全国書店新聞
             

平成30年9月15日号

東海地区3県の書店商談会「日本ど真ん中書店会議」を開催/出版社143社が出展、書店316名が来場

東海3県の書店商談会「第2回日本ど真ん中書店会議」が8月22日、名古屋市千種区の名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)で開催された。愛知、岐阜、三重の各書店商業組合を中心に構成する同実行委員会が主催。実行委員長は愛知組合・春井宏之理事長(正文館書店)。
当日は出版社と関連会社143社が出展。書店員316名が会場を訪れ、商談や情報交換を活発に行った。
また、会場では「日本ど真ん中書店大賞2018」の発表および表彰式を行い、小説部門で大賞を受賞した湊かなえ氏らに賞状と記念品を贈った。
受賞者らのサイン会も行われ、湊氏は長蛇の列を作った書店員1人ひとりに丁寧にサインを書き、色紙を手渡した。ミソ!本部門大賞のカメントツ氏、ご当地部門2位の神凪唐州氏、さらに警察小説をはじめエンターテインメント作品を幅広く手掛ける今野敏氏のサイン会もあり、いずれも盛況だった。
オープニングセレモニーであいさつした春井実行委員長は、日本語の言葉が人々の心に留まらない世の中になってきていることに不安を感じるとして、「私たちは本屋なので読書推進を一生懸命やりたいと思っているが、『読書』という言葉を言われた時、『やっぱり読まなくちゃ駄目だよね』と思う前に、左から入って右に抜けてしまっているように感じる。本を読んでよかったと思ってもらえるような仕掛けを業界からもっと発信していかなければいけない」と提案。「今日は大勢の出版社、書店に集まっていただいた。この会で多くのことを達成できると思う。しかし、これは業界内部のこと。外に向けての情報発信をもっとやっていきたい。SNSなども活用して一般読者に本の情報を伝えていく形を作らなければ、読書環境や日本語を守っていくことはできない」と話した。

春の書店くじ立替金を振り込みました

今春実施した「2018春の書店くじ」で各書店にお立て替えいただきました1等1万円、2等千円、3等5百円、4等百円の清算業務は終了いたしました。入金をご確認くださいますようお願いいたします。
日書連書店くじ係

松信裕氏(有隣堂)新理事長に/時代に合わせた自己変革訴える/神奈川組合総会

神奈川県書店商業組合は8月28日、横浜市中区の平和会館で第41回通常総会を開き、役員改選で松信裕氏(有隣堂)を新理事長に選出した。松信氏は「紙の本が昨対を上回ることはもうないが、立地や客層に応じて努力する余地はまだある」と指摘。各書店が時代に合わせて自ら変わっていかなければならないと訴え、これからの書店のあり方を組合で研究していく考えを示した。
組合員90名(委任状含む)が出席した総会は、水越孝司常務理事(水越書店)の司会で進行。筒井正博常務理事(伊勢治書店)が開会の辞を述べ、体調不良のため欠席した井上俊夫理事長(井上書房)に代わって山本裕一副理事長(信濃屋書店)があいさつ。「電子の時代になっても本は活字で読むのが一番。最近、試験問題の文章の意味が理解できない小中学生が増えているという新聞記事を読んだ。活字で見て想像力を養うことが重要だ。そこに街の書店が電子の時代に生き残っていく術があるのではないか」と述べた。
続いて村上弘一副理事長(村上書店)を議長に議案審議を行い、平成29年度事業報告、決算並びに監査報告、平成30年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認した。
役員改選では、松信氏を理事に新任するなど理事21名、監事2名の新体制を決定。総会終了後に初理事会を開き、1期2年理事長を務めた井上氏に代わり、松信理事を新理事長に選出した。副理事長と常務理事は10月15日開催の定例理事会で決める。
あいさつに立った松信氏は、「長期的に見れば紙の本はもう駄目。世の中の大きな流れがデジタルシフトになっている。本が昨対を上回ることはない」と厳しい見通しを示し、「下北沢の本屋B&Bのような新しい波が個人書店にも出てきている。有隣堂全体の売上の中で本の売上は50%を切っているが、他の商品やサービスで企業として成り立たせようとしている。我々自身が時代に即して変わっていかないと、条件闘争だけやっても救われることはない」と訴えた。
そして、書店のような小資本事業者に何ができるかを考えていかなければならないとして、「有隣堂の各店舗では雑貨や文具を置いたりカフェを併設。東京・日比谷に出したヒビヤ・セントラル・マーケットでは居酒屋や床屋までやるなど、色々なことを試している」と自社の事例を紹介。「いま本だけに頼っていては生きていけないが、では何をどう変えていけばいいかはまだ誰にも見えていない。それぞれが自分の店の規模、立地、客層を考えながらやっていく必要がある」と指摘し、「組合員が組合に何を求めているのかまだ理解できていないが、組合員には『自らが変わっていかざるを得ない』と言いたい。本の売上が減ったと嘆いたり、取次や出版社を責めるだけでは解決にならない。書店には潰れてほしくない。書店が潰れると出版社も弱ってくる。売上があってはじめて出版社は本を発行できる。発行意欲をなくすまで販売組織が弱くなると、出版社は自分の首を絞めることになる。長期的には我々自身が変わっていかないと生きていけないが、短期的には立地や客層に応じてまだ努力のしがいがある。それが何かを皆さんと考えて研究していきたい」と所信を表明した。

