全国書店新聞
             

令和4年7月15日号

経営継続できる環境構築期す/粗利益拡大に総力結集/日書連第34回通常総会

日書連は6月23日、東京・千代田区の書店会館で第34回通常総会を開催し、会員45名(本人26名、委任状1名、書面18名)が出席した。あいさつした矢幡秀治会長は「書店を取り巻く経営環境は相変わらず厳しい。日書連の役割は組合加盟書店が経営継続できる環境を作ること」と述べた。新年度の取り組みでは、粗利益30%以上の実現を最優先課題に、読書推進で紙の本の読書を推し進める運動を展開するなど、幅広い活動を進めていく方針を承認した。
総会は石井和之事務局長の司会で進行し、はじめに矢幡会長が書店を取り巻く経営環境と日書連の課題について所感を述べた。
この中で矢幡会長は、コロナ禍による消費行動の変化が書店業界にも影響を及ぼしていると指摘。昨年はコロナによる巣ごもり需要で最寄り書店に多くの人たちが訪れ本の売れ行きも伸びたが、今年に入ってそうした特需もなくなり、さらにデジタルシフトの動きも加わって、「書店にとって厳しい経営環境が続いている」と苦境を訴えた。
ウクライナ情勢に伴う物価高騰の影響については「現在の経済状況で本の定価が上がると、本の購入がこれまで以上に手控えられるかもしれない」と懸念を示した。
日書連の活動については、組合加盟書店が経営継続できる環境を作るため、粗利益30%以上の実現を目指す運動に引き続き取り組んだことを説明。「成果は出せなかったが、出版社や取次の説明会などの場で30%という数字が出ることも多く、業界はその方向に動いている」と述べ、今年は日書連として施策を打ち出すために動くと決意を語った。
また、電子図書館の増加、出版大手と丸紅が設立したPubteXによるRFID事業への取り組み、出版文化産業振興財団(JPIC)の書店経営課題解決のための委員会設置に言及し、「多方面にわたって色々な動きが出ている。小さな街の書店の声を届けられるよう、日書連もしっかり意見を述べていく」とした。
さらに、街の書店の減少に歯止めをかけるには政治の力も必要として、「全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)の会合に出席し、文化の面から手助けしてほしいと訴えている」と述べた。
議案審議では木野村匡理事(岐阜)を議長に選任。第1号議案の令和3年度事業報告書、第2号議案の令和3年度財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案、第3号議案の令和4年度事業計画案、第4号議案の令和4年度収支予算案、第5号議案の経費の賦課及び徴収方法、第6号議案の令和4年度借入金の最高限度額案、第7号議案の令和4年度役員の報酬額案――すべての議案を原案通り承認可決した。
【各委員会の主な報告事項】
[政策委員会]
▽矢幡会長は昨年9月定例理事会で、書店経営環境改善運動の担当委員会を指導教育委員会から政策委員会に移す方針を表明。今後は政策委員会主導で粗利益30%以上の実現を目指す考えを示した。
矢幡会長は「正副会長で構成する政策委員会が主導し、書店収益改善に総力をあげて取り組む。出版社や取次による施策の実例を積み重ね、具体的な解決につなげていきたい」と方針を説明した。
▽出版文化産業振興財団(JPIC)が業界課題解決のため中心的な役割を担う業界横断型組織に進化し、書店の経営課題解決に最優先で取り組むことになった経緯を矢幡会長が説明。日書連からは特別委員会に春井宏之副会長と深田健治副会長、専門委員会に平井久朗理事、大橋知広・東京堂社長、小野正道理事を派遣したと報告した。
▽全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)について、矢幡会長は「街の書店が今後も存続するための議論を深め、実りある取り組みが行われるよう協力していく」と述べた。
