全国書店新聞
             

平成21年8月11日号

若手書店人対象にセミナー企画/山形総会

山形県書店商業組合は、7月28日に山形グランドホテルで20年度通常総会を開き、組合員42名(委任状含む)が出席した。
総会は、五十嵐太右衛門理事長を議長に、平成20年度の事業・決算報告と21年度の事業・収支計画が説明された。新年度の事業計画では、全国中小企業団体中央会補助をうけ、「若手書店人パワーアップセミナー」を2日間・のべ16時間で開催し、組合員の売上アップに不可欠な「地域書店の付加価値の検証」を行っていく。また、「日書連マーク研修会」も8月に県内2カ所で開催し、11月には「山形市立図書館記念事業」として「加来耕三講演会」を開催していく予定。
(五十嵐靖彦広報委員)

第13回謝恩価格本ネット販売フェア

書協は第13回「謝恩価格本ネット販売フェア」を、秋の読書週間を中心に10月15日から12月15日までの2カ月間開催する。対象は、発行後1年以上経過した児童書、実用書(ムック含む)、文芸書、人文書、辞事典、美術書、自然科学書、豪華本で、50%オフで販売。出版社にはブックサービスの手数料として販売価格の25%と入出庫・保管業務を代行する昭和図書の手数料10%がかかる。

上期販売額1兆円割れ/雑誌休刊数過去最大に/出版科研調べ

出版科学研究所は今年上半期(1月~6月)の出版概況をまとめた。出版物販売金額は前年同期比4・0%減の9887億円となり、上半期としては初めて1兆円の大台を割った。内訳は、書籍が2・7%減の4581億円、雑誌が5・2%減の5305億円だった。
書籍の2・7%減は上半期として3年連続の前年割れ。ここ数年、ケータイ小説や教養新書、血液型本など低価格本のヒットが続き、落ち込みは小幅にとどまっていたが、09年上半期はこのようなブームが不在。堅調に動いてきた児童書も、ハリポタ完結後は漸減傾向で、映像化関連を中心に比較的好調だった文庫も、前年同期を上回ることができなかった。そんな中で、5月末に刊行された『1Q84』が爆発的ヒットを記録、文芸書を中心に上向く気配がうかがえた。
返品率は0・9ポイント増の39・0%。新刊点数は4・3%増の4万0079点だった。取次仕入窓口扱いの新刊は3・6%増の3万0729点で、新書や文庫で新レーベルを立ち上げる動きが目立った。平均価格は、出回りは新書ブームの落ち着きなどによる単価上昇で1134円と0・9%増加したが、新刊は安価なものの刊行が依然として盛んで、1・5%減の1167円となった。
雑誌の販売金額は5・2%減の5305億円で、上半期は12年連続のマイナスとなった。内訳は、月刊誌が4・6%減の4105億円、週刊誌が7・1%減の1201億円。既刊誌の部数減が止まらず、堅調といえる大きなジャンルがほとんどない状態。一部の女性誌や分冊百科、カルチャー誌など、単号で売行きが好調だった雑誌はあるものの、爆発的なヒットやトレンドを生み出すような企画が生まれていない。返品率は0・3ポイント増の36・9%。内訳は、月刊誌が0・4ポイント増の38・5%、週刊誌が0・3ポイント減の30・6%。
上半期の創刊点数は87点で前年同期と同数だが、発行部数は10・4%減と部数規模が下がっている。分冊百科の創刊が活発で、前年同期より6点多い20点が創刊された。一方、休廃刊点数は31点増の119点で、07年の104点を超えて上半期では過去最大となった。歴史ある有名誌が相次いで休刊したほか、創刊から1~2年未満で休刊する雑誌も目立つ。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が2447点で6・8%の減少。ムックは4173点で0・7%増加した。

