつける。確かに全ての言葉は理解できないが、語る口調のリズムのような音が物語を心に運んでくるのだ。
軒先にぐるぐると風が回るつむじ風を、日本海側では表現する言語記号を持たないという。それは枯葉の季節であるが、日本海側では時雨の時で、すぐに雪が降り始める。つまり気象条件がつむじ風という言葉を生まなかった。
様々な言葉の分布が細かく地図上に図解されるので、わかりやすい。ここでもメッチャが若者語として登場する。
ちなみに方言の残存ベスト3は沖縄、鹿児島、秋田だ。
(遊友出版・斎藤一郎)

日書連のうごき

9月1日面屋副会長が広報委員長としてアマゾンを取材。
9月4日政策委員会。物流研究準備委員会。
9月7日ISBN・ガイドライン等検討ワーキンググループ会議に岩瀬専門委員が出席。
9月9日出版ゾーニング委員会に石井総務部長が出席。「業界用語統一」取協との二者会談に柴﨑副会長ほか役員が出席。JPIC関係4団体事務局代表者会議に大川専務理事が出席。
9月10日出版倫理協議会に石井総務部長が出席。
9月11日千葉県書店商業組合総代会に大橋会長が出席。
9月15日第15回本の学校・出版業界人研修に大橋会長が出席。
9月16日第43回大阪屋友の会連合大会に面屋副会長が出席。「送品・返品同日精算問題」で大橋会長ほか役員が日販を訪問。各種委員会(出版販売年末懇親会、増売、読書推進、組織、共同購買・福利厚生、指導教育、取引改善、流通改善、再販研究、広報、消費税問題、財産運用)。出版社対象「ためほん」打合せ会。
9月17日政策委員会。定例理事会。出版物小売公取協理事会。日書連共済会清算人会議。送返品同日精算で大橋会長ほかがトーハン訪問。
9月18日第4回ISBNマネジメント委員会に小沢事務局員が出席。児童図書出版協会との児童書増売キャンペーン打合せ会に舩坂理事が出席。共有書店マスタ・ユーザ会全体報告会に大橋会長ほか役員が出席。「再販契約を結ぶ意義再確認のお願い」を書協小峰理事長に手渡し、大橋会長ほか役員が経緯を説明。
9月24日文化産業信用組合理事会に大橋会長が出席。「書店くじ」&「ポケッター」取協書籍進行委員会との二者会談に杉山理事が出席。
9月28日再販研究少人数会議に柴﨑副会長ほか出席。出版倉庫流通協議会例会に大川専務理事が出席。
9月30日日本図書普及㈱役員会に大橋会長が出席。全国中央会商業専門委員会に大川専務理事が出席。

明石市長に感謝状贈呈/読書活動推進施策に対して/兵庫組合

兵庫県書店商業組合(三上一充理事長)は9月29日午後1時、明石市役所に北口寛人市長を訪問。明石市が進めている読書活動推進施策に対する感謝状を贈呈した。
明石市は人口30万弱の都市。御多分にもれず、市内の書店も近年、活字人口減少などいろいろな要因があって数店の書店仲間が廃業された。残る各書店は得意分野を生かし、維持継続することに懸命である。
明石市は今年から「ほんだいすき!プラン」を推進し、3年間に3億円の予算計上を決めて、子どもの読書活動推進に力を入れている。我々組合もいままで毎年県協賛の読書普及運動に参加しており、この度の市の決定に共鳴し、感謝の意を申し上げるべく、三上理事長、山根副理事長、村田事務局長、地元書店の大書堂書店・三宅理事が北口市長を訪問。組合の趣旨を説明し、その場で感謝状を手渡して、「私たちの永年の目的と合致する」と感謝を申し上げた。
北口市長からも、書店組合の読書運動についてできることは協力するとの強い言葉をいただいた。
(兵庫県書店商業組合理事・三宅節男)