[組織委員会]
2022年4月1日現在の全国組合加盟書店数は前年比84店(2・9%)減の2803店になった。
安永寛委員長は「減少傾向に歯止めがかからない。加入メリットを研究し、加入促進につなげたい」と述べた。さらに全国に9あるブロック会のあり方を見直す考えを示し、他の全国団体の規程や規約も参考にしながら検討するとした。
[指導教育委員会]
粗利益30%以上の実現を目指す書店経営環境改善運動の担当が政策委員会に移り、今後は本来の担当事項「研修会」「調査活動」「万引対策」に注力する。
[広報委員会]
光永和史委員長は、日書連と各都道府県組合の活動・事業を中心に出版業界の動向について、機関紙「全国書店新聞」とホームページ「本屋さんへ行こう!」を通じて全国組合加盟書店に向けて報じたと報告。「組合員数が減少し、各組合内の情報交換や意思疎通が困難になる中、組合と書店をつなぐパイプとして機関紙とホームページの役割はますます大きくなっている」と述べた。
今秋、4年ぶりに開催する全国広報委員会議については、「コロナ禍による組合活動停滞などで減少している各組合から全国書店新聞への記事投稿本数を増やす契機にしたい」とした。
[流通改善委員会]
藤原直委員長は、雑誌発売日励行本部委員会に9項目の要望書を提出したことを報告。「発売日格差は情報格差を生むことから、全国同時発売の実現を第一義的に提起している。問題解決のため要望書は毎年出すことが重要」と述べた。
RFID活用事業については、政策委員会と連携して業界内の動向の情報収集に努めるとした。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、送品・返品同日精算について「決められた締切日設定で入帳されていない事例の報告もある。各都道府県に状況確認と情報提供を要請している」として、「送品・返品同日精算の実現に向けて、今後も取次各社と話し合いたい」と述べた。
付録問題については「書店現場は苦労している。付録の梱包形状に配慮してほしい」と出版社に求めた。
[読書推進委員会]
春井宏之委員長は「読書推進運動の目的は読書人口を増やすことに尽きる」と述べ、2021年から新たに「春の読者還元祭」「秋の読者還元祭」を開始したことを報告した。
従来の「書店くじ」を、応募サイトにつながるQRコードを印刷したしおりを配布する「読者還元祭」に刷新。「春の読者還元祭」は応募総数4万件、「秋の読者還元祭」は「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンとコラボした結果、応募総数6万7313件に達した。2022年の「春の読者還元祭」ではしおりと雑誌カードを併用する形に変更した。春井委員長は「書店が効果を実感できるキャンペーンにするため、今後も見直しを図っていく」と事業の継続と発展へ意気込みを示した。
読書推進活動補助費については、独自企画を提出した青森、山梨、愛知、富山、長野、大阪、京都、奈良、兵庫、長崎の10組合に総額171万924円の補助金を支給した。
[書店再生委員会]
渡部満委員長は、各都道府県組合から報告される再販違反と思われる事例について、出版4団体で構成する出版再販研究委員会にその都度報告して対応を求めていることを説明した。
東京組合と大阪組合が小学館の協力で取り組んでいる週刊誌2誌の定期販売協力金事業は、両組合の事例を参考に他組合にも拡大できないか検討していく。
[図書館委員会]
髙島瑞雄委員長は、2022年度からスタートした「第6次学校図書館図書整備等5か年計画」について説明。①予算は必ず学校図書館図書整備の目的に使用する、②廃棄規準に基づく入れ替えを実施する――の2点を書店として行政などに働きかけていく必要を訴えた。また、その際、文字・活字文化推進機構などが作成したパンフレット「心と考える力を育むために―学校図書館の出番です―」「学校図書館基本図書更新参考リスト」を活用してほしいと呼びかけた。

