全国書店新聞
             

令和2年2月1日号

出版業界の改題解決へ前進/矢幡理事長が決意を表明/東京組合新年懇親会

東京都書店商業組合は1月15日、東京・文京区の東京ドームホテルで新年懇親会を開催し、組合員、出版社、取次など総勢187名が出席。矢幡秀治理事長は年頭あいさつで、今年の目標を漢字一文字で「進」と表し、「前進することで起きる変化を、進化に変えたい」と出版業界の課題解決に取り組む決意を示した。
懇親会は秋葉良成厚生委員長の司会で進行し、渡部満副理事長が「新年懇親会は1年休んだが、矢幡理事長の新体制が始まり、業界三者が一堂に会して懇親を深めるところから新しい年を迎えることが大事だと、開催を決めた。出版業界のためにお互い協力しあう場にしていただきたい」と開会の辞を述べた。
年頭あいさつを行った矢幡理事長は、出版社、取次、特任理事の組合活動に対する協力に感謝を表明して、「書店は売れる本、売りたい本がほしい。なかなか本が来ないと言われて久しいが、何かを変えなければという動きが少しずつ出てきており、そこに取り組んでいきたい。年末年始に好調な数字が出て、今も意外に売上は保っている。お客様が店に来てくれるのは非常にうれしく、続いてくれればと思っている。ただそれも書店だけでは果たせず、出版社、取次の力が必要だ」と販売促進に一層の協力を呼びかけた。
さらに、今年の目標について、漢字一文字で「進」と掲げ、「業界のために一歩でも半歩でもいいから踏み出す。今までやってきたことを進めるとともに、今まで保留だったことも少しずつでいいから前に進めたい。それで色々な変化が起きてくる。その変化を進化に変えたい」と課題解決への決意を示した。
続いて、出版社を代表して日本書籍出版協会の相賀昌宏理事長(小学館)があいさつ。相賀理事長はキャッシュレス決済の手数料問題について、「出版社はスリップレス化によるコストダウンのいくらかを振り向けることも考えなければいけない」と指摘。また、来店客の感覚を知るために書店で自ら本を買い、思ったことをお互いに話し合うことが大事だと提言した。
東京組合特任理事を代表して紀伊國屋書店の高井昌史会長兼社長は、物流問題、決済手数料の原資確保、若者の読書離れなどの解決に社を挙げて取り組み、増売企画や共同購買などで東京組合と連携できることは積極的に推進していくと述べた。
最後に取次を代表し、トーハンの川上浩明副社長が、今年は業界3者が問題解決を図るスタートの年だとして、「大変な時だが、10年後に『あの頃業界3者で話し合ったから今がある』と言えるような形にしたい」と述べて乾杯した。
歓談の後、平井久朗副理事長が閉会の辞を述べて正副理事長が登壇。柴﨑繁副理事長が音頭を取り、三本締めで終了した。

19年出版販売額は4・3%減の1兆2360億円/電子との合算は前年比増

出版科学研究所は1月24日発行の『出版月報』で、2019年の紙の出版物の推定販売金額は前年比4・3%減の1兆2360億円と発表した。内訳は書籍が6723億円、雑誌が5637億円。紙と電子を合算した販売金額は同0・2%増の1兆5432億円で、14年の電子出版統計開始以来初めて前年を上回った。

近刊情報活用で売上確保を/「BooksPRO」に期待/宮城新年会

令和2年宮城県書店商業組合・出版・取次・運輸合同新年懇親会が1月7日、仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で開催され、総勢58名が出席した。
懇親会は、司会のトーハン東北支店・藤本直志氏が宣言して開会。あいさつを行った宮城組合の藤原直理事長は、今年の出版業界の動向について言及。休配日が増え、日書連としては継続して出版輸送問題に取り組んでいかなければならないと語った。また、日本出版インフラセンターの出版情報登録センターが3月10日に開始を予定する近刊・既刊の出版情報サイト「BooksPRO」に期待を示し、出版社から提供された書誌データを新刊の事前注文などで活用して売上確保に努めたいと述べた。
続いて日販の椎木康智東部支社長が祝辞を述べ、年末年始の店頭売上状況は全国平均で106・0%、宮城県は106・2%だったと報告。日販としては新たな試みにチャレンジしていく年にしていきたいと語った。トーハンの藤岡聡東部支社長は、年末年始店頭売上が好調に推移したと報告し、「皆さんでよい年にしていきましょう」と述べて乾杯した。
歓談の後、恒例の年男年女の紹介を行い、ヤマト屋書店・五十嵐裕二氏、八文字屋書店・梅津清太郎氏、アイエ書店・笹沼悠司氏、NHK出版・伊藤精氏、河北新報出版センター・水戸智子氏、トーハン東北支店・捧誠一氏が記念品を受け取った。続いて参加各社が今年の抱負やあいさつを述べ、宮城組合・小関眞助相談役の三本締めで散会した。(佐々木栄之広報委員)

