全国書店新聞
             

平成29年7月15日号

粗利益拡大が最重要課題/日書連通常総会

日書連は6月22日午後1時から東京都千代田区の書店会館で第29回通常総会を開催。粗利益の拡大、万引防止対策、書店再生など今年度の取り組みを決めた。任期満了に伴う役員改選では理事52名を承認したあと、新役員による初理事会で会長、副会長など新執行部を決定。舩坂良雄会長(東京)を再選した。3期目を迎える舩坂会長は「全国の書店が経営を続けていけるようにするため、書店の粗利益拡大の問題を前進させる」と決意を語った。
総会は全会員46名(委任状、書面含む)が出席。光永和史理事(愛媛)の司会、鈴木喜重副会長(千葉)の開会の辞で始まり、冒頭、舩坂会長があいさつに立った。
舩坂会長は、7月31日に地元・渋谷地区で渋谷署管内書店万引き防止連絡会が発足式を行うことに触れ、「渋谷駅周辺の書店が連携し、区や警察とともに被害や犯人の情報を共有していく。地域で書店同士は競争相手だが、万引は共通問題。渋谷地区をモデルケースとして、そこで得た成果を東京、全国へと広げたい。書店だけではなく、業界をあげて取り組む流れになっている」と述べた。
また、厳しい経営環境の中で書店数の減少が止まらないことに危機感を示し、「中小書店の主力商品である雑誌の販売が落ち込んでいる。取次業界は物流面の構造改革を始めたが、今後、発売日に影響が出るのではないかと危惧している。dマガジンなど電子雑誌の定額読み放題サービスの拡大が雑誌の不振に拍車をかけている」と指摘。「知の文化を支えているのは街の本屋。全国の書店が経営を続けていけるようにするためには、書店の粗利益拡大が必要。出版社や取次と話し合い、この問題を前進させたい」と話した。
議案審議は田中隆次理事(宮崎)を議長に進行し、第1号議案の平成28年度事業報告書を各担当委員長が報告し、第2号議案の平成28年度財産目録、貸借対照表、損益計算書および剰余金処分案を事務局が説明。小泉忠男(東京)、元永剛(員外)両監事の監査報告、質疑応答のあと、いずれも原案通り可決した。
続いて、第3号議案の平成29年度事業計画案を各担当委員長が報告し、第4号議案の平成29年度収支予算案について事務局が説明。質疑応答のあと、いずれも原案通り可決した。
第5号議案の経費の賦課及び徴収方法、第6号議案の平成29年度借入金の最高限度額案、第7号議案の平成29年度役員の報酬額案は政策委員会の舩坂委員長が提案、一括して審議し、いずれも原案通り可決した。平成29年度借入金の最高限度額は1億円。平成29年度役員の報酬額は、理事は無報酬、員外監事60万円。
第8号議案の任期満了に伴う役員改選は、全会一致で選考委員による指名推薦を採用。志賀健一(北海道)、吉田徳一郎(滋賀)、楠田哲久(鹿児島)の各理事を選考委員に理事候補52名、監事候補2名を選出し、これを承認した。また、石井和之事務局長が理事を兼務することを決めた。
総会終了後、新役員による初理事会を開き、新執行部を選出。舩坂会長をはじめ、鈴木喜重(千葉)、藤原直(宮城)、中山寿賀雄(長崎)、面屋龍延(大阪)、柴﨑繁(東京)、西村俊男(新潟)、本間守世(東京)の7副会長を再選した。顧問は高島瑞雄氏(福島)が再任した。
委員会は従来通り政策、組織、指導教育、広報、流通改善、取引改善、読書推進、書店再生の8委員会体制で諸施策を推進する。政策は舩坂会長、組織は中山副会長、指導教育は鈴木副会長、広報は面屋副会長、流通改善は藤原副会長、取引改善は柴﨑副会長、読書推進は西村副会長、書店再生は本間副会長が、それぞれ委員長を務める。
【日書連通常総会の主な報告事項】
[政策委員会]
舩坂委員長は、最も重要な課題として「外商雑誌買切制度」に触れ、「書店の収益改善を実現するため、外商雑誌を買切とすることで報奨金を得る制度の確立に取り組んできた。雑誌が低迷する中、大きな壁に立ちふさがれているが、諦めたわけではない。外商をしている書店にメリットのある形を目標に今後も頑張る」と述べた。
万引防止対策では、日書連と日本出版インフラセンター(JPO)の共催で、2月14日に「出版業界をめぐる改正個人情報保護法セミナー」を開催。また、万防機構主催で3月9日~10日に開かれた「万引対策強化国際会議2017」にも参加し、関係者と情報共有を図った。総括会議では舩坂会長が登壇し、書店の万引被害の実態と対策を説明した。今後は書店、出版社、取次が一丸となって出版業界のための万引対策本部を設置する計画で、日書連は中心的な役割を担う。
