全国書店新聞
             

令和2年7月1日号

読書推進運動積極的に/コロナ禍、「書店の価値」見直すチャンス/愛知組合通常総会

愛知県書店商業組合は5月28日、名古屋市千種区のルブラ王山で第37回通常総会を開催した。新型コロナウイルス感染防止のため、書面議決を活用して少人数で行い、本人10名、委任状9名、書面93名、合計112名が出席し、総会は成立した。
冒頭あいさつで春井宏之理事長(正文館書店)は、「書店における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」を日書連ホームページで閲覧してほしいと呼びかけ、各書店でのコロナ対策を促した。また、書店はそれぞれの地域の人たちのための大事な存在であることを自覚し、本に関わる多くの人たちが本の情報や読書することの良さをもっとインターネット上で発信してくれれば、広く一般の人々に見直していただけるチャンスが広がることを説いた。
昨年の総会で公約した組合財政の健全化については、多少の犠牲を伴いながらも、ある程度の方向性ができたことを報告した。
今年は新型コロナウイルス感染防止の観点から「サン・ジョルディフェスティバル名古屋」「日本ど真ん中書店会議」などイベントの開催中止を余儀なくされたが、「青少年によい本をすすめる県民運動」「中学生はこれを読め」「孫の日」といった読書推進活動はできる限り積極的に進めることを誓った。
また、代表者以外の書店員にも組合ホームページの活用や組合LINEグループの登録・参加を呼びかけ、情報伝達の徹底を訴えた。
この後、谷口正和副理事長(ちくさ正文館)を議長に議案審議を行い、事業報告、収支決算報告・監査報告、事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認した。
定款変更の件では、定款第37条(総会の招集)第2項を「通常総会は、毎事業年度終了後3月以内に、臨時総会は、必要があるときは何時でも、理事会の議決を経て、理事長が招集する」に変更することを承認した。これまでは毎事業年度終了後2月以内に通常総会を開催していたが、経理事務処理の都合上、2月以内に開催することが困難となってきたため。
(近藤五三六広報委員)

コロナ後固定客増やす取り組みを/賦課金の一時的減免措置発議/京都組合通常総会

京都府書店商業組合は5月30日、京都市中京区の京都府書店会館で第36回通常総会を開き、組合員68名(本人3名、書面65名)が出席した。今回は新型コロナウイルス感染防止の観点から書面議決を活用して少人数での開催となった。
総会は森武紀明氏(山城書店)の司会で進行し、はじめに犬石吉洋理事長(犬石書店)があいさつ。新型コロナウイルスの書店業界への影響について「昨年末からコミックを核にやっと上向きの基調が見え始めたところで、コロナの拡大により各書店が存続を問われる事態となった。都市中心部の大型店舗が休業に追い込まれる一方、周辺部の中小店舗には大型店舗に吸い上げられていた客が戻っている。しかし、中小店舗でも、営業の大切な柱である外商で喫茶店、美容室、病院、歯科医院などの定期雑誌の取り止めが相次ぎ、経営基盤が毀損するばかり」と述べ、「大型店舗が営業を再開すれば、自粛期間中の反動で、これまで以上に中小店舗から大型店舗へと客が流れるかもしれない。そうならないためにも、今のうちに気の利いた細かな接客対応で固定客を増やす必要がある。『この店で十分』と客から評価をいただけるよう頑張りたい」と呼びかけた。
組合運営については、「書店ではコロナ前から従業員の確保が困難になっており、人件費の高騰や個々のスキルアップが課題になっている。また、物流面の停滞が徐々に表れ、京都市立図書館への納品の遅滞が懸念されるとともに、財政面で公共図書館や学校図書館へのしわ寄せが予想される。市とより連携を密にして克服したい。府に対しては昨年末、組合の活動の詳細や業界の窮状を教育長に伝え、組合加盟書店により便宜を図っていただくようお願いした」と説明した。
最後に、コロナ前からコロナ後へのパラダイムシフトに言及し、「一人ひとり、本屋の現在と未来について考え抜いていただきたい」と求めた。
続いて、川勝こづえ氏(鴻宝堂川勝書店)を議長に議事を行い、事業報告、決算、事業計画案、収支予算案など第1号議案から第9号議案まですべての議案を原案通り承認可決した。
第9号議案「その他の事項」では、犬石理事長が賦課金の減免措置について発議。「総会の縮小、移動理事会・懇親旅行・図書祭り・新春を祝う会等のイベントも中止あるいは縮小が予想される中、賦課金の一時的な減免措置を提案したい。理事会で素案をまとめる。臨時総会に諮りたいので招集を要望する」と述べた。(若林久嗣広報委員)

申請は7月末まで/新型コロナウィルス対策支援金

日書連と書店再生支援財団ではこのたび全国の組合加盟書店に元気を出していただけるよう、1書店あたり5万円の支援金を支給いたします。
ただし、今回は新型コロナウイルスによる営業ロスへの支援金ですので、休業店は対象外といたします。ご了承ください。
送付しました所定の申請書に必要事項を記入のうえ、7月31日(金)消印有効で下記住所宛にご郵送ください(FAXでは受け付けません)。審査終了後、順次、ご指定の金融機関口座に送金いたします。
【送付先】
〒101―0062東京都千代田区神田駿河台1―2日本書店商業組合連合会支援金係
【申請に必要なもの】
1、申請書
2、振込口座が確認できる「通帳」または「キャッシュカード」のコピー(金融機関名、支店名、預金種別、口座名義「カナ」が確認できる面)