土曜休配日22日、平日3日に/20年度「年間発売日カレンダー」

日本出版取次協会と日本雑誌協会は1月15日、2020年度「年間発売日カレンダー」を発表した。
土曜休配日は年間22日。オリンピック、パラリンピック期間の土曜日5日間は首都圏の交通事情を考慮し、これに含めた。平日休配日は3日(年末12月29日を含む)を設定する。
20年度は、出版物の売上低迷と業量の減少、運送会社を取り巻く環境問題等の現状を踏まえ、①運送会社の「労働時間等の法令遵守」「働き方改革の推進」、②業量の平準化――を最大限考慮に入れ協議を重ねたという。また、今後も週休2日の早期実現をめざし、両団体で継続的に協議を続けることを確認した。

粗利益の向上、ますます切実に/ポイント還元事業終了後の負担憂慮/京都・新春を祝う会

京都府書店商業組合は1月7日、京都市中京区の京都ホテルオークラで京都出版業界・新春を祝う会を開催し、組合加盟書店27名をはじめ出版関係者100名が出席。犬石吉洋理事長(犬石書店)は日書連が推進する書店環境改善運動に触れ、キャッシュレス・ポイント還元事業終了後の決済手数料負担を考えると、粗利30%実現はますます切実な問題になると訴えた。
犬石理事長は「昨年は消費税増税やキャッシュレス・ポイント還元事業の開始もあり、小売業は大変な年末を迎えることになった。この事業が終了したあと手数料がどうなるかを考えると、粗利30%の必要性を切に感じる」とし、「これを実現するためには、各書店が常に最新の情報を取り入れ、魅力的な売場を作り、合理的な経営を行い、地域から必要とされる書店にならなければならない。本と人とをつなぐ努力をしっかりと行うことが必要不可欠だ」と呼びかけた。
来賓のトーハン・豊田広宣専務・近畿支社長があいさつした後、門川大作京都市長は「街の書店は教育先進都市・文化都市としての京都の誇り。書店組合と協力して設立した京都文学賞には500件の応募があった。書店が活躍できる取り組みを行っていきたい。読書で人は育つ。小中学校でいかに良い本と出会うことができるかが大事」と述べ、乾杯の音頭をとった。
歓談の後、洞本昌哉副理事長(ふたば書房)の中締めで盛況のうちに閉会した。(若林久嗣広報委員)

書店環境改善問題、解決策探る/キャッシュレス手数料増加を懸念/大阪出版販売業界新年互礼会

大阪出版販売業界新年互礼会(主催=大阪府書店商業組合・大阪出版取次懇和会、後援=日本書籍出版協会大阪支部・出版三水会)が1月9日、大阪市北区のウェスティンホテル大阪で開催され、出版社、取次、書店、協力会社など124名が出席。大阪組合・面屋龍延理事長(清風堂書店)は書店環境改善問題とキャッシュレス普及に伴う手数料増加への対応を訴えた。
あいさつした面屋理事長は「日書連では、15年に実施した全国小売書店経営実態調査の分析結果に基づき『書店が経営を続けるためには粗利30%以上が必要』という考えを出版社や取次に伝えて意見交換するなど書店環境改善運動を行い、今年で5年目を迎えた」と報告。「今は取次も同様のことを言っている。業界のプロフィット企業である出版社と返品問題や買切制の議論を深め、解決策を探りたい」との方針を示した。
また、昨年の消費税増税に伴い国が実施した「キャッシュレス・ポイント還元事業」で、増税に間に合うよう申請した店舗のうち10月1日に間に合わなかった店も多くあったとして、10月1日に開始した店と登録遅れで開始できなかった店との間で、お客様に対するサービスで不公平が生じたことを問題視した。
さらに、キャッシュレス決済の普及に伴い、手数料の増加が書店経営の大きな負担になっていることを懸念。「業界3者で痛みを分かち合うことも必要ではないか」と提案した。
大阪取次懇和会・服部達也代表幹事(楽天ブックスネットワーク)は「10年代に電子化がここまで進化するとは想像できなかった。20年代はさらに加速する。出版業界の決済方法も変化し、もしかしたら現金決済での流通がなくなる時代が来るかもしれない。変わったことを受け入れるのではなく、自ら変えていく10年間にしたい」と乾杯のあいさつをした。
歓談の後、書協大阪支部・矢部敬一支部長(創元社)が中締めのあいさつをし、三本締めで閉会した。(石尾義彦事務局長)

