全国書店新聞
             

平成23年10月15日号

小学生はこれを読め!/書店員らで推薦本リスト、フェア実施/北海道組合理事長・久住邦晴氏に聞く

北海道書店商業組合は読書週間に合わせて10月27日から11月30日まで、組合加盟書店と道内市町村図書館で「本屋のオヤジのおせっかい小学生はこれを読め!」第1回フェアを実施する。児童書増売について同組合の久住邦晴理事長(札幌市厚別区・久住書房)に話を聞いた。(本紙・白石隆史)
北海道組合は2004年、久住氏の発案で、中学生に読んでほしい本を選んで専用の棚を作って薦める「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め!」フェアを始めた。この試みは全国で大きな反響を呼び、おせっかいは愛知、岐阜、三重、静岡、石川へと拡がっていった。10年に行った高校生版「本を愛する大人たちのおせっかい高校生はこれを読め!」は本屋のオヤジだけでなく高校の先生や図書館司書らも選書に加わった。その続編である「小学生は~」は、中高生フェアの好評を受けて「あと一つ残った小学生を」と自然の流れで決まった。
〔読んでほしいという思い、リストに〕
「何か面白い本はありませんか」という子供たちの声に「この本面白いよ」と自信をもって答えたい――そんな願いから小学生向けのおすすめ本リスト作りを始めたのは10年秋のこと。札幌市内の小学校208校と道内の公立図書館150館などに「小学生におすすめの本」をアンケートし、集まった1200冊の中から小学校の先生、図書館司書、書店員ら32名で構成する編集委員会が645冊を選書した。
子供の読書推進に関わるオールキャストが揃ったが、中でも札幌の小学校の「開放図書館」で活動する「開放司書」の母親15人が大きな約割を果たした。開放図書館は学校図書館を地域の学びの拠点とするため一般にも開放するユニークなシステム。司書を務める母親たちは児童書通揃いだ。「学びの要素を盛り込みたい先生と、楽しく読書させたい母親の話し合いは刺激的だった」という。
「子供たちに読んでほしいという思いだけをリストにしたかった」から、選ぶ基準はあえて設けなかった。意見を出し合い、好きな本に手をあげてもらう。票が多く集まった本は『エルマーとりゅう』(福音館書店)、『ふたりはともだち』(文化出版局)、『100万回生きたねこ』(講談社)。いずれも名作として読み継がれている児童書だ。新しい作品も選ばれた。ジャンルも内容も多種多様。なお、久住氏イチオシの3冊は『引き出しの中の家』(ポプラ社)、『はやくはやくっていわないで』(ミシマ社)、『てん』(あすなろ書房)だという。
リストとともに、図書館司書、小学校の先生、作家、評論家、書店員ら66人による「子どものキモチに一番近い大人たちが選ぶこの3冊」の推薦文、作家・湯本香樹実氏のインタビューなどを掲載した『小学生はこれを読め!』(定価本体952円)を8月24日、北海道新聞社から発売した。初版3千部で、北海道新聞社から礼金15万円が支払われた。この金額は印税5%に相当する。日書連から拠出された「サン・ジョルディの日PR企画推進補助金」「組合活性化資金」の25万円と合わせて、フェアの予算は40万円。今年は中高生フェアを取り止めて小学生フェア一本に絞った。
〔手作り感を大切に常設棚で長く売る〕
フェアとリンクして「児童書販売研究会」を立ち上げた。組合加盟書店と出版社の児童書担当者が、理想の児童書売場を目指して研修することが目的。品揃え、POPによる売場作り、読み聞かせによる集客などを学ぶ。
「どの本屋も新刊しか売れない。その中で地味な児童書をどうやって目立たせ、棚を作るか。工夫しなければ。児童書研究会で情報を提供し、小中高フェアで実践したい」と言う。
フェア参加店はリストを店に置き、推薦本に共通の帯を巻く。そして専用の棚を作る。すべて手作りだ。手間もかかる。「手軽なものは残らない」が持論。「入荷した本に愛おしい気持ちで帯を巻いて並べる。そういう手作り感が売れ行きにつながる。ただ並べるだけでは売れない。ある程度の規模の棚を作り長く置くと、お客さんがジワジワとついてくる。近隣の学校への声かけなど販売促進も重要。朝の読書の普及などで今の小学生は本をよく読む。年間50冊から100冊読む子もいる。彼ら向けの常設棚を作れば町の本屋にとって大きな武器になる」