パンフレットを作成/全国書店再生支援財団

全国書店再生支援財団(奥村弘志理事長)は、このほど同財団の目的と活動をアピールするためパンフレットを作成し、出版関係団体などに配布する。作家の童門冬二氏、林真理子氏、楽天の三木谷浩史会長兼社長による、街の書店への応援メッセージも掲載している。

全国書店再生支援財団寄付のお願い

全国書店再生支援財団は、これ以上書店の無い地域を増やさないために、新刊小売書店の経営支援を通じて書店の環境改善に寄与する活動を今後もしてまいります。その趣旨をご理解いただき、ご賛同、ご協力いただける方の寄付を受け付けております。ホームページのフォームに必要事項を記入し、送信ください。受信後、こちらから連絡いたします。寄付金は個人1万円(1口)、法人・団体10万円(1口)。

新会長に平林彰氏(日販)/休配日拡大へ早期に週休2日めざす/取協

日本出版取次協会(取協)は6月18日、東京・千代田区の出版クラブビルで第68回定時総会を開催し、平成31年度・令和1年度事業報告、収支決算を承認した。また、任期満了に伴う役員改選を行い、平林彰常務理事(日本出版販売)を新会長に選出した。奥村景二氏(日販)と安西浩和氏(日販)は理事に新任した。近藤敏貴会長(トーハン)は常務理事に就いた。
平林新会長は新任あいさつで、「出版業界は非常に厳しい環境が続いているが、近藤会長に解決への道を切り開いていただいた。これまでの方針を継承していきたい。今年度の事業計画においても現状の様々な制約を見直すことを柱に流通改革の推進を行う」との方針を示し、特に休配日の拡大として早期に週休2日を目指すこと、雑誌の搬入業量平準化をさらに推進することを掲げた。
令和2年度事業計画における推進テーマでは、①休配日の拡大、②搬入業量改善の検討、③輸配送面の検討、④BCP(事業継続計画)――などを決めた。
最後に、近藤前会長は「出版業界は非常に厳しい状況で、厳しさは増すばかりだが、その中で取次協会が果たす役割は大きい。課題解決のため引き続き平林新会長のもと協力していきたい」とあいさつした。
[取協役員体制]
〇印は新任
▽会長=平林彰(日本出版販売)
▽常務理事=近藤敏貴(トーハン)、服部達也(楽天ブックスネットワーク)、森岡憲司(中央社)、渡部正嗣(日教販)、貝沼保則(協和出版販売)
▽理事=〇奥村景二(日本出版販売)、田仲幹弘(トーハン)、〇安西浩和(日本出版販売)
▽監事=岩田浩(共栄図書)、山本和夫(公認会計士)

コロナ禍で大幅減収の書店も/納品遅延やキャンセル発生で/埼玉総会

埼玉県書店商業組合は5月29日、さいたま市浦和区の埼玉書籍で第36回通常総会を開催し、書面69名を含む組合員76名が出席した。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から安全を最優先。本人出席は最小限とし、多くの組合員は書面で議決権を行使した。
総会は山口洋事務局長の司会で始まり、奈良俊一理事長(ならいち)があいさつ。「コロナ禍が新事業年度始まりに発生し、組合加盟書店で対外的な納品遅延やキャンセル等で多大な減収が出たことを憂慮している。この難局を全員の力で乗り切りたい」と述べた。
また、本年度事業について、組合受注事業としての県立図書館への納入は順調に推移していると報告。研修事業では、日書連図書館サポート部会会長の髙島瑞雄氏を講師に迎え、「図書館への納品で今書店が困っていること」と題した研修会を行ったと報告した。
続いて水野兼太郎常任理事を議長に選出して議案審議に入り、令和1年度事業報告、財産目録・貸借対照表および損益計算書、令和2年度事業計画、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
(水野兼太郎広報委員)

総会、来賓招かず懇親会なしで開催へ/奈良組合

奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)は6月1日、大和郡山市のディーズブックで第4回理事会を開催。令和2年度の総会を来賓招待や懇親会を行わない形で8月22日に開催することを決めた。
理事会に先立ち、4月1日から5月10日まで実施した「サン・ジョルディの日」キャンペーンの抽選会を行い、バラのオブジェ(プリザーブドフラワー)10名、図書カード500円分200名の当選者を決めた。15店から2110通の応募があった。
理事会では、冒頭、4月に死去した荒井藤平氏(ディーズブック)、井上幸夫氏(井上書店)の冥福を祈って黙祷。続いて、林田理事長は「新型コロナで書店も休業など大変な状況に追い込まれた。そうした中で、地域に根差した書店の大切さを再認識した。本と書店の大切さをアピールする新しいスタートの日にしよう」とあいさつした。
空席の副理事長に久保繁弘理事(久保弘文堂)を選出。賦課金については、算定方法は従来通りとすること、6月29日に算定委員会を開催することを決めた。
次期総会は8月22日午後3時から開催することを決定。コロナ対策で取次、出版社など来賓は招待せず、懇親会も開かない。会場も大和郡山市のディーズブックとする。また、組合員の書面出席も可とした。
なお、次回理事会は7月27日午後2時からディーズブックで開催する。
(靏井忠義広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「喜びを力に」/鳥取・今井書店経営企画本部広報グループ長・津田千鶴佳

