全国書店新聞
             

平成18年7月1日号

夏の雑誌愛読月間/91誌で定期キャンペーン

日本雑誌協会は「2006雑誌愛読月間」として7月1日から8月20日まで書店店頭で定期講読キャンペーンを展開する。
期間中、雑協会員社の雑誌91誌の中からお気に入りの雑誌年間定期購読を申し込むと1カ月分がタダになる。キャンペーン参加店は全国で5454店と、ほぼ昨年並み。
キャンペーンのイメージキャラクターには、第43回ゴールデン・アロー賞グラフ賞を受賞した安田美沙子さんを起用し、「恋と雑誌は、必ず私にやってくる」と、店頭で定期購読の申し込みを呼びかける。雑協のホームページにも対象雑誌名、地域別参加書店リストを掲示してキャンペーンをPRする。
電気通信事業者協会とタイアップして、書店内でケータイによる雑誌写真撮影を止めてというマナーポスターは今年も製作。雑誌愛読者謝恩として安田美沙子さんをモデルにしたオリジナル図書カードを抽選で2006名にプレゼント。
このほか、ブックハウス神保町では雑誌月間ジョイントフェアとして、キャンペーン対象91誌を展示販売。2号前までのバックナンバーを定価の半額で販売する。
親子で楽しめる店頭イベントとして①幼児・子どもを表紙モデルにしたオリジナル図書カード製作、②読み語り・お話し会、③親子折り紙教室、④日本折紙協会作品展示などの催しが行われる。

中小書店の環境改善へ/政策審委員長に井門副会長/日書連

日書連は6月22日午前11時から書店会館で定例理事会を開き、5月の定時総会を受けて新年度委員会編成の手直しを行った。丸岡会長が座長を勤め、正副会長で構成していた環境改善政策審議会はスタートアップ21委員会の役割を吸収し、井門副会長を委員長に書店マージンの引上げを担当する。同審議会の下で実働部隊のワーキング機関は返品入帳、支払いサイト問題を担当、注文品迅速化は流通改善委員会と情報化委員会が担当する。
〔環境改善政策審議会〕
新しく政策審議会委員長に就任した井門副会長は「正副会長を委員に議論し、ひとつずつ実を取っていきたい」と、今後の所信を表明した。
スタートアップ委員会からの引継ぎ事項では、出版社倉庫ネット構想を説明。大手倉庫3社で8百社の在庫を管理しており、同データベースを利用すれば在庫は普通正味のまま翌日入荷も可能になると説明した。
ワーキング機関の鈴木機関長は「返品入帳、支払いサイトを担当することになったが、定価設定、返品運賃の問題もからんでくる。半年から1年かけて理解を深める取り組みをしていきたい」と述べた。
〔経営実態調査〕
書店経営実態調査は先月作成した報告書に続き、「書店業界改善のための提言、意見」を集めた『意見集』をまとめる。高須委員長は「494通の声が寄せられた。この中から具体性のある提案を拾い、読者の不満を解消し、書店業務改善の道を探る資料にしていきたい」と述べた。12名の編集委員で選考に入る。
〔読者サービス〕
井門委員長は全国に1万2千台弱設置されている図書カードリーダーを利用した読者サービスの仕組みを考えているとし、出版業界で調整していく方針。
〔再販擁護〕
再販弾力運用の一貫として書協が実施している「謝恩価格本ネット販売フェア」について、岡嶋委員長は「最近1年以内に発行され、書店店頭に定価で並んでいるものも多い。4月の例では15社35点が該当している」と指摘した。
このため、刊行1年以内の出版物は謝恩価格本フェアに出品を見合わせるよう求め、以後、同様の出品があれば書店新聞に書名を公表すると出版社に申し入れたいとした。
美容院向けに定期雑誌の割引を行っていたセイファートの問題では、日販の回答を大阪組合面屋理事長が紹介。再販契約を結ぶとともに、割引を中止することが明らかになった。
大分組合から指摘のあった学校直販の問題について大隈理事は「書店を経由せず学校に直取引をしている。ルール化を図るべきだ」と提案。青森組合鶴谷理事は「定価を割引いて販売すれば読者の定価への信頼感が失われる」と問題点を指摘した。丸岡会長は「再販本部委員会に要望している」と報告した。
〔日書連共済会〕
日書連共済会の存続問題については、これまでの議論の経過を木野村委員長、伊沢、大橋、河合の専門委員が報告した。大橋、河合両委員は日書連共済会が3年連続して単年度で赤字を出しており、設立当初に比べて会員が高齢化している点を指摘。伊沢委員は給付金が小規模の新会社を作る場合でも生保、損保を分離した上、経費が割高になると問題点を指摘した。
木野村委員長は「継続を望む声が圧倒的に多かったが、改正保険業法を見る限り継続は不可と考えざるを得ないのではないか」と述べ、解散、存続の費用見積もりを専門家に依頼する方針を説明した。
〔指導教育〕
書店業界活性化のための懸賞論文「私の書店論」募集について、大橋委員長が「広く本屋のアイデアを募っていきたい」と、積極的な応募を呼びかけた。
万引問題では6月16日に全国万引犯罪防止機構の総会が開かれたこと、福岡組合が7月1日から販売した本に販売証明済みシールを貼ることになったことが報告された。

SJの日記念2006「本の川柳」入選作

ダイエット目方減らずに本増える(埼玉・福田麗子)
きっと読むいつか読むぞと本の山(京都・ミステリーで眠れないさん)
誘惑に負けて最後のページ読む(愛知・宮尾美明)
趣味読書ジャンル聞かれて青ざめる(香川・山下利子)
占い誌はまり過ぎたかまだ独身(北海道・渡辺とも子)

