全国書店新聞
             

令和5年5月15日号

書店議連/第1次提言のたたき台示す/6月「骨太の方針」に向けとりまとめ

自民党衆参両院議員による「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)は4月28日、東京・千代田区の党本部で総会を開き、第一次提言のたたき台を示した。これをもとに大型連休明けから提言のとりまとめを行い、政府が6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込むことを目指す。
〔不公正な競争環境の是正など/関係省庁に取り組み求める〕
提言は諸外国の動向や関係省庁・関係団体などからのヒアリングを踏まえて作成。公正取引委員会に「不公正な競争環境等の是正」、文部科学省に「書店と図書館の連携促進」、経済産業省・財務省に「新たな価値創造への事業展開の支援」、文科省・文化庁・内閣府・総務省・観光庁に「文化向上・文化保護、読書活動推進、地方創生、DX化、観光振興等の観点からの支援」に取り組むよう求めている。
不公正な競争環境の是正では、入札時の値引きやネット書店の送料無料など実質的な値引き販売について、実態調査を行うなど適切な対応を行う必要があると指摘。また、過度な複本を原則禁止とするためのルール作りや、地元書店からの優先仕入れの推奨など、書店と図書館の共存共栄を進めることを検討するとしている。「事業再構築補助金」などに書店枠を設けることも盛り込んだ。
総会の冒頭、塩谷立会長は「街の書店を元気にすることは、日本の文化を守るのはもちろん、日本を元気にするという意味もある。しっかり議論していきたい」と述べた。
齋藤健幹事長は「街から書店がなくなっていくことへの危機感を醸成し、それを具体的な政策に結び付けていくのが議連の役割。書店が継続できるよう一生懸命努力する」と述べた。
出版文化産業振興財団(JPIC)の近藤敏貴理事長は、4月24日~26日にJPICと日書連が中心となって韓国を訪問したことを報告。「業界も努力するが、議連の皆さんには引き続き支援をいただきたい」と訴えた。
日書連の矢幡秀治会長は「書店の力だけではどうにもならない問題について、書店外からこのような大きな提言が出されたことは大変ありがたい」と謝意を述べた。
総会では今村翔吾氏が作家で書店経営者でもある立場から発言。山梨県立図書館と鳥取県立図書館が図書館と書店の連携事例、奈良県の啓林堂書店が事業再構築補助金に応募した経緯と成果を報告した。

日韓出版文化発展へ協約締結/JPIC、日書連、取協で韓国訪問

出版文化産業振興財団(JPIC)は、日書連や日本出版取次協会の幹部らとともに、4月24日から26日まで韓国の公共図書館・書店・出版社・関係省庁を訪問し、現状調査や意見交換を行った。
今回の訪問では、韓国の公的組織で出版文化・産業支援の中心となっている「韓国出版文化産業振興院」と世界で初めて「国際業務交流協約」を結んだ。今後、両国の持続可能な出版文化産業の発展と交流の増進に必要な事項について積極的に協力し、読者が書店に足を運びたくなる環境作りを共に目指していく。
[視察メンバー]
近藤敏貴(JPIC理事長、取協会長=団長)、矢幡秀治(日書連会長)、春井宏之(日書連副会長)、深田健治(日書連副会長)、大垣守弘(書店新風会会長)、奥村景二(取協副会長)、古谷孝徳(トーハン社長室)、松木修一(JPIC専務理事)

春の褒章、教科書供給協会から6名が受章

令和5年春の叙勲が4月29日付で発令となり、全国教科書供給協会から次の6名が黄綬褒章を受章した。
▽武内位(広島県豊田郡・武内昭和堂代表取締役社長)▽塚越賢次(茨城県下妻市・大塚屋書店代表取締役社長)▽永島克洋(北海道沙流郡・平取ナガシマ代表取締役社長)▽波岡悦郎(青森県むつ市・ナミオカ代表取締役社長)▽宮﨑容一(熊本県水俣市・宮崎一心堂代表社員)▽山守保裕(石川県白山市・なべや代表取締役)

