全国書店新聞
             

令和4年1月1日号

経営継続できる環境作る!/日書連の課題・矢幡秀治会長に聞く

新型コロナウイルスの影響が長期化し、日常生活や経済活動が制限された2021年。ワクチン接種が進み感染状況が落ち着いてくると、9月末に緊急事態宣言が全面解除された。しかしコロナ前のような生活には戻れず暗中模索が続く。コロナ禍で本の価値が見直され、巣ごもり需要で販売状況に回復の兆しも見える書店業界だが、コロナ3年目となる2022年はどう動くか。矢幡秀治会長に日書連の近況と今後の課題を聞いた。(聞き手=本紙編集長・白石隆史)
〔「コロナ前より悪い」書店の実態/年後半、巣ごもり需要ほぼ消失〕
――新型コロナウイルスも2年目になりました。書店への影響をどのように捉えていますか。
矢幡昨年の初めからゴールデンウイークあたりまでは、巣ごもり需要による児童書・学参などの好調が続き、「鬼滅の刃」をはじめコミックも売れていました。しかし、緊急事態宣言が長引き、7月~9月の第5波で感染者数がピークを迎えた頃、書店にとっての巣ごもり需要はもうほとんどありませんでした。そもそも消費者はあまり買物に出ないし、外出しても必要なものしか買わない。9月末に緊急事態宣言が解除されてからも客足は戻らず、現在、店頭の売上げはコロナ前の良くない時よりもさらに悪い。巣ごもり需要で一瞬回復したように見えましたが、結局のところ、現在の状況はここ30年近く続いている出版不況の延長線上にあると言えます。
――コロナ禍の書店経営のあり方について考えをお聞かせください。
矢幡マスク、消毒液、飛沫防止ビニールシートといった基本的な感染防止対策を続けながら、お客様のために出来ることをやっていくしかありません。店頭イベントが少しずつ開催できるようになってきたのは、地域読者とのつながりを大切にする街の本屋にとって喜ぶべきことです。11月1日の「本の日」には、全国の31店舗で作家の1日店長や講演会・サイン会、読み聞かせ会などが実施され、どこも盛況だったと聞いています。イベントをやれば人は来ますし、本も売れます。コロナ禍だからこそ皆さんが笑顔になれる店頭イベントやフェアを、感染防止対策に気を付けながらやっていきたいと思っています。
――店舗オペレーションについてはいかがでしょうか。
矢幡お客様と従業員の安全を守るため、店頭の感染防止対策はこれからも続けなければなりません。日書連は「書店における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」を作成し、公式ホームページで公開しています。ご活用をお願いします。
店頭はお客様とコミュニケーションして本をお渡しするアナログの世界です。一方、発注・選書・棚作りといったバックヤードの部分ではデジタル化を進める必要があります。出版社・取次との会議や打ち合わせもリモートが増えています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について業界全体で考えなければいけないでしょう。
――日書連の運営はどのように進めますか。
矢幡日書連は従来やってきたようなリアル出席の定例理事会を、一昨年2月を最後に開くことができていません。約2年間、書面出席、リアル出席、Web出席の併用によるハイブリッド会議で開催してきました。しかしリアル出席とWeb出席を合計しても10人程度の出席で、思うような活動が出来ていないのが実情です。全国から東京に理事が集まる会議は当分厳しいかもしれません。Web会議をもっと有効活用する必要があります。
昨年6月の通常総会で会長に再選され2期目となりました。執行部や委員会の顔ぶれも変わりました。書店業界は課題山積で活動を停滞させているわけにはいきません。2期目はコロナの感染状況を見ながら徐々に始動させていきたいと考えています。
〔書店収益改善待ったなし/正副会長主導で具体的解決図る〕
――最優先事項として取り組む課題は。
矢幡書店の収益改善です。ここ数年、「書店が経営継続するためには30%以上の粗利益率が必要」と訴え続け、出版社や取次と話し合ってきました。我々の発信により、業界内でこの課題に対する意識が高まり、出版社や取次各社が書店粗利益拡大を掲げた施策を実施してくださるようになりました。少しずつですが成果を肌で感じているところです。
東京組合と大阪組合は、小学館にご協力いただき「週刊ポスト」「女性セブン」2誌の定期販売協力金事業を行っています。こうしたことを足掛かりに一つ一つ具体例を積み重ね、書店収益改善につなげたいと考えています。
――昨年9月の定例理事会で、書店収益改善運動の担当委員会を指導教育委員会から政策委員会に移す方針を示しました。意図を教えてください。
矢幡正副会長9名で構成する政策委員会が中心になることで、日書連がこの課題に重要な位置づけで取り組んでいるということを改めて内外に示すことができると考えました。会長である私のコミットメントとリーダーシップを強め、具体的な解決策に向けて着実に前進したいと思います。
――感染症予防への意識の高まりから、支払い手段としてキャッシュレス化が加速しています。
矢幡利益率の低い書店にとって、決済手数料の経営への影響は看過できない問題です。一昨年実施した「キャッシュレス決済利用状況アンケート」で明らかになったように、現行の決済手数料では採算割れとなり、経営悪化を招く要因にもなりかねません。PayPayが昨年10月から中小事業者向けの決済手数料を有料化し、最低1・60%徴収するようになったのも、大きな痛手です。
中小事業者が参画しやすい決済手数料となるよう、きめ細かい施策を関係各所に要望していきたいと考えています。
――万引被害も書店収益を圧迫する要因になっています。どのような対策を考えていますか。
矢幡顔認証機能を活用した情報共有システム「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」(渋谷プロジェクト)は開始から2年たち、一定の成果をあげています。技術的な進化も著しく、コロナ禍のマスク着用状態でも顔認証カメラの検知能力向上で再来店を把握できるようになりました。
今後の万引防止対策としては、他の書店に水平展開できることをもっと考えていかなければいけない。万引防止ポスターの店内掲示、ロス対策士資格取得の促進、ネットオークションやフリマアプリを使った転売の監視といったことに、万引防止出版対策本部とともに取り組んでいきたいと思います。
〔新事業「読者還元祭」スタート/スマホ時代の読書推進に舵切る〕
――書店くじに代わる新しい事業として、昨春から読者還元祭を始めました。初年度の成果をお聞かせください。
矢幡長年読者に親しまれてきた書店くじですが、組合加盟書店数の大幅な減少とともに発行枚数も減り、加えて店頭でも当選券の引き換え、当選額の立て替えや請求などの業務が負担になっていました。そこで、従来の「くじ」からQRコード付きの「しおり」に変更し、販売価格を下げ、さらに賞品をインターネット配布型の「図書カードネットギフト」にするなど、全面的にリニューアルして「読者還元祭」として春と秋に実施しました。
書店が行うのは購入客へのしおりの配布のみです。書店くじの実施にあたって行ってきた煩雑な業務を解消し、近年書店くじに不参加だった書店も申し込みやすい仕組みにしました。読者にとっても、図書カードが直接スマホに届く、当選番号の確認や引き換えが不要、書店くじよりも引き換え期間が長いなど、様々なメリットがあります。スマホ時代に合った読書推進事業と言えるでしょう。
春も秋も「しおり」の申込店数は前年の「くじ」を上回る成果をあげることができました。ただ残念ながら1書店あたりの購入枚数は減少傾向にあります。
秋のお客様からの応募数は、春と比べて67%増加しました。「本の日」キャンペーンとのコラボレーションで実施したことが相乗効果を生み、好影響をもたらしました。春に続く2回目となり周知が広がったのも大きかったと思います。
――今後の展開は。
矢幡最大の目的はもちろん読書推進と店頭活性化ですが、図書カードネットギフトの認知度を上げることも重要なミッションと考えています。賞品は図書カードネットギフトのまま変えず、企画内容を少しずつ改善しながら、粘り強く定着を目指したい。
今後も1店でも多くの書店に参加してもらえるように、様々な意見に耳を傾けていきたいと思います。
――全国の組合加盟書店数はピーク時の30年前の1万2900店から、昨年は2800店まで減少しました。組織強化対策について考えをお聞かせください。
矢幡いま営業している書店が今後も継続していける環境を作らなければいけない。粗利益30%以上の獲得を求める収益改善運動を続け、経営健全化を実現することが重要です。また、現在組合加盟していない書店を調査し、ターゲットを絞って加入促進を進めたいと考えています。
〔新生JPICに全面協力/業界課題解決へ街の本屋の声反映〕
――出版文化産業振興財団(JPIC)は、昨年7月に就任した近藤敏貴理事長(トーハン社長)のもと、出版業界の課題解決のため中心的な役割を担う組織へと進化する方針を示しました。JPIC副理事長も務める矢幡会長からご説明をお願いします。
矢幡私を含め出版業界4団体のトップが副理事長を務める組織がせっかくあるのだから、これまでは読書推進活動に重きを置いた組織でしたが、今後は業界横断型組織にアップデートして全体の課題解決にあたりましょうということです。色々な立場の業界関係者が集まって議論する場はJPICしかありません。近藤理事長から提案を受け、日書連として全面的に協力することにしました。
――どのような課題に取り組むのですか。
矢幡まず書店の経営課題を最優先することになりました。「書店収益の改善」「読書推進と店頭活性化」「書店員の人材育成と労働環境の改善」の3テーマを設定し、常設の特別委員会で検討します。そこでの討議内容をもとに、課題解決の実務を担う専門委員会を立ち上げ、具体的な企画・施策を実行します。
特別委員会は書店有志を中心に出版社、取次、有識者で構成しますが、日書連からもメンバーを入れて、街の本屋の意見を反映させたい。そこに日書連が参画する意義があると思います。書店収益改善を担当する専門委員会にも、我々が長く最重要課題として取り組んでいることですから、メンバーを入れたいです。
――今年の抱負をお聞かせください。
矢幡会長に就任して2年余り。その大半の期間はコロナ禍で活動が制約され、満足のいく成果を残すことができませんでした。今年は出来るだけコロナの感染状況に左右されにくい体制を作り、長年の課題である書店収益改善で具体的な成果をあげることができるよう全力を尽くします。