大阪絵本展で値引き/無秩序な拡大には懸念/6月理事会

22日に開かれた日書連6月理事会は、委員会編成見直し、経営実態調査フォローのほか、再販問題では謝恩価格本ネット販売、絵本ワールド会場での値引きなど弾力運用の拡大に疑問の声が上がった。
〔読書推進〕
今年度の「絵本ワールド」開催地区ならびに日程について高須委員長が報告を行った。10月末に開催予定の「子どもの本フェスティバルⅰnおおさか」について、大阪組合面屋理事長は「児童書、一般書を割引販売する企画があるが、景品をつけるのではいけないのか。5月に上野公園で行ったフェアが引き金と聞いている。無秩序な謝恩価格本販売の拡大には反対」と問題点を指摘した。
上野の森フェスタは5月連休の3日間に4千万円を販売。児童書を2割引で販売したほか、一般書も78万円売り上げたという。
〔増売運動〕
雑誌協会が主催する夏の雑誌月間は、今年も36社91誌を対象に講読料金が1カ月分安くなる「定期購読キャンペーン」を展開する。申し込みは7月1日から8月20日まで。
「心にのこる子どもの本」秋の新刊セールについては、舩坂委員長が実施案を説明。昨年4月から1年間に出版された児童図書の中から、日本図書館協会、全国学校図書館協議会の選定図書を対象に①絵本、②読物、③あそびと学習、④読み聞かせ絵本の4セットに分けて受注する。販売条件は6カ月長期委託。販売目標1億3千万円。各県ごとに設定した販売目標をクリアすると1%の報奨金を各県組合に支払う。
〔流通改善〕
藤原委員長は7月に開かれる雑誌発売日本部委員会に①北海道・九州の2日目地区の繰上げ、②沖縄の週刊誌空輸、③悪質な違反の厳罰、④年末年始、GWなどの合併号廃止などを求めていくと説明した。
〔取引改善〕
5月の総会で千葉組合青柳氏から返品入帳の冊数が合わないと問題提起があった件で、下向委員長は取次と当事者間で話し合い、解決策を探るとした。
茨城県ひたちなか市のショッピングモールにリブロが3百坪で出店する問題は、茨城組合大野理事長から経過報告が行われ、「リブロは日販の子会社であり、実質的な取次直営の書店展開は、不公正取引に当るのではないか」と問題点を追求していくことを確認した。
〔情報化推進〕
東京国際ブックフェアの初日、7月6日に江東区有明の東京ビッグサイトで「全国情報化委員長会議」を開催する。志賀委員長は情報化委員長以外でも、各県代表の出席をお願いしたいと呼びかけた。
〔組織強化〕
5月期の都道府県組合新規加入は6店、脱退38店、差し引き32店の減で、5月末現在の組合員総数は6613店になったことが鈴木委員長から報告された。
〔広報活動〕
本年度の全国広報委員会議は10月11日(水)午後、書店会館会議室で開催する予定。
〔小売公取協〕
出版小売業公取協の景品規約改訂は5月25日に告示され、同日付けで施行されたことから、新しくパンフレットを製作すると影山専務理事が発表した。
また、日販が発表したポイントカード・システム「HONYACLUB」の件では、小売公取協井門会長が日販橋専務を訪問し、同システムの仕組みを聞くとともに、景品規約改訂の内容について理解を求めてきたと報告した。
◇事務局人事
総務部長(主任)=石井和之

共済会給付

(18・5・23~18・6・19)
▽病気傷害新宿区上落合2―20―6伊野尾書店伊野尾信夫殿2口
大津市鳥居川町7―8加藤弘文堂加藤千鶴子殿
2口
井原市井原町1087柳本商店柳本公典殿
千曲市更埴桜堂621屋代西沢書店柳沢照明殿10口
▽病気傷害・死亡弔慰岡崎市矢作町馬場17原田書店原田一殿
岐阜市泉町5郁文堂書店浅野弘殿4口
▽死亡弔慰奥州市水沢区字大町84鈴木書店鈴木勝治殿2口
▽配偶者死亡(加藤文江)名古屋市千種区池下1―11―17池下三洋堂加藤紅方殿10口
▽前名義人死亡(片岡恭二)倉敷市小島味野2―2―61片岡書店片岡均殿2口
▽住居・倉庫一部焼失豊川市旭町62村松書店黄木廣保殿1口25万円
▽倉庫雪害上水内郡信州新町198前澤書店前澤芳美殿2口10万円

大澤理事長を再選/群馬組合総会

群馬県書店商業組合は5月29日、前橋問屋センター会館で第19回通常総会を開き組合員45名(委任状を含む)が出席した。
総会は石坂事務局長の進行で中村副理事長の開会、大澤理事長あいさつの後、議長に吉田理事を指名し議案審議。平成17年度事業・決算報告、18年度事業計画・予算案を原案通り承認可決した。また、電子部会を新たに委員会に加え活動していくことにした。
役員改選では議長より竹内理事を推薦委員長に各理事を推薦。大澤理事長・高塚・中村・小林副理事長がそれぞれ選任された。
大澤理事長は「業界はますます厳しい時代に入る。高崎にはイオンモールが10月、前橋には紀伊国屋書店が来春に開店予定。既存書店にはこれからが生き残りをかけた戦いになる」などとして組合員の一層の活性化を訴えた。
議事終了後、中小企業団体中央会東宮健治事務局長が祝辞、高塚副理事長の閉会挨拶で終了した。総会後、版元企画説明、運送会社、ぐんま共済ドライバー共済制度等の説明会があり、懇親会で幕を閉じた。
群馬組合新役員
(○は新任)
▽理事長=大澤孝輝(天華堂)、▽副理事長=高塚茂(正林堂)、中村光雄(ナカムラヤ)、○小林卓郎(煥乎堂)
(竹内靖博広報委員)

書店ネット構築へ/青森組合総会

青森県書店商業組合は5月16日、青森市・アラスカ会館で総会を開催した。冒頭、鶴谷理事長は「出版・取次・書店の力のバランスが崩れて来たのを改革すべき時期。ナショナルチェーンに対抗して地域を守る書店が生き延びる具体的な戦略を考え、アクションプランを練っていかなければならない」と述べた。
青森組合では昨年度、読書推進運動を基本に郷土出版物フェアや学校図書館情報化推進運動を行った。万引き防止運動は実態アンケートをもとにラジオを活用したマナーアップ運動を行った。また取引条件改善について決議文を発表し改革の突破口を目指した。
今年度の事業計画では「青森県書店ネット構築」のための調査研究活動を行う。これは地域グループ内書店の情報共有化と、共同仕入れ・マーケティングの共同化を目指すもの。また、新業態書店や新県民雑誌創刊の調査研究も行う。
(黒滝恭一広報委員)