「本屋の村」開発の書店業務管理ソフト/「らくほんNext」相談会・説明会/6月14日、書店会館で開催

1998年10月、関西の書店グループ「本屋の村」を立ち上げ、書店業務管理ソフト「楽樂ほんやさん」をリリース。「書店業務を知り尽くした書店人が作った外商管理ソフト」として全国書店新聞で紹介され、多くの書店さんに使っていただけるようになりました。2006年に「本屋の村有限責任事業組合」として法人化し、予約管理・納品書請求書発行などの外商管理から、順次機能を追加し、書店POS、取次Webサイト連携、データ交換、客注・商品・在庫管理、棚卸など、パソコンを使っての中小書店でのほぼすべての業務管理をこなせるようになりました。また、パソコンOSのバージョンアップに合わせプログラムの改良も続けており、昨年、新ソフト「らくほんNext」をリリース、シリーズ初の実行ソフトで今年10月から実施のインボイスに対応しました。
新ソフト「らくほんNext」については「本屋の村」でネット検索すれば表示されます。Windows10・11であればほとんどのパソコンで使用できます。インターネットからダウンロードすれば、90日間無料でお試し使用できます。ダウンロードID等はホームページからお申込みいただければご連絡いたします。
これまでに、北海道書店商業組合など各地の書店組合主催の説明会をのべ20回、東京などで本屋の村主催の説明会・勉強会も12回行いました。直接に書店さんの声を聞き、改良に反映しています。説明会の終わった後の懇親会では、楽樂ほんやさんだけでなく、書店を取り巻く業界、図書館納品業務、教科書に関する事柄など、なかなか聞けない真に役立つ内容だと好評です。
このたび、旧バージョンから「らくほんNext」への乗り換え方、新しいパソコンへの移し方、「らくほんNext」の活用法、インボイス対応、パソコンの使い方などお困りの事柄に、個別にご相談に応ずるため、「本屋の村相談会」を開催することといたしました。また、これから使おうとされる書店さん向けに「らくほんNext説明会」も同時開催します。
日時は6月14日(水)14時~17時、会場は書店会館会議室(東京都千代田区神田駿河台1‐2)です。さらに、17時30分より懇親会を開催します。相談会・説明会は参加費無料、懇親会参加費は5000円。参加ご希望の書店さんはFAX0749-50-2093か電子メール:rakupro@hon‐shop.comまで書店名等を記載して、6月7日(水)までにお申し込みください。同時に懇親会参加も受け付けます。
(ますや書店・岩根秀樹)

子どもの読書活動推進フォーラム/学校130校、図書館46館、50団体・個人を表彰/文科省

文部科学省と国立青少年教育振興機構は、「子ども読書の日」を記念し、国民の間に広く子どもの読書活動について関心と理解を深めるとともに、子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高めることを目的に「子どもの読書活動推進フォーラム」を、4月23日に東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催した。
文科省は2002年度から子どもの読書活動推進に資するため、優れた実践を行っている学校、図書館、団体・個人を表彰している。フォーラムで行われた表彰式では、子どもの読書活動優秀実践校130校(小学校67校、中学校26校、高校27校、特別支援学校6校、義務教育学校等4校)、子どもの読書活動優秀実践図書館46館、子どもの読書活動優秀実践団体・個人50団体・名(46団体、個人4名)が表彰された。
表彰者を代表して、宮城県岩出山高校(宮城)の石田美慧、清水町立図書館(静岡)の渡邊浩伸、朗読ボランティア「ひばりの会」(栃木)の大塚照子の3氏が事例発表を行い、「子どもの読書への意欲を高めるために」をテーマに対談した。
宮城県岩出高校では、好きな本を読むだけの「朝の読書」を毎朝10分間、全校一斉に行っている。また、図書館で全学年オリエンテーション、展示活動、多読賞表彰などを実施するなどして、読書が身近にある学校を目指している。
清水町立図書館では、書店と連携して地域の読書活動の推進に取り組み、書店売上ランキングや書店員おすすめ本の展示、ブックフェアを行っている。また、図書館1階をこども図書館として、季節に合わせた展示などを行っている。
朗読ボランティア「ひばりの会」は、現在26名の会員が在籍。図書館や学校、病院でのおはなし会を開催している。また、視覚障碍者からの依頼で図書の音訳も行っている。
さらに、フォーラムではNHK「100分de名著」プロデューサーの秋満吉彦氏と能楽師の安田登氏が登壇し、「子どもが自ら本を読み始めるとき」をテーマに対談した。
式典では、主催者を代表して簗和生文部科学副大臣があいさつ。子どもの未来を考える議員連盟の中曽根弘文会長、文字・活字文化推進機構の河村建夫会長らが来賓祝辞を述べた。