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

「読書の秋」ということでもないでしょうが、続けて「ブックガイド」本が出版されています。そのなかの1冊に『野蛮な読書』という本があります。【註1】
この書名を見て、あるお客さんの話を思い出しました。
「食い意地が張っててなあ、小さい時から面白いと思うたら小説でもマンガでもなんでも読むねん」
私より二つ三つ年上のエエとこのボンボンでした。
別のエッセイを読んでいましたら、取材は断わらないが、仕事場の撮影は即断わる、とあります。「みせられねえ、絶対に。散らかり方がどうしようもないのだ。とくにみせたくないのが書棚で、だがとくに先方が撮影したがるのも書棚である」【註2】
私も一応取材は受けます(エラソー)が、写真は辛い、いろんな意味で恥ずかしい。店内だから一応働くおじさんとして写るのですが、これがもし家の本棚の前だとしたら(絶対にない!)、私も〝断わる派〟です。余計な心配ばかりしているので、苦労が絶えません。雑誌のグラビアで目にする著名作家の本棚や書斎の写真を、私、信じられないです。
散らかし放題にしている本棚です。「本棚には過去の自分と将来こうなりたいという理想像がある」という文章を読んだことがありますが、私にはそんなもの、ない!のです。ぐっちゃぐちゃです。子どもの絵本もあれば妻の料理本もあります。それこそ他人様には見せられないスケベ本もあります。机に向かうと、「クリスマスソングブック」が私の顔の左側に位置しています。それも2冊です。私の頭は年中クリスマスか?敬愛する作家とマンガと、「こんな本、いつ、誰が読むんや?」と思い続けている本も並んでいます。それでも美しく整理されていれば問題ないのですが、横になったり、逆様だったり、隙間に突っ込んであったり、「あっち向いてホイ」状態で見苦しいことこのうえありません。さらに、まわりに新聞・雑誌、チラシに訳の分からない資料やら、どこからゴミなのかもはっきりしません。本人以外にとってはみんなゴミでしょう。何かを探す時は、いったん全部をひっくり返さなければなりません。それでも、ある画家が表紙を担当したPR誌2年分がちゃんと揃っていました。場所はあちこちですが、これには本人が驚いています。そろそろ片づけないと妻の堪忍袋が爆発する雲行きです。
これもお客さんから聞いた話です。増え続ける本を見ながら夫人がおっしゃいました。
「あなたがいくら本をお買いになろうと、それはあなたのお金だからいいのよ。でもね、この家はふたりの共有の空間でしょ?」
あくまで上品に、しかし強い言葉と眼差しに、整理せざるを得なかったそうです。それでもなお、本は増え続けましたとさ。
最後通告があれば、まだいいです。うちの場合、多分捨てられますな。皆さんもご注意のうえ、平和な読書生活をお過ごしください。
前号で宣言した「福島県出版フェア」を開催しています。「福島・会津からの風」と題して、地元出版社2社、計200冊あまり、個人出版2点です。これまでお付き合いのない私の要求を快く受け入れてくださいました。大震災や原発問題についてエラソーなことは申しません。気の毒というのでもありません。彼の地の豊かな自然と文化、人々の暮らしを見ていただきたい、感じ取ってほしいと願います。加えて、地方出版人の静かな情熱と篤い志もぜひ。
【註1】平松洋子『野蛮な読書』集英社
【註2】長嶋有『安全な妄想』平凡社

第2回首都圏書店大商談会/10月26日に秋葉原で開催

昨年大きな成果をあげた首都圏書店大商談会が、今年も取次書店会が連携し、帳合の枠を超えて開催されます。会場は首都圏各地からアクセスしやすい秋葉原。出展96社・100ブースを「一般」「コミック」「児童書」の3コーナーに分けました。出版社に希望や現状を伝える、出版社から出版企画や情報を聞くことができるのはもちろん、店で役立つイベントも実施します。この商談会限定の特典も多数用意。書店の各売り場担当者は是非ご来場ください。
▽日時平成23年10月26日(水)午前11時~午後5時
▽会場アキバ・スクエア(東京都千代田区外神田4―14―1秋葉原UDX。JR秋葉原駅すぐ、秋葉原UDX内2階)
▽参加費無料※当日参加も可能ですが、なるべく事前に取次会社へお申し込みください
▽問い合わせ帳合の取次担当者または以下の事務局まで。出版文化産業振興財団(JPIC)担当=中泉、奥(oku@jpic.or.jp)
〒101―0051東京都千代田区神田神保町3―12―3℡03―5211―7282

「震災復興基金」募金箱に協力/11月14日に書店経営研修会開催/東京組合

東京都書店商業組合は10月4日に書店会館で定例理事会を開催した。
理事会に先立ち、大震災出版対策本部が設立した「大震災出版復興基金」について、同本部から書店店頭での募金箱設置の要請があり、東京組合として協力することを決議した。
〔総務・財務委員会〕
10月29日、30日に開催される「第21回神保町ブックフェスティバル」の「本の得々市」等に本部2台、千代田支部1台、青年部2台、合計5台のワゴンを出すと報告された。
〔書店再生委員会〕
書店の収益改善をテーマに各委員から募った提案を集約し、検討を進めていると報告があった。
〔指導・調査委員会〕
書店経営研修会を11月14日(月)午後3時から書店会館で開催する。テーマは電子書籍サービスを予定。
〔取引・流通改善委員会〕
TS流通協同組合の9月期発注件数は8135件(前年同月比110・4%)、売上金額は681万1210円(同93・8%)、書店数は61店(同91・0%)だった。TS組合の総会は11月25日(金)午後4時から開催する。
〔デジタル戦略推進委員会〕
ダイヤモンド社『神様の女房』の店頭連動企画は、117店舗947冊の注文があり、申込み書店に拡材のオリジナルPOPとパネルを送付した。また、8月からサービスを開始したドコモのスマートフォン向け電子書籍販売サイト「BOOKSMARTPoweredbyBooker’s」とケータイ書店Booker’sで、同書の電子書籍版の独占先行販売を行った。

日書連、電子書籍事業で出版社説明会/コンテンツの提供要請

日書連は9月26日午後3時から、新宿区の日本出版会館で書協会員出版社を対象に「書店における電子書籍サービス展開の説明会」を開催し、119社137名が出席。ウェイズジャパンと提携して実施する電子書籍事業へコンテンツの提供を呼び掛けた。
冒頭で日書連・大橋信夫会長は「日書連は電子書籍を敵に回すのでなく、商売の糧にしていこうと考えた。出版社の皆様には、紙の本を引き続き出していただくとともに、電子書籍についてもぜひお願いしたい」とあいさつ。
日書連電子書籍対応部会の鶴谷祿郎部会長(青森県書店商業組合理事長)は、電子書籍事業に取り組む意図について「書店の疲弊は、特に地方書店では本の物流が読者を満足させる状態にないことに原因がある。昨年は電子書籍元年と言われ、我々も電子書籍に関する勉強会を行ったが、このままだと書店が蚊帳の外に置かれてしまう危険性を感じた。電子書籍を我々の望む形で取り入れていけないか、電子と紙の両立が図れないかと考えた。地域の書店は読者とコミュニケーションを密に持っており、この書店の役割を電子書籍市場の中にも位置付けたい」と説明した。
ビジネスモデルを説明したウェイズジャパンのアラム・サルキシャン代表取締役は「我々の主眼は、電子書籍端末の販売よりも、コンテンツとの出会いを促すことにある。端末を買った人に無料で書籍をつけるのではなく、書籍を購入してくれた読者に端末を安価で販売する形を実現していきたい。出版社の協力を得てコンテンツのラインナップ拡大に努力するとともに、書店店頭における紙と電子書籍の同時プロモーションや、出版社が独自にプロモーションできるECサイト構築を行っていきたい」と述べた。