消費税問題では、出版4団体が窓口を一本化し、議員立法の形で法制化して出版物に軽減税率が適用されるようロビー活動を行っていると報告した。
また、所属員数の減少で連合会の業務遂行が困難な状況になりつつある中、従来の運営体制を抜本的に見直す必要に迫られていることから、定款や規程等の変更を視野に入れ、組織委員会で研究を進めるとした。
[組織委員会]
今年4月1日現在の46都道府県組合の登録所属員数は3504店で前年比190店(5・1%)減。この1年間の新規加入10店に対し、脱退200店、組合員が増加した組合はなかったと中山委員長が報告。「昭和61年の1万2953店をピークに30年連続減少。組織規模はピーク時の27%まで縮小するという深刻な事態。加入促進とともに、脱退の原因を究明し、脱退による組合員減少に歯止めをかけたい」と述べた。
日書連オリジナル手帳「ポケッター」は、平成26年度から受注生産方式に変更し、平成28年度は4万1100部を製作した。今年度も受注生産方式とし、積極的な販売促進を図る。
[指導教育委員会]
組合加入書店の経営状況を把握し、今後の日書連活動の指針にすることを目的に、「全国小売書店経営実態調査報告書」を昨年6月に発表。この中から「書店粗利益の拡大」「客注品の迅速確実化」「取次システムの無料化」「配本の適正化」の4項目を重点テーマに取り上げることを決め、要望書「書店経営の環境改善に向けた取り組みのお願い」を作成した。鈴木委員長は「要望書を持って出版社や取次と話し合い、成果を求めていく」と述べた。
[広報委員会]
面屋龍延委員長は、機関紙「全国書店新聞」で日書連の取り組み、46都道府県組合の活動を伝えたと報告した。
また、隔年開催の全国広報委員会議を昨年9月14日、書店会館で開催。日書連広報委員と各県組合広報委員が活発な意見交換を行った。
[流通改善委員会]
雑誌発売日問題では、全国同日発売を目指して、①北海道・九州の3日目地区から2日目地区への改善、②沖縄の週刊誌航空輸送の早期実現、③年間購読など出版社が読者に販売する雑誌の着荷日について、該当地区の発売日に合わせた調整(dマガジンの配信についても同様)――などについて対応を求めた。この結果、北海道地区で「週刊新潮」「週刊文春」「女性セブン」の週刊誌3誌が1日繰り上がり金曜日発売が実現したと藤原委員長が報告した。「女性セブン」は宮城、福島、山梨、長野の各県で1日繰り上がり首都圏と同日の木曜日発売になった。「今後も、全国同日発売の実現を目指して雑誌発売日励行本部委員会への申し入れを続ける」と述べた。
図書館問題では、昨年4月、活字文化議員連盟が中心となって設置した「全国書誌情報の利活用に関する勉強会」が発表した答申に、「地方公共団体及び公共図書館は、図書館への図書納入に関して、指定管理事業者が納入業者を兼ねることがないよう区分し、図書納入にあたっては地域書店を優先し、地域文化の活性化に努めること」との一文が入っていることに言及し、「この提言内容を実現するため、勉強会の会長を務める細田博之衆議院議員と日本出版インフラセンターの相賀昌宏代表理事に、舩坂会長名で申し入れを行った」と報告した。
[取引改善委員会]
柴﨑委員長は、同委員会の取り組む問題が多岐にわたることから問題点を絞りたいとして、「街の書店はアマゾンの脅威を毎日感じている。リアル書店が生き残るため、国に訴えていくことも必要。今年度は重点課題としてアマゾン対策と、アマゾンだけに買われないような店舗作りの研究に取り組む」と表明した。
副読本の学校教諭への直接販売については、「影響を受けた地域書店で売上が減少しているという情報もある。書店は疲弊している。書店を通して販売してほしいと出版社に訴えていく」と述べた。
送品・返品同日精算は「完全実施に向けて取り組みを続ける」とした。
[読書推進委員会]
平成28年度も「春の書店くじ」「読書週間書店くじ」を発行。「心にのこる子どもの本新学期・夏休みセール」「同秋・冬セール」増売運動を実施したと西村委員長が報告した。
また、「読書推進活動補助費」の募集を行い、独自企画を提出した12組合に総額225万円の補助金を拠出することを決定した。西村委員長は「店に本を置くだけで売れる時代は過ぎた。知恵を絞り、来店客を増やすアイデアを出してほしい」と呼びかけた。
[書店再生委員会]
平成27年9月~12月に実施した実用書増売企画「第2回書店金賞『和~日本のこころ』」は、今年3月に報奨金を各県組合に送金。参加書店345店、販売冊数は4906冊だった。本間委員長は「実用書増売企画はいったん休止し、より多くの書店が参加できるアイデアを募集している」と述べた。