日書連のうごき

12月4日JPO運営幹事会に事務局が出席。
12月10日読進協標語選定委員会・全体事業委員会に事務局が出席。JPO理事会に藤原副会長が出席。書店大商談会実行委員会に矢幡会長が出席。
12月11日書店環境改善でKADOKAWA訪問に矢幡会長、鈴木、面屋両副会長が出席。日本児童図書出版協会懇親会に矢幡会長が出席。
12月12日本の日実行委員会に矢幡会長、藤原副会長、林田理事。JPO懇親会に春井副会長が出席。
12月13日読書推進補助費審査会に矢幡会長、春井副会長が出席。『出版再販・流通白書』会員説明会に藤原、柴﨑、渡部各副会長が出席。全国万引犯罪防止機構理事会に事務局が出席。
12月18日各種委員会・部会。出版販売年末懇親会。
12月19日定例理事会。
12月24日定期会計監査。
12月26日事務局業務終了。

春の書店くじ実施要項

▽実施期間令和2年4月20日(月)より30日(木)まで。書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数110万枚。書店には1束(500枚)3571円(税別)で頒布
▽申込方法と申込期限注文ハガキに必要事項を記入し、束単位で所属都道府県組合宛に申し込む。締切は2月20日(厳守)
▽配布と請求方法くじは取引取次経由で4月15日前後までに配布。代金は取引取次より請求
▽当せん発表5月27日(水)。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品総額682万円
当せん確率は23本に1本
1等賞=図書カード
又は図書購入時充当5000円
110本
2等賞=同1000円220本
3等賞=同500円3300本
4等賞=図書購入時に充当100円
44000本
▽賞品引き換え取り扱い書店で立て替え。図書カードの不扱い店または図書カードが品切れの場合は、お買い上げ金額に充当
▽引き換え期間読者は5月27日より6月30日まで。書店で立て替えた当せん券は7月31日までに「引換当せん券・清算用紙」(発表ポスターと同送)と一緒に日書連事務局に送付
▽無料配布店頭活性化活動の一環として、組合加盟書店全店に無料の書店くじ(50枚)を直送
▽PR活動全国書店新聞に実施要項を掲載。日書連ホームページで宣伝。「春の書店くじ」宣伝用ポスターは日書連ホームページよりダウンロード(郵送はしません)

「春夏秋冬本屋です」/「伝わることの凄さと面白さ」/神奈川・金文堂信濃屋書店取締役・山本雅之

新聞に目を通している。わが家のいつもの朝食風景だ。スポーツ新聞の中程に目が釘付けになる。普段はスルーするところだが、この日は違った。
それは求人広告蘭である。職を求めて目を皿のようにして見ていたわけではない。気になったのはその書き方だ。わずか縦1・5㎝、横3・5㎝という限られた枠内に、職種・時給・条件・優遇制度・企業名・電話番号など求職者にとって必要な情報が、縦横活字のポイントを駆使して過不足なく盛り込まれている。その見事な伝達技に思わず膝を叩いた。枠の大きさで料金が決まるので、無駄をすべて省いて漢字のみで構成されている。でも、これで充分伝わるのだ。
別のページには競馬欄もある。前4レースの結果が日時・騎手・レース内容などを縦横うまく配分し、それだけで理解が可能となっている。この手法は町の不動産広告でも使われている。
年齢を重ねたせいだろうか。確かにスマホは便利だが、便利さだけではないものに惹かれる。
本の売上は減少し続け、今後、書店経営は厳しさを増すだろう。書店の数も減り続けている。しかし、本には行間を読む豊かさ、十人十色に異なる感じ方、字面の向こう側に見える著者の意図など、便利さを超えた様々な魅力がある。読者と触れ合い、本という素晴らしい商品を橋渡しできる書店人の役割を、今一度考えてみたい。
このコーナーを担当して、改めて文章で伝えることの難しさと面白さを実感した。文章表現とは奥が深いものである。

「街の書店を大切に」俳人・夏井いつき氏が句会ライブとサイン会/兵庫県宍粟市で

毎日放送(MBS)のバラエティ番組「プレバト!!」の俳句コーナーをはじめ多くのメディアに出演して人気の俳人・夏井いつき氏が12月8日、兵庫県宍粟市・山崎文化会館で「句会ライブ」を開催。会場は500名の聴衆で満席となった。
ライブでは聴衆全員が5分で俳句を作り、短冊に記入。夏井氏が20句を選んで、聴衆を巻き込みながら講評した。俳句創作の楽しさに触れる2時間となった。
このあと行われたサイン会で、夏井氏は1人ひとりに声をかけながら丁寧にサインし、約100冊の売上があった。夏井氏は街の書店を大切にしており、「本屋は街のシンボル。街に本屋を残したい」という。サイン会も必ず地元書店を優先する。今後も全国各地で句会ライブを開催し、「俳句の種を撒いていく」とのこと。その節は各地の書店に切に協力をお願いする。(安井唯善副理事長)

