全国書店新聞
             

令和5年12月15日号

出版物の輸送止めない/輸送、出版関連団体が意見交換/東京都トラック協会「出版物関係輸送懇談会」

東京都トラック協会(東ト協)の出版・印刷・製本・取次専門部会は10月30日、東京・新宿区の東京都トラック総合会館で第45回「出版物関係輸送懇談会」を開催した。「出版物輸送を存続していくための具体的な改善策について」をテーマに、日本雑誌協会(雑協)、日本出版取次協会(取協)、日本書籍出版協会(書協)、印刷工業会、東京都製本工業組合、日書連の代表者と意見交換した。
冒頭、東ト協出版・印刷・製本・取次専門部会の瀧澤賢治部会長(ライオン運輸)は、雑協が物流2024年問題を乗り切ろうと8月に「トラックフェス」を開催したことに謝意を述べ、「出版物輸送を止めないためにどんな方法があるのか一緒に考えたい」と呼びかけた。
雑協販売委員会の相賀昌宏委員長(小学館)は「言いたいことを言い合える関係が大事で、議論しながら問題を解決していきたい。具体的な課題を聞き、業界全体に広げていくよう努力する」と応えた。
意見交換では、まず輸送側から業量減少や事業縮小・撤退など出版物輸送を取り巻く厳しい現状について説明があった。
出版輸送の手嶋章博社長は「1日平均の業量は減少し続けている。業量が前年比1割減になると危機的状況。20年前と比べてトラックの登録台数は30台減った」、瀧澤部会長は「ドライバー不足が深刻で、燃料費も高止まりしている。出版不況の中で運賃収入が伸びず、業量が増える見込みもない。負担は年々増え、事業から撤退する会社もある。全盛期は70社あった部会員数も20社まで減った」と危機感を募らせた。
荷主側の雑協物流委員会の隅野叙雄委員長(集英社)は、23年度に25日だった完全土曜休配を24年度はさらに増やす方針を説明し、「発売日に関してもっと柔軟な考え方をしなければいけない。業量が多かった時代に決めたこれまでのルールや慣習を変えて、運送会社の現状を反映させたい」との考えを示した。
取協の田仲幹弘理事(トーハン)は「人口が減っていく中、中長期的に見て業量は減っていく。こうした時は作業の集約化、協働・協業、標準化・システム化という流れが必須」と指摘し、「首都圏の配送(自家配)は協業し、エリアを再編して輸送会社がより効率よく回るためのコース設定をしたほうがよい」と述べた。ドライバー不足対策では、部会所属の輸送会社が共同でドライバーを募集する仕組みを作り、足りない会社にドライバーを入れることを提案した。
印刷工業会の林雄一氏(大日本印刷)は、①時間指定の緩和と納品先数の削減、②午前中集中型納品の見直し、③配車効率を上げるため搬入票のより早い提出――を提言した。
東京都製本工業組合の金子誉氏(共同製本)は「製本は中小零細企業の集合で、保有設備も限られる。製本会社はそれぞれ得意・不得意があり、製本の種類に応じてうまく協業化していくことで生産効率を上げるという考え方を認めてほしい」と訴えた。
日書連の藤原直副会長・流通改善委員長(金港堂)は「現行のシステムに書店として感謝している。国鉄の駅留めの時代、運賃と荷造りが書店負担だったこともあり、その頃からは大きく改善されている」と述べた。
土曜休配については「最初は書店側から要望した。売上が右肩上がりのバブルの頃、書店も休みがほしいという観点から、土曜日に配送を止められないかというところでのスタートだった」と振り返り、「当時の休配日は年間3、4日だったが、現在は30数日になった。初めは新しい商品が来なければ売上が立たないので毎日配送してほしいという意見もあったが、書店にも人手不足の問題があり、世の中は週休2日が当たり前になってきた。書籍の客注の遅れなど問題もあるが、日本出版インフラセンター(JPO)が書店にも情報を与える形で補完できればと期待している。輸送の現状は書店も理解している」と述べた。
日本書籍出版協会(書協)の樋口清一専務理事は「毎年4月に新入社員研修会を会員社向けに行なっているが、その中で物流問題がいかに大変かということを新入社員のうちから理解してもらえるよう取り組んでいきたい」と話した。
最後に瀧澤部会長は「本に限らず輸送には経費がかかることをエンドユーザーにも知ってもらうことが必要。無料のものはないということを浸透させたい。輸送には人と車が欠かせないことが理解されると抵抗なく物事が進む」と述べた。

出版業界の新春行事

【書店組合】
[北海道]
◇北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会=1月23日(火)午後6時から、札幌市中央区のJRタワーホテル日航札幌で。
[東京]
◇東京都書店商業組合新年懇親会=1月16日(火)午後5時半から、東京都文京区の東京ドームホテルで。
[静岡]
◇静岡県書店商業組合新年総会=1月25日(木)午後4時半から、静岡県葵区のCSA会議室レイアップ御幸町ビルで。懇親会は午後6時から、静岡市葵区のグランディエールブケトーカイで。
[愛知]
◇新春賀詞交歓会=1月11日(木)午後5時半から、名古屋市千種区のホテルルブラ王山で。
[大阪]
◇大阪出版販売業界新年互礼会=1月9日(火)午後4時から、大阪市阿倍野区の都シティ大阪天王寺で。
[京都]
◇京都府出版業界新春を祝う会=1月11日(木)午後4時半から、京都市下京区のザ・サウザンド京都で。

【取次】
[日本出版販売]
◇新春日販オチャノバフォーラム=1月9日(火)午前10時から、東京都千代田区の日販本社7階オチャノバで。
[日教販]
◇春季展示大市会=1月11日(木)午前10時から、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で。

【業界団体】
[全国医書同業会]
◇新年互礼会=1月5日(金)正午から、東京都千代田区の帝国ホテルで。
[日本出版クラブ]
◇出版関係新年名刺交換会=1月9日(火)午後0時半から、東京都千代田区の出版クラブビルで。
[書店新風会]
◇新年懇親会=1月10日(水)午後5時半から、東京都新宿区のハイアットリージェンシー東京で。
[悠々会]
◇新年会=1月12日(金)午後6時から、東京都千代田区の帝国ホテルで。
[金文会]
◇新年互礼会=1月15日(月)午後2時半から、福岡県筑紫野市の大丸別荘で。
[出版梓会]
◇第39回梓会出版文化賞・第20回出版梓会新聞社学芸文化賞贈呈式=1月18日(木)午後5時半から、東京都千代田区の如水会館で。懇親会は午後6時半から。

