全国書店新聞
             

平成23年5月15日号

大震災被災地に義援金/サン・ジョルディフェスティバル名古屋

第26回目を迎えた「サン・ジョルディフェスティバル名古屋2011」が4月23日、24日の両日、名古屋市東区のOASIS21銀河の広場で開かれ、リサイクル本やバラのチャリティ販売、読み聞かせステージなど多彩なイベントが行われた。チャリティ販売の売上金は東日本大震災の被災地支援などのため寄付する。
同フェスティバルはサン・ジョルディ名古屋実行委員会、日本・カタルーニャ友好親善協会、愛知県書店商業組合、中日新聞社の主催で開かれ、2日間の来場者数は約2万人にのぼった。愛知県書店商業組合はイベントの目玉であるリサイクル本のチャリティ販売を実施した。読者から読み終えた本を寄贈してもらい、定価の2割以上で販売。売上金は東日本大震災の被災地支援や中日新聞社会事業団が行う各種福祉事業に役立てるよう寄託する。今回は1万5千冊が寄せられ、67万6301円を売上げた。同時に行われたバーゲン本販売の売上は21万8千円。
会場では絵本作家・宮西達也氏による縦2㍍×横4㍍の巨大絵本『おまえうまそうだな』の読み聞かせやサイン会、中学生はこれを読め・孫の日コーナー、自費出版相談、名古屋市教育委員会の図書館大使任命式などが行われた。
23日午後12時45分から行われた開会式で、主催者を代表して愛知組合・谷口正明理事長があいさつ。「平成7年の阪神淡路大震災から本のチャリティ販売を行っており、集まった義援金は累計1千万円を超えた。昨年はハイチ大地震の復興支援に30万円を送った。今回は東日本大震災の被災地に送る。リサイクル本を買うことで被災地の役に立つことができる。協力を」と呼び掛けた。また、サン・ジョルディの日発祥の地であるスペイン・カタルーニャ州政府が、4月23日のサン・ジョルディの日を「日本への連帯の日」としたことを紹介した。

応援メッセージ

地域に笑顔が戻る為には、活字の力を知るあなたが必要です。
株式会社ふたば書房
代表取締役洞本昌哉
二つの天災、二つ以上の大人災に遭われた皆様へ、お掛けする言葉はありません。命さえあれば、きっと又笑う日もある筈です。
有限会社王子書店
上田宏子

復興へ各団体が決意語る/「春の書店くじ」抽選会

第15回「春の書店くじ」抽選会が5月6日午後5時から東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で開かれ、特等賞「図書カード5万円分」をはじめ各賞の当選番号を決めた。
抽選会は日書連・杉山和雄増売委員の司会で進行。大橋信夫会長あいさつのあと、舩坂良雄増売委員長が経過報告を行い、「東日本大震災の被災書店を支援するため、日書連はいち早く義援金の受付を始め、出版界から広く寄付をいただいた。こういうときこそ組合の組織力を活かさねば。日書連の活動を通じて業界全体を健全にしたい。お客様に喜ばれる運動として、春と秋に書店くじを実施している。皆様からご協力をいただきながら頑張りたい」と話した。また、被災地の書店を代表して宮城組合・藤原直理事長が「商売を通じて地域の復興に貢献したい」と決意を語った。
このあと抽選を行い、抽選会出席者の中から日本出版インフラセンター・永井祥一事務局長ら5氏がボウガンの射手をつとめ、特等賞から4等賞までの当選番号を決定。日本雑誌協会・石崎孟理事長が「被災した皆様に心よりお見舞い申し上げる。こうした状況の中、例年通り書店くじ抽選会を実施した日書連に敬意と感謝の意を表する。難局を乗り切るため、書店、取次、出版社が力を合わせて頑張ろう」と祝辞を述べた。
続いて日本書籍出版協会・菊池明郎副理事長が「被災地の書店の頑張りに応えるため、出版社として強い気持ちで事業に当たりたい。日本経済を軌道に乗せることが被災地のためになる。本日を、下を向かず上を向いて復興に努力することを決意する場にしたい」と挨拶し、乾杯した。

