全国書店新聞
             

平成19年8月1日号

第2弾は7社14点出品/新販売システム、買切りで正味40%確保

日書連は7月19日午前11時から書店会館で定例理事会を開き、流通改善では買切り・書店マージン40%の「新販売システム」について、今年は出版社7社から14点の出品があったことを報告した。8月中に注文を集約し、10月27日の文字・活字文化の日に発売する。
〔流通改善〕
新販売システム第2弾の実施について藤原委員長から説明があり、6月30日の応募受け付けまでに角川、講談社、主婦の友社、実業之日本社、文藝春秋、ベストセラーズ、ポプラ社の7社から14点の申し出があったことが報告された。
取引条件は①完全買切り、②注文満数出荷、③取次出し通常正味、④特別報奨18%という仕組みは昨年と同様だが、支払いは3カ月延勘となる。書店からの申し込み締め切りは8月31日で、申込み数が予め設定された基本部数を満たせば、10月27日の「文字・活字文化の日」に発売する。
〔読書推進〕
熊本組合が中学生の読書推進にとまとめた『本はよかばい』を編集した上野功一朗氏が紹介され、まだ冊子の残数があるので希望書店に頒布するとした。また、各県版の推薦図書リストができないか、検討していくことになった。
岡山組合では小学館の協賛により岡山県読書推進運動協議会が主催して「本の世界たんけんカード」が作られると報告された。このカードはA6判、児童が読んだ本10冊を書き込み、組合加盟店に持っていくと枚数に応じてドラえもんグッズがプレゼントされるほか、カード10枚で山陽新聞紙上に氏名が掲載される仕組み。岡山県は小学館創業者相賀武夫の出身地ということもあり、同社から支援の申し出があった。
このほか、読書週間に全国書店店頭で読者から投票を募る「日本読者大賞」(仮称)を設けてはという提案があり、久住理事を中心に検討していくことを決めた。
〔書店経営健全化〕
取次の返品入帳について、中山委員長は「今年の年度末3月には月末5営業日前まで入帳するよう改められたはずだが、5月には15日に逆戻りしてしまったという声もある」とし、引き続き返品入帳の実態調査を行い、フォローしていくとした。また、新たな課題として返品減少に成果のあった書店にインセンティブを出す考えを紹介した。
〔増売〕
舩坂委員長から春の書店くじWチャンス賞には3181通の応募があったことが報告され、図書カード1万円の当選者百名を抽選で決めた。
今秋の読書週間書店くじは特賞を「台湾4日間の旅ペアで招待」とする実施要綱を承認。くじ参加店から3店を無料随行とするほか、店頭活性化の一環として加盟店全店にくじ50枚・ポスターの進呈は従来同様に実施する。
〔取引改善〕
角川、講談社、光文社、新潮社、文藝春秋の5社の文庫を対象に、8月から10月の3カ月間、自店のランクと配本冊数の調査を行うことを柴﨑委員長が報告した。調査地区は北海道、宮城、東京、神奈川、京都、兵庫の6地区。
取引約定書改定に際して取次から保証人3人を求められているという訴えに対して、柴﨑委員長は「応じる必要はない」としたが、「日書連に取引110番を設置してはどうか」という意見があがった。
〔指導教育〕
各県組合事務局担当者を対象に8月21日、22日に行う研修会の概要を鈴木委員長が説明した。研修会では改正組合法、組合経理、日書連活動の現状と展望を学ぶほか、大型書店の見学、各県組合間の交流と情報交換も図ることにしている。
〔定款変更〕
組合法の改正に伴い定款の見直しを行うことになっている。鈴木委員長は来年5月の総会に間に合うよう、全国中央会のモデル定款を参考に8月、9月と事務局でたたき台をまとめる予定だと説明した。
現状で理事定数は55名だが、理事の定数削減、理事会の隔月開催なども検討課題だという。
〔情報化〕
中小出版社35社の在庫情報を提供している出版社共同ネットからの働きかけにより、未参加の出版社70社に同ネットへの参加と在庫情報の提供を呼びかけることを承認した。
書店データベースの点検は愛知が6月、東京が7月に終了し、38組合で組合のチェックが終了。残るのは埼玉、大阪など9組合となった。
〔共済会〕
日書連共済会の7月19日現在の残余財産は5億3325万円になっていることを報告した木野村委員長は「7月31日で最終決算書を確定し、日書連9月理事会に報告する。以後の使い道は日書連財産運営委員会で検討することになる」と説明した。
〔消費税〕
参議院選挙後に消費税率の引き上げが議論されることが取りざたされており、面屋委員長は出版業界として税率据え置きの運動を進めると説明した。
〔広報〕
面屋委員長は昨年行った書店経営実態調査のフォローとして、元気な中小書店の事例を書店新聞で紹介していきたいと今後の取組みについて述べた。今年度の全国広報委員会議は10月11日午後1時より書店会館で開催する。
〔共同購買・福利厚生〕
日書連の特製手帳『ポケッター2008年版』は、昨年は10月に品切れとなり一部書店に迷惑をかけたが2008年版は11万部製作し、8月末締め切りで受注するスケジュールを承認した。店名なしの場合、1セット百部で頒価7665円。店名入りは500部以上、1セット9345円。店名刷り込みシールは500枚以上、百枚単価1102円50銭。

中越沖地震の書店被災状況詳しく調査

7月16日に起きた新潟県中越沖地震では柏崎の書店に大きな被害が出たが、19日の日書連理事会では新潟組合西村理事長が被災地からの第一報を伝えた。
これを受けた日書連理事会では、阪神淡路大地震、新潟中越地震の際の見舞いや、政府の激震指定なども参考に見舞金支給を考えたいとし、新潟組合にさらに詳細な被災状況の調査を求めた。