年末年始の日書連事務局体制

年末年始の特別体制で、日本書店商業組合連合会事務局の業務は、年内は12月27日(水)午後5時半をもって終了します。年明けは1月4日(木)午前9時より通常業務に復します。ご了承ください。

大阪「BOOKEXPO2023」/商談成立金額7066万円/サイン会などイベントも盛況

関西の書店大商談会「BOOKEXPO2023」(同実行委員会主催)が11月7日、大阪市北区のグランフロント大阪「コングレコンベンションセンター」で開催された。
今回のテーマは「さあ、ここからだ!書店人」。一般、児童、コミック、第三商材210社・210ブースが出展。1205名が来場し、内訳は書店546名、出展社525名、取次83名、報道6名、作家・業界関連・後援団体など45名。商談件数は5411件、商談成立金額は7066万7539円だった。コロナ禍で中止となっていた作家のサイン会などイベントが4年ぶりに復活したこともあり、会場は熱気に包まれた。
開会セレモニーであいさつした大垣全央実行委員長(大垣書店)は「書店の現状は大変厳しい。我々の売り方が読者に合っていないのではないか。そんな中でも紙の本を売っていかないと地域の文化が廃れてしまうという思いで、実行委員会のメンバーは取り組んでいる。今日は書店が多数来場する。新しいアイデア、コーナー作り、商品などいろいろな提案をして、商談してほしい。読者に店頭に来てもらうための新しい試みをこの商談会から生み出したい。今、秋の読書推進月間『BOOKMEETSNEXT』に業界一丸となって取り組んでいる。10月27日から様々なイベントが行われているが、今日11月7日を関西のイベントのスタートとして、紙の本の良さを読者に伝えるため一緒に盛り上げよう」と呼びかけた。
続いて、「西日本POP王決定戦」の表彰式を行った。手書きPOP部門の金賞は『はけんねこ』でブックスタジオエキマルシェ新大阪店の川阪麻衣さん、ディスプレイ部門の金賞は『呪術廻戦』(集英社夏コミ2023)で平和書店TSUTAYAアル・プラザ城陽店の井上嘉美さんが受賞した。応募総数は400作品だった。
このあと実行委員会のメンバーが登壇し、「商談が盛り上がるように、さあ、ここからだ書店人、バモス(スペイン語で「頑張ろう」)!」のエールで商談がスタート。会場では商談や情報交換が活発に行われ、スタンプラリー、絵本作家・鈴木のりたけ氏のサイン会などイベントも盛況だった。

凪良ゆう氏、京都でトークショー/書店員30名と3時間超える対話

出版文化産業振興財団(JPIC)などが主催する秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」のメインイベント「京都ブックサミット」の特別企画として、「凪良ゆう氏と書店員の集い」が11月8日、京都市下京区の京都産業会館で開催された。
事前応募のあった書店員30名限定の対面型トークショー。普段聞くことのできない制作秘話や書店員への思いなど、3時間超にわたってやりとりする大変貴重な企画となった。
凪良氏が2020年に『流浪の月』(東京創元社)で第17回本屋大賞を受賞した時はコロナ禍の真っ只中。緊急事態宣言が発出されたため授賞式もなかった。クインケ浮腫という唇が腫れてしまう症状も出たそう。休業を余儀なくされた書店も多く、本来ならすぐにでも全国の書店にお礼行脚に回りたかったがそれも叶わなかったという。今年、『汝、星のごとく』(講談社)で第20回本屋大賞を受賞すると、両受賞作品を合わせ携えて書店を回ったというエピソードを披露した。
トークショー当日の11月8日は『汝、星のごとく』のスピンオフ続編『星を編む』の発売日。見本プルーフの裏面に書いてある「書店さんに恩返しがしたい。そのためには本屋大賞受賞年度に受賞作の続刊を出すことが一番の恩返しになる」という河北担当編集のコメントには凪良氏も驚きを隠せない様子。凪良氏は自分1人で書くのではなく担当編集者と一緒に作っていくという考え方を持っており、書店員や読者の反応もエッセンスとして作品に影響する。そのため作家としてのスタンスについて「一人で作品を作ることはできない」と語った。
書店員との質疑応答を行ったが話が尽きないため、会場を京都市下京区の京町家イタリア料理レストラン「京都ロビンソン烏丸」に移して二次会を開催。書店員との語らいは夜更けまで続いた。
(若林久嗣広報委員)

大阪こども「本の帯創作コンクール」表彰式/課題・自由図書部門、93作品が受賞/深田氏「本を身近に感じて」

大阪府書店商業組合は11月11日、東大阪市の大阪府立中央図書館「ライティホール」で2023第19回大阪こども「本の帯創作コンクール」(大阪読書推進会、朝日新聞大阪本社主催)の表彰式を開催した。2019年以来、4年ぶりの開催となる。
今年は課題図書部門と自由図書部門に全国9都府県から9022点の応募があり、93点が受賞した。
開会あいさつで大阪読書推進会の深田健治副会長(大阪府書店商業組合理事長)は「本の帯は本の魅力を伝えるもの。しっかり本を読み込み、感動したことなどを帯の裏表に書き込む。入賞をきっかけに、より本を身近に感じてもらい、もっと本を好きになっていただきたい」と話した。
受賞者を代表して、大阪府知事賞高学年の部に入賞した児童は「絵を描くのが大好きで応募した。登場人物を再現するのに苦労したが、色鉛筆にない色は重ね塗りを工夫した」として、「受賞は飛び上がるほどうれしかった。小学校最後の年に頑張ってよかった」と話した。
作品展示は会場が府立図書館となったことから、表彰当日を含む3日間と延長となった。
(石尾義彦事務局長)

連載「春夏秋冬本屋です」~小泉八雲~/静岡・焼津谷島屋専務取締役・中野道太

ご存知の方も多いと思うが、「小泉八雲」という焼津に縁のある作家を紹介したい。本名ラフカディオ・ハーン。ギリシャ生まれのイギリス人で明治時代にアメリカの出版社の通信員として来日し、その後日本を気に入り日本の女性と結婚し帰化した人物だ。
日本の怪談話や日本での体験を世界に広め、日本の文化や民話を文学作品にして世界に発信した。日本の怪談は既に「ジャパニーズ・ホラー」として世界でも認知されているが、最初に世界へ「ジャパニーズ・ホラー」を伝播させたのが小泉八雲だったと自分は思う。
津波の教訓を分かりやすくまとめ戦前の教科書にも掲載された「稲むらの火」という物語をご存知の方も多いはずだ。この作品も元々、小泉八雲が世界に発信した作品が日本に逆輸入された形で日本に広まった作品だ。
新潮文庫『小泉八雲集』の最終章には「焼津にて」という作品が掲載されている。彼は、焼津の海と焼津に住む人々を気に入り生前たびたび夏になると訪れていた。焼津の海は荒くて深く本来は海水浴に向かない場所だが、泳ぎが得意だった小泉八雲にとっては程よい場所だったようだ。
焼津で小泉八雲が経験したこと、感じたことが当時の焼津の風景とともに作品として残されている。ぜひ機会があれば読んで明治時代の小泉八雲が魅せられた焼津を感じて欲しい。そして良ければ現在の焼津も感じに来て下さい。