「声」/セ社年間割引の波紋と取次の責任/大阪・隆祥館書店・二村善明

5月19日の大阪組合総代会で「セイファート」が問題になりました。年間購読すれば各版元が定期購読割引(中には20%割引まである)するほか、支払い額が年間10万円で10%引き、20万円を超えれば20%引くと、インターネットで広告されていたものです。のちに10万で10%、20%の割引は消されました。書店では月額1万円以上お買い上げくださるお得意先よりキャンセルが出始め、影響が現われ始めています。
総代会では、同社の取引先、日販に抗議し、セイファートの割引中止を要求することが提案されました。
全国の書店さんに以下の要求を呼びかけたいと思います。
①日販にはセイファートの割引行為を中止させ、取次として責任をとるよう要求しましょう。
②20%割り引く原資を版元に要求していることは明らかで、K社、S社は拒否したと聞いています。各版元もこのような要求は拒否してほしいと思います。
③公取委はヤマダ電機のポイントに対して原価を割るものは割引行為としています。セイファートも美容材料等での原価計算をもって再販商品である本の割引に乗り出すことは不公正取引として指導すべきです。
④万が一、割引を止められない場合はトーハンのブックライナーや日販のマガジンエキスプレスも書店での年間購読をセイファートと同じ条件にすべきだと考えます。
出版業界の長期低落の中、版元、取次、書店の正常な発展こそが不況を克服する唯一の方法であり、売れればなんでもよいという発想は業界発展に結びつくものではないことを認識する必要があると考えます。

「中学生はこれを読め!」/本屋のオヤジのおせっかい/札幌から全国へと拡大

「最近すっかり中学生が本屋に来なくなった。中学生をもう一度本屋に呼び戻そう」と、札幌市西区の「くすみ書房」が始めたフェア「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め!」。スタートから2年たち、フェアは札幌から北海道全域、そして全国へと広がっている。6月14日、「くすみ書房」を訪ね、久住邦晴社長に話を聞いた。(編集部・白石隆史)
くすみ書房は地下鉄東西線の琴似駅から徒歩5分のところにある。売場面積は100坪。創業は昭和22年と、かれこれ60年の歴史を持つ書店だ。店の前のバス停は乗降客も多く、商売は順調だった。
転機が訪れたのは7年前。地下鉄が2駅延長になったため、バスの便が2、3割に激減。以来、この地域の地盤沈下が始まり、店の売上も2割落ちた。
撤退か移転しかない状況。久住社長は全従業員を集め、「最後のチャレンジをする」と宣言。そんなとき手にしたビジネス書をヒントに「売上のことは二の次に、人を集めることだけ考えよう」と頭を切り替えた。そして、面白くて、すごくて、変なこと、誰もやっていないことをやる。広告代理店「らむれす」を経営する友人、木原久美子さんからは「マスコミを動かせ」「経営者を売り込め」と助言された。
苦境を乗り越えるため、ここ数年、久住社長はいろいろとユニークなことを手がけてきた。その1つが「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め!」だ。
この試みを始めたのは04年8月。「中学生は本を読まないとよく言われるけど、店の中を見るとウチには中学生向けのコーナーがなかった。中学生の棚を作れば彼らは店に来る」と考えた久住社長は、推薦本のリスト作りに着手。古典、純文学の定番から最近の作品まで350冊を選んだ。このリストを店に置き、専用の棚を設け、推薦本には共通の帯を巻いた。
「中学生フェアは誰もやっていないから絶対に話題になると思っていた」と久住社長。この試みは全国規模で注目を集め、自身が副理事長をつとめる北海道組合は04年10月に28店、05年に62店が参加して実施。静岡組合では05年12月から06年1月にかけて実施し、100店が参加した。愛知組合も10月に実施する。
話題性ある内容とインパクトあるネーミングで、新聞、テレビの報道も多い。それを見た中学校や図書館から「リストを使わせてほしい」などの問い合わせが相次いでいる。「おせっかい」は地域、業界の枠を超えて広がりつつある。
道組合は今年も7月18日~8月20日の日程でフェアを実施する。これにあわせて北海道新聞社から500冊推薦リストがブックレットとして発売される。「中学生の棚のある常設店を増やすことが今回の目標」と久住社長。「フェアは単なるキッカケで、常設することが大事。中学生が店に来るだけではなく、学校とのつながりができるし、学校外商につながるかもしれない。きちんとやれば業界全体も3~5%伸びる」。
さらなる認知を図るため「本屋のオヤジ応援団」として著名人、タレントの巻き込みも考えている。永六輔さんには手紙を書いた。朝の読書、ヤングアダルト出版会との連携強化など、道組合の取り組みはますます充実していきそうだ。
くすみ書房店内では「中学生はこれを読め!」のほかにも独創的な企画が行なわれている。たとえば「なぜだ?売れない文庫フェア」。ランク外の無印本、売れ行き下位の名作ばかりを集めたフェアだ。「売れてないから本屋で置かない。絶版になり、良書が消えていく」「大手ナショナルチェーンのすさまじい進出で町の本屋も消えようとしている」と訴え、新潮文庫、ちくま文庫、中公文庫、岩波文庫などを揃えて実施。新聞やテレビで大きく取り上げられ、売れないはずの文庫が次々と売れた。前年比20%減だった店の売上が、これをきっかけに15%増に転じたという。
このほか、日曜日以外の毎夕20分間、「名作をBGMに」と店内で岩波文庫の朗読をやっている。昨年9月にはブック・カフェ「ソクラテスのカフェ」を地下1階にオープンし、英会話教室、韓国語教室、朗読教室、国語教室を始めた。
「身の回りにいくらでもチャンスはある。見つけたらすぐ実行。実行し始めたらヒト・モノ・情報……すべてが集まってくる。いま町の本屋は元気がない。こんなときこそ誰もやらないことをやる勇気が必要」。久住社長は力強く話した。

5月期は3・3%増/『ハリー・ポッター』が貢献/日販調べ

日販調べの5月期書店分類別売上調査は3・3%増と、2ヵ月連続で前年を上回った。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(静山社)発売による貢献が大きい。
ジャンル別では6ジャンルが前年を上回り、『ハリー・ポッター』効果のあった文芸書78・1%大幅増、児童書12・6%増(調査店の中には同書を「児童書」で集計している店があるため)をはじめ、最近好調が続く文庫16・4%増、新書22・3%増の4ジャンルが2桁の伸びを示した。文庫は『ダ・ヴィンチ・コード』(角川書店)、新書は『国家の品格』(新潮社)が前月に引き続き大きく寄与した。
規模別では全規模で前年クリア。立地別では前月に引き続き商店街のみ1・3%減と前年を下回った。
客単価は5・5%増の1156・9円。客単価の上昇にも『ハリー・ポッター』が影響した。