『13坪の本屋の奇跡』(ころから刊)/書店再生モデルとして活用呼びかけ/大阪理事会

大阪府書店商業組合は12月9日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催。面屋龍延理事長は「街に本屋を残すため、粗利益アップなどによって経営環境改善を図る運動を進めている」と報告した。
委員会報告では、総務委員会・坂口委員長が、隆祥館書店を題材とした『13坪の本屋の奇跡』(ころから刊)を書店再生モデルとして活用してほしいと呼び掛けた。同書は、街の本屋が消えていく中、創業70年を迎えた大阪・谷町6丁目の隆祥館書店から見える出版業界の姿をジャーナリスト木村元彦氏が描いたもの。
読書推進委員会・虎谷委員長は、11月16日に大阪市中央区のエル・おおさかで2019第15回大阪こども「本の帯創作コンクール」表彰式を開き、受賞者109名が出席、帯付き課題図書販売は63冊・9万9770円だったと報告した。20年の表彰式は11月14日、エル・おおさかで開催する。
経営活性化委員会・二村委員長は、ドイツの書店を訪問したことを報告。「アマゾンより早く注文品が入荷している。日本でも可能ではないか」と提起した。(石尾義彦事務局長)

五輪イヤー、販売対策に万全を/野間会長「海賊版に厳しく対応」/出版クラブ「新年名刺交換会」

日本出版クラブは1月8日、東京・千代田区の出版クラブビルで出版関係新年名刺交換会を開き、出版社、取次、書店など関係者約500名が出席した。
同クラブ・野間省伸会長(講談社)、日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長(小学館)、日本雑誌協会・鹿谷史明理事長(ダイヤモンド社)、日本出版取次協会・近藤敏貴会長(トーハン)、日本書店商業組合連合会・矢幡秀治会長(真光書店)の出版5団体トップが登壇し、代表して野間会長があいさつした。
野間会長は、東京オリンピック・パラリンピックに触れ、「こういうイベントがある年は出版物が売れないと言われる。最初から分かっているならきちんと手を打つよう社内で言っている。言い訳を考えないで売っていくことが大事」と訴えた。
また、海賊版対策について「著作権法改正に向けた有識者会議が行われており、リーチサイト規制、権利侵害コンテンツのダウンロード違法化に向けて話が進んでいる。いくつか論点はあるにしても、昨年頓挫したような形にはならないと考えている。かなり意見の一致を見ているようだ。海賊版には引き続き厳しく対応していきたい」と話し、乾杯した。

12月期は前年比0・7%増/コミック好調で8ヵ月ぶりの前年超え/日販調査店頭売上

日販調べの12月期店頭売上は前年比0・7%増。前月と比べて2・6ポイント回復し、2019年4月以来8ヵ月ぶりの対前年プラスとなった。コミックが13年11月の集計開始以来、初めて20%を超える増加幅となるなど好調を維持した。
コミックは22・6%増。雑誌扱いコミックは、新刊では『ONEPIECE95』『鬼滅の刃18』(ともに集英社)が売上を伸ばした。『鬼滅の刃』は既刊も好調。書籍扱いコミックは『ヲタクに恋は難しい8』(一迅社)、『ファイブスター物語15』(KADOKAWA)が売上を牽引した。
雑誌は同4・6%減と低迷。書籍も5・3%減と前年割れだったが、実用書、新書、総記はプラスとなった。新書は「鬼滅の刃」関連、樹木希林関連が牽引し、3ヵ月連続で前年超えとなった。