舩坂良雄会長を再選/出版物小売業公正取引協議会

出版物小売業公正取引協議会は6月22日午前、東京都千代田区の書店会館で臨時総会を開き、会員35名(委任状、代理人含む)が出席。任期満了に伴う役員改選で理事49名、監事2名を選出。総会終了後、新理事による初理事会を開き、舩坂良雄会長を再選した。
[小売公取協役員体制]
▽会長=舩坂良雄(東京)
▽副会長=鈴木喜重(千葉)藤原直(宮城)柴﨑繁(東京)
▽専務理事=元永剛(員外)
▽理事=志賀健一(北海道)成田耕造(青森)加賀谷龍二(秋田)玉山哲(岩手)五十嵐太右衞門(山形)藤原直(宮城)西猛(福島)池田和雄(茨城)杉山和雄(栃木)竹内靖博(群馬)吉田矩康(埼玉)井上俊夫(神奈川)本間守世(東京)大塚茂(山梨)江﨑直利(静岡)春井宏之(愛知)木野村匡(岐阜)別所信啓(三重)西村俊男(新潟)丸田茂(富山)森井清城(石川)塩川明人(長野)安部悟(福井)吉田徳一郎(滋賀)面屋龍延(大阪)犬石吉洋(京都)林田芳幸(奈良)津田成生(和歌山)中島良太(兵庫)古泉淳夫(鳥取)今井直樹(島根)小野正道(岡山)山本秀明(広島)西尾文士(香川)平野惣吉(徳島)光永和史(愛媛)五藤栄一郎(高知)安永寛、森松正一(福島)堤洋(佐賀)中山寿賀雄(長崎)長﨑晴作(熊本)二階堂衞司(大分)田中隆次(宮崎)楠田哲久(鹿児島)小橋川篤夫(沖縄)
▽監事=小林洋(東京)戸和繁晴(大阪)

「春夏秋冬本屋です」/「司書全員と友達になりたい」/大分・おおくま書店店長・大隈智昭

私にとって学校へ足を運ぶことは、すなわち図書館に行って司書さんに会うこと。学校図書館といえば学生時代は近寄りもしなかったのに、不思議なハナシです。
別府市の公立高校図書館はどこもトーハンの学校図書館管理システム「探検隊」を使い、その半分は同社の図書館専用受発注システム「e‐slip」で本を入手している。e‐slipは書店も利用できることを、この4月に知った。学校の発注一覧を確認管理できるので、司書さんのところに行くたびに注文状況を聞かなくてもよくなったのがうれしい。
小中学校の図書館については、市内3軒の教科書取扱書店が市の学校教育課から受注。入荷後に当店に持って来て、図書装備完了後、私が学校へ持って行く。学校教育課からは学校の事務室に持って行くよう言われているが、図書館に顔出しして司書さんに会える大義名分を使わないのはもったいないので、あえて図書館に持って行く。実は私の前年度の業務目標は、学校図書館の司書さん全員と友達になることだったりして。目標達成はまだですが…。
うれしいことに、今年度より別府市立図書館に本を納めることになった(こちらも小中学校の図書館に納める市内3軒の書店で)。今年度の目標に、別府市立図書館の職員さんたち全員と友達になることが加わりました。