「春夏秋冬本屋です」/「イチャリバチョーデー」/沖縄・大城書店 代表取締役社長大城洋太朗

「ハイサイ、チューウガナビラ」――ぱっと聞いた感じ外国語のようでまったく意味が分かりませんよね。この言葉は「こんにちは、ご機嫌いかがですか」という沖縄の挨拶です。
文面ではありますが、少しでも沖縄を感じていただきたく沖縄弁を使用し説明したのであって、文章の文字数を消費するために使用したわけではございませんので、悪しからずご了承ください。
この度「春夏秋冬本屋です」の執筆を拝命いたしました、沖縄県に店を構える大城書店の大城と申します。弊社は今年で創業70年を迎える地域密着型の本屋で、店売と外商を行っております。本以外にも文具や駄菓子、オフィス家具など色々取り扱っており、最近は何屋さんか分からなくなってきました。その証拠に子供たちが「お菓子屋さん行こうぜ!」と叫びながらご来店くださいます。
このように地域の皆様が気軽にご利用くださることはとても嬉しく、子供の頃よく来ていた方が親になり、ご自身のお子様と来てくれたり、本土に引っ越しされた方が帰省し、懐かしいと呟きながらお買い物を楽しむ光景は、地域の皆様の実家になったような気がして誇らしく感じます。
沖縄には「イチャリバチョーデー」という言葉がありますが、「出会えば皆兄弟」という意味があります。これまで支えてくださった地域の兄弟たちに恩返しができるよう精進していきたいと思います。

令和4年度総会議案書を承認/大阪組合理事会

大阪府書店商業組合は4月15日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
庶務報告では、令和4年度総会を5月18日午後2時から組合会議室、令和6年度新年互例会を2024年1月9日午後4時から大阪市阿倍野区の都シティ大阪天王寺(旧・天王寺都ホテル)で開催することの説明があった。
重要議題の審議・報告では令和4年度総会議案書について審議し、承認された。
委員会報告では、読書推進委員会から「本の帯創作コンクール」の資料を5月26日に発送し、6月1日に店着予定であることと、課題図書カラー版紹介記事が朝日新聞大阪版に掲載されることが報告された。
定款・規約等委員会からは、6月定例理事会を目途に委員会再編案を上程したいとの方針が示された。
(石尾義彦事務局長)

訂正

5月1日付2面に掲載したコラム「春夏秋冬本屋です」で、執筆者の名前が「服部義禰」とあるのは「服部義彌」の誤りです。お詫びして訂正します。

林田理事長「新しい形の書店を模索」/奈良組合理事会

奈良県書店商業組合は4月10日、大和郡山市のディーズブックで第3回理事会を開催した。
林田芳幸理事長は「売上減少ばかりでなく、電気代などの高騰で経費は上がるばかり。書店経営は本当に難しくなってきたが、新しい形の書店を模索し、何としても生き残っていかなければならない」とあいさつした。
続いて、障碍者作業所に図書館納品の図書装備を依頼する事業の報告があった。また、令和5年度総会は8月3日に開く方針を決めた。
次回理事会は6月1日に開き、理事改選や令和6年度活動方針について協議する。 (靏井忠義広報委員)