書店の経営改善に実績/丸岡前会長の感謝会開く

今年5月の総会で日書連会長を退任した丸岡義博氏に感謝する会が7月18日夕、駿河台の山の上ホテルで開かれた。
感謝する会では日書連大橋会長が「丸岡さんは1期2年の会長職だったが、書店実態調査アンケートを行い、取次に返品入帳の改善を迫るなどの大きな実績を残した。私も会長を引き継いでみると会合の多さに驚き、社内から非難されている。丸岡さんも奥様から相当言われたのではないか。今度はご夫婦の仲を改善していただき、末長くご商売を続けて」とあいさつ。丸岡前会長に記念品と花束を贈呈した。
これに対して丸岡氏は「組合役員は東京組合から通算して21年。終わってほっとしているところだ。日書連は採決で決めることは少ないが、在任中に共済会解散と景品規約の改正で2度採決を行ったのが印象に残っている。書店経営は厳しくなっているが、街の本屋が存在することが基本。大橋新会長を盛り立て書店の経営を安定させられるよう頑張っていただきたい」と御礼の言葉を述べた。このあと、井門副会長の音頭により乾杯し、懇親会に移った。

第8回ネット謝恩価格フェア売上げ929万円

4月20日から6月20日まで書協が実施した第8回謝恩価格本ネット販売フェアの結果がまとまった。参加出版社は91社・1471点で出品点数は過去最多。売上げは8864冊・929万3718円で、前年比0・2%減。

9日に近畿ブロックで図書館研修会/大阪理事会

大阪府書店商業組合は7月14日、書店会館で定例理事会を開催した。会議に先立ち、電子マネーEdyを扱うビットワレット前田晃宏氏が「顧客獲得の機会増となるので、組合から各店に推奨して欲しい」と説明があった。
【総務・財務】
①書店会館2階テナントが6月末退店に続き1階テナントも9月で退店する。組合のキャッシュフローが不足する可能性が出てきた。資金運用には充分注意を払いたい。②大阪組合『グループ共済』加入者が百名を切ったため、未加入理事に協力を呼び掛けた。
【学校図書館・IT関連】
①8月9日、近畿ブロック会主催で各府県事務局会議と公共図書館の指定管理者問題研修会を開く。大阪組合は、当委員会と学校図書館電算化プロジェクトチームが参加。②7月23日に府下で初めて「電算化モニター校」の設営をする。当該学校訪問に関心のある組合員も参加できる。当該校とは運用について覚書を交わす。
【経営活性化・書店経営環境改善】
7日の委員会で雑誌増売、電子マネーEdy導入、営業車両リース斡旋等を話し合った。「新文化」に紹介された福岡の「ブックスキューブリック」を訪問し、話を聞きたい。、有力出版社と新刊配本の話し合いを調整している。
【出店問題・組織強化】
10日、TSUTAYA牧野高校前店の出店説明会を開催。総坪数445坪のうち書籍・雑誌は151坪、CD・ビデオセル45坪を設置、他はレンタル部門。
【読書推進】
6月28日に「帯コン」課題図書の増売で取次と意見交換。取次店売に課題図書の在庫を確保してもらう。書店拡売のため課題図書飾りつけコンクールを実施。優秀作には1万円、5千円の図書カードを贈呈する。有償版「読書手帳」は非組合員書店からも頒布希望があり、需要が見込める。
【雑誌発売日】
「キヨスク」「デイリーイン」の発売日違反問題で、JR西日本デイリーサービスネットワーク㈱が小売店か中取次か確認している。
【出版販売倫理】
3日の青少年環境問題協議会総会で女性向けコミック誌の過激な表現が話題になった。大阪府公報で公示される有害図書指定誌はFAX通信で速やかに各店に知らせる。区分陳列には充分注意して欲しい。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・郡司浩子

◇2歳から/『なーらんだ』/三浦太郎=作/こぐま社840円/2006・10
「なーらんだ」とありが並び、「なーらんだ」ととりが並び…。ページをめくるうちに、「なーらんだ」とつい親子で一緒に口ずさんでしまいそうです。読み終えた後も身近なものをついつい「なーらんだ」と並べるうれしい笑顔が見えてきそう。著者の経験から生まれた本に納得です。
◇4歳から/『ヘビくんどうなったとおもう?』/みやにしたつや=作・絵/評論社819円/2007・4
あきらめずに果敢に木登りしようとするヘビくん。なんと木のてっぺんで“お昼寝”がしたいのだそうです。奇想天外なストーリーだけれども、ヘビくんがたどりつくまでに出会う困難は、ともすればひたむきさを忘れがちな私たちに、努力の大切さや、達成感を味わわせてくれます。
◇小学校低学年向き/『校庭のざっ草』/有沢重雄=作/松岡真澄=絵/福音館書店1575円/2007・7
いつもは見過ごしてしまう、校庭のすみや、空き地に生えている雑草にピントをあてた絵本です。写真ではなく、丹念にスケッチして描いているからこそ、より身近に感じられる春夏秋冬の雑草たち。日常の忙しさを忘れ、親子で校庭へ野原へ、つい観察に行ってみたくなる一冊です。

出店激戦区の金沢市を視察/福井県組合

福井県書店商業組合は6月24日、福井支部と青年部を中心に出店激戦区の金沢市書店見学会を実施した。
午前9時にJR福井駅東口をマイクロバスで出発。10店11名の参加者に安部悟理事長は「予想以上の参加は書店業界の先行きへの危機感の表れ」と前置きしつつ、今後の活動について積極的な参加と協力を要請した。また、出口支部長は今回のサブテーマとして①野々市では誰が生き残るか②「王様の本」はなぜ倒産したのかをあげ、今回の視察である程度の答えを見出したいと述べた。
野々市では現地ガイド及びコーディネーターをお願いした太洋社池田喜久夫北陸支店長が合流。「うつのみや」、「カボス」、「明文堂」「ブックス宮丸南店」を視察後、県庁近くに移動。昼食をとりながらトーハン小川健二郎北陸支店長から開店前の「明文堂金沢県庁前本店」について概略説明を受けた。
その後、外観を眺めつつ「TSUTAYA金沢本店(文苑堂)」から「文苑堂示野店」JR金沢駅周辺ではフォーラス内「KuLaSu」、「リブロ」に立ち寄り、「kaBos大桑店」(元いまじん)で視察を終了した。
帰路に予定していたキリンビール工場見学は熱心な書店視察のおかげで時間切れ。総括として「『王様の本』倒産原因は人件費と、視察した大型店の過度の出店戦争の煽りにあるのではないか」「顧客に対しての積極的な仕掛け等も大いに参考になった」などの意見が出た。
6日後の6月30日、福井新聞には「金沢ビーンズ明文堂書店金沢県庁前本店」オープンの全面広告が載った。(清水祥三広報委員)