「ポケッター」18年版/受注数増にご協力を

日書連組織委員会(中山寿賀雄委員長)は、年末年始の贈答用に「ポケッター18」(78×127×3㍉)、名入れ印刷の代用に便利な「店名刷込シール」(55×25㍉)を斡旋します。どうぞご活用ください。
受注生産となっておりますので、下記の点にご注意ください。
①価格は申込総数により決定しますので、今回のご案内は予定価格です。決定次第、書店新聞等でお知らせします。
②申込締切日以降の申込み及び申込みのキャンセルはできません。
③ポケッター店名入りまたは店名刷込シールの申込みは、必ず印刷原稿を添付してください。
※以下は3万5千~4万2千部製作した場合の本体予定価格です。別途消費税がかかります。
◇ポケッター店名なし(のし袋付)=百部単位。百部1万400円~1万1000円
◇ポケッター店名入り(のし袋付)=5百部以上、百部単位。印刷は後ろ見返し。のし袋への印刷は不可。
5百部以上・百部あたり1万2400円~1万3000円、1千部以上・百部あたり1万1800円~1万2400円、1千5百部以上・百部あたり1万1600円~1万2200円
◇店名刷込シール
5百枚以上・百枚あたり1350円、1千枚以上・百枚あたり1150円、2千枚以上・百枚あたり1050円
※「ポケッター店名入り」「店名刷込シール」の書体は細ゴシック体または明朝体に限ります。
申込書は間もなく発送します。

吉田矩康理事長を再選/「組合員全員で書店活性化図る」/埼玉総会

埼玉県書店商業組合は5月27日、さいたま市浦和区の埼玉書籍で第33回通常総会を開き、組合員88名(委任状含む)が出席。吉田矩康理事長を再選した。
総会は山口洋事務局長の司会で始まり、吉田理事長があいさつ。「本年4月現在の組合員数は135名で減少に歯止めがかからない状況。一方、理事は33名いる。組合合理化も含め、組合員全員で書店活性化を図っていきたい」と述べた。
続いて、水野兼太郎常任理事を議長に議案審議。平成28年度事業報告、決算報告、監査報告、平成29年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
任期満了に伴う役員改選では、吉田理事長を再選した。
埼玉県中小企業団体中央会組合支援部主事・齋藤洋輔氏が祝辞を述べ、総会を終了した。
[埼玉組合役員体制]
▽理事長=吉田矩康(吉田謙受堂)▽副理事長=宮川清一(みやかわ)田島正雄(文林堂)藤村誠一(藤村書店)奈良俊一(ならいち)
(水野兼太郎広報委員)

役員人事と委員会担当を決める/大阪理事会

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は6月10日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
5月の総会後の理事会で再任が決まった戸和繁晴副理事長(トーワブックス)以外の副理事長について、深田健治(ブックスふかだ)、萩原浩司(宮脇書店大阪柏原店)、堀博明(堀廣旭堂)各氏の留任が面屋理事長より諮られ、拍手で承認した。常務理事は選挙の結果、灘憲治(ナダヤ書店)、坂口昇(梁川書店)、二村知子(隆祥館書店)、鶴山武済(ブックイン加美)、田上順一(田上書店)、虎谷健司(虎谷誠々堂)、藤田彰(ブックプラザ)の7氏を決定。各委員会の委員長を以下の通り決めた。
▽総務・財務=灘憲治▽読書推進=虎谷健司▽ストップ・ザ・廃業、再販・公取協=坂口昇▽定款・規約=冨士原純一▽レディース、共同受注=松田和子▽広報・HP=東正治▽経営活性化=二村知子▽事業・増売=鶴山武済▽雑誌発売日励行=家村英嗣▽出店問題・組織強化=田上順一▽出版販売倫理=藤田彰▽図書館・情報化=未定
(石尾義彦事務局長)