日書連「全国小売書店経営実態調査」/「経営悪化」85%と深刻/マージン拡大求める声強く

85%の書店が「経営状態悪化」、特に小規模書店の状況が深刻――日書連が昨年12月に実施した「全国小売書店経営実態調査」の結果がこのほどまとまり、書店業界を取り巻く環境の厳しさが浮き彫りとなった。
この調査は全国組合加入書店の経営実態を明らかにすることで、今後の運動のあり方を見定めるために実施。調査結果では、日書連に望む対応として「マージンの拡大」「客注品の迅速確実化」「再販擁護」「適正配本」「支払いサイトの延長」の5項目が上位となった。丸岡義博会長は「調査結果をもとに今年度は取引慣行の弊害是正、取引条件改善の提言を行い、書店経営基盤の整備に全力を尽くす」としており、今後「書店業界環境改善政策審議会」が中心となって諸課題の解決に取り組む。
今回の調査は書店経営実態調査特別委員会(高須博久委員長)を設け、99年以来6年ぶりに実施した。日書連会員47都道府県組合に所属する組合員6949名を対象に郵送で実施し、回収数は2028票、回収率は29・2%だった。調査結果をまとめた報告書は①書店の現状②雇用労働条件の現状③経営の実態④取引の実態⑤経営者の実態の5章で構成されている。調査結果の概要を紹介する。
〔経営悪化の原因は客数減少/経営の実態〕
ここ数年間の経営状態の変化は「悪くなった」62・5%、「やや悪くなった」23・1%と、全体の85%以上の書店が経営状態悪化の認識を持っていることが明らかになった。「やや良くなった」は3・6%、「良くなった」はわずか0・8%だった。
ブロック別に見ると、「悪くなった」と答えた書店が最も多かったのは北信越ブロックで66・4%、「良くなった」が最も多かったのは北海道ブロックの2・8%だった。立地環境別で「悪くなった」が最も多かったのは商店街66・1%、「良くなった」が最も多かったのは郊外2・4%だった。売場面積別では、大型店ほど経営状態が良くなったと回答する割合が多く、201坪以上では「良くなった」3・8%、「やや良くなった」23・1%となっている。一方、小規模店ほど悪くなったと回答する割合が増え、10坪以下では「悪くなった」66・1%、「やや悪くなった」21・9%、11~20坪では「悪くなった」69・5%、「やや悪くなった」20・8%。約9割の小規模店が経営悪化を認識する深刻な事態となっている。
経営状態の悪化の原因(複数回答)は、「客数の減少」が突出して高く84・2%に達している。次いで「大型店の出店」44・7%、「立地環境の悪化」40・0%と環境面の変化があげられている。
今回の調査では項目を設け、書籍の支払いサイトについて聞いているが、「支払いサイトを商品回転率に整合させて決めるべき」とする意見を「支持する」回答が36・2%を占め、「現行のままでよい」19・1%を大きく上回った。「わからない」とする回答も34・9%あった。適切な支払いサイトは「90日」31・8%、「60日」30・5%とする意見が多かった。
今後の書店業界の発展を図るために日書連に望む対応(複数回答)としては、「書店マージンの拡大」が最も多く59・6%で、以下「客注品の迅速確実化」51・4%、「出版物再販制の擁護」44・9%、「適正配本」40・3%、「支払いサイトの延長」29・6%が上位5項目。「書店マージンの拡大」を求める声は大規模店ほど多く、201坪以上76・9%に対して10坪以下52・6%。「支払いサイトの延長」を求める声も大規模店ほど多く、201坪以上42・3%に対して10坪以下20・8%。一方、「客注品の迅速確実化」を求める声は小規模店ほど多く、10坪以下50・9%に対して201坪以上23・1%。「適正配本」を求める声も小規模店ほど多く、10坪以下31・3%に対して201坪以上19・2%。
組合活動で活用しているもの(複数回答)は「全国書店新聞・組合広報紙誌」が最も多く46・2%で、以下「日書連共済会」33・3%、「書店くじ」32・2%、「親睦」24・2%、「情報交換」23・8%が上位。
書店が生き残るための施策(複数回答)については、「地域密着化」が最も多く44・6%で、以下「外商強化」31・9%、「専門店化」19・9%、「後継者の育成」18・0%、「複合店化」17・2%の順。「外商強化」は11~20坪(37・0%)、「専門店化」は201坪以上(46・2%)、「複合店化」は151~200坪(41・2%)で特に多く、小規模店は外商強化、大規模店は複合店化・専門店化に活路を求める傾向が見られる。
〔「入荷ままならず」5割超/取引の実態〕
書籍と雑誌(ムック・コミック含む)の売上比率は、「書籍3対雑誌7」が最も多く21・3%、続いて「書籍2対雑誌8」が17・5%で、雑誌の割合が6割以上を占める店は65・6%に達している。
書籍の年間回転率(年間売上高/在庫高)は、「3回転~4回転未満」23・7%、「2回転~3回転未満」19・5%、「1回転~2回転未満」18・1%が多く、5回転未満の店が全体の約8割を占め、平均4・1回転となっている。