今年の前半は、寝ても覚めても新型コロナウイルスの話題につきます。山陰の我々も、感染者数は少なかったとはいえその対応に追われた毎日でした。臨時休校に伴う教科書販売の問題に始まり、3月には、予定していた来年度入社の採用活動を急遽オンラインに切り替え、会社説明会等をインターネットを介して行いました。4月になると、本年度の新入社員が入社し、慌ただしくも新入社員研修が始まりました。初めての社会経験で不安がたくさんある中、今年は例年以上に心配が多かったでしょう。
そんな彼らも、座学研修が終わり、実際に店頭に立つ実地研修がスタートしました。
ある日、1人の新入社員がお客様から問い合わせを受けました。本の場所が分からないから、棚から取ってきて欲しいという依頼です。シリーズ物の作品だったのですが、その新入社員は頼まれた本が一つ前の巻だと分かると、最新巻も併せてお客様にご案内をしたのです。恥ずかしながら、何年も勤務しているスタッフでも、言われたことだけ対応する者もいます。入社2ヶ月でその機転を利かせた彼女は、お客様から大変喜ばれ、また本人もそれが非常に嬉しかったようです。
日々店頭では数々の出会いがあります。こういった喜びを力にし、今後大いに活躍してくれることを願っています。

小橋川篤夫理事長を再選/児童・生徒の図書購入補助県・42市町村に図書カード配布依頼/沖縄総会

沖縄県書店商業組合は5月25日、那覇市の同組合会議室で第32回通常総会を開催し、組合員27名(委任状含む)が出席した。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から書面による参加を呼びかけ、本人出席の人数を最小限に抑えて開催した。役員改選では小橋川篤夫理事長(いしだ文栄堂)を再選した。
総会は竹田祐規事務局長の司会進行で始まり、小橋川理事長があいさつ。「昨年10月の首里城焼失や新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で、県内外で経済状況が大変厳しくなり、今後の影響が懸念される。組合としても臨機応変な対応により、この難局を乗り切りたい」と述べた。
また、学校の長期休校を踏まえ、県をはじめ42市町村の教育委員会に対し、児童・生徒への図書購入費の補助として図書カード無償配布について依頼したことを報告した。
続いて小橋川理事長を議長に議案審議に入り、令和1年度事業報告、収支決算報告、令和2年度事業計画案、収支予算案など、第1号議案から第6号議案まですべての議案を原案通り承認した。
令和2年度の取り組みとして、①昨年より実施している首里城復興支援募金活動の継続、②雑誌・書籍の発売日短縮に向けてのさらなる改善の継続、③書店活性化に向けた取り組み、④コンテナ運賃値上げなどにより高騰している返品費の削減に向けた調査・研究、⑤日書連が取り組んでいる「書店の粗利益拡大」の早期実現に対して当組合も昨年同様に協力していく――と提案した。
任期満了に伴う役員改選では、正副理事長が全員重任となった。
[沖縄組合役員体制]
▽理事長=小橋川篤夫(いしだ文栄堂)
▽副理事長=大城行治(大城書店)、真栄城久尚(首里書房)
(竹田祐規事務局長)

書店組合総会スケジュール

◆大阪府書店商業組合「令和1年度通常総会」
7月18日(土)午後2時、大阪市北区の尼信ビルで開催。

【寄稿】「BooksPRO」活用のススメ/プロ書店向け~唯一無二の出版情報ポータルサイト/福島・高島書房代表取締役・髙島瑞雄

〔近刊情報入手の苦労を一気に解決〕
知らないままでいいんですか?
BooksPRO、ご存知でしたか?
あまたある出版社のこれから出る本を、どんな方法で情報を入手し、読者に提供していますか?
発売前から話題の本はともかくとして、ほとんどの近刊に関しては、『これから出る本』や出版各社の情報誌やホームページ、パンフレット、大手ECサイト、挙げ句には当該出版社への電話確認等々、苦心惨憺をして、それで解決すればよいが、なかなか判明しないことが多々ある。
それを一気に解決したのが、BOOKsPROです。
書店利用に特化した近刊書誌情報サイトで、日本出版インフラセンター(JPO)内の出版情報登録センター(JPRO)が、今年3月に開設した検索サイトです。
これは、トップページが月表示のカレンダー形式で見やすく構成され、日毎に出版予定点数が表示されており、クリックすると、書名(仮称も含む)や定価(予価も含む)はもちろん、書影や内容紹介まで記載されている。右にスクロールし、月を進めていくと、半年後の12月には、既になんと14点(原稿執筆時)もの近刊情報が掲載されていた。
JPO関係者の話では、3月現在で委託ルートの新刊書籍(コミック含む)の登録水準は80%超になっており、なおかつ全て60日前登録を目指している、とのこと。
場合によっては、当該版元の社員が知らない情報まで掲載されていることも考えられる。
もちろん、既刊書籍も240万点超が掲載されており、近刊と同時に検索が可能である。
このBOOKsPROは、大手ECサイトや各版元のHPに比べて、書店にとって必要最小限の項目に絞られており、とにかく検索画面が軽快に動き、サクサク感が心地よい。これぞプロ書店員の唯一無二のツールになると確信している。
もちろん、各版元や各取次へのリンクも張ってあり、業界の連携プレーが遅滞なく行えるシステムとなっている。
特に中小零細書店にとっては、近隣大手書店や大手ECと対抗するには、この機能を活用しない手は無いと言える。
もしヘビーユーザーがこのサイトを知ったら、書店と偽って入り込んでくる事も充分に予想される。いや、既にいるかも。
〔スマホ版は外商の強い味方に〕
6月5日にはスマホ版が運用を開始している。これは、外商先で強い味方となるのはもちろんのこと、店舗内での接客対応のツールとしても効果がかなり期待できる。
新刊書籍の新刊登録率のアップと改良を進めながら、今後の書店店頭において、POSレジよりも、FAXよりも、キャッシュレス決済端末よりも、欠かすことの出来ない神ツールに育つことを期待している。
このBooksPROの運営には、全国書店再生支援財団も、書店の営業活動に有効性ありと考え、多額の補助金を出している。
ここまで読んで内容を知った今、早速パソコンに向かい体験してみてはいかがだろうか。