平成29年度日書連役員

[新役員体制]○印新任
▽会長=舩坂良雄(東京・大盛堂書店)
▽副会長=鈴木喜重(千葉・ときわ書房)藤原直(宮城・金港堂)中山寿賀雄(長崎・好文堂書店)面屋龍延(大阪・清風堂書店)柴﨑繁(東京・王様書房)西村俊男(新潟・文信堂書店)本間守世(東京・本間書店)
▽理事=志賀健一(北海道・リブレリーフィール)成田耕造(青森・成田本店)加賀谷龍二(秋田・加賀谷書店)玉山哲(岩手・東山堂)五十嵐太右衛門(山形・八文字屋)西猛(福島・西沢書店)池田和雄(茨城・一貫堂書店)杉山和雄(栃木・杉山書店)竹内靖博(群馬・シロキヤ書店)吉田矩康(埼玉・吉田謙受堂)井上俊夫(神奈川・井上書房)小林洋(東京・烏山書房)○大塚茂(山梨・柳正堂書店)江﨑直利(静岡・藤枝江﨑書店)春井宏之(愛知・正文館書店)木野村匡(岐阜・東文堂本店)別所信啓(三重・別所書店)丸田茂(富山・清明堂書店)森井清城(石川・紀陽館森井書店)塩川明人(長野・花屋書店)安部悟(福井・安部書店)吉田徳一郎(滋賀・ヨシダ書店)戸和繁晴(大阪・トーワブックス)○犬石吉洋(京都・犬石書店)林田芳幸(奈良・啓林堂書店)津田成生(和歌山・津田書店)中島良太(兵庫・三和書房)古泉淳夫(鳥取・鳥取今井書店)今井直樹(島根・今井書店)小野正道(岡山・小野書店)山本秀明(広島・金正堂)西尾文士(香川・西尾誠文堂)平野惣吉(徳島・平惣)光永和史(愛媛・松山堂書店)五藤栄一郎(高知・冨士書房)安永寛(福岡・金修堂書店)森松正一(同・森松尚文堂)堤洋(佐賀・ブックスグリーンウッド)長﨑晴作(熊本・熊文社)二階堂衞司(大分・二海堂書店)田中隆次(宮崎・田中書店)楠田哲久(鹿児島・楠田書店)小橋川篤夫(沖縄・いしだ文栄堂)○石井和之(員外・日書連事務局)
▽監事=小泉忠男(東京・小泉書店)元永剛(員外)
▽顧問=髙島瑞雄(福島・高島書房)

取次、出版社に要請活動/「書店経営の環境改善のための要望」/日書連定例理事会

日書連は6月22日午前、東京都千代田区の書店会館で定例理事会を開いた。主な審議事項は以下の通り。
[指導教育委員会]
要望書「書店経営の環境改善に向けた取り組みのお願い~『全国小売書店経営実態調査報告書』の分析から~」の内容を鈴木喜重委員長が説明した。
鈴木委員長は舩坂会長らとともに取次、出版社の主要各社を訪問し、同要望書を手渡すとして、「書店は瀕死の状態。書店の粗利益の拡大、客注品の確実迅速化、取次システム利用料の軽減、配本の適正化をできるだけ早く実現したい。継続して協議を行うが、話し合いの期限を設ける必要もある。東京の出版社だけでなく他の都道府県の出版社にも同様の要望を行っていく」と方針を話した。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、フランスのいわゆる「反アマゾン法」に言及し、今年度は委員会としてアマゾン問題に重点的に取り組む意向を示した。
[組織委員会]
各都道府県組合に所属する組合員の5月期加入・脱退状況は、新規加入なし、脱退24店で、差し引き24店純減。この結果、日書連所属員数は3451店となったと中山寿賀雄委員長が報告した。また、日書連オリジナル手帳「ポケッター」2018年版の実施要綱案(別掲)を承認した。
[読書推進委員会]
西村俊男委員長は、自ら理事長を務める新潟県書店商業組合が日書連の読書推進活動補助費を使って「にいがた文学検定」「椎名誠講演会・サイン会」を実施することを報告。「自前で事業を行うことが難しい組合は補助金を活用してほしい」と呼びかけた。