調査時点における直近数ヶ月の書籍返品率を聞いたところ、「40~45%未満」が14・9%、「30~35%未満」が11・8%と多く、平均34・8%。また、雑誌返品率は「35~40%未満」が24・0%と多く、平均29・9%となっている。
新刊書籍の入荷状況は、「ほとんど入らないことが多い」とする店が50・2%と半数にのぼった。「入荷するが希望数は入らないことが多い」は33・7%、「希望通り入荷する」は7・5%。大規模店で「希望通り入荷することが多い」とする割合が多くなっており、201坪以上は37・7%。一方、10坪以下は8・5%となっている。
雑誌(ムック・コミック含む)の入荷状況は、「入荷するが希望数は入らないことが多い」とする店が53・6%を占め、「希望通り入荷することが多い」は29・3%。「ほとんど入らないことが多い」は7・7%。大規模店で「希望通り入荷することが多い」という割合が多く、201坪以上は50・7%。一方、10坪以下は26・8%。
ベストセラーの入荷状況は、「ほとんど入らないことが多い」が54・8%にのぼる。「入荷するが希望数は入らないことが多い」は31・8%、「希望通り入荷することが多い」は4・7%。売場面積別では、10坪以下は「希望通り入荷することが多い」は3・4%に過ぎず、「ほとんど入らないことが多い」は54・8%にのぼる。一方、201坪以上は「希望通り入荷することが多い」30・4%に対して、「ほとんど入らないことが多い」は4・3%となっている。
補充品の入荷状況については、56・3%の店が「入荷するが遅い」と回答。「正確に早く注文通り入荷している」と回答した19・6%を大きく上回っている。売場面積別では規模が大きい店ほど「正確に早く注文通り入荷している」とする割合が多い。201坪以上は56・5%、10坪以下は9・7%。
客注品の入荷状況(複数回答)は、「入荷するが遅い」が53・9%と半数を超える。次いで「入荷日が不正確」38・6%、「取次の客注有料システムが優先されている」24・0%となっており、「正確に早く注文通り入荷する」は15・0%。売場面積別では、「正確に早く注文通り入荷する」と回答した割合が最も多いのは151~200坪で47・2%。一方、「入荷するが遅い」が最も多いのは11~20坪で58・6%。
補充品や客注品に対する日頃の出版社・取次の対応については、「対応してくれるが正確性に欠ける」が48・2%と最も多く、「責任をもって正確に対応してくれる」36・4%を上回る。「対応してくれない」も3・7%ある。
在庫の中で常備寄託品・長期委託品の占める割合は「10%未満」が最も多く33・2%。総売上高に占める外商の売上高の割合は「10%未満」が最も多く30・0%。売場面積別では大規模店ほど外商売上高「10%未満」の店が多く、201坪以上では78・3%となっている。
〔請求「厳しくなった」37%/取次の請求〕
取次の決算月における大量送品はあるかを聞いたところ、「ない」とする店が49・9%と半数を占め、「ある」とする店は24・4%だった。取次の決算月における返品入帳操作はあると思うかについては、「あると思う」と回答した店が43・6%を占め、「ないと思う」21・7%を大きく上回っている。また、取次からの請求の厳しさは以前と比べてどうなったかを聞いたところ、「変わらない」という回答が最も多く58・4%を占めたものの、「前よりは厳しくなった」20・4%、「非常に厳しくなった」17・0%で、厳しくなったと回答した店も37・4%を占める。
〔40坪以下の店、7割占める/営業の実態〕
今回の調査店の立地環境は「商店街」が42・2%で最も多く、以下「住宅街」17・8%、「駅ビル・駅前」14・2%の順になっている。売場面積は「11~20坪」が29・7%で最も多く、次いで「21~40坪」23・2%、「10坪以下」17・3%の順となっており、40坪以下の店が全体の7割を占める。兼業の有無は76・9%が兼業店。北海道ブロック(94・8%)と九州ブロック(88・2%)で兼業の割合が高く、東京ブロック(64・3%)と近畿ブロック(65・5%)で兼業の割合が低い。兼業商品・サービスは「文房具」が44・0%で最も多く、以下「教科書」37・3%、「CDまたはビデオの販売」18・9%の順。総売上に占める兼業の割合については、兼業割合50%以上の兼業依存率が高い店は19・8%、依存率10%未満の専業店に近い店は20・2%。
営業時間は「10時間台」23・6%、「11時間台」22・4%が多い。定休日は「無休」が40・6%と最も多い。平均賃金は初任給ベースで高校卒業者14万4793円、短大・専門学校卒業者15万5931円、4年制大学卒業者17万5792円。アルバイト・パートの時給は751円。経営者の年齢は「60代」が最も多く30・8%で、50代以上が全体の8割を占める。
読み聞かせなど自店独自の読書推進活動は、「積極的に行なっている」5・5%、「時々行なっている」5・8%で、実施率は11・3%。売場面積別で最も「積極的に行なっている」のは201坪以上で、42・0%と突出している。