矢幡会長総会あいさつ

コロナとロシアのウクライナ侵攻の影響で日本経済は厳しい状況を迎えている。物価高騰は今はまだ出版物に及んでいないが、紙業界の関係者から「紙がどんどん値上がりしている。本も定価に転嫁しなければ厳しい」と言われた。我々は定価引き上げを求めてきたが、現在の経済状況で本の定価が上がると、ますます本が買われなくなるのではないかと懸念している。
コロナ禍で家にこもっていた人たちは今、外に出て何をしているかというと、旅行などアウトドアばかりに目が向いて、書店にはなかなか寄ってもらえない。デジタル化も進み、我々にとって厳しい経営環境が続いている。
出版業界は巣ごもり需要もなくなり、書籍は厳しく、雑誌も相変わらず悪い。電子出版が大きな割合を占め、特に電子コミックは紙のコミックを追い抜く勢いになっている。我々は紙の本で読書することを推し進めなければいけない。
日書連はコロナ対策の一環として、2021年度の組合員1名当たりの賦課金を年額2000円減額した。皆さんのお役に立てたのではないかと思う。
粗利益30%以上の実現を目指す運動は成果はなかなか出せなかったが、出版社や取次の説明会の場で30%の数字が出ることも多く、業界はその方向に動いている。日書連として施策を打ち出せないでいるが、皆さんと協力しながら今年は動いていきたい。
図書館委員会を流通改善委員会から独立させた。図書館はライバルのような関係だったが、環境が変わって書店が少なくなり、読書環境の中で図書館は重要になっている。図書館が地域書店から本を購入すれば我々の利益になり、一緒に地域文化を醸成できる。
(コロナ禍でリアル会合が困難な中)Zoomを使った会議が進んでいる委員会もあるが、できていないところもある。コロナが収まってきてリアルで会うことも大切だが、皆さん忙しい身なので、Zoomとリアルのハイブリッドでやれば委員会を開く回数も多くなる。委員会を活発に開いていただきたい。
電子図書館の増加、講談社、小学館、集英社と丸紅が設立したPubteXのRFID事業への取り組み、出版文化産業振興財団(JPIC)の書店経営課題解決のための委員会設置など、多方面にわたって色々な動きが出ている。日書連もこれに呼応して意見を述べている。小さな街の書店の声を届けられるよう、しっかり訴えていきたい。
街の書店の減少が止まらない。政治など多方面から守ってもらわなければいけない。全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)に出席して、我々は利益をあげる集団だが、紙の本の読書は文化であり、文化の面から手助けしてほしいと言っている。
教育に寄与し、文化にも寄与しているという心持ちで、自信をもって書店を続けていただきたい。

出版平和堂第54回出版功労者顕彰会/丸岡義博氏、村田耕平氏を推薦/日書連6月理事会

日書連は6月23日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
▽出版業界の発展に貢献した物故者をたたえる出版平和堂「第54回出版功労者顕彰会」の顕彰候補者として、日書連から次の2氏を推薦することを承認した。
・丸岡義博(東京都、2021年1月7日没)会長1期2年、副会長1期2年、常任委員5期10年
・村田耕平(兵庫県、2021年3月16日没)理事3期6年、監事3期6年
▽第2回「本の日読書感想文コンクール」(主催=岐阜県教販、募集期間=9月1日~9月30日、発表=11月1日)、第43回「全国学校図書館研究大会(オンライン大会)」(主催=全国学校図書館協議会、期日=8月3日~17日)、第17回「大人の塗り絵コンテスト」(主催=河出書房新社、応募期間=9月1日~12月1日、発表=2023年2月上旬)の後援名義使用申請を承認した。