書店間の情報交換が重要に/福井組合通常総会で安部理事長

福井県書店商業組合は5月29日、芦原温泉「灰屋」で平成28年度通常総会を開催し、組合員27名(委任状含む)が出席した。
総会は京藤副理事長の司会進行で始まり、安部悟理事長があいさつ。「日書連所属員はピーク時の4分の1近くまで減少し、全国的にその勢いが止まらない。
福井組合は昨年2店の脱退があった。出版界では週刊少年ジャンプの発売日は書店の日と言われたものだが、そのジャンプも200万部割れとなり、書店の店頭も寂しくなった。書店間での情報交換、書店くじや共同販売への積極的な参加がますます重要になる」と述べ、協力を呼びかけた。
角谷理事を議長に選任し議案審議を行い、事業報告、決算報告、事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
役員改選では現理事が全員留任し、新たに山田治氏(山田書店)が理事に就任。安部理事長、京藤敏実、清水祥三の両副理事長を再選した。
議事終了後、来賓のトーハン北陸支店アシスタントマネージャー・佐藤義和氏、日販北陸支店係長・鈴木浩氏、福井県教科書供給所部長・前田三男氏、聖教新聞社福井支局長・加藤幸治氏があいさつした。
[福井組合役員体制]
▽理事長=安部悟(安部書店)▽副理事長=京藤敏実(ひしだい書店)清水祥三(じっぷじっぷ)
(清水祥三広報委員)

街の本屋が経営継続できる環境作る/舩坂会長の総会あいさつ(要旨)

私の店で先日、万引を2件見つけた。これは氷山の一角で、本当に悔しい思いをしている。当店がある東京の渋谷地区で、全国万引犯罪防止機構(万防機構)の「渋谷プロジェクト」が発足する。渋谷駅周辺の書店同士が、渋谷区や警察と連携して万引被害や万引犯の情報を共有し、万引防止に取り組むものだ。地域では書店同士は競合相手だが、万引は共通問題。従業員にも万引防止の意識が高まってきている。
7月31日に渋谷警察や区役所、町会や防犯協会の方たちが集まって、「渋谷署管内書店万引き防止連絡会」の発足式が行われる。「渋谷プロジェクト」は非常に大きな反響を呼んでいて、最初は渋谷の書店だけという形だったが、渋谷区全体の大きな取り組みになりつつある。渋谷地区を1つのモデルケースとして、そこで得られた成果を元に、東京の各地区、さらには全国に広げていきたいと思っている。
また、万防機構の下に万引防止出版対策本部を立上げ、日書連をはじめ、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本出版インフラセンター、日本医書出版協会が参加する方向で進んでいる。万引は書店だけが被害をこうむるのではなく、出版業界を挙げて防止に取り組んでいこうという流れになってきている。
いま我々の業界は大変厳しい状況にある。明日香出版から創業46周年記念出版として、久禮亮太さんの『普通の本屋を続けるために』が刊行された。久禮さんはあゆみBOOKS小石川店の店長などを務めた後、東京・神楽坂にあるブックカフェ、神楽坂モノガタリの運営に携わっている。この本には仕事への取り組み方が若い感覚でつづられ、私もいろいろと再確認させられた。本を好きな若い人たちが独自の取り組みをしていることは明るい材料だ。また、6月20日の読売新聞朝刊では、韓国のソウルで街の書店が元気だという記事が掲載されていた。日本の業界を参考にして、毎日イベントを開くなど個性的な店がたくさん出てきているということだ。
全国の書店は厳しい経営環境の中で減少を続けている。平成28年の書籍・雑誌推定販売金額は1兆4709億円で、12年連続のマイナスだ。中小書店の主力商品である雑誌の販売が落ち込み、書籍の販売額を下回った。取次業界を見ると、雑誌の販売不振が大きく響き、運転手不足など輸送会社の厳しい経営環境もあって物流面の構造改革を始めたが、今後雑誌の発売日に影響が出るのではないかと危惧している。dマガジンなど電子雑誌の定額読み放題サービスは、安い金額で多くの雑誌が読めるうえ、首都圏の発売日と同時配信で地方と格差が生じるため、このサービスの拡大が雑誌の不振に拍車をかけている。この他、アマゾンの無料配送や、図書館納入など様々な問題が山積している。日本の知の文化を支えているのが街の本屋だ。全国の書店が経営を続けていけるようにするためにも、書店の粗利益拡大を出版社、取次と話し合って実現し、前進していきたい。