ふるさとネットワーク/北海道・東北ブロック編

〔北海道〕
また街の本屋の灯が消えた。
本屋の友人から「資本力のない弱小書店の果たす役割は充分果たした」と。しかし行間から苦渋の決断が読みとれる。
タクシー業界も、規制と不況でここ数年売上半減、経営も非常に厳しくドライバーさんも大変。「俳画集」出版予定のF氏はタクシードライバー。「ゆったりのんびり」をモットーに運転、売上社内ナンバーワンの実績も。そのコツはお客と趣味の話し合いで穴場の観光スポット案内。
北海道観光タクシー乗務員の会代表のF氏は、シティーガイドの資格、人を和ませる話し方などをテーマに一流講師を招いて勉強会を重ねる。当店と協力し〝野の花の旅〟を切口に北海道の自然観光ガイドタクシーのホームページ(http://www.n-hana.net)を立ち上げた。行政・一流ホテルにリンクなど協力を申し入れ、反応は良好。
野生の鈴蘭はめっきり減った。雑草に混じってたくましく白く清楚で凛と咲く姿は美しい。ちなみに花言葉は「幸福の再来」。(写真はF氏が撮影)
(松山雄洋広報委員)
〔青森〕
サッカー日本代表のW杯がブラジルに1対4で敗れ終わった。世界のレベルとはまだまだ開きがある。自分たちの足元をしっかり認識すべきだった。2010年南アフリカ大会の切符を確実なものにするために、世界に通用するサッカーを熱望する。私の住む町青森県五戸町の商店街等で実施しているポイントカードは、予選の各試合を勝てばポイント10倍セールを企画し準備万端だったができずに終わった。
さて今度は3年目の商店街七夕飾りが始まる。仙台の100分の1くらいの規模だが、各個店がアイデアと知恵を絞り地元客を少しでも呼び戻そう、できることから始めようとの趣旨で7月1日から1週間、商店街の雰囲気もがらりと変わる。特に大きなイベントこそ無いが評判も上々、年々飾りもグレードアップする店なども出てきて継続事業となりそうだ。当店も通りでは一番品良く目立とうと、準備している。
(菊池隆良広報委員)
〔秋田〕
県の花(ふきのとう)昭和29年制定。NHKが郷土の花を募集したことがきっかけで秋田の花に選ばれた。別名「バッケ」という。
県の鳥(やまどり)昭和39年制定。キジ科の鳥で、おもに県内の内陸部の山に棲む。
県の木(秋田スギ)昭和41年に制定。美しい木目と強い材質が特徴。日本三大美林の一つに数えられている。第62回国民体育大会のキャッチフレーズは「秋田わか杉国体」(平成19年9月29日~10月9日。写真はマスコットの「スギッチ」)。
県の魚(ハタハタ)平成14年制定。県民からの意見により決められた。水深250㍍の海底で育ち、初冬に産卵のため沿岸にやってくるが、昔の大漁旗と違い漁獲の制限がある。
全国からみた秋田県のトップ(丸数字は全国順位)①死亡率②悪性新生物(がん)死亡率①脳血管疾患死亡率①人口10万人当たり理容美容所数②総住宅当たり持家率③人口10万人当たり児童福祉施設数③刑法犯検挙率
(木村和一広報委員)
〔岩手〕
柳田国男著「遠野物語」が明治43年に刊行され、平成22年に発刊100周年を迎えます。これといった名所旧跡もない遠野に、大勢の観光客や研究者が訪ねてきてくれるのは、名著「遠野物語」が広く読まれているからであり、市では「遠野物語発刊100周年記念プロジェクトチーム(20人)」を設置しました。記念事業の実施により「永遠の日本のふるさと遠野」の発信を図ろうとしております。
また、市は構造改革特区「日本のふるさと再生特区」の認定を国から受け、どぶろく製造が可能になりました。税務署の酒類製造免許を取得した農家民宿や農家レストランでは自家製どぶろくが提供されております。販売免許を取得した民宿では、数量限定ながら宿泊客が飲めるだけでなく、地方発送も始めております。
今年の夏は緑陰でどぶろくを味わいながら「遠野物語」を読んでみてはいかがでしょうか。
(内田正英広報委員)
〔山形〕
威勢のいい掛け声と花笠太鼓の勇壮な音色。華やかに彩られた山車を先頭に、艶やかな衣装と花笠を手にした踊り手が、山形市のメインストリートを舞台に群舞を繰り広げます。
現在では「東北四大まつり」の一つとして全国に知られるようになった「花笠まつり」、毎年8月5日~7日、山形の真夏の夜をこがします。昨年は、135団体1万2千人の踊り子が踊り(過去最高)、百万人以上の観客が通りを埋め尽くしました。「花笠まつり」は県外のお客様だけでなく、地元の私たちも大いに楽しみます。女性は浴衣で綺麗に着飾り、「まつり」を大いに盛り上げます。商店街の人たちは、店の前に屋台を作りビールや焼きそばなどを売ります。帰省してきて久々に待ち合わせている若いグループがたくさん見受けられます。
毎年見てもワクワクドキドキ、是非一度ご覧になって下さい。(五十嵐靖彦広報委員)
〔宮城〕
昨年プロ野球界に新規参入した「東北楽天ゴールデンイーグルス」。2年目の今年は野村克也監督を迎え、地元・宮城では一層の盛り上がりを見せています。ファン層は幅広く、試合のある日にはユニホーム姿や赤いキャップを被っている老若男女を多く見かけます。本拠地のフルキャストスタジアム宮城も交通至便なので、たくさんの観客が集まっているようです。
楽天がもたらした経済効果を、地元では「楽天効果」などと呼んでいますが、書店業界にもその効果は及んでいるようです。プロ野球関係の雑誌、観戦ガイド、野村監督の新旧の著作はもちろん、県外から相手チームの応援で来たお客のニーズなのか、仙台市内の繁華街飲食店ガイドなども好調な売行きを保っています。
現在のところ厳しい戦いが続いている楽天イーグルスですが、野村監督のもと力を合わせて頑張ってほしいものです。それに伴って更なる「楽天効果」が店頭に現れることを期待しています。(柴修広報委員)
〔福島〕
活字離れをくい止める試みが様々行われていますが、福島県では、2つの企画がそれぞれ郡山市で開催されます。
☆第35回全国学校図書館研究大会が、郡山女子大学を会場に8月9日~11日、研究会(分科会)を中心に開催されます。
☆絵本ワールドin福島は、8月12日~13日に、ビッグパレットふくしま(写真)を会場に行われ、講演会・トークショー/サイン会、ワークショップ(読み聞かせ・紙芝居・人形劇・工作)、原画展・手づくり絵本などが予定されています。県内のこどもの読書活動を行っている関係者が協力して運営し、交流と連携の拡大と深化をめざすもので、県民参加型の大イベント的なお祭りです。両催事とも県組合は、児童図書8千点の展示販売をする予定です。
普段見られない本を手に取って見られるチャンスです。是非おいでください。
(大内一俊広報委員)
〔北海道・東北六県「名前の由来」〕
◆北海道=江戸~明治の探検家・松浦武四郎の命名をもとに、「東海道」「南海道」などの「五畿七道」に対応して名付けられたとされる。
◆青森=江戸時代に現在の青森に港が開かれ、付近に松林が青々と広がっていたので「青森」と呼ばれた。
◆秋田=低湿地を意味する「齶田(あぎた)」「飽田(あくた)」と呼ばれていたのが変化したという。
◆岩手=岩手山の名前にちなむ。この名は、焼走り溶岩を「岩出(いわいで)」と呼んだのがなまったのだという。
◆山形=「山のふもとの土地」の意味で、蔵王のふもとにあったのでそう呼ばれるようになった、などの諸説がある。
◆宮城=奈良時代に国府が置かれ、「宮宅(みやけ)」と呼ばれるようになったのがなまったのだとされる。
◆福島=川の合流点で水害の多い低湿地だったため、「深し」に接尾語「ま」がついた「深しま」と呼ばれたのが「福島」の語源だという。