「活字の学びを考える懇談会」設立/学校教育での活字文化の重要性訴える

児童・生徒に1人1台のタブレット端末やパソコンを配布する文部科学省の「GIGAスクール構想」が動き出した中、活字文化の重要性を訴えるため、日本書籍出版協会、日本新聞協会、文字・活字文化推進機構、超党派の国会議員連盟などで「活字の学びを考える懇談会」を設立し、6月11日、東京・千代田区の衆議院第2議員会館で第1回会合を開催した。会長に作家の阿刀田高氏を選び、活字文化議員連盟会長の細田博之衆議院議員、子どもの未来を考える議員連盟会長の河村建夫衆議院議員、学校図書館議員連盟事務局長の笠浩史衆議院議員が顧問に就任。電子メディアと印刷メディアのバランスのとれた学校教育の実現を求めるアピールを採択した。
会合では、呼びかけ人と各議連の代表者があいさつ。この中で、日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長は、子どもたちが当たり前のようにデジタルデバイスを使う上で気を付けなければならないことがあり、短期的にはパソコンのトラブルにすぐにメーカーが対応できるようにすること、中期的には学校図書館司書へのIT教育、長期的には教職課程・司書教育でパソコンやスマホを利用する教育を入れることが重要と指摘。「デジタル化の中で紙のメディアがどう補完していくか。新しい紙のメディアを作っていかなければならない」と述べた。
会長に就任した阿刀田氏は、「すべての子どもが等しく新しい時代のデジタル機器を享受できる社会をまず作っていかねばならない。デジタルを中心とした教育と500年続いてきた従来の活字文化という2つのリテラシーをどうつなげていくかを考えたい。デジタルは迅速に知識を獲得するには便利だが、深く物事を考えるには向いていない。デジタルに熟達することは大事だが、活字文化が培ってきた地盤をしっかりしたものにしなければ、次世代の創造は生まれない。活字文化を知らない子どもたちに『活字は良い』と言っても通じない。それを含めて多岐にわたる問題を統合し、次世代に役立つことをやっていきたい」と述べ、協力を呼びかけた。
「活字の学びを考える懇談会」委員名簿
▽会長=阿刀田高(作家)
▽事務局長=肥田美代子(文字・活字文化推進機構理事長)
▽委員=浅田次郎(作家)、安藤忠雄(建築家)、相賀昌宏(日本書籍出版協会理事長)、小川恒弘(日本製紙連合会理事長)、片山善博(早稲田大学大学院教授)、金子眞吾(日本印刷産業連合会前会長)、川島隆太(東北大学教授)、酒井邦嘉(東京大学大学院教授)、設楽敬一(全国学校図書館協議会理事長)、竹下晴信(日本児童図書出版協会会長)、俵万智(歌人)、堀川照代(放送大学客員教授)、柳田邦男(ノンフィクション作家)、山口寿一(日本新聞協会会長)、山根基世(アナウンサー)、
▽顧問=細田博之(衆議院議員・活字文化議員連盟会長)、河村建夫(衆議院議員・子どもの未来を考える議員連盟会長)、笠浩史(衆議院議員・学校図書館議員連盟事務局長)
(2020年6月11日現在、敬称略、50音順)
【アピール(全文)】
文部科学省の「GIGAスクール構想」が動きだし、学校教育はいま、急速に変わりつつあります。この構想のもとで、全国すべての小中学生に一人一台のタブレット端末やパソコンの配布が始まっています。これらの施策は、インターネット社会に対応したものとして国民の合意を得ることができましょう。タブレット学習は、教師が画像に情報を書きこみ、端末で全員に配信され、授業の時間短縮ができること、また、情報が画像で表現されるため、子どもの授業への興味を高める効果があることなどが評価されています。
デジタル授業の普及は、一方で印刷メディアによる学習の重要性が増すことでもあります。紙に触れ、筆記具を使って考えながら学んだり、自分の思いや意見を文章にしたりする読み書き能力の取得に割く時間が必要になるからです。私たちはいま、明治以来の紙の教育からデジタル技術を導入した学校教育への転換期を迎え、電子メディアと印刷メディアの共存する学校教育はどうあるべきかという新たな課題に直面しています。
昨今の教育現場の新しい現実を直視し、デジタル技術に偏重することなく、電子メディアと印刷メディアとが、それぞれの持ち味を活かして足らざるところを補い合うというバランスのとれた学校教育の実現に、政府が取り組むことを強く要望いたします。私たちは今後、子どもの教育にかかわる多様な分野の人びとと連携し、豊かな学びを保障する学校教育の確立をめざして、シンポジウムや講演会を開くなど、息の長い取り組みを続けてまいります。