「創意と工夫と努力で書店守る」/奈良組合通常総会で林田理事長

奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)は8月23日、橿原市の橿原観光ホテルで第34回通常総会を開催し、組合員22名(委任状含む)が出席した。
総会は、川岸泰子理事が司会進行。林田理事長が「日本の始まりの地で書店から本がなくなるような状態にしては絶対にいけない。これまでにない創意と工夫と努力で書店を守っていこう」と危機感を前面に押し出してあいさつした。
続いて、春名貞夫副理事長を議長に選任して議案審議を行い、第33期(平成29年度)事業報告、決算報告、監査報告、第34期(平成30年度)事業計画案、予算案を原案通り承認可決した。
引き続き、「取次から見た出版業界と書店」と題したパネルディスカッションを開催。庫本善夫事務局長がコーディネーターを務め、トーハンの石井克実大阪支店長と大阪屋栗田の竹中繁輝執行役員から出版業界の内情などについて話を聞いた。
出版社や出版輸送の関係者ら28人が参加した懇親会で林田理事長は、「歴史と文化の発祥の地である奈良で、本を見て育つ子どもたちを育て続けるためにも、もっと知恵を出し合おう」と、本屋を守る努力を重ねて呼びかけた。
(靍井忠義広報委員)

日書連のうごき

8月2日全国中小企業団体中央会商業専門委員会に事務局が出席。
8月3日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。
8月17日読書推進運動協議会野間読進協賞選考委員会に事務局が出席。
8月21日出版物関係輸送懇談会に事務局が出席。
8月22日上野の森親子ブックフェスタ運営委員会との意見交換に柴﨑副会長が出席。『出版再販・流通白書』編集打合せに事務局が出席。
8月27日消費者庁表示対策課訪問に公取協・元永専務理事が出席。
8月28日返品現地処理で取次各社と意見交換に柴﨑副会長、志賀理事が出席。万引防止出版対策本部に事務局が出席。
8月29日公正取引委員会取引企画課訪問に公取協・元永専務理事が出席。
8月31日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。

