全国書店新聞
             

令和5年7月1日号

BOOKMEETSNEXT2023/京都で「ブックサミット」開催へ/「読書週間」「本の日」など各事業と連携して展開

出版業界が一丸となって取り組む読書推進キャンペーン「本との新しい出会い、はじまる。BOOKMEETSNEXT2023」(主催=同運営委員会)が、10月27日~11月23日の「秋の読書推進月間」をメイン事業に今秋も開催される。東京でオープニングイベントを行うほか、11月にはメインイベントとして「KYOTOBOOKSUMMIT」(京都ブックサミット)を開催する。期間中は、本好きだけでなく今まで本に興味がなかった人にも本と出会う機会を創出し、地域・帳合の区別なく全国の書店が横断的に参加する企画を実施する。
「BOOKMEETSNEXT2023」は、読書推進運動協議会(読進協)、日本図書普及、出版文化産業振興財団(JPIC)、「本の日」実行委員会で構成する運営委員会(高井昌史委員長、紀伊國屋書店)が主催。実行委員長をJPIC・近藤敏貴理事長(トーハン)が務め、JPICを事務局として日書連、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会が協力する。
運営委員会は6月2日、東京・千代田区の文化産業信用組合で企画説明会を開催、オンラインを合わせて約360名が出席した。
冒頭であいさつした近藤実行委員長は、「今年度は業界一丸となったキャンペーンとしてさらにパワーアップしたい。今回は、SARTRAS(サートラス=一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)から助成金が出ることも決まり、これも活かしてより大きなイベントにしていきたい。一番重要なのは、出版社にご協力いただく書店店頭企画だ。いくらイベントが盛り上がっても書店の店頭売上が上がらなければ意味がない。ぜひ素晴らしい企画のご提案をお願いする」と述べた。
続いてJPICの松木修一専務理事が、6月2日時点での全体企画案を説明した。
メイン事業となる「秋の読書推進月間」は、10月27日から11月23日まで開催。「読書週間」(10月27日~11月9日、読進協)、「本の日」(11月1日、「本の日」実行委員会)、「街に本屋があるということ木曜日は本曜日(予定)」(東京都書店商業組合)、「韓国書店の日(予定)」(11月11日、韓国出版文化産業振興院)など各団体の企画と連携する。東京組合が運営するYouTubeチャンネルを活用した企画を検討。JPICが国際業務交流協約を締結した韓国との提携イベントを計画している。これらの企画や全国各地の読書推進事業と合わせ、地域・帳合の区別なく全国の書店が横断的に参加するキャンペーンを展開する。
今回は、出版業界の中堅・若手を中心としたプロジェクトチームを組織する。メンバーを10名程度募集し、それに大学生を加えて、これまでの出版業界の常識に囚われない新たなアイデアを実行するとした。
メインイベントと位置付けるのは、11月8日~9日に京都で開催する「KYOTOBOOKSUMMIT」(京都ブックサミット)。「本に興味がない人も絶対本が好きになる機会にする」ことを目的に、産・官・学が協力したイベントを実施する。「TOKYORIGHTSMEETING」(東京版権説明会)や業界イベントと連携し、日本と世界の出版社が京都に一堂に会するイベントとする。記念講演会や、関西版権説明会、シンポジウムの開催などを検討している。
KYOTOBOOKSUMMITについて、「本の日」実行委員会の大垣守弘財務委員長(京都・大垣書店)は「私が担当になり、京都市の協力も得ながら会場を探している。京都に来てよかったと思ってもらえる企画にしたい。内容については皆様からお知恵をいただくとともに、京都の大学に通う学生にも意見を取りまとめてもらっているところだ。若い方の新しい発想で考えてもらい、プロジェクトチームで良い企画ができればと思っている」と述べた。
「秋の読書推進月間」のメインスケジュールは次の通り。▽10月27日=オープニングイベント(東京)▽11月1日~2日=本の日、TOKYORIGHTSMEETING(浅草)▽11月3日~4日=連携ブックマルシェ(名古屋)▽11月7日(予定)=BOOKEXPO(大阪)▽11月8日~9日=KYOTOBOOKSUMMIT(京都)▽11月11日=書店の日(韓国)
期間中は、全国の書店で来店を促すイベントを開催する。「読書週間×秋の読者還元祭×スタンプラリー(仮称)」として連携した店頭施策を検討している。ブックカバー大賞の一般公募を行い、参加書店で受賞作のブックカバーを配布する。「本」を主題とした映画とのタイアップ企画も進行中。出版社10社程度が企画して有名作家の店頭飾り付けコンクールを開催、優秀店では後日著者サイン会を実施する。書店が開催するイベントについて助成金獲得企画を募集。また出版社が書店店頭で実施する企画を募集する。

JPIC読書アドバイザー養成講座/9月開講、受講生を募集

出版文化産業振興財団(JPIC)は第30期JPIC読書アドバイザー養成講座の受講生を募集している。日書連など出版関係主要団体が後援。
今回はテキスト・カリキュラムを一新し、様々な分野の第一人者である講師陣の下、スクーリングとレポートで読書や出版について体系的に学ぶ。応募締切は7月17日。9月23日開講。詳細はJPICホームページで(https://www.jpic.or.jp/)。