「春夏秋冬本屋です」/「絵本と親子を繋ぐ」/福岡・麒麟書店常務・森松恵美

出産の現場では、十人十色の感情が生まれる。私が続けている活動に「お産の会」という取り組みがある。出産の記憶に立ち返り、子育ての悩みや日々のアレコレを語り合いながら感情を共有し合うのだ。「話すコトは、手放すコト」に繋がり、ママの心が軽くなれば、明日からまた優しい気持ちで我が子と向き合える。だから、大切な親子の時間を過ごすために、ママが自身の心と向き合うことは必要だ。
しかし、産後「よーいドン」で24時間営業の子育てが始まると、そんな余裕などない。月齢に応じた様々な悩みや不安に押し潰されそうになる。多くの情報が簡単に手に入る世の中でも、誰に何をどう相談すればいいか分からず苦しむ。産後は、睡眠不足に輪をかけて女性ホルモンのバランスが乱れ、産後鬱に陥りやすいことも原因だ。私もその一人だった。
そんな時に出逢った、一冊の絵本がある。慣れない抱っこ、泣きながらのおっぱい、夜中に何度も息をしているか確かめた夜。初心を思い出し、ママは本当に頑張っているよと言ってもらえる気がする。
子育ては、教科書通りにはいかないが、それでも心の支えになる言葉を見つけるだけで、ホッとする瞬間がある。ママの心の処方箋のような一冊があれば、きっと子育ての励みになる。そこで、ママの心へ届けたい本棚を作り、絵本と親子を繋げている。

訃報

田中隆次(たなか・たかつぐ=宮崎市・田中書店代表取締役社長、日本書店商業組合連合会理事、宮崎県書店商業組合理事長)
病気療養中のところ7月11日に死去。享年75歳。通夜は12日、告別式は13日に宮崎市の宮崎メモリードホールで執り行った。喪主は妻あき子さん。
田中氏は1997(平成9)年から25年間、日書連理事、宮崎組合理事長を務め、近年は指導教育委員会の委員として書店経営環境改善の活動に尽力した。

マンガ感想文コンクールを全国開催/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC)は、マンガを用いて子どもたちの学習や読書をを楽しむための入口につなげてもらおうと、小中高生を対象に「マンガ感想文コンクール2022」を開催する。21年にテスト開催したコンクールを全国に規模を拡大し行うもので、コミック出版社10社と日本図書普及が協賛、全国36都県の教育委員会や日書連などが後援する。
対象は、裏表紙または巻末にISBNが記載されているマンガ(電子書籍は正規配信版)。歴史や科学などの学習マンガは除く。小学校低学年・同高学年・中学校・高等学校の4部門で各部門グランプリ1名と特別賞若干名、団体賞を選定する。締切は9月30日。23年3月に東京で表彰式を予定。JPICの特設サイトからポスター、応募票などをダウンロードできる。

甲子園球場整備テーマにした本『あめつちのうた』が受賞/ひょうご本大賞

「2022ひょうご本大賞」の受賞作が朝倉宏景著『あめつちのうた』(講談社)に決まり、6月10日に発表された。
同賞は、兵庫県にゆかりのある著者または兵庫県が舞台の小説の中から県内読者に読んでほしい本を選ぶもので、兵庫県内の9書店と取次2社、神戸新聞社で構成する神戸新聞ブッククラブ(KBC)が今年創設した。『あめつちのうた』は、阪神甲子園球場を整備する「阪神園芸」を舞台にした仕事小説であり青春小説でもある。
朝倉氏を招いた受賞記念イベントが6月18日、甲子園球場横にある甲子園歴史館多目的ホール(西宮市甲子園町)で開かれ、ファン約50人が来場。表彰式の後、朝倉氏と「阪神園芸」甲子園施設部長の金沢健児氏によるトークショーが行われ、甲子園の土と登場人物の心模様との相関の話で盛り上がった。
(兵庫県書店商業組合理事長・森忠延)