新・アジア書店紀行/ノセ事務所代表取締役・能勢仁

〔第17回シドニー2〕
シドニーには全オーストラリアの人口の25%が集まっている。首都はキャンベラであるが、経済、文化では全豪をリードする都会である。林立するビル群は丸の内の様相で活気があり、その上世界中から集まる観光人口は年間50万人はくだらない。
〈紀伊國屋書店〉
市の中心にあるギャラリーズ・ビクトリアの三階にある。路面ではないハンディキャップと、他の三つの競合店は全豪に12~21店舗以上のチェーン店を擁している、その差は否めない。
広告面で同書店が標榜していることは、広範囲の書籍を扱っていること、中でもアート&デザインとコミック&マンガは他店の追随を許さない。それからもう一つは、多言語の本のあることも差別になっている。英語、日本語、中国語、ドイツ語、フランス語の書籍も蒐集されている。東南アジア各地に出店しているノウハウが十分に生かされている。川上店長さんにはお会い出来なかったが、竹沢さんに案内してもらうことができた。店頭平台のピラミッド積みが八山あり、壮観であった。4間幅の雑誌売り場前はフローリングの大空間が16坪ある。このレストスペースが良い。
イギリスではコミックは市民権はないが、オーストラリアでは少しずつ根づいている。大人の見るグラフィックノベルズと子どものみるマンガに分かれている。紀伊國屋書店ではコミックゾーンを広くとり、競合店との差別化に役立っている。中文書籍コーナーも充実している。最力点のアート&デザインは店の中央部分にある。棚、平台に面展開しているので迫力十分である。隣接のトラベル・ピクトリアル、写真集30段と相俟っている。こどもコーナーが店奥に60坪である。社会科学書はお手の物といった感じである。
ボーダーズは壁面陳列文化、壁で見せる迫力に強さがあり、ダイモックス書店は見通しのよさ、明るさ、綺麗さで勝負する平面陳列文化である。紀伊國屋書店はワンフロアーの強み(他店は三層)をもっている。
〈ボーダーズ〉
ボーダーズはシドニーで一番人の集まるピットストリートモールにある。この地区は車の乗り入れを禁止した唯一の地帯なので、人が渦巻いている。しかも路面という強みがある。しかし間口が4間と狭いのが悩みであろう。更に店の入り口右側に地下に降りるエレベーターと階段がある。これは安売専門書店のオーガス&ロバートソンの入り口である。バーゲンを売り物にするボーダーズとしては許せないことであろう。
ボーダーズは三層である。一階はインフォメーション、新刊、フィクション、トラベル、ロマンス、クライム。地階はノンフィクション、音楽、ビデオ・DVDである。二階は雑誌、コミック、こどもの本、喫茶。中でも雑誌売場は壮観であった。立ち読みが凄い。7対3で男性が多い。雑誌台は男性向き11台、女性台8台、カルチャー、アート3台の計22台である。ペーパーバックスに強いイメージのボーダーズであるが、今や雑誌屋さんになった感じがした。競合の中で生きる道がこれしかなかったのかもしれない。店内では各所でバーゲン台があるが、隣のA&Rにはとても勝ち味はない。色褪せたバーゲンコーナーとしか言いようが無い。
地階はクッキング、コンピューター、ビジネス、スポーツと音楽、映画である。DVDコーナーはがらがらであった。近所にヴァージンメガストアがあるので、勝負はついている。
ボーダーズは全豪に12のチェーン店を持っている。すでに今年10月に2店の出店が予定されている。
〈オーガス&ロバートソン〉
全豪に21店舗をもつ本の安売り王である。その大規模なことに度肝を抜かれる。ニューヨークにストランドという大きな古書店があるが、その比ではない。店の奥はかすむ程、遠く、広い。160mあるからだ。壁面も中台書棚も平台什器、通路、柱周辺にバーゲンブックが山積みされている。整理、整頓されているので、新鮮味がある。バーゲンプライスはすべて本に貼られている。異様な光景は雑誌売り場である。8間の雑誌売り場にぎっしり陳列されている。ボーダーズと対象的である。
従業員も多い。20mおきにインフォメーションがあり、お客様の応対に忙しい。筆者も何かお探しですかと声を掛けられた。店は奥へ奥へ拡がっている。入り口部分は小説類、中程は地図、辞典、奥は美術書、実用書。雑誌は中央部壁面である。インフォメーションは売り場中央のメイン通路にある。目立つ場所にあるから接客もしやすい。中置き什器はすべて通路に対して放射状に並べられている。巡回している男性社員には見やすいレイアウトということが出来る。
しかし売場がこれだけ広くてもマーチャンダイジングには問題がある。テーマ別に陳列することが出来にくいジャンルがあるからだ。特に専門書に関してはお手上げの状態である。結局、実用書、辞書、児童書、文藝書の一点大量販売を狙う商法であって、アイテムを追う新刊書店とは、品揃えのスタートが違うことが明らかである。著者、版元、内容を強く問わない読者にとっては、一冊の価格で何冊も買える。全豪に21店舗あるシナジー効果はこれからも増すだろう。〈アリエール書店〉
フォーシーズンホテルの並びにある書店である。上記3店とは異なり、個人書店である。間口4間、奥行8間の中規模店である。店の中央からステージ状に一段高くなっている。レジは中央に置かれ、美人女性一人が応対していた。壁面は書棚ではなく四角に仕切られた棚で、そこに本が面展示されている。美術書、デザイン書、ピクチャーブックが殆どである。
お客様はレジの背面にまわることも出来る。勿論、背面処理もされている。詩集、絵本も一角にあり、女性客、得意客の多い店だと思う。

6月期は平均97・2%/新書、半年振りにプラス/日販調べ

日販経営相談センター調べの6月期書店分類別売上調査がまとまった。6月期は平均97・2%で前年同月を2・8%下回った。売場規模別では201坪以上店のみ101・3%で前年をクリア。151~200坪店は99・5%とほぼ横ばい。101~150坪店、51~100坪店は96・7%、50坪以下店は94・7%と規模が小さいほどマイナス幅が大きい。
ジャンル別では新書106・8%、コミック102・2%、学参書100・7%と3ジャンルが前年を上回った。新書が前年を上回ったのは昨年12月以来、半年ぶり。『女性の品格』『食い逃げされてもバイトは雇うな』の好調さがプラスになった。コミックは『おおきく振りかぶって』『LIARGAME』が好調で2カ月連続前年を上回った。
6月の客単価は前年比100・4%の1138・5円。