日書連のうごき

9月1日「電子書籍対応部会」(仮称)。
9月2日財団法人日本漢字能力検定協会を大川専務理事が訪問。
9月5日電子書籍コンテンツ協力要請で、ポプラ社、講談社、文藝春秋を訪問。
9月6日日書連ホームページ部会。
9月9日公正取引委員会取引企画課並びに消費者庁表示対策課を大橋会長ほか役員が訪問。
9月12日第2回「万引き防止のための防犯責任者養成講座」に石井事務局長が出席。
9月13日出版再販研究委員会に大橋会長ほか役員が出席。第43回出版平和堂合祀者顕彰会実行委員会に大川専務理事が出席。全国万引犯罪防止機構第3回処分市場小委員会に小泉理事が出席。
9月14日各種委員会(指導教育、取引改善、流通改善、書店再生、広報、読書推進、政策、地震対策本部、組織)。
9月15日定例理事会。ISBN第4回マネジメント委員会に藤原副会長が出席。
9月20日千葉組合通常総会に舩坂福会長が出席。「ためほんくん」幹事会。出版倫理協議会に石井事務局長が出席。
9月21日京都組合「ためほんくん&電子書籍」研修会に田江理事が出席。全国中小企業団体中央会月例会に石井事務局長が出席。
9月22日取協書籍進行委員会との「読書週間書店くじ」打合せ会に舩坂福会長が出席。茨城組合「ためほんくん&電子書籍」研修会に田江理事が出席。
9月26日電子書籍対応部会。日本書籍出版協会会員対象の「書店における電子書籍サービス展開の説明会」に大橋会長ほか役員が出席。静岡組合「ためほんくん」研修会に田江理事が出席。
9月27日「日書連MARC」対応で大川専務理事が大阪屋本社を訪問。
9月28日日本図書普及株式会社役員会に大橋会長ほか役員が出席。文化産業信用組合理事会に大橋会長が出席。
9月29日兵庫組合「ためほんくん&電子書籍」研修会に田江理事が出席。
9月30日「大震災出版復興基金」創設記念シンポジウムに大橋会長が出席。