「春夏秋冬本屋です」/「書店同士の『絆』」/熊本・宮崎一心堂社長・宮﨑容一

数々の被害をもたらした熊本地震から早や2年5ヵ月が経過しようとしています。地域、立地、建物等規模により被害はまちまちでしたが、ほとんどの店が一時休業を余儀なくされ途方にくれていたのが昨日のことのように思われます。
業界各方面から色々な形でお見舞いや励ましのメッセージをいただき、人の温もりを感じました。そんな中、同じトーハン会グループの長野トーハン会様は熊本復興支援企画として「信州IPPIN文庫フェア」を開催。この企画は長野県と熊本県に関連する本に「熊本震災を読書で応援しよう」のコピーが入った帯を付けて増売し、1冊につき30円を義援金として熊本トーハン会へ寄付するという内容でした。対象図書は、『熊本県謎解き散歩』(岩本税、水野公寿編・著/新人物往来社)、『北軽井沢に消えた女』(西村京太郎著/徳間書店)など。長野トーハン会様の心温まる企画に書店同士の絆を強く感じました。
このことがきっかけで、毎年9月から10月に開催される長野トーハン会主催の「つなごう読書の絆諏訪湖一周マラソン」に熊本から参加し、長野県の書店の皆さんと交流を深めています。人と人のつながり、絆を今でも忘れることはありません。今年も9月29日に開催される諏訪湖マラソンで長野県の書店の皆さんと再会するのが楽しみです。

河出書房『日本200年地図』などを増売/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は9月4日、東京・千代田区の書店会館会議室で定例理事会を開催した。
理事会の主な審議・報告事項は以下の通り。
[総務・財務委員会]
10月27日~28日開催の第28回神保町ブックフェスティバルについて、出品を希望する支部は9月25日までに事務局へ連絡するよう要請した。東京組合青年部はワゴン2台で出展する。
東京都最低賃金(地域別最低賃金)が改定され、10月1日から27円引き上げて時間額が985円になると報告した。
2019年2月22日~23日にベルサール汐留で開催される読書推進イベント「築地本マルシェ」(同実行委員会主催=朝日新聞社などで構成)の後援名義使用を承認した。
[事業・読書推進委員会]
NHK出版、河出書房新社、里文出版の担当者が企画を説明した。
NHK出版は、『きょうの料理』テキスト創刊60周年特別企画として、『からだのための食材大全』(11月20日発売予定)の特徴と販売報奨金について説明し、拡販を求めた。
河出書房新社は、伊能忠敬没後200年記念出版『日本200年地図』(10月下旬発売予定)について説明。江戸後期の伊能図から明治大正期、昭和40年代、現代まで近代日本200年間の変貌を地図で俯瞰するもので、5年前に刊行された『伊能図大全』と同様に店頭で歴史好き、地図好きの読者に勧めてほしいと呼びかけがあった。
里文出版の『HAPPYふくろう』(10月10日発売予定)は、日本ヴォーグ社の営業で活躍した荻原正江氏が、ライフワークとする「世界のふくろうコレクション」から厳選したふくろうグッズのカラー写真集。万引防止出版対策本部事務局長の阿部信行氏が同書のふくろう豆知識を執筆しており、2人で自著をPRした。
この他、日本経済新聞出版社『魔法のラーメン発明物語』(安藤百福著、日経ビジネス人文庫)について、10月放送がスタートするNHK朝のドラマ「まんぷく」の関連書として増売要請があった。
[指導・調査委員会]
8月1日に文京シビックホールで開かれた第9回「万引き追放SUMMERキャンペーン」(東京万引き防止官民合同会議主催)の模様について、中学・高校生の万引防止の意識を高める多彩なプログラムが行われ、盛況だったと報告した。

長﨑晴作理事長を再選/「西郷どん」テーマに講演会開く/熊本総会

熊本県書店商業組合は8月24日、熊本市のANAクラウンプラザホテル熊本ニュースカイで第31回通常総会を開催。組合員27名(委任状含む)が出席した。
総会の冒頭、長﨑晴作理事長(熊文社)があいさつを行い、組合員の日頃の活動に感謝の言葉を述べた。その後予定された議案を審議し、全て原案通り承認可決した。
本年は役員改選の年にあたり、長﨑理事長を再選した。また大塚鷹之介副理事長(文洋堂)が任期満了で退任し、新副理事長に松本寿憲氏(ブックス書泉)を承認。長﨑健一氏(長崎書店)が新たに理事に承認された。
第2部研修会では、熊本学園大学招聘教授の徳永洋氏を講師に迎えて講演会を開催。「西郷どんゆかりの熊本」の演題で約1時間の講演を行った。
総会終了後、出版社、取次、来賓などを交えて懇親会を行い、熊日サービス開発・甲斐壮一社長の乾杯で開宴した。出席者が情報交換して和気あいあいの中、清藤宏六理事(清藤書店)の閉会の辞で終了した。
(宮﨑容一広報委員)

