全国書店新聞
             

平成15年12月11日号

新年号原稿募集

来年1月1日、11日付発行の本紙新年号に書店の皆さんからの原稿を募集します。テーマは①私の好きな偉人、②子どもの頃読んだ印象に残る1冊の本、③2004年に期すもの、④新春雑感――のうちから一つを選んで600字以内で。原稿には氏名、住所、氏名、書店名を添えて12月20日までに書店新聞編集部「新年号係」へ。FAX、メールでも構いません。

万引防止協議会に丸岡副理事長派遣/東京組合

東京組合は12月2日の理事会で東京都から参加要請のあった「万引防止協議会」に丸岡副理事長、山田出店問題委員長、小野事務局長の3名を派遣することを決めた。
同協議会は書店、レコード店、薬局、コンビニなどの販売業者、メーカー、防犯業界と東京都、警視庁、弁護士会、教育委員会の各機関が万引きをさせない環境作りについて情報交換と連携の調整を行う目的。第1回会合は12月25日午後2時から都庁で開催される。
また、東京都青少年条例改正問題では、今月下旬に青少協専門部会から答申が示される予定だが、有害図書の指定で従来の「個別指定」から何頁以上あれば有害という「包括指定」の導入が取り沙汰されている。これについて東京組合では「区分陳列、対面販売、成人図書の表示徹底を図ることで包括指定を避けていきたい」とする方針を改めて確認した。
このほか、経営取引問題では、中野杉並支部から「TRCが装備込み10%引きで図書館に攻勢をかけている。放置すれば根こそぎやられかねない。全国的に実態を調査してほしい」と問題提起があった。

STOPザ万引キャンペーン/東京都、警視庁の後援で展開

東京都書店商業組合は12月8日午前11時から書店会館で萬田理事長らが記者発表を行い、年末年始をはさんで12月10日から3月9日までの3カ月間、組合員893店全店に万引き防止ポスター2種(写真)を掲示して「万引き防止キャンペーン」を展開することを明らかにした。万引きは青少年にとって初発型非行の典型。万引きに手を染めることから、さらに重大な非行に走ると言われている。このため東京組合が実施するキャンペーンでは、①ポスターの掲出によって「万引きは犯罪である」ことを訴える、②万引きと見られる疑わしい行為があった場合は、店内でも声をかけて犯罪防止に努める、③万引きを発見したときは直ちに警察に通報するなど毅然たる態度で対応する――としている。
8日の記者発表には萬田理事長、丸岡、下向両副理事長、山田委員長が出席。
キャンペーンを展開するに至った経緯について萬田理事長から「万引き犯の55・2%は中高生で、最近ではさらに低年齢化が進んでいる。目的も換金のため集団で大量の万引きを行うなど悪質化も目立つため、都内893店で一斉に万引き防止キャンペーンを行う。書店組合が立ち上がるのであれば東京都も教育委員会、警察を通じて全面的協力を行うと治安対策担当の竹花副知事が約束している。全国的にも青少年条例の整備、運用強化を働きかけている。成功すれば東京方式を全国に普及していきたい。青少年非行防止のため、ぜひ趣旨をご理解賜りたい」と述べた。
丸岡副理事長は「こうしたキャンペーンに警視庁、東京都の後援が入ったことは画期的ではないか。ポスターに店内で声かけする時の基準を明示したのも特徴的」とした。
山田委員長の説明では、「年末の万引き多発期にからませて3カ月の展開を考えたが、経過次第で延長もありうる。万引き件数がどのくらい減ったかなどの数字、万引きの事例も集めてみたい。警察には万引き通報時の事務手続き簡素化をお願いしているところだ」と報告した。