「春夏秋冬本屋です」/「ああ老舗書店」/奈良・倭の国書房代表・靏井忠義

奈良市の奈良県庁近くの商店街にあった豊住書店が、昨年10月末に店を閉じた。創業は慶応3年(1867)というから、150年を超える老舗書店だった。
歴史書の品揃えで有名だった。奈良と関係深い古代史、考古学、美術書などがよく揃い、奈良国立博物館や奈良文化財研究所の専門家などもよく出入りしていた。
地元新聞社の文化担当記者として県庁の記者クラブに入りびたっていた小生もよく通った。先代の豊住謹一さんとは、専門研究者に奈良の歴史を解説してもらう「奈良学への招待」という講演会を共催した。昭和50年代のことだった。
謹一さんは、奈良の歴史や奈良の本について熱っぽく語った。よくしゃべった。思い出は尽きない。
謹一さんが亡くなって、店を切り盛りしていた勝郎・ハツ子夫妻が昨年、相次いで亡くなって、閉店せざるを得なくなったようだ。夫妻とも80歳を超え、生前から閉店を考えていたらしいとも聞く。一番多いパターンだろう。
街の書店が次々と消えていく。「文化日本、これでいいのだろうか」と、改めてしみじみと思う。いろんなことがめざましく変わる。今年はどんな年になるのだろう。