「秋の読者還元祭2023」実施要項

▽名称 日書連主催「秋の読者還元祭2023」
▽期間 10月27日(金)より11月23日(木)まで受付(28日間)〈「BOOK MEETS NEXT」と同期間〉
▽対象書店 日書連傘下組合加盟書店及び図書カードリーダー端末設置書店、その他全国の希望する書店
▽実施方法 期間中に来店したお客様、外商先などにキャンペーンサイトを案内。参加にはお客様自身による専用サイトへの応募が必要
▽販促物 日本図書普及の定期案内物にキャンペーンポスターを同送
①応募用ポスター2種(A2/A3サイズ)各1部(10月下旬店着予定)
②「キャンペーンしおり」 1束(500枚)3630円(税込)で頒布。書籍、雑誌を購入したお客様(税込500円を目安)に進呈。
「しおり」と「ポスター」のQRコードは同じ応募サイトへ誘導
▽申込方法 「しおり」は自主申込制。注文書に申込セット数と実施書店名を記入の上、所属の都道府県組合宛にFAXで申し込む。申込締切は8月15日(火)
▽納品と請求方法 取引取次経由で10月中旬に納品。代金は取引取次より請求
▽賞品 総額300万円
・図書カードネットギフト1万円  100本
・同3千円            200本
・同1千円           1400本
当選者には日本図書普及より直接、図書カードネットギフトメールを12月下旬頃送信の予定
▽報奨金 「しおり」を有料購入して応募者を150件以上集めた組合加盟書店に報奨金2860円(税込)を支給(支給する報奨金は購入数に関わらず2860円(税込)とする)
▽その他 販促活動への助成として、組合加盟書店に「しおり」20枚を無料進呈。キャンペーン開始までに全店に直送

地域に密着して歩む書店に/沖縄組合総会で小橋川理事長/書店議連の動向を注視

沖縄県書店商業組合は5月22日、那覇市の組合会議室で第35回通常総会を開催し、組合員26名(委任状含む)が出席した。
総会は竹田祐規事務局長の司会進行で始まり、小橋川篤夫理事長があいさつ。ロシアによるウクライナ侵攻など不安定な社会情勢の中、日常生活では様々な物品の大幅な値上げが度重なり、組合員の経営環境は厳しさを増していると指摘して、「全国的に書店数の減少に歯止めがかからないが、沖縄においても例外ではない。書店がない地域が多く存在する中で、活字文化を守るという書店の使命を考えると、いかに地域と密着して歩んでいくかが大切になってくるように思う。『街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟』においても、その視点に立った様々な提言がなされることとなっており、今後の動向を注視したい」と述べた。
また、昨年11月に長崎県で開催された第74回中小企業団体全国大会において優良組合として表彰を受けたことに触れ、日々の組合事業運営への協力に対し、組合員へ感謝を述べた。
続いて小橋川理事長を議長に議案審議に入り、令和4年度事業報告、収支決算報告、令和5年度事業計画案、収支予算案など、第1号議案から第5号議案まで全ての議案を原案通り承認可決した。
令和5年度の取り組みとして、①返品事業維持に向けた調査・研究。②雑誌・書籍の発売日短縮に向けてのさらなる改善の継続。③書店活性化に向けた取り組み。④新規組合員の加入促進・研究。⑤日書連が取り組んでいる「書店の粗利益拡大」の早期実現に対して当組合も昨年同様に協力していく――と提案した。
最後に大城行治副理事長が閉会のあいさつを行い、散会となった。
(竹田祐規広報委員)

コロナ後見据え組合活動に協力求める/群馬組合通常総会で竹内理事長

群馬県書店商業組合は5月23日、高崎市の群馬県教科書販売会議室で第36回通常総会を開催し、組合員28名(委任状を含む)が出席した。今回も新型コロナウイルス感染症防止対策のため縮小開催となった。
総会は、議長に竹内靖博理事長(シロキヤ)を選任して議案審議に入り、令和4年度事業報告・決算報告、監査報告、令和5年度事業計画案・予算案などを審議し、原案通り承認可決した。
竹内理事長は開会のあいさつで、「コロナ禍も落ち着いてきたが、生活の中で思いもよらぬことが起こるのは今に始まった話ではない」と備えの姿勢の大切さを訴え、引き続き組合活動にご協力をお願いすると述べた。
また竹内理事長は、自身がアフリカのレソト王国の名誉領事に任命されたことについて紹介。知人が同国大使館で秘書官として働いており、地域で書店を経営しつつ社会貢献活動を行ってきた信頼性から、名誉領事就任を要請されたもので、桐生市のシロキヤ社内に領事館が設置されている。竹内理事長は「元英領なので公用語は英語。レソトの若者が我が町に来て英語の教師になってくれたらと心待ちにしている」と話した。(鹿沼中広報委員)

奈良理事長以下全役員を重任/物価高による経営環境悪化を懸念/埼玉県組合第39回通常総会

埼玉県書店商業組合は5月24日、さいたま市浦和区の埼玉書籍で第39回通常総会を開催、組合員77名(委任状含む)が出席した。
総会は江原宏信事務局長の司会で進行。奈良俊一理事長(ならいち)はあいさつで、「ようやく日常が戻ってきた感があるが、諸物価の上昇が相次ぎ、書店経営の現状はまだまだ厳しいものがある」として、本年も組合員一同力を合わせ乗り切っていきたいと述べた。
続いて来賓の埼玉県中小企業団体中央会・政策推進部主査の斎藤洋輔氏よりあいさつが行われた。
水野兼太郎常任理事(水野書店)を議長に議案審議を行い、令和4年度事業報告・収支決算報告、監査報告、令和5年度事業計画・収支予算案を原案通り承認可決した。
任期満了による役員選挙については、高野隆選挙委員長より、県組合は2期4年の任期が原則であるが、コロナ禍で活動不十分なこともあり現行役員全員の重任が望ましいと報告があり、全役員の重任を承認可決し、奈良理事長以下正副理事長等を再任した。
閉会後、来賓の日販首都圏営業部第三支店長・林貴実恵氏、トーハン関東支店長・澤野正路氏からあいさつがあり、3年ぶりの懇親会が開催された。
(水野兼太郎広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「最近のキーワードに思うこと」/京都・宮脇書店亀岡店 代表取締役・服部義彌