紙の出版販売金額4・3%の減/紙と電子合算の販売額は前年比増/出版指標年報

全国出版協会・出版科学研究所が発行した『出版指標年報2020年版』によると、2019年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比4・3%減の1兆2360億円となった。内訳は、書籍が同3・8%減の6723億円、雑誌が同4・9%減の5637億円。電子出版は同23・9%増の3072億円と大きく成長し、紙と電子を合算した販売金額は同0・2%増の1兆5432億円と、14年の電子出版統計開始以来、初めて前年を上回った。
〔ビジネス書、新書が前年上回る/書籍〕
書籍の推定販売金額は6723億円、前年比3・8%減。文庫本の縮小が続いたことに加え、文芸、生活実用書、学参などが低調で、前年よりマイナスが拡大した。一方、ベストセラーが多かったビジネス書、新書は前年を上回り、児童書も健闘した。推定販売部数は同5・1%減の5億4240万円で、販売金額以上に減少幅が大きかった。
19年のベストセラーをみると、シニア向けの生き方本、自己啓発書、実用的な内容のビジネス書、タレント写真集などが売れ筋で、1年以上コンスタントに売れ続けるものが多かった。18年に死去した女優・樹木希林の関連書は、150万部に達した『一切なりゆき』(文春新書)を筆頭に各社から刊行が相次いだ。
金額返品率は35・7%で同0・6ポイント改善。販売ロスを避けるため初版・重版部数ともに発行を抑制する動きが進んでいる。
新刊点数は7万1903点で同242点増。内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同2・8%(1438点)減の4万9421点、注文扱いの新刊が同8・1%(1680点)増の2万2482点だった。取次仕入窓口経由は7年連続の減少。新刊推定発行部数は同5・2%減の2億9582万冊と大きく減少した。
ジャンル別動向をみると、文芸書は、売行きは全体的に低調だったものの話題作は登場しており、最も売れたのは本屋大賞を受賞した瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)で、42万部に伸長した。ビジネス書は年間を通して好調なタイトルが多く、特に『メモの魔力』(幻冬舎)と『FACTFULNESS』(日経BP発行、日経BPマーケティング発売)はともに40万部を突破した。
文庫本は販売金額が同4・8%減と厳しい状況が続く。小野不由美「十二国記」シリーズ(新潮文庫)の18年ぶりの新刊が発売され話題を集めた。新書は『一切なりゆき』のほか、『妻のトリセツ』(講談社+α新書)などが目立った売行きを示した。児童書は2年連続でプラスに。「おしりたんてい」(ポプラ社)が大ヒットシリーズに成長し、ジャンル全体を牽引。子ども向け法律書『こども六法』(弘文堂)は各メディアでの紹介が相次ぎ、50万部まで伸ばした。
19年の単行本総合ベスト10は次の通り。①一切なりゆき樹木希林のことば/樹木希林/文藝春秋②樹木希林120の遺言死ぬときぐらい好きにさせてよ/樹木希林/宝島社③青銅の法/大川隆法/幸福の科学出版④新・人間革命(30)(下)/池田大作/聖教新聞社⑤日本国紀/百田尚樹/幻冬舎⑥メモの魔力/前田裕二/幻冬舎⑦妻のトリセツ/黒川伊保子/講談社⑧そして、バトンは渡された/瀬尾まいこ/文藝春秋⑨FACTFULNESS/ハンス・ロスリングほか/日経BP発行、日経BPマーケティング発売⑩英単語の語源図鑑/清水建二・すずきひろし/かんき出版
〔コミックスの好調で減少幅縮小/雑誌〕
雑誌の推定販売金額は5637億円、同4・9%減。マイナスは22年連続になった。内訳は月刊誌が同4・2%減の4639億円、週刊誌が同8・1%減の998億円。月刊誌の内訳は、定期誌が同8・6%減、ムックが同7・4%減、コミックスが同6・1%増だった。雑誌全体で、グッズ付録と人気アイドルの起用により単号で売れる傾向がさらに顕著になっている。コミックスは、大手出版社が値上げした影響や、アニメ放映された『鬼滅の刃』(集英社)が大ヒットするなど映像化作品が好調で、前年を上回った。
推定販売部数は同8・0%減の9億7554万冊。内訳は、月刊誌が同6・8%減の7億477万冊、週刊誌が同11・0%減の2億7077万冊。平均価格は同2・6%(15円)増の589円。宝島社の主要女性誌が軒並み定価1千円を超えたほか、主要コミックスの価格引上げなどで大きく上昇した。
不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同50点減少し3266点。ムックは同468点減の7453点で、刊行抑制の動きが各社で進んでいる。1号を1点としてカウントした付録付き雑誌の点数は同83点増の1万1311点で、2年ぶりに増加した。
総復刊点数は同2点減の58点と、2年連続で過去最低を更新。創刊誌はおよそ半数を分冊百科とパズル誌が占めた。休刊点数は同2点減の127点だった。
〔コミックが牽引し3千億円突破/電子出版〕
電子出版の市場規模は3072億円で、同23・9%増と大幅に伸長した。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同29・5%増の2593億円、電子書籍が同8・7%増の349億円、電子雑誌が同16・7%減の130億円。紙と電子の出版市場を合わせると1兆5432億円、同0・2%増となった。出版市場全体における電子出版の占有率は19・9%で、同3・8ポイント増加した。
電子コミックは18年4月に海賊版サイト「漫画村」が閉鎖して以降、正規のサイトやアプリが順調に成長を続け、市場全体を大きく牽引している。電子書籍は、電子化点数の増加と比例する形で緩やかに伸長している。電子雑誌は、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数減少が続き、2年連続の大幅マイナス。

トーハン・中央社、協業範囲の拡大を検討/物流拠点等のインフラ活用

トーハンと中央社は6月11日、協業範囲の拡大を検討していると発表した。
両社は1996年11月から返品物流業務の協業を行っているが、物流経費高騰など市場環境の変化に対し、業界全体の流通効果をさらに高める必要があるとの認識で一致し、その具体策として協業範囲拡大の可能性について協議を重ねていると説明。検討内容は、①物流業務の一部とそれに伴う仕入業務の協業、②トーハンの物流拠点等のインフラ活用――の2点で、詳細については決定次第発表するとしている。