「本屋」を志す人のための書店開業入門講座/本の学校5月20・27日に開講

NPO本の学校(鳥取・米子市)は5月20日および27日にオンライン(一部リアル併催)で「春講座2023」を開催する。
今回のテーマは「知識ゼロからでも始められる!?『本屋』を志す人のための書店開業入門講座」。ブックストア・ソリューション・ジャパン協力、日書連など後援。
講座内容は次の通り。
1日目・5月20日(土)P1(午後1時~2時半):独立系書店のための「本の仕入れ方と商品情報の集め方」講座
講師=鎌垣英人(NPO法人ブックストア・ソリューション・ジャパン理事/版元ドットコム)、参加料=オンライン配信1000円(アーカイブ配信有り)
P2(午後3時半~5時):気鋭の書店人はどのように棚づくりを考えているのか?「品揃え、棚づくり」講座
講師=江藤宏樹(広島蔦屋書店・文学コンシェルジュ)、参加料=オンライン配信1000円(アーカイブ配信有り)
2日目・5月27日(土)
P3(午後2時~3時半):まちづくり×本屋~ブックストア・ソリューション・ジャパンの目指すもの~
講師=安藤哲也(NPO法人ブックストア・ソリューション・ジャパン代表理事)、参加料=オンライン配信1000円(アーカイブ配信有り)
P4(午後5時~7時):目指せ、本屋で独立!ボクらはこうして本屋を開いた!「書店開業の心得」講座
講師=石井勇(MINOUBOOKS)×大井実(ブックスキューブリック)、会場=ブックスキューブリック箱崎店、参加料=[会場参加]2000円(ワンドリンク付)・[オンライン配信]1000円(アーカイブ配信有り)
申し込み・詳細は本の学校のウェブサイトまで。https://www.honnogakko.or.jp/archives/news/20230415

街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟/第一次提言(たたき台)