津波に負けず営業再開/店売苦戦も外商・配達に活路/茨城県日立市・やまがた書店

地震と津波の爪痕がまだ生々しく残る被災地の街も復旧・復興に向けた動きが広がっている。商品汚破損や浸水などの被害を受けた沿岸部の書店も営業を再開し、経営再建に向けて懸命に努力している。茨城県日立市の「やまがた書店」を訪ね、山縣一彦社長と妻の由起子さんに話を聞いた。(本紙・白石隆史)
〔ヘドロで商品全損〕
茨城県は「隠れた被災地」「忘れられた被災地」と呼ばれることがある。岩手、宮城、福島の陰に隠れて目立たないが、海岸線の長い同県が受けた被害は東北3県に匹敵するほど大きかった。特に沿岸部は大量の震災ゴミやヘドロが残り、ホコリと悪臭のせいで、5月の連休まではマスク、長靴、手袋がなければ外にも出られなかったという。東北の被災地と変わらない状況だ。そんな困難な状況の中で県民は復興に取り組んでいる。
JR大甕駅から車で10分。日立市久慈町の商店街は人通りもまばらで、シャッターを降ろした店や倒壊した建物、更地が目に付く。3月11日、茨城港日立港区から500㍍内陸にあるこの地域を襲った大津波は、住宅を破壊し、一帯は浸水した。戦後から営業を続ける「やまがた書店」にも濁流が流れ込み、商品はすべて汚破損した。
震度6強の激しい揺れの後、防災無線が30分後の津波到達を告げ、高台へ避難するよう警告した。社長の山縣一彦さんは妻の由起子さんら家族とともに高台の久慈中学校に車で避難した。「まさか本当に津波が来るとは思わなかった。でも海を見ると真っ白い壁のようなものが陸地に迫ってくる。本当に怖かった」と由紀子さんは振り返る。
レジはそのまま、シャッターを閉めず、ドアの鍵も掛けず、着のみ着のままで避難した。子供と高齢の母親を避難所に残して、一彦さんと由起子さんはすぐ店に戻った。20坪ほどの店内はスチール棚が倒れ、落下した本や雑誌が散乱。そこに津波の第1波が流れ込み、床上浸水。最後の第4波が最も大きく、引潮で多くの商品が流失した。約40㌢のヘドロが流れ込み、「落下した本と書棚の下にストックしていた本は、泥が付き、水を吸い込んで、すべて駄目になった」(一彦さん)という。
倉庫に保管していた教科書も大きな被害を受けた。「3分の1が駄目になった」(一彦さん)という。同店は小学校6校、中学校2校、高校1校の教科書を取り扱う。「ちょうど教科書シーズン。納品間際の時期で痛かった。すぐに茨教販に注文した。教科書だけは期限内に納品しなければならない。店の片付けは後回しにして最優先でやった」
〔高校生らが泥かき〕
店内の片付けを本格的に始めたのは、教科書が終わった5月から。汚損本の整理は、被災商品の返品期限である5月31日に間に合うよう、急ピッチで進めた。地震ではなく津波が商品被害を大きくした。「床に落ちた本を片づけている間に棚の本が水を吸って、棚から抜けないぐらいパンパンに膨らんでしまった。救える本も救えなかった」(由起子さん)、「水を食った荷物は、膨らんで、ヒモが食い込む。あと相当重くなる。教科書会社の社員は『教科書は元々重いけれど、こんなに重いのは持ったことがない』と驚いていた」(一彦さん)という。
倒れたスチール棚はすべて処分し、先代の時代に使っていた木製の棚を蔵から引っ張り出した。レジは無事だった。しかし、水没したパソコンのデータはすべて消失した。納品書は手書き対応せざるを得ず、通常の3、4倍の労力がかかった。泥だらけになった床はすべて張り替えた。屋根は落下しやすい瓦からコロニアルに変えた。
無茶苦茶になった店内で商品を整理し、ヘドロをかき出し、清掃し、什器を据え付ける。最初は「どこから手をつけていいかわからない状態」(由起子さん)だった。心配した親類、知人、お客さんが手伝ってくれた。「高校生や大学生の男の子たちが『手伝いますよ』ってボランティアで来てくれた。『いつも立ち読みばかりさせてもらって悪かったから』って(笑)。ヘドロのかき出しとかきつい作業を無償で泥だらけになってやってくれて。ありがたかった。最近の若者も捨てたものじゃない、大したものだと感心した」
取次は日販。支店長らが頻繁に同店を訪れた。また、ミネラルウォーター、除菌用アルコールタオル、インスタントラーメンなどの救援物資も送ってくれた。一彦さんは「このあたりではウチの被害が一番大きかったからでしょう」と感謝する。
〔「配達遅れても」顧客の声、温かく〕
外商を4月上旬に再開。配達を待っていたお年寄りに喜ばれた。そして震災からちょうど3ヵ月後の6月11日に店舗での営業を再開した。震災の経験をもとに店内のレイアウトを変えた。水害に備えて商品はなるべく高い場所に置くようにした。在庫も大幅に減らした。
営業再開を喜ぶ顧客からお祝いの言葉や差し入れが相次いだ。「『オタクでしか買わないから店が開くのを待っていた』『こういうときだから配達が遅れてもかまわない』とおっしゃってくださるお客さんもいた。先代からの長い付き合いのお客さんがほとんどなので。本当にありがたい」(由起子さん)
しかし、3ヵ月間店を閉じていた影響で客足はなかなか戻らず、売上も震災前から3割減少した。「お客さんも被災している。だから外を出歩く人が少ない。だんだんと元の生活スタイルに戻りつつあるところ」と由起子さん。一彦さんは「店売が正常に戻るまで今年いっぱいはかかる」と見通しを語る。
被災地の報道写真集は同店でも好調。特に茨城新聞社が出した『東日本大震災茨城全記録特別報道写真集』(定価本体1714円)はお見舞い返しのまとめ買いもあってよく売れたという。
〔できれば高台に…〕
一彦さんの祖父は漁業を営んでいた。本好きの父親が書店を開業し、一彦さんは2代目にあたる。同店が海のそばに立地するのはそのためだ。「祖父はもともと網元だった。戦争で船を失って、戦後、水産加工業に転じた。漁業は海に近くて低い土地に住んでいるほうが有利だから。歴史的経緯を踏まえれば今回被災したのもやむを得ない。でも書店に海の近くで営業するメリットはない。いつまた大きな津波が来るかわからない。だから少しでも高いところに移りたいのが本音」と話す。
海抜2メートルの沿岸部。近くに久慈川が流れる。再び津波の被害に遭うかもしれない。他所へ移った住民や廃業した商店も多い。震災後、更地が30%増えたという。「このあたりで商売をしている方は60、70代が多い。建て直しても、また水害にあったら、次はもう立ち直れない。ここが潮時と踏ん切りをつける機会になってしまった」(由起子さん)。しかし自店の廃業は「考えなかった」と口を揃える。「不安はあるけれど、私たちはまだ50代。諦めるわけにはいかない」と話す。
「震災直後は教科書納入など目先のことだけで精一杯。将来のことなんて考えられなかった。無我夢中のうちに半年が過ぎた」と一彦さん。今後の営業の在り方は店の状況を総合的に見ながら検討したいという。「ここ数年、店売の売上は低迷している。そこに震災で追い打ちをかけられた。外商にしぼって営業を続けることも考えている。1、2年ぐらい様子を見て決めたい。教科書や学校との取引もあるので書店は続けたいと思っている。地域の皆さんから書店がなくなったら困るという声をいただいていることも励みになっている」(一彦さん)、「高齢化が進んでいる街なので、店売より外商や配達をメインにやっていくほうが需要があるのかもしれない。ただ店の営業再開を喜んでくれるお客さんもいる。いま残っているお客さんを大切にして、うまく違う形につなげていければ。品揃えを工夫して新しい顧客を取り込むことも考えたい」(由起子さん)と、営業継続へ力を込めた。