実効ある景気対策を/第8回中小小売商サミット

日書連など小売13団体による第8回「全国中小小売商サミット」(全国中小小売商団体連絡会主催)が12月1日、東京・平河町の都市センターホテルで開かれ、日書連から萬田貴久会長、丸岡義博副会長、白幡義博専務理事、大川哲夫事務局長が出席した。
サミットは全国水産物商業協同組合連合会・村井光治専務理事の司会で進行、午後4時から中小小売商団体首脳会議を開催した。各団体による意見発表で、萬田会長は「出版販売額は7年連続のマイナスが見込まれる。出版業界はこれまで流通改善の取組みが遅れていた面があったが、最近は情報と流通のインフラ構築を急ピッチで進めている。取次が合理化を進める中で支払いの取り立てを厳しくしており、個店支援を行政にもお願いしていきたい」と書店業界の現状と問題点について説明した。
このあと①実効性のある景気対策②地域とともに「まちづくり」を推進③中小小売店・商店街等対策の大幅な拡充④中小企業金融対策の充実・強化――を求める宣言案を萬田会長が朗読、満場一致で採択した。
午後5時からは望月晴文中小企業庁長官との懇談会を開催。主催者を代表して桑島俊彦サミット実行委員長(全国商店街振興組合連合会理事長)があいさつしたのち、全国共同店舗連盟・伊藤武治理事長、桑島理事長、日本専門店会連盟・岩井滉理事長、全国青果物商業協同組合連合会・市川吉三郎会長、全国牛乳商業組合連合会・伊藤義浩会長、日本ボランタリー・チェーン協会・村内道昌会長が意見発表を行った。
サミットの宣言文を受け取った望月長官は「足利銀行が経営破綻し、公的資金を注入することになった。中小企業に対するセーフティネットをきちんとやらねばと思う。中心市街地の活性化については、まちづくり3法の運用が計画通り進んでいない面があるのも事実。もう一度原点に返って取り組みたい」と述べた。
翌2日は、午前8時半より与党政策担当責任者との懇談会を開催。丸岡副会長の司会進行で自由民主党・柳沢伯夫政務調査会長代理、公明党・太田昭宏幹事長代行と懇談した。また民主党・枝野幸男政策調査会長への陳情や、関係議員・省庁へのあいさつ廻りが行われた。

日書連マークと読書運動を推進/三重総会

三重県書店商業組合(高村盛理事長)の第18回通常総会が11月23日に四日市都ホテルで開催され、組合員70名(委任状含む)が出席した。
総会は滝川理事の司会で進行、清水理事の開会の辞に続いて高村理事長があいさつ。低迷が続くなか「役立つ組合」として、日書連マークの推進と学校現場での読書推進運動を行うとした。審議は議長に別所業啓氏(別所書店)を選任して行い、第1号から7号議案までをいずれも原案通り承認した。
優良従業員表彰では勤続20年で白揚の伊藤基洋さんと鳥山秀二さんを表彰。来賓の中小企業団体中央会・篠原氏より祝辞があり、休憩を挟んで日書連高須博久副会長が「日書連の動きと読書推進について」をテーマに講演した。
取次、出版社から年末年始企画の説明があった後、午後5時半から懇親会を開催。豪華賞品が当たるビンゴゲームで楽しいひと時のうちに終了した。
(藤田忠男広報委員)

生活実用書・注目的新刊

「世界は刻々と変化している」と扉に書かれている言葉がテーマである。
山本良一責任編集『1秒の世界』(952円ダイヤモンド社)は、文字通り瞬く間に地球上で何が起きているのか、様々な変化のデータを集めたもので読みやすい本。
たとえば最も小さい鳥であるハチドリは、飛びながら空中に停止することができる。その速いはばたきは1秒間に55回にも達するという。昆虫ではミツバチが200回、プーンと現れる蚊は600回もはばたいている。と、このくらいでは驚かない人もページをめくる度に、それぞれの年齢や立場毎に「ヘェー」と驚く回数が増えるのである。
地球が太陽の周囲をまわる速度は秒速29・8キロメートルで音速の88倍。1秒間にグリーンランドの氷が1620立方メートル溶け、毎秒710トンの酸素が減少。森にたたずんでいると、毎秒5100平方メートル、テニスコート20面分の天然林が消失している。320万円の軍事費が使われ、4トンの文書用紙が消費されるのも、わずか1秒間なのだから驚く。
また、1秒間に39万立方メートルの二酸化炭素が排出されており、これは5万本の杉が1年かけて吸収できる量に匹敵するという事実には、恐怖を覚える。たとえ困難でも「私たちの欲望を抑制してでも」「解決しなければならない」と本書は警鐘を鳴らす。山口タオ・文/津川シンスケ・絵『想像力のテキストあなたのいるところ』(1200円講談社)は児童書でもあるが、我々の住む地球を想像力を駆使することでより身近に捉えようとしている。赤道周囲は4万キロと知っても実感しにくい。そこで、「あなたがアリなら」世界は400分の1。周囲1キロの地球はちょうど東京23区内に収まってしまう。富士山は9・4センチ、全空気量の95%があるのはわずか20キロまででしかない。驚くべき天と地の薄いこと。本書も「地球規模の危機をとらえる想像力と感性をひとりひとりが備えること」を提言している。
かつて僕の恩師、アメリカ文学の橋本福夫先生に、想像力のない人とはつき合わない方がいい、そう教えられた。では書店の想像力は、この2点の本をどの棚に並べるだろうか。売る側の想像力と志もわかりそうな本である。
(遊友出版・斎藤一郎)