書架に並ぶ「未知の本との出会い」が、来訪者の視野を広げ、潜在的な関心を呼び起こしている。来訪者が一定数の現物を直接確認できる「街の本屋」は、我が国の地域の知の拠点として、「未知の本との出会い」の可能性をより大きく秘めている。
しかしながら、書店の数は15年で約40%減少している。2022年9月時点では全国市町村のうち約26・2%は無書店市町村となるなど、今後5年以内には書店の基盤維持が困難になるとの声もあり、多くの関係者から、我が国において、書籍等を通じた個人の教養の幅に影響を及ぼすばかりでなく、ひいては日本文化の劣化に繋がることへの懸念が指摘されている。
このような背景の中、平成28年以降、書店経営者との懇談を実施し、その後、15回の会を重ねてきた。スタート時には40名だった議員連盟メンバーも、154名という自由民主党の議員連盟としては最大規模に拡大し、書店をめぐる厳しい現状や課題等の議論を行ってきた。
全ての国民があらゆる機会と場所において書籍に触れ読書を行うことができるよう我が国の文化拠点としての「書店」を振興するため、子供の読書活動、リスキリング、文化活動の推進や、観光振興、地域創生につながる取組を支援するとともに、図書館との共存・共栄、収益構造の確立、不公正な競争環境の改善、書店のDX化などによる新たな価値創造を推進することが必要である。
また、諸外国の動向や、関係省庁、関係団体等からのヒアリングを踏まえ、現状、課題を踏まえたこれまでの議論を、第一次提言として、特に、以下について政府の関係各省庁に取組を求めるものとしてとりまとめた。
今回の提言については、第1弾としてまとめ政府に要望するものであり、政府の対応状況については、議連として進捗状況のフォローアップを行い、更に議論を継続することとする。
〈不公正な競争環境等の是正〉公正取引委員会
●著作物再販制度の厳守のため、一定の制限やルールを設けることを検討する必要があるとの指摘を踏まえ、①書籍・出版関係者と公正取引委員会との対話の場を設置し、②官公庁等の書籍の入札に係る値引きへの適切な対応(実態調査や業界の「雛形」に記載された適用除外を削除など)を図る必要がある。また、③フランスの反アマゾン法(本の無料輸送の禁止・価格制限)を参考にした不公正な競争の是正への取組としては、具体的には、官公庁等への納入に係る入札及び、実質的な値引販売(ネット書店の送料無料配送等)については、実態調査を行い、必要な対応を検討する。
〈書店と図書館の連携促進〉文科省
●公共図書館と書店と両者合意のもとで、共存できるようなルールづくりを検討する。特に、公共図書館における同一タイトルの過剰な蔵書、あるいは新刊本の貸与開始時期については、一定のルール等の導入を検討する必要がある。具体的には図書館法第7条第2項に規定されている「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」等を含めたルールづくりを進めるため、①書店と図書館が連携する優良事例としての収集・普及、②優良事例の展開と合わせた図書館と書店が共存できるモデルづくりや望ましい基準などを含めたルールづくりを検討する。例えば、「資料及び情報の収集、提供等」に関して、過度な複本を原則禁止するためのルールや地元書店からの優先仕入れの推奨、「他の図書館及びその他関係機関との連携・協力」に書店との連携などを盛り込むなどを検討、③図書館関係者、書店関係者、文部科学省が参画する対話の場を設置し、具体的な検討を行い、より実態に見合った実効性のあるルールづくりや優良事例の収集・普及を推進する。
〈新たな価値創造への事業展開を支援〉経産省、財務省
●多品種少量供給を特徴とする出版物のサプライチェーンにおいて、ICタグの活用は、流通効率の向上・万引き抑制効果・販売ビッグデータの精度向上など、多くのメリットが期待出来る。また、新たな書店の事業展開の方向性として経営環境改善に寄与する包括的な書店業支援を推進する。このため、①ICタグ導入、キャッシュレス決済導入促進のための支援策の活用が書店で進むよう対策を検討、②「事業再構築補助金」、「小規模持続化補助金」などにおいて「書店枠」を設け、書店を支援対象とし、その普及を図るよう検討するとともに、③書店等の活用事例の収集・普及を推進する。
●多くの先進諸国と同様に、国民の生活になくてはならないものとして、我が国においても出版物への消費税・軽減税率を出版物へ適用することなど消費税の動向を踏まえつつ継続して検討する。
〈文化向上・文化保護、読書活動推進、地方創生、DX化、観光振興等の観点からの支援〉文科省・文化庁、内閣府、総務省、観光庁
●フランスや韓国など諸外国の政策を参考に、我が国においても子供の読書推進、書籍・出版関係者によるブックフェアなどによる書籍振興など、文化振興、読書活動、リスキリング、地方創生、DX化、観光振興などの施策を通じて、書店への来店誘導政策としても寄与し、書店の経営改善にも繋がる関係省庁による取組を一体的に推進する。このため、以下のような取組へ書籍・出版関係者が参加しやすくなるよう公募の際、その取組に係る例示の提示、その他関係者への分かりやすい情報提供などを行う。
●「書店」が文化の拠点となる文化活動支援を検討する。たとえば、地域の文学・文芸の活動、子供の文化体験活動において、書店が拠点となる活動が、事業の支援対象となるよう検討する。
●地方公共団体が書店や出版社も巻き込んだ地方創生につながる事例の展開を推進するため、少子化や地域活性化の推進に資するクーポン等、地方創生交付金等が活用しやすくなるような工夫を検討する。
●DX化の方向性として、地域デジタル基盤活用推進事業など、図書館と書店との連携による地域のDX化を通して地域活性化や観光振興に資する事業が活用しやすくなるような工夫を検討する。
●観光振興の一環として、観光振興に係る事業などが活用しやすくなるような工夫の検討、作家等、書店に関係するものも含めた観光振興の取組が可能であることを明確化する。