県組合協力の読書感想文コンクール/課題図書の販売目標を突破/愛媛総会

愛媛県書店商業組合(光永和史理事長)は6月7日、松山市のANAクラウンプラザホテル松山で第34回定時総会を開催し、組合員23名(委任状含む)が出席した。
総会は山本理事の開会あいさつの後、光永理事長を議長に選出し議案審議。光永理事長は事業報告で、県組合が協力する愛媛新聞社読書感想文コンクールについて、課題図書の参加校が県内で115校、応募が2万人を超える盛況だったと報告。販売面でも、店頭プラス外商店での販売部数が目標の7千冊を突破し、児童数減少のなか大幅な増売ができたと述べた。また、松山家庭裁判所で毎年開催されている「万引き被害を考える会」に、3回講師を派遣して講演会を行ったことや、昨年7月に実施したコロナ見舞金の支給等の活動について説明した。
事業報告の後、令和3年度収支決算報告・監査報告が行われ、令和4年度事業計画案・収支予算案とともに満場一致で承認された。
総会終了後は午後6時より同ホテル「桃園」で懇親会を開催。対面での総会及び懇親会は3年ぶりの開催で、久しぶりに会う組合員が友好を深める宴会となった。(松岡省自広報委員)

読書推進事業の進行を説明/大阪理事会

大阪府書店商業組合は6月11日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
深田健治理事長は、7月6日に日書連近畿ブロック会など主催で開く「BooksPRO説明会」の打合せ会を5月12日に行ったと報告、会場設営の担当や動員などについて説明した。
委員会報告では、読書推進委員会が「2022第18回大阪こども『本の帯創作コンクール』」について課題図書のカラー版朝日新聞記事が6月2日掲載されたと報告。読書ノートは121校4万9497冊の申込があり、5月31日に送付を完了と報告した。経営活性化委員会では、朝日放送ラジオ土曜朝の番組「道上洋三の健康道場」で、4月から偶数月に二村知子委員長のおすすめの1冊コーナーを放送していると紹介した。(石尾義彦事務局長)

書店案内アプリをリリースへ/書店の利益向上に取り組む/東京組合青年部総会

東京都書店商業組合青年部は6月10日、東京・千代田区の書店会館で第32回通常総会を開催。新型コロナウイルス感染防止のため理事のみが出席し、書面議決方式で行った。
総会は田島英治会長のあいさつに続き、越石功副会長を議長に審議を行い、令和3年度活動報告、収支決算、令和4年度活動計画、収支予算などすべての議案を原案通り承認可決した。
新年度は、①書店案内アプリの開発、②書店の利益向上対策、③電子書籍との連携――の活動方針を決定した。「書店案内アプリ」は、読者を書店店頭に誘導するため開発を進めているもので、リリースが遅れていたが、今年度中の完成と運用開始を目指す。書店の利益向上対策では、正味問題や街の書店の経営環境改善に向けた活動を行っていく。報奨企画や、キャッシュレス手数料問題、新商品の取扱いなどに取り組む。電子書籍は市場の成長が著しく、店頭への誘導などで連携を模索していく。
田島会長は、コロナ特需が一巡して厳しい売上となっている現状を憂慮し、「皆で意見を出し合って少しでも改善できればと考えている。版元ともコミュニケーションを取って、できることを少しずつでも進めたい」と述べた。

5月期は前年比12・9%減/前年の巣ごもり需要の反動大きく/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの5月期店頭売上は前年比12・9%減。20年と21年はコロナ下の巣ごもり需要が生じていたが、22年は需要が収まり売上が落ち込んだ。
雑誌は5・6%減。月刊誌は、今年45周年を迎えた「月刊コロコロコミック2022年6月号」(小学館)などが売上を牽引。週刊誌は、分冊百科が好調で前年を上回った。
書籍は13・4%減。実用書は『N46MODEvol.2乃木坂46デビュー10周年記念公式BOOK』(光文社)などの売上が好調だった。文庫は、『風に訊け空也十番勝負(七)』(文藝春秋)や、今年5月に映画が公開された『流浪の月』(東京創元社)などが売上を牽引した。
コミックは17・9%減。雑誌扱いコミックは、「僕のヒーローアカデミア34」のほか、4月にテレビアニメが放送開始の「SPY×FAMILY」(ともに集英社)が引き続き好調だった。