新理事長に杉山和雄氏/「全力で取り組む」と抱負/栃木総会

栃木県書店商業組合(小山田昭一理事長)は11月24日、宇都宮市内の「ホテル丸治」で第17回通常総会を開催した。
総会には組合員47名(委任状含む)が出席し、平成15年度事業・収支報告、平成16年度事業計画・予算案などを原案通り承認可決した。
任期満了に伴う役員改選では理事20名、監事2名を選出。2期と1年にわたり理事長を務めた小山田理事長が勇退し、新理事長に杉山和雄氏(杉山書店)を選出した。副理事長は亀田公一氏(亀田書店)、亀田二郎氏(緑園書房)が留任、鈴木功氏(ブックスエスパル)が新任となった。新理事は落合均氏(落合書店)、伊藤晃雄氏(ブックス・いとう)、渡辺順一氏(進駸堂)、笹沼道正氏(うさぎや)、樽見行雄氏(樽見書店)の各氏。また新任の監事に北村三郎氏(北村書店)が就任した。
新理事長の杉山和雄氏は「書店の経営環境は厳しく、難しい局面だが、組合のため、選出されたからには全力で取り組みたい」と抱負を述べた。
(亀田二郎広報委員)
杉山和雄氏略歴
昭和21年6月25日生まれ。昭和40年宇都宮商業高等学校卒業。44年杉山書店入社、58年同社代表取締役就任。平成6年より栃木県書店商業組合副理事長。

ホラー小説大賞に遠藤徹氏『姉飼』

第10回日本ホラー小説大賞(角川書店、フジテレビジョン主催)は、大賞に遠藤徹氏の『姉飼』、長編賞に保科昌彦氏の『相続人』、短編賞に朱川湊人氏の『白い部屋で月の歌を』を選出。11月26日、東京・日比谷の東京會舘で贈呈式が開かれた。
贈呈式の席上、角川書店の角川歴彦会長は「これまで奇数回に受賞作が出ていないが、選考の厳しさによって賞の価値を高めてきたと思っている。今回は偶数回、3賞とも受賞作が出てほっとしている。この賞が創設されるまで、日本のホラー小説は不毛だった。出版界に新しい分野を切り開くことができ、出版社としてやりがいを感じている」とあいさつ。大賞に賞金500万円、長編賞に300万円、短編賞に200万円が贈られた。
続いて選考委員を代表して荒俣宏氏が「節目の第10回に相応しい3作品が揃った。遠藤さんの『姉飼』はかなり変わった小説。文学的な遊びの要素も入っており、ホラーノベルの広がりを感じさせる」と選評。遠藤氏が受賞の喜びを語り、フジテレビジョン・山田良明取締役編成制作局長の発声で乾杯した。

参考図書

◇『人文書のすすめⅢ』
人文会は同会創立35周年記念事業として『人文書のすすめⅢ/人文科学の現在と基本図書』を刊行した。A5判310頁、定価本体2500円。
第1部は気鋭の執筆者7名が人文学各分野の最近の動向と課題を概観。第2部は特約書店50店の人文書担当によるアンケート。第3部基本図書一覧は哲学・思想、宗教、教育など分野別に5200点をリストアップ、棚構成に役立ててほしいとしている。
◇『日本出版関係書目』
明治元年から平成8年まで130年間に日本で刊行された出版関係書5160点の文献総覧『日本出版関係書目』が日本エディタースクール出版部から刊行された。B5版416頁、定価本体2万2千円。
労作『日本出版百年史年表』をまとめた布川角左衛門氏のコレクション、「布川文庫」の所蔵資料をベースに、関係機関の所蔵を調査して補った書誌データを出版書目、出版史、出版人、印刷、製本、書店など24分類に配列。書名別索引、人名・団体名索引は合計100ページに及び、研究者の便に供する。
エディタースクールでは1997年以降の書目データを来年秋をメドに同社ホームページに掲載する予定。