「若い人に贈る読書のすすめ」/推薦図書24点掲載したリーフレット作成/読進協

読書推進運動協議会(読進協、野間省伸会長=講談社)はこのほど、「2022若い人に贈る読書のすすめ」のリーフレットを作成した。各都道府県の読進協から寄せられた「若い人に是非読んでもらいたい本」の推薦書目をもとに、読進協事業委員会で選定したもの。
掲載図書は以下の24点。
▽『お探し物は図書室まで』青山美智子、ポプラ社▽『エレジーは流れない』三浦しをん、双葉社▽『ブラザーズ・ブラジャー』佐原ひかり、河出書房新社▽『教室に並んだ背表紙』相沢沙呼、集英社▽『少女と少年と海の物語』クリス・ヴィック/杉田七重(訳)、東京創元社▽『ホオナニ、フラおどります』ヘザー・ゲイル(文)/ミカ・ソング(絵)/クウレイナニ橋本(訳)、さ・え・ら書房▽『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン/久山葉子(訳)、新潮社▽『オードリー・タン自由への手紙』オードリー・タン(語り)/クーリエ・ジャポン編集チーム(編)、講談社▽『希望の一滴』中村哲、西日本新聞社▽『武器ではなく命の水をおくりたい中村哲医師の生き方』宮田律、平凡社▽『捨てないパン屋の挑戦しあわせのレシピ』井出留美、あかね書房▽『しあわせをさがしているきみに』エヴァ・イーランド/いとうひろみ(訳)、ほるぷ出版▽『本当の「心の強さ」ってなんだろう?』齋藤孝、誠文堂新光社▽『みんなに好かれなくていい』和田秀樹、小学館▽『10代の君に伝えたい学校で悩むぼくが見つけた未来を切りひらく思考』山崎聡一郎、朝日新聞出版▽『学校では教えてくれない自分を休ませる方法』井上祐紀、KADOKAWA▽『自分をたいせつにする本』服部みれい、筑摩書房▽『10代から知っておきたいメンタルケアしんどい時の自分の守り方』増田史、ナツメ社▽『他者の靴を履く』ブレイディみかこ、文藝春秋▽『思考からの逃走』岡嶋裕史、日本経済新聞出版▽『なぜ私たちは理系を選んだのか』桝太一、岩波書店▽『格差と分断の社会地図』石井光太、日本実業出版社▽『もしも徳川家康が総理大臣にになったら』眞邊明人、サンマーク出版▽『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』高橋創/井上マサキ、ダイヤモンド社