東日本大震災義援金

日書連の「東北地方太平洋沖地震被災書店義援金」に、藤原印刷は4月25日に114万6595円、日本図書普及は同日に100万円、少年画報社は4月27日に100万円を寄付した。
(4月23日~5月6日)
藤原印刷、ウジサブロウ、日本図書普及、北海道書店商業組合、ウジショテン、徳間書店有志一同、和歌山県書店商業組合、ミナトカナエ、マサイコウゾウ、少年画報社、同学社、南江堂、ホンゴウテルコ、アジアの本の会、神奈川県書店商業組合、choai‐henko!、小学館、滋賀県書店商業組合、本屋の村有限責任事業組合、カワカキカズエ、サドシアイカワカトウシンジショテン、マルゴナカオショテン、東京都書店商業組合目黒・世田谷支部、ヒョウゴケンイノウエヨシ
(受付順、敬称略)
累計3166万2948円

ふみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

もう初夏の日差しです。大震災から2ヵ月が経ちます。多くの方が苦難の最中と存じますが、再始動をされた本屋さんのニュースを目にすると、少し嬉しくなります。
仙台の出版社「荒蝦夷」が東北ゆかりの作家たちのエッセイをまとめました。被災者ながら活動を継続しています。現在は山形に仮事務所を置いていますが、間もなく本拠地に戻れるそうです。
執筆者たちの故郷や居住地、土地の人々への愛着が吐露されています。共に生きる決意が滲み出ています。何度も落涙してしまいます。大災害に現代文明の大事故が重なり、広大な被災地のそれぞれに異なる被害があることを改めて知ります。文章を引用します。
「人は信じるに値する。そういう人が集まって体験や英知を持ちよれば、事態は少しずつでも必ず良くなっていく。……いましばらくの間は悲しみに暮れ、泣くだけ泣き、そして時々笑ったりすることのくり返しかもしれない。もしかするとこれから何年たっても涙がかわくことなどないのかもしれない。平凡な日常だけれど心が安まる風景を見られるようになるのもそう遠くないと信じたい」(註)
皆さんにも全文を読んでいただきたいと存じます。
いつものおバカ話に変わります。ブックフェアの取材を多くの新聞(関西)にしていただき、私の写真も載りました。コメントは別の人です。これまでも何回かありました。そう、私、しゃべりはダメです。アホがばれます。「どっちかというと(インテリかビジュアルかに分類しなければならないという苦渋&究極の選択で)ビジュアル系にしといてやろうか!?」と取材者が判断したのでしょう。そういえば、昔、「平野さんは海文堂で一番ジョン(有名音楽家)に似ている」と言われたことがあります。皆さんも好きな言葉を入れてください。何でもありです。「最速カバー掛け名人決定戦」とか、「あわて者世界一認定」とか、お店限定でナンバーワンごっこ、いかがでしょう。「美男」とか「スリム」とか、やめておきましょう。「遊び」の精神です。
皆さん連休はどう過ごされましたでしょう?私は仕事でした。当店は観光スポットに近い商店街ですので、普段とはお客さんが違います。海の本やグッズを喜んでくださる人や、児童書や直仕入の本を大量に買ってくださる人もいれば、コミックが少ないのに呆れる方もおられます。そういう店ですから仕方ありません。
「久しぶりに来た」というおじいさま、93歳とおっしゃいます。ヨーロッパの街の絵をご所望です。スケッチがお好きで手帖にも描いておられます。お見せした画集を喜んでくださり、夫人に「ええ本があった」とお話しながら帰られました。お見送りして、私の「本屋の喜び」が増えました。
出張販売が複数入り、店頭は人手不足のところに、バイト君が急用で休みます。昼食交代が少し遅くなりました。愛妻弁当だけが生きがいで仕事をしているのに、予定の時間に食べられない悔しさ、ご理解いただけますか。妻に愚痴をこぼしますと、
「どうせ遊んでるようなもんや、文句言いな!」
人間の出来が違います。凡人はバイト君に嫌味を言ってやろうと出勤日を心待ちにしています。
バイト君で思い出しました。当欄でもネタにしたOB君が帰省してきました。家を離れて苦労したかと思いきや、ますます肥えております。元気でなによりです。
(註)三浦明博「言葉に力はあるか」(仙台学vol.11東日本大震災荒蝦夷1050円)