「お客様作り」自ら動いて/安永理事長、生き残りへ抱負語る/福岡県出版業界新年の会

令和2年福岡県出版業界新年の会が1月9日、福岡市博多区の八仙閣福岡本店で開催され、出版社、取次、書店、運輸など総勢67名が出席。福岡県書店商業組合の安永寛理事長(金修堂書店)は、生き残るためには「お客様を作る」行動を積極的に起こさなければならないと抱負を述べた。
冒頭あいさつした安永理事長は「全国の書店数はピーク時から4分の1まで縮小した。若い人に『どうしたら生き残れますか』とよく尋ねられる。それには動くことだ。まずお客様を作る。教師、医師、会計士、弁護士等の『師』『士』の付く職業のお客様を100人作る。そして、『本を買うならあなたの店で』と言って実際に買ってもらえる信頼関係を築き上げる。毎日じっと待っていても売れない。ぜひ行動を起こしてほしい」と呼びかけた。
トーハン九州支店の福留博貴支店長は「年末年始、九州地区は前年比7・5%増と良いスタートを切れた。五輪開催で東京を中心に盛り上がると思うが、トーハンも書店店頭にお客様を惹きつける企画を提案していく」と述べた。また、出版輸送問題については「出版社、輸送会社と協議し努力しているが、今後も厳しい状況は続く。解決に向けて少しでも前進させたい」と述べた。
聖教新聞社九州支社の早田俊一支社長は「1冊でも多く販売していただき、書店、取次、出版社、輸送会社が一体となって難局を乗り越えたい」とあいさつした。
天龍運輸の千綿康英取締役福岡支店長の発声で乾杯の後、恒例の年男・年女への記念品贈呈、抽選会の開催などで盛り上がり、山本太一郎(福岡金文堂)、大石宏典(大石金光堂)、山本良(福岡金文堂)の3氏が祝い目出度を披露。白石隆之副理事長(白石書店)の博多手一本で閉会した。
(加来晋也広報委員)

