全国書店新聞
             

令和3年6月1日号

増売、粗利益改善活動に重点/矢幡秀治理事長を再選、2期目がスタート/東京組合総代会

東京都書店商業組合は5月19日、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで第45回通常総代会を開き、総代43名(委任状含む)が出席。役員改選で矢幡秀治理事長(真光書店)を再選し、2期目の新体制がスタートした。矢幡理事長は、新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要で書店の売上が伸びた部分もあったが、厳しい経営環境は変わらないとして、「増売」と「粗利益改善」を重点課題に組合活動を進める方針を示した。
総代会は大橋知広常務理事の司会、渡部満副理事長の開会の辞で始まり、矢幡秀治理事長があいさつ。
矢幡理事長は、新型コロナウイルスの影響について「昨年4月に緊急事態宣言が初めて発出。書店は休業要請の対象外となり、都市部の大型書店等は休業を余儀なくされたものの、営業を続けられた書店では、学校の一斉休校で学参や児童書が売れたことや『鬼滅の刃』のヒットで売上は好調だった。ただ雑誌も書籍も依然厳しく、その中で電子書籍がかなり売上を伸ばしたという状況だ。現在の緊急事態宣言下では、ゴールデンウイーク期間中はまずまずだったが、その後売上は落ちてきているのが実感だ」と1年を振り返り、「コロナ禍が収束に向かえば巣ごもり需要がなくなり、いつものように売上が悪くなる。先を見据えてお客様を集める努力を考えていかなければならない時期に来ている」と見通しを語った。
組合活動については、新型コロナ感染防止のため昨年は総代会を縮小開催し、書店経営研修会と新年懇親会を中止。しかし、日本教育公務員弘済会東京支部の学校図書助成事業や、読者謝恩図書カードの発行・販売、出版社から提案された増売企画を実施したと報告し、「大幅に活動を制限されたものの、できることはしっかりやれた」と総括した。
最後に組合の重点課題を説明、「増売を第一に考え、事業・増売委員会を中心にしっかり取り組む」と方針を掲げた。そして粗利益の改善について「『30%以上の粗利益率が必要』と訴え続け、河出書房新社が新刊『パンデミック』で書店マージン30%とする企画を実施してくれたが、それに続く行動を起こしてくれているところはまだない。また、東京組合青年部を中心に小学館と週刊誌2誌の定期販売協力金事業を行っている。こうした事業を足掛かりに1つひとつ具体例を積み上げていくことが重要だ。『正味改訂問題に関するワーキンググループ』を立ち上げており、書店が少しでも利益率を改善できるよう活動していきたい」と述べた。
この他、コロナ禍でデジタル化の波が押し寄せ、デジタルを使った仕組み作りや効率化が重要になると指摘。「デジタルの活用を図るとともに、我々が望む方向へ進むよう発信もしていかないといけない」と考えを示した。また、組合員数の減少で組合組織自体が危くなってきているとして、支部の在り方やエリアの活用についても検討する必要があると述べ、組合事業発展のために事務局の強化も図りたいとした。
続いて、議長に片岡隆氏(ブックスページワン)を選任して議案審議を行い、すべての議案を原案通り承認可決した。
令和2年度事業報告で、指導・調査委員会からは、広報誌「TOKYO書店人」でコロナ対応やキャッシュレス決済対応について寄稿や意見を掲載したと報告。共同受注委員会は、地元の図書館の納入事業受注に積極的に取り組んでほしいと要請した。組織委員会は、組合員数の減少について説明し、支部単位の活動や官公需事業の推進に支障がないよう組織改革に取り組みたいとした。事業・増売委員会は、読者謝恩図書カードの協賛出版社を中心に増売協力を行ったこと、広告入りポリ袋に替わる事業を検討していることを報告した。
令和3年度事業計画は、引き続き「休業店を除く全員参加型の増売運動」に取り組む。リニューアルした組合ホームページを活用し、情報発信の迅速化と広域化を進める。「正味改訂問題に関するワーキンググループ」の活動を推進し、具体的な事例を積み重ねていく。書店マージンを増やすための雑誌の配送方法の研究を進める――などの方針を決めた。
任期満了に伴う役員選任では、理事35名、監事3名を承認した。
また、6月で退職する小野傳前事務局長に矢幡理事長から花束を贈呈。矢幡理事長と舩坂良雄前理事長(大盛堂書店)が、組合活動への永年の功績に対し感謝の言葉を述べた。
総代会終了後、新理事による理事会を開き、選挙の結果、矢幡理事長を再選。副理事長は柴﨑繁、渡部満、平井久朗の3氏を再任した。
[東京組合役員体制]
○印は新任
▽理事長=矢幡秀治(真光書店)
▽副理事長=柴﨑繁(王様書房)渡部満(教文館)平井久朗(ビーブックス)
▽常務理事=小川頼之(小川書店)井之上健浩(久美堂)大橋知広(東京堂書店)澁谷眞(四季書房)○秋葉良成(江戸川書房)
[支部功労者表彰]
丸山幸夫(蕗書房)松岡俊明(有信堂書店)