訂正

訂正本紙12月1日付第1478号4面掲載、小学館相賀社長の講演で「ジャパンナレッジに問い合わせいただければ無料パスワードを出す」とあるのは、正確には「無料お試しパスワード」です。お詫びして訂正いたします。

若い人に贈る読書のすすめ

読書推進運動協議会は2004年に成人の日、新社会人となる日を迎える若い人に向けてリーフレット「2004若い人に贈る読書のすすめ」を作成し、書店、図書館に配布した。掲載の書名は以下の24点。
▽『4TEEN』石田衣良、新潮社▽『二列目の人生隠れた異才たち』池内紀、晶文社▽『世界はいまどう動いているか』毎日新聞外信部編、岩波書店▽『椅子職人』川嶋康男、大日本図書▽『私の人生を変えた黄金の言葉』マーロ・トーマス&フレンズ、主婦と生活社▽『デッドエンドの思い出』よしもとばなな、文藝春秋▽『イラクの小さな橋を渡って』池澤夏樹文・本橋成一写真、光文社▽『新日本語の現場』読売新聞新日本語企画班・橋本五郎監修、中央公論新社▽『無から始めた男たち』日本経済新聞社編、日本経済新聞社▽『リトル・バイ・リトル』島本理生、講談社▽『フリーターという生き方』小杉礼子、勁草書房▽『高く遠い夢』三浦雄一郎、双葉社▽『生涯最高の失敗』田中耕一、朝日新聞社▽『いま、会いにゆきます』市川拓司、小学館▽『だから、君に、贈る。』佐野眞一、平凡社▽『SARSの衝撃』勧堂流、実業之日本社▽『ニッポン人には、日本が足りない。』藤ジニー、日本文芸社▽『ブレイブ・ストーリー(上・下)』宮部みゆき、角川書店▽『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J・D・サリンジャー・村上春樹訳、白水社▽『生命40億年全史』リチャード・フォーティ、草思社▽『行儀よくしろ。』清水義範、筑摩書房▽『ターンアラウンド』デビッド・マギー、東洋経済新報社▽『自分らしく生きてゆけないのはなぜか』佐藤忠男、ポプラ社▽『永遠の出口』森絵都、集英社

日書連のうごき

11月5日野間読進協賞贈呈式典へ萬田会長他出席。
11月7日再販研究委ワーキング会議へ岡嶋委員長他出席。再販問題で萬田会長他、伊従弁護士と懇談。
11月8日和歌山県組合情報化研修会へ志賀委員長他出席。
11月10日出版関係輸送懇談会へ梅木流通改善委員出席。
11月11日出版流通改善協議会へ藤原委員長他出席。
11月12日JPO運営委員会へ志賀委員、JPIC評議員会・理事会へ萬田会長他。4団体構成出版サロンの会へ萬田会長出席。
11月13日再販ラウンドテーブル会議へ岡嶋委員長他出席。愛知書店新聞100号記念祝賀会へ今西副会長。高知県情報化研修会へ志賀委員長出席。
11月17日税制研究小委員会へ下向委員長他出席。
11月18日S―データ運営準備会へ井門委員出席。11月19日流通改善、情報化推進、組織強化、共同購買、共済会運営、消費税問題、再販研究、広報、増売、読書推進各種委員会。情報化・取協2者会談。出版再販研究委員会へ萬田会長他。貸与権連絡協議会へ井門委員他出席。読書週間書店くじ抽せん会開催。
11月20日定例理事会、共済会、出版物公取協理事会開催。
11月21日TS流通協同組合総会へ萬田会長他出席。
11月23日三重県組合総会へ高須副会長出席。
11月25日出倫協ゾーニング委員会、中小小売商連絡会へ丸岡委員出席。
11月26日文化講演会開催で高須、舩坂委員、出版社訪問。
11月27日出版倫理協議会へ丸岡委員他。出版情報研第3部会へ柴崎委員他。全国中央会消費税講習会へ下向委員長他出席。
11月28日貸与権運営協議会へ井門委員他。日本図書普及役員会へ萬田会長他出席。