「組織的」万引防止の胎動元年!/「個店の努力」から「組合の運動」へ/万引防止出版対策本部事務局長・阿部信行氏

日書連は昨年6月21日開催の通常総会で、書店収益改善を図るため「万引防止対策」を重要課題の一つに掲げた。矢幡秀治新会長は中小書店にも実行可能な地道な対策を訴えている。新体制のもと今後どんな展開を考えているか、日書連をはじめ出版業界6団体・1企業で構成される万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長に寄稿してもらった。
矢幡新会長は万引防止対策について昨年末の出版販売年末懇親会の席上、「今やるべきことは原点に帰った地道な努力」と挨拶されました。万引被害の根絶は、すでに個店対応から組織的解決を図る段階にあります。日書連として一層、会を挙げてこの重要経営課題に取り組むと表明されたことは誠に時宜を得たものであり、これ以上看過できないという強い意志の表れといえます。
また、昨年11月7日に開催された万引防止出版対策本部(出版万防)の第3回総会では、矢幡新本部長のもと、「書店が主体的に取り組む万引防止活動」という方針が打ち出されました。啓発活動中心だった第1期、様々なツール開発に重点を置いた第2期を経て、日書連と軌を一にして具体的な活動へ着手する段階に入りました。
今、個店の努力と組織的な活動で具体的な成果をあげようとするところです。振り返れば令和2年がその胎動の年だったと位置付けられるよう、ともに地道に取り組んで参りたい。
〔「1冊盗られたら5冊売らなければならない」という誤解/万引被害の数値的側面〕
まず初めに万引被害の中身を数値的側面から見てみます。この間、渋谷書店万引対策共同プロジェクトの取材を受ける中で、巷間流布されている「出版物の粗利は約20%だから1冊盗られたら5冊売らなければならない」というお決まりのフレーズの誤りを、数多くのマスメディアに指摘し、なぜこれほどまでに書店が万引防止に取り組まざるを得ないかを説明してきました。現状では以下のようになります。
日本出版インフラセンター(JPO)による12年前の調査では、書店の万引による対売上比平均ロス率は1・41%と推定されています。貴店の万引によるロス率は何%とお考えですか。取次2社による書店経営の最新分析数値では、書店専業店の対売上比営業利益率は、トーハン0・14%、日販0・28%となっています。数値の上では実に営業利益の5倍から10倍の被害があるということです。貴店での実態、実感はいかがでしょうか。
ちなみに上記の内、営業利益率0・28%の場合を例にとると、定価1000円の商品が1冊盗まれたとすれば、1冊当たりの営業利益が2・8円ですから、同書を358冊販売した時に得られる利益に相当する、ということになります。
〔万引防止の経営者的課題/従業員への意識付けが不可欠〕
拡大を続ける万引被害を抑止するためには、まず自社が一丸となって対応することです。すでに各社実践なさっていることだとは思いますが、従業員の意識付け=教育が不可欠です。従業員の方々は1冊の万引被害が自分のお給料にどのように関係してくるか、具体的イメージを共有しているでしょうか。精魂込めて増売を達成した成果が、利益的には1冊の万引によって台無しにされることを理解しているでしょうか。万引防止に特効薬はありません。まずは自店が、経営者、従業員一丸となって取り組むことが肝要です。そしてそのモチベーションを高め維持するのは、まさに経営者の関心の高さにあります。
ある書店で女子従業員が隠匿場面を目撃し、出口間際で声掛けし万引を未然に防いだという事案がありました。万引防止のもっとも有効な手段として声掛けが奨励されますが、実際お客様の目を見てしっかり声掛けすることは勇気のいることです。どんな反応が返ってくるか不安でもあり躊躇することも間々あるのではと推察します。しかしこの書店では、経営者の確固たる意思が従業員まで浸透しているようで、その経営者にお聞きすると、万引防止への意欲は責任感と販売意欲向上につながっているというお話でした。もちろん当該社長が、常日頃万引防止行動におけるリスクにまで言及して指導していることは言を待ちません。
ちなみに全国万引犯罪防止機構(万防機構)では現場従業員向けオリエンテーション教育ビデオ「基本の徹底と明るい挨拶で不明ロスをなくそう」を制作しております。有料になりますがお問い合わせください。
〔万引されない店づくりを/書店が主体的に取り組む活動推進/出版万防の施策〕
前述の通り出版万防も第3期は「万引されない店づくり」を念頭に「書店が主体的に取り組む万引防止活動」を活動の新機軸としました。「地道で組織的な活動」がそのキーワードです。以下、日書連の方々と一緒に取り組みたい活動を記します。
第一は「万引防止ポスターの掲出活動」です。これまでも各々のお店で取り組んできている案件です。今年度はまずこれを組織的に実施しようという方針です。これまでも出版万防では、愛知の三洋堂書店作成のポスター(写真・上)や万防機構作成のポスター(同・下)を推奨してきました。三洋堂書店のポスターは、日本医書出版協会が医書専門店へ掲出を呼び掛けて反響を得ています。また、万防機構のポスターは、昨年、静岡県書店商業組合から問い合わせがあり、130枚を無償で提供しております。これら三洋堂書店と万防機構のポスターに加えて、このたび日書連が組織として掲出するポスターも作成してみようということになりました。
第二には「盗品のインターネット監視体制の研究」についてです。これはすでに先例が2件あります。
1件は徳島の書店「平惣」の事例です。担当者がネットフリマに出品されていた当該商品を1冊購入したところ犯人の名前で商品が届き万引犯を特定。その後、お店を挙げて犯人をマークし捕捉したものです。完全に転売目的の万引で、その後の家宅捜索で大量の新本が積まれていたそうです。被害額は少なくとも110万円にのぼりました。
もう1件は、度重なる万引被害に業を煮やしたある書店の店長が、被害品を特定し、入居している建物と自分の名前でネットフリマに出品している犯人のアカウントをフォローした事例です。当該書店には防犯カメラは導入されていますが、POSはありません。被害品は時間差を持って棚を撮影し、比較することで特定しました。犯人は万引されたと考えられる複数の出品の検索により特定しました。以来万引はぴたりと止んだということです(本件は2019・10・27現代ビジネス「書店員の私が『メルカリ』で『万引き犯』を追い詰めた、意外な方法」に詳しい)。早速、当該店長を訪ね、お話をお聞きしました。このような方法をネット事業者と協議してシステム化できないか、店長から宿題をもらっており、万防機構として研究しているところです。
簡単にできることではないかもしれませんが、この2書店の万引防止にかける熱意からは、まだまだ新たな対応が想像できるという期待を抱かせてくれます。
第三の「万引被害情報の共有」は個人情報(特に顔画像)を含まない万引被害情報の共有を計画しています。万防機構がシステムを構築し、現在はシステムの最終確認中です。渋谷プロジェクトに準ずる形で稼働させたいと企画中です。これまで単店でのみ対応してきたことを地域連携で対応することで、新たな局面が生まれることに期待しています。可能な限り安価で提供する方向です。
第四の「万引防止セミナーの開催」は、万防機構の資源を活用してセミナーを斡旋します。有料となりますが、出版万防からの補助を実施します。まずは都道府県単位でのお申し込みを考えています。
第五の「被害届受理迅速化のための書き方研究」とは、現在警察官が記入している被害届ですが、本件は「届」とは本来届け出る方、すなわち書店側が記入するものという認識からスタートします。警察内部での手続きを考慮すると精緻なものとする必要があることから、現在は警察官が記入するようになったと関係者から聞いています。そこで届けに記入すべき一定の要件を記入する側が習得すれば、万引捕捉後の手続きの迅速化、犯人捕捉時の時間短縮を実現し、捕捉後の煩雑さを緩和できるのではないかと考えています。
〔従前からの重要施策の取り組み/損害賠償請求・新古書店との連携・ICタグ〕
その他、従来から行ってきた重要な施策3点に触れておきます。
1点目は「万引犯に対する損害賠償請求」です。現在13法人がネットワークに参加しておりますが、メールによる情報交換には限界があります。今期はその反省の上に立って、参加書店のご希望を受けて訪問する計画です。単なる情報収集の領域を超えてその拡大を図ります。なお、昨年は青森県書店商業組合の要請で説明にお伺いしました。
2点目は「新古書店との連携」です。インターネット事業者との連携を含め、古物営業法の厳格適用を念頭に置きながら、換金目的の万引を根絶するため、買い取る側の水際作戦を強化する必要があります。前期は新古書店の買取システムを研究しました。今後も協議を進めてまいります。
3点目は「個体識別方法の検討」です。ICタグはその一例ですが、その可能性をまだまだ追及する必要性があります。ただ単に万引防止の観点からばかりではなく、物流、取引の多様性、増売施策の多様性の観点からも必須な案件です。