日書連第33回通常総会/6月24日、書面議決を活用、少人数で開催

6月24日に開催する日書連第33回通常総会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、可能な限り書面議決で対応し、「3密」を避ける少人数で実施したいと考えております。理事の皆様におかれましては、極力書面による議決権の行使をご検討ください。ご理解ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

「本の日」応募企画で成果/成田理事長、土曜休配拡大の影響を懸念/青森総会

青森県書店商業組合は5月6日、青森市の成田本店しんまち店で第34回通常総会を開き、組合員20名(委任状含む)が出席した。
総会は組合事務局・武田豊文氏の司会で始まり、成田耕造理事長(成田本店)があいさつ。成田理事長はまず土曜休配について触れ、今後も拡大していくことになるとの見方を説明。そして雑誌発売日が首都圏より2日遅れという状況が是正されていないことに懸念を表明した。また、運送料アップなど書店や取次を取り巻く環境の変化に対応するためには、本の定価アップが必要になるのではないかと見解を述べた。さらに、感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症の今後の影響に憂慮を示した。
日書連の読書推進活動費を受けた事業では、11月1日の「本の日」キャンペーン企画事業として「本の日アンケート」を実施したことを説明。用紙1万枚を作成してポスターとともに組合加盟書店に配布、学校・幼稚園等へポスター掲示を依頼し、CMも作成してPRした。キャンペーンは、10月1日から11月1日までの期間中、700円以上の購入に対しお客様にアンケートを配布して記入の上応募してもらう内容で、A賞(『鬼滅の刃』23巻同梱フィギュア付)3名をはじめ、B賞18名、C賞10名、図書カード500円50名の各賞品を当選者の受取希望書店に送付した。また、研修事業は新型コロナ拡大防止のため中止したと報告した。
続いて、成田理事長を議長に議案審議を行い、令和2年度事業報告、収支決算、令和3年度事業計画案、収支予算案など、すべての議案を原案通り承認可決した。
(藤村真専務理事)

北海道組合定例理事会

4月21日、札幌市中央区の北海道建設会館で開催。第45回通常総会、賦課金問題について審議した。
(事務局・髙橋牧子)

「定期誌販売協力金」8月から/小学館「ポスト」「セブン」対象/大阪組合

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は4月10日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催。粗利改善運動として小学館と話し合いを進めてきた、「週刊ポスト」「女性セブン」の配達・取り置き分に定期誌販売協力金が支払われる事業について、小学館から承認されたことを報告した。参加申込制。期間は8月1日から1年間(前期=8月~来年1月、後期=来年2月~7月)。
読書推進委員会からは「本の帯創作コンクール」課題図書選定会議を4月6日に開催しことが報告された。表彰式は11月13日、エルおおさかで開催予定。(石尾義彦事務局長)