書店に未来はあるのか/本の学校・出版産業シンポジウム2007in東京より

「本の学校・出版産業シンポジウム2007in東京」が東京国際ブックフェア会期中の7月7日、東京ビッグサイトで開催され、第1部で「書店に未来はあるのか!―大型書店から街の本屋まで、激変期の書店経営者が徹底討論」と題したパネルディスカッションが行なわれた。田辺企画・田辺聰氏をコーディネーターに、大垣書店社長・大垣守弘氏、フタバ図書社長・世良與志雄氏、日書連前副会長の豊川堂社長・高須博久氏、TSUTAYA商品本部BOOK企画グループリーダーの高野幸生氏がパネリストとして出席し、それぞれの立場から書店大型化、IT時代、書店の活路を開く戦略、新しいビジネスモデルについて発言した。
〔街の本屋と大型書店の共存〕
田辺出版産業は室町時代から続く非常に古い業種だが、産業構造がそれほど変化していない。個々には編集のやり方が変わり、取次においても目覚しい変革が行なわれているが、産業全体の改革としてはまだまだ生ぬるい。時代の要請に応えることができていない。植林に始まり、製紙、印刷……という長い生産工程の最後の部分が書店だが、一般消費者、最終消費者とつながっているその部分が信じられないことにまったく変革していない。我々は今まさに激変期の真っ只中におり、岐路に立たされている。ここ数年が書店業界の歴史的な転換点になるのではないか。そのことをはっきりと自覚し、分析し、新たな改革を進めていかねばならない。
書店の未来を握る要因として「書店の大型化」と、その対極にある「街の本屋」がある。この2つのコンセプトの相克の問題を取り上げたい。片方が力任せにたたきつぶすのか、それとも両者が共生できる賢明な道をとることができるのか。日書連副会長を8年間つとめた高須さんに、日書連の「全国小売書店経営実態調査報告書」および「書店経営者生の声」についてお話しいただきたい。
高須40坪以下のお店、街の本屋が日書連傘下組合員の7割を占めている。ピーク時には1万3千店だった組合員は、20年間で6千店にまで減少した。実態調査の結果、85%の書店が「経営が苦しくなった」と答えている。ただ、この85%の書店からは「苦しいけど頑張るぞ」という声がたくさん出ている。解決すべき問題としてはマージンアップ、客注品の迅速確実化、再販擁護、適正配本、支払いサイトの延長が上位になっている。
田辺去年は約460店の書店が消えた。しばらく前までは年間千店の書店が消えていった。文藝春秋の白石前社長が「村でたった1軒の本屋さんが潰れる。その本屋さんは10部以上の月刊『文藝春秋』の定期講読を持っている。ほとんどが村長さん、小学校の校長さん、お医者さん、弁護士さん。そういう本屋さんが千軒潰れたら、『文藝春秋』の定期講読1万部が消えていく。このように毎年1万部、2万部と消えていったら大変なことだ」と言っていた。
本屋がなくなるということは、出版社側から見ても深刻。数字だけの問題ではない。村や町でたった1軒の本屋が消えたら、外に出られない要介護の人たちはどうするのか。出られる人も、バスや電車を乗り継いで県庁所在地まで行き、大きな本屋さんで買わなければならなくなる。そうして日本の文化はだんだんと沈下していく。だから、月刊誌1冊でも届けてくれる書店を守る責任が我々にはある。
ただ、書店がなくなることの大きなエクスキューズとして「1000坪の大書店が出てくるから周りがみんなつぶれる」という怨嗟の声があるが、それだけが問題なのだろうか。「1000坪の書店、結構じゃないの、出ていらっしゃい。我々もやっていこう」――そういう意識で道を開くことはできないか。1000坪超の店舗を持つフタバ図書の世良さんに、なぜ書店が大規模化しているかについて話していただきたい。
世良企業というものは外部環境の変化、消費者の変化に対応していかざるを得ない。消費者は便利なもの、価値あるもの、魅力あるものを、ますます求めるようになっている。また、企業は競争に勝たねばならない。そのためには店舗の魅力をアップしなければならない。そこを追求すると必然的に欲しい本がすぐ手に入るようにする、品揃えを充実させるため、売場拡大が必然的に必要となる。
また、書店には非常に多くの優れた特性があり、今でもデパートやスーパーに負けないぐらいたくさんのお客様が来てくださる。お客様にとって書店は、ホッとする場所、本来の自分に戻れる癒しの場所なのだと思う。そういう特性をさらに伸ばすためにも売場が必要となる必然性がある。
かつて活字は生活者の余暇時間においてかなりの部分を占めていた。しかし、デジタル化が進展し、CD、DVD、パソコン、携帯電話、ゲームと、新しいメディアが次々と出てきた。現在、活字はこれらと競合し、余暇時間を奪い合っている状況にある。外部環境は今後さらに激変すると思う。店作りや接客の魅力度を高めるという観点からも大型化が必要になっている。
生活者は専門性を求めているが、従来型の専門店の経営は厳しくなっている。そこで1983年、単独専門店として自分らしさを出すため、私どもはレンタルを始めた。TSUTAYAがレンタルを始めたのと同じ年に、TSUTAYAを知ることなくスタートした。以来、長い歴史の中で様々な失敗を経験しながら、ビデオ、DVD、CDのレンタル、DVD、CDのセル、ゲームソフトのセル、そして本業である本の販売という4つの部門で、今は広島県でダントツのトップシェアを持つようになることができた。ナショナルチェーンの強力な店が出てきたら、対抗できるような本物志向の店を作らざるを得ない。私どもはそういう道を選び、その結果として巨大店舗が増えている。
人材育成の観点からいうと、社員には経験を積ませてあげねばならないし、ポストも与えてあげなければならない。いい店を作ればお客様からの要求の度合いも高まるから、お客様が社員を育ててくださるという側面がある。人材育成の観点からもいい店を作らねばならない、私はそのように考えている。
アメリカを見てみると、90年代にバーンズ・アンド・ノーブル、ボーダーズを中心にスーパーブックストアができ、あっという間に全米のインディペンデントをつぶして、怒涛のごとくチェーン展開してシェアを奪っていった。そんななかでインディペンデントとして対抗できている書店を見てみると、2つのタイプがある。1つは非常に専門的で特定ジャンルに強い。地域に根差して自分の不動産を持ちいい場所で家業として続けているところ。もう1つはナショナルチェーンに負けないような大型店を核に地域で複数店舗を展開して地域ナンバーワンシェアを維持しているところ。そのどちらかのタイプの書店しか生き残っていない。
田辺これからまだまだ1000坪書店が出てくると思う。数年前、北京に1000坪を超える書店ができたときは驚愕した。昨年、高松の宮脇書店さんが、本店が商店街の真ん中にあるのに、別に宮脇総本店と称して2000坪の書店を作った。屋上に観覧車、テーマパークを作るなど、宮脇らしい話題性に富んだ大型書店だ。実際に行った人たちはみんな「2000坪はすごい」と言っていた。最上階には地方出版物があり、非常に充実している。東京から大型書店が進出してくることに対して王手をかけたのだ。
高松には宮脇書店の店舗があちらこちらにあり、城下町のようにがっちりと固められている。宮脇富子社長は「これだけ固めているのに、まだ出てきて商売ができるのかしら」と言っていた。中央の書店が進出してきたが、案の定、宮脇書店のところはビクともしなかった。後日「私どもには何の影響もございません」と涼しい顔をして言っていたが、そういうやり方もある。