最近のニュース、いやここ数年ずっと言われているキーワードについていろいろ思うことを書いてみたいと思います。最初に断っておきますが、私はどれに賛成でどれに反対とかいうつもりでも、どれが正しくどれが間違いとかいうつもりでもありません。でもなんか世の中のバランスの悪さを感じます。
一つ目は人手不足とデジタル化です。これはよくよく聞いてみると、コロナ禍で事業を縮小し人員を減らした分が、事業が元に戻ってきて足りなくなっている感じです。出て行った人がすぐに帰ってくることは少なく、それだけのスキルや経験を持つ人が足りないということの様です。一方で7割ぐらいの仕事はAIに置き換わってしまう。DXなんてことも言われます。今、人材不足を大きく叫んでも、ここ数年とか10年ぐらいの間にデジタル化がまた一歩進化すれば、今度は就職難ってことになるんじゃないのかなと思います。スマホの出現で世の中が大きく変わったのはここ10年ぐらいですからありえない話ではありません。
次は少子高齢化と女性活躍社会です。もちろん男女は平等だし、家事も育児も分担するか、なんなら男性がすべて行ったっていいと思います。しかし、子どもを産めるのは女性だけです。女性が活躍する社会での出生率向上は、金銭的に安心すれば実現するのでしょうか。
聞こえのいい方ばかりを取り上げないでバランスよくしないとうまく行かないと思いました。「異次元の」とか言葉遊びは要りません。

安部悟理事長が続投/絵本イベントなど読書活動を展開/福井総会

福井県書店商業組合(安部悟理事長)は5月29日に芦原温泉の灰屋で第41回通常総会を開催し、組合員25名(委任状を含む)が出席した。
総会は京藤敏実副理事長(ひしだい書店)の司会で進行。安部悟理事長(安部書店)は、年々減少している組合書店の現状について、コロナ禍での売上げ減少、ロシアのウクライナ侵攻の影響による物価高騰、労働条件の変化により、書店経営者には厳しいものになっていると分析。福井組合の活動では、福井市のショッピングセンターエルパで絵本イベント「親子で楽しむ絵本の世界」を開催したこと、「福井県子どもの本の帯コンクール」への協賛など、読書推進活動の取り組みを報告した。
勝木伸俊理事(勝木書店)を議長に議事に入り、事業、決算及び決算案等の各議案を承認可決。最後に任期満了に伴う役員改選を行い、安部理事長の続投と、京藤副理事長、清水祥三副理事長(じっぷじっぷ)、現理事・監事の留任を決定した。
安部理事長は再任のあいさつの中で、組合へのさらなる協力と日書連各種事業への参加を呼び掛けた。最後に来賓のトーハン北陸支店・川本克則支店長、日本出版販売北陸支店・浜谷雅一係長、聖教新聞社関西支社・新井正人副支社長、福井支局・河上和浩支局長の紹介とあいさつが行われた。(清水祥三広報委員)

2022年ムック市場、3・4%減の519億円/巣ごもり終息で旅行ガイドが回復/出版科研調べ

出版科学研究所発行の『出版月報』2023年3月号は「ムック市場2022」を特集。22年のムック(ムック扱いの廉価軽装版コミックスを除く)の推定販売金額は前年比3・4%減の519億円。新刊点数は同5・3%減少し5729点となった。
ムックの推定販売金額は、新型コロナウイルス感染症が拡大した20年に、同14・9%減と過去最大の落ち込みを記録。コロナ禍3年目の22年は、巣ごもりが終息し外向き消費にシフトするなか、ムックで最も大きなシェアを占める旅行ガイドなどが上向き、同3・4%減の519億円と小幅の減少にとどまった。しかし長期的には減少傾向に歯止めがかからず、12年連続のマイナスとなった。
推定発行部数は同10・2%減の1億974万冊と2桁の大幅減。推定発行金額は、平均価格が同4・8%(43円)増の944円と大きく上昇したため、同5・9%減の1036億円となった。
返品率は、同1・3ポイント改善して49・9%となり、8年ぶりに50%を下回った。
新刊点数は、同5・3%(319点)減の5729点で9年連続のマイナスとなり、ピークの14年から4割程度減少した。販売金額のピークである97年と新刊点数は同様の水準となったが、販売金額は97年の4割程度にとどまる。児童部門、大衆部門の減少が特に大きく、講談社の児童向けムック、ぴあムックの地域ガイド、アダルトやペット関連などが減少した。
出版社別の新刊点数上位をみると、宝島社が327点で22年の最多点数となった。宝島社は、18年に「別冊宝島」が大幅減、19年は「e‐MOOK」シリーズがマルチメディア扱いへ移行するなど点数を大きく減らしていたが、横ばいから上昇に転じ、22年は前年比47点増加した。料理レシピムックや生活関連、シニア世代向け、様々な企業とコラボしたファンブックなど、多様なジャンルで刊行を増やしたほか、前年にはなかったYouTuber関連も刊行した。
ここ数年点数トップだった講談社は、ディズニーの絵本など児童向けムックを大幅に減らし、同101点減の197点となった。実話系、アダルト系、パズル関連が主体の大洋図書は同16点減の232点。生活用品や家電・ガジェットなどの比較テスト情報誌が中心でパズル関連も刊行する晋遊舎は同10点減の228点。手芸・ソーイング関連を刊行するブティック社は16点増の202点だった。旅行ガイドを刊行するJTBパブリッシングは、20年、21年は減少したが、22年は同19点増の187点まで回復。一方、昭文社は同41点減の103点。「まっぷる」が約20点減少したほか、前年あった絶景ガイドやコラボムックが刊行されなかった。また、生活情報が中心の扶桑社は同12点増の163点、模型関連中心のホビージャパンが同27点増の108点と、ともに3年連続増加した。
上位30社が占める割合は同2・2ポイント増の67・9%。ここ数年は全体の3分の2程度で推移する。