京都本大賞に石田祥氏『猫を処方いたします。』/「京都の不思議な雰囲気出せれば」

今年で11回目となる京都本大賞の授賞式が10月30日、京都市中京区の京都書店会館で開催され、石田祥氏の『猫を処方いたします。』(PHP文芸文庫)が受賞した。
京都本大賞は過去1年間に刊行された京都を舞台とした小説の中から、最も読んでほしい作品に贈られる。京都の書店員と一般の読者による投票で決定する。主催は京都の書店や取次などで構成する同実行委員会。
授賞式では洞本昌哉実行委員長(ふたば書房)から石田氏に受賞記念の盾と賞状が贈呈された。
受賞作品の『猫を処方いたします。』は、京都市中京区の路地裏にある不思議なメンタルクリニックを舞台に、勤務医と患者、そして薬の代わりに患者へ処方される猫たちとの触れ合いが描かれた連作短編集。
石田氏は「京都にある、ちょっと不思議な雰囲気を出せればいいなと思って書いた。ノミネートされた他の2作品との差がもしあるとすれば、猫ファンが多かったのかも…」と語った。ちょうど11月に同作品の第2巻が出るということもあり、喜びもひとしおという表情だった。
同時開催した「第10回京都ガイド本大賞」の表彰も行った。京都ガイド本大賞はJTBパブリッシングが今年2月に刊行した『私だけのとっておき京都~憧れシーン♯55~』、上級者向けの京都を紹介するリピーター賞は朝日新聞出版が2022年8月に刊行した『謎解きガイドブック京都―陰陽師が隠した宝物―』が受賞した。
3年ぶり3度目の大賞受賞となったJTBパブリッシングの米山情報メディア編集長は「京都に住みたい憧れを持つ人は多いが、叶えることは難しい。その究極の憧れを旅で体験することを目指したガイドブックになっている。暮らすように楽しむ京都をコンセプトにした」と話した。
リピーター賞の朝日新聞出版は5年ぶり3度目の受賞。生活・文化編集部の清永氏は「リアル謎解きとガイドブックを合わせた本。制作し始めた2年前はコロナ禍でなかなか旅行が出来なかったので、旅行しながらはもちろん、家の中でも謎解きを遊べるように作った。コロナ禍も明けたので、この本を片手に謎解きをしながら観光してほしい」と述べた。
閉会あいさつで京都府書店商業組合の森武紀明副理事長(山城書店)は「今年で11年目だが、まだまだこの賞を発展させていきたいので、受賞者の皆さんにはたくさん宣伝していただきたい。過去の受賞作品の中にはコミックや映画化などメディアミックスされたものもあるので、今回もそうなるよう願っている」と締め括った。
今回はささやかな懇親会を4年ぶりに行い、終始和やかなムードで盛況のうちに授賞式を終了した。
(若林久嗣広報委員)

NET21「お楽しみ券」キャンペーン/再来店促進で一定の成果/NET21副社長・大熊恒太郎(第一書林)

中小書店による協業会社NET21(今野英治社長)は今秋、加盟店舗で再来店促進施策の「お楽しみ券キャンペーン」を行いました。
商品を購入した際に発行する「お楽しみ券」と印字したレシートを店舗へお持ちいただくと、プレゼントを進呈するという企画です。プレゼント品は出版社に協力をお願いし、7社から3000個以上のご提供をいただきました。お楽しみ券の配布は各店舗が任意に決めた期間に行い、プレゼント品の交換は「本の日」に合わせて11月1日から15日まで行いました。加盟店舗の半数ほどが参加しました。
NET21も全国の状況と同じく店舗の減少が年々増えており、従来から課題の一つとして対策を検討してきました。それぞれ立地、客層、状況が異なりますので一律に効果的なものはあまりないですが、集客は書店の生命線の一つです。集客対策には新規顧客獲得と再来店促進施策があります。再来店促進施策はNET21共通レジを使って組織的に出来る対策と考え、今回のキャンペーンを提案しました。
以前に第一書林単体で行った経験から、レシートを持って再来店する客数は1割程度と見込み、その数をプレゼントを差し上げるお客様の目標数に設定しました。レシートを渡すだけでは効果が薄いことも分かっていましたので、統一のポスターを作成して各店舗で店頭掲示しました。
キャンペーン期間が終わり、加盟店舗が公表している月毎・半月毎の実績を確認しましたが、売上・客数が前年を上回った店舗は多くなく、全体的には成功とは言えない結果となりました。
ただ、プレゼント品を進呈するお客様の目標数に対しては全体で99・6%と想定に近い結果となりました。店舗によっては目標を大きく上回り、プレゼント品が不足することもあったようです。
成果があった店舗はお楽しみ券の配布時に声を掛けるなど、コミュニケーションを積極的にとったようです。コミュニケーションがリアル店舗の強みとして効果的であると再認識しました。プレゼント品についての問い合わせもあり、事前に期待が高まっていたという意見もありました。
今回の結果を踏まえ、再度実施して客数増加につなげたいと考えています。
NET21には「良さそうなことはまずやってみて判断する」という志向性がありますので、課題が少しでも改善できるよう今後も出来る限りの施策を実行したいと思います。もちろん、共に試行錯誤できる新規加入法人も常時募集しています!