新理事長に櫻井晃二氏/奈良総会

奈良県書店商業組合第25回通常総会が7月24日、橿原市久米町の橿原観光ホテルで開催、組合員42名(委任状含む)が出席した。
総会は吉岡章理事の司会で進行。西本功理事長の開会のあいさつの後、議長に林田芳幸副理事長を選出して議事を進め、第1号議案平成20年度事業報告、第2号議案会計・監査報告、第3号議案「定款に定める理事定足数の変更について」の説明があり、満場一致で承認された。
任期満了に伴う理事改選では、議長より新候補者名簿が提示され、満場一致で候補者全員を承認。新理事による協議の結果、新理事長に櫻井晃二氏(五条市・櫻井誠文堂)を選出した。新理事長はあいさつとともに第5号議案の平成21年度事業計画を説明。その後第6号議案の予算案について説明があり、ともに満場一致で承認された。
総会後の報告案件で、選挙前の推薦依頼についてと付録問題その他で意見交換が行われたほか、自由討議が約1時間半あり、組合のあり方や今後の書店のあり方などについて議論が交わされた。
総会終了後、取次や版元などの招待者14名を交え懇親会を開催。吉岡理事の司会で新旧理事長が歓迎のあいさつをしたのち、NHK出版足立登氏の音頭で乾杯した。来賓各社のPRを兼ねたあいさつをいただき、和やかな雰囲気の中、書店を取り巻くさまざまな問題についてもあちこちで熱い議論が交わされていた。(庫本善夫広報委員)

催し

◇山形組合「若手書店人パワーアップセミナー」
山形県書店商業組合は全国中小企業団体中央会自主研修事業「若手書店人パワーアップセミナー」を今秋2回にわたり開催する。日書連、山形県書店青年会後援。
第1回目は9月3日、山形市の旭テック研修室で開催。自社、自店および自分が「地域のお客様は何を求めているのか」を考え、自社、自店がお客様に選ばれる理由の仮説を作る。内容は、「オリエンテーション『自社の商品』を考える」(旭テック・鈴木康子氏)、「出版業界の問題点と地域の書店さんの役割」(トーハン東北支店長・堀内洋一氏)、「自社がお客様から選ばれる理由は?仮設作成」(旭テック・鈴木康子氏)、「業務効率化のためのパソコン実践講座Ⅰ」(ICTサポータ・松井由紀子氏)。
第2回目は11月5日に開催。自社が作成した仮説を実際に検証し、さらに制度の高いお客様に選ばれる自社の商品を構築し、自社で実践し、企業の存続成長に不可欠な売上アップを図っていく。内容は、「『お客様から選ばれる理由』検証発表」(旭テック・鈴木康子氏)、「若手書店人に求められる大切なこと」(山形県書店商業組合・五十嵐靖彦)、「自社がお客様から選ばれる『自社の商品とは』作成/発表」(旭テック・鈴木康子氏)、「業務効率化のためのパソコン実践講座Ⅱ」(ICTサポータ・松井由紀子氏)。
申込締切は8月20日。先着20名限定。申し込みは所定の用紙に記入の上、山形県書店商業組合事務局までファックスで。FAX023―666―7745

勤労報国隊で炭鉱へ/戦時中大阪の書店

大阪組合の灘憲治副理事長(大阪市・ナダヤ書店)から編集部に1枚の写真が寄せられた。ヘッドランプ付きヘルメットを被った男たちの集合写真だ。上段の男性が持つノボリには「国民勤労報国隊」の文字。
この写真は戦時中の1941年頃、灘副理事長の父親、憲之氏(写真・中段の左端)を含む大阪書籍雑誌小売業組合の組合員26名が、国民勤労報国隊の一員として九州の三井三池炭鉱に動員され、無償労働に従事したとき撮影したもの。
交替時、全員揃っての記念写真だが、残念ながら灘氏のほかは村上、吉岡の両氏しか名前を特定できない。また、紀伊国屋書店の田辺茂一氏もこのとき三池炭鉱に動員されたとのこと。この写真のどこかに写っているかもしれない。
撮影当時、父・憲之さんは30代半ば。石炭を集めて運んだり、樽に水を入れて運んだりした。国のため志をもって働いたという。
この写真を見て、書店業界の先輩方のご苦労、ご努力に思いを馳せたい。