第59回全出版人大会/長寿祝賀・永年勤続表彰者

日本出版クラブは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、5月8日に開催を予定していた「第59回全出版人大会」を中止。長寿祝賀(70歳以上の役員対象)・永年勤続表彰者(勤続15年以上の従業員対象)は「出版クラブだより600号(全出版人大会号)』に名前を掲載し、表彰状・記念品を贈呈するとともに、次年度以降に開催された際の参加を呼びかけた。
【長寿祝賀22名】
秋谷克美(同文舘出版元取締役)
飯島和夫(東京法令出版専務取締役)
石田正樹(日本出版販売元監査役)
井上顯一(日本出版販売元監査役)
岩崎光夫(講談社元顧問)
大谷敏夫(中央社監査役)
加藤悟(中央社前代表取締役社長)
蒲生良治(CQ出版元代表取締役)
河野隆史(日教販前代表取締役社長)
川畑慈範(東京書籍取締役相談役)
佐藤俊行(双葉社元常務取締役)
高原富夫(朝倉書店元取締役)
竹内啓一(コロナ社元取締役)
堤隆夫(開隆堂出版顧問)
禰冝谷恭治(家の光協会元常務理事)
馬場章好(トーハン元専務取締役)
古屋文明(日本出版販売元代表取締役会長)
前田廣行(教育出版取締役常務執行役員)
益井英博(文英堂取締役会長)
森田豊(朝倉書店常務取締役)
諸角裕(双葉社前代表取締役会長)
冷泉まさし(東洋経済新報社元取締役)
〔氏名50音順、敬称略〕
【永年勤続表彰】300名
秋田書店=石川淳子、松本芙美
朝倉書店=下村英昭
家の光協会=五十畑達雄、小出繁、茂木久美子
医学書院=石橋哲哉、後藤泰一郎、渡邉元由希、福田亘、洲河佑樹、前野みさき、能藤久臣、山内梢、吉永麗蘭、溝口明子、吉田拓也、柴﨑巌
池田書店=野口英之
医歯薬出版=新宅智子、上田雄介、山﨑聡子
岩波書店=樋口祐美、木村理恵子、金子陽子、塩田春香、中山永基、金光翔、宮村彩子、森康晃、西澤昭方
オーム社=矢野友規
学研ホールディングス=東谷智明、藤井利昭、川畑勝、石原美映、岩川晋太郎、鳥居香
河出書房新社=秋谷渚、岩本太一、林芽里
教育芸術社=津嘉山秀子
教育出版=髙橋琢
きんざい=石井治子、神守由紀子、竹中学、加藤精一郎、茂原崇
佼成出版社=藤本欣秀、石橋利浩
講談社=木原進治、全泰淳、三浦敏宏、松下卓也、山田耕作、井上威朗、碓氷早矢手、緑川良子、宍倉立哉、荒井均、奥野仁、太田克史、高橋晶子、所澤淳、石井寛子、倉田卓史、長岡香織、寺田純子、立原由華里、小川貴仁、鈴木崇之、米村昌幸
光文社=今泉祐二、山本晃生、大野賢彦、久保田安子、河合良則、永吉正明、小澤昌弘、甲斐奈央子、小林朋、太田彩子
弘文堂=工藤誠一
三省堂=阿部まりか、坂本淳、山田桂吾、藤澤慶太、瀬戸慶和
実教出版=高橋照明、福井康之、西村良太、早川達也、柳聡、佐藤恵
主婦と生活社=石井洋、伊藤亜希子
主婦の友社=須田弥生、渋谷智子、柴﨑悠子
彰国社=藤田健介
新興出版社啓林館=安藤寛崇、菅原典彦、大梅健太郎、松本哲也、和田匡史、廣田千佳
数研出版=畑山麻紀、熊本明夫、齋藤有佳理、渕上慎也、野田将人
成美堂出版=和田直人、原田洋介、今村恒隆
税務経理協会=鬼頭沙奈江、小林規明、原さやか
第一学習社=梅原誠、髙田達也、川口史郎
第三文明社=本澤伸男
大修館書店=菊地望、向井みちよ
大日本図書=石川美穂、三井雄介、太田綾子、米山啓一郎、藤井翼
ダイヤモンド社=内山信行、加藤貴恵、永田誠、大谷康之、片田江康男、秋元悟、堀毛博史、寺田庸二、笛木聡
淡交社=中谷友昭、野口真紀子、石渡健一、田山武志、坪倉宏行
筑摩書房=河内秀憲、窪拓哉、大坪詠子、野澤笑子、三澤宏幸、喜多尾氷見子、三須宮土理
チャイルド本社=新村奈都子、深山美樹、飯嶋正幸、斉藤健太、兼子淳子、高橋歩、角井洋介、藤井真紀、溝呂木晃、金子英
中央経済社ホールディングス=有住拓哉、牲川健志、星野龍太朗
中央社=椎名昌弘、百瀬浩史
東京書籍=藤田六郎、中野裕士、楠学、桜庭強、福島康生、森恵理子、和田直久、倉田佳典、川原拓、斉藤隆介、堀真也、加藤瞳、長崎亮、丹野盛彦、松田智幸、細井学、北原憲生、中西浩、高橋賢樹、大石梨紗子、小山朝夫、田代昌美
東京創元社=宮澤正之、小野木常幸、桑野崇
東京法令出版=阿知波正
中村栄理子、徳竹裕志、海野幸司、雪友恵、笠井美奈子、今井千夏
同文舘出版=松本陽子
東洋経済新報社=廣田充彦、山本亜由子、水落隆博、篠原達也、西村雄吉、有田早斗子、中里有吾、吉井貴代、斎藤治子、加藤直秀
南江堂=逸見健介、野澤美紀子、野村真希子、鈴木佑果、鳥海知子
日貿出版社=森佳子、大塚賢治、宮舘優美
日教販=酒井孝一
日本加除出版=倉田芳江、滝澤一弘、新藤恵子、鶴﨑清香、川島成雄
日本書籍出版協会=小杉実和
日本スポーツ企画出版社=竹田忍、加藤紀幸、白鳥和洋、渡邉隆康
農山漁村文化協会=向井道彦
ひかりのくに=酒井裕希子、古川里美、財津康輔、遠藤真吾、縣保吉、串部孝治、神田恒樹、山方健太郎
福音館書店=保科健治、呉珠玲、牧野順子、疋田薫子、八巻伸子
富士経済マネージメント=待鳥由実、川合洋平、武林周一郎、横山俊、姚穎、村瀬浩一、麻生幸樹、木下聖武、佐内大、椎野由大、久保木健治
婦人之友社=山下謙介、羽馬論子
双葉社=森広太、服部陽子、丹羽真知子
文藝春秋=西野涼子、清水陽介、平嶋健士、加藤亜紀子、中野英子
ポプラ社=永盛史雄、斎藤伸二、荒川寛子、加藤裕樹、堀創志郎、前田桂子、君塚英司
マガジンハウス=杉江宜洋、永田滋友、宮地小百合、矢部光樹子
光村教育図書=中山弘基
光村図書出版=南部正孝、前田良浩、丸山武志、松本晃児、高橋正二、島本陽介、田中博文、田中精一、久松雅美、三好美雪、松藤光
緑書房=渡邊裕、秋元理、窪具子
八重洲出版=山口武弘
有斐閣=渡邉和哲、藤井亜樹
楽天ブックスネットワーク=松木章吾、渡辺佳也子、平林里香、原田亜紀子、小嶋明日美、西岡嘉子、平野勝久、佐々木直美、井上俊太、佐久間美幸〔社名50音順、敬称略〕