業界課題解決担う「横断型組織」に/近藤理事長「JPICの使命」語る/まず書店の経営課題に取り組む

出版科学研究所は11月12日、東京・千代田区の出版クラブビルで出版セミナーを開催し、昨年7月出版文化産業振興財団(JPIC)の理事長に就任した近藤敏貴氏(トーハン社長)が「岐路に立つ出版業界~業界横断型組織出版文化産業振興財団が担うべき使命と挑戦」をテーマに講演した。近藤氏は、出版4団体トップが副理事長を務めるJPICを、業界課題解決のため中心的な役割を担う業界横断型組織に進化させ、全体最適の実現を目指す方針を示した。まず書店の経営課題を最優先に、「書店収益改善施策の推進」「読書推進と店頭活性化」「書店員の人材育成と労働環境の改善」に取り組むという。講演要旨を紹介する。
〔書店収益改善施策を推進〕
JPICの特徴は①業界横断型②読書推進③産業振興――の3つのキーワードで表すことができる。特筆すべきは日本書籍出版協会(書協)、日本雑誌協会(雑協)、日本出版取次協会(取協)、日本書店商業組合連合会(日書連)の出版4団体トップが副理事長に就いていること。唯一の業界横断型組織と言える。
2021年7月1日、私がJPICの理事長に就任して新体制がスタートした。私はかねてから出版業界に書店、取次、出版社がそれぞれの立場で議論する場が少ないと感じていた。議論する場がないと、物事を全体から俯瞰的に見て何が最適かという話につながらない。個別論だけで何かを変えられるというフェーズはとっくに終わっている。個別論だと取引条件の話に収斂されて損得の利害の話にしかならない。出版業界としてどうするべきなのかという総意を醸成しなければいけない。
3年前、トーハンの創立記念式典で藤原正彦先生に講演していただいた。講演後に藤原先生からいただいた「書店の崩壊は日本文化の崩壊。本を読まないことは国力の低下につながる。君が頑張って現状を変えなさい」という言葉がモチベーションになっている。
2019年3月のドイツ視察も私の問題意識がクリアになるきっかけになった。特にJPICの今後を考えるに当たって、同国出版業界の9割以上の事業者が加盟する業界横断の統一組織、ドイツ図書流通連盟(BDB)は参考になるとみている。
7月の理事長就任後、JPICの今後に関して討議するため理事に集まっていただき、BDBを念頭に、JPICを業界課題解決の中心的な役割を担う組織へ進化させることを提案し、率直な意見交換を行った。
出版業界の未来のため、まず書店が抱える課題の解決に最優先で取り組むことを確認した。日本の出版文化を支えてきた岩盤である書店の危機を回避するため、書店の未来を創造し、道筋を築くことを目指す。そのために、7月以降、全国有力書店にアンケートとヒアリングを実施し、解決を急ぐべき課題の項目出しと優先順位付けを行った。
そこで持ち上がった経営課題を解決するため、有志書店を中心に取次、出版社、第三者の有識者を交えた特別委員会を常設し、定期的に進捗確認を行う。特別委員会での討議内容を基に、必要に応じて課題解決の実務を行う専門委員会を立ち上げる。業界各社から意欲と能力のある人材を集め、具体的な企画・施策へ落とし込み、実行に移す。
アンケートとヒアリングの結果、「書店収益改善施策の推進」「読書推進と店頭活性化」「書店員の人材育成と労働環境の改善」の3つの項目にまず取り組むことを決めた。
「書店収益改善施策の推進」では、事業として持続可能な収益を確実に確保する。2つ目の「読書推進と店頭活性化」は、人々を書店に呼び込み、本に触れてもらい、その結果として店頭活性化や利益につなげる。これまで書店や読書に触れてこなかった人たちも含め、読書人口をいかに広げるかの取り組みになる。取次、書店、出版社のオールジャパンで行う。3つ目の「書店員の人材育成と労働環境の改善」は、人材育成ノウハウの体系化や業務負担の軽減に加え、待遇面での改善を実現するために何をすべきか、各社単独では難しい問題に業界として向き合い、検討する。
書店収益改善に向けたアプローチでは、出版情報登録センター(JPRO)と連携して近刊情報の利用を促進する。商品発売前にプロモーションを行い、店頭で予約を募り、実売につなげることができる。キャッシュレス決済に伴う手数料の経営への影響も大きい。まず実態を把握するため、調査・研究を行う。同時に国や自治体からの支援をもっと積極的に獲得するべき。BDBなど海外の事例を研究しながら日本版にアレンジし、法整備につなげられるように行動する。
再販制度維持に向けた基礎研究、軽減税率の問題も重要だ。再販は必要性・妥当性を担保できるようロジックや事例の収集に取り組む。軽減税率はなぜ新聞が対象であるのに出版物は違うのかを考えたい。
キャッシュレス決済に関わるものとして図書カードがある。図書カードを使って書店で買物する場合、書店には手数料がかからないので、利用を広めない手はない。図書カードの活用はキャッシュレス決済手数料の軽減対策として有効な手段と考えるべきだ。
〔店頭売上につながる読書推進を〕
読書推進と店頭活性化では、まったく新しい発想で読書習慣がない人へもリーチできるような、産業全体の振興につながる読書推進の形を模索したい。
具体的な企画として進んでいるのが、図書カードを店頭誘因のキーとする大型キャンペーンの展開だ。「全ての読者に、全ての書店で、全ての商品を」をキャッチフレーズに、JPIC、日本図書普及、トーハンの3者が共同開催し、業界横断型の一大キャンペーンとして開催する。
「磁気式図書カードを使えばチャンス!『図書カードでお得キャンペーン!』」と銘打ち、2022年3月1日~5月31日まで全国3000書店で展開する予定だ。抽選で1000名に5000円分の図書カードネットギフトをプレゼントする。狙いは①磁気式図書カードの市中在庫掘り起こしと図書カードNEXTへの完全移行推進②店頭集客と売上増への貢献③「書店でのキャッシュレス決済は図書カードで」ということの周知徹底――の3点だ。
書店員の人材育成と労働環境の改善は、業界全体で見直すべきテーマだ。人材育成や業務効率化につながるノウハウを共有できる講座を開くことも考えられる。単体の講座やワークショップだけではなく、カリキュラムを組んで体系的なものを作ることも有効かもしれない。表彰制度や技能資格を作るアプローチもある。労働条件などの改善はもちろん、モチベーションアップや地位向上も必要だ。やりがいのある仕事だから待遇が悪くても仕方がないという考え方を肯定するつもりはない。必要だからこそ適切に遇される業界にしていくべきだ。
業界の知恵と力を総動員して、一つずつ確実に問題解決につなげたい。具体的な目標を設定し、実行可能な計画を策定し、着実に効果の得られる企画に落とし込む。そのために必要なのは検討の土台となる調査・研究活動だ。明確な根拠を基にロジカルに実効性のある活動を行うためにも、調査・研究活動に人・時間・資金を充てて強化を図る。
社会に働きかけ、出版文化・活字文化を選んでもらうための取り組みも必要。消費者の共感を得られない業界は存続できない。ロビー活動を通じて行政や社会に働きかけていく中で、社会的責任(CSR)の観点からも考えていくべきだ。
出版業界は課題が山積し、業界内の様々なプレーヤーが出版流通の新しい形を模索し、試行錯誤している。改革の機運が高まることは歓迎すべきだが、個別最適の考え方にとどまっていては業界の再成長は見込めない。いま必要なのは個別最適ではなくて、全体最適の考え方。業界全体があるべき将来像に向かって足並みを揃えて進んでいくことが必要だ。中長期のスパンで、広い視野を持って、現在の課題を見つめるべき。そのためにJPICは、各社がそれぞれの立場を超えてフラットに議論する場を作りたい。
業界の全体最適を実現するために明確なビジョンを持ち、調査・研究に裏打ちされた発信力と実行力を発揮して、業界の再成長へ貢献できる組織に生まれ変わるべく努力する。業界唯一の横断型組織として役割を全うする。思いを同じくする人がいれば一緒にやりたい。意見を寄せていただくだけでも大歓迎だ。