楽樂ほんやさんのユーザー勉強会/本屋の村

本屋の村有限責任事業組合は「楽樂ほんやさんシリーズユーザー勉強会」をホテルオークス京都四条で9月26日から1泊2日で開催。全国各地から24名が出席した。
庫本代表(奈良県大和郡山市庫書房)のあいさつの後、「みなさんのらくほん4」のタイトルで、開発を始めて10年間のあゆみ、350書店余りのユーザー書店の実態、サポートについて、今後の予定を説明し、質疑応答を行った。
その後、勉強会形式で日常業務や図書館納入、パソコン活用法など書店を取り巻く問題を発表しあった。山梨県ブックスアマノ後藤雅利氏は、NHKとタイアップし大河ドラマに関連した「戦国イケメンフェア」、地域と連携し地元絵本作家サイン会開催など、個性的な品揃えとちょっとした工夫で売上減少にならないように努力している現状を報告した。
群馬県正林堂星野上氏は、「10年後も生き残る書店像」として、これからの予測、5千人商圏→1千人の顧客→2百人のコア客を囲い込むことで自店で売り上げを伸ばしたノウハウを説明。POSの威力は商品管理よりも顧客情報と結びついて価値を発揮するということなどが発表された。夕食を兼ねた懇親会場でも熱気のこもった情報交換が行なわれた。
翌日早朝からは、広島県萬生堂書店重政明宏氏が「学校図書館を安定した売上の柱にする為の取組」として、教育システムの本屋ツールを活用して日書連マーク付きで納品している実態を報告。地元のソフト会社とのつながりで、今まで行っていない学校まで納品できるようになったことなどが報告された。
最後に本屋の村スタッフから「パソコンで安価に出来る防犯カメラシステム」を紹介。業者に依頼すれば数十万かかるが、手持ちのパソコンを活用し自ら行えば数万円でも出来ることや、会場から遠く離れたスタッフの店内状況を、リアルタイムでインターネットを経由した画像をプロジェクターで投影しながら説明。万引きされる様子を録画した動画を再生したり、携帯電話でも確認できることなどが、実演を交えて報告された。
本屋の村が提供する、書店の外商・店売と取次オンラインシステムの最新版「らくほん4」はソフト別に必要な機能だけ使用できるシステムで単品月額3150円から使用可能。旧バージョンのラクプロ2からの乗り換えは半額の優待価格(但し2010年6月までに購入の場合)。詳しくはインターネットにて「本屋の村」で検索のこと。
(岩根秀樹広報委員)