AIカメラは倍増の伸び/万引防止システム市場規模調査の結果公表/日本万引防止システム協会総会

日本万引防止システム協会は6月2日、東京・千代田区の主婦会館プラザエフで令和4年度通常総会を開催し、業界初となるAIカメラの市場規模と安全管理措置を含む万引防止システム調査報告書を公表した。
冒頭あいさつした稲本義範会長は、令和3年の万引犯罪の状況について「全刑法犯に占める万引の認知件数が前年の14・2%から15・2%に悪化し、検挙件数も前年より884人も増加した。刑法犯認知件数が年々下がっている中で、これは異常値」と深刻な現状を懸念。これを踏まえ、同協会は昨年、第1回保安講習会の開催、万引防止システムの市場調査、法令遵守や機器の安全運用に関するセミナーの実施に取り組んだことを報告した。
「万引防止システムの市場規模に関する調査」では、業界初となるAIカメラの市場規模と個人情報などの安全措置の調査も行った。稲本会長は「万引防止システム機器の出荷台数は伸び悩んでいるものの、販売金額では昨年が過去5年間で最高。顔認証システムは間もなく10億円を突破する勢いで、AIカメラは倍増に近い伸び率になった」と成果を強調した。
議案審議では令和3年度事業報告、収支決算、令和4年度事業計画、収支予算などすべての議案を承認。役員改選では、副会長に山根久和氏を新任した。
[役員体制]
▽会長=稲本義範(高千穂交易)▽副会長=三宅正光(三宅)、近江元(全国万引犯罪防止機構)、山根久和(セフトHD)

渋谷プロジェクトの進捗報告/参加店や運用地域拡大めざす/万防機構総会

全国万引犯罪防止機構(万防機構)は6月14日、東京・千代田区の主婦会館プラザエフで2022年度通常総会を開催した。
あいさつした竹花豊理事長は、「万引は刑法犯認知件数の約15%を占め、犯罪の中で重みを増している。インターネットを使った被害品の販売や高齢者の万引増加など新たな要素を加えながら、万引は今後も大きな社会的課題となることが予想される」と指摘。その中で「我々の取組みが万引への社会全体の抑止力を大きくしたというには程遠い状況だ」との認識を示し、「もっと我々の取組みが社会に知られ、前向きな気持ちを多くの関係者が持ち始めれば大きな転換が期待できる。本年度は万引抑止に対する世論づくりに取り組みたい」と述べた。
議案審議では、21年度事業報告及び収支決算報告、22年度事業計画及び収支決算計画などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業計画では、渋谷の3書店間で運用する顔認証機能を活用した情報共有システム「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」(渋谷プロジェクト)は、渋谷地区における参加店の拡大を図るとともに、他地区への運用拡大を目指すとした。店舗における損失を未然に防ぐ手法「ロス・プリベンション」修得のため設立した「ロス対策士」の検定試験は、21年7月のスタートから計3回の試験で357名が合格。22年度は5月と11月に試験を実施する。また、万引防止出版対策本部への支援として、不正品買取防止のための新古書部会設立、出版物の不審な出品者への啓発メール発出方法研究、万引防止につながるRFID等単品識別方式研究などを行うとした。
活動報告では、万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長が渋谷プロジェクトについて報告した。コロナ禍の影響で、マスク着用により顔認証カメラの認識率が大きく低下したが、21年4月にカメラソフトのバージョンアップを行い、再来店を認識する能力が飛躍的に向上。プロジェクト2年目(20年8月~21年7月)の実績に占める21年5月~7月の3ヵ月間の実績は、年間の再来店数28件中18件、抑止数は21件中10件、捕捉数は11人中4人に及んだ。3年目は、今年4月までの9ヵ月間で、事案数が57件で同13件増、再来店数が16件で同6件増。事案数に比べ再来店が増えていない点について阿部氏は「カメラのバージョンアップによってマスク着用でも認識可能というアナウンス効果が出ている」と分析した。
また今年4月の個人情報保護法改正を受け、店頭告知の内容を、より来店客の目線に立った親切な掲示としたことや、開示請求での電磁的請求の追加等の対応を行ったと報告した。阿部氏は、顔認証カメラの導入にあたって最大の課題は、経営者の強烈な当事者意識と強力なリーダーシップ、従業員の理解と不安解消だと指摘。導入までの準備として、個人情報保護法の学習と理解、研修の徹底など必要項目を説明した。