わが社のイチ押し企画/小学館PS・出版営業部・小川宗也

明けましておめでとうございます。
1922年に創業した小学館は、今年100周年を迎えます。記念出版企画が、いくつも予定されていますが、そのスタートを飾るのは、隔週刊のウィークリーブック「古寺行こう」です。累計実売数1400万部の「古寺をゆく」(2001~02年)「古寺を巡る」(2007~08年)につづく古寺シリーズの第3弾として3月8日、第1巻「法隆寺」、第2巻「東寺」を同時発売します。2巻まとめて買っても1000円でおつりがくる設定にするため特別価格各490円としました(3号以降は770円)。
創刊号を書店店頭で手に取ってもらえる機会を最大限作るため次の3巻発売まで、3週間あけます。創刊号がどれだけ多くの方の目に触れて、お買い求めいただけるかが、ウィークリーブック増売のキモです。特に寺社仏閣がお好きそうな方が目を留めそうな場所に、創刊日頃に店着する販売台などを使ってご展開ください。
全40巻定期購読申込者にはもれなく「特製図書カード」2枚組セット(1000円分)がプレゼントされます。40巻まで定期購入いただければ、トータルで3万円を超える売上と月2回のご来店が見込めますので、単巻買いのお客様を定期購読へと誘ってくださればと思います。
図書カードプレゼント申込は、全巻定期希望のお客様が創刊号についているハガキをお送りいただく形になります。お店ではそのハガキに番線印を押していただき、その後40巻までお渡しください(定期数更新は販売会社へ)。
今年、小学館は年間を通じて、記念出版企画やイベントを展開します。元旦には「100周年特設サイト」が公開されました。キャッチフレーズは「0(ゼロ)から考えよう」。本づくりを土台に、未来へ向けた様々な挑戦の様子を紹介していますのでご覧ください。100周年を、新たな未来に向かって歩み始める「0周年」として心機一転進んでまいります。引き続きご支援のほどお願いいたします。

わが社のイチ押し企画/文藝春秋・第二文藝部部長・武田昇

わが社が年明け早々に送り出すのは有栖川有栖さんの新刊『捜査線上の夕映え』です。
物語は、東大阪のマンションで元ホストの男・奥本栄仁が殴殺され、スーツケースに押し込められた状態で発見されるところから始まります。彼の死亡推定時刻前後にマンションを出入りしていた2人の女性と1人の男性が容疑者として浮上。歌島冴香は奥本の交際相手で、黛美浪は元ホステス、男性の久馬大輝は大学時代の友人で借金をめぐり奥本と揉めていた。痴情のもつれか、金銭トラブルか。だが3人にはアリバイがあった。捜査の応援を要請された臨床犯罪学者の火村英生と、助手で作家の有栖川有栖は調べていくうちに捜査線上にはまだ浮かんでいない「ジョーカー」がいるのでは、と疑い始める――。
お馴染みのコンビが活躍するシリーズが初めて書かれたのは1992年。ちょうど30年が経ち、コロナ禍を生きる2人が直面するものとは。読後に胸が熱くなるエモーショナルな本格ミステリに仕上がりました。
1月上旬刊でもうひとつ、春風亭小朝さん『菊池寛が落語になる日』の紹介も。1923年に雑誌の月刊文藝春秋が創刊され間もなく100周年を迎えますが、この本はその記念企画の一冊。菊池寛が亡くなった日と自分の誕生日が同じ3月6日ということもあって以前から文藝春秋の創業者・菊池寛に魅かれていたという小朝師匠は、その短編小説を新作落語に仕立て直して公演を続けています。中でも選りすぐりの「入れ札」「マスク」など9作品を掲載。原作である菊池寛の小説と、師匠と浅田次郎さんとの対談も併録しています。
そのほか深緑野分さんの久々の長編や、武田綾乃さん、大前粟生さんら期待の若手作家の新作、さらには週刊文春で連載中の池井戸潤さん『俺たちの箱根駅伝』も一冊にまとまる予定です。春頃には隠し玉も準備しておりますので、お楽しみに。

わが社のイチ押し企画/学研プラス趣味・実用事業部趣味・実用編集室チームリーダー・石尾圭一郎

つい2、3年前まで、「オートミール」と聞いてピンと来る人は多くはなかったと思います。一度や二度、食べたことがあるという人でも、それがここまで健康的、かつ美味しい食材であることを認識していた人はほぼいなかったのではないでしょうか。本書籍『オートミール米化ダイエットレシピ』15万部(紙・電子合計)への道のりは、まさにこのようなオートミールへの無知や偏見に対するチャレンジであったとも言えます。
このチャレンジへの起点となった著者のこれぞう氏は、オートミールを白米のごはんのようにアレンジして、おにぎりやチャーハンなど、日々の生活の中で身近な料理に置き換えるダイエットレシピをSNSなどで提唱。自らもその実践を通じて、105キロあった体重をマイナス40キロの60キロまで減量することに成功しました。このこれぞう氏のオートミール米化という究極のアイディアが、日本人に馴染みの薄かったオートミールにコペルニクス的転回をもたらしたと言っても過言ではありません。
本書籍が刊行されたのは、2020年の11月でしたが、既にその段階で情報感度の高い人々の支持を集めていたオートミール米化は、2021年末の時点で既に大きなブームとなり、老若男女を問わず支持される、日本の食文化の一翼を担う存在になりました。オートミールをテーマにした類書も続々と出版され、健康・美容書棚や料理書棚の中で存在感を示せるようになりましたことは本当に嬉しく、有難いことと感じております。
2022年を迎えました現在も、この勢いは止まらないですし、同時に昨年末に上梓されたこれぞう氏の新刊も大きな注目を集めております。これからの日本の食文化の裾野を拡げるための挑戦を続けるオートミール米化シリーズを、楽しみにしていてください。