宮脇範次代表理事1名体制に/西尾文士代表理事が退任/香川総会

香川県書店商業組合は8
月10日、高松市のホテルパールガーデンで平成30年度通常総会を開催、組合員22名(委任状を含む)が出席した。
冒頭で宮脇範次代表理事が、西尾文士代表理事の辞任と、政本公男専務理事の逝去について説明した。
総会は髙木敏彦事務局長の司会で始まり、宮脇代表理事があいさつ。県立図書館の入札について、TRCの原価割れ入札により8年連続で対応できなかったことを中心に経緯を説明した。
続いて宮脇代表理事を議長に議案審議を行い、平成29年度事業報告、決算報告、監査報告、平成30年度事業計画案、予算案、経費の賦課額及び徴収方法、定款一部変更の件など全ての議案を原案通り承認可決し、総会を終了した。
[香川組合役員体制]
▽代表理事=宮脇範次(宮脇書店)▽副理事長=松本周平(ブックス三条)
(髙木敏彦事務局長)

「出版女性大忘年会」11月21日開催

出版業界の女性有志による「出版女性人大忘年会2018」が11月21日午後6時半、東京・文京区の講談社26階パーティールームで開催される。冒頭、朗月堂書店・須藤令子社長が約30分のミニ講演会を行う。
この会は、①業界内外の情報交換や自己啓発を通じて女性ならではの販売促進・拡売方法などを得る機会とする、②先輩方の結婚や子育ての経験を自身の仕事に活かし、会社や業界に貢献する、③男性と協働するためのより発展的な仕事の仕方を学ぶ、④人の上に立つリーダーとしての資質と責任について考える、⑤先輩後輩それぞれの感覚や経験、知見を学び、人として女性として更に成長すること――を目指して開催。業種に関わらず「出版」「女性」をキーワードに会社を超えて交流を図る。
発起人は、BOOKS隆文堂・高橋小織、朗月堂・須藤令子、BOOKSあんとく・安徳紀美、講談社・鶴見直子、小学館・矢崎恵里子、集英社・早乙女純子、KADOKAWA・上村裕子の各氏。
会費は4500円。申込締切は9月28日。
問い合わせは、青春出版社・栗生圭子=℡03(3207)1916/FAX03(3205)6339/メールkiriu@seishun.co.jp、KADOKAWA・大木絢加=℡03(5216)8506/FAX03(5216)8509/メールoki-a@kadokawa.jp