万引犯「全件警察に通報」が7割/全国万引犯罪防止機構「小売業万引被害実態調査」

全国万引犯罪防止機構はこのほど第6回(平成22年度)「全国小売業万引被害実態調査報告書」を発表した。これによると、調査に協力した23業態253社のうち、約4割の企業で、前年より万引被害額が増えたと回答。また、捕まえた万引犯は全件警察に通報すると答えた企業が7割以上にのぼることが明らかになった。この調査は、全国万引犯罪防止機構が全国の小売業・サービス業における万引被害の現状を把握するために毎年実施しているもの。日本経済新聞社編「日経小売・卸売企業年鑑2006」を調査台帳の基本として、随時最新の情報に更新した掲載企業のうち、主として「セルフ販売」を採用する企業の本部を調査対象とした。調査票を郵送配布・郵送回収する形で、今回は26業態951社を対象に行い、有効回収数は23業態253社(有効回収率26・6%)。回答企業の業態別分布は、企業数の多い順に次の通り。
▽スーパー=67社▽百貨店=29社▽コンビニ・ミニスーパー=23社▽ドラッグストア、生活協同組合=各18社▽ホームセンター・カー用品=17社▽書籍・文具=11社▽家電製品=10社▽スポーツ用品、婦人服・子供服=各8社▽総合ディスカウント=6社▽その他専門店、靴、時計・めがね=各5社▽カジュアル衣料、服飾・服飾雑貨=各4社▽楽器・CD、呉服、紳士服=各3社▽酒類、宝飾品=各2社▽100円ショップ、玩具・ホビー用品=各1社(カメラ、家具、生鮮の3業態は回答なし)。
回答企業の展開する店舗数は、「11~30店舗」が56社(22・1%)、「101店舗以上」が48社(19・0%)、「51~100店舗」が47社(18・6%)、「5店舗以下」が43社(17・0%)、「31~50店舗」が32社(12・6%)、「6~10店舗」が21社(8・3%)となっている。
〔被害件数は1社平均329件〕
直近決算年度における万引犯罪被害件数を聞いたところ、この質問の有効回答210社の被害総件数は6万8995件で、1社平均では329件となった。平均件数の多い業態は、スーパー925件、ホームセンター・カー用品539件、総合ディスカウント512件、書籍・文具217件、その他専門店117件、生活協同組合73件、ドラッグストア66件となっている(図1)。
確保した(捕まえた)万引犯の人数は、有効回答215社の総人数が3万9827人、1社平均で185人だった。平均人数の多い業態は、ホームセンター・カー用品551人、スーパー417人、総合ディスカウント383人、書籍・文具211人、その他専門店131人(図2)。
確保した万引犯の男女別内訳は、男性60・9%、女性36・7%。職業別内訳は、「無職」の35・4%を筆頭に、「主婦」16・7%、「社会人」13・4%、「中学生」11・5%、「高校生」8・9%、「不明」5・0%、「小学生」3・7%の順。小・中・高校生を合わせた「青少年」は24・1%だった。また、確保した万引犯の単独犯・複数犯別内訳は、「単独犯」が84・9%、「複数犯」11・8%、「不明」3・3%で、さらに「複数犯」の内訳は「2人組」7・3%、「3人組」3・1%、「4人組以上」1・4%となっている。
〔4割の企業で「被害額増えた」〕
万引被害金額を1年前と比較して増減傾向を聞くと、「大変増えた」と答えた社が7・1%、「やや増えた」が32・8%で、この二つを合わせ増加したと答えた社は39・9%にのぼった。一方、「やや減った」は17・4%、「大変減った」は2・0%で、この二つを合わせ減少したと答えた社は19・4%だった。この他、「変わらない」が27・3%、「わからない」が9・5%。業態別で「増加」の比率が高いのは、書籍・文具72・7%、生活協同組合55・6%、ホームセンター・カー用品41・2%、スーパー40・3%となっている。
各社が最近の万引犯罪の原因と考えるものについて複数回答で尋ねたところ、「万引に対する犯罪意識の欠落」が最も多く76・3%。以下、「失業者の増加など長引く経済不況」62・5%、「店舗の大型化による従業員1人当たりの守備範囲の拡大」49・4%、「従業者の防犯意識の低下(パート比率の増加等による)」29・6%、「インターネットオークションの出現」26・9%、「中古ショップの増加」20・6%の順となった。
回答各社において万引犯罪を発見した場合、その後の基本的な処理方針について尋ねると、最も多かったのが「全件警察に通報、家族や学校へはケースバイケース」で44・6%だった(図3)。次いで「全件警察に通報、未就学児・学生は家族および学校にも連絡」28・7%となり、全件警察に通報すると答えた企業は合わせて73・3%にのぼった。この割合は平成21年度調査では63・6%、平成20年度調査では58・0%となっており、全件通報する企業が年々増加していることがうかがえる。以下、「一部警察に通報する」20・2%、「その他」5・1%、「通報しない」0・4%。
この問いで、「全件通報、未就学児・学生は家族および学校にも連絡」以外の回答を選択した社に、基本的な処理と異なる処理をする場合の基準は何かを尋ねたところ、「初犯か再犯か」22・5%、「被害金額の大きさ」19・7%、「未成年か否か」14・6%、「未就学児か否か」11・8%という回答になった。
万引犯罪の処理方針で、警察に「全件通報」または「一部通報」と回答した企業に、書類作成で警察に居た平均時間を尋ねた結果は、「1~2時間」が最も多く35・6%。次いで「30分~1時間」29・7%、「2~3時間」15・3%、「3時間以上」5・9%、「30分以下」4・7%だった。警察の書類作成に要する時間を昨年と比較すると「警察の対応時間は変わらない」48・7%、「わからない」21・2%、「短くなった」19・1%、「長くなった」3・4%となった。
警察に居た時間の中で「手間と感じた手続き」を聞くと、「参考人調書」44・9%、「警察に行くこと」40・7%、「被害届」38・1%、「実況見分」25・8%、「証拠関係」19・5%となった。警察での「参考人調書・被害届」にいかに手間が掛かり、負担に感じているかを表すもので、手続きの簡素化が求められる。なお、平成22年10月1日からスタートした「全件通報・通報ルールの簡略化」の認知を尋ねたところ、「通報ルールが簡略化されたことを知っている」と答えたのが50・2%、「知らない」44・3%で、約半数が認知しているという結果になった。
〔損害賠償請求の実施は5・5%〕
図4は、回答各社が店舗レベルで実施させている万引犯罪防止策を聞いたもの。「従業員にお客様への声かけをさせている」が最も多く90・9%。次いで「防犯カメラをつけさせている」78・7%となった。このほか多かったのは「保安警備員を配置させている」52・2%、「商品陳列を工夫させている」49・4%、「店内ポスター、掲示物等を作り貼らせている」48・2%など。また万引犯罪防止のための従業員教育としては、「朝礼等で万引防止をテーマに取り上げさせている」45・5%、「万引防止マニュアルを作成・配置させている」40・3%という回答が多かった。
万引犯を捕捉した際の費用(人件費)を請求しているかを尋ねた結果は、「損害賠償請求はしていない」90・1%、「損害賠償請求をしている」5・5%、「無回答」4・3%となった。「損害賠償請求をしている」と回答した14社にその後の万引の増減を聞いたところ、「万引の件数が減った」と「減らない」がともに42・9%と拮抗した。
万引犯に「損害賠償請求を行っていない」228社に今後の導入意思を尋ねたところ、「万引犯人に対する損害賠償請求の導入を検討している」19・7%、「考えていない」75・0%となった。また、万引犯の店内捕捉についての考えを尋ねると、「検討したことがない」24・9%、「すでに実施している」19・4%、「他社の動向を静観している」19・4%、「店内捕捉については反対である」17・4%、「検討している」10・7%と判断が分かれた。
万引に関して地域社会とどのようなタイアップをしているかを聞くと、「万引防止のポスターを店頭に貼っている」54・2%、「生徒の職場体験を受け入れている」52・2%の2つが拮抗し、次いで「制服警察官の店内巡回を受け入れている」35・2%となった。