辞書引き学習の実際/立命館小学校校長・深谷圭介/大阪屋友の会連合大会特別講演

全国の小学校350校で行われている辞書引き学習法。9月15日、大阪屋友の会連合大会で行われた立命館小学校深谷圭介校長先生の講演から同学習の実践と成果をまとめた。

私は以前、公立小学校、中学校の教員でした。公立小学校に赴任した1989年当時は新学力観ということで、とにかく生徒の意欲を高めようと、通知票に「関心・意欲・態度」という項目が入っていました。学校教育を受ける前、来る前に関心・意欲を持ってこいというのは塾の論理で、学校教育は生涯にわたっていろいろなことに関心を持ち、自分で勉強する力を育てるのが目的です。
1970年代から日本も参加している国際学力調査があります。その内容は算数・数学と理科です。1980年代は日本はトップでしたが、文部省は深刻な事態だと思っていた。点数は取れているが、意欲は低い。算数とか科学に対する関心が低い。学び続けることができない。社会に出てから役に立たない状況があった。受験で得た学力はポロポロ剥落します。気力がない若者たちがどんどん出てくる。だったら教育内容を減らして、ゆとり教育で子どもたちが自分から進んで勉強する教育をめざしたらいいと、臨時教育審議会で「新しい学力観」が出てきた。
受験で合格するための学力では、受験というターゲットを達成したら、もう学ぶモチベーションはない。学校法人立命館は小学校、中学校、高等学校、大学の一貫教育です。大学まで推薦制度で上がっていきます。受験のモチベーションはないけれど、子どもが自ら進んで勉強していくにはどうしたらいいか。
実は受験のため身につけた学力が「学力」ととらえられていることに問題がある。もう一つ、素晴らしい授業と、力を付ける授業は違う。先生方が考えている素晴らしい授業とは、子どもたちが活発に手を挙げて発言する。子ども一人ひとりが活躍する、そういう授業です。でも力を付ける授業は違います。子どもたちが問題を解いていく授業は問題をたくさん考えなくてはいけません。わかることと、できることの間にきちんと橋がかからなくては、力がつくことにはなりません。学校の先生方が考えている素晴らしい授業が、力をつける授業にはならないことにも問題があった。
自動車教習所でいくら素晴らしい講義を聞いても実際に車を運転できるようにはならない。辞書も同じです。辞書を存分に活用する能力は辞書の使い方の授業だけでは身に付きません。
辞書は小学校3年生から2時間程度、国語辞典の引き方を指導する。その時に国語辞典は「わからない言葉を学んだ時、調べるために必要だ」という教え方をします。
でも子どもは、「わからない言葉があったら辞書を引く」ということでは辞書を引きません。子どもたちが辞書引きに夢中になるのは、わからない言葉をみつけるからではない。知っている言葉を辞書の中から発見するのが面白い。知っていると思っていた言葉が、実は知らなかったことに気づく。そこに発見があり、言葉はよく学んでいかなければいけないという教訓を得るわけです。
まだ辞書の引き方もわからない小学校1年の子どもに辞書を与えると、辞書をパラパラめくって、「先生、チューリップという言葉があったよ」「カブトムシがあった」「アブラゼミとかあるよ」と一所懸命探す。「私の知っている言葉が辞書にあった」というのがすごくうれしい。小学校1年生はわかっていることばかり引く。
私たちの辞書に対する指導は根本的に間違っていたのではないか。一番重要なのは辞書を引くチャンスをたくさん持つことです。そのためにどういう辞書の使わせ方をしたらいいのか。
辞書引き学習はテスト型学力とは違います。テスト型学力はテストでいい点をとるとお母さんに褒められ褒美があるから頑張る。辞書引き学習は自分で勉強を頑張り、いろんなことがわかってくる満足感、面白さ、喜びが動機付けです。
辞書引き学習は顔を洗い、歯を磨き、朝ごはんを食べるように、自然に辞書を引く行為が身に付く。子どもたちが自然に学ぶことに溶け込み、生活の一部になっていく。楽しく反復的に辞書を学習することで、基礎的な学力を育てることができます。
通常の授業では3年生で国語辞典を勉強させます。学校の図書室に30冊から40冊の辞書があり、それをクラスにもっていき、こどもたち全員に配り、同じページを開かせ、こういうふうに引きますと2時間ぐらい指導します。それが終わるとまた図書室の棚にしまわれ、1年間使われない。辞書引き学習を教えていると、辞書は消耗品です。早い子は半年ぐらいで買い替えます。1年で辞書はボロボロになり、毎年辞書を買い替えます。
辞書引き学習がわからない人は「先生、もっとモノを大事にする教育が大事じゃないですか」と言いますが、子どもたちはボロボロになるまで使おうとする。「この辞書はボクの脳ミソの一部だから、簡単には捨てられない」と言う。そのぐらい子どもたちの体の一部になっている。
子どもたちの辞書には付箋がたくさんはさんであります。その付箋に書いてある言葉は、子どもたちの脳ミソに刻まれている言葉です。辞書に挟まれた付箋に書いてある言葉をずらっと並べていくと、子どもたちが何を考え、頭の中に何があるかわかります。
辞書引きワークショップで辞書を引かせると、男の子は男の子らしい言葉を、女の子は女の子らしい言葉を選ぶ。選ぶ言葉で家庭や学校生活の様子がわかる。お母さんがよくストレスと言うからストレスという言葉を引いてみたと小学校1年の子が言います。選ぶ言葉は生活そのもの。そういうふうに辞書を引いていけば、辞書がその子らしくなっていきます。