日販よい本いっぱい文庫/障害児施設等に4万4千冊寄贈

日販は12月3日午後3時から東京・お茶の水の本社で第39回「日販よい本いっぱい文庫」贈呈式を開催。今回は出版社62社、運輸・梱包会社29社の協力を得て、全国の児童養護施設、肢体不自由児施設、ろうあ児施設、知的障害児関係施設、特殊学級・ことばの教室、筋ジストロフィー児委託国立療養所、難聴幼児通園施設、小児総合医療施設など計330ヵ所に4万4千冊を寄贈した。
贈呈式の席上、日販・鶴田尚正社長は「昭和39年のスタート以来、これまで続けてこれたのは、出版社、運輸会社等の熱い思いがあったからこそ。これまで8013ヵ所の施設に144万冊を贈ってきた。日販はファーストブック、母と子の読み聞かせ、おはなしマラソンなどを通じて、子どもの心を育むことに力を注いでいる。日販が存在する限り、そして出版社、運輸会社皆さんの熱い思いがある限り、この事業をずっと続けたい」とあいさつ。厚生労働省の高原弘海障害福祉課長に目録、心身障害児総合医療療育センターの児童3名に図書を贈呈した。
来賓の厚生労働省・高原課長は「感受性の強い子ども時代に本に触れるのは素晴らしいこと。よい本いっぱい文庫は全国の子どもたちが楽しみにしている。次世代を担う子どもたちが暖かい心を持つよう手助けすることは大人の責任」とあいさつ。また、施設を代表して心身障害児総合医療療育センターの浦野泰典育務係長は「幼児や学齢の子どもたちは本が好きで、読み聞かせを楽しみにしている。本を通じて絵や字を学んだり、情緒豊かな人間になるよう工夫したい」と話した。
このあと行われた懇親会では、日本児童図書出版協会の小峰紀雄会長があいさつし、中央運輸の赤澤隆彦社長の発声で乾杯した。

野間賞書店部門・受賞者のプロフィール

印刷・製本・取次・書店の各界から業界発展に寄与した方々に贈られる「第51回野間賞」(野間文化財団主催)の受賞者が決定した。書店部門では古川寿一氏(福島県郡山市・高島書房)、稲垣正勝氏(愛知県豊橋市・豊川堂)の両氏が受賞した。両氏のプロフィールを紹介する。

〔企画商品販売に卓越した手腕〕郡山市・高島書房・古川寿一さん
外商一筋で42年にわたり活躍している古川さん。これまで数々の実績を残しているが、なかでも『郡山市史・別巻』(定価1万円)を一括でなく個人相手に古川さん1人で800冊以上販売したことは、今も高く評価されている。
「売れるのがおもしろい。1日1日地道に努力するだけ」という古川さん。昭和40年代の少年文学全集ブームや一家庭一百科事典運動を皮切りに、各種文学全集、百科事典、美術全集、音楽全集などの全集ものから豪華本、風土記、郷土本、掛け軸、高級絵画まで、企画ものならなんでも売りに売った。高島書房が東北地方有数の外商企画量販店と言われる所以は、古川さんの功績にほかならない。
古川さんは昭和36年、定時制高校入学と同時に、中学校恩師の勧めで高島書房に入社。子ども時代の夢は寿司屋など職人になることだったが、父親の反対で叶わなかったという。入社後は外商担当として官公庁や一般家庭を自転車、自動二輪、貨物自動車で回り、販売領域を徐々に拡大していった。
販売にあたって心がけているのは「お客様に愛される」「お客様と喧嘩しない」「努力を続ける」こと。営業マンとして当然のことを40年以上、真摯に継続してきたことが古川さんの凄さだ。その積み重ねが上記の実績に結びついている。
「書店の仕事はおもしろい。大工さんから先生、会社の社長までいろいろな人に会える。こんな仕事、ほかにないのでは」と、明るく前向きに取り組んでいる。現在は外商部長として営業活動および部下の掌握はもとより、取締役としても経営陣の1人として力を発揮している。
趣味はカラオケとお酒。歌うのはもっぱら演歌で、北島三郎、五木ひろしがお気に入り。お酒はビールと焼酎を嗜む。昭和21年10月生まれ。