都中央会の支援事業を受託/謎解きイベント、デジタルサイネージ展開/東京組合

東京都書店商業組合は6月2日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
東京都中小企業団体中央会の令和5年度中小企業組合等新戦略支援事業に係る特別支援「デジタル技術活用による業界活性化プロジェクト」について企画提案が選定されたと報告。プロジェクトの実施と、実施にあたる特別委員会の名称を「謎解き・デジタルサイネージ特別委員会」とし、特別委員17名を選任、プロジェクトの進行・決定の権限を同特別委員会に一任することを諮り、それぞれ承認した。プロジェクトでは、本屋を回遊する謎解きイベントの実施とデジタルサイネージ活用による書店活性化に取り組む方針。
事業・増売委員会では、NHK出版「100分de名著ブックス・フェア」について仏教哲学書6タイトルのセットを特別増売企画として販売に取り組むことを諮り、承認した。また、西日本出版社『写真集関東大震災』『一高生が見た関東大震災現代語訳大震の日』についても特別増売企画として取り組むことを承認した。
矢幡秀治理事長体制3期目のグループ別委員会編成を次の通り決めた。
▽Aグループ(担当=平井久朗副理事長)組織委員会委員長=山邊真次常務理事、事業・増売委員会委員長=井之上健浩常務理事
▽Bグループ(担当=小川頼之副理事長)指導・調査委員会委員長=田中久隆理事、厚生・倫理委員会委員長=秋葉良成常務理事
▽Cグループ(担当=柴﨑繁副理事長)共同受注・デジタル委員会委員長=田中紀光常務理事、再販・発売日・取引改善委員会委員長=澁谷眞常務理事

SJの日キャンペーンの抽選会実施/奈良組合理事会

奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)は5月24日、大和郡山市のディーズブックで、第4回理事会を開催した。
開会にあたり、林田理事長は「世の中は何もかも変わってきた。書店だけ変わらないわけにはいかない。発想を変え、さまざまなことをして本業を守っていこう」とあいさつした。
このあと、4月8日から5月14日まで実施した「サン・ジョルディの日」キャンペーンの抽選会を行い、バラのオブジェ(プリザーブドフラワー)10名、500円図書カード200名の当選者を決めた。
賦課金算定委員会では、5年度賦課金の店舗別ランク付けの審議を進めた。
次回理事会は7月12日に開き、8月3日開催の総会に提出する議案の審議等を行う。(靍井忠義広報委員)