総合読書率前年と同率の61%/家の光協会全国農村読書調査

家の光協会は第77回「全国農村読書調査」の結果をまとめた報告書『2022農村と読書』を発表した。全国59地点の農林業地域に在住の16歳~79歳の男女1966名を対象に、昨年8月1日~9月4日に実施。有効回収数は836票、回収率は42・5%。これによると、月刊誌、週刊誌、書籍のいずれかを読んでいる割合を示す総合読書率は、前年と同率の61%となった。
総合読書率は、性別では男性が57%(前年比1ポイント増)、女性は65%(前年同率)となり、女性が35年連続で男性を上回った。年齢別では、10代が最も高く70%、30代が最も低く56%。職業別では、学生が最も高く67%、無職が最も低く56%だった。
月刊誌か週刊誌を読んでいる割合を示す雑誌読書率は、前年比6ポイント減少し44%となった。性別では、男性が39%(同8ポイント減)、女性が47%(同5ポイント減)。年齢別では、60代が最も高く50%、10代が最も低く21%。職業別では、自営業が最も高く53%、学生が最も低く22%だった。
月刊誌読書率は同4ポイント減の35%となった。性別では、男性が31%(同5ポイント減)、女性が38%(同4ポイント減)。年齢別では、60代が最も高く42%、10代が最も低く12%。職業別では、自営業が49%と最も高く、学生が13%で最も低かった。毎月読む人の割合は13%。毎月ではないがときどき読む人は22%となった。また、同じ月刊誌を毎号読んでいる定期読書率は13%。
週刊誌の読書率は同6ポイント減の21%。性別では男性が20%、女性が22%でともに同6ポイント減。年齢別では、70代が最も高く27%、最も低いのは10代の12%。職業別では、自営業が最も高く30%、最も低いのは学生の11%。毎週読む人の割合は4%、毎週ではないがときどき読む人は17%。同じ週刊誌を毎号読んでいる定期読書率は3%だった。
調査までの半年間に書籍を読んだ人の割合を示す書籍読書率は39%で、同2ポイント増加した。性別では男性が36%(同5ポイント増)、女性が41%(同2ポイント減)。年齢別では、10代が67%と最も高く、70代が最も低く31%。職業別では、学生が最も高く64%、農業が最も低く30%。
この半年間に書籍を読まなかった人も含めた全員の過去1ヵ月の平均読書冊数は、前年と同じ1・4冊。性別でも男女とも1・4冊だった。年齢別では10代が最も多く4・9冊、最も少ないのは70代の0・6冊。職業別では、学生が最も多く3・1冊、農業が0・4冊と最も少なかった。
この半年間に書籍を読んだ人の過去1ヵ月の平均読書冊数は「0冊」22%、「1~4冊」54%、「5~9冊」9%、「10~14冊」5%、「15冊以上」4%。過去1ヵ月に書籍を読んだ人の平均読書冊数は同0・1冊減の4・9冊。
読んでいる月刊誌(毎号読む+ときどき読む)は、前年と同じく1位は「家の光」(家の光協会)、2位は「現代農業」(農山漁村文化協会)だった。3位は「オレンジページ」(オレンジページ)、4位は「ハルメク」(ハルメク)で、「ハルメク」は前年の11位から大きく順位を上げた。毎号読んでいる月刊誌の1位も例年通り「家の光」だった。
読んでいる週刊誌(毎号読む+ときどき読む)の1位は「女性セブン」(小学館)、2位は「女性自身」(光文社)、3位は「週刊文春」(文藝春秋)、4位は「週刊少年ジャンプ」(集英社)。毎号読んでいる週刊誌の1位は「週刊少年ジャンプ」だった。
調査時点までの半年間に読まれた書籍の1位は尾田栄一郎『ONEPIECE』(集英社)、2位が芥見下々『呪術廻戦』(集英社)、3位が原泰久『キングダム』(集英社)、和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社)と、コミックが上位を占めた。
本の購入先または借覧先・入手方法は、月刊誌が1位「書店」47%、2位「スーパー・コンビニ」21%、3位「予約購読」14%。週刊誌は1位「スーパー・コンビニ」「美容院・食堂・病院」38%、3位「書店」31%。書籍は1位「書店」73%、2位「インターネット」26%、3位「図書館・公民館」22%。
本を読まない人も含めた全員の1ヵ月の平均支出額は同40円減の882円。ただし「本を買わなかった」人が53%と過半数を占めており、本を買う人の平均支出額は同84円減の2127円だった。
好きな作家・著者の1位は、14年連続で東野圭吾。2位は宮部みゆき、3位は林真理子となった。
1日平均のマス・メディアとの接触時間をみると、雑誌・書籍の読書時間は、読まない人も含めた全員で17分、読んだ人では36分。全員の数字で、新聞の閲読時間は17分、テレビの視聴時間は143分、ラジオの聴取時間は40分、インターネットの利用時間は60分。
インターネットに接続するためにパソコン・携帯電話・電子書籍端末などを利用しているか複数回答で尋ねると、パソコンが40%、携帯電話が68%、電子書籍端末が13%。これらを総合したインターネット接続機器の利用率は76%。また、電子書籍・電子雑誌の読書率(よく読んでいる+ときどき読んでいる)は同3ポイント増の32%だった。