わが社のイチ押し企画/KADOKAWA・宣伝局

あけましておめでとうございます。旧年中は格別なるご支援を賜り誠にありがとうございます。KADOKAWAは今年も皆様に楽しんでいただける作品を多数ご用意いたしました。
まずは文芸書。伊与原新の最新長編作品『オオルリ流星群』は2月刊行。そして、重松清著『木曜日の子ども』は角川文庫で登場。絶望の先を描き切った衝撃作をお楽しみください。
キャラクター小説では、累計400万部を超える大人気作品『わたしの幸せな結婚』。21年に発売され早くもシリーズ35万部を突破した、今最も勢いのあるライトノベル『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』にも注目です。
辞書・辞典からは、圧倒的な季語数、例句数を誇る歳時記の最高峰が15年ぶりの大改訂で登場。『新版角川俳句大歳時記』は2月より順次刊行開始です。
さて、KADOKAWAと言えばメディアミックス。まずは日本アニメ界最高峰のスタッフが集結した『鹿の王』。心揺さぶるファンタジー大作が2月4日公開です。コミックからは、和菓子が繋ぐ父娘の絆を描いた『であいもん』、累計150万部超のメガヒットコミック『異世界おじさん』のTVアニメ化が決定しました。『グッバイ、ドン・グリーズ!』は、『宇宙よりも遠い場所』のスタッフによるオリジナル長編劇場アニメーションを公開予定。さらに、作家Fの『真夜中乙女戦争』が、永瀬廉(King&Prince)主演で実写映画化されます。
児童書では、『角川の集める図鑑GET!』から「人体」が3月発売。「考える力を育む〝新しい〟図鑑」をコンセプトとする本シリーズにどうぞご期待ください。
ゲーム情報№1ブランドの「ファミ通」&「ゲームの電撃」からは、2022年の大型タイトル「ELDENRING」関連書籍を多数発売。最速ガイドブックや攻略本、ビジュアルムックなどで盛り上げていきます。
今年も多種多様なKADOKAWAのコンテンツにぜひご期待いただくとともに、引き続き一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/新潮社・出版部・小林由紀

浅田次郎さん5年ぶりの現代長篇『母の待つ里』はご本人いわく「一見あっさり書いているようで、中身はおせち料理のように多彩で充実した、極めて浅田次郎らしい一冊」。日本人の心をあたたかく揺さぶる新たな名作の誕生です。
東京で多忙な日々を過ごす大企業の社長が、岩手県内のとある駅に降り立ちます。彼は村一番の出世頭で、今日は40年ぶりの帰郷。父亡きあと一人で家を守ってきた86歳の母は、自慢の息子のために心づくしの手料理を並べ、薪で風呂を沸かし、寝物語に村の昔話を聞かせてくれる。「俺はなんという親不孝者なんだ」。思わず涙が滲んできて……しかし、彼はこの慈愛に満ちた〈母〉が一体誰なのかを知りません。ここはクレジットカード会社がVIP顧客向けに提供する、理想のふるさと体験サービスの舞台。村人も母もディズニーランドでいうところの「キャスト」なのです。
物語はこのサービスを利用する還暦世代の男女3人の視点で描かれます。都会に住む独身者で故郷も持たない彼らは(もちろん読者も)、無垢で愛情深い〈母〉に魅了されていきますが、後半は予想外の展開へ。全てが明らかになるラストは涙がこみ上げること必至です。少子高齢化、急速に進む地方の過疎化など現代日本の様々な問題を踏まえて、新しい共同体としての「ふるさと」を提案する物語でもあり、半歩先を見通す社会的視点とエンタテインメントの楽しさが高度に融合した奇跡の傑作です。
ゲラを読んだ社内の30代の女性からは「読み終えてすぐに帰省の飛行機を予約しました」との感想が。大切な人に今すぐ会いたくなる。そんな小説です。発売は1月26日。中井貴一さん、隈研吾さんの力強い推薦文をまとって店頭にお目見えします。どうぞご期待下さい。

わが社のイチ押し企画/金の星社・編集部・大河平将朗

『異常気象図鑑』
最近、大雨などの自然災害が増え、ニュースで「異常気象」という言葉をよく聞くようになりました。異常気象とはどういう状態なのでしょうか。気温や降水量などが過去30年間の平均値よりも大きくずれている状態で、30年生きて1回経験するかどうかという、めったに起きない気象に対して使う言葉ですが、最近では人々の暮らしや産業に大きな影響を与えるスーパー台風やゲリラ豪雨、大雪なども異常気象と呼ばれるようになりました。
さて、本書ではさまざまな異常気象を紹介すると共にその原因を解説しています。中でも重要な問題が地球温暖化です。地球温暖化が進むと、自然環境や気候が変化して、記録的な熱波、干ばつ、極端な大雨、強力な台風などの異常気象が発生する可能性があります。また、北極や南極の氷や高い山の氷河がとけて、海面が上昇し、場所によっては海の底に沈んでしまうおそれがあり、生物多様性の危機も想定されます。地球温暖化の要因には人間の活動が出す温室効果ガス、特に二酸化炭素が関係していると考えられています。地球温暖化による気候変動は、一つの国や特定の地域だけでなく、世界全体で取り組まなければならない課題ですが、このことも本書では詳しく解説しています。2015年、パリで、国連気候変動枠組条約締約国会議が開かれ、パリ協定が結ばれました。同年に国連でSDGs(持続可能な開発目標)が決められました。目標13は「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」です。
さらにまた、異常気象をもたらすエルニーニョ現象、ラニーニャ現象などを説明、ヒートアイランド現象への対策や、温室効果ガスの出る量を減らす取り組みも紹介。そして、わたしたちにできることを考察し、暑さ・大雨・大雪・風水害・竜巻などの気象災害から身を守る方法も掲載しています。まさに生きる力を養う、役に立つ図鑑といえるでしょう。A4変型判、80ページ、定価4400円。