JPIC「事業再構築補助金」セミナー/事業計画策定のポイント

出版文化産業振興財団(JPIC)は5月25日、東京・千代田区の文化産業信用組合本店で「事業再構築補助金」の応募要領についてセミナーを開催(日書連、日本書籍出版協会共催)した。事業再構築補助金は第10回公募から新たに「産業構造転換枠」が追加され、対象業種に「出版業(電子出版のみの事業者は除く)及び書籍・雑誌小売業」を指定。産業構造転換枠は補助金額や補助率も充実し、対象業種に指定された書店や出版社にとって大きなチャンスとなることをアピールした。当日、補助金の認定支援機関である三菱UFJリサーチ&コンサルティングの畦地裕氏が行った講演と配布資料をもとに、補助金の概要と事業計画策定のポイントを紹介する(編集部)。
〔「産業構造転換枠」対象業種に出版・書店/補助金額・補助率など優遇〕
中小企業庁が公募する事業再構築補助金は、業態転換に取り組む中小企業・中堅企業を対象とした補助金施策で、令和3年度から始まった。
第9回まではコロナで疲弊した企業を救うことに主眼が置かれ、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換が主要要件となっていたが、第10回は物価高騰及び雇用・賃金対策が全面に押し出され、新市場進出・事業転換・業種転換が主要要件となるなど、大きく内容が変わっている。
第10回から新たに加わった「産業構造転換枠」は事業再構築補助金の類型の一つで、国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業者・業態の事業者に対し、補助率を引き上げる等により重点的に支援するもの。現在の主たる事業が過去または今後のいずれか10年間で市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属する企業が対象で、業界団体が要件を満たすことについて示した場合、指定業種として指定される。「出版業(電子出版のみの事業者は除く)及び書籍・雑誌小売業」はすでに指定業種の一つとなっており、書店は特別枠である産業構造転換枠での申請が可能だ。
産業構造転換枠の補助上限額は従業員規模により異なり、2000万円(従業員20人以下)、4000万円(21~50人)、5000万円(51~100人)、7000万円(101人以上)。廃業を伴う場合は廃業費として最大2000万円が上乗せされる。
補助率は中小企業であれば3分の2、中堅企業であれば2分の1。3000万円使った場合、補助率が3分の2だと2000万円、2分の1だと1500万円が補助される。
対象となる経費は建物費、設備費、システム購入費、外注費、研修費、技術導入費、広告宣伝費・販売促進費など幅広く認められている。パソコンやタブレット、公道を走る車両など汎用性の高いものは対象外となっている。
建物費に関して、新築については理由書を提出して必要性が認められた場合に限るが、改修の場合は問題ない。例えば書店を改修して一部カフェにするなどの改修費は無条件に認められる。建物費が出る補助金は非常に珍しく、大きな特徴と言える。
〔新製品・サービスを新市場に/右肩上がり「バラ色の計画」作る〕
事業再構築補助金を申請するためには、①事業再構築要件、②認定支援機関要件、③付加価値額要件――の3つをクリアしなければならない。
事業再構築要件は、事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であることを示さなければならない。書店を頑張って伸ばすというのでは認めてもらえない。本業の書店以外で新しいことにチャレンジすることが必要だ。
認定支援機関要件は、事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定すること。取引先の金融機関に依頼して認定支援機関になってもらえばいい。
付加価値額要件は、補助事業終了後3~5年で付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年率平均3・0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3・0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。新しいことにチャレンジし、右肩上がりの事業計画を作らなければいけない。平たく言うと「バラ色の計画を作る」ということだ。
事業再構築補助金が求める「事業再構築」とは、経済産業省の「事業再構築指針」で「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」「業種転換」「事業再編」または「国内回帰」の5つを指すが、実質的には新市場進出、事業転換、業種転換の3つになる。
共通する必須要件は、新製品・新サービスを投入し、新市場に進出すること。今まで学生街で書籍を販売していたが、主婦層をターゲットにしたカフェを併設するというのは、新しいサービスを新しい市場に出すということだ。
もう一つの要件は、補助事業終了から3~5年後、新製品・新サービスの売上高がその企業の総売上高の10%以上を占める計画(新分野展開、業態転換)であったり、新製品の属する事業・業種がその企業において売上構成比で最大になる計画(事業転換、業種転換)でなければならない。総売上高が10億円の場合、新製品・新サービスが3~5年以内で1億円にする計画にしなければならない。
何よりも気にしなければならないのは、まったく新しいサービスにまったく新しくチャレンジするということ。過去にやった実績がないということが重要だ。
〔本業以外の大胆なチャレンジ評価〕
事業計画策定にあたっては、審査項目(事業化点、再構築点、政策点)すべてを網羅した内容が書かれていなければならない。
該当する審査項目の内容には、小見出しなどをつけて分かりやすく整理することも重要だ。事業計画は非常に多くのことが書かれているため、審査員が審査項目に該当する内容を探すのは容易ではない。もし必要な箇所を審査員が見つけられなければ採点できず、一つでも採点で0点になれば不採択になってしまう。
審査員は出版分野の専門家ではないので、専門用語が分からないことも注意したい。事業計画に専門用語や業界用語が多いと、審査員が内容を理解できずに不採択になる。難しい専門用語は並べず、分かりやすく図表やイラスト、写真などを入れることも必要だ。
現在の事業は小さく見せたほうがいい。審査項目の「再構築点」では、いかに既存事業から大胆に新たな事業にチャレンジするかが評価される。そのためには、極端な話として、既存事業は一般的な平凡な事業をしていると見せたほうが得策と言える。
公募用紙の書式は応募のハードルを下げるために非常にシンプルになっているが、そのまま書いていくと、どこに審査項目に該当する内容が書いてあるのか分かりにくい事業計画になってしまう。前述したように、審査項目の内容に沿った小見出しをつけて、審査員が容易に審査できる事業計画にする工夫が必要だ。
そして、必ず政策のトレンドを理解して記入するようにする。国の政策担当者が税金を投入して支援したくなるような取り組みでなければならない。国が今、力を入れている成長分野、具体的にはデジタル技術の活用、低炭素技術の活用などを通じて我が国の経済成長を牽引し得る計画であることなどを記入するといいだろう。また、ポストコロナの補助金だから、コロナ後の事業環境の変化や物価高騰などによる影響を乗り越えてV字回復するため、有効な投資内容となっている計画であることなどを記入してもよい。
事業計画には「バラ色の計画」「チャレンジングな計画」を書く。そして、①現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、②事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)、③事業再構築後の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法、④実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値額増加を含む)――を必ず入れてほしい。少なくとも「自社の強みや経営資源を活かしているか」「事業再構築指針に沿っているか」「付加価値額が年率3%以上向上するような収益性の高い取り組みであるか」は、審査されるため必ず記入する必要がある。
第10回公募の締切は6月30日とすでに終了しているが、年度内にあと2回予定される公募に備えたい。

セミナー当日のアーカイブ動画と配布資料を、次のURLで公開している。配信期限は7月31日(月)いっぱいまで。
https://www.youtube.com/watch?v=7FN77CzP4xA