新・アジア書店紀行/ノセ事務所代表取締役・能勢仁/第1回タイ・バンコクの巻①

〔タイランドについて〕
タイの正式名称はタイ王国(キング・オブ・タイランド)である。国土は約51万平米で、日本の1・35倍ある。人口は約6500万人で、GNPは韓国の3分の1である。言語はタイ語、文字はサンスクリット文字である。英語はホテル以外はほとんど通用しない。時差は2時間なので時差ボケの心配は少ない。人口の約90%が仏教徒であるから国民性は穏やかで優しい。
〔バンコクについて〕
バンコクの交通渋滞は世界的に有名である。しかし今はその心配はないと筆者は感じている。それは1998年にスカイトレイン(BTS)が2系統、市内中心部を高架で走るようになったことと、04年に全長20㌔、駅数18の地下鉄ができたからである。バンコクは人口6百万人で、市の中心をメナム川(チャオプラヤ川)が流れ、かつては東洋のベニスと謳われたほど美しかったが、今は運河を利用した交通網はモータリゼーションに取って代わられた。以下、市内の書店巡りをしてみましょう。
1、アジアブックスタイムズスクェア店
アジア・ブックスはバンコク市内のチェーン店として最大である。市内に10店舗を擁している。英語書、タイ語書の専門書店で、日本書は全く扱っていない。
タイムズスクェア2Fのエスカレーターを昇ったところにある立地のよい店である。大きなウィンドウは総ガラスで店内が見通せるし、そこに60種の新刊書籍が展示されている。これらの本はアジア・ブックスで売りたいと思う本ばかりである。常連客が多いのか、一人の買い上げ点数が多い。カード買いも多い。約40坪の店であるが男子店長、その他男4名、女3名と多いが、サービスに努めるためである。小生がタイ史の本がほしいといったら、検索してくれて単行本とペーパーバックス数冊を持ってきてくれた。手際よい速さである。この店は旅行、料理、児童、実用、画集、写真集に力が入っている。
2、アジアブックスエンプロイアムSCコンプレックス店
バンコク有数の高級百貨店であるエンプロイアムの専門店街の3階にこの店はある。このフロアには紀伊国屋書店洋書専門店があるので、競合しているといえる。しかも紀伊国屋書店は約4百坪前後あり、アジアブックスは40坪前後なので、品揃えでは負けてしまう。そこで、サービス面、店内の雰囲気で勝負している。店頭は総ガラスのウィンドウがあり、店内の見通しはよい。そして社員8名はお客様の気を逸らさぬ商売をしている。紀伊国屋書店との最大の違いは店内照度の違いである。暗い紀伊国屋書店に対して、アジア・ブックスは約2倍の照度があり、感じがよい。雑誌の売場は狭いが、誌数は1200誌と対抗店と変わらない。この店は元気があり、声掛けもあり親しみやすさを感じた。
3、アジアブックスペニンシュラ店
ホテルとして高級を誇るペニンシュラの専門店街2階にある。店頭はガラスのウィンドウで他店と同じ作りである。社員の多いことも同じである。ただ惜しむらくは、専門店街全体が客入りが悪く、ひっそりとしている。たぶんアジア・ブックスとしては営業成績が良い方ではないだろう。
4、それ以外のアジア・ブックス
スクムビット通り店、サイアム・ディスカバリーセンター店、セントラルワールドプラザ店、セントラルシティバングナ店、ランドマークA&Z店、タニヤ店、シーコンスクエア店、以上全部で10店舗である。アジア・ブックスでは毎月、ニューアライバルの新刊目録を発行し。読者に店舗で提供している。店の共通キイワードはTheBIGREAD―READMOREGAINMORE」である。
5、東京堂書店エンポリアム店
東京堂書店は現地日本人に利用してもらうために作られた現地独立法人である。この店はエンポリアム百貨店の3Fにあり、トーハン帳合、約30坪の店である。日本の大学を卒業してこちらにきた大村さんというお嬢さんが頑張っている。30歳代の仕事のできる人で親切である。バンコクに来て5年になる。
地元には取次がないと聞いていたが、実際にはSE―ED書店が地元商品の取次をやってくれている。当店はそこからトーハン以外の商品を調達している。店内に万引きの貼り紙があったので大村さんに尋ねたところ、あまりないという。なぜならば、タイの習慣では、鞄、袋、手提げなどはレジに預けるからである。店長はタイ人であるが会えなかった。扱い商品は総て日本書である。レジの前におむすびが置かれているのが印象的であった。地元業者が毎日持ってくるそうである。
この店は棚が低く見易い。雑誌分類も細かく表示され、音楽、ガンダム、趣味誌、女性誌に力が入っていた。この店のよさは親しみやすいことである。文庫がよく売れるという。新潮、角川、幻冬、集英社など揃っていた。ただし中には古本のように汚れている本もある。簡単に返品できない外国の事情がわかる。
店に入ってすぐに話題書、タイ紹介の本が揃っている。5日間でタイ語が分かる本、タイ文化を知ろう、習慣の違いの本などである。これらの本は地元出版の日本語の本である。社員は女性4人(日本人は大村さんのみ)で、レジの中に4人も入るので窮屈そうであったが、読者の質問が多いので、検索のために入らざるを得ないということであった。
6、東京堂書店アマリンプラザ店
この店はスカイトレイン、チットロム駅前の専門店ビル3Fにある。くるま、オートバイ関係の雑誌が多い。社員は女3、男1で、売場は6間×6間=36坪である。壁面の棚の陳列は面陳列がほとんどなので、品薄感は免れない。店の真ん中にレストスペースがあり、お茶が飲める。その場所に各種出版目録が置かれてあった。日本語である。
7、DOKYA書店
サヤームスクエアの第3路地に面した大型書店である。この地区では一番大きい。店の両面に通路があるので、表からも裏からも入れる。バンコク一番の若者の集まる原宿である。
店は1階店頭に雑誌、店内は文芸、一般書、コミックで約60坪、店の左端に階段があり、2階に行く。2階は9間×6間=54坪。商品は学参、語学専門書で総合書店であることがわかる。この店は別名ランゲージメディアブックセンターと看板を出しているように、語学書が豊富である。従業員も多く、1階10名くらい(うちコミック1名、雑誌売場1名)、2階は8名くらいである。外の雑誌売場には立ち読み客が15人もいて、日本の書店風景と変わらない。この店は繁盛店である。

人事

〔日販取締役〕
(◎昇任、○新任)
取締役会長◎鶴田尚正
同副会長◎阿部洋一郎
代表取締役社長
◎古屋文明
代表取締役副社長(経営全般担当)◎柴田克己
専務取締役(営業推進室・経営相談室・取引部総括、取協担当)橋昌利
常務取締役(CVS部・事業戦略部担当)鈴木暁
同(関西・岡山地域COO)◎鎌谷照夫
同(システム部・書籍部・雑誌部担当)◎井上顯一
同(ネット事業部担当、出版協同流通代表取締役社長、日販運輸代表取締役社長)◎高見吉弘
同(特販営業部担当)
◎石田耕二
取締役(首都圏地域COO)小林利夫
同(営業推進室長、WWW推進部長)○加藤哲朗
同(経営戦略室長、経理部長)○平林彰
同(物流部門担当、王子流通センター所長)
○安西浩和
同(MPD代表取締役社長)○吉川英作
同(CCC代表取締役社長)増田宗昭
〔監査役〕
常勤監査役黒岩紘司
同○高橋滋世
同(公認会計士)和井内清
同(新潮社代表取締役社長)佐藤隆信
〔相談役〕
相談役(紀伊国屋書店代表取締役会長兼CEO)
松原治
同(講談社代表取締役社長)野間佐和子
同(小学館代表取締役社長)相賀昌宏
同(有隣堂代表取締役社長)松信裕
同(三省堂書店代表取締役社長)亀井忠雄
同小関道賢
◇中央社
〔機構変更〕
1、経理部事務管理課を廃止し、事務管理部を新設する。
2、特販部に新規事業室を新設する。
〔告示〕
解・業務部長兼任常務取締役外山義朗
委嘱・特販部新規事業室長兼任
執行役員斎藤進
〔辞令〕(部長級)
▽事務管理部長(取引部長)岡田益男▽経理部長部長代理待遇兼経理課長(経理課長)江上浩▽業務部長部長代理待遇兼雑誌業務課長(市場開発課長)真瀬忠雄▽経理部付部長(経理部長)剱持明敏▽事務管理部付部長(経理部付部長)田口留男