ゴールデンウィークの書店売上動向/トーハン6・8%減、日販8・7%減/文芸書、旅行関連が好調

トーハン、日本出版販売(日販)はゴールデンウィーク(4月29日~5月7日)の書店売上動向を発表した。トーハンは前年比6・8%減、日販は同8・7%減と、両社ともに前年を下回った。
【トーハン】
調査対象書店は1562店。商品種別では、書籍は前年比1・0%減、雑誌は同7・3%減、コミックは同21・7%減、マルチメディアは同10・0%減。購入客数は同7・0%減、客単価は同4・6%増だった。
書籍は、文芸書が同2・8%増。凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)や、村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)などが売上を牽引した。地図・ガイドは、観光需要の回復から同11・8%増と伸長。海外ガイドは『地球の歩き方arucoソウル2023~2024』、国内は『地球の歩き方埼玉2023~2024』(ともにGakken)が上位になった。雑誌では、ムックが同0・3%減と堅調な売上。コミックは、『SPY×FAMILY』(集英社)の最新刊などが上位にあがった。
【日販】
調査対象書店は1354店(前年・当年ともに売上データが取得できている店舗〈日販取引書店におけるPOS調査店〉)。雑誌は前年比7・3%減、書籍は同3・4%減、コミックは同18・0%減、開発品は同13・5%減だった。
雑誌では、ムックは同1・2%減と健闘した。行動制限の緩和で旅行・観光消費が回復したことにより、旅行誌が同43・7%の大幅増。「るるぶ沖縄24」「るるぶ北海道24」(ともにJTBパブリッシング)が上位にランク入りした。書籍は文芸書・実用書・学参の3ジャンルで前年超え。文芸書は同3・1%増で、村上春樹『街とその不確かな壁』、凪良ゆう『汝、星のごとく』が売上を牽引した。コミックは、売上占有の多い少年コミックで、前年に売上が好調だった商品の反動を大きく受けた。

『季刊出版指標』の刊行スタート/出版科学研究所

出版科学研究所は、今年3月まで刊行していた月刊誌『出版月報』を刊行変更し、4月25日に『季刊出版指標』2023年春号を刊行した。
この号では、「コミックと読者45年の変遷」など3つの特集を掲載。『出版月報』に掲載していた販売概況や販売データなどの出版統計も掲載する。
『季刊出版指標』は4月・7月・10月・1月の年4回、25日発売。頒価税込4400円(送料別)。定期購読コース(送料無料)の料金は、「全誌コース」(『季刊出版指標』4冊と『出版指標年報2023年版』※6月30日刊行)が税込3万7400円、「季刊出版指標コース」(4冊)が同1万7600円。定期購読の特典として、販売指標など月次データをまとめたPDF版「出版指標マンスリーレポート」を無料提供する(別途申込とメールアドレスの登録が必要)。