減収増益で黒字転換/取次事業は10億円超の赤字に/トーハン決算

トーハンは5月31日、2022年度決算(22年4月1日~23年3月31日)を発表した。単体・連結とも減収増益で黒字に転換した。単体の取次事業は10億円を超える赤字となったが、不動産事業の好調などで経常黒字を確保。前年に投資有価証券評価損と旧本社などの固定資産除却損を特別損失に計上したため、当期純利益は大幅な増益になった。
単体売上高は前年比6・2%減の3768億1100万円、営業損失は4億8500万円(前年は6800万円の利益)、経常利益は同27・5%減の6億700万円、当期純利益は8億2300万円(前年は17億2900万円の損失)。
単体の事業別経常損益では、取次事業が10億4500万円の損失となり、前期から赤字が5億6900万円拡大した。不動産事業は前期から3億2700万円プラスして17億4700万円の黒字。フィットネスとコワーキングスペースの新規事業は9500万円の損失となったが、前期から1200万円改善している。
同日の記者会見で大西良文常務取締役は「年度当初に全社の業務改革プロジェクトを立ち上げ、あらゆる業務のコストを削減したが、売上が厳しい中で運賃等の物流コストが高止まりし、電気料金高騰のダメージも大きく、赤字が拡大した。不動産事業は順調に拡大しており、中期経営計画で投資を行いしっかり進めてきた結果、利益が上がってきている。新規事業はコロナ禍で相当厳しい状況になり、当期もコロナの影響を脱却することはできなかったが、赤字幅は縮小した」と説明した。
取次事業の商品種別売上高は、書籍が同3・7%減の1809億8900万円、雑誌が同6・5%減の1078億8100万円、コミックが同7・5%減の502億7300万円、マルチメディアが同8・3%減の421億6300万円、合計で同5・6%減の3813億800万円だった。
返品率は、同1・1ポイント増の37・6%。内訳は、書籍が同1・4ポイント増の35・5%、雑誌が同0・2ポイント増の48・0%、コミックが同1・3ポイント増の23・8%、マルチメディアが同3・1ポイント増の25・4%。
運賃の状況は、送品金額が右肩下がりとなる中で、1キログラム当たりの運賃単価は上昇し、送品運賃は高止まりしている。大西常務は「運賃が取次事業の赤字の最大要因。出版社に運賃協力金の要請を続けるとともに、流通コストが賄えていない出版社には、取引条件の見直しも視野に入れ、個別に相談していく」と述べた。
子会社26社を含む連結決算は、売上高は前年比6・0%減の4025億5000万円、営業利益は同81・4%減の2億3800万円、経常利益は同70・2%減の3億5100万円、親会社株主に帰属する当期純利益は3億1200万円(前期は16億4800万円の損失)だった。
セグメント別の経常損益を見ると、書店系連結子会社(10社)は1億6600万円の赤字に。物流系連結子会社(4社)は1億8300万円の黒字を確保。その他連結子会社(12社)は、マリモクラフト、デルフォニックスの文具雑貨系が好調で、前年比183・8%増の6億5900万円となった。
また、持分法適用会社の八重洲ブックセンターの山﨑厚男代表取締役社長が、6月19日開催の定時株主総会で退任し、佐藤和博取締役が社長に就任した。

江戸川乱歩賞に三上幸四郎氏/「コナン」「只野仁」の脚本家

日本推理作家協会主催の第69回「江戸川乱歩賞」(講談社・フジテレビ後援、豊島区協力)が5月26日に発表され、三上幸四郎氏の『蒼天の鳥たち』が受賞した。今回は応募総数390篇。賞金500万円。受賞作は8月頃、講談社から刊行される。
三上氏は鳥取県出身、慶応大卒の56歳。『名探偵コナン』『特命係長只野仁』などテレビアニメ・ドラマの脚本家として活躍してきた。
受賞作は大正時代の鳥取市を舞台に、女性の地位向上を目指した実在の作家・田中古代子をモデルに描く歴史活劇ミステリーだ。
同日都内で開かれた受賞会見で、三上氏は「子供の頃から江戸川乱歩賞は私にとって大きな憧れだった。いつかは応募したいと思っていたが、気がつくとこの歳になっていた。1回だけでも応募してみようと思って去年と今年応募し、選んでいただくことができた。この作品を読んで、私の生まれ故郷・鳥取のことを気にかけていただければうれしい」と喜びを語った。
選考委員の日本推理作家協会・貫井徳郎代表理事は「小説と脚本の書き方は違うので、脚本家の書き方のクセがあるのではないかと危惧したが、そんなことはなく、小説の文章になっていた。大正期の地方都市の風俗に詳しくない人間でも、情景がありありと思い描ける筆致も素晴らしかった」と評価した。
贈呈式は11月頃、豊島区の協力を得て実施する予定。