フューチャー・ブックストア・フォーラムが発足

日本出版インフラセンター(JPO)は4月20日、経済産業省からの受託事業について検討する「フューチャー・ブックストア・フォーラム」の第1回会合を東京・神楽坂の日本出版会館で開催した。
この事業は、経産省が公募した「書籍等デジタル化推進事業(電子出版と紙の出版物のシナジーによる書店活性化事業)」に、JPOが代表提案者として応募し採択されたことを受けて行うもの。日書連、出版文化産業振興財団(JPIC)、本の学校、出版倉庫流通協議会が共同提案者として参加している。
「フューチャー・ブックストア・フォーラム」は事業全体を検討する委員会で、会長にJPICの肥田美代子理事長、副会長に東京電機大学出版局の植村八潮局長が就任。書店を通じた電子出版物と紙の出版物のシナジー効果を発揮する仕組みを構築するため、①ICT(情報通信技術)利活用ハイブリッド型書店、②地域におけるコミュニケーションセンターとしての書店の役割の強化、③ビジネスモデルの創出に向けた新業態――の3つを目指し、来年2月末まで調査研究と実証実験を行う。
フォーラムの下には次の5つのワーキンググループ(WG)を設置して詳細の検討を進める(カッコ内は各グループのリーダー)。①調査WG(JPIC・矢作孝志氏)、②ICT利活用ハイブリッド型書店研究WG(今井書店・田江泰彦氏)、③書店注文環境WG(出版倉庫流通協議会・山下信一氏)、④書店ビジョン研究WG(本の学校・星野渉氏)、⑤新業態研究WG(日本出版学会・永井祥一氏)。
同日行われた記者会見で、肥田会長は「この事業で本屋を元気に、夢のある業態にしたい」とあいさつ。植村副会長は「書店のリアルな空間が強く求められている一方、新規参入が稀な業態になっている現状がある。ICTを切り口に、新たな書店のビジョンが描けるのではないか」と述べた

中学生向け読書ガイドブックを発行/静岡県

静岡県教育委員会は、中学生版の読書ガイドブック『本とともだち』を発行、4月に県内の新中学1年生全員に配布した。
このガイドブックは、生徒が本に親しむきっかけとなることを意図して発行したもので、静岡県書店商業組合も約2年前から準備に加わっていた。ガイドブックに合わせ、先生を対象とした『本とともだち(中学生版)の手引き』も作成し、学校での読書指導に活用される。
ガイドブックには、図書館の活用方法、読書会やブックトークなど読書を楽しむ活動、調べ学習の進め方、読書記録など、中学校等での読書活動の指針となる情報を掲載。また、中学生から高校生の時期に勧める96冊の本を、「夢中になれる本」「気持ちが楽になる本」など8ジャンルに分けて紹介している。
静岡組合は、特製の本の帯200セットとPOPを作成、書店店頭に『本とともだち』掲載本の特設コーナーを設けて販売するなどの活動を行う。教育委員会では、ブックガイドを県ホームページ内の「読書県しずおかBOOKサイト」に掲載するほか、関係各方面に広報活動を実施。公立図書館でブックガイド掲載本を展示するなど、本との出会いの場を増やす取り組みを協力して行う。

「読書週間」ポスターのイラスト募集/読進協

読書推進運動協議会では2011年・第65回「読書週間」ポスター用のイラストを募集している。
読書週間のポスターは全国の小・中・高等学校、公共図書館、書店等に掲出されるもので、大賞を受賞したイラストがポスターの図柄に採用される。また各種雑誌に掲載する読書週間のPR広告にも使用する。大賞には賞状と賞金10万円を贈るほか、優秀賞3名に賞金1万円、入選10名前後に記念品の図書カードを贈呈する。イラスト募集は今年で15年目で、読進協では美術・デザイン系の大学・短大・各種学校や画材店等に要項を配布するなど、この企画を読書週間の標語募集と並んで普及活動の一環として位置づけている。
応募要項の詳細は読進協「読書週間ポスターイラスト係」(℡03―3260―3071)またはホームページ(http://www.dokusyo.or.jp/)へ。