「春夏秋冬本屋です」/「いらっしゃいませ、林真理子さん」/岩手・小原書店店長・小原玉義

「本当に来るんですか?」。開店前、岩手のテレビ局が勢揃いし、カメラを手に待ち構えていた。今日、地元の大東高校で『町に本屋さんのある幸せ』をテーマに出前授業が行われる。主催者である校長が当店に連れて来てくれた。講師となる林真理子さんたちを。
週刊文春のエッセーを愛読している校長は、林さんが近所の幸福書房さんを応援していたことに感銘を受けていた。そこで「自分の町にある小さな本屋を応援すると同時にわが校の生徒に読書の楽しさを教えてやってくれませんか」とお願いし、来訪が実現した。
林さんは時々本を手に取ったりしながら、くまなく店内を見てくれた。「林さんの実家も本屋なんですよね?」と聞くと、「もうなくなったけれど、ここより小さかったわよ」と教えてくれた。今度はテレビ局が「本屋に行っています?」と質問した。「近所の本屋さんが無くなっちゃって困ってる。その前は週に4回くらい行っていた。買った本を隣の喫茶店でお茶を飲みながら読めて、本当に良かったのに」
この言葉を残し、林さんは大東高校の出前授業に出発した。作家の綿矢りささん、古市憲寿さん、新潮社の中瀬ゆかりさんという豪華な本屋応援メンバーを引き連れて。
こんな有難い出来事があったのは2年前の夏のことだ。感謝しながら、今日も頑張ろう。

図書館資料のネット送信、出版市場侵害を懸念/民業圧迫防止の具体的措置求める/全国の書店経営者を支える議員連盟

衆参両院議員による「全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)」の会合が4月21日、東京・千代田区の自民党本部で開かれ、文化審議会著作権部会が2月3日に提出した「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書」について議論した。
この報告書は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う図書館の休館を受け、デジタル化資料のインターネット公開を求める要望が寄せられていることから、これに応えるため、図書館への物理的なアクセスができない場合にも絶版等資料を円滑に閲覧することができるよう、各家庭にインターネット送信することを可能にするというもの。出版界では、著作権者の権利や出版社と書店の市場を侵害するおそれがあるとして、懸念の声があがっている。
図書館にあるものをインターネットで提供しようという内容の著作権法改正の動きに対して、議連は①新刊について、1年のデータ送信対象の猶予②著作権者保護としてのデジタル化資料対象(入手困難資料)の選定ルールの明確化③二次使用による市場(民業)圧迫防止のための具体的措置④補償金制度導入における著作権者まで確実に行き渡る制度の実施⑤政令・省令検討時に開催される委員会への著作権者のメンバー化――を要望している。
会合には、議連から河村建夫会長、齋藤健幹事長、伊東良孝事務局長をはじめ衆参両院議員、出版界から日書連の矢幡秀治会長ら書店12名、作家の井沢元彦氏、新潮社宣伝部・社長室の私市憲敬部長、日販グループホールディングスの平林彰会長が出席した。
開会あいさつで、伊東事務局長は「書店議連は2016年9月にスタート。書店が抱える諸課題で力になれないかと7回の会合を重ね、衆参両院議員50名が参加する有力な議連になった」と報告した。
河村会長は「わが街に書店がなくなるという、これまで考えられない現実に直面している。デジタル化が子供たちにどのような影響を与えるか、医療面からも指摘がある。何もかもデジタル化すればいいとは思わない。技能技術を持つことの必要性は認めるとしても、読書の習慣など大事なものを守っていく姿勢や学校教育についてしっかり議論したい」と述べた。
齋藤幹事長は「書店が身近なところからなくなっていくことは、日本の文化レベルを劣化させる。ネットとリアルは完全に違うもの。デジタル一本で進むことは由々しき事態だ。リアル書店がいかに重要か考えたい」と呼びかけた。
日書連の矢幡会長は「1年に400店以上が閉店し、私の店もいつなくなるか分からない。デジタル化の流れもあるが、直近のことについて考える必要がある。議連には書店存続について取り上げてほしい」と求めた。
作家の井沢氏は「図書館が著作物をコピーして無料で配ると、日本の文化は崩壊する。文化国家というのは、人間の知恵にお金を払う国家。図書館の側からみれば国民に奉仕する気持ちは分かるが、著作権に相応の代価を払わない限り国家は衰亡するというのは歴史の教訓」と訴えた。
議事では、書店議連の議員からの質疑に対して、文化庁の吉田光成著作権課長、経済産業省の髙木美香コンテンツ産業課長が見解を述べた。
齋藤幹事長が「エンドユーザーまで無償でデータ送信されることで、本の販売・流通に影響を与え、民業圧迫を懸念する。経済産業省としてそれでよいのか」と問いただすと、髙木課長は「著作権者に代価が還元されることが出版産業にとって一番大切。これまで以上に著作権者、出版社、書店、流通など、既存のビジネスを圧迫することのないようにすることが大事だ」と答えた。
齋藤幹事長は総括して、「政省令やガイドライン作成にあたり、書店を含め幅広い関係者の意見を集約し、悔いのない結論を出してほしい。著作権が存在し、流通している限り補償するという観点で議論すべき。経済産業省は、コンテンツ産業に大きな影響があるという観点を持つ必要がある。日本から書店が減っていることを、文化を守り発展させる文化庁が座視できるのか、もっと真剣に考えてほしい」と話した。