今年3月15日、コーチャンフォーが北海道で2900坪の店を出した。今のところ日本最大の書店だ。複合店で、実際の書店の面積は600坪から700坪ほどだろう。行った人の多くは驚いて「すごい」「とてつもない」と言う。ところが一般の読書家の報告を聞くと「とにかく疲れる。いやだ」と言う。「私はいつもの書店に行く。なじみの店長さんの顔を見るとほっとする。どうしても欲しい本がいつもの書店になければ行くが、あそこを回ると広いからヘトヘトになる」と、ふくらはぎをもみながら言う。
大型店にも一長一短があるが、そんななかでユニークな展開をしているTSUTAYAの高野さんにうかがいたい。TSUTAYAは福岡天神に大きな店を作ったが。
高野戦後すぐのモノがない時代、消費者はモノがたくさんあるお店を選んでいた。ところが高度成長期にはモノがどんどん出てきたので、消費者がモノを選べる形で店舗展開がなされていった。現代はモノがあふれているから、消費者が店を選ぶ時代になっている。
では、選ばれるのはどういう店か。私どもも大型店を目指してはいるが、それ以上にメッセージ性の強い店を作りたい。いわゆる1000坪クラスの大型店ではなく、お客様にムードや雰囲気を味わっていただけるような店が理想。1000坪クラスの店とは一線を画す形の店舗展開を行なっている。福岡天神も店舗全体が本という形ではなく、ゆったりと楽しんでいただけるようカフェを併設している。こうした展開は今後も続けたい。
田辺大型書店が出ると中小書店にどういう影響があるか。業界全体が利益追求型に陥りやすい。千坪以上の大きな力を持つ書店が大量販売するのを見て、大量販売が頭にこびりつく。そうすると効率のいい販売を追求する形になる。業界全体がそういう形に傾斜していくので、大量販売をするところに対して最も効率のいい、最適化された流通になっていく。売り方もそうなる。川上の出版社も大量販売ができるような出版に傾斜していくことになる。そうした形が固定化してしまうと、中小出版社の良質な出版物が回らなくなる。取次機能も流通も大型店経営者のスタイルになってしまう。産業構造がそういう形で固まってしまう。こうなってしまうと、そこから脱した新しい流通過程が生まれにくくなる。中小書店にもベストセラーが潤沢に行き渡るような流通にできないものか、今のうちに対策を考えたい。
〔消費者ニーズによるIT化〕
田辺オンライン書店の台頭で書店がどのような影響を受けるかについてお話しいただきたい。
高野オンライン書店はアマゾン、楽天ブックスなどがあるが、私どもはTSUTAYAonlineというサイトでネット通販をやっている。お客様の書店利用方法は多様で、ネットを選ぶお客様もいるし、リアル書店でお買い上げになるお客様もいる。お客様の利便性を考えると、TSUTAYAとしては両方とも展開していくべきではないかと考えている。ネット書店の台頭で売り上げを取られるというイメージもあると思うが、企業としてお客様が選ぶところに従っていくというのが私どもの戦略だ。
田辺書店激戦区の京都で成功を収めている大垣書店だが、オンライン書店の影響についてどう考えているか。
大垣私どもは大型店舗を持っていないので、商品の品揃えという意味でお客様のニーズになかなかお応えすることができない。客注を受けても商品をお渡しするまでに時間がかかる。アマゾンを利用したお客様が「書店に行くよりも便利だ」と言って、そのままアマゾンを利用するようになったという話も聞いている。オンライン書店には非常に脅威を感じている。
こういう状況を指をくわえて見ているわけにはいかないが、私ども独自でオンライン書店はなかなかできない。主帳合であるトーハンのe―honを利用して、一部改良していただいた形で法人向け、学校向けのネット取り扱いをスタートし、お客様の囲い込みを行っているところだ。任天堂や京セラなど京都には全国的に著名な企業が多くある。アマゾンの個人需要に対して、私どもは法人需要を取り込んでいきたいと考えている。
〔書店の活路開く新しい戦略〕
田辺書店の将来をどうしたらいいのか、活路を開くにはどうしたらいいのかということについて検討したい。まずは外商の問題。ただ利益を追求するのではなく、ほかにモチベーションがあれば、もっといろいろな工夫ができると思う。その成功例が高須さんの豊川堂だと思う。
高須豊川堂では「豊川堂は貴社、自宅まで本を配達します。雑誌を宅配サービスします」というチラシを作って、宅配サービスを行なっている。お客様は学校を含めて1万2千人。社員2人とヘルパー20人で部署を作ってやっている。「お客様が来れないならば私どものほうから出かけて行きます。雑誌をぜひ読んでいただきたいし、売り上げを伸ばしたい」という気持ちからやっている。だが、様々な経費を考えると、赤字になるのではないかという心配もある。
雑誌の配達をやめてしまった店は多いと思う。体力的にできなくなったからやめた、経営的に成り立たないからやめた、女性の社会進出が著しくなって配達先の家庭に人がいない――さまざまな要因から雑誌の配達業務は難しくなっていると思う。
そこで、雑誌の売り方について少し視点を変えることはできないだろうか。大量に売る店と確実に売る店の仕入れ正味を同等にしていただけないだろうか。大量に売る店と確実に売る店が同じ正味であるならば、街の本屋もいま一度雑誌の宅配を考えるのではないかと思う。
私どもの宅配サービスのお客様1万2千人のうち6千人が一般家庭と事務所。喫茶店、美容院など大量に買ってくださるお客様もいるので、定期配本の雑誌は毎月98%は売っている。雑誌を定期配本するということは買い切ることである、確実に売ることなのだという視点を、書店はもちろん取次、出版社の皆さんにも持っていただければと思う。こうした視点を持てば、お互い泣かなければならない部分も出てくる。しかし、雑誌の売り上げを伸ばしたいというのが業界の一致した考えであるならば、正味を別コードにしていただきたい。店番用のコードは今まで通りでけっこうだが、外商コードで確実に配本するところは正味をぜひ一度考え直していただきたい。
宅配がなくなってきたことによって雑誌の売れ行きが不安定になったし、実際に減ってきた。大量に販売する店と確実に売る店の雑誌について、同じ価値を見いだしていただき、新しい取引制度を作り出していけないかということを提案したい。
「この1冊があなたの人生を豊かにします」という言葉をもって地域のお客様に本を勧めている。当店独自で不定期刊の新聞を作って「こんないい本が出ましたよ」と声をかけながら新聞を手渡し、顔を合わせたお客様に私どもの気持ちを直接伝えるための1つの素材として活用している。社員全員がクラブ活動として作っているもので、「本屋なら月に1冊か2冊は本を読もう。読んだら感想文を書こう」と作っている。新聞は社員の教養を高めることにも役立っている。
田辺本屋にとっては耳の痛い話で、本屋は本を読んでいないということになる。数年前に本屋大賞ができて話題性から社会現象になったが、選考委員をやらせてもらって大いに喜んでいる書店スタッフがいる。「とにかく候補になった作品を読まなくてはと一生懸命読んで、それが最近生きがいになった」と、まるで芥川賞選考委員と同じことを言う。「私は単なる店員ではなく書店員になりたい」というのが、その書店スタッフの発言。私たちはこれからもしっかり本を読みましょう。