トーハン創立62周年記念式

トーハンは9月16日に本社8階大ホールで創立62周年記念式を開催、あわせて永年勤続者の表彰、成果表彰・資格取得表彰を行った。近藤敏貴社長のあいさつ要旨は以下の通り。
「東日本大震災のあと、特に被災地を中心に、本を手に取る人が増えている。理由は人それぞれだが、私には『言葉そのもので形作られた本』への『切実な希求』があると思う。人々の思いを、私たちは書店や出版社と一緒に受け止め、現実の企業行動として表現していかなくてはならない。
出版業界全体の課題について、トーハンが責任あるリーダーとして関わっていかなければならない。具体的には、再販制度の維持と、現在のマーケットに合った委託制度の運用だ。もうひとつは図書館の問題。片山元総務大臣は『学校図書館と知の地域づくり』の講演の中で、図書館の図書購入は地元書店から、出版文化も地産地消を、図書購入に入札は避ける、等を訴えている。地方文化のため、日本の文化発展のため図書館を守る。こういったこともトーハンの果たすべき重要な役割だ。
未来を見据えた新しい取り組みもすでにスタートしている。TONETS―Vとオープンネットワークを活用し、売上げを伸ばす・返品を改善することに全力を挙げてもらいたい。そして、これらのシステムを駆使し、トーハンと書店が従来よりも進んだ包括的契約を交わして目標達成を目指すのが、MVPアライアンスの考え方だ。
これからの時代はトーハンにとって非常に厳しい時代になる。全員が知恵を出し合い、企業理念を根本にもってどんな変化にも対応して生き残る。これが我々がやらなければならないことだ」

人事

(◎昇任、○新任)
☆トーハン
9月20日開催の取締役会で相談役の推薦が行われ、次の通り就任した。
相談役〔文藝春秋代表取締役社長〕○平尾隆弘
同〔ポプラ社代表取締役社長〕○坂井宏先
※上野徹相談役は退任した。
☆栗田出版販売
(10月1日付)
代表取締役郷田照雄
取締役河本正美
同柴原正隆
監査役米沢明男
〈執行役員担当業務の一部変更〉
社長(営業部門統括)
郷田照雄
専務執行役員(管理部門統括)河本正美
執行役員(総務部・取引部・システム部・関係会社)山本高秀
同(営業第1部・営業推進部)○下村賢一
同(営業第2部)塩沢衛
同(営業第3部・営業第4部)大内浩幸
同(営業第5部・営業第6部)高梨秀一郎
同(書籍仕入部長兼務・雑誌仕入部)森岡忠弘
同(OKC)森孝弘同(ブックサービス)
川窪克誌
☆太洋社(9月28日付)
代表取締役社長
國弘晴睦
専務取締役事業本部長
加藤顯次
常務取締役営業本部長
沢野豊
取締役管理本部長
大和政之
同管理副本部長
牧野伸一
同営業副本部長
土屋正三
同事業副本部長兼事業開発部長大神田博
監査役泉信吾
☆双葉社
9月16日開催の株主総会並びに定時取締役会で次の役員人事を決定した。
代表取締役社長
諸角裕
専務取締役〔編集局長〕
赤坂了生
常務取締役〔総務局長・総務、労務担当〕大沢紀寛
同〔事業局長兼編集局長〕
◎戸塚源久
取締役〔総務局長・財務、経理担当〕岩崎初美
同〔広告局長〕稲垣潔
同〔営業局長・営業、販売促進、販売管理、宣伝担当〕○川庄篤史
同〔営業局長・製作、システム開発担当〕○梓沢雅治
※佐藤俊行常務取締役は退任、本多健治取締役は退任し顧問に就任した。

オオサカパンパクに418名が出席/大阪日販会

大阪日販会は9月8日、大阪市中央公会堂で第18回大阪日販会出版博覧会(オオサカパンパク)を開催。今回初めて京滋日販会と兵庫日販会が共催し、会員書店や出版社、その他関係者を合わせて418名が出席する大盛況となった。
午後1時から始まった商談会には出版社52社が出展。各社がおすすめ商品について1分間の「得トーク」コーナーや商談会でアピールを行った。事業戦略部から4ブースが出展して開発商材の提案を行ったほか、書店店頭における陳列・POP・フェア展開・コーナー作り・店内サイン等の売場写真を展示し、会員書店の創意工夫がこらされた取り組み事例が紹介された。
途中あいさつに立った大阪日販会・長谷川政博会長は「今回のオオサカパンパクは『商いに結びつけよう』が合言葉。是非とも充実した1日を過ごしていただきたい」と述べた。
今回新企画として、コミック版元協力による「コミック販売研究会」を開催、コミックに関する有意義な情報交換がなされた。また有隣堂の梅原潤一氏を講師に「POP講習会」が開催され、最後に大阪日販会恒例の「本や連」による大阪メチャハピー踊りが披露されて大いに盛り上がった。