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・杉本愿恵

◇2歳から/『はるちゃんのぼんぼりぼうし』/とくながまり=作/とよたかずひこ=絵/ひさかたチャイルド
840円2006・4
お母さんが編んでくれた赤いぼうし、はるちゃんが歩く度に頭の上でぽんぽんゆれます。それを見たうしさんが「ぼくにもかしてくださいな」って。やぎさんもはりねずみさんも次々にやってきて…。ぼんぼりぽんぽんというリズムが気持ちをはずませ嬉しくなります。絵と文がぴったり。
◇4歳から/『とんでったらあふりか』/羽仁進=作・絵/福音館書店1365円2006・3
片耳のないねこを追いかけて着いた所は真夜中のアフリカ大陸。ヒョウから逃れて夜明けと共にいろいろな動物達のさまざまな生態が繰り広げられぼくはドキドキワクワク。映画撮影のためアフリカ滞在2年歴の羽仁進監督の描いた絵本は簡素ながらサバンナの空気感に満ちて楽しめます。
◇小学校低学年向き/『アンデルセンおはなし館にんぎょひめ』/武鹿悦子=文/小谷智子=絵/世界文化社840円2005・4
アンデルセン童話「人魚姫」が絵本でリニューアル。海に住む人魚姫が船室の窓越しに見た人間の王子さまにかなわぬ恋をし、人間になりたいと望むのですが…。クラシカルな色調とタッチが幻想的で文章をひきたて人を想う心の美しさが胸を打ちます。女の子には是非のお薦め絵本。

セミナー

◇トーハン総研「カルチャーフォーラム」
7月25日午後2時から神楽坂の出版クラブ会館で、新潮社・新潮新書編集長の三重博一氏を講師に開催。
「新書ルネッサンス新書という『器』の可能性」をテーマに、次々とベストセラーを生み出す新潮新書の秘訣や、編集長の目から見た新書ブームの背景などについて語ってもらう。
受講料5千円。問合せはトーハン総研セミナー事務局まで(℡03―3268―0731、http://www.tohan-ri.co.jp/)。
◇トーハン書店大学「店長入門セミナー」
7月27日午前9時半からトーハン本社大ホールで開催。「数値管理」「マーチャンダイジング」「リーダーシップ」「社員、パート、アルバイトの指導育成」の面から、店長に必要な「問題解決型マネジメント能力」を具体的に学ぶ。講師はカスタマーズアイ代表取締役の池田誠氏。
受講料(昼食代、テキスト代、資料代、消費税含む)は書店共助会加入店1万円、非加入店2万円。問合せはトーハン・コンサルティング教育事業部まで(℡03―3267―8686、http://www.tohan-c.co.jp/)。

トーハン、全国4会場でこどもの本BF開催

トーハン「2006こどもの本ブックフェア」が、子どもの本5万冊を集めて福岡、京都、岡山、熊本の4会場で開催される。
今年は絵本「ペネロペ」(岩崎書店)をメインキャラクターとしてポスター、チラシに起用。会場では絵本、児童読物、保育・教育書、一般書を展示即売するほか、学校図書館向けの商品を展示する「子どもの本の展示会」も併せて開催する。また各会場で絵本作家の講演会やお絵描き教室、大型紙芝居の実演などのイベントを行なう。
福岡のフェアは6月7日~10日、福岡市のエルガーラホールで行なわれた。この他の日程は次の通り。
▽京都=7月23日~25日・京都市勧業館▽岡山=7月28日~30日・コンベックス岡山▽熊本=7月29日~31日・グランメッセ熊本

大人の塗り絵シリーズが百万部突破/河出書房新社

河出書房新社が発売する「大人の塗り絵」シリーズ(刊行全8タイトル)の発行部数が6月9日に百万部を達成した。
同シリーズは昨年4月に第一弾『大人の塗り絵美しい花編』を発売しており、1年2ヵ月での達成となる。「子どもが塗るもの」という固定観念を覆し、タイトルに「大人の塗り絵」と冠して新しい出版ジャンルを広げたことや、「脳の活性化」「リラクゼーション効果」をテーマに取り込んだことなどから、読者の絶大な支持を獲得することに成功した。
河出書房新社では、7月8日午後2時から、東京国際ブックフェアの「出展者による公開セミナー」として〝大人気!「大人の塗り絵」体験セミナー〟を開催する。

栗田優良児童図書展示会が開幕

栗田出版販売は第31回「栗田優良児童図書展示即売会」を6月5日に開幕。8月31日まで、本社と北海道、大阪、九州各支店で開催する。
展示会の開会にあたり、5日午前9時から本社新物流センター4階展示会場でオープニングセレモニーを挙行。来賓として児童出協・竹下晴信会長、同・池水秀徳取次委員会副委員長、高島平南天堂・内田亨社長を招き、栗田・郷田社長のあいさつと竹下会長の祝辞の後、テープカットを行なってロングランの幕を開けた。
展示品目は、児童出協会員社の児童図書及び学校図書館、幼稚園、公・私立図書館向け児童図書、絵本、教育書。特別展示「書棚作りエキスパートチームがお薦めする児童書ベスト」コーナーのほか、「夏休みの店頭活性化につながる商品」「心をつなぐ読み聞かせ絵本」コーナー等を展示する。

大阪屋、売上高1205億円/桑田、荻田両氏が取締役に就任

大阪屋は6月27日に大阪市西区の本社で定時株主総会を開催。決算諸案、取締役選任などを承認した。第59期決算(平成17年4月1日~18年3月31日)は売上高が前年比10・26%増の1205億6100万円となった。
売上げの内訳は書籍716億4400万円(17・51%増)、雑誌476億5200万円(1・27%増)、教科書その他12億6400万円(4・82%減)。総合返品率は33・88%。
経費面では書籍分野の売上げ伸長に伴う物流コスト増加に加え、先行投資も多く、販売管理費は前期を0・22%上回った。営業利益は17・57%減の6億8500万円、経常利益は25・82%減の3億3900万円、税引後当期純利益は2・81%減の1億円。
取締役選任では鈴木一郎会長、出嶋侑章監査役が退任。桑田俊郎関西ブックシティ所長、荻田日登志情報システム部長の2氏が取締役に、桑原豊氏が監査役に選任された。
5年後の創立60周年に1500億円企業を目指し、来期の販売目標は10・37%増の1330億円に置いている。
大阪屋損益計算書
(単位百万円)
売上高120、561
売上原価110、012
販売費及管理費9、862
営業利益685
営業外収益480
受入利息及配当金49
その他営業外収益430
営業外費用827
支払利息2
売上割引824
経常利益339
特別損失172
税引前当期純利益166
法人税住民税及事業税35
法人税等調整額30
当期純利益100
前期繰越利益37
当期未処分利益137