東京都トラック協会「出版物関係輸送懇談会」/「経営成り立たない」「2~3年以内に撤退も」/出版物輸送各社の窮状、実態調査で浮き彫りに

東京都トラック協会(東ト協)の出版・印刷・製本・取次専門部会(瀧澤賢治部会長=ライオン運輸)は8月21日、東京・新宿区の東京都トラック総合会館で「第40回出版物関係輸送懇談会」を、輸送業界の厳しい現状を考慮して従来行ってきた11月から前倒しして開催。出版物輸送の現状と課題について荷主団体の日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書籍出版協会、印刷会社、東京都製本工業組合、日本書店商業組合連合会と意見交換した。また、部会員企業を対象に行った「出版物関係輸送の経営実態に関するアンケート」の調査結果を報告。出版物輸送で経営が成り立っていない企業がほとんどで、2~3年以内に撤退を考えている企業が半数を超えるという、出版物輸送の危機的な実態が浮き彫りになった。
このアンケートは7月に実施し、部会員企業23社のうち14社が回答。
その結果、「取次→店舗」へ輸送している会社9社中8社、「版元→取次」へ輸送している会社4社中3社が「出版物輸送で経営が成り立っていない」と回答した。
ここ1~2年で荷主から運賃の値上げがあったのは、「取次→店舗」で「あった」が9社中6社、「なかった」が2社だったのに対し、「版元→取次」では4社とも「なかった」と答えた。
労働時間など法令に基づく経営を行っていくことは可能かという質問には、「取次→店舗」で9社中8社が「不可能」と回答し、「版元→取次」で4社中3社が「不可能」とした。
今後、出版物輸送を継続していくか問うたところ、「取次→店舗」で4社が「継続する」、5社が「一部撤退する」と回答。「版元→取次」で2社が「継続する」、1社が「一部撤退する」、1社が「撤退する」と回答した。
「撤退する」「一部撤退する」と回答した企業に、何年以内に撤退の見込み、または撤退の可能性があるか聞くと、「取次→店舗」で5社中2社が「1年以内」、1社が「2~3年以内」、1社が「CVS部門はすぐにでも撤退したい」と回答。「版元→取次」では2社とも「2~3年以内」と回答した。
瀧澤部会長は「問題は長い間やってきた形が限界にきたこと。重量制運賃は業量があることが前提だが、そこが毀損してきた」と指摘。「運賃を上げてもらうことは荷主にとって負担が大きい。輸送事業者も経費を下げねばならないが、今ある作業を現実に続けるためには費用から目をそらすことはできない」と運賃問題に言及するとともに、使用車両の合理化や作業方法の改善を提案。「すべての出版関係者が知恵を出し合い、今後の出版物輸送のあるべき形をスピード感をもって構築しなければならない」と呼びかけた。
荷主側から、日本雑誌協会物流委員会の隅野叙雄委員長(集英社)は「今あるものを減らさないためにどうするかを考えなければならない」として、減り続ける業量を確保するため、週刊誌や月刊誌以外の新しい魅力ある商材の企画が必要と強調。雑協と取協のワーキンググループで進める業量の平準化、売上のヤマを作るための取り組みなどを説明した。
トーハン・柏木祐紀輸送管理部長は「重量運賃、最低運賃、軒先運賃は業量に左右される。取次が支払うための原資は、売上金額や出版社からの運賃協力金などすべて業量に起因している」と問題点を指摘し、「業量に左右されない運賃体系を検討する時期にきている」と述べた。
日販・安西浩和専務は、非効率的と言われるCVSへの出版物輸送について「CVSは全国で6万店、書店は1万3千店。もしCVSへの配送がなくなれば、点在する書店に長い距離を走ることになりかねない。共存して成り立っている面があるのは事実」と指摘した。
東ト協側から、栗原運送・栗原誠社長は「運賃は20年前からずっと変わらず、出版社と値上げ交渉もできていない。人件費に合わない配送をしているのはどこか無理があり会社として成り立たない。いずれ淘汰され、間違いなく無くなる。時代に合った運賃にすることが必要」と訴えた。
出版輸送・手嶋章博社長は「運賃以外で改善するところはいっぱいある。人が関わらない輸送方式、時間を先取りした配送など、合理化を図れる方法を考えたい」と述べた。
相川運送・相川宏之社長は「長く出版物輸送だけやってきたが、今は出版物輸送以外の仕事にシフトして、何とか経営を維持している」と自社の状況を説明。「輸送業界の中で、同業者からは『出版物輸送に手を出してはいけない。納期が厳しく、単価が安い』と言われている」と率直に語った。