2月期販売額は7・6%減/書籍は実用書、新書が上向く/出版科研調べ

出版科学研究所調べの2月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比7・6%減だった。内訳は、書籍が同6・3%減、雑誌が同9・7%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同8・9%減、週刊誌が同13・4%減。雑誌は定期誌の本数が減少し、女性誌などは部数の落ち込みが激しい。
書店店頭の売行きは、書籍が約6%減。実用書は、『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット公式ガイドブックパルデア図鑑完成ガイド』(オーバーラップ)などゲーム攻略本が好調。新書も、『日本史を暴く』(中央公論新社)などが牽引し、前年同月を上回った。
雑誌は、定期誌が約7%減、ムックが約2%増、コミックスが約4%減。ムックは、Jリーグやプロ野球の選手名鑑などが好調。コミックスは、大物新刊は『僕のヒーローアカデミア』(集英社)があったが、約34%減少した前年同月をさらに下回った。

書店組合総会スケジュール

◆北海道書店商業組合「第47回通常総会」
6月19日(月)午後4時、札幌市中央区・北海道建設会館で開催。

岩手県大槌町で日台漫画家の色紙展/震災復興・コロナ禍支援で感謝伝える

東日本大震災の復興支援や新型コロナウイルス禍の支援で、日本と台湾の漫画家が双方へ感謝を伝えるために描いた色紙を展示する「漫画の絆台日色紙展」(主催=台北駐日経済文化代表処台湾文化センター)が、4月8日~16日に岩手県大槌町の大槌町文化交流センター「おしゃっち」で開かれた。
東日本大震災から10年となる2021年に、日本の漫画家113名が台湾への感謝を表す色紙合計108枚を描き、台湾で巡回展を開催して大きな反響を呼んだ。22年には、コロナウイルスが猛威を振るうなか日本から台湾にワクチンが6回供与され、台湾の漫画家120名が日本への感謝の気持ちを伝える色紙合計120枚を描き、日台の色紙が台北で展示された。台湾文化センターは、このやりとりを日本でも伝え、漫画文化を通して友好を深めたいと巡回展を企画。東京・紀伊國屋書店新宿本店で3月に始まり、台湾と交流を続けている大槌町で第2弾の開催となった。
4月8日の開幕式で、大槌町の平野公三町長は「台湾の皆様からの多大なるご支援により、災害公営住宅や保育園・幼稚園の建設など復興の後押しをしていただいたことに改めて御礼を申し上げる」とあいさつ。台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表は「台湾と日本は心が通う友だ。いざという時互いに手を差し伸べて助け合う善の循環は素晴らしく、末永く続くことを願っている」と述べた。

「本屋のあとがき」/「酒を愉しむ」/ときわ書房本店文芸書・文庫担当宇田川拓也

タバコを喫わなくなるのと入れ替わりに、酒が面白くなった。20年以上も前の話である。家や店で味わうのはもちろん、気に入った銘柄の蔵や醸造所に、新幹線や飛行機を乗り継いで訪ねたことも一度や二度ではない。
さすがに現在は家族を抱える身なので、そうあちこち飛び回ることはできないが、より酒を愉しみ、識りたいと思う気持ちは変わっていない。
半月に一度くらいのペースで、日本酒を求めて近所の酒屋に足を運ぶ。ひとが5人も入ればいっぱいという規模のお店で、年配のご主人と女将さん、どちらかが相手をしてくれる。冷蔵棚に目を走らせ、毎回、無濾過生原酒をメインに4合瓶を2本買い求める。九十九里浜にほど近い寒菊銘醸の酒があれば、まず1本。もう1本は、そのときの気分か、店のオススメを選ぶ。
会計をお願いすると、新聞紙を1枚手に取り、するすると瓶に巻きつけ、栓の辺りをきゅっと捻って包んでくれる。この手際を見るのも愉しみのひとつだ。
釣り銭と商品を受け取ると、「これは涼しいところにしばらく寝かせてから呑むと、もっとおいしくなるよ」などとアドバイスをくれることもある。でも待ち切れなくて、結局すぐに開けて呑み切ってしまうのだけれど。
これからも、まだまだ元気に商いを続けていただきたいものだが、こうした日常もそう遠くないうちに、過去のものとなってしまうのか。AIが台頭した便利な世界。無人の店舗で買った酒は、どんな味がするだろう。