そういう状態になると、新しい辞書を買ってくれとは言わない。辞書をこれだけ使って、引きなれて、もっともっと引いてみたい言葉がある。これほど、大切に使っている辞書はない。
一つの言葉を全員に一斉に引かせたら恐ろしく時間がかかります。一つの言葉で7分や8分はかかる。だから、先生は子供たちに全員同じ辞書を使わせるようにします。時間がきたところで「何頁に書いてあるから、何頁を開きなさい」。そう指示したら、子どもは辞書を引くことを止めてしまう。そういう指示をしてはいけない。
ぱっと開けば子どもの知っていることばがある。そこから入っていけばいい。何もこの言葉を引きなさいというところから入らなくてもよい。最初からそうやるものだから辞書引きのハードルが高くなって面倒くさいと思うんです。単純に辞書を読み物として、2万5千語の辞書があったら2万5千通りのストーリーがあると思えばよい。読み物としてどこから読んでも、どこから引いてもよい。辞書は面白い。いろいろな発見がある。そういう楽しみ方を、なぜ小学校の最初の辞書との出会いで教えてこなかったか。
子どもたちは授業以外、休み時間、給食を食べ終わった時間、学校に来てすぐ辞書を引いている。子どもたちが自己申告で「先生、付箋が1万枚突破しました」と言います。その子は非常に誇らしい。がんばって何千枚も貼ったというのは、ものすごく自信になります。で、「わからないことがあったら、何でも聞いてね」「先生、その言葉は間違っています」と言います。教師はすごくへこまされますが、そういう子どもに育つとうれしい。
最初、保護者の皆さんは辞書を買うことに大反対でした。「なんでそんなものを家庭で買わなくちゃいけないの。学校で用意してください。義務教育でしょう」と言われました。思う存分使うためには個人用の辞書でなければだめです。1人1冊マイ辞書をとお願いしました。しぶしぶ買ってくれたのですが、3カ月たつと保護者はコロッと変わりました。「先生、すばらしい教育をありがとうございます。辞書を買って本当に良かった」。
私たちは漢字辞典も使っています。小学校2年生で国語辞典と漢字辞典と2冊使っている。漢字辞典は普通、小学校4年か5年で指導しますが、ほとんど買わせません。漢字学習は漢字ドリルと漢字ノートがあれば事足りると思っている。教科書の順番に出てくる漢字を教科書準拠のドリルに書いて、それをやっていけばよいと思っちゃう。
ですが、漢字ドリルだけでは漢字の系統的な学習は難しい。自分で漢字辞典を開いてみると漢字が部首の順番に並んでいます。木ヘンの漢字は木ヘンでずらっと並んでいます。小学校1年生から漢字辞典を使うと部首索引が使えて漢字を部首で引けるようになり、部首によって意味、形をなしていることを理解します。木ヘンの漢字にはほかにどんなものがあるか、草カンムリはどうかな。サンズイは水に関係があるのかなと、意味と意味がつながってくる。
ところが漢字ドリルの学習では配分漢字はバラバラですから、意味をつなげて漢字を取得していく機能はなかなかマスターできません。1年生でこういう学習をしますと、漢字をグループで、意味のくくりで覚えていく習慣ができるから、漢字が好きになる。漢字を書いたり読んだりするだけでなく、漢字の意味、読み方を類推する能力ができてくる。そうすると小学校1年生、2年生の読書傾向が変わります。小学校2年生あたりで文庫本とかジュニア新書を読むようになります。大人の本も読む。子どもたちは早い段階で読書の幅を広げていく。
辞書は机の上に常に置くこと。これも学校の先生になかなか理解されない。先生は整理整頓を一所懸命させる。机の上に辞書があれば邪魔だとしまわせます。でも、棚やカバンの中に入れたら子どもの視野の中から辞書が消えて、引かなくなります。常に目の前にあることが大事なのです。
調べた言葉には付箋を貼る。この付箋が子どもの心に刺さるものだった。子どもは剥がして貼るのが好きです。シールを喜んで貼ります。仮面ライダーカード、ポケモンカードを集めることも喜ぶ。そういう感覚で付箋を貼っていく。付箋がたくさんたまっていくと、こんなに集まったとアピールする。そういう子どもの文化にフィットしたのが付箋学習法であった。
辞書は様々な辞書を使います。一つの言葉でも辞書によって解釈が違う。たとえば「青」という言葉を説明するとき海の色を使うのか、空の色を使うか。海がない国の辞書では「海の色のような色」という説明はしない。空がいつも曇っている国では「空のような色」と説明しない。言葉というのは、その言葉を語る人、使う人によって解釈が違ってしかるべきです。だからいろいろな辞典を使っていろいろな解釈を知ることは非常に勉強になる。国際理解、異文化理解の前に、日本語でも一つの言葉のイメージがこんなに違うということを育てていきたいと思っています。
違う辞書を使うと必然的に交流が生まれます。「君の辞書にはなんて書いてあるの」となってくる。給食中にもしまわない。みかんがでてきたらみかんを調べる。三度のメシより辞書が好きという子が出てくる。こんなふうに学ぶことの喜びを子どもたちに伝えたいと思っています。辞書引き学習は全国の小学校、350校以上に、一つのムーブメントとして広がりつつあります。辞書引き学習が全国の子どもたちに広がり、辞書を引く習慣が日本の言葉の力を向上させる、後押しする力になってくると信じています。