50周年記念し名古屋でイベント開催/中部トーハン会

中部トーハン会(高須博久会長・豊川堂)は、今年で50周年を迎えることを記念し、「創立50周年記念夏休みイベント」を7月28日(金)、29日(土)に名古屋市中村区の「ウインクあいち」6階展示場で開催する。
28日は午後6時半から、芥川賞作家・羽田圭介氏によるスペシャルトークショー「読書をしなければ人生は変えられない!」を開催する。
29日は午後1時から、タレントの藤本美貴氏が「絵本との関わり方と子育てについて」をテーマにスペシャルトークショーを行う。
また、午前10時から絵本作家の読み聞かせライブを開催し、浦中こういち、高畠純、服部美法・上平川侑里の各氏が登場、合同サイン会も実施する。午後2時半からは、中部大学現代教育学部准教授の深谷圭助氏による「夏休みは親子で辞書引き学習法!」を開催。午後3時からは「ビブリオバトル中部トーハン会スペシャル」を行う。
29日はこのほか、こじましほ氏「消しゴムはんこ教室」や、JRAC(JPIC読書アドバイザークラブ)メンバーによる「おはなし広場&ちょこっと作っちゃう?工作教室」、ぬりえコーナーなど、多彩なイベントが行われる。

書店で「ペルソナ」導入を提案/本とスマホのコラボも/東海日販会総会で片桐会長

東海日販会は6月13日、名古屋市中区の名古屋東急ホテルで第61回通常総会を開催し、会員書店、出版社、日販関係者合わせて293名が出席した。
冒頭であいさつした片桐栄子会長(磨里書房)は、架空の人物像を見込み客として設定するマーケティング手法「ペルソナ」で成功した「スープストックトーキョー」の事例を紹介。「書店がコーナーごとにペルソナに沿った顧客の人物像を設定すると面白い。POPも架空の人物像を想像して作れば違うものができる」と提案した。また、JTBとビームスなど旅行業界とファッション業界の間で協業が進んでいるとして「今後、ファッションと旅を結びつけることで、オシャレな旅の需要を喚起できると見ている。ファッション業界からはスマホで洋服を自撮りしてSNSで拡散されることが期待されている。我が業界でも本とスマホをコラボさせる仕組みを出版社と日販にオシャレに作っていただきたい。まず来店のきっかけ作りを行うことが必要」と述べた。
来賓あいさつで日販の平林彰社長は「アマゾンが米国でリアル店舗を作っている。アマゾンもリアル店舗に価値を見出している。日販は、読者がスマートフォンや店頭の検索機を通じて店頭の在庫、取次の在庫、出版社の在庫を見渡すことができ、在庫があるときは購入を確約できる状態を作りたい。店舗の面積には限りがあるが、本との出会いを作り、ロングテールの在庫を検索して入手できる世界を作りたい」と述べた。
このあと日販名古屋支店から「『本』業で取り組むinnovation」「aroundtheBooks~来店動機をつくる~」「人と本をつなぐ新しい個客体験」のプレゼンテーションが行われた。
総会終了後、日経BP総研マーケティング戦略研究所の品田英雄上席研究員が記念講演「モノからコトへの時代における消費者心理のつかみ方」を行った。
懇親パーティーはポプラ社の奥村傳社長による乾杯の発声で開宴。「東海ブックフェス大賞2016」受賞銘柄の『おやすみ、ロジャー魔法のぐっすり絵本』(飛鳥新社)、「同・掘り起し大賞」受賞銘柄の『この闇と光』(KADOKAWA)の拡販取り組み優秀書店の表彰式を行った。