大分組合/インボイス制度講習会を開催/書店業務に特化

大分県書店商業組合(二階堂衞司理事長)は11月22日、大分市の大分図書で「書店業務に特化したインボイス制度講習会」を開催し、組合員10書店12名が参加した。講師は県中小企業団体中央会の推薦で税理士の河野浩延氏が務めた。
河野氏の講習は消費税の仕組みの説明から始まり、インボイス制度とは売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるための制度であることとその判断の基準、消費税計算方法として一般課税と簡易課税について説明した。
発行側の検討項目として①適格請求書登録申請手続き(登録番号の取得)②発行方法検討(書面またはデータ)③インボイスとするべき書類の特定及び取引先周知④適格請求書発行事業者の登録確認方法の検討⑤電子インボイスの保存に係る電帳法要件対応⑥業務処理の電子化の検討(経理業務のDX化)――に触れた。
講習に続き質疑応答が行われ、終了後も個別に河野税理士に質問する書店もいて、充実した講習会になった。(大隈智昭広報委員)

鹿児島組合研修会/兵庫組合・森理事長、落語スタイルで書店の仕事語る

鹿児島県書店商業組合(楠田哲久理事長)は11月14日、鹿児島市のホテル福丸で、兵庫県書店商業組合理事長で井戸書店代表取締役の森忠延氏を招いて研修会を開催した。
森氏は笑喜転一頁の高座名を持つ玄人はだしの落語家でもある。研修会では落語家スタイルで、まず井戸書店への入社の経緯や店舗の品揃えの方針、特に阪神・淡路大震災の時の状況について詳しく講演した。次に兵庫組合の特色ある活動として読書推進を中心に熱心に説明した。
落語も二席披露。参加者は本物の落語を堪能し、惜しみない拍手を送った。(和田豊広報委員)

田中隆次氏(田中書店)ら11名を顕彰/出版平和堂・出版功労者顕彰会

日本出版クラブは10月25日、神奈川・箱根町の出版平和堂で「出版平和堂第55回出版功労者顕彰会」を開催し、関係者約100名が参集した。
今回新たに顕彰されたのは次の11氏。
▽版元関係=西村七兵衛(法藏館代表取締役会長)山岸忠雄(開隆堂出版代表取締役社長)原野圭司(新興出版社啓林館代表取締役会長)田中健五(文藝春秋代表取締役社長)和田肇(作品社代表取締役社長)岡﨑達(弘文社代表取締役社長)松居直(福音館書店代表取締役社長〈創業者〉)藤岡俊夫(祥伝社代表取締役社長〈創業者〉)石井昭男(明石書店代表取締役社長〈創業者〉)
▽取次関係=大竹深夫(大阪屋栗田代表取締役社長)
▽書店関係=田中隆次(田中書店代表取締役社長〈宮崎県〉)

「梓会出版文化賞」「新聞社学芸文化賞」の受賞社決まる

出版梓会はこのほど、第39回「梓会出版文化賞」を子どもの未来社、同特別賞をBook&Design、第20回「出版梓会新聞社学芸文化賞」を彩流社、同特別賞をポプラ社に贈ることを決めた。
この賞は出版社の団体が出版社の活動を顕彰するユニークな賞。今回は6月末に全国765社余の出版社に呼びかけを行い、自薦応募社72社が選考対象になった。
贈呈式は24年1月18日、東京・千代田区の如水会館で開催される。

出版科学研究所「出版指標」/9月期販売額は2・6%増/返品率改善で21年11月以来のプラスに

出版科学研究所調べの9月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比2・6%増だった。内訳は、書籍が同5・3%増、雑誌が同1・6%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同0・1%増、週刊誌が同11・1%減。書籍雑誌合計の前年同月プラスは21年11月期以来、書籍のプラスは22年1月期以来となる。
返品率は書籍が同1・6ポイント減の29・3%。雑誌は前年同率の39・4%。雑誌の内訳は、月刊誌が同0・6ポイント減の37・8%、週刊誌が同3・3ポイント増の48・0%。
書店店頭の売行きは、書籍が約5%減。文芸は約7%減、文庫は約9%減、新書は前年並み。京極夏彦『鵼の碑』(講談社)は百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新作長編で、単行本総合1位にもなるなどよく売れた。学参は約5%増。引き続き『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社)が牽引した。雑誌は定期誌が約5%減、雑誌扱いコミックスが約4%減。ムックは『ONEPIECEmagazineVol17』(集英社)が好調で約1%減。

宮城組合総会/書店議連の提言、実現へ動く/業界あげた読書推進運動で成果

宮城県書店商業組合は11月17日、仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で第42回通常総会を開催し、組合員61名(委任状含む)が出席した。
佐藤由美副理事長(朝野堂)の開会宣言に続き、藤原直理事長(金港堂)があいさつ。読書推進活動について「秋の読書推進月間『BOOKMEETSNEXT』に業界一丸となって取り組み、様々なイベントを行っている。図書カードプレゼントキャンペーンなどを通じて読者にアピールし、増売につなげたい」と話した。
また、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)の提言を実現するため、競争入札や送料無料について働きかけを行っていることや、粗利30%以上の実現を目指す運動に関連した業界の動きとして紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、日本出版販売が設立した新会社ブックセラーズ&カンパニーに言及した。
藤原理事長を議長に議案審議を行い、令和5年度事業報告、決算報告、令和6年度事業計画案、収支予算案、定款変更、役員改選などすべての議案を原案通り承認した。
梅津清太郎専務理事(八文字屋書店)の閉会の辞で総会を終了した。
(照井貴広広報委員)

静岡組合総会/国の補助金、有効活用呼びかけ

静岡県書店商業組合は10月26日、静岡市葵区のCSA貸会議室レイアップ御幸町ビルで第36回通常総会を開催し、組合員77名(委任状含む)が出席した。
総会は江﨑直利副理事長(藤枝江崎書店)の司会で進行し、初めに吉見光太郎理事長(吉見書店)があいさつ。「今年も書店を取り巻く状況は厳しい。売上は下がり経費は上がるという困難な時」と述べ、「事業再構築補助金で新設された産業構造転換枠の対象業種に書籍・雑誌小売業が指定されたことで採用されやすくなった。国からの補助金や助成金を有効活用し、苦境を乗り切る一助にしてほしい」と呼びかけた。
続いて吉見理事長を議長に選任して議案審議を行い、2023年度事業報告、決算書表、監査報告、2024年度事業計画案、収支予算案、任期満了に伴う役員改選などすべての議案を原案通り承認した。役員改選では沼田健氏(サガミヤ)が新理事に選ばれた。(佐塚慎己広報委員)

秋田組合総会/キャッシュレス決済の利用率上昇、書店経営に大きな影響

秋田県書店商業組合は11月19日、大仙市の「嶽の湯」で第37回通常総会を開催し、組合員16名(委任状含む)が出席した。
総会は平野専務理事(ひらのや書店)の司会で進行し、はじめに加賀谷龍二理事長(加賀谷書店)があいさつ。「政府による移動制限が解かれたことで、地域によってはインバウンドや観光客が戻り街に活気が出ているようだが、当地ではまだこれから。物価高の影響で消費者の購入意欲が大きく削がれている。ガソリンの値上がりが止まらず、配達を含む経費の掛かり増しが気がかりだ。コロナ禍でキャッシュレス決済の利用率が上がっているが、他業種と違い比較的少額での利用が多く、手数料率や入金処理が手間になり、大きな問題」と述べた。
引き続き加賀谷理事長を議長に議案審議を行い、第1号議案から第7号議案まですべての議案を原案通り可決決定した。この中で、書店と読者の双方にメリットがあるとして、読者還元祭のしおりの購入を呼びかけた。(石川信広報委員)