もう一つ、我々の活路を開く有望な新商品として、中古本を新刊書店で扱う問題がある。昭和40年に初めて海外に行ったとき、ロンドンの大型書店、フォイルズ書店の地下1階がまったくの古本屋で、非常に驚愕したことを覚えている。今まで絶えて久しくなかったが、日本で生まれてもあるいはよかったかもしれない。
世良新刊書店が中古本を取り扱うこと、本をリサイクルすることについて、出版社は気分的にやめてほしいと思っている。業界がシュリンクするから、出版界の未来を考えるとやらないでほしいという意識がいまだにある。だが、他産業を見ると中古車、DVD、CD、ゲームソフトなどリサイクルビジネスは当たり前のことだ。
ブックオフの坂本さんは「本ほどリサイクルに最適なビジネスはない」と言う。なぜならば、再販制で定価販売なので仕入れれば仕入れるほど80%の粗利益率が取れるから。そうしてブックオフだけが毎年20%以上の成長を続けている。年間売上高は462億円でジュンク堂を抜いた。経常利益は34億5700万円、紀伊國屋の3倍でダントツ。ブックオフは中古市場の半分を独占している。
このようにリサイクルビジネスにお客様のニーズがあるにもかかわらず、地域に根ざして読者に新刊書籍を売っている我々が「あなたの店で買った本なのだから引き取ってほしい」というお客様の声に応えられないのはおかしいのではないか。欧米にも地域に根ざした新刊書店がリサイクル本を同時に扱っている事例がある。一番成功しているのは米オレゴン州ポートランドのパウエルズだ。新刊比率が50%でありながら、全体の粗利益率は65%を維持している。
地域に密着して本好きの読者に来ていただいている本屋ほど、ブックオフに対抗して本を買い取って売ることに成功する確率が高い。ブックオフの店舗数は昨年854店舗。上場して企業価値を高めており、今後も成長を続ける見込みである。なお、我々にとって悪いことに、これまで経営者だった坂本さんがスキャンダルによって放逐された。これから、より科学的、合理的な専門家による経営が始まるということであり、我々にとっては脅威だ。残された時間はもうあまりない。アメリカのインディペンデントチェーンの成功例に学ぶべきではないかということを申し上げたい。
高野新商材開発についていうと、TSUTAYAは昨年「ケータイ小説大賞」に協賛した。ケータイ小説がなぜ売れているかというと、今まで本屋に来なかった人たちが本屋に来て買っているという現象が背景にあると思う。
これは5年ぐらい前から感じていたことなのだが、日本の情報を伝える紙のうち、書籍は縦書きだが、他のものはほとんど横書き。ほとんどの情報が横書きで伝わっているのに、書籍はずっと縦書きで、書籍は若い人たちに受け入れられなくなったのではないか。そんなところに横書きのケータイ小説が出てきて、若い人たちが書店に来るようになった。そういったことで「ケータイ小説大賞」に協賛し、無理を言って「TSUTAYA賞」も作っていただいた。TSUTAYAは若いお客様が多いので、ケータイ小説で大きなシェアをとることができている。
若い人たちが本屋に来ないという状況がある中で新しいお客様を作っていくには、今どんなことが起こっているのかを小売りの人間も敏感に感じとらねば。また、そうしなければ、新しい商品開発もできない。若いお客様に来ていただけるような書店を作っていくことが未来につながる。本屋に来ない人たちの行動や志向を敏感に感じ取っていくことが必要だ。
〔返品改善でマージンアップ〕
田辺業界全体の産業構造をどのように変えていくべきか。まず協業化が大きな選択肢の一つとなるだろう。また、正味問題についても考えねばならない。業界全体のインフラ整備に向けて、正味は避けて通ることができない問題だと思う。どうすればいいか、手がかりを高須さんにうかがいたい。
高須書店業界は「残ったら返せばいい」ではなく、確実に売ることを考えなければいけない。何でも返せるという状況では、出版社も大変だろうし、「あの書店は本当に売ってくれるのか」という気持ちにもなると思う。
「三位一体」という言葉があるが、本当はそこに著者がいて読者がいてということを意識した業界でなければいけないと思う。業界の中だと条件闘争ばかりが先行してしまいがちだが、読者がいてこその出版業界ということを忘れてはならない。読者のことを考えた取引を確立すべく、業界全体で取り組んでいかねばならないと思う。
田辺書店が生存していくために、どれぐらいのマージンが必要か。
高須本当は最低27%欲しいが、27%は難しいと某取次に言われた。とりあえず全体で25%、買切品についてはもう少し欲しい。
田辺世良さんはどうか。
世良出版業界は無駄が多く、返品率が高い。そこで提言したいのは、世界の出版界の中で日本がやっていない新刊カタログを出していただくこと、イニシャルオーダーを受けていただくことの2点。これらをやっている米国のパウエルズは返品率10%程度。音楽CDやDVDの業界も10%以下だ。書店が商品研究してから発注できるようにする。コミックスではそのような例があるが、コミックスをイニシャルオーダーで発注できる店は返品率がかなり低いと思う。これを業界全体としてやって返品率を下げ、その結果としてマージンが上がればいいと思う。
マージンについては非常に厳しい書店が多い。私自身、マージンが高いに越したことはないと思っているが、それはやはり返品率との相対で決まるものだろう。業界全体で原資がないのに無理やり捻出するのは難しい。返品率を下げればマージンアップの原資になるのではないか。
田辺そのためには責任販売制の問題が出てくる。「こともなげに返品する」と言われるが、返品をできるだけ抑制する必要がある。いま最も困っているのは雑誌の売り上げで、昨年は前年に比べて4・4%落ちている。過去最大の下げだ。書店として低迷する雑誌をどう救済するかという問題がある。この3つの問題について「何とか書店側で取り組もう」「やるから、これだけのマージンがほしい」――この2つをセットにして、業界に対して提言したい。これが我々の作り出すべき産業構造の新体制であると考えたい。
最後に一言ずつお願いします。
世良書店それぞれ特性があるので、自分の土俵で自分らしく書店経営を続けていきたい。
高須昔8ミリビデオがあったが、今は見ることができない。映写する機械がないから。いまCDで記録がとられているが、8ミリビデオのようにいつ見ることができなくなるかわからない。だから「記録媒体としては本が一番」とおっしゃる方がいた。今後も活字文化を皆さんとともに守っていきたい。
大垣本日のテーマは「書店に未来はあるのか」だが、そうではなく「我々が未来を作る」でなければ。そのためには読者を作ることが大切だと思う。地域の本屋の役割はそこにある。皆さんとともに未来を作っていきたい。
高野最後は、消費者の方々が我々とともに未来を作っていくのだと思う。消費者の動向を敏感に感じ取って変化に対応していくことを続けていれば、書店は未来永劫続くと思っている。
田辺書店の会合で私はいつも「書店は太陽である」「書店は魂の行き交う橋である」「書店は本の劇場である」と訴えている。戦後たった6坪で始めた書店が、今日、全国にネットワークを持つ大きな書店に成長した――そんな過程を私はつぶさに見てきた。大いに希望を持ってやれば、やり方1つ、考え方1つで状況を変えることができるのだ。