訂正

5月15日付2面「宮崎一心堂・宮崎容一社長熊本の聖火リレー参加」の記事で、実施日が「3月5日、6日」とあるのは「5月5日、6日」の誤りでした。お詫びして訂正します。

「読書回帰」へ魅力的な作品を/日書連・藤原、渡部、安永各副会長に長寿祝賀/全出版人大会

第60回全出版人大会(主催・日本出版クラブ)が5月7日、東京・千代田区の出版クラブビルで行われた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加者を最低限の人数とし、会場ではマスク着用、消毒・除菌、換気等の対策を実施。古希を迎えた長寿者29名のお祝いと永年勤続者294名の表彰を代表者に行った。今回日書連関係では、藤原直(金港堂)、渡部満(教文館)、安永寛(金修堂書店)の各副会長が長寿祝賀を受けた。また、昨年中止になった第59回大会の長寿者22名、永年勤続者300名についても代表者が出席した。
式典の冒頭、野間省伸大会会長(講談社)は、昨年の第59回大会は緊急事態宣言のため中止、今年も緊急事態宣言のさなかではあるが、万全の安全対策と参加人数を限定することで開催することとし、前回の大会委員長だったオーム社の村上和夫社長に改めて大会委員長をお願いしたと報告。「新型コロナウイルスは収束がなかなかみえず、東京五輪・パラリンピックの開催形式も先行き不透明と言わざるを得ない」と現状を憂慮しつつも、「出版業界では電子出版が大幅な売上げ増となり、巣ごもり生活で読書が強く見直され、読書回帰の流れには目を見張るものがある。魅力的な作品を丁寧に着実に作り出していけば、出版業界全体のさらなる発展が必ずや現実のものとなる」と述べた。
村上和夫大会委員長は「2年続けて委員長を務めたことは大変名誉で、貴重な経験となった」と述べ、長寿者と永年勤続者の一層の健勝と活躍を祈念。大会声明を朗読し、出席者の拍手をもって採択した。
長寿者祝賀では日書連・渡部満副会長に相賀昌宏大会副会長(小学館)から寿詞と記念品、永年勤続者表彰では金子ちひろ氏(白水社)に堀内丸恵大会副会長(集英社)から表彰状と記念品が贈られた。
渡部副会長は、「教文館はキリスト教書の出版・販売を目的に設立され、創業から136年目を迎える。出版業と書店業を合わせて営み、キリスト教書だけでなく一般的な書物、文具、輸入本も販売し、最近は児童書にも力を入れている。私はもともと出版部門の出だが、前社長の急逝で2005年に代表取締役に就いた。当初は書店は販売プロパーに任せてきたが、7、8年前から書店業に軸足を移し現在に至っている」とこれまでの歩みを振り返り、「同じ出版界でも書店と出版社は、立場だけでなく発想が違う。両者をつないでいるのは取次会社であり、出版営業だ。それぞれの利害関係があって調整が難しい側面があり、業界が縮小してますますその関係がぎくしゃくしてきたかもしれない。しかし出版界を貫く1本の赤い糸はあくまでも本や雑誌のコンテンツであり、片方に読者がいる。この1本の線上に働いている者が折り合って協力関係を築かないと全てが共倒れになってしまう。この原点を忘れないことが我々の業界の今後につながっていくと思う」と話した。
【大会声明】
今、世界は新型コロナウイルス感染症拡大により、困難な状況が続いています。復興五輪と位置付け、昨年の開催が予定されていた東京オリンピック・パラリンピックが延期となり、今年は開催方式を変えることを余儀なくされています。我が国においても緊急事態宣言の発令などがあり、感染抑制のために対面のコミュニケーションが制限されています。
私たち出版界においては、昨春の緊急事態宣言による一部書店の休業、一斉休校、そして職場では在宅勤務の要請などがあり、当初、出版販売は厳しい状況で推移しました。しかし、一斉休校や在宅勤務による通学・通勤時間の減少などにより生まれた時間で、出版物のニーズが高まる側面が見られました。社会現象とも言われるコミック「鬼滅の刃」のヒットが先陣を切り、全体の出版販売金額を牽引する結果となりました。