生活実用書/注目的新刊

今、書店に求められているのは企画力だろう。五十音順や出版社別で並べているだけでは、読者が面白いはずもない。類書があるのに置く場所が違い、独自の選書もないのでは、売れる本も売れない。「金儲けができない商人は罰すべきだ」と語るのは京都・天龍寺の関精拙老師。昭和20年に亡くなられたが、商人は商売を一生懸命にやる、会社員は仕事に全力を傾ける、「これが禅である」という。
高田明和著『決定版禅の名言』(双葉文庫た05―02648円)には、悩める時に安心できる数々の禅の言葉が紹介されている。著者は医学博士で、健康に関する著作も多いが、ここでは禅である。
「今なぜ禅か」のまえがきに、激しい価値観の変化の中で何か確固たる考えを持ちたいこと、もう一つは格差や競争、年齢など限界への挑戦したい気持の二つの理由を挙げている。また、自らがうつ病を克服するために言い聞かせた言葉は「困ったことは起らない」「すべては良くなる」「過去は思わず」の三つだという。現実は全くその反対なのだが、そういう時にこそ、これらの言葉が気持を落ち着かせてくれるというのだ。
弱い心に負けそうになったら、は第2章。日々是好日、の本当の意味、つまり吉日や凶日などというものはない、など全10章に自信を与えてくれる言葉が紹介されている。
武田鏡村著『禅のことば人生を豊かに生きるための120選』(PHP研究所950円)も、不況と格差と苦境が増える今こそ、積極的に生きようと、禅の言葉を紹介している。
たとえば「小利を捨てて大利にいたれ」は、江戸時代の鈴木正三『盲安杖』の言葉。自分だけの利益を求めるのが小利(しょうり)、そこに関わる人々への配分や消費者への還元があれば中利、さらに世のためという視点が加われば大利(だいり)になるという。当たり前のようだが、明らかに現代に欠けた心の持ち方である。
「一期一会」は江戸幕府の大老、井伊直弼が書いた『茶湯一会集』という茶道の心得書に出てくる言葉。どのような出会いでもただの一度であって、二度と同じものではない。毎日会っていても一生に一度の出会いなのは、そこに時間と空間が流れているからなのである。
(遊友出版・斎藤一郎)

発売日改善に一層の努力/支部組織再編を検討/長崎総会

長崎県書店商業組合(中山寿賀雄理事長)は7月28日午前11時から諫早市「水月楼」で第22期通常総会を開催。組合員57名(委任状含む)が出席した。
総会は草野専務理事の司会で始まり、中山理事長があいさつ。決算書作成についてフォームの基準の変更、来年度の決算書の変更について説明し、日書連総会などについて報告した。また、組合員減少問題についても説明した。
山内副理事長を議長に選任して議案審議に入り、すべての議案を原案通り承認可決した。このうち事業報告は中山理事長から報告。昨年9月から文春、新潮の2誌が土曜日から金曜日発売になり一歩前進したが、まだ女性セブンなどが残っており交渉していると説明があった。また、再販制や長崎県青少年保護育成条例改正の件などについて説明があった。決算報告は草野専務理事、監査報告は六倉監事、事業計画案は中山理事長、終始予算案は草野専務理事より説明があった。
その他では、市町村合併により支部の編成に問題が起きていることから、今年度中に理事会で支部組織の編成を検討することが提案された。
総会終了後、長崎県中小企業団体中央会の野村氏があいさつし、長崎県の中央会の現状について説明した。このあと懇親会を行った。(古瀬寛二広報委員)

今井直樹理事長を再選/島根総会

島根県書店商業組合は7月28日午後3時から松江市アーバンホテル2号館で平成20年度通常総会を開催し、組合員30名(委任状含む)が出席した。
総会の冒頭、今井直樹理事長は「この年度に副理事長店が2店とも廃業に追い込まれた。厳しい状況の中、真に組合員の役に立つ書店組合でなければならない」とあいさつした。
このあと議長に今井理事長を選任して議案審議。福田寛専務理事より平成20年度事業報告並びに収支報告、また平成21年度事業計画案並びに収支予算案が説明され、すべての議案を原案通り承認可決した。
事業計画については、図書館システムの研究、万引き防止対策、組合員の賦課金の見直しに取り組む方針が示された。
任期満了に伴う役員改選では理事10名、監事2名を選出したあと理事会を開き、今井理事長を再選。副理事長には糸川吉彦、岡田豊の2氏を新任した。専務理事は福田寛氏が留任した。(桑原利夫広報委員)