「本屋大賞と本の雑誌」浜本茂氏の講演会、来年1月26日に/出版白門会

出版界で働く中央大学卒業生による出版白門会は来年1月26日午後6時半から、東京・千代田区の出版クラブビルで、「本の雑誌」編集発行人でNPO法人本屋大賞実行委員会理事長の浜本茂氏(中大法学部84年卒)を招き、新春講演会「本屋大賞と本の雑誌」を開催する。午後7時45分から懇親会も行なう。
会費は会員7000円、会員以外の中大OB5000円、中大現役学生3000円、中大OB以外(学生含む)7000円。定員50人。申込締切は会員・中大OB・中大現役学生は12月31日、その他は来年1月19日。
申し込みは出版白門会ホームページから。https://pub-hakumon.jimdofree.com/

日販『出版物販売額の実態』『書店経営指標』/22年度の出版物販売額1兆4020億円/「CVS」ルート、20・4%大幅減に

日本出版販売(日販)はこのほど、『出版物販売額の実態2023』『書店経営指標2023年版』を発行した。ルート別売上高は「インターネット」が唯一増加し、「書店」「CVS」など4ルートは減少した。特に「CVS」は20・4%減と大きく落ち込んだ。
『出版物販売額の実態』は、出版物がどのような販売ルートをたどって読者のもとに届いているかを調査したルート別の販売額などを推定算出した資料で、1974年から毎年発行している。
これによると、22年度の出版物販売額は1兆4020億円(前年比3・1%減)。販売ルート別では、「書店」8157億円(同2・2%減)、「CVS」933億円(同20・4%減)、「インターネット」2872億円(同2・3%増)、「その他取次経由」349億円(同5・9%減)、「出版社直販」1708億円(同3・9%減)だった。
読者と本の接点であるタッチポイント別の市場規模と構成比は、「書店」8157億円(構成比36・7%)、「CVS」933億円(同4・2%)、「インターネット」2872億円(同12・9%)、「その他店舗」(大学生協、駅、スーパー・ドラッグストア等のスタンド店)350億円(同1・6%)、「出版社直販」1708億円(同7・7%)、「電子出版物」6670億円(同30・0%)、「図書館」698億円(同3・1%)、「教科書」863億円(同3・9%)。「電子出版物」の販売額は前年比17・1%増加している。
1人当たり購入額は、「書店」6663円(前年比1・6%減)、「CVS」762円(同19・9%減)、「インターネット」2346円(同3・0%増)、「その他店舗」286円(同5・3%減)、「出版社直販」1396円(同3・3%減)、「電子出版物」5448円(同17・9%増)。「図書館」の1人当たり貸出冊数は5・29冊(同14・8%増)。
ネット経由(インターネット、電子媒体出版物販売額の合計)とリアル書店経由(書店、CVS、その他取次経由の合計)の販売額の構成比は、ネット経由が50・3%(昨年度は46・2%)に対してリアル書店経由は49・7%(昨年度は53・8%)と逆転した。
『書店経営指標』は、全国41企業535店舗のアンケート調査をもとに、書店の経営効率や書籍・雑誌をはじめとする取扱商品の販売動向などを分析したもの。
企業ベースの実績を見ると、売上高は前年比10・6%減、売上総利益率は28・3%(同0・6ポイント増)、営業利益率はマイナス2・0%(同1・1ポイント減)、経常利益率はマイナス1・4%(同0・8ポイント減)となった。
店舗ベースの売上高は同6・9%減。客数は同4・3%減少したが、客単価は同10・8%増となった。売上高が前年比100%を上回った店舗の割合は14・1%、売上総利益率が増加した店舗は58・3%、営業利益率が増加した店舗は24・8%だった。
業務効率化の状況を見るとレジ台数は3・8台、セルフレジ台数は3・4台。決算手段は「現金」63・1%、「クレジット」19・4%、「図書カード」3・5%、「電子マネー」12・6%、「その他の決済手段」3・6%だった。
商材別の売上高は、「Book」が同8・9%減、「雑貨」が同0・7%減だったが、「文具」は同7・2%増加した。

『出版物販売額の実態2023』(頒価税込1540円)と『書店経営指標2023』(同1650円)は、従来は電子版(PDF版)で発行していたが、今年からExcel版の発行に変更した。いずれもインターネット書店「HonyaClub.com」から購入できる。
問い合わせは日販マーケティング推進部ストアソリューション課まで。℡03(3233)4791

こども家庭審議会「児童福祉文化財」推選作品決まる

こども家庭庁こども家庭審議会はこのほど、児童の福祉の向上を図るため、優れた出版物、舞台芸術、映像・メディアなどの作品の推選を決定し、「令和5年度児童福祉文化財推選作品一覧」として取りまとめた。
このうち出版物19作品は次の通り。
▽『こうもり』作:アヤ井アキコ、監修:福井大、偕成社▽『うにとげとげいきものきたむらさきうにのひみつ』文:吾妻行雄/青木優和、絵:畑中富美子、仮説社▽『もりはみている』文・写真:大竹英洋、福音館書店▽『ここがわたしのねるところせかいのおやすみなさい』文:レベッカ・ボンド、作画:サリー・メイバー、訳:まつむらゆりこ、福音館書店▽『おしりじまん』作:齋藤槙、福音館書店▽『へんしんすがたをかえるイモムシ』作:桃山鈴子、解説・監修:井上大成、デザイン:大島依提亜、福音館書店▽『ブルガリアの昔話いのちの水』絵:ベネリン・バルカノフ、再話:八百板洋子、福音館書店▽『タヌキの土居くん』作:富安陽子、画:大島妙子、福音館書店▽『スクラッチ』作:歌代朔、あかね書房▽『ジャングルジム』作:岩瀬成子、絵:網中いづる、ゴブリン書房▽『貝のふしぎ発見記』写真・文:武田晋一、監修:福田宏、少年写真新聞▽『へびながすぎる』作:ふくながじゅんぺい、こぐま社▽『きみの人生はきみのもの子どもが知っておきたい「権利」の話』著:谷口真由美/荻上チキ、NHK出版▽『少年のための少年法入門』監修:山下敏雅/牧田史/西野優花、旬報社▽『なりたいわたし』作:村上しいこ、絵:北澤平祐、フレーベル館▽『ライトニング・メアリ竜を発掘した少女』作:アンシア・シモンズ、訳:布施由紀子、絵:カシワイ、岩波書店▽『ゴリランとわたし』作:フリーダ・ニルソン、訳:よこのなな、絵:ながしまひろみ、岩波書店▽『「ヒロシマ消えたかぞく」のあしあと』著:指田和、ポプラ社▽『ニッキーとヴィエラホロコーストの静かな英雄と救われた少女』作:ピーター・シス、訳:福本友美子、BL出版