日本ど真ん中書店大賞2018/小説部門1位に湊かなえ『未来』

「日本ど真ん中書店大賞2018」の表彰式が8月22日、名古屋市千種区の名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)で開かれた「第2回日本ど真ん中書店会議」の会場内で行われた。
第2回目となる今年は、東海3県(愛知、岐阜、三重)の書店員・図書館員311名が読者に届けたい本を投票し、小説部門は湊かなえ著『未来』(双葉社)、ご当地部門は名古屋市教育委員会編『ナゴヤ歴史探検』(ぴあ)、ここが「この本のミソ」という独自の切り口やこだわりのある作品から選ぶ「ミソ!本」部門はカメントツ著『こぐまのケーキ屋さん』(小学館)が1位に選ばれた。
あいさつに立った同賞事務局代表の高須大輔氏(豊川堂)は、「愛知、岐阜、三重の書店員が投票して、お客様に薦めたい本を選んだ。長く続けたいと思っている。皆さんの力を貸り、地域の書店店頭を盛り上げていきたい」と述べた。
小説部門1位の湊かなえ氏は、「2年程前から本をたくさんの人に手に取ってもらうのは難しいなと思うようになった。読書をする限られた人を出版社や作家が椅子取りゲームのように奪い合うのではなく、外からもっと椅子をたくさん持って来ればいいと考え、昨年から47都道府県サイン会をやっている。自分1人の力では限界があるなと感じているところに、今回この賞をいただき光栄。日本のど真ん中…いえ、世界のど真ん中(の東海地区)から『未来』という作品をどんどん押し出し、1人でも多くの人に手に取っていただけるよう協力をお願いしたい」とあいさつした。
ご当地部門1位の名古屋市教育委員会・金田慎也教育次長は「これからも皆さんにこの本を紹介していただき、名古屋市の魅力の発信につなげたい」、ミソ!本部門1位のカメントツ氏は「京都精華大学で漫画家志望の子たちを教えているが、若い子たちは本を買わなくなった。そこで仲間やデザイナーと手に取ってもらいやすい、かわいい本を作った。(本は)まだまだ広げていけるコンテンツだと思う」と話した。
各部門の入賞作は次の通
り。
【小説部門】1位=湊かなえ『未来』(双葉社)、2位=伊吹有喜『彼方の友へ』(実業之日本社)、3位=住野よる『青くて痛くて脆い』(KADOKAWA)
【ご当地部門】1位=名古屋市教育委員会『ナゴヤ歴史探検』(ぴあ)、2位=神凪唐州『大須裏路地おかまい帖』(宝島社)、3位=神田卓朗『三重弁やん』(風媒社)
【ミソ!本部門】1位=カメントツ『こぐまのケーキ屋さん』(小学館)、2位=田村耕太郎『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)、3位=今井雅子『昔話法廷』(金の星社)

読書アドバイザー養成講座が開講/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC)は8月25日、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で「第26期JPIC読書アドバイザー養成講座」の開講式を開催。応募の中から抽選で選ばれた受講生100名が出席した。
今期の受講生は全国の20代から60代まで、出版関係27名(出版社12名、取次4名、書店11名)、図書館21名、会社員13名、主婦9名など。8月25日・26日の第1回から来年3月9日・10日の第4回までスクーリングとレポートに取り組む。
開講式であいさつした肥田美代子理事長は「IT社会、AI社会になっても、一番必要なのは読解力。それを確かめ合いながら、この1年を過ごしていただきたい。皆さんが日本中に飛び立つことがこの国を良くする。読書アドバイザーは推進マン。民間の力を結集してほしい」と励ました。

創価学会の池田名誉会長に感謝状/静岡組合

静岡県書店商業組合(江﨑直利理事長)は8月23日、静岡市駿河区の創価学会・静岡文化会館で、創価学会・池田大作名誉会長の活字文化振興への貢献を讃え、感謝状を贈呈した。
贈呈式では、ヴァイオリン等による記念演奏が披露されるとともに、創価学会・渡辺邦彦副会長が組合員を紹介し、佐藤文彦総静岡長より歓迎の辞。静岡組合・古澤隆副理事長が推挙の辞を述べた後、江﨑理事長より池田名誉会長代理の畑佳伸東海道長に感謝状を手渡した。
お礼のあいさつでは、畑氏が名誉会長の謝辞を代読。静岡出身の近代哲学者である西周氏が宣揚した印刷文化の意義に触れ、「文字・活字文化は平和を広げゆく希望の推進力だ」と述べた。