出版物に改めて向き合う時間が増えたこと、そして、これまでの読書推進運動の成果もあり、子供たち、学生、そしてあらゆる世代に本を読む「読書習慣」が戻ってきています。SNSネイティブと言われる若い世代が本の魅力を再発見し、その感動を発信・拡散しています。私たちが魅力ある良質なコンテンツを出版し続けることで、この状態がニューノーマルとなることを期待します。また、このことは我々出版界が、一定のニーズを持つ潜在読者を新たな視点の出版物で掘り起こしていく大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
読者、書店、図書館、取次販売会社が多くの出版物の近刊情報などについて、より早く正確に入手できるようにすることは、出版社としての重要な責務です。2015年から稼働しているJPRO(出版情報登録センター)のデータベースには、日々、出版社から数百点の出版情報が届き、今や近刊・既刊、紙・電子併せて260万点以上が蓄積されています。
基本書誌情報は、検索サイト「Books」で一般向けに提供され、さらに詳細書誌・販促・選書情報等をプラスして書店・図書館向けサイト「BooksPRO」に反映されます。取次販売会社向けの搬入情報は目下の大きな課題である出版流通改革・改善にも活用されています。また、出版活動の基本となる「出版権設定」情報の登録は、大変重要な機能です。私たちは、最新の出版情報を登録し、業界再活性化に向けて活用していきます。
図書館における利用についての著作権法改正は、その運用に関してしっかりと取り組む必要があります。著作物の一部分の個人への送信に関して導入が予定される「補償金制度」が実効性を持った運用となること、さらに絶版等図書の配信についての国会図書館の運用も、出版社のアクティブな出版活動と著作者の創作・執筆活動を妨げるものであってはなりません。その対象範囲は、厳格に絞り込んでいくことを求めていきます。
また、すでに運用が始まっている、授業目的公衆送信補償金の問題についても、それを超える範囲に対応するライセンス整備を始め、適切な運用となるよう積極的に取り組んでいきます。
今、私たち出版人は、グローバル化が進む次の時代へ向けて、国際社会に活躍する「人」を育て、「文化」を育てていく使命と責任があります。出版活動を通じて、豊かな未来の創造、学術、文芸、教育の振興・普及、そして世界の平和、文化の進展に力を尽くすことを誓います。
最後に新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束と日常が戻ることを願い、大会声明といたします。
令和3年5月7日
第60回全出版人大会
【長寿祝賀】29名
池田豊(池田書店会長)
池田陽一(童心社元取締役編集長)
稲垣潔(双葉社前取締役編集局長)
岩上敏行(産労総合研究所常務取締役財務局長)
大谷隆夫(音楽之友社取締役常務執行役員)
小川美代子(淡交社元上席執行役員編集局総局長)
荻野和一郎(帝国書院元代表取締役常務)
木村芳友(講談社元顧問)
栗下実(教育出版元取締役執行役員)
小泉茂(光村図書出版相談役)
小林時夫(産労総合研究所取締役総務局長)
清水保雅(講談社元顧問)
鈴木真知子(偕成社元取締役商品管理部長)
高橋秀雄(高橋書店代表取締役社長)
田中敏広(教育出版元執行役員)
丹下伸彦(光文社元代表取締役社長)
時枝正(音楽之友社取締役常務執行役員)
廣谷繁樹(日本出版販売元常務取締役)
藤井恭子(福音館書店元取締役販売担当兼広報宣伝担当)
藤原直(日本書店商業組合連合会副会長)
松井清人(文藝春秋前代表取締役社長)
三ヶ田剛(全国教科書供給協会常務理事)
森武文(講談社顧問)
守屋美佐雄(帝国書院元代表取締役社長)
安永寛(日本書店商業組合連合会副会長)
山田俊明(日教販元専務取締役)
山根隆(講談社元顧問)
鷲巣学(光村図書出版元常務取締役)
渡部満(日本書店商業組合連合会副会長)
〔氏名50音順・敬称略〕