全国万引犯罪防止機構通常総会/「渋谷プロジェクト」拡大に意欲/「確度高い書店収益改善モデル」アピール

全国万引犯罪防止機構(竹花豊理事長)は6月13日、東京・千代田区の主婦会館プラザエフで2023年度通常総会を開き、会員112名(委任状含む)が出席した。東京・渋谷の3書店で運用してきた、防犯カメラの顔認証機能を利用して犯人情報を共有する「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」(渋谷プロジェクト)について、竹花理事長は「私がこれまで行ってきた万引対策の中で最も具体的な成果を得た施策」と手応えを語り、多くの事業者に活用してほしいと呼びかけた。
はじめにあいさつした竹花理事長は、設立から18年となる同機構の歩みを振り返り、「万引のやり方も対象も被害品も変わっていく中、当機構の取り組みも変化してきている。17年に万引被害に苦しむアメリカをはじめ世界各国の関係者と意見交換会を開催。それを契機に当機構の活動は大きく変わり、啓発活動や提言にとどまらず、具体的に万引を抑止するための主体的な組織として様々な施策を講じるようになった。総体的に取り組みは順調かつ着実に進められ成果もあげているが、その活動はまだまだ狭い範囲にとどまっている。これからもっと大きな取り組みにすることが求められている」と述べた。
議案審議では22年度事業報告・収支決算報告、23年度事業計画・収支予算計画などすべての議案を原案通り承認可決した。
活動報告では、万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長が渋谷プロジェクトについて報告した。
渋谷プロジェクトの3年目(21年8月~22年7月)の実績は、登録人数51人(前年比6人増)、事案数68件(同4件減)、再来店数17件(同11店減)、再来店率25・0%(同13・9ポイント減)、抑止数6人(同う15人減)、捕捉数24人(同13人増)。
再来店数・率が大幅に減ったことについて、阿部事務局長は「前年度からマスク顔でも検知可能となったことが常習者に知れ渡った効果があらわれた」と分析する。さらに、「常習者が減った分、店員が常習者にかけるエネルギーを他の警戒に振り分けられるようになり、その結果、捕捉数が増加した」とみている。
阿部事務局長は「書店にとってロス率の改善は営業利益率向上への影響が大きい。売上が伸びない中で利益を確保する手段として万引防止は重要」として、確度の高い収益改善モデルとして同プロジェクトの取り組みを提示していく考えを示した。
同プロジェクトは19年7月に3書店で運用をスタートして3年が経過。渋谷地区の万引対策に一定の成果をあげている。今年度は1書店の休会を受けて2書店体制で継続している。今後は3年間の検証結果を踏まえ、渋谷地区で参加店の拡大を図るとともに、他地区への運用拡大を目指す。
竹花理事長は「私がこれまで行った万引対策の中で最も具体的な成果を得た施策」と胸を張り、「個人情報保護法が改正された際の『個人情報は保護するが、活用もする』という法の趣旨に沿ったやり方として、公的な機関もこの施策が拡大することを望んでいる。これまでトラブルが生じたことはなく、懸念する必要はない。多くの事業者に取り組んでほしい」と呼びかけた。

4月期は前年比6・5%減/文芸書、実用書は前年超え/日販調査店頭売上

日本出版販売(日販)調べの4月期店頭売上は前年比6・5%減だった。雑誌は同5・1%減、書籍は同2・3%減、コミックは同14・2%減、開発品は同12・7%減と全ジャンルで前年割れとなった。
書籍の中では文芸書が同15・4%増、実用書が同0・5%増と前年超え。文芸書は村上春樹の6年ぶりの長編新作『街とのその不確かな壁』(新潮社)などが売上を牽引した。実用書は『栗山ノート』(光文社)や写真集などが好調だった。
雑誌、コミックは、ともに前年好調だった商品の影響を大きく受け、前年割れとなった。

福井組合「親子で楽しむ絵本の世界」/ワークショップ、パネル展など賑わう

福井県書店商業組合(安部悟理事長)は5月6日、福井市のショッピングセンター「ラブリーパートナーエルパ」のエルパスペースで、絵本展「親子で楽しむ絵本の世界2023」を昨年に続いて開催した。
同展では、絵本館、偕成社、こぐま社、小学館、童心社の協力を得て「『はらぺこあおむし』のコラージュ(貼り絵)を体験しよう!」などいくつかのワークショップや、「こぐまちゃん」「11ぴきのねこ」「おしいれのぼうけん」といった人気キャラクターのパネルを使った「キーワードを見つけよう!」、そして「パンダ銭湯」パネル展示に「大ピンチアンケート」で大いに盛り上がった。また、日書連増売運動「心にのこる子どもの本」の絵本セット41冊と「福井県子どもの本の帯コンクール」受賞の帯を付けた本9冊、計50冊をプレゼントした。
今回はコロナの第5類移行もあり、来場者は昨年を大きく上回った。会場で配布したチラシの裏面には福井県書店商業組合の案内を掲載し、組合加盟書店を利用してほしいと呼びかけた。
(清水祥三広報委員)

紀伊國屋書店、CCC、日販/今秋合弁会社設立へ協議開始/書店主導の出版流通改革目指す

紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売(日販)の3社は、書店主導の出版流通改革及びその実現を支える合弁会社設立に向けた協議を開始する基本合意契約を締結し、6月19日に調印式を行った。
全国で書店数の減少が続く中、多種多様な出版物を書店を通じて全国各地の読者に届け続けるための出版流通サイクルを創出し、持続可能なものにするための仕組み変革を共同で進めることで合意した。
協議では、書店と出版社が販売・返品をコミットしながら送品数を決定する、新たな直仕入スキームの構築を目指す。粗利益率が30%以上となる取引を増やすことで書店事業の経営健全性を高めることが狙い。
仕入れスキームの構築にあたっては、3社が保有するシステムやインフラ、単品販売データを共有。AI発注システムを活用することで、精度の高い需要予測に基づく適正仕入の実現を進める。書店横断型サービスや共通アプリの開発も視野に入れた販売促進施策やレコメンド施策も実施し、売上増大と返品削減、環境に優しい流通を実現する。
3社が展開する書店は約1000店舗だが、賛同する他書店も合流できるオープンな仕組みを目指す。
今後、3社の担当者による協議を速やかに開始し、他書店や各出版社にも説明しながら、今秋を目途として、実行計画の策定と3社が出資する合弁会社の設立に向けた準備を進めていくとしている。
紀伊國屋書店の高井昌史会長兼社長は「書店と取次による『書店を核にした出版流通改革』に取り組むことで、持続可能な出版流通サイクルを創り出していこうと決意した。『文化・情報の発信』『知のインフラ』としての書店を存続させ、出版文化を継承していくことは、我々に課せられた使命。まずは3社で、それぞれの書店としての良さを生かしながら、新しい仕入の仕組みを整備し、同じ志をもって取り組んでいただける他書店とも手を携えていくことを目指す」とコメントを発表した。