日書連のうごき

7月2日読進協事業委員会に石井総務部長が出席。
7月3日雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアムに田江理事が出席。
7月6日「子ども読書推進会議」平成21年度総会に大川専務理事が出席。日本図書普及株式会社に大橋会長が訪問。
7月7日物流研究準備委員会出版社との意見交換会。
7月8日公取協影山専務が規約変更認定申請打ち合わせで公取消費者取引課を訪問。出版ゾーニング委員会に小沢事務局員が出席。
7月9日情報化推進全国委員長会議。東京国際ブックフェア、オープニングセレモニーに大橋会長が出席。
7月10日「ためほん」実験店との意見交換会。
7月12日関東ブロック会総会に大橋会長が出席。
7月14日第61回書店東北ブロック大会に面屋副会長が出席。「読売・吉野作造賞」贈呈式に大川専務理事が出席。
7月15日再販問題で流対協との意見交換会。JPO運営委員会に柴﨑副会長が出席。出版倫理協議会に鈴木副会長が出席。
7月16日「業界用語統一」取協との二者会談。
7月21日第63回読書週間標語選定委員会に舩坂理事が出席。
7月22日出版サロン会に大橋会長が出席。「ためほん」出版社対象説明会。
各種委員会(増売、読書推進、組織、指導教育、取引改善、流通改善、再販、広報、消費税、情報化、財産運用、政策)
7月23日日書連7月定例理事会。日書連共済会清算人会議。出版物小売業公正取引協議会理事会。
7月24日消費者庁移管に伴う公取協規約変更で影山専務が公取消費者取引課を訪問。
7月28日出版平和堂合祀者選考委員会に大川専務理事が出席。雑誌発売日励行本部委員会に藤原副会長ほか役員が出席。公取協7月度月例懇談会に大橋日書連会長ほか役員が出席。
7月29日読進協常務理事会に大橋会長が出席。
7月31日出版倉庫流通協議会のアマゾンジャパン見学会に大川専務理事が出席。