第31期受講者を募集/日販出版流通学院

日販は9月から第31期出版流通学院を開講する。同学院は、取引先書店の人材育成を主眼として1990年に開設。今期は「情熱を育て、いまを動かす」をコンセプトとして、経営幹部候補に必要な思考法から、実務面で必須の知識まで習得できるカリキュラムを用意しており、その知識を基に受講者全員が自社の変革プランを立案し、それを着実に実現していく実行力を身に付けることを研修のゴールとする。
新型コロナウイルス感染症については、安全な研修環境で受講できる最大限の対策を講じ、万一さらなる感染拡大の兆候が見られた場合にはオンライン研修に切り替えるなど、柔軟に対応するとしている。
[開催概要]
▽受講対象=書店店長および本部マネージャー、リーダークラス
▽受講期間=20年9月~21年2月の6ヵ月間。全4回(年間12日間。9月、11月、1月、2月に開催)
▽受講料=1名あたり25万円(税込・全4回分)※日本出版共済会より加入口数50口につき1名20万円補助
▽申込方法=出版流通学院ホームページから申し込む。(URL=https://www.nippan.co.jp/ryutsu-gakuin/list-seminar/)
▽申込締切=8月7日
問い合わせは日販出版流通学院まで。TEL03―3233―4791

トーハン、日販20年上半期ベストセラー/『鬼滅の刃』小説版が上位に

トーハン、日販は2020年上半期ベストセラー(集計期間=19年11月24日~20年5月23日)を発表した。総合1位は、トーハンが『THEWORLDSEIKYOワールドセイキョウ2020年春号』(聖教新聞社)、日販が『鬼滅の刃片羽の蝶』(集英社)となった。
19年にアニメが放映されて大ブレイクしたコミック『鬼滅の刃』の小説版2冊『鬼滅の刃片羽の蝶』『鬼滅の刃しあわせの花』が、日販のランキングで1位と2位、トーハンのランキングで3位を獲得した。原作漫画の本編で語られなかったエピソードが原作者の挿絵で楽しめ、多くのファンの支持を集めた。4位は、イギリスの中学校に通う息子の成長を親の目線から描いた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)、5位は若い女性ファンを多く獲得した写真集『田中みな実1st写真集Sincerelyyours…』(宝島社)が両社ともランクインした。

三省堂・河出書房新社/「生物の進化大事典VS大図鑑」対決コラボフェアで書店応援

河出書房新社と三省堂は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている書店の応援企画として、『対決!生物の進化大事典VS大図鑑あなたならどっち?』フェアを豪華拡材と実売報奨付きで実施、6月18日から参加店の募集を始めた。
フェアの対象となるのは、三省堂『生物の進化大事典』(本体4200円・6月5日搬入発売)、河出書房新社『生物の進化大図鑑【コンパクト版】』(本体3900円・6月25日搬入発売)の新刊2点。テーマ、内容、タイトルともに近しいことから、両社の担当者が意気投合して同企画を立ち上げたという。「従来のシンプルな『生物図鑑』の枠をはるかに超え、最新の知見と美しい図版を駆使し、『我々はどこから来てどこへ行くのか』というロマンと生物進化の歴史の追及にとことんこだわった究極の2冊」とうたい、フェアへの参加を呼びかけている。
報奨対象期間は、三省堂『生物の進化大事典』が6月1日~9月30日の4ヵ月間で、期間をさかのぼって報奨計算する。河出書房新社『生物の進化大図鑑【コンパクト版】』は6月1日から10月31日までを対象とする。報奨は、期間内実売本体価格の3%。三省堂の場合は1冊126円、河出書房新社の場合は1冊117円となる。仕入条件は、両社の書籍合計6冊以上で、既に入荷している場合はその冊数も含む。
申込みは、専用注文書兼申込書に必要事項を記入してFAXで返信する。締切は7月4日。報奨支払いは12月末日を予定。拡材として合同ポスター(A3)、合同POP(B5)などを用意する。