銀座の教文館が導入/サインポスト開発のセルフレジ

サインポストは11月24日、書店向けセルフレジ「ワンダーレジ-BOOK」を東京・銀座の教文館の売場2階に設置したと発表した。
「ワンダーレジ-BOOK」は、利用客が本をレジ台に並べてスタートボタンを押し、画面の案内に従って進むだけで簡単に書籍を購入できる。複数の本でも一度で簡単に精算することが可能。操作に迷わないシンプルな画面UIを独自開発し、音声による操作案内も標準搭載する。書籍に特化した機能と操作性で、レジ待ちの解消と非対面・非接触を希望する利用客の選択肢を増やしてお客様満足度の向上を図ると同時に、レジ業務の負担軽減と店舗運営の生産性向上に貢献する。サインポストでは、教文館のほか複数の事業者への導入を進めている。

日教販、春季大市会を動画配信

日教販は第71回「日教販春季展示大市会」を、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、今回も動画配信の形で開催する。配信は1月12日13時から同31日17時まで。以下のURLからアクセスする(https://www.nikkyohan.co.jp/special/ichikai/2022/)。社長あいさつ、各団体代表のあいさつをはじめ、出版社・メーカーの企画や商品紹介、セミナー等の配信を予定する。

11月期は前年比12・7%減/文芸書や書籍コミックはプラスに/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの11月期店頭売上は前年比12・7%減と2ヵ月連続で2桁減となったが、文芸書や書籍コミックなどは前年を上回った。
雑誌は8・9%減。週刊誌は、「SportsGraphicNumber12月2日号」(文藝春秋)や「婦人公論11月24日号」(中央公論新社)などが売上を牽引したが、前年超えとはならなかった。
書籍は6・2%減。文芸書が3・1%増と好調だったが、その他は前年を下回った。新書は前年の『劇場版鬼滅の刃無限列車編ノベライズ』(集英社)など「鬼滅」関連商品が好調だった反動で23・8%減。総記は、『明るい暮らしの家計簿』(ときわ総合サービス)や『№633年卓上日誌【茶】』(高橋書店)などのロングセラー商品が売上を伸ばした。文芸書は、『日蓮大聖人御書全集新版』(聖教新聞社)、『聖域』(KADOKAWA)などが好調だった。
コミックは27・5%減。前年、「鬼滅」関連商品や最終回を迎えた「ハイキュー!!」などが好調だった影響もあり、前年を大きく下回った。書籍扱いコミックは、『とんでもスキルで異世界放浪メシ8』(オーバーラップ)、『青島くんはいじわる3』(大誠社)などが売上を牽引し、前年を上回った。

認知症の理解深める県民週間に協力/賦課金改定に向け委員会設置/鹿児島総会

鹿児島県書店商業組合は12月7日、鹿児島市の鹿児島書籍会議室で第36回定時総会を開催し、組合員54名(委任状を含む)が出席した。今年も新型コロナウイルス感染防止の観点から最小限の人数で開催し、講演会、懇親会は中止した。
総会は石井専務理事の司会で進行。最初に楠田哲久理事長があいさつし、書店業界の厳しい現状を説明した。また、「県とタイアップして、認知症を理解し一緒に歩む県民週間フェアを実施した。朗報としては、九州雑誌センターでムックの返品が開始された」と報告した。
瀬川副理事長を議長に選出して議案を審議し、第36期事業報告、収支決算報告、監査報告、第37期事業計画、収支予算案を原案通り可決承認。また今期は賦課金の改定に向けて委員会の設置を承認した。最後に村永理事のあいさつで閉会した。(和田豊広報委員)

人事

★マガジンハウス
(12月10日付)
代表取締役社長
片桐隆雄
常務取締役(総務局担当)
南昌伸
同(第一編集局、第三編集局、書籍出版局担当)
鉄尾周一
取締役(経理製作局、マーケティング局担当)
浪花寛通
同(第二編集局、第四編集局担当)芝崎信明
取締役相談役石﨑孟
監査役畑尾和成
執行役員(ブランドビジネス領域担当)西田善太
同(ブランドビジネス局担当)熊井昌広
同(広告局局長)
矢代卓
同(第三編集局局長)
北脇朝子
同(経理製作局担当)
西村吾郎

『スマホ脳』に新風賞/新潮社は2年連続受賞/書店新風会

書店新風会(大垣守弘会長、大垣書店)は12月10日、アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳『スマホ脳』(新潮社)を「第56回新風賞」に決定したと発表した。
今回は、会員書店の書店員608名が1人3冊ずつ推薦する本を投票し、11月22日の役員会で上位10点を審議。開始直後から得票数の観点で『スマホ脳』を推す声があり、そのまま異論なく決定したという。
同日オンラインで行った記者会見で、大垣会長は「書店新風会では『教科書のデジタル化』について、教科書を供給する書店の立場からこの問題を考え、文部科学省にも意見を提出してきた。デジタル社会の中にあって、読者にもスマホがどういう影響を及ぼすのか非常に関心が高いと感じた。役員の意見が一致し新風賞に決まった」と選出理由を説明した。
新潮社の新風賞受賞は前回の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に続き7回目。本賞を2年連続で受賞した出版社は新潮社が初めて。