北から南から

◆茨城県書店商業組合第25回通常総会
6月25日(土)午後1時から、茨城県開発公社会議室で開催。

救援金として1億円を拠出/講談社

講談社は、東日本大震災に関しこれまで取り組んでいる支援活動を発表した。
図書寄贈では、書協・雑協・出版クラブの3団体で設立した〈大震災〉出版対策本部を通して、コミック、児童書、絵本を中心にさまざまなジャンルの書籍を4万冊以上、年齢構成を考慮してセットを組み被災地の避難所に届けている。
震災の影響で読者に届けられなかったコミック誌に関しては、4月末まで「講談社コミックプラス」のホームページで無料公開を実施。このほか、講談社ブルーバックス『日本の原子力施設全データ』(北村行孝・三島勇著)も一部を無料公開した。
読者や寄稿家から講談社救援金口座に振り込まれた救援金は、社内に設置した募金箱の志と合わせて、4月22日までに4600万円が集まった。また、講談社はグループ企業とともに救援金として総額1億円を拠出することとし、これらを合わせて被災各県の震災寄付窓口に寄付した。

人事

☆ポプラ社グループ
4月1日付でグループの新経営体制を発表した。◎昇任。
1.ポプラ社
代表取締役社長〔編集局長〕坂井宏先
専務取締役〔宣伝・コンテンツ事業局長〕奥村傳
取締役〔ポプラディアネット推進部長〕飯田建
同〔総務管理局長〕
長谷川均
監査役蜂須優二
上席執行役員〔販売局長〕
遠藤正夫
同〔編集局一般書編集部編集部長〕野村浩介
同〔販売局副局長兼販売促進部長〕田中俊彦
同〔編集局児童書編集部長〕小原解子
同〔海外事業局長(北京蒲蒲蘭文化発展有限公司董事長)兼編集局ポプラディアネット部副部長〕
東谷典尚
執行役員〔販売局販売総務部長〕笠井信寿
同〔業務局製作部長〕
武井隆明
同〔販売局一般書企画部長〕近藤隆史
同〔販売局名古屋出張所長〕西山朋光
同〔業務局長兼入間物流センター長〕岳野保
同〔編集局一般書編集部編集部長〕碇耕一
同〔総務管理局総務部長兼宣伝・コンテンツ事業局電子書籍部長〕乙部雅志
同(北京蒲蒲蘭文化発展有限公司総経理)石川郁子
同〔販売局児童書企画部長〕池田紀子
※小沼保衛取締役副社長は非常勤相談役、白土育代取締役は販売局顧問、井澤みよ子上席執行役員は編集局顧問に就任。
2.ジャイブ
代表取締役社長
奥村傳
取締役佐藤秀
同崎山貴弘
同近藤隆史
同長谷川均
監査役蜂須優二
3.そうえん社
代表取締役社長
◎福島清
取締役遠藤正夫
同田中俊彦
監査役蜂須優二
※矢ヶ部博代表取締役社長は退任。
4.北京蒲蒲蘭文化発展有限公司
董事長東谷典尚
董事・総経理石川郁子
編集部長中西文紀子
営業部長北村明