「こどもプログラミング本大賞」を発表/日販

日販は、「こどもプログラミング本大賞2020」の受賞作品と部門入賞作品を発表。エンジニアや小学生、小学校教員、プログラミングスクール講師など計1200名以上による投票の結果、『作って学ぶScratchドリル』(オライリー・ジャパン)が大賞に選ばれた。
同賞は、子ども向けの優れたプログラミング本の認知拡大を図るため、子どもたちに勧めたいプログラミングの本を決定するもの。大賞となった『作って学ぶScratchドリル』は、小学校低学年から使える、プログラミング学習用ソフト「Scratch」の入門書。5つのプロジェクトを通じて、プログラミングの基礎を身につけることができる。この他、部門別入賞作品として、絵本・読み物部門、操作マニュアル部門、保護者・教員向け部門で各3点が選ばれた。

日販調査店頭売上/5月期は前年比11・2%増/書籍、コミックの好調で大幅増

日販調べの5月期店頭売上は前年比11・2%増となり、2008年7月の集計開始以来、初めて10%超の伸びを記録した。
書籍は2・3%増で、19年3月以来の前年超え。総記、ビジネス書、専門書、学参、児童書の5ジャンルで前年比プラスになった。総記は、一斉休校解除の動きがあった影響で、学校の授業で使用する国語辞典や英和辞典などが大きく伸長した。
雑誌は10・2%減。月刊誌は、『文藝春秋6月号』(文藝春秋)、『ちゃお6月号』(小学館)が売上を牽引。週刊誌は、「鬼滅の刃」の最終話が掲載された5月18日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)が売上を伸ばした。一方、新型コロナウイルスの影響で発売延期となるタイトルがあり、雑誌全体では前年比プラスとはならなかった。
コミックは57・6%増で、8ヵ月連続の前年超えとなり、好調を持続している。雑誌扱いコミックでは、『鬼滅の刃20』、『鬼滅の刃20ポストカードセット付き特装版』(ともに集英社)が大幅に売上を伸ばした。書籍扱いコミックは、『ダンジョン飯9』(KADOKAWA)が売上を牽引した。

佐野広実氏『わたしが消える』が受賞/江戸川乱歩賞

第66回江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催、講談社・フジテレビ後援)の最終選考委員会が6月8日に行われ、佐野広実氏の『わたしが消える』を受賞作に決定した。
選考会は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今回初めてリモートで行われた。受賞作は、10月頃に講談社より刊行される予定。今回は賞の贈呈式は延期とし、来年度の贈呈式と合わせて開催する予定となっている。
受賞した『わたしが消える』は、交通事故による認知障碍に苦しみながらも、身元不明の認知症の老人に隠された謎に迫る元刑事を描いた作品。6月9日にリモートで受賞者記者会見が行われ、日本推理作家協会代表理事で選考委員を務めた京極夏彦氏は、受賞を決めた理由について「冒頭に提示された謎が、最後まできちんと引っ張られていて、謎の解明が物語の核となり、小説の骨子にもなっている。ミステリーとしてシンプルな形を堅持してくれた」と話した。
佐野氏は1999年に島村匠名義で松本清張賞を受賞、前回の江戸川乱歩賞の最終候補に残っていた。今作の執筆のきっかけについて佐野氏は、「5年ほど前、認知症の方が徘徊しているうちに行方不明になってしまうというニュースを見て、小説が書けないかと思い浮かんだ。昨年亡くなった母は最後の2年ほど軽度の認知症になり、実際に目の当たりにして書いてみようという気になった」と振り返った。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

これからを生きるための「練習問題」と副題に掲げるのは、平田オリザ著『22世紀を見る君たちへ』(講談社現代新書860円)である。
劇作家、演出家、大学特任教授でもある著者が未来を生きるために大切な能力とは何なのかと問いかける。55歳にして初めて父親になった著者が2歳の息子を意識して、考えたタイトルという。
現在の日本人の平均寿命は84歳なので、今年生まれた子どもたちは、みな22世紀を見ることになる。そのわからない未来の教育に、もっと謙虚に立ち向かいたい。たとえば英語教育にしても、未来に必要かどうかは誰にもわからないのである。大学入試改革の問題点を検証しながら、市区町村の採用試験などにも触れ教育そのものを考える。
兵庫県豊岡市に移住して、専門職大学の設立にかかわり、地方創生戦略としての教育改革に取り組む。好奇心を失わず、AⅠと仲良くできる子どもを作る。巻末に22世紀のための問題集がつく。
除本理史/佐無田光著『きみのまちに未来はあるか?』(岩波ジュニア新書860円)も、地域と関わる新しいライフスタイルを考察する。福島県飯館村、熊本県水俣市、石川県金沢市や奥能登の地方再生を見ながら未来へのヒントを探る。