出版万防の設立趣旨には「これ以上書店を減らさない」をスローガンに、昨今の書店の万引被害の大きな変容から、「もはや1書店、1書店チェーンによる対応では万引防止に限界があること」を謳っています。例えばこの間の大阪府書店商業組合との店内捕捉に関する意見交換や、岩手県万引防止対策協議会における岩手県書店商業組合の精緻なレポートなどこれらの情報が相互に流通するとき、それが生み出すパワーを考えると現状は実にもったいないことだと思う次第です。日書連が「組織として」あらためて取り組みを強化するところにこそ、新しい地平が開けてくるのではないでしょうか。「昨日と同じことをやっていて、明日に違う結果を求めるのは不可能なのが道理」と強く考えるところです。

「20年度は大きなビジネスチャンス」渡部社長/第69回日教販春季展示大市会

第69回日教販春季展示大市会が、1月8日に東京・新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷で開催され、書店・特約、出版社など約800名が出席した。
セレモニーであいさつした日教販の渡部正嗣社長は、小学校学習指導要領改訂や大学入試改革が実施される20年度は、業界にとって大きなビジネスチャンスと強調し、同社の施策を説明。書店店頭部門では、来店客の購買意欲をアップするオリジナルPOPの提案や、おすすめ企画をリアルな書店棚で展示する戸田センター内のショースペース「NKLabo」などを紹介。デジタル事業部門では日本電気と提携し、出版社・特約・自治体・学校をつなぐ教育クラウドの構築を進めていると述べた。特約外商部門では、「小学校の教科書に出てくる本」のカタログを大改訂したこと、また創立70周年記念事業として、埼玉県内の521の私立幼稚園に絵本を寄贈したことを紹介した。
来賓を代表してあいさつした日書連の矢幡秀治会長は、経済協力開発機構が発表した18年の国際学習到達度調査(PISA)で、日本の「読解力」の順位が急落したことに憂慮を示し、「高校生になると読書量が減り、大学生は本を読まないという危機的な状況だ。理解を深めるには紙の本で読書することが大切。紙の本を作り、売る我々は自信を持ってこの業界を支えていきたい」と述べた。
この後、学習参考書協会・山川博昭理事長の発声で乾杯。福島日教販会の西猛会長から渡部社長に白河ダルマが贈呈され、来賓全員で片目を入れて新春学参・辞典商戦を祝った。

会員書店の初売りは4・6%増/『こども六法』に新風賞贈賞/書店新風会新年懇親会

書店新風会(大垣守弘会長=大垣書店)は1月8日、東京・新宿区のハイアットリージェンシー東京で第54回新風賞贈賞式・新年懇親会を開催。会員書店、出版社、取次など180社・272名が出席し、来賓として日書連の矢幡秀治会長ら業界各団体の首脳が列席した。
司会進行は中島良太親睦委員長(三和書房)が務め、あいさつを行った大垣会長は、年始の会員書店の店頭状況について、元日から営業した会員は50%(前年は63%)で、初売上げ平均は前年比4・6%増と好調なスタートを切ったと報告。また、来店客も60%以上の店舗で増加し、大型商業施設での集客が特に顕著だったと述べた。
大垣会長は、「本の良さが見直され、底を打ったとは言わないが、我々の読書推進運動の成果が表れてきているのではないかと感じる」と述べ、昨年から日書連が事務局を務めて展開する「本の日」キャンペーンについて、日本図書普及の協力で2月上旬に全国の約9千書店に報告書を送付すると説明。「図書カードプレゼントキャンペーンの応募数は前年比7・2%増えた。少しずつ書店に足を運んでくれる方が増えていると実感している」と手ごたえを口にした。
最後に今年のテーマとして「会員の増強」を掲げ、「書店が減る中、仲間を1人でも増やしたい。地方書店がつながり知恵を出し合って、この苦境を乗り越えていきたい」と結んだ。
新風賞贈賞式では、『こども六法』(山崎聡一郎著、弘文堂)を表彰。大垣会長が、山崎氏と弘文堂の鯉渕友南社長に賞状を授与した。
山崎氏は、「この本が全ての教室に置かれ、困っている子どもが手に取れる環境を整備することが大事だと考え行動してきた。本を売ってくださる書店の協力なくしてこのプロジェクトはなしえない。全国の書店150店以上をまわってサイン会などを行っており、これからも『こども六法』の活動を広めるために協力していきたい」と呼びかけ、鯉渕社長は、「いじめに悩む子どもの自殺が増える8月31日に向けて、書店新風会の皆様にも長い間サポートをしていただきたい」と述べて乾杯の音頭を取った。

本屋大賞ノミネート10作品を選出

本屋大賞実行委員会は1月21日、「2020年本屋大賞」ノミネート10作品を発表した。一次投票で全国の477書店、書店員586名が投票し上位10作品を選出。二次投票を経て4月7日に大賞を発表する。ノミネート作品は次の通り。▽『線は、僕を描く』砥上裕將(講談社)▽『店長がバカすぎて』早見和真(角川春樹事務所)▽『夏物語』川上未映子(文藝春秋)▽『熱源』川越宗一(文藝春秋)▽『ノースライト』横山秀夫(新潮社)▽『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人(双葉社)▽『ムゲンのi』知念実希人(双葉社)▽『medium霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼(講談社)▽『ライオンのおやつ』小川糸(ポプラ社)▽『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

井上岳久著『カレーの世界史』(SBビジュアル新書1000円)は、インドで生まれたカレーがどのように世界中に広がっていったのか、歴史を踏まえながらその変遷と魅力を探る。
日本にカレーが初めて伝えられたのは文明開化の頃。最有力説は横浜だが、北海道や神戸とも言われている。現在カレールウの消費量のトップはというと、鳥取市。大阪37位、東京47位に比べて何度も首位の座にいる。
ドイツのカリーブルストというソーセージ、マカオのカレーおでんなどインド人とともに、カレーは世界に広まっていく。
カレーの基礎知識から世界中の珍しいカレーや進化を紹介している。
田邊俊雅/メハラ・ハリオム著『インドカレーは自分でつくれ』(平凡社新書820円)は今まで食べたカレーは何だったのかと、衝撃を覚えた人と、提供した横浜「ラニ」を経営するシェフとの共著である。
長時間煮込んだというのは日本のカレーライスで、本場のインドカレーは出来たてが美味しい。基本は「アルジラ」で、アルはジャガイモ、ジラはクミンのこと。ひよこ豆カレーから始まって、ぶり大根もインドカレーに変身してしまう。レシピもふんだんに紹介。カレーが食べたくなる本。

移転

◇文字・活字文化推進機構
下記の住所に事務局を移転した。
〒101―0051東京都千代田区神田神保町2―2―30共同ビル神保町4F
※電話、FAX番号は変更なし

訂正

2020年1月1日号「移転」の記事で掲載した出版文化産業振興財団の電話番号は誤りで、正しくは「℡03―5211―7282」です。お詫びして訂正します。

野間文芸賞に松浦寿輝氏の『人外』/野間4賞贈呈式

野間文化財団が主催する野間文芸賞など4賞の贈呈式が12月17日に東京都内で開催され、各受賞者に講談社の野間省伸社長から正賞と副賞が贈られた。
今回受賞したのは、第72回野間文芸賞に松浦寿輝氏『人外』(講談社)、第41回野間文芸新人賞に古谷田奈月氏『神前酔狂宴』(河出書房新社)、千葉雅也氏『デッドライン』(新潮社)、第57回野間児童文芸賞に戸森しるこ氏『ゆかいな床井くん』(講談社)。第1回野間出版文化賞には、アニメーション監督の新海誠氏、作家の東野圭吾氏、少女マンガ雑誌の「なかよし」(講談社)と「りぼん」(集英社)、同賞特別賞にアイドルグループ・乃木坂46の白石麻衣氏、生田絵梨花氏が選ばれた。
贈呈式のあいさつで野間社長は野間出版文化賞について「講談社の創業110周年を記念して創設した。様々な表現活動により出版界に大きな貢献をなさっている個人・団体・組織などの皆様の業績を讃え顕彰することが賞の目的だ。1年を締めくくるこの時期に、歴史と伝統ある野間文芸3賞と新たに生まれた野間出版文化賞が、出版の来し方と行く末について思いを致すきっかけの1つになればと思っている」と述べた。