「35ブックス」が目指すもの/中堅8社の考える責任販売制

筑摩書房など中堅出版社8社が発表した「35ブックス」は書店のマージン改善と返品減少をめざす新しいビジネスモデル。7月11日、本の学校出版産業シンポジウム第4分科会で行われた「出版社からの責任販売・時限再販提案」から出版社と書店双方の発言をまとめた。
〔出席者〕
▽河出書房新社・岡垣重男
▽筑摩書房・平川恵一
▽平凡社・土岐和義
▽ポット出版・沢辺均
▽南天堂書房・奥村弘志
▽司会進行=青灯社・野崎保志
平川恵一(筑摩書房)「35ブックス」は従来の委託とは異なり、書店へのマージンを多くする代わりに、返品時には書店にも一部リスクを負っていただく。ほぼ買い切りに近い形でお考えいただければと思う。注文は満数出庫する。
昨年12月に書協で再販説明会があり、当社の菊池社長が「これ以上書店が廃業するのを放置できない」とし、一つのアイデアとして語ったのが、時限再販を利用した販売だった。ある一定期間、再販価格拘束をするが、ある期間を過ぎれば書店で値引き販売していいという趣旨で発言した。
この発言が非常に反響を呼び、社内でプロジェクトを立ち上げ3月までに5回ほど会議を開いた。書店のマージンはどのくらいがいいのか、今の流通の仕組みでどうすれば書店に多くマージンを届けられるのか。どういう商品なら読者も喜び、書店も売りやすいか。見極めがついた段階で出版社17社に声をかけた。大阪組合や取次と話をする中で「いきなり時限再販は受け入れがむずかしい。当初は責任販売でやってほしい」ということだった。
書店に35%のマージンを出すにはどういう条件がいるか取次に確認に行った。ここで分かったことは、初回配本時にマージンを大きく付けることはできるが、追加補充ではできない。最初の段階で、できると言ったのは1社か2社だった。最終的には各取次からシステム変更を含め、対応しましょうと回答いただいた。
出品商品はポット出版が新刊、早川は既刊本、ほかの社はすべて復刊。過去に出した本を重版する。復刊だと版があるのでコスト的には楽になる。いまは品切れだが、過去には売上好調だったもの、重版してほしいという要望があるものを選定した。候補は筑摩でも30や50はあげたが、すぐに復刊できるかというと、翻訳関係はアドバンスの問題がある。著者の重版了解がとれるかもある。そうやって絞り込み単行本4点、文庫シリーズ3点、計7点になった。書店店頭で売れるもの、中学、高校、公共図書館にも入れられるもの、多くの書店に扱っていただけるものを選んだ。
同じ内容の本であれば同じISBNなので、責任販売にする時には、一度条件を書き換えてしまう。通常正味から「35ブックス」の卸正味に切り替える。返品を考えると一度切り替えたものは元の条件に戻せない。「35ブックス」は追加もすべて同一条件でマージン35%の仕組みを作った。注文書の裏を見ていただくと注文数の横に販売目標数がある。5冊ぐらい売れそうでも、返品ペナルティがあるから、当初2冊仕入れ、売れれば追加する。そうして売り切る。
責任販売なので値引きはできないが、筑摩は来年1月に『幕末』という写真集を時限再販で考えている。書店にはあと5%乗せて40%マージン、返品は30%で、価格拘束は6~9カ月。あまり短いと値引き前提になる。時限再販なら、仕入れたがどうしても売れなければ、ある時期過ぎれば値引きが可能になる。
〔追加補充も同一条件で出荷〕
沢辺均(ポット出版)うちの場合、ほかの7社と違い、初版部数は2~3千ぐらいだ。1千以下でも重版するので、復刊というような商品はなかった。
当初、取次から「追加は勘弁してくれ」「時期を限ってほしい」という要望があった。極端に言うと手書き伝票のような世界で、1回だけならできる。これを交渉した結果、取次はシステムまで改善してくれた。追加補充もできることが素晴らしいと思う。商売を活性化させるためには、できるだけ自由の幅が広い方がいい。書店の取り分が増えれば、コストがかかっても外商に行ける。そういう自由をお互いに増やしていくことで活性化、意欲がわいてくる。
永江朗の『本の現場』を13日に取次搬入するが、この本は「希望小売価格1800円プラス税」の非再販にした。書店の自由の幅を広げて様々なチャレンジをしていただきたい。35ブックスの話がもう少し早ければ、この本の出し正味を55%にする、60%にするという可能性があったかもしれない。ポット出版は正味を67で入れている。出版社が出す正味、書店に卸す正味をいくつにするという突破口ができたのではないかと思う。
岡垣重男(河出書房新社)正味問題は今に始まったわけではない。1980年代後半から正味引下げ運動があった。出版社側も全く取り組んでこなかったわけではない。河出では平成元年、1989年、ステラ版世界文学全集を書店のマージン35%という「新買切り制」で出した。学研が加山又造を、角川が『とれたての短歌です』を出し、書店のマージンを増やす試みをしてきた。しかし、まさしく点でしかなかった。
その後、90年代に入ると書店マージンは低いままだったが、バブル期を迎え、書店売場面積が増えていった。昨年秋のリーマンショック以降、日本経済全体が悪くなり、書店は増床と減床が完全に逆転してしまった。市場自体はキャパが狭くなり、市場在庫が返ってくる。アマゾンなどネット書店がカバーできているかというと、ネット書店は伸びても売上が元に戻ったわけではない。
「35ブックス」で書店がいくら儲かるか、そこまで影響はないかもしれないが、点を面にしていきたい。講談社、小学館も発表している。書店の利益を増やすような仕組みをみんなで考え、書店、販売会社の反応を見ながら次のステップにつなげていきたい。