〔粘り強い営業で信頼得る〕豊橋市・豊川堂・稲垣正勝さん
「外商は断られたところから始まる。何度も足を運んで、そして買っていただければ」――入社以来43年間、外商一筋に取り組んできた稲垣さんは豊富な知識と誠実な人柄でお客様の信頼を獲得し、出版社、取次からも頼りにされている。
稲垣さんは中学時代学業成績優秀だったが、経済的な事情で高校進学を諦め、昭和35年豊川堂に入社。外商部に配属され、家庭外商からスタートした。雨の日も風の日もオートバイに乗り、1軒1軒を訪問。「誠心誠意」をモットーとする仕事ぶりが高く評価され、お客様に大変かわいがられた。入社から5年、20歳になり、仕事に自信がもてるようになったところで、かつて諦めた学業への思いが頭をもたげ、夜間高校へ進学。多忙な書店業務を抱えながらも、挫折することなく4年間優秀な成績を残して卒業した。
卒業を機に、家庭外商から学校外商に移る。そして平成6年、外商部長に就任すると同時に、出版社、取次から信頼される外商部作りに取り組み、新企画商品の拡売でグループ別社内コンクールを実施。数多くの出版社の販売コンクールに入賞した。最近では稲垣さんが中心となって月刊「本屋の新聞」を発行。新聞発行は、社内で外商部と店売部を結ぶ情報共有の場となり、豊川堂オリジナル情報として多くの読者に好評を博している。現在は、自らも大学、高校を担当、外商部員9名を統括するとともに、コンピュータを使ってより期待される外商部を目指して日々努力している。
「すすめた本を良かったと言ってもらえるのが一番うれしい」という稲垣さんは、自身も大の読書家だ。好きなジャンルは古代史と考古学。睡眠薬代わりに常時2、3冊の本が枕元に置いてある。趣味は釣り。太平洋で釣ったアジ、サバ、タチウオ、ハマチなどを家族に食べてもらうのが楽しみ。昭和20年3月生まれ。

上半期売上高は95.2%/転廃業多く、返品押し上げる/トーハン

トーハンの平成15年度上半期中間決算がまとまった。売上高は3039億8300万円で前年比95・2%。返品増による運賃増加、人件費増加などで販売管理費が売上げ伸長率を上回った結果、営業利益は49億7200万円、前年比90%にとどまった。しかし特別損益勘定で厚生年金基金代行部分返上益として52億円を計上したため、中間純利益は43億円、前年比293%の増益となった。
上半期の売上高内訳は書籍1102億5900万円(94・5%)、雑誌1757億3400万円(97・9%)、NM商品179億8900万円(78・2%)。返品率はそれぞれ42・7%、31・8%、15・6%。
2日の記者発表で藤井副社長は「返上益52億円を修正すると当期利益は83・9%となり、内容的に厳しい決算。送品は市場に合わせて97・2%と絞ったが、返品が100・9%と送品を上回った。このため経費の43%を占める運賃が99・6%と、売上げを4・4ポイント上回った。転廃業は222店、坪数で112%と多く、返品を押し上げる要因になっている。下期はさらに返品減少に取り組んでいく」と述べた。
厚生年金基金は、本年8月に将来分の代行返上が厚生労働省より認可されたため、返上益を特別利益に計上したもの。
中間損益計算書
(単位百万円)
売上高303、983
売上原価267、357
売上総利益36、625
販売費及び一般管理費
31、653
営業利益4、972
営業外収益1、369
受取利息122
その他の営業外収益
1、246
営業外費用4、090
支払利息14
売上割引4、074
その他の営業外費用1
経常利益2、250
特別利益5、250
特別損失91
税引前中間純利益
7、409
法人税等3、043
中間純利益4、365
前期繰越利益1、269
役員退職慰労積立取崩11
中間未処分利益 5、646

催し

◇四季礼賛『春の花』展
講談社野間記念館は来年1月17日から新春展として『春の花展』を開催する。春を告げる水仙、福寿草などの小さな花々から梅、桜と自然美を描く近代日本画家たちのみずみずしい感性を展示。主な展示作品は横山大観「夜梅」、速見御舟「梅花馥郁」、川端龍子「白梅殿」など。3月21日まで。休館月・火曜。入館料大人500円。12月15日から1月16日は冬季休館。