中国国家図書館と図書寄贈契約で調印/日販

日販は6月12日、中国国家図書館との間で行っている友好事業「日本出版物文庫閲覧室」に関する第8期契約調印式を、東京都千代田区の銀座アスターお茶の水賓館で開催した。
同事業は、日中両国の相互理解と文化交流の促進を目的に、1982年に中国国家図書館と図書寄贈契約を締結したことに始まり、翌83年には同図書館内に寄贈図書を収蔵する「日本出版物文庫閲覧室」を開設。契約は5年を1期とし、これまで日販が出版社の協力のもと7期35年間にわたって寄贈した図書は約31万冊、約11億円にのぼる。現在98社の出版社が協力し、中国国家図書館が図書を選定、日販が全て無償で寄贈する方式(一部出版社も無償提供)で行っている。
調印式には、中国国家図書館・魏大威副館長を団長とする訪日代表団5名が出席。日販・平林彰社長と魏副館長が日中両国語の2通の協議書にそれぞれ署名し、「この文化交流事業が日中両国の文化交流に新たな色彩を加えること、そして両国民の文化領域における相互理解が深まることを期待する」などと記された声明書を読み上げた。

年末年始の特別発売日、12月29日と1月4日に/取協・雑協

日本出版取次協会(取協)と日本雑誌協会(雑協)は6月22日、東京都千代田区の取協会議室で記者会見を行い、2017年度の「年末年始特別発売日」を、12月29日(金)と来年1月4日(木・全国一斉発売)に設定すると発表した。
前回は昨年12月31日を特別発売日に設定、雑誌臨時増刊、ムック、コミックスなど約130点・約8百万部と、単行本、文庫、書籍扱いコミックスなど新刊約70万部を全国一斉発売した。特別発売日の雑誌売上は前年比117・3%、昨年12月29日から1月4日までの雑誌売上は前年同期比101・5%となった。
会見で、雑協次世代雑誌販売戦略会議の井上直議長(ダイヤモンド社)は、「年末年始に書店に足を運んでいただけるように、12月29日と1月4日にダブルキャンペーンを実施する。昨年と同様、レトルトカレーの配布企画と、おみくじしおりを配布し読者に図書カードが当たる企画の2つを柱に、現在検討を進めている。企画内容は書店に早めに案内できるようにしたい」と説明。キャンペーンは規模を拡大し、前回2200店が実施したおみくじしおりは、今回4000店を目指すとした。
年末と年始の2回設定したことについて、集英社の大山恒生雑誌販売部長は「今年は12月31日が日曜日に当たり、書店や輸送現場に不都合が多いと判断した。まだ協議段階だが、29日には定期誌で幼年誌・幼児誌や、1日発売の婦人誌を集中してはどうかという意見がある。4日については週刊誌を中心に設定を検討している」と説明。トーハンの川上浩明専務は「定期誌の発売については各社のスケジュールによるが、定期誌に加えて新たなコンテンツで盛り上げていきたい」、日販の安西浩和専務は「昨年の一番の課題は読者への告知と認知だった。様々なジャンルにまたがると店頭で告知が難しい。新商品とともに、強い定期誌をミックスしてアピールしていければ」と述べた。

「能勢仁が語る書店史道を拓いてくれた人」/明屋書店・安藤明氏

〔顧客還元の真髄「お客様を恋人に」〕
昭和30年代後半、40年代は日本が初めて経験した高度成長経済時代であった。書店は毎年二桁成長していた。四国・松山に明屋書店ありといわれたのはこの時代である。最初の頃ははるやと読んでくれなかったそうである。今でこそ当たり前のPOP広告だが、明屋書店ではすでに実施していた。特に有名であったのは天井から吊るされた大きな広告であった。
書籍の大型企画もよく売った店である。いつも全国ランクの上位に店名を出していた。大型企画には報奨制度はつきものであった。書店では出版社から贈られてくる報奨品は、大抵の店では社員が山分けの恩恵に預かっていた。ところが、小生が明屋書店・大街道店で見た景色は違っていた。店頭で行われていたのは、出版社からいただいた景品の〝お裾分けセール〟であった。これは安藤明社長が他業界から学んだ顧客還元法であった。版元から頂いた景品類を、日を決めて来店されたお客様にお裾分けするものである。お客様あっての商売なのだから、頂いた物はお客様に返すのが筋という発想である。
この企画の真髄を安藤明社長に尋ねたところ、明屋書店の顧客意識は「お客様を恋人にしよう」であった。現在でもこの顧客還元は行われているという。
(ノセ事務所代表)