「秋の読者還元祭2022」実施要項

▽名称「読書週間×本の日秋の読者還元祭2022」(主催=日書連、共催=「本の日」実行委員会)
▽実施期間10月27日(木)より11月11日(金)まで〈11月18日(金)まで応募受付〉
▽対象書店日書連傘下組合加盟書店及び図書カードリーダー端末設置書店、その他全国の希望する書店
▽実施方法期間中に来店した読者にキャンペーンサイトを案内する。読者による応募が必要(1日の応募上限は1回とし、最大23回応募可能、同日内の重複応募はできない)
▽販促物日本図書普及の定期案内物にキャンペーンポスターを同送
①事前告知ポスター=9月中旬に2部送付(日書連及び「本の日」ホームページよりダウンロード可)
②応募用(QRコード掲載)ポスター=10月下旬に2部送付
③QRコード付きしおり=1束(500枚)を3300円(税込)で希望書店に頒布。書籍・雑誌を一定金額(目安は税込500円)購入した読者に進呈し、キャンペーンを案内
しおりとポスターのQRコードは同じ応募サイトにつながる
▽申込方法と締切書店の自主的な申し込み制。書店は注文ハガキに申込束数(1束500枚単位)と実施書店名を記入し、所属の都道府県組合宛に申し込む。しおり配布書店を告知するため、複数店舗分を申込の場合はそれぞれの書店名を記入。複数店舗分を一括申込する書店で各店舗への搬入を希望する場合は、一覧注文書を書店組合に送る。申込締切は7月29日(金)
▽納品と請求方法取引取次経由で10月中旬に納品。代金は取引取次より請求
▽賞品総額500万円
・図書カードネットギフト1万円200本
・同3千円500本
・同1千円1500本
当選者には日本図書普及より直接、図書カードネットギフトをメールで送信。賞品の発送は12月下旬頃の予定
▽報奨金制度しおりを購入して150件以上応募者を集めた組合加盟書店に報奨金3300円(税込)を支払う(購入束数に関わらず上限3300円。同日内の重複応募はできない)
▽しおり無料配布販促活動の一環として、全組合加盟書店にキャンペーンしおり20枚を無料配布。10月中旬に直送
▽広報活動全国書店新聞に実施要項を掲載。日書連及び「本の日」のホームページ、日書連及び「本の日」の公式Twitterで告知

日書連のうごき

6月1日JPO定例理事会に藤原副会長が出席。公取協連合会総会に矢幡会長が出席。文字・活字文化推進機構臨時理事会(Web)に矢幡会長が出席。本の日実行委員会に矢幡会長が出席。
6月2日活字文化推進会議に矢幡会長が出席。
6月3日日本出版クラブ定例理事会に矢幡会長が出席。
6月6日塩谷立議員在職25周年記念会に矢幡会長が出席。
6月7日JPIC理事会に矢幡会長が出席。
6月14日学校図書館整備推進会議幹事会に事務局が出席。全国万引犯罪防止機構総会に矢幡会長が出席。
6月15日読書推進運動協議会総会に春井副会長が出席。
6月16日JPO運営委員会に春井副会長が出席。
6月20日出版倫理協議会に事務局が出席。本の日説明会(Web)に矢幡会長が出席。
6月22日政策委員会に矢幡会長、藤原(Web)、柴﨑、渡部、春井、安永、光永、深田各副会長、髙島委員長が出席。文化産業信用組合総代会に矢幡会長が出席。図書館委員会に髙島委員長、楠田理事が出席。
6月23日定例理事会、通常総会。
6月24日心にのこる子どもの本三者会議に春井副会長、木野村理事が出席。定期会計監査。
6月28日JPO定時総会に春井副会長が出席。
6月29日日本図書普及株主総会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。
6月30日全国中小企業団体中央会総会に事務局が出席。