中央社、減収減益の決算/書籍は健闘も、定期雑誌の低迷響く

中央社は8月17日、東京・板橋区の本社で定時株主総会と取締役会を開き、平成29年度(平成29年6月1日~平成30年5月31日)決算諸案、役員人事案などを承認した。
平成29年度の売上高は前期比4・7%減の215億5697万円。その他営業収入を合計した総売上高は同4・6%減の217億4864万円となった。内訳は、雑誌が同6・9%減の120億9166万円、書籍が同0・5%減の82億8633万円、特品等が同8・6%減の11億7898万円、その他営業収入が同1・9%減の1億9167万円。営業利益は同13・1%減の2億6408万円、経常利益は同30・2%減の8469万円、当期純利益は同30・7%減の8107万円で、減収減益の決算となった。
返品率は同0・1ポイント増の31・1%。内訳は、雑誌が同0・6ポイント増の31・8%、書籍が同0・8ポイント減の32・2%、特品が同1・2ポイント増の12・8%。
雑誌部門のうち、コミックスを除く雑誌は同10・7%減、雑誌扱いコミックスが同4・1%減。定期雑誌の長期低迷に加え、コミック・ムックとも新たな大ヒット作品が生まれず、雑誌全体で前年を下回る結果になった。書籍部門は、文庫・ライトノベルの減少が続いたが、書籍扱いコミック・児童書・声優関連本などは比較的好調で、通期では微減にとどまった。特品部門は、専門店向けの特装版商品などが減少し、売上はマイナスに。その他営業収入のうち、業務受託収入はほぼ横ばい、不動産収入は微増だったが、LED蛍光管の提供が低調で、関連事業収入は前年を下回った。
経費面では、運賃は前期を上回ったが、人件費を含む営業費は前年を下回っており、販売費及び一般管理費の合計は同2・1%減となった。
平成30年度は雑誌、書籍、特品等のプロパー売上高は同1・1%減の213億2763万円、返品率は同1・1ポイント減の30・0%を見込む。書店店頭に読者を呼び込むための各種施策に取り組み、近刊情報を使用した予約活動の推進などに着手する。同日行った記者会見で加藤悟社長は、店頭で読者から予約を受けるための仕組みについて「営業の中でスキームを検討しており、もうすぐスタートできる見込みだ」と説明。機構改革では、名阪支社の名古屋支店と関西支店を廃止し、中部営業課と西部営業課を新設したが、「意思決定の過程をシンプルにしたもので、業務や規模を縮小するものではない」と述べた。
役員人事は、加藤社長以下、全役員が重任。風間賢一郎非常勤相談役は退任した。
[役員体制]
代表取締役社長加藤悟
専務取締役大谷敏夫
常務取締役山本章雄
取締役竹内文利
同片山秀樹
同江上浩
監査役外山義朗
[機構改革・組織変更]
1.総合経営計画本部を廃止する。
2.経営計画本部を新設する。
3.経営計画本部に経営計画室、総合推進室を置く。
4.名阪支社の名古屋支店、関西支店を廃止する。
5.名阪支社に中部営業課と西部営業課を新設する。
6.名古屋支店営業促進課の機能を中部営業課に移管する。
7.関西支店営業促進課の機能を西部営業課に移管する。

乳幼児から中学生まで、おすすめ本ガイド18年版を刊行/児童出協

日本児童図書出版協会は、新刊情報誌『こどもの本』の別冊として、『小学生・中学生のための読書ブックガイド』と『乳幼児・小学生のための絵本ガイド』の2018年版を刊行した。A5判、各40ページ、無料。
『こどもの本』2017年1月号から12月号までに紹介された新刊1782点の中から、学校図書館や公共図書館、家庭での読書により適した本を厳選し、小学生・中学生向きの「読書ブックガイド」と、乳幼児・小学生向きの「絵本ガイド」に分けて紹介したもの。各巻頭には、2017年度に特に読者の支持を得たロングセラーや新刊を会員各社が1冊ずつ紹介する「各社がすすめる2018年この一冊」を掲載している。
『小学生・中学生のための読書ブックガイド』には、幼児・小学校低学年向き22点、小学校中学年向き22点、小学校高学年向き34点、中学生向き10点の読み物を収録。『乳幼児・小学生のための絵本ガイド』には、0、1歳児向きの赤ちゃん絵本10点、2、3歳の幼児向き絵本30点、4歳~学齢前の幼児向き絵本30点、小学生向き絵本18点を収録する。
問い合わせは、日本児童図書出版協会事務局(電話03―3267―3791)まで。