売上高4・18%減少/前年割れ14年連続に/日販『書店経営指標』

日販は全国113企業749店舗の経営資料を集計分析した2011年版『書店経営指標』(B5判63頁、頒価1575円)を発行した。これによると、売上高前年比は4・18%減で14年連続前年割れ。損益面では、売上総利益率は前年より0・01ポイントの微増、営業利益率は0・09ポイント減少したものの、経常利益率は0・01ポイントの減少にとどまり0・54%となった。
調査店749店舗の売上高前年比は4・18%減で、マイナス幅は前年より0・21ポイント減少した。地域別では、首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏が前年を0・53ポイント下回る5・52%減、地方は前年を0・15ポイント下回る3・77%減だった。立地別に見ると、商店街7・85%減、駅前5・95%減、SC内3・96%減、駅ビル3・66%減、住宅地3・09%減、郊外1・80%減と軒並みマイナスだった。
売場規模別でも全ての規模で前年割れ。落ち込みが最も大きかったのは100坪以下で7・03%減。以下、101~200坪5・67%減、501坪以上4・51%減、201~300坪以下4・09%減、301~400坪以上3・07%減、401~500坪2・99%減。業態別では専業が4・68%減、複合が3・98%減でともにマイナスだった。
損益面では、売上総利益率は26・07%となり、前年より0・01ポイント増加した。販売費・一般管理費は人件費、設備管理費などは減少したものの販売費、その他管理費などが増加したため、25・76%と前年より0・10ポイント増加。これにより、営業利益率は0・31%と前年比0・09ポイント減少した。しかし、営業外収益が営業外費用を0・23ポイント上回ったことから、経常利益率は0・01ポイントの減少にとどまり0・54%となった。
収益性の総合指標である総資本対経常利益率は、資産効率性を図る総資本回転率が0・09回増加して2・03回となったことにより、前年比0・27ポイント増加し1・10%になった。
商品在庫が生み出す売上総利益の割合を示す交差主義比率は、商品回転率が前年より0・11ポイント減少したため、前年比2・91ポイント減少し167・11%になった。また固定資産回転率は0・45ポイント増の8・41回となった。
短期支払い能力を測る指標である当座比率は、前年比7・11ポイント向上し49・25%。返済義務のない自己資本の割合を表す総資本対自己資本比率は1・17ポイント増加し16・22%になった。また、資産の固定度合いを示す固定比率は255・61%で前年比11・37ポイント改善した。
従業員1人当たりの年間粗利益額を示す労働生産性は、前年を4万1千円上回って627万5千円になった。売上総利益率が前年並みであり人件費率が減少していることから、人員を調整していることが伺える。従業員1人1時間粗利益額を示す人時生産性は、前年から5円減少し2920円だった。粗利益額に占める人件費の割合を見る労働分配率は低い方がよく40%台が望ましいとされるが、前年比1・37ポイント悪化して47・92%となった。
正規従業員の年間勤務日数は270日で、前年より2日減少した。地域別では三大都市圏が3日増加したのに対し地方は6日減少した。売上規模別では1億円未満が310日、1億円以上3億円未満281日、3億円以上5億円未満270日、5億円以上10億円未満263日、10億円以上262日と、売上規模が小さいほど勤務日数が多い。業態別では、専業が276日、複合が265日だった。
正規従業員の年間総実労働時間は2217時間と、前年より124時間もの大幅減となった。一方、パート・アルバイトは1258時間で10時間増加した。正規従業員の平均賃金年間支給額は前年よりも6万4263円増加して350万8698円となった。地域別では三大都市圏は10万632円、地方は5万503円ともに増加した。

雑誌バックナンバーサービスを開始/日販「本の超特Q」

日販は、客注品のお取り寄せサービス「本の超特Q!QuickBook」において、「雑誌バックナンバーサービス」を9月20日から開始した。
「本の超特Q!QuickBook」は、日販のSAシステム「NOCS9000」を使用しており、今回スタートするサービスは書店から要望が最も多かったもの。現在「本の超特Q!」を利用している加盟店は、手続き不要で新しいサービスを利用できる。まず分冊百科とNHKテキストから在庫を持ち、順次取り扱い範囲を拡大していく予定。
サービスのスタートに合わせ、10月31日まで「本の超特Q!」の利用促進キャンペーンを実施。客注獲得のためのユニークな活動に取り組んだ店舗20店や、「本の超特Q!」注文の送品金額TOP10店に報奨金を支払う。

ジョブズ氏評伝10月24日発売へ/講談社

米アップルの共同創業者で前CEOスティーブ・ジョブズ氏の逝去を受けて、評伝『スティーブ・ジョブズ』が10月24日に世界同時発売される。日本の版元の講談社によると、当初11月21日に刊行する予定だったが、著者および各国出版社と協議の結果、10月6日、約1ヵ月前倒しして発売することを決定したもの。
ジョブズ氏の伝記はこれまでも出版されているが、世界20社の版元が14言語で出版する同書は、ジョブズ氏が積極的かつ全面的に取材に協力した唯一の評伝。著者はピューリッツァー賞作家のウォルター・アイザクソン。
アップル創業の経緯、iPhoneとiPadの誕生秘話、引退までをジョブズ氏自身が明らかにする。約3年にわたり延べ数十時間におよぶ本人や家族へのインタビュー、未公開の家族写真なども世界初公開。ライバルだったマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ、アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアック、後継者の現CEOティム・クックなど数百名の関係者のインタビューやコメントも掲載する。
日本語版は全2巻。Ⅰ巻(写真左)は10月24日、Ⅱ巻は11月1日発売予定(一部地域を除く)。定価は各巻1900円(税別)。初版各10万部。電子書籍も同時発売予定。