書店組合総会スケジュール

◇長崎県書店商業組合「令和4年度第36期総会」
7月27日(木)午前11時、諫早市の水月楼で開催。
◇奈良県書店商業組合「第39回通常総会」
8月3日(木)午後2時、橿原市の橿原オークホテルで開催。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

平野卿子著『女ことばってなんなのかしら?』(河出新書860円)は、副題が「『性別の美学』の日本語」である。女言葉と認識されている「だわ」「のよ」などの起源は、明治時代の女学生言葉で、当時は下品で乱れた言い方と非難されていたが、男と女で異なる言葉遣いをするのが日本語の素晴らしさと、逆に珍重されてきた。伝統どころか為政者の都合で広まった言葉。それは女性に対する制約だった。女言葉では悪態がつけないし命令形も使えない。
母父(おももち)という和語の言葉が、男尊女卑の漢語によって父母になり、女夫、妻夫(めおと)が夫婦に変わった。
翻訳家の著者は英語、ドイツ語とも比較しながら、女言葉は老人言葉などと同じように、「役割語」としての働きでより分かりやすいとも語る。ジェンダー平等と言いながら、日本語には相当に根深い、性差別や性意識がしみ込んでいる。
ジェーン・スー/中野信子著『女らしさは誰のため?』(小学館新書920円』は「女らしさからかなり遠い二人」と自ら言う著者が、女性のメリット、デメリット、女性というだけで「割を食わされてきた」社会を分析し、縦横に語る。コラムにも、今を生きる知的な考察が満載である。

日販GHD、減収赤字決算/取次・小売事業の不振で

日販グループホールディングス(日販GHD)は6月1日、2022年度決算(22年4月~23年3月)を発表した。海外及びコンテンツ事業などは好調だったものの、主力の取次及び小売事業の不振が響き、連結子会社35社を含む連結決算は減収・赤字となった。
日販GHDの売上高は4440億100万円(前年比12・1%減)、営業損益は4億1700万円の赤字(前期は28億4000万円の黒字)、経常損益は1億5800万円の赤字(前期は36億4800万円の黒字)、親会社株主に帰属する当期純損益は2億1800万円の赤字(前期は13億9100億円の黒字)。
事業別では、海外及びコンテンツ事業は過去最高売上高・営業利益を達成し、エンタメ事業も増収・黒字転換。雑貨及び不動産事業は増収減益だった。
取次事業の売上高は4023億1400万円(同12・6%減)。既存店の店頭売上減少、閉店による取引書店数の減少に加え、他社への取引変更が影響し、金額ベースで580億円の大幅な減収となり、営業損益も24億2900万円の赤字(前期は10億3900万円の黒字)となった。
小売事業の売上高は537億2400万円(同12・8%減)。「駿河屋」の出店や「ガシャポンバンダイオフィシャルショップ」の導入で雑貨、ゲーム、トレカなど新規事業の売上は拡大したが、本やレンタルの落ち込みが大きく、減収となった。営業損益も1億5800万円の赤字(前期は2億4600万円の赤字)となった。
日本出版販売(日販)単体の売上高は3550億9500万円(同12・9%減)、営業損益は20億6700万円の赤字(前期は7億3400万円の黒字)、経常損益は18億5600万円の赤字(前期は9億3400万円の黒字)、当期純損益は22億9700万円の赤字(前期は4億8500万円の黒字)。売上総利益が前期比43億円減少、送品に占める運賃割合の増加や光熱費が高騰し、販管費の削減が前期比15億円減にとどまったことで営業赤字となった。
商品売上高は、書籍が1818億8100万円(同14・1%減)、雑誌が911億9900万円(同9・2%減)、コミックスが637億5700万円(同11・2%減)、開発品が220億8300万円(同11・6%減)。いずれのジャンルも減収となり、商品売上全体で前年比501億円減収となった。この減収要因のうち276億円は書店ルートで、既存店売上の減少で84億円、閉店影響で90億円、取引変更影響で110億円の減収になったという。新規店影響による増収は8億円だった。
返品率は、書籍が29・8%(同2・8ポイント増)、雑誌が46・8%(同1・7ポイント減)、コミックスが26・5%(同2・1ポイント増)、開発品が42・9%(同1・2ポイント減)で、合計35・4%(同0・9ポイント増)と悪化した。
日販の奥村景二社長は売上減少の要因を「来店客数が想定以上の比率で落ちている」と説明し、月1回程度書店に足を運んでいたライトユーザーを再度書店に呼び込み、本のない生活を送る人たちを読者に変える施策が必要と強調した。
また、運賃が物量に応じて減らず固定費化していることを課題に挙げ、「配送コースの再編で運賃上昇の抑制に一定の効果はあったが、業量減少による配送効率悪化を押し留めるには至っておらず、さらなる対策が喫緊の課題」と述べ、関係者に協力を要望。来年度に新物流センターを稼働させ、現在の拠点を統廃合することで固定費の圧縮を図る考えを示した。