日書連のうごき

4月1日NHK出版創立80周年記念式典に大橋会長が出席。
4月5日第3回メディアコンテンツ実証実験部会と大震災出版対策本部運営委員会に大川専務理事が出席。東京書籍元社長鈴木和夫氏お別れの会に大橋会長が出席。
4月6日「本の学校」東京運営委員会に石井事務局次長が出席。東北地方太平洋沖地震日書連対策本部。
4月12日大震災出版対策本部運営委員会に大川専務理事が出席。学校図書館整備推進会議運営委員会に石井事務局次長が出席。
4月13日JPO運営委員会に柴﨑副会長が出席。
4月19日RFID実証実験・紀伊國屋書店新宿南店でのデモに大川専務理事が出席。
4月20日各種委員会(取引改善、拡大地震対策本部、拡大政策、広報、情報化推進)。九州雑誌センター第4回取締役会に大橋会長が出席。
4月21日定例理事会。第2回ISBNマネジメント委員会に藤原、柴﨑両副会長が出席。
4月22日「ためほんくん」協力出版社との意見交換会。公取協月例懇談会に影山公取協専務理事が出席。
4月25日雑協・雑公協懇親パーティーに大橋会長が出席。
4月28日文化産業信用組合理事会に大橋会長が出席。

被災者を文化的側面から支援/CCC、日販、MPDが共同で

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と日販、MPDは、東日本大震災の被災者に文化的支援を行う「こころ+プロジェクト」を実施している。
このプロジェクトは、避難所での生活を余儀なくされている被災者への文化的支援として、以下の支援品を宮城県、岩手県の避難所100ヵ所に届けるもの。TSUTAYA加盟企業各社、映像メーカー、出版社、日本ユニセフ協会、厚生労働省、JX日鉱日石エネルギー、ドトールコーヒーの各企業・団体・行政機関より、支援品の提供等の協力を得て実施する。品物は4月26日より順次各避難所に届けている。
▽エンタテインメントに関する支援品=テレビ800台、DVD8700枚、書籍8万2722冊、雑誌1万5279冊
▽その他の支援品=ドリップコーヒー1万5000杯、アイマスク2000個、耳栓1万ペア、ハンドクリーム5000個、リップクリーム1万個

被災地へ義援金3千万円を寄付/漫画家の福本伸行氏

講談社『ヤングマガジン』で「賭博堕天録カイジ和也編」を連載中の漫画家・福本伸行氏が、東日本大震災被災地への義援金として3千万円を講談社の救援募金口座に預託した。この預託金は被災各県の義援金として寄付される。ヤングマガジンの公式サイトでは、福本氏による応援メッセージを公開している。

本屋のうちそと

現在、面陳にしている絵本がある。「世界中のこどもたちが」篠木眞・写真新沢としひこ・詞(ポプラ社)。―世界中のこどもたちがいちどにわらったら、空もわらうだろう。海もわらうだろう。―自然の中で遊ぶ子どもたちの笑顔、涙、きらきら輝く瞳。彼らの未来のために現在がある。それを守るために大人は何をしてきたのか、何をしようとしているのか。問いかけられている。
この大震災・原発事故の中で思い出し、読み返そうと思った絵本がある。
レイモンド・ブリッグズ・作「風が吹くとき」(あすなろ書房)。当初は篠崎書林。東西冷戦が顕著でベルリンの壁が永遠に存在するものと思われていた1982年に発売された。核戦争の脅威の下、ロンドンから遠く離れた田舎の一軒家に住む老夫婦ジムとヒルダ。政府広報を参考にドアを立てかけた簡易核シェルターなどの準備を進める中、ミサイル攻撃で被爆する。彼独特の漫画のコマ割りの手法により、平凡な市民の二人の日常的な会話で核戦争後の数日間が描かれる。
そしてもう一冊、第12回日本絵本賞の「ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸」(集英社)。
アメリカ美術の巨匠ベン・シャーンが、1954年ビキニ環礁で行われた水爆実験の危険水域外で被爆した第五福竜丸の乗組員を主人公にした連作(LuckyDragonSeries)に、アメリカ生まれの日本語詩人アーサー・ビナードが文、構成を担当した絵本。
その後際限なく行われた核実験に対し、いっぺんに何百万人も殺せる爆弾をいったいどこで使おうというのか。ビキニの海も日本の海もアメリカの海も全部つながっていることを訴える、「ここが家だ」と。もしも、放射能に色がついていたなら、人々の意識はもっと早く目覚めるのでは。本屋の僕はこの2冊をレジに置く。
(理)