大商談会、近畿トーハン楽市・楽座開く

大阪トーハン会(鎌苅一身会長)、奈良トーハン会(林田芳幸会長)とトーハン近畿営業部主催の第1回近畿トーハン楽市・楽座(商談会・合同懇親会)が9月17日、京都、兵庫、和歌山トーハン会協賛のもと、京セラドーム大阪で開かれた。当初5月の予定だったが、新型インフルエンザの流行で延期していた。
第1部「楽市」は出版社87社がブース出展、485名(書店247名、出版社他190名、トーハン48名)が、第2部「楽座」は312名が参加。この模様は、当日夕方のNHK「ニューステラス関西」で「町の本屋さん生き残りへの模索」として取り上げられ、書店経営の現状を打破しようと出版社と情報交換を行う書店の姿が伝えられた。
懇親会「楽座」は、大阪トーハン会鎌苅会長が「町の書店が衰退していくことは、日本が大きなものを失うと認識している。この会がひとつの打開策になればと思う」と挨拶。続いてトーハン山﨑厚男社長が祝辞を述べた。乾杯はポプラホールディングス坂井宏先社長が「不安な社会に人が求めるモノは出版物。それに応えたい」と熱く語り、杯を挙げた。

受賞

◇乱歩賞に遠藤武文氏
日本推理作家協会と講談社、フジテレビジョンが共催する第55回江戸川乱歩賞に遠藤武文氏『プリズン・トリック』が決まり、9月30日午後6時より贈呈式と記念パーティーが帝国ホテルで行われた。受賞作はフジテレビで映像化される。

販売集団の原点に返る/東京で新風会50回地方総会

創立50周年を迎えた書店新風会の第50回記念東京総会が10月6日午後1時半から文京区・東京ドームホテルで開かれ、出版社、取次など250名が出席した。
総会は林田芳幸親睦交流委員長(啓林堂書店)の司会で始まり、井之上賢一会長(久実堂)が「書店新風会は昭和33年11月に全国有力書店23店で結成準備会が開催され、34年2月、文京区根津の大西旅館で34店で発足した。翌35年、大阪で1回目の地方総会が開かれている。50年ぶりに文京区に戻ってきた。書店業界は相変わらず厳しい経済環境だが、地域一番店の信頼と誇りで読者を開拓し、売る集団として販売力を強化して期待に応えていきたい」とあいさつした。
記念講演では24回以降の地方総会にすべて参加しているという博文館新社大橋一弘社長が「書店新風会との思い出」を語り、インフォバーン小林弘人CEOが「新世紀メディア論」のテーマでウェブによるビジネスモデルを紹介。書店の今後については「アマゾンと対抗しても品揃えでは勝てない。本を媒体にしたソリューション、プロデュースを考えてみては」と提案を行った。
続く第2部懇親会はトーハン山﨑厚男社長の祝辞、日販古屋文明社長の発声で乾杯し、開宴。次期地方総会開催は大塚茂総務委員長(柳正堂書店)が長野県岡谷市に決まったことを紹介し、開催地幹事店の笠原書店笠原新太郎社長が歓迎のあいさつを述べたあと、井之上会長から新風旗の伝達を受けた。