公明党文部科学部会・経済産業部会/合同会議に業界5団体が出席/日書連は春井副会長が書店の課題報告

出版文化産業振興財団(JPIC、肥田美代子理事長)は4月22日、東京・千代田区の参議院議員会館で開かれた公明党文部科学部会(部会長=浮島智子衆議院議員)・経済産業部会(部会長=中野洋昌衆議院議員)合同会議に業界4団体と出席し、現在出版業界が抱える課題を議員および関係省庁に理解してもらうため報告を行った。
出版業界からは日本書籍出版協会の小野寺優理事長、日本雑誌協会の堀内丸惠理事長、日本出版取次協会の平林彰会長、日書連の春井宏之副会長、JPICの松木修一専務理事、金田徴常務理事らが出席。公明党は議員と秘書16名、関係省庁からは文部科学省、経済産業省、内閣府、財務省の計約60名が出席した。
この会議は、JPICが今年度の事業計画にある「出版界の諸課題に取り組めるよう委員会を設置するなど体制を整える」の始まりとして、JPICで副理事長を務める業界4団体の支援を得て準備し、活字文化の発展に尽力する公明党の協力で開催されたもの。
出版業界からの報告では、日書連の春井会長が低いマージン率や廃業の増加など書店業界が直面する課題およびデジタル教科書問題について話したほか、JPICの松木専務理事は紙の本の市場規模の推移、出版物総流通量の推移、書協の小野寺理事長は軽減税率の適用、図書館における権利制限規定の拡大、出版コンテンツの海外展開に向けた支援、雑協の堀内理事長は海賊版対策の取り組み、土曜休配日の増加など輸送対策、軽減税率の適用、平林会長は取次が担ってきた役割、出版流通の課題――を説明した。
JPICは「今後はより具体的な議論を深め、解決方法を探るため、JPIC内に専門委員会を立ち上げるなど業界4団体の協力を得ながら進めていきたい」としている。

コロナ対策で消毒液配布へ/全組合加盟書店に/埼玉組合

埼玉県書店商業組合(奈良俊一理事長)は4月27日、さいたま市浦和区の埼玉書籍で定例理事会を開催。特別決議として、各地区の理事を通じて、全組合加盟書店にアルコール消毒液を配布することを承認した。
新型コロナウイルスの影響で書店を取り巻く環境は極めて厳しく、依然として不透明な状況が続いている。このような中、地域に根差して頑張っている書店に対して全組合員一丸となって闘っていこうというエールになればとの思いから、今回の取り組みを決めた。(水野兼太郎広報委員)