日書連のうごき

 11月2日 野間読書推進賞贈呈式に事務局が出席。
 11月6日 高橋松之助記念「朝の読書大賞」「文字・活字文化推進大賞」贈呈式に事務局が出席。
 11月7日 BOOK EXPOに矢幡会長が出席。定期会計監査。
 11月8日 京都ブックサミットに矢幡会長が出席。
 11月9日 京都ブックサミットに矢幡会長が出席。
 11月11日 韓国本の日イベントに矢幡会長が出席。
 11月14日 新聞之新聞社新年号インタビューに矢幡会長。伊東良孝衆議院議員政経セミナーに矢幡会長が出席。
 11月16日 日本図書コード管理委員会に藤原副会長、志賀理事が出席。JPO運営委員会に平井副会長が出席。雑誌発売日本部委員会に藤原副会長、大塚、長﨑両理事が出席。
 11月22日 文化産業信用組合理事会に矢幡会長が出席。
 11月27日 「出版再販・流通白書」事務局打合せに事務局が出席。
 11月28日 全国書店再生支援財団理事会に平井副会長、髙島理事が出席。
 11月29日 日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。
 11月30日 雑誌コード管理委員会に柴﨑副会長が出席。

日販GHD中間決算/連結・単体とも減収赤字/取次・小売事業の赤字響く

日販グループホールディングス(日販GHD)と日本出版販売(日販)は11月24日、2023年度中間(23年4月~9月)決算を発表した。連結・単体ともに減収赤字決算だった。
日販GHDの連結売上高は前年比6・8%減の2048億9900万円、営業損失は13億8800万円(前年は1億400万円の損失)、経常損失は12億6700万円(前年は1500万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損失は11億5000万円(前年は11億7800万円の利益)。「海外」「エンタメ」など成長事業で計10億円の営業利益を上げたものの、「取次」「小売」事業で23億円の営業損失を計上し、全体で営業赤字となった。
事業別では、「取次」は売上の約9割を占める日販で大幅減収となり赤字が拡大した。「小売」は新規事業の拡大と販管費の抑制で赤字が縮小し、減収増益だった。一方、「海外」「エンタメ」は増収増益となり、中間決算として過去最高の売上高・経常利益を達成した。「雑貨」「コンテンツ」は減収だったが、コストコントロールにより黒字で推移した。
各事業の業績は次の通り。
▽「取次」=売上高1816億5500万円(同9・5%減)、営業損失20億5500万円(前年は7億6200万円の損失)、経常損失19億5100万円(前年は6億3800万円の損失)
▽「小売」=売上高247億円(同3・8%減)、営業損失2億8100万円(前年は3億1800万円の損失)、経常損失2億4900万円(前年は3億4000万円の損失)
▽「海外」=売上高35億5500万円(同3・0%増)、営業利益1億4300万円(同44・6%増)、経常利益1億3800万円(同45・4%増)
▽「雑貨」=売上高15億8300万円(同2・7%減)、営業利益4000万円(同37・4%減)、経常利益9000万円(同38・0%増)
▽「コンテンツ」=売上高17億1300万円(同13・4%減)、営業利益2億5300万円(同22・1%減)、経常利益2億5400万円(同22・0%減)
▽「エンタメ」=売上高7億4200万円(同21・9%増)、営業利益2000万円(同138・2%増)、経常利益2000万円(同137・8%増)
▽「不動産」=売上高15億5800万円(同2・5%減)、営業利益5億8500万円(同6・2%減)、経常利益5億4400万円(同6・0%減)
▽「その他」=売上高40億3400万円(同1・9%増)、営業利益1600万円(前年は1400万円の損失)、経常利益1億400万円(同28・4%増)
日販単体の売上高は同9・5%減の1607億3700万円、営業損失は18億9800万円(前年は6億2600万円の損失)、経常損失は17億8200万円(前年は4億9400万円の損失)、中間純損失は13億8100万円(前年は5億8400万円の損失)だった。
取引書店の既存店売上減少と閉店に加え、他社への取引変更が影響、168億円の大幅減収となり、売上総利益は21億円減少した。人件費・ITコストの削減で一般管理費は3億円減としたものの、CVS取引の送品高運賃構成比が大幅に上昇し、販売費の削減が対前年6億円減にとどまったことで、営業赤字となった。CVS取引では16億円の営業赤字を計上した。
商品別売上高は、書籍が同12・8%減の774億4900万円、雑誌が同11・7%減の408億6300万円、コミックスが同16・8%減の261億8200万円、開発品が同7・2%減の105億2300万円。全ジャンルで減収となり、商品売上全体で前年比229億円の減収となった。この減収要因のうち191億円が書店取引で、既存店売上の減少で59億円、閉店影響で62億円、取引変更影響で84億円の減収になった。新規店影響による増収は14億円だった。
返品率は、書籍が同0・8ポイント増の32・4%、雑誌が同0・6ポイント増の47・4%、コミックスが同2・9ポイント増の30・4%、開発品が同4・3ポイント減の37・6%と開発品以外は悪化し、合計で同0・8ポイント増の37・2%となった。
中間決算発表の席上、日販の奥村景二社長はローソンとファミリーマートへの配送から25年2月をめどに撤退する方針について説明した。
撤退の理由は「コンビニ取引の恒常的な赤字構造」。同社は全国のローソン約1万4000店舗、ファミリーマート約1万5600店舗に配送してきたが、出版物の売上高減少や物流コストの高騰で収益が悪化し、採算が取れないと判断した。同社撤退後はトーハンが業務を引き継ぐ。セイコーマート約1200店舗、ポプラ約60店舗への配送については現在協議中という。
同社が作成した14年度から22年度までの配送店舗数・売上高・運賃のグラフを見ると、22年度の配送店舗数は3万店舗超、運賃も約60億円で14年度と変わらない水準で推移しているのに対して、売上高は14年度の約810億円から22年度は約317億円と6割減になっている。
コンビニ取引の営業損益は赤字が続いており、22年度は32億円の赤字を計上し、23年度の中間決算でも16億円の赤字となっている。同社では25年度には50億円を超える赤字になると予測している。
奥村社長は「企業としての健全性を高め、取次事業を持続するために、コンビニ雑誌流通から撤退する。移行期間は日販が物流を請け負うなどの検討をトーハンと行い、スムーズな移行に最大限努める」と述べ、理解と協力を求めた。
流通量に見合わない固定費構造の見直しにも触れ、協業や拠点の統廃合などにより10年で一般管理費を85円削減したことを説明。物流再編プログラムの第1弾として24年秋、ロボティクスの活用や新しい倉庫管理システムの導入などで高度化された新拠点を埼玉県新座市に開設すると話した。