ふるさとネットワーク/中国ブロック編

〔鳥取〕
「境港妖怪検定」というのをご存知ですか?
鳥取県・境港市は漫画家・水木しげる先生の出身地です。妖怪の権威・水木しげる先生の妖怪考察を通して、妖怪に対する理解度をはかる話題の公式検定です。
その昔、日本各地に伝わった様々な妖怪たち。ちょっぴり怖くてどこかほのぼのとやさしい表情で、わたしたちにいろいろなことを教えてくれます。
妖怪を知ることは、日本の風土や文化を再確認するということ。この「境港妖怪検定」は今年で2回目。いよいよ中級も受験できるようになりました。ぜひ皆さん、「境港妖怪検定」にチャレンジして、妖怪に対する知識を高め、「妖怪博士」として妖怪の持つ楽しさや妖怪が教えてくれる日本の良さを伝えてください。
(津田千鶴佳)
〔島根〕
何号か前にご紹介しましたが、皆様のご声援のお陰をもちまして、石見銀山が世界遺産登録の運びとなりました。心よりお礼申し上げます。
地元では、候補に上がったものの決定の前段階においては、史実の根拠が薄いとの評価で難しいかと思っていた人も多く、その分喜びも大きくお祝いムードに包まれています。当時の世界の銀の生産量の約3分の1を産出していた石見銀山が、いよいよ正式に世界へ羽ばたきます。銀山というだけあって、県中央の山間部に位置する関係上、インフラの整備が急がれますが、喜びの中で進んでいます。
温泉津(ゆのつ)港から始まる銀の道、待っているのは間歩口、どうぞ中に入って当時を辿ってみて下さい。島根の世界遺産に、是非いらっしゃいませ。
(桑原利夫広報委員)
〔岡山〕
全国の歴史ファンの注目を集める鬼ノ城は、標高4百㍍余りの吉備高原の南縁に位置します。桃太郎の鬼退治の舞台としても有名で、巨大な石垣や土塁が延々約3㌔㍍も続く古代山城の遺跡です。
ご承知の通り桃太郎は岡山のシンボルとして全国的に定着していますが、その昔話のルーツとなる「温羅(うら)伝説」の発祥もやはり、この鬼ノ城にありました。温羅と呼ばれる悪者が、鬼ノ城を住みかとして悪事の数々を働いていました。村人は朝廷に直訴し、大和朝廷は吉備津彦命を遣わし退治することになったのです。近年の発掘調査によって、その構造などが次第に明らかになっており、西門や角楼などの復元が完成しています。築城の時期は7世紀後半頃といわれています。ロマンを秘め、今なお解明が続く鬼ノ城へ、おいでんせい。(荒木健策広報委員)
〔広島〕
広島市は8月6日の原爆忌に、若い世代が被爆体験を継承し平和への願いを発信するイベント「ヒロシマの心を世界に」を、平和記念公園にある広島国際会議場(写真)で初めて開催する。同日営まれる平和記念式典の参列者に、被爆の記憶の風化を防ぎ平和の実現を願う広島の心を伝える。
イベントは、式典の終了後から午後5時まで、コンサートや原爆詩の朗読などを催すもの。「平和のしらべ」として、広島ゆかりの音楽家による演奏や、安西中学校吹奏楽部の演奏、本川小学校が取り組む平和活動の紹介、南観音小学校による合唱を行なう。また、「青少年国際平和未来会議ヒロシマ2007」の参加者が、世界平和実現に向けた祈りを9カ国語で朗読。最後に、舟入高校演劇部による演劇「CRANES」(鶴)が行なわれる。入場は無料。
〔山口〕
〝外商王国・山口県〟といわれて久しい。かつて各社主要新企画は「西から火の手」ということで、とりわけ山口・九州地区は全国でもその牽引役を務めてきた。現在でも、山口市・文榮堂、岩国市・冨永書店、周南市・鳳鳴館などは健在で、輝かしい成績を長きにわたって継続してきている。
今秋、小学館から「全集日本の歴史全16巻」、河出書房新社から「世界文学全集全24巻」等、書店待望の大型企画が発刊される。店・外商共にたいへん厳しい中で、努力次第で売上げ増大できる、書店にとって誠に有難い新企画である。全国的に目一杯取組んで、大成功を収めれば各書店の格式ある読者の定期性確保は言うまでもなく、明日の書店活性化につながること間違いなし!願わくば、この先も書店界のため、真の読者のため、本格企画を出し続けていただきたい。
(山本信一広報委員)