年間百万部めざす/静山社文庫創刊

静山社は10月6日、『40歳からの免疫力がつく生き方』(安保徹)、『ハリー・ポッター裏話』(J・K・ローリング他)など8点で静山社文庫を創刊したが、これに先立ち9月30日、九段のホテルグランドパレスに書店、取次を招き創刊記念パーティーを行った。
パーティーに先立つ説明会では、古屋編集長が静山社文庫の特長、工藤営業部長が宣伝計画、配本などについて報告。同文庫は①ノン・フィクション、②実用、③フィクションの3ジャンルで構成し、創刊後は11月4日に8点、以後毎月5点、年間60点の刊行を目指す。体裁は本文に文庫本最大級の13・5級活字を使用して読みやすさを追求した。医療ミステリーや時代小説など文庫書き下ろし作品も毎月刊行していく。
工藤営業部長は販売目標について「年間100万部、返品率20%台を目指したい」と述べた。
『最新医療のウソと真実』霧村悠康氏の講演に続く懇親会で日書連大橋会長は「書店決算期が集中する9月30日に説明会を開くのは珍しい。白い猫も黒い猫もネズミを捕るのがよい猫という中国のことわざがある。いま、文庫の棚取りが難しい。売れ行きのよい文庫を出して、しっかり店頭を確保していただきたい」と祝辞を述べた。

あったか鍋料理フェアで読者プレゼント

トーハンは10月中旬より「あったか鍋料理フェア」を全国800書店で開催。フェア商品の購入者に「鍋の具あたります」キャンペーンを実施する。対象商品の帯にある応募券を貼って応募すると、抽選で「豚しゃぶコース」「牛すきやきコース」「毛がにコース」を各5名、合計15名にプレゼントする。応募期間は10月13日から1月8日まで。
対象商品は学習研究社『決定版簡単おつまみ人気の鍋』、成美堂出版『具だくさんのあったか鍋』、世界文化社『料理ならおまかせ人気の鍋もの102』、日東書院本社『毎日食べたいウチの鍋』、日本文芸社『今夜は鍋』

日販、本の超特Q!QuickBook

日販は創立60周年記念事業として書店店頭客注品のお取寄せサービス「本の超特Q!QuickBook」を12月より開始する。
「QuickBook」は3千店以上に導入されているNOCS9000を使用する新しい客注品お取寄せサービス。主な特徴は、①全工程で優先処理を行い、最速で書店へ、②発注時に書店着荷予定をお客様へ案内できる、③王子流通センター在庫に加え、国内最大80万点のウェブ・ブックセンター在庫を利用、④受注から出荷までトレーサビリティ管理を行い、書店店頭で処理状況を確認できる、⑤既にNOCS9000を導入している書店は、新たな初期費用・月額使用料は無料。客注1冊ごとの手数料だけで利用できる。手数料は注文情報処理料として本体価格の5%と在庫出荷手数料1冊20円。
10月より加盟申込受付けを開始。キックオフ・キャンペーンとして、11月13日までに先行契約すると、契約サービス開始後2週間、手数料を割引するほか、新たにNOCS9000を導入する場合、初期導入費無料、月額使用料も3カ月間無料。

本屋のうちそと

1970年、僕たちは高校生で、授業をボイコットして全校対話集会を続けていた。そんな事態が1週間も続いた後にロックアウトと卒業式の中止という手段で収拾を図ったのがラクロア校長先生でありました。
あれから約40年。米軍はベトナムから撤退し、韓国の軍事政権は崩壊しました。ベルリンの壁が壊されて、南アや米国では黒人の大統領が誕生し、僕らはそれぞれ40年分の歳をとりました。
旧版の広辞苑を日本語を勉強している外国人にプレゼントするという思い付きが多くの人を動かし、そのご縁からついにはモントリオールにまで行く羽目になってしまったのです。
驚いたことに、かの地にあの校長先生が暮らしていました。朝の渋滞に巻き込まれた僕たちは30分も遅刻してしまい、緊張とともに訪問したのです。久々の再会は、まるで歳月が吹き飛んだようにあっけないもので、40年前がつい先日のように思えるような対話から始まりました。
先生は堰を切ったように思い出を語りだし、脚の具合が良くないものだからもう日本の地を訪れることはできないだろうと言い、皆によろしくといって私たちの手を握ってくれました。
固辞したのですが、先生は不自由な足で玄関まで来てくれます。ではこれでと別れを告げて歩き出した。振り返ると、先生が手を振っている。最後尾のT君が後ろを振り向けないでいる。こみ上げる物を止められず、うつむいているのだ。僕らの車が門を出るまで先生は手を振っていてくれた。(広辞猿)