芥川賞・直木賞贈呈式/高橋弘希、島本理生両氏があいさつ

第159回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が8月24日、東京都内のホテルで開かれ、芥川賞に選ばれた高橋弘希氏(『送り火』文學界5月号)、直木賞に選ばれた島本理生氏(『ファーストラヴ』文藝春秋)に正賞の懐中時計と副賞100万円が贈られた。
芥川賞選考委員の小川洋子氏は「個性豊かな候補作品が揃ったが、その中でも圧倒的な存在感を放っていた。日本語はまだこんな秘密を隠しているんだなと思わされる。これからどんな作品を書くか楽しみにしている」と評価した。
高橋氏は「大変光栄であり、身の引き締まる思い。受賞に驕ることなく、誠心誠意作品に向き合っていきたい」とあいさつした後、「今日はパーティーなのでローストビーフを食べて帰りたい」と語り、会場を沸かせた。
直木賞選考委員の東野圭吾氏は「この作品に感じられるのは、読者に対する誠意。次のページをめくらせようとする『おもてなし』の工夫と努力がある。書きたくないけど売れるから書くというのではなく、いま何が売れるかを想像して、自分がそれを書きたくなるようなエンターテインメント作家になってほしい」と励ました。
島本氏は「作家になり一番良かったと思うことは、日々書き続けることの凄さに気づけたこと。自分よりキャリアも人気も上の作家が新しいことに挑戦して書き続ける姿を見て背中を押されたことが、この18年間何度もあった。今回の受賞を機に、自分より若手の作家にも、書き続けることで見えてくる世界があるのかなと思ってもらえたらうれしい」と喜びを語った。

TS流通協同組合、9月末日の解散を決定/会員減、売上減で継続困難に

TS流通協同組合(片岡隆理事長)は8月30日に東京・千代田区の書店会館で臨時総会を開催し、組合員64名(委任状含む)が出席。9月30日をもって組合を解散することを決めた。
冒頭であいさつした片岡理事長は、「TSは、インターネットと新しい物流ルートを利用して客注迅速化を図ろうと、平成11年に設立した。当初は売上が小さくてもコストがかからなかったので、3年ほどで収益が出るようになり、4年目には東京組合からの予算化が実現し経営基盤がしっかりした。売上のピークは平成17年度の約1億2000万円だったが、昨年度は売上が4000万円を切り、負債が生じる状況となった。会員減少と売上減により収益を上げることが難しく、理事会で再三にわたり検討した結果、今日を迎えた。力足らず努力足らずで解散という事態になり、理事の代表としてお詫びしたい」と述べた。
臨時総会は、議長に濱野敏明氏(アンビル宮脇書店)を選任して議案審議を行い、第1号議案では解散日を9月30日とする組合解散を承認。第2号議案では清算人6名と監事2名を選任し、審議終了後に開いた第1回清算人会で片岡氏を代表清算人に選任した。10月より清算活動に入り、11月末開催の承認総会を経て、残余財産の整理にあたる予定。
質疑応答で、奥村弘志氏(南天堂書房)は「TSを解散せずに休眠させることは可能か。TSは長年にわたって版元との取次口座を持ち、今は新規でやろうとしてもできない。これからの時代、版元との直取引口座をなくしてしまうのはもったいない」と問いかけた。これに対し片岡氏は「去年の総会で、何とか残す方法はないのかと声を上げてもらったが、事業としての実態が生まれなかった」と述べた。