取次大手2社「2023年の年間ベストセラー」/図鑑、学参が上位独占/幅広い世代の人気集める

トーハンと日本出版販売(日販)は12月1日、2023年の年間ベストセラーを発表した。総合1位は、トーハンが鈴木のりたけ『大ピンチずかん』(小学館)、日販が小杉拓也『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社)だった。2位は、トーハンが『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』、日販が『大ピンチずかん』。3位は、トーハンが凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)、日販が雨穴『変な家』(飛鳥新社)。両社とも図鑑や学参が幅広い世代の人気を集め、上位を独占した。集計期間は2022年11月22日~2023年11月21日。
『大ピンチずかん』は、トーハンで1位、日販で2位にランクイン。子どもが出会うさまざまな大ピンチをレベルの大きさと5段階のなりやすさで分類しているが、子どもならずとも身に覚えのあるピンチをユーモラスに紹介した内容で、大人にも人気を博した。
『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』は日販で1位、トーハンでも2位にランクイン。子どもの算数力強化に役立つことはもちろん、脳トレや頭の体操として購入する大人も多く、幅広い層に好評を得た。
トーハン3位の『汝、星のごとく』は2023年本屋大賞受賞のほか、第168回直木賞候補、第44回吉川英治文学新人賞候補となった凪良ゆうの話題作。日販3位の『変な家』は、XやYouTubeの動画が人気のきっかけとなった、ホラー作家・YouTuberの雨穴によるオカルトミステリー。
〔トーハン調べ〕
①『大ピンチずかん』鈴木のりたけ、小学館②『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』小杉拓也、ダイヤモンド社③『汝、星のごとく』凪良ゆう、講談社④『変な家』雨穴、飛鳥新社⑤『街とその不確かな壁』村上春樹、新潮社⑥『地獄の法』大川隆法、幸福の科学出版⑦『変な絵』雨穴、双葉社⑧『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット公式ガイドブック完全ストーリー攻略』オーバーラップ⑨『キレイはこれでつくれます』MEGUMI、ダイヤモンド社⑩『パンどろぼう』『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』『パンどろぼうとなぞのフランスパン』『パンどろぼうおにぎりぼうやのたびだち』『パンどろぼうとほっかほっカー』柴田ケイコ、KADOKAWA
〔日販調べ〕
①『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』小杉拓也、ダイヤモンド社②『大ピンチずかん』鈴木のりたけ、小学館③『変な家』雨穴、飛鳥新社④『変な絵』雨穴、双葉社⑤『街とその不確かな壁』村上春樹、新潮社⑥『汝、星のごとく』凪良ゆう、講談社⑦『キレイはこれでつくれます』MEGUMI、ダイヤモンド社⑧『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット公式ガイドブック完全ストーリー攻略』オーバーラップ⑨『パンどろぼう』柴田ケイコ、KADOKAWA⑩『地獄の法』大川隆法、幸福の科学出版

野間読書推進賞/地域の読書普及に貢献/団体・個人を表彰

読書推進運動協議会(読進協=野間省伸会長)は11月2日、東京・千代田区の出版クラブホールで第53回野間読書推進賞の贈呈式を開催、団体の部として「南種子町おはなし子ども会」(鹿児島県熊毛郡南種子町)、個人の部として原田紗千子さん(長野県木曽郡大桑村)、奨励賞として「やくも朗読サークル」(北海道二海郡八雲町)、鹿兒島巖さん(秋田県鹿角郡小坂町)をそれぞれ表彰した。
野間会長はあいさつで「読書推進の現場で活躍する皆様のご報告をうかがうと、一人ひとりと笑顔を交わし、手を取り合って本に親しむ時間を持つことの大切さを改めて感じる。皆様の読書推進活動がより良き社会の一助となることを祈念する」と思いを述べた。
選考委員を代表して、日本図書館協会図書紹介事業委員会委員長の秋本敏氏による選考経過報告ののち、野間会長から受賞者に賞状および賞牌が贈呈された。
団体の部受賞の「南種子町おはなし子ども会」は、幼児から小学校低学年を対象としたおはなし会や小学校を訪問しての読み聞かせ等の活動を実施しており、代表の藤原ひとみさんは「活動を支えてくれるメンバー、長い間続けてくれた先輩たちに感謝の気持ちでいっぱい」とあいさつした。
また、個人の部受賞の原田紗千子さんは、1972年に赴任した小学校で子どもたちが本の楽しさを語る様子に感銘を受けたことが今日までの読書推進活動の原点であると明かし、「このうれしい日を機会に、もう少し頑張ってみようと思う」と語った。

河出書房新社/第60回「文藝賞」贈呈式/小泉綾子氏『無敵の犬の夜』が受賞/短編部門は西野冬器氏『子宮の夢』

河出書房新社が主催する第60回文藝賞の贈呈式が11月13日に東京・港区の明治記念館で開催された。
文藝賞受賞作は小泉綾子氏の『無敵の犬の夜』、優秀作は佐佐木陸氏の『解答者は走ってください』、図野象(ずの・しょう)氏の『おわりのそこみえ』の2作に決定。また創刊90周年企画として今年限定で復活した短編部門では、受賞作に西野冬器氏の『子宮の夢』、優秀作に才谷景氏の『海を吸う』が選ばれた。
受賞者あいさつで文藝賞の小泉氏は「小説を書いているときだけが自分に正直でいられる。自分にとっては創作が一番自分らしい場なんだと思う」とコメント、また短編部門の西野氏は「ひとりの人間に見えている世界が多くの人の前に開かれることは大きな意味を持つ。それが小説の役目だと感じている」と持論を述べた。
小野寺優社長は、各受賞作はこれまで世に出たどの作品とも異なる個性を持っており、人の創造する力を思い知らされたと受賞者を讃え、「文学の世界が魅力的であり続けるためには、これまで読んだことのないような作品、時には危険さえ感じるような新しい才能が必要。個性あふれる5つの才能を紹介できることは大きな喜びだ」と話した。