図書カード発行高18・4%減/コロナ需要の反動でマイナスに/日本図書普及

日本図書普及は6月29日開催の定時株主総会に先立ち、6月16日に東京・新宿区の本社で記者会見を行い、第62期(令和3年4月1日~令和4年3月31日)の決算概況を発表した。
図書カードNEXTの発行高は前年比18・4%減の345億4300万円。前年はコロナ禍で休校になった学校への支援策として一部自治体が図書カードを配布。特に大阪府による小中高生への図書カードネットギフト配布は総額20億円の大口需要になっており、その反動でマイナスになった。内訳は、「一般カード」が同13・7%減の327億6900万円、「広告(オリジナルカード)」が同59・6%減の17億7400万円。オリジナルカードのうち、図書カードネットギフトは6億3900万円(同79・7%減)。
回収高は、同9・3%減の343億8400万円。種類別の内訳は、図書カードNEXTが317億4200万円(占有率92・3%)、磁気の図書カードは23億6400万円(同6・9%)、図書券は2億7700万円(同0・8%)だった。
加盟店は前期末対比121店減の5416店。読取端末機設置店数は同218店減の7537店、設置台数は同181台減の1万905台。
損益計算書における売上高は、広告カードの作成を全て子会社のカードサポートに移管したことにより、前年より約9700万円減少し1503万円。営業損失は19億9133万円(前年は23億2369万の損失)、経常損失は4億5555万円(前年は9億758万円の損失)。特別損益で未回収収益を約18億8000万円計上するなどして、当期純利益は8億5792万円と前年比約2億5000万円増加した。
記者会見で平井茂社長は、今期の主な活動について説明し、出版文化産業振興財団(JPIC)と今年3月~5月に開催した「磁気式図書カード利用促進キャンペーン」はトータルで約7万件の申込みがあったと報告。3年ぶりの会場開催となった「上野の森親子ブックフェスタ」は、レジでの会計は接触感染予防のためキャッシュレス決済のみとなり、会場内でも図書カードを販売して約660万円を売り上げた。今秋に出版業界を横断して企画される「秋の読書推進月間」への協力や、図書カードネットギフトの販促、ECサイトでの図書カード利用促進、書店セルフレジへの図書カード対応支援にも取り組んでいくと述べた。

「本屋のあとがき」/「父との映画館通い」/ときわ書房本店文芸書・文庫担当宇田川拓也

映画『トップガンマーヴェリック』を観に行こうとしていると、ちょうど実家の父も観るつもりだという。
父も七十半ばを過ぎ、改めて親子で過ごす残り時間について考えることが増えてきた。当たり前に接してきた日常も、当たり前ではなくなるときが必ず訪れる。できることはいまのうちにやっておけという意識も働き、三十数年ぶりに連れ立って映画館に足を運んだ。
小学生の頃、こうしてふたりでよく映画を観に行った。父は子供に対して「これはまだ早い」「観てはいけない」といった言葉を一切口にしないひとで、『アンタッチャブル』や『ロボコップ』など、いま思えば小学生にはいささか暴力描写がキツめの作品であっても、観たいといえば黙って連れて行ってくれた(とはいえジョージ・A・ロメロ『死霊のえじき』は、いかがなものか。映画館もよく入場を止めなかったものである。大らかなり、昭和の映画館よ)。
そうした日々も、私が中学生になるとひとりで出歩くようになり、最後に一緒に観たのはフランシス・フォード・コッポラ『タッカー』だったか。
振り返れば、わずか数年という短い期間だったが、あのときの父との映画館通いは、学校や塾では得られない心の教養を与えてくれたように思う。
あと何年もしないうちに、私の子供も当時の私と同じ年ごろになる。配信が当たり前の現代だが、いつか父親と映画館を重ねて思い出す日が来てくれることを夢見ている。