全国書店新聞
             

令和2年6月15日号

東京組合総代会/「増売」重点に組合活動推進/コロナ後の書店業界、情報通信技術の活用カギに

東京都書店商業組合は5月20日、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで第44回通常総代会を開催。今回は新型コロナウイルス感染防止の観点から縮小開催としたため、総代の出席は本人1名、書面34名、計35名だった。矢幡秀治理事長(真光書店)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、営業を続けた組合加盟書店の売上動向はおおむね好調だったが、配達の休止などで厳しい状況に陥った店舗もあったと報告。コロナ後についてはネット販売が増え書店は厳しくなるとの見通しを示し、今後の組合活動は「増売」と「ICT(情報通信技術)の活用」を重点課題に進めると方針を示した。
総代会は渡部満副理事長(教文館)の開会の辞で始まり、矢幡理事長があいさつ。日書連が「書店における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」を5月14日にホームページで公表したと報告し、活用を呼びかけた。
緊急事態宣言発出後の組合加盟書店の売上動向については、役員が経営する書店の多くは営業を続け、売上も好調だったと報告。「最初に心配したのは書店が休業要請の対象に入るかどうか。対象外となって安心した。とはいえ、デベロッパーの要請や売上げが見込めないため休業せざるを得なかった店、開けても売上が伸びなかった店、病院や美容院から配達を断られた店もある。空けていても厳しい状況があった」と述べた。
また、営業を続けた店では、売上が2倍になった店もあり、小中高校の休校の影響で児童書や学参書の売上が好調だったとして、「ありがたい半面、3密を防ぐための消毒液やマスクが手に入らず、従業員は怖い思いをしながら仕事をしていた。しかし、休業対象外になったため、書店の頑張りに対する補償がない」と指摘した。
書店が好調だった要因として、インターネット書店が生活必需品を優先し、本が入手しづらい状況が生まれたため、店頭に足を運ぶ人が増えたことを挙げ、「書店は必要なものだとつくづく感じた」と述べた。
一方、コロナ後については、「間違いなくネット販売が増え、書店は厳しくなる。災害の時は本が売れるが、長続きせず苦しい状況に陥るだろう」と厳しい見通しを示した。
キャッシュレス決済の動向については、「緊急事態宣言発出後、キャッシュレス化がさらに進んだ。今は手数料が無料だからいいが、国のキャッシュレス・消費者還元事業が終わる6月末以降は、手数料を支払わなければならない。我々に有意なことが消えていかないよう、しっかりと発信していきたい」と語った。
最後に組合の重点課題を説明し、「第一に増売にしっかりと取り組む。昨年リニューアルしたホームページを、客が見て、本を探し、店に誘因できるものに発展させたい」と述べた。また、「今は電話とファックスを使うことが多いが、今後はメールやICTの活用を確立していかないと、時代に乗り遅れ、我々が思うことを進められない」と指摘。「店頭はアナログの良さを活かし、バックヤードはデジタルへ」と方向性を示し、改革の取り組みを組合がフォローして進めていきたいと考えを話した。
議長に本間守世氏(本間書店)を選任して議案審議を行い、平成31年度事業報告、財産目録・貸借対照表及び損益計算書、令和2年度事業計画、収支予算などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業報告では、読者謝恩図書カードの発行・販売、「書店のキャッシュレス決済対応について」研修会の開催、ホームページのリニューアル、新年懇親会の復活開催などを説明した。
事業計画については、増売運動の積極的な展開、ホームページによる情報発信の迅速化、支部及びエリアの組織改革の推進などに取り組む方針を決めた。
平井久朗副理事長(ビーブックス)の閉会の辞で総会を終了した。

一律5万円の支援金支給へ/対象は組合加盟3000店/全国書店再生支援財団

全国書店再生支援財団(奥村弘志理事長)は5月28日、新型コロナウイルス感染拡大の影響でピーク時に全国の書店約1300店が休業したことなどを憂慮し、日書連(矢幡秀治会長)と相談の上、特別定額給付金というべき支援金を1書店あたり5万円支給することを決めた。
支給の対象となるのは、全国の組合加盟書店約3000店。6月より手続きを開始する。日書連所属の45都道府県組合の了解を得た上で、約3000店の加盟書店に通知を発出し、加盟書店は入金口座等の情報を返信することでエントリーを行う仕組み。
事務手続きは日書連の全面的な協力を仰ぎ、送金事務は文化産業信用組合の支援を受け、送金準備の整った書店より随時支援金を支給していく。
書店は社会生活を維持するうえで必要として休業対象に含まれなかったため、特別な補償がない。一部書店で見られた「巣ごもり特需」での売上急増も一段落し、今も続くコロナ禍で将来も経営が存続できるかどうか、全国の書店の多くが不安な日々を送っている。同財団は書店に元気を与えたいと、今回の支援金の支給を決めたとしている。

組合加盟店にマスク100枚配布/出版社有志、取次の支援で実現

出版社有志と取次各社は新型コロナウイルス感染症の予防対策の一環として、1書店あたりマスク100枚(50枚×2箱)を配布する。対象となるのは日書連所属組合の加盟書店約3000店。取次経由で6月17日(首都圏基準)に届ける。
日書連は新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた中、書店の窮状について、物質的な支援や支払い猶予などを関係方面に呼びかけてきた。4月20日には要望書「緊急事態宣言を受けてのお願い」を日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会に提出している。
今回は、この呼びかけに応えた出版社有志と取次各社の支援で、組合加盟書店へのマスク配布が実現した。

万引防止研修用DVD/書店組合限定で割引販売/万防機構

全国万引犯罪防止機構(竹花豊理事長)は、万引防止研修用DVD「サービスで選ばれるお店を目指して―基本の徹底と明るい挨拶で不明ロスをなくそう―」(写真)を書店組合で7月末までに申し込んだ場合、1枚目のDVDを期間限定の割引価格で販売する企画を実施することを決定。これを受け、日書連指導教育委員会(鈴木喜重委員長)は5月29日、各書店商業組合に対し、組合加盟書店に案内の上、一括発注を検討するよう要請する案内状を送付した。
締切の7月末までに申し込むと、各都道府県組合の最初の1枚目は通常3万円(税抜)のところ2万5000円(税抜)で購入できる。さらに、『ロスプリベンションで未然に防ぐ小売業のロス対策入門』(中央経済社刊)が1冊同梱される。送料無料。送品先は各都道府県組合本部。
2枚目以降については、組合加盟書店から受注し、1枚目の発注と同時に組合加盟書店分と合わせて発注する。価格は3000円(税抜)。書籍は同梱されない。送品先は1枚目と合わせて各都道府県組合本部。
この企画は一括発注以外、また個別店への発送は行わない。
なお、DVD収録の動画を6月1日より1ヵ月間の期間限定で、YouTubeで無料公開している。
申し込み・問い合わせは同機構内・万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長まで。℡03(5280)6044電子メール