トーハン中間決算/単体・連結とも減収増益/東ロジ売却で特別利益を計上

トーハンは11月22日に2023年度中間決算(23年4月1日~9月30日)を発表した。単体売上高は前年比2・5%減の1742億8300万円、営業損失は7億3500万円(前年は9億6100万円の損失)、経常損失は3億9300万円(前年は5億5000万円の損失)、中間純利益は東京ロジスティックスセンターの売却益約31億円を特別利益に計上したため11億8100万円(前年は6億2000万円の損失)。減収増益の決算となった。
経常損益の内訳は、取次事業が運賃増や電気代、段ボール代などの影響で12億8900万円の損失、新規事業もフィットネスクラブやコワーキングスペースの事業がコロナ禍のダメージで4300万円の損失となった。一方、不動産事業は同24・3%増の9億3900万円と黒字だった。
取次事業の売上高の内訳は、書籍が同3・9%増の781億6200万円、雑誌が同2・9%減の511億2900万円、コミックが同4・9%減の235億5200万円、マルチメディア商品が同13・0%減の185億2900万円だった。
返品率は、書籍が同0・3ポイント増の40・8%、雑誌が同0・2ポイント増の48・9%、コミックが同0・5ポイント増の25・5%、マルチメディア商品が同2・4ポイント減の22・8%、総合で同0・2ポイント増の40・4%だった。
運賃の状況に関しては、送品金額の減少と比例することなく送品運賃は横ばいの状態。1㎏あたりの運賃単価は44・21円と前年より3・03円アップしており、出版社にも相応の負担をしてもらうべく運賃協力金の交渉を継続していると説明した。
連結子会社26社(書店系10社、物流系3社、その他13社)を含む連結決算も減収増益だった。売上高は同0・9%減の1898億4600万円、営業損失は1億9700万円(前年は7億4300万円の損失)、経常利益は3億3000万円(前年は6億4100万円の損失)、親会社株主に帰属する中間純利益は16億400万円(前年は9億5700万円の損失)。
事業セグメント別の経常利益を見ると、その他連結子会社(卸売・メーカー等)が前年比62・9%増の5億6400万円と順調に推移。特にマリモクラフトのキャラクター事業は、書店限定グッズを販売する「おぱんちゅうさぎブックストア」を全国233書店で展開するなど、今年も好調を維持した。
下期展望については中期経営計画「REBORN」の仕上げ、策定中の次期計画初動を視野に、各事業本部で戦略的取り組みを加速すると説明した。
「取次、情報・物流イノベーション事業」については、マーケットイン型出版流通具現化の要となる出版情報流通プラットフォーム「enCONTACT」を推進する。
「コンテンツ事業」は店頭活性化企画やNFTデジタル特典施策を拡大する。「書店事業」ではMUJIN書店の2店舗目「メディアライン曙橋店」(東京・新宿区)が11月から有人・無人24時間営業をスタート。
「海外事業」は版権エージェント事業を強化する。「関連事業」ではコワーキングスペース「HAKADORU」が高い評価を受け、マリモクラフトなどキャラクター雑貨も順調に推移している。
「不動産事業」は、旧本社跡地プロジェクトが11月から新築工事着工。24年11月頃にオフィス棟、25年6月頃にレジデンス棟が竣工予定。2棟合計で延床面積約3万8000平方㍍。

書店員必携の手帳・2024年版

■トーハン「書店実務手帳」
トーハングループのメディアパルは11月20日、書店での販売・営業に役立つ資料満載の手帳「書店実務手帳」2024年版を発売した。150×85㍉、260ページ、頒価税込1000円。
売場別年間スケジュールなど各種スケジュールや、出版物及び出版販売の基礎知識と出版統計データ、主要出版社及び各種団体名簿を掲載。英会話基本表現、仕事に役立つWEBシステムの紹介、雑誌のもくろくアプリ版の紹介などを掲載する。
購入はメディアパルHPから。書店の注文はトーハン営業担当者まで。
■日本出版販売「書店手帳」
日本出版販売は11月30日、書店で働くスタッフや出版社の営業活動に役立つ出版業界情報を満載した手帳「書店手帳2024年版」を発行した。148×90㍉、256ページ、頒価税込650円。
年間販売計画表、資格試験・検定一覧などの「販売サポート情報」、Cコード表、書籍36分類コード表などの「本の分類」、芥川・直木賞受賞者一覧、出版社名簿などの「各賞・資料」を掲載する。環境への配慮として、今回から表紙を従来のビニールから植物由来の素材に変更した。
購入は「HonyaClub.com」から。

日販調査「店頭売上」/10月期は前年比6・1%減/学参が5ヵ月連続の前年超え

日本出版販売調べの10月期店頭売上は前年比6・1%減だった。ジャンル別では、雑誌は同6・9%減、書籍は同5・0%減、コミックは同7・6%減、開発品は同3・4%減。
書籍ジャンルで売上を牽引した学参はTOEIC関連書籍などが好調で、同0・2%増と5ヵ月連続の前年超えとなった。実用書は『乃木坂46遠藤さくら1st写真集可憐』(集英社)などが売上を牽引し、同2・4%と好調だった。文芸も同1・1%増と前年超えとなった。
雑誌ジャンルでは、前年に分冊百科が好調だった週刊誌が同16・8%の大幅減になった。

連載「本屋のあとがき」~実力派の復活~/ときわ書房本店・文芸書学参担当・宇田川拓也

11月8日に発売された、本岡類『聖乳歯の迷宮』(文春文庫)が売れに売れている。当店週間売れ行きランキング文庫部門で3週連続1位。初回入荷250冊、本稿執筆時点で累計販売数150冊に迫る好調ぶりだ。
ジャンルとしては「ミステリ」に分類される小説作品なのだが、まず目を惹くのが謎の壮大さだ。キリスト生誕の地・イスラエルのナザレで、日本人考古学者が羊皮紙に包まれた謎の乳歯を掘り当てる。分析の結果、それは約2000年前のもので、さらにホモサピエンスとは異なるDNAが検出。イエス・キリストとは現生人類とは異なる〈人類〉だったのか。この発見は人為的なものではないのかと、世界中でセンセーショナルを巻き起こす。
いっぽう、伊豆諸島の青ヶ島で〝鬼〟について調査していた研究者が謎の死を遂げる。このふたつには、どのようなつながりがあるのか?
ここまで読んで、果たしてミステリとして物語が閉じるのかと、いぶかしむ方もいるかもしれないが、これが見事に〝犯人〟と〝企み〟が明らかにされ、きれいに畳まれるのだから舌を巻くしかない(とくに私は〝動機〟に虚を突かれた)。
本岡類氏は、1980年代から90年代にかけてミステリを量産し、『真冬の誘拐者』で直木賞にもノミネートされた実力派だ。しばらく小説家業から離れていたが、こうして会心の作というべき新たな物語が上梓されたことは、喜ばしい限りである。いただいた色紙には「復活」の二文字が。さらなる活躍に期待が募る。