県教育庁に学校図書館整備で陳情/秋田組合

秋田県書店商業組合と秋田県教材備品協会は7月20日、学校図書館整備の予算措置について合同で秋田県教育庁へ陳情した。
秋田組合・和泉徹郎理事長、高堂晃治(高堂書店)加賀谷龍二(加賀谷書店)柳原知明(ブックシティ)秋田県教材備品協会・木村和一会長(榊田分店)合田福正(教友社)の6名で訪問。根岸均教育長は不在だったが、金田早苗総務課長、政策企画監・山手正史氏と陳情対談した。
いろいろのデータや地元新聞の切抜き等を対談の資料とし、予算措置を要望するとともに、県教育庁の了解のもと各市町村へも細かく再陳情することを確約した。(木村和一広報委員)

「声」/改善されない返品入帳処理/匿名希望

全国書店新聞に、大取次が1月から営業日の25日までの返品分は入帳する意向という記事が掲載された。
集金日のたびに繰り返される押し問答では、取引約定書の規約通り支払えと無表情で凄む。受け入れた返品は速やかに処理をして、書店の負担を軽減して活力と意欲を持たせるべきだ。25日という線引きも納得がいかない。大取次の月末請求書は、翌月の1週間から10日もたってから送付されてくる。その時間から考えると、月末までの処理はできるはずだ。
この4月と5月について検証してみたが、宣言は疑わしかった。5月の集金日は、また取次担当者と激論を闘った。未入帳が多く発生していた理由を聞くと、余りにも大量の返品が発生したために処理できなかったとのこと。その時「決算の数字に返品が想像以上に悪影響を与えた衝撃から、処理に躊躇したのではないか」と本音をポロリ。これが事実だろう。
決算とは実像の証であるべきで虚飾するものではない。4月の状況を自ら報告すべきだ。取次いわく、その時社内でも問題となり、フル稼働で処理に当っているので、今後は起こらないというので信用した。そして5月見事に裏切られた。入帳処理は5月14日まで、5月15日(ミスマッチ)・17日(ミスマッチ)・19日・22日(ミスマッチ)・24日と履行されなかった。私の店の返品率は4・5・6月は11%~17%だ。売上げが低迷している現在、返品も立派な原資なのだ。
日書連にも一言。決算発表の記事では、減収減益は返品入帳の数字が大きく響いたとコメントしていた。その時思ったものだ。その重荷は、全国の書店が背負っていたのだと。発表をそのまま掲載せず、咀嚼して本質を追及してこそ新聞の存在を感じるのではないだろうか。今後日書連に望むのは取引条件の改善だ。後継者が名乗りを上げる業界であることを希望する。

中・高校生向き推薦本のパンフ作成/長崎総会

長崎県書店商業組合(中山寿賀雄理事長)は、7月25日午前11時より諫早市「水月楼」で第20期通常総会を開催、組合員71名(委任状含む)が出席した。
総会は草野専務理事の司会で始まり、中山理事長はあいさつで、本年度は5社の脱退で非常に厳しい時代だと述べた。それから日書連共済会、新学校図書館図書整備5カ年計画、取次の返品入帳の件で説明があった。
尾崎副理事長を議長に議案審議し、中山理事長が事業報告、草野専務理事が決算報告、六倉監事が監査報告して全員異議なく承認された。事業計画案を中山理事長が説明し、本年度は読書推進運動で「中・高校生向き推薦の本」パンフ作成など8点の計画が発表された。収支予算案は草野専務理事が説明し、ともに承認された。
来賓として中央会の井上氏があいさつ。懇親会ではテジマ運送の小川常務からあいさつをいただき、無事総会と懇親会を終了した。
(古瀬寛二広報委員)

『コミックボンボン』11月号で休刊

講談社は1981年以来26年間愛読されてきた『コミックボンボン』を11月号で休刊すると発表した。近年の読者数の減少が理由という。来春からは中学生を対象にした漫画誌『月刊少年ライバル』を創刊する。

セミナー

◆栗田出版販売実務セミナー
書店経営研究会は栗田出版販売との共催で8月29日午後1時20分から文京シビックセンターで「第28回出版販売実務セミナー」を開催する。
第1講「雑誌の売上げを上げるにはどうするか」(文藝春秋・名女川勝彦取締役)、第2講「万引き対策、店頭でのトラブル処理」(志村警察署防犯係東孝昭氏)。受講料5千円(栗田書店共済会会員は2千円)。申し込み℡03・5392・2121番