新明解国語辞典、12月に第7版発売/三省堂

三省堂は12月1日、7年ぶりの改訂新版となる『新明解国語辞典』第七版を発売する。まず並版(定価3150円、特装版(同)を発売し、来年1月中旬に革装(同5250円)、小型版(同2940円)、机上版(同4725円)、同2月下旬に大活字版(同4935円)を発売する。
前身「明解国語辞典」の創刊から68年で累計2080万部を販売し、小型国語辞典のシェアでは30%台後半を常にキープ、ユニークな語釈で多くのファンを持つ「新明解」だが、第七版の販売目標は30万部としている。
第七版の改訂のポイントは、並版・特装版・革装の判型をB6変形判からB6判に拡大し読みやすさを追求。また、語と語の正しいつながり方や語順を説明する文法欄を新設。「就活」「食育」「スマートフォン」などの新語を含め約1000項目を新たに追加し、総項目数が7万7500語に増えた。さらに、新常用漢字に完全対応、語釈にさらに磨きをかけ、アクセント欄のブラッシュアップを図った。
12月1日から来年2月末日まで書店向けにセットキャンペーンを行い、10冊以上の販売で1冊につき50円~100円の報奨を支払う。20冊から名入れ無料サービスを実施する。
9月21日に東京・文京区の東京ドームホテルで開かれた企画発表会で、北口克彦社長は「『新明解』はデジタルの対極にあるおせっかいな辞書。国語辞典としても一般書としても売れている。7年ぶりの改訂。拡売をお願いしたい」とあいさつした。また、ラジオパーソナリティの小島慶子さんと瀧本多加志取締役出版局長が「ことばのチカラ」をテーマにトークイベントを行い、「新明解」の魅力を語り合った。

創業90周年に向け企画続々/報道関係者向け企画発表会/小学館

小学館は9月29日、東京・千代田区の一ツ橋センタービルで報道関係者向けに出版企画発表会を開催。今秋以降に発売を予定している出版企画16点について各担当編集者がプレゼンテーションを行った。
席上、白井勝也副社長は「今春、『謎解きはディナーのあとで』が本屋大賞、『下町ロケット』が直木賞を受賞した。当社は来年90周年を迎える。2冠を獲れたことが大きな力となって秋の企画につながっている。東日本大震災以降、活字の力、本の力が命のメッセージになると確信した。作家も編集者も変わった。作者のひたむきな心を読者に届けられるよう後押ししたい」とあいさつした。
〔『謎解きはディナーのあとで2』11月に〕
プレゼンテーションでは、創業90周年記念企画の『小学館こども大百科キッズぺディア』(11月25日発売予定、定価4830円)、佐野眞一『あんぽん~孫正義伝~』(12年1月上旬発売予定、予価1890円)をはじめ、東川篤哉『謎解きはディナーのあとで2』(11月10日発売予定、予価1575円)などの文芸作品、笹本恒子『好奇心ガール、いま97歳』(9月29日発売、定価1470円)、『AKB48オフィシャルカレンダーBOX2012』(12月9日発売予定、予価2500円)などの説明が行われた。

神田村こう使っている/中小書店に温かい対応/東京都三鷹市・ミール書房・船井清子

神保町の一郭に本屋の問屋街があることは昔から知ってはいたが、自分がその区域に商いの仕入れで足を踏み入れることは全く想像の外だった。13年前、新米の、それも還暦を数年過ぎての老本屋で仲間入りした時、その区域には昭和の匂いが立ちこめて懐かしい面影に包まれる感覚がした。瓦屋根、土間、入り組んだ棚、招き猫然りとカウンター近くに犬や猫のいた店、ヨーロッパ風の旗を戸口に掲げた洋館もあった。
都市開発で今は各店が移り、メインにあるようなお店は減った。しかし、その仕事に携わる人達には変貌などない。実に個性的である。老いた小店舗の本屋がここで揶揄されたり、冷淡な扱いをされたことは一度も無い。経験を重ねて慣れる迄と見守っていただいたのだ。今もってミスが多い私にはさぞ苛々されることであろうが、皆が優しくしてくださる。距離が近ければ毎日でも覗きたい。
以前のように目にも止まらぬ速さで計算機を扱い、あっという間に請求を出すことや、在庫の何百冊ものインプットの中から注文の1冊を抜き出すようなことは、パソコンの普及によりなくなったが、大取次からいとも簡単に配本はゼロと言われ、版元にも品切と返事された客注品をこの村では「1冊でいいね」とカウンターに置いて貰えることは昔と同じだ。10坪程の店を遣り繰りしている本屋にとってその1冊はまさに命綱。これ迄どれほどそういう助けのお陰で顧客を繋ぎとめられてきたことか。
最も心に在るのは、ここでは1冊の購入でも50冊の購入でも店の人達の応対が同じということだ。余分な愛想もなくただひたすらに目の前で注文の有無、版元の現況を教えてくれる。事情があって行けない時も心安く受注し、面倒な荷造発送もして貰える。と、こう書いているとこの村、本の卸の神田村と当店は絆で結ばれている、と知る。この村が無ければ印刷文化の流通の逆風の下では当店は早くに白旗を掲げざるを得なかっただろう。もしそうなったとしたら、これ迄当店で間に合わせて居られたお客様は、バス、自転車で大規模店が2店ある駅前に行かなければ本は買えない。近くの図書館では人気の新刊本の3、4ヵ月待ちはざらだということだ。近くの小学校3校、中学校1校の生徒達は駅への危ない道を往復しなければならない。住宅街の高齢者は雑誌をも手に入れられなくなり、そのまま活字とオサラバすることとなるだろう。
何とかこの情勢の中で瀬戸際の踏ん張りを続けている当店を陰から支えてくれる神田村!私はいつも共に商いをしていることを納得し続けている。