講談社、小学館、集英社と丸紅/新会社設立へ協議開始/AI・ICタグ活用出版流通の課題改革

講談社、小学館、集英社の出版社3社と丸紅は5月14日、出版流通における新会社の年内設立に向け協議を開始したと発表した。AIの活用による業務効率化とRFID(ICタグ)を用いた在庫・販売条件管理に取り組み、書店や取次に新サービスを提供する。
2020年の出版売上は1兆6168億円となり、2年連続の前年超えとなった。しかし、出版業界は構造的な課題を抱え続けており、各部門においての改善が急務とされている。
出版社3社は、出版界と長年にわたっての取引があり、他業界におけるサプライチェーン改革の実績がある大手総合商社の丸紅をパートナーとし、出版流通における課題を改革していくために新会社を設立し、いくつかの新しい取り組みをスタートする予定だ。
新会社による主な取り組みのうち、「AIの活用による業務効率化事業」では、書籍・雑誌の流通情報の流れを網羅的に把握し、その際、AIを活用することで配本・発行等を初めとする出版流通全体の最適化を目指す。
「RFID活用事業」では、RFID=いわゆるICタグに埋め込まれた各種の情報を用いて、在庫や販売条件の管理、棚卸しの効率化や売場における書籍推奨サービス、そして万引防止に至るまで、そのシステムを構築し運用することを検討する。RFIDのシステムは、AIの活用による業務効率化事業の仕組みの最適化の精度向上につながるものでもある。
出版社3社は、新会社の取り組みについて「できる限り多くの書店、取次、出版社に、新サービスを利用いただきたい」と呼びかけている。さらに、「そこから生まれる利益を業界各社に広くシェアすることで、その結果が、書店、出版社、読者の利益に資するものと確信している」として、「全国の書店の経営が健全化していくことを第一義に、出版流通全体が新しく生まれ変わることによって、読者が店頭で魅力ある出版物と出会い、快適な読書環境を続けていけることに、新会社の取り組みが必要」と、理解と協力を求めている。
丸紅は「出版界における課題を解決するのみならず、書籍・雑誌の配送量の最適化による環境負荷の軽減や、返品率の改善による資源ロスの削減を推進し、気候変動対策、ひいては持続可能な社会作りに貢献する」としている。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

日本人は稲作民族と考えられてきたが、日本は海人の国だったという。
関裕二著『海洋の日本古代史』(PHP新書880円)は、たとえば後期旧石器時代終末、縄文時代から1万5千年前の水迫遺跡(鹿児島県指宿)の竪穴住居跡、道路状遺構、石器などの出土から、石器人は移動生活ではなかったと指摘。鹿児島県霧島の上野原遺跡でも縄文早期に定住生活が始まっていたことがわかってきた。南部九州は海を自在に行き来する倭の海人の発祥地。マレー半島辺りの幻の大陸、スンダランドからやってきたのではと推察する。
新潟の硬玉製大珠が1100キロ離れた種子島で発掘されたりと、海路を使った交易を示す出土品は全国に見られる。日本人の出自の謎である。
近江俊英著『海から読み解く日本古代史』(朝日新聞出版 1400円)は、宮城県石巻市、北上川河口の五松山洞窟遺跡を巡って、古代東北の太平洋航路を探っていく。現われた人骨の形は関東の古墳時代人や、北海道アイヌと似たものがあった。10年後に始まった新金沼遺跡からも縄文土器が発掘。土器には他の土地の特徴があり、海の道からやってきて作ったことを示している。
大阪、鳥取などで古代の舟も発見されている。

「大好きな本絵画コンテスト」/県組合賞など入賞作品を決定/神奈川組合

神奈川県書店商業組合(松信裕理事長)は4月26日、横浜市中区の神奈川新聞社本社で、絵本を題材に主人公などを描く「第15回大好きな本絵画コンテスト」の審査を行った。
このコンテストは神奈川県読書推進会が主催。神奈川新聞社、神奈川県書店商業組合が後援。全国共済、サクラクレパスが協賛。県内の幼稚園や保育園に通う園児を対象に作品を募集し、今年は昨年より100点多い1740点の作品が寄せられた。
審査には県組合から山本裕一副理事長など3名、県生涯学習課・尾上夏子主幹兼教育主事、神奈川新聞社グループのエリアドライブの社員らが参加した。テーマの理解、子供らしいのびのび感、発想の豊かさを考慮し、各々がこれぞという作品に付箋を付け、その数の多い作品から入賞作品を決定。県読書推進会賞1作品、県書店組合賞2作品、神奈川新聞社賞2作品、全国共済賞5作品、サクラクレパス賞20作品、優秀賞50作品を選出した。
表彰式は6月12日、横浜市中区の全国共済で開催予定。新型コロナウイルスの状況によって、縮小開催または中止となる可能性がある。(山本雅之広報委員)