日書連のうごき

11月1日本の日「ブックカバー大賞」表彰式に矢幡会長が出席。
11月4日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。JPO運営幹事会に事務局が出席。
11月5日野間読書推進賞贈呈式に矢幡会長が出席。
11月8日雑誌コード委員会(Zoom)に事務局が出席。
11月9日文化庁、国立国会図書館によるデジタル資料のメール送信サービス説明会に矢幡会長、渡部副会長が出席。JPIC理事会、評議員会に矢幡会長、春井副会長が出席。
11月10日万引防止出版対策本部総会(Zoom)に矢幡会長が出席。
11月11日日本雑誌協会次世代雑誌販売戦略会議との意見交換に事務局が出席。
11月15日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。
11月18日JPO運営委員会(Zoom)に春井副会長が出席。図書コード管理委員会(Zoom)に事務局が出席。
11月19日新聞之新聞社「新年号インタビュー」に矢幡会長が出席。
11月22日全国書店新聞「新年号インタビュー」に矢幡会長が出席。
11月24日全国書店再生支援財団理事会に髙島、平井両理事が出席。出版再販流通白書事務局会議に事務局が出席。
11月25日読書推進委員会(Zoom)。
11月26日日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原副会長が出席。
11月29日全国中小小売商サミットに矢幡会長が出席。
11月30日全国中小小売商サミット首相官邸訪問に矢幡会長が出席。

書店向けWeb商談会2021秋/取引額2065万円、209名が参加

有志の出版社等29社からなる書店向けWeb商談会実行委員会はこのほど、21年10月4日~同22日に開催した「書店向けWeb商談会2021秋」の結果報告書を公表した。4回目となる今回は、出版社を中心に玩具メーカーなど131社が出展、書店員など209名が参加。東京の書店・取次で運営するリアル商談会「書店大商談会」実行委員会と初の共同開催となり、さらに史上初となる「全国書店フェアアイデアコンテスト」も開催した。
今回の出展社131社は前回の158社から17%減、参加者209名は前回の256名から18%減。出展社と参加者が一対一で行う商談は計683回行われ、前回722回から5%減。取引金額は全体で2065万0072円(上代)と前回から22%減少した。開催後、出展社と参加者へアンケートを行い、出展社124社、参加者73名から回答があった。
次回も「参加したい」と回答した人は86%で、前回開催時を5ポイント下回ったが、引き続き満足度は高かった。「オンライン商談会は時間も区切られ、地理的制約も無いので各自のリソースを無駄にしない」というオンラインの利便性を挙げる声や、「情報がたくさん得られて発注や今後の本屋運営の参考になった」という新しい気づきへの評価に加え、「Web商談会が続いて欲しいから参加する」という継続を求める声も複数見られた。
今回、書店大商談会のパンフレットは紙版を7千店に配布したほか、PDFをWeb商談会のHPからダウンロードできるようにしたが、このPDFの利用率は40%で、前回までの注文書PDF利用率と比較して多くの人が利用したことが分かった。
「全国書店フェアアイデアコンテスト」については、約5割の参加者が参考にしたと回答したものの、合同フェア注文書の利用がほとんどなかったのが課題だとした。
三芳寛要実行委員長(パイインターナショナル代表)は、長く続いた緊急事態宣言の解除直後の開催となった点が過去3回の開催と大きく異なり、コロナ禍をきっかけに始めたWeb商談会は、導入期が終わったと指摘。次回以降の開催については当面未定で、今後開催する場合は、コロナ対策としての「リアル商談の代替ツール」ではなく、真に新しい時代のコミュニケーションツールとして開催されることが求められているとした。

1月末までに72書店の動画公開/東京組合YouTubeチャンネル

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は12月2日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
理事会に先立ち、万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長が、現在の活動状況を説明。書店の万引防止支援施策として、損害を予防する力を高める「ロス対策士」資格試験の普及・促進、万引防止ポスターの作成・配布、渋谷書店万引対策共同プロジェクトの成果の水平展開などに取り組んでいると話した。
新しい日常対応型業界活性化プロジェクト特別委員会では、ショートドラマやPR動画、書店紹介動画の制作の進捗状況を説明した。書店紹介動画は、東京組合のYouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」で見ることができる。1月末までに72書店の動画を公開する予定。(https://www.youtube.com/channel/UCC-Xr3O33ApZwx_V_pzVNVQ)
事業・増売委員会では、KADOKAWAの『新版角川俳句大歳時記』(全5巻、2月から順次刊行)の増売企画を承認した。同書は15年ぶりの大改訂で、1万8千季語以上を収録。例句数は5万句超で、現代の秀句を新たに収集し、旧版収載の例句も全面的に見直し刷新した。KADOKAWAの担当者から、俳句結社の句会に参加して受注を獲得した書店の成功事例について説明があった。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

西村國彦著『ゴルフ文化産業論』(河出書房新社1500円)は、長年ゴルフ会員救済活動に携わってきた弁護士が語る社会への提言である。
1980年代後半のバブル期、「株」を買う感覚で取引され、高値を競うゴルフ会員権騒動があった。ゴルフ場建設の預託金と優先プレー権がセットの会員権は、ゴルフ場の破綻と共に紙屑同然になってしまうのだ。アメリカの投資ファンドが巨額の利益を上げる中で、著者は裁判に勝つ。会員が仲間割れせずに、あきらめぬこと。たとえば3人がいて、30人に声をかけ、300人が行動すればマスコミも動く。
コロナ禍でも、他への思いやりと配慮があれば事情のある人を攻撃する気持ちも抑制できる。音楽教室で著作権使用料を払う問題も、教育目的で使うのに使用料金を徴収するのはおかしい。文化の発展を阻害することになってしまう。
ゴルフ同様フェアプレイ精神で、この困難な時代を生き抜こうと説く。ベン・ホーガン著/塩谷絋訳『ハンディ版モダン・ゴルフ』(ベースボール・マガジン社1300円)は24刷のロングセラー。ゴルフの基本について①グリップ②スタンスとアドレスの姿勢③スウィングの前半④後半⑤まとめと復習の全5章。”