読者にとっても、厳しい経営で町に書店がなくなれば、行けなくなる。復刊にしても、こういう本が読みたいというものを書店が集めて出版社に投げていただけば、手に入らなかった本が手に入る。いろんな可能性と広がりがある。
土岐和義(平凡社)今回の企画は時限再販でやろうかというのが当初の出発で、著者の方に「先生の本は1年ぐらいたった時に安売りするかもしれないが、勘弁してくれ」というお話をしなければいけないということだから、ちょっとハードルが高いと思っていた。とりあえず時限再販がなくなり、その点はクリアできた。
読者の側からは、商品のバラエティが大事で、版元も多い方がいいと参加した。商売なので、とりあえずトントンにならないとまずい。その辺をクリアするには、これからいろいろ研究もし、営業的な努力も必要になる。企画が続いていくことにより著者も読者も喜ぶ方向にもっていきたい。
〔書店のカンフル剤になるか〕
奥村弘志(南天堂書房)書店が今やめていく理由は、来店客数が減っているからだ。客単価が下がるのはさほど気にしないが、店に入ってくる客が少なくなるのはきつい。店頭活性化とか経営改善といっても、経営のバランスがとれているのがいちばん重要で、「35ブックス」のように書店の利益を上げることが経営のバランスを良くする。それから店頭を活性化させるのはお客さんを呼んでくれるような良い企画が店に並ぶことだ。新潮社の『1Q84』が出たことで、村上晴樹の文庫もよく売れる相乗効果があった。
「35ブックス」が病気を少しでも食い止めようとしているのはわかるが、年間8万点の本が出る中で、8社と講談社、小学館の企画が売り上げにどれだけプラスになるか。全体の1%にもならない。
書店は10年前からどんどん売上げが下がり始め、書店経営は合わなくなっている。店を貸した方が利益が出る。時間をかけて漢方薬で治そうとしても手遅れ。カンフル剤なり、抗がん剤、放射線が必要だ。
35%の利益というが、10冊仕入れ1冊返品すると正味は71・5%。2冊返品すると78%、3冊返品すると84・5%になる。7冊売っても84・5%なんていう馬鹿な話があるか。まして4冊返品したら91%だ。
今回の「35ブックス」は既刊本で現物があり、追加もできるのはいいが、私の考えでは5掛で出して5掛で引き取ってもらいたい。歩安入帳の幅が広すぎる。一般書で2冊仕入れて1冊返品しても22%の利益がとれる。
書店に仕入力がないと言われるのは、欲しい本がこなくて、いらない本が送り込まれる商慣習がずっと続いたからだ。10冊欲しくても中小には1冊しか来ない。今は、返せるからいいやという書店はあまりいない。新聞、チラシ、版元の情報を見ながら勉強をしている。
予想がはずれても1カ月以内なら65掛で引き取ってもらえれば、書店も安心して参加できる。パンフレットで仕入れるのはなかなかむずかしい。書店の意見を聴きながら改革を実行してもらいたい。
平川返品を抑制するためには、ある程度ペナルティをかけないと難しい。同一条件でやった場合、どのようにすれば返品率を下げられるか伺いたい。
奥村1カ月間、商品を見るという意味で1カ月以内なら同一条件で入帳し、期間が過ぎたものは歩安で結構だ。
沢辺今回は8月31日までが注文期間で、それから刷り始め11月初旬配本になる。希望のところに1冊は見本で回す。1週間で判断してくださいということであれば可能かもしれない。ただ、全国300店に1冊ずつ見本を配本するとなると、復刊の場合はきびしいのではないか。
平川注文数が目標に達しない場合でも、筑摩書房はやる。著者に重版の了解をとっており、途中でお断りできない。また、そういう本を選んだつもりだ。
岡垣これを外すともう手に入らない限定復刻であり、普通の河出文庫に戻すことは考えていない。商品価値も考えて提案した。
本来的に新刊委託は見本配本、そのあとの注文が買い切りだが、ISBNは委託か、追加注文かわからないから、結果として返品できてしまう。書店もとりあえず取っておこうというのが実情ではないか。ただ、「35ブックス」の初回分は1冊でいいと思う。注文すれば必ず来る。売れれば追加注文していただく。
沢辺リスクを負うのだから目標は20冊でも、1冊注文してもらう。だから追加補充にかなりこだわった。返品の絶対冊数を減らしたい。版元からいうと受注生産というメリットがある。うちは新刊だから、見込み数がわかるのは生産量を適正にする上でものすごく大きい。11月に取次に納品する本を今からタイトルと値段を決めるのは大変だ。書いている途中だから何頁になるかもわからない。
平川出版社としてビジネスモデルが成り立つのか。重版ということで部数がある程度少ない。仮に今の40%ぐらいの返品率が続いた場合、だらだら売っていると売上率は70%ぐらいにしかならない。版元出し正味を70%とすると7割の売上げで49%になる。これを書店に65%、取次が10%とすると、売上率が9割なら49・5%で現状と同じだ。
しかし、出版社はキャッシュフローが改善する。今回の筑摩の場合は、点数も多いが9割方売れれば2千万円の売り上げになる。もう一度再活用する中で書店にも多く利益がいく。一つのモデルとして実現していきたい。
奥村総売上からすると影響力が少ないので、カンフル剤としては文庫の正味を10%下げるよと言ってくれた方がありがたい。それは定価に跳ね返るし、書店に還元するには、値段を少し上げてでも書店のマージンを増やすことが一番てっとり早いのではないか。