人事

◇三省堂
(11月26日付、○新任)
名誉会長上野久徳
代表取締役社長(営業本部長)五味敏雄
常務取締役(出版局長・出版統括部・辞書出版部・法律書出版部・出版企画センター担当)八幡統厚
同(経理部・情報システム室・国語教科書編集部・英語教科書編集部・社会理科教科書編集部・学参教材編集部担当)佐伯勇
取締役亀井忠雄
同(学事本部長・営業本部担当)池野年勝
同(宣伝部長・総務部・製作管理部・経営管理室担当)佐久間孝夫同(営業管理部長・営業企画部・営業部・販売部・デジタル情報出版部担当)
荒井信之
監査役○上野久徳
同○加藤精英
堀内寧章常務取締役、渡邊孝映、松村武久、西野宮魔木取締役は退任。堀内氏は三省堂文化会館・三省堂スポーツソフト社長に、松村氏は三省堂辞書編集システム取締役に、渡邊氏は顧問に就任。佐塚英樹監査役は退任。

版元129社が契約/オープンネットWIN/日販

日販の重点戦略トリプル・ウイン・プロジェクト参加出版社125社を招いた「感謝と未来に向けての集い」が11月26日夕、東京・竹芝のホテルインターコンチネンタル東京ベイで開かれた。
冒頭にあいさつした鶴田社長は「4年前、中期経営計画ネオ・ステージ21の策定時、日販型サプライ・チェーン・マネジメントとしてオープンネットワークWINに取り組んだ。今期中に100社も集まればと考えていたが、スタートから2年半で出版社129社がネットワークに参加している。書店も443店が参加。目標の500店をクリアできる見通しだ。消費構造が変化する中で流通の原点は消費者。川上から一方的に供給する時代ではない。取次の主たる機能は出版社の販売代行と書店の仕入れ代行。ようやくマーケットが求める的確な生産と販売が可能になった。さらに多くのご賛同を得て、内容を充実させていきたい」と述べた。
続いて吉川英作営業推進室長がトリプル・ウイン・プロジェクトの進捗状況を報告。11月25日現在でオープンネットワークWINの契約出版社は129社、書店は443店が単品の売れ行きを開示しており、市中在庫の分析と重版のタイミング決定、配本に活用していることを説明した。出版社129社のうち販売データを開示しているのは62社、非開示は67社で半々。
書店のうち商品供給サポートを受けているサプライ・チェーン・マネジメント実施店は224店で、平台銘柄、棚管理銘柄を日販のホスト・コンピュータで管理。文芸書をとると、9月期は全国平均が前年同月比99・5%に対し、SCM実施店は104・6%の伸びで返品率も4%低いなどの成果が現れたという。
このあと、オープンネットワークWINの活用事例をマガジンハウス吉田高取締役、新潮社木島秀夫営業部長が報告。吉田取締役は初版8万部でスタート、10刷116万部に達した『世界がもし百人の村だったら』について「市中在庫を分析しながら重版部数を決めた。使い勝手のよいデータだった」と説明した。
新潮社木島部長も「『チェッカーズ』(5刷6万8千部)の販売データを解析し、配本のなかった1300店に最低1冊を送品したところ、2週間後の実売率は64%に達した」と、WINの市場在庫分析が成功した実例を報告した。

本屋のうちそと

落ち葉の季節。銀杏が黄葉して綺麗だが、今年は暖冬なのか寒くない。そのうち木枯らしが吹けば、木々の葉が落ち葉となる。
この町は欅の木が多いので、木枯らしが吹くと町全体が欅の葉で敷き詰められる。近所の大学の構内は、用務員がみんなで落ち葉をかき集め掃除をしている。掃いても掃いても落ちてくる。道路中央の白線が見えないくらいになる。欅の葉を踏みしめて学生が通学してくる。
昔は落ち葉を掃き集めて焚き火をしていた。落ち葉焚きの煙には季節を感じていたものだが、いまは掃き集めた落ち葉を燃やせない。ダイオキシンが出ると言うが、昔は平気で燃やしていたのに、今ごろ危険だと言うのも変?
東京が今よりもっと寒かった頃、12月は木枯らしが吹いていた。12月3日の秩父夜祭りをテレビで見る頃は、寒くてコタツに入って見たものだ。
だが、寒いからと配達を休むわけにもいかず、毎年、冬にはささくれ、ひび割れ、しもやけ、あかぎれができた。クリームをつけても軍手をしても手が痛かった。いまはそんな事はない。町が暖かくなったのだろうか、それとも栄養が良くなったのだろうか。
振り返ると、我が店も木枯らしが吹き通した一年だった。一軒の頑張りでは改善されない厳しい商売。泣き言を言っている場合ではないだろうが、何かを求めて組合、青年部、ティエス協同組合に今年もお世話になった。有難うございました。
(とんぼ)