カレンダーを斡旋/栗田・大阪屋

栗田出版販売は大阪屋との共同企画として「2010アートカレンダー」を斡旋する。この企画は障害者アーティストの芸術活動を支援する「アートビリティ」の活動に賛同して製作するオリジナルカレンダー。お得意先へのお礼や販売促進のサービス品として活用できる。
A5判中綴じ式16頁フルカラー、1頁に2カ月表示、頒価1部105円(税込)。注文は百部以上、百部単位。店名刷り込み無料。締め切り8月28日、11月中旬配送予定。

東方神起の写真集/トーハンMVPブランドで販売

トーハンは、韓国で発売された人気アイドルユニット東方神起の写真集(輸入版)の販売を開始する。
『東方神起写真集PLEASEBE MINEALLAboutTVXQ!』は、韓国のSMエンターテインメントから韓国のみで発売されている。サイパンで撮影したメンバーの写真が収められた韓国語・日本語・英語併記の最新写真集。東方神起は日本でも人気の高いことから、韓国より独自に商品を調達した。現在、日本語版の発売は予定がない。
トーハンは同書の取扱いに際し、書店の高マージンを確保する新しい流通システム「MVPブランド」を採用。MVPは「より多くの価値を創造する」という意味で、読者の要求に適う商品を適正な場所、時期、数量、価格について、メーカーと生産計画段階から個別条件を設定し、セールスプロモーションもバックアップする。条件は買切で、書店のマージンは40~50%を想定している。
同写真集は再販制度の適用外で、店頭希望価格4200円と設定し、最終的な値付けは書店が行う。

レッスンDVD付で松坂慶子とはじめるフラ入門/実業之日本社

オールハワイロケのフラダンス4曲を収録したDVD付き『ShallweHULA?松坂慶子とはじめるフラ入門』が実業之日本社から8月1日に出版された。AB判80頁、付録DVD38分、価格税込1980円。
日本のフラ人口は100万人と言われ、映画「フラガール」の影響で若い女性から年配までフラ愛好家が急増中。『フラ入門』はハワイに魅せられてフラを始めた女優・松坂慶子の案内でハワイの歴史と文化、フラを楽しむための知識やファッションを学び、基本ステップ、ハンドモーションから「アロハオエ」「ハワイアン・ウェディング・ソング」など4曲が踊れるまでを指導する。DVDは松坂慶子の特典映像「ハワイの休日」も収録。
初版1万5千部にすぐ1万部の重版がかかり、累計2万5千部。実業之日本社では10万部を目標に販売促進中。

人事

◇マガジンハウス
(7月23日付)
常務取締役(営業局担当)兼営業局局長吉田高
営業局局長兼務を解く
取締役(経理局担当)兼経理局局長兼計数管理部部長南昌伸
計数管理部部長兼務を解く
営業局局次長兼製作部部長兼宣伝事業部部長
芝山喜久男
営業局局長兼製作部部長兼書店営業部部長
書店営業部部長稲垣学
書店営業部勤務

拡販銘柄で成果上げる/新年度は6アイテム/東京日販会

東京日販会は7月28日午後4時から日販本社で会員書店、出版社、日販関係者125人が出席して第3回総会を開催した。
冒頭、板津武会長(自成堂)は「東京日販会総会も早いもので3回目。発足当初はどう運営していくか迷ったが、役員、事務局できめ細かい取り組みを実施してきた。今後もマニフェストに沿って活動していく。ご理解を賜りたい」と述べた。
板津会長を議長に議案審議。事業報告では拡販担当の秋葉良成氏(江戸川書房)が講談社『ガーデン植物大図鑑』、小学館『家庭医学大事典』など推奨銘柄の取組み結果を報告。単品銘柄では講談社『16歳の教科書』がPOS店の初回売上率121%、双葉社『家族の言い訳』は128%の成果をあげたことが報告された。新年度は6アイテムを取り上げ、東京日販会発のベストセラーをと意気込みを示した。
研修は来年2月に王子DC見学会、商談会は本年11月に開催を計画している。役員改選では、武田幸男副会長が退任、新たに矢幡秀治氏(真光書店)が選任された。
来賓を代表して日販古屋文明社長は「東京日販会は全国で一番新しい日販会だが、拡販や商談会など着実に活動され感謝している。日販は4月から『変革・挑戦・信頼』を基本方針とする中期経営計画『LEAD』をスタートした。柱の一つは新しい取引制度の構築で、売上・返品で書店と目標を決め、達成した際には利益を還元するインセンティブ契約を行う。『王子NEXT』は昨年4千坪の増築が完了し、在庫・非在庫を含め注文品のスピードが速くなった。送品事故も激減している。今年は更に客注品のスピードアップに取り組む。HonyaClubは285書店・会員290万人になり、売場提案などで顧客データを活用できる。今期、日販は創立60周年を記念して書店販売コンクールや雑誌陳列コンクールなどを企画しており、是非参加してほしい」と述べた。
総会終了後、マガジンハウス稲垣学書店営業部長が「これで雑誌が売れる」と題して記念講演を行った。

1300人が来場/日販王子まつり

日販王子流通センターの夏祭り「第38回王子まつり」が8月3日、同センター構内駐車場で行われ、書店、出版社、近隣住民ほか1300人が来場した。
来賓を代表して日販古屋社長は「8月末の総選挙を前に暑い夏になりそうだが、天気の方は長雨と日照不足で冷夏となることが心配されている。出版業界は上半期4%の減で1兆円を割り込んだ。日販は新しい取引制度を提案し、書店の理解を求めているところだ。新刊を撒いておしまいでなく、売れ行きを見ながら追加を送品していく仕組みに変えていかないと効率も上がらない。そのために流通センターをリニューアルした。新しい注文の仕組みも秋には発表する」とあいさつ。
日販労組佐藤委員長のあいさつ、王子流通センター中山所長の乾杯で開宴。会場には各課ごとに焼き鳥やおでんなどの屋台が並び、ビール片手に東京外語大ブラジル研究会のサンバパレード、新入社員アトラクションを楽しみながら、真夏の夜を満喫した。

本屋のうちそと

小書店の生き残る道は責任販売制企画商品の拡販にありという事になって来ているが、それを行うしか生き残る術はないからするだろうと取次や出版社が思っている「地元の書店」の死絶えた町が地方には幾つもある。取次の大手チェーン店存続策のために閉店した「地元の書店」の事など取次は忘れているだろうし、地方の大都市の大型店しか廻れない出版社の営業も地方都市の小書店の惨状など分からないだろう。
「食べ物を粗末にするとバチが当たるよ」、交付金を16億円も貰いコンビニの廃棄弁当を処理していた会社が倒産、理由はコンビニからの廃棄弁当の量が少なかったから。イオンの価格破壊は利益破壊だったようで、09年度第1四半期は減収減益。親が価格破壊なら子もで、未来屋書店はレンタルコミックが30冊で500円。スーパーにはモヤシが5円、豆腐も5円と激安の食品が並ぶ。貧乏人の私には嬉しいが、その価格はその原材料を作った人、加工した人、流通させた人、販売した人にとって持続可能な利益の稼げる価格なのかと思うと悲しくなる。
文化通信「上半期の減床4万坪を超える」のニュースの中、ジュンク堂は7月大阪、8月名古屋、9月愛媛と連続出店。大阪は丸善の隣。DNPはどこまで行くのか。「市場原理主義からの決別」宣言の麻生総理の選挙応援演説、しかし傍の商店街はすでにシャッター通り。麻生氏、今の愛読書は『気分はもう戦争/双葉社』か。
「灼し陽を地面